菅野了次の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
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○参考人(菅野了次君) 東京工業大学の菅野です。
本日は、参考人としてお呼びいただきまして、どうもありがとうございます。(資料映写)
私からは、蓄電池、電池の開発について意見を述べさせていただきます。
電池、エネルギーをためる役割を担っています。エネルギーを効率よく利用するための重要なデバイスで、現在、EV、電力貯蔵などの利用を目標として開発競争が激化しているデバイスの分野です。今日の私の意見の内容は、その電池を固体にしようという基礎研究の取組を御紹介させていただきます。
電池、池と書きますけれども、電気を池にためると書きますが、通常、電池には電解液を用いています。その液の部分を固体にしてしまうという試みです。固体電池というのは古くから知られていましたけれども、この電池がエネルギーを蓄える電源の主力となるということはとても考えられていなくて、まさに夢物語だったんですけれども、幸いに、二〇一一年、我々が液体電解質の特性とほぼ同じ若しくはそれより上の材料を固体で見付けることができて、それをきっかけに固体電池というのが次世代の電池のトップバッターとして躍り出たという経緯があります。
今日はその詳しい内容をかいつまんで御紹介させていただきたいんですけれども、基礎研究である物質開発、材料研究、それからスタートして、研究室レベルの電池開発、その次に産業に引き継いだ実デバイス開発、その粗筋というものを、雰囲気を感じ取っていただければと思います。
今日の内容ですけれども、蓄電池の役割、それから歴史、ロードマップを最初に少しお話しさせていただいて、我々の研究の内容、少し細かいスライドを準備しましたけれども、かいつまんで御紹介させていただきたいと思います。さらに、今後の課題、将来に至る話をさせていただきたいと思います。
まず、電池の歴史です。
電池は、一八〇〇年、ボルタが発明して、その後、鉛蓄電池、マンガン乾電池が相次いで開発され、一九九〇年、九一年にニッケル水素、リチウムイオン電池というのが開発されました。このリチウムイオン電池というのは画期的な電池です。が、しかし、鉛蓄電池、今も産業を支える重要なデバイスですし、リチウムイオン電池も開発から三十年を経てようやくEVに搭載されようと。電池というのは、かくも開発に時間が掛かり、かつ、一旦社会に受け入れられた際には長く使い続けられるというデバイスであるということをまず述べたいと思います。
リチウムイオン電池のすばらしいところ、それまで水溶液の電解液を使っていたんですけれども、有機溶媒系、水の分解電圧である一・二ボルトを打ち破ったという点がもう画期的な電池です。この電池、ノーベル賞の吉野先生始め、皆さんも御存じのことと思います。この電池がようやく車の主力電源として現在使われようとしていると。
この電池を、次の電池があるのかというのが基礎研究の大きな目標です。電池というのは、単位体積、単位重量当たりエネルギーをどれぐらいたくさん詰め込むか、エネルギーの言わば缶詰です。したがって、エネルギーをたくさん詰め込めば詰め込むほど良い電池ということになり、この左の上のグラフにありますように、鉛蓄電池からリチウムイオン電池、さらに様々な次世代の電池が提案され、それに向かって各国、各地域、プログラムを組んで電池の開発が行われています。そこで、固体電池というのがこのリチウムイオン電池の次のデバイスであろうというように現在期待されているわけです。
ただ、このロードマップに二十年前、十五年前は固体電池はなかったので、いかに新しいデバイスを見付け出すかということは、このロードマップを描くということにも重要であるということが認識していただけると思います。
では、固体電池にしたときにどういうメリットがあるのかというのが次のグラフです。液体を固体にするだけということでエネルギー密度はそれほど変わらないようですけれども、実は積層ができることによってたくさんエネルギーを詰め込むことができる、さらに安全性が向上する、充放電が早くできる。様々なメリットがあるということが期待できますが、これまでそのメリットを我々基礎研究で示すことができなかったために固体電池というのが認識されなかったわけですが、幸い、現在、次のデバイスとして開発が行われているところです。
現在、固体電池、様々に開発が進んでいます。主に硫化物系、酸化物系と分類できますが、細かいことはともかくとして、今日の我々の研究の内容の主な点であります硫化物系で、様々なチップ型電池、それから車載用への大型の電池というのが、今現在、主な自動車メーカー、電機メーカーが開発を真剣に行っているというような状況です。
固体電池、実は歴史が古いということは最初も言いました。一九七〇年代から延々と開発進んでいます。その中で、これまでいろんな不連続な発見、発明というのがありましたが、特に、先ほども述べましたが、我々二〇一一年に報告した、これ、LGPS発見と書いていますけれども、この物質が液体電解質以上のイオン導電率を持つというところが一応ターニングポイントとなって、産業の方々から開発に乗り出して、今現在の状況にあるというように考えています。
リチウムイオン電池の比較です。まだ大型の固体電池というのが実物が出ていないので、リチウムイオン電池、現在主力の電源となっているリチウムイオン電池と比較するというのはなかなかつらいところではあります。この後、基礎研究から明らかになったメリットというのはお示ししたいと思いますが。
電池の開発者にとって、鉛蓄電池が、先ほども言いましたが、今現在も主力電源として使われている、リチウムイオン電池が開発から三十年たって主力電源としての地位を占めるようになっている、今後百年にわたってリチウムイオン電池が主力電源であるべきかという基本的な問いが我々電池の開発者にとってはあります。そうではないだろうと、次の電池というのがやはり次の時代を担うべきであるとの考えが次世代の電池を開発するというモチベーションになって、その一つとして固体電池というのがあるわけです。
では、その固体電池について、少し話が細かくなりますので、かいつまんでお話しさせていただきたいと思います。
固体の中をイオンが動く。固体の中をまるで液体のようにあるイオンが動くという物質をいかに探すかと。今現在、そのような物質が銅イオンでは存在し、リチウムイオンでもようやく当たり前に存在するようになったというような状況になっています。
その開発の歴史も大変古く、一九六〇年代からありますが、このグラフ、縦軸はイオン導電率、抵抗の逆数です。抵抗がどんどん下がるのがいい電解質なんですけれども、物質が見付かってその抵抗がどんどん下がっていく、研究が進むにつれて下がっていく、下がった段階で固体電池にしようという試みが行われるという繰り返しが一九六〇年代から延々と続いてきています。今現在、二〇二〇年代で、二〇一〇年代に見付かったLGPSを始め幾つかの材料が液体電解液並みの特性を持つということが分かって、その材料をもとに固体電池が開発されているというような状況です。
我々、二〇〇〇年代、二〇〇〇年にこの右下にある材料をまず最初に見付け出して、それをベースに、二〇一一年、二〇一六年と物質を開発して、電池に展開した、その電池が非常に特性がいいということを報告してきたわけです。
この表は論文の数です。イオン導電体の論文の数で、二〇一〇年、一一年辺りから急激に論文数が増えているという状況が分かります。非常に活発な、競争の激しい研究分野になっているということがお分かりいただけると思います。
我々の研究を振り返ってみますと、今も述べましたけれども、二〇〇〇年にそのもととなる材料を開発して、二〇一一年に液体電解液並みの材料を見出した。二〇一六年に少しバージョンアップして固体電池を作って、固体電池のメリットというのを初めて明らかにしました。実は電流は取れるというメリットがあるということを基礎研究で明らかにしました。昨年、さらに、リチウム金属を負極に使うなどして、固体電池も、次の世代の固体電池が存在するというような報告をしました。このような長い年月を掛けて固体電池の将来像を示すことができました。
まあ、実際の研究開発というのは地味なもので、このような周期表に基づいて元素を組み合わせて、これは化学の世界ですので、このような指針に基づいて混ぜ合わせて物を作り出すという作業を、地味な作業を行っているわけです。その結果、最初の材料が見付かり、二〇一一年にキーマテリアルとなる材料が見付かり、二〇一六年にその電池を使った特性が非常にいいということを示すことができました。
この図を少し御紹介させていただきますが、縦軸は出力、横軸はエネルギーで、右上ほどエネルギーデバイスの特性がいいということを示します。リチウムイオン電池は双方とも取れる電池に仕上がっているので大変優れた電池である、固体電池はその上に存在すると、電流を取れる、出力ができ、充電速度も速くなる可能性があるということを基礎研究の段階で示すことができたというのがこの図で、この図をお示しして以降、固体電池というのが次のエネルギーデバイスとして見てもいいのではないかというような雰囲気になったと考えています。昨年の成果です。これについてお示ししています。
さて、これまで基礎研究の内容を御紹介いたしましたけれども、電池は、実用のデバイスにするには電池製造のプロセスというのが非常に重要です。ここにお示ししましたが、材料から、それを混ぜ合わせてシートにして、電極を貼り合わせて実デバイスに仕上げると。この製造プロセス、このプロセスの成否によって実デバイスの特性が決まると。このプロセスは日本の産業の非常に強いところです。このプロセスを最大限活用して、今現在、電池の開発が行われているというように認識しています。
それでも、これまでの電池と違う形態の電池を開発するということは様々な課題が存在します。その材料、それに伴う課題をここに列挙していますが、課題が明らかになれば、日本の技術者大変優秀ですので解決ができるだろうと、いつの間にか解決するんではないかというような状況になると私自身は楽観的に見ています。
我々、基礎研究をやっている、行っている研究者として、昨年まで、文科省、JST関連の産学連携のプロジェクトを進めてきました。そこでは、産業と基礎研究者と一緒になって競争領域ではなく協調領域の開発を行い、我々の成果を産業にフィードバックするというようなプロセスを行って、実務を行ってきました。
その過程で、基礎研究の役割、産業の役割、その中間地点どのように乗り越えるか、様々に思い、思うこと、考えることというのは当然あります。それに関しては、そのような課題を施策に生かすというのはそのプロがいますので今日はお話ししませんが、少し参考資料に、マスコミのインタビューに書いたようなことをこのプロジェクトの過程で考えた次第です。産業と基礎研究との会話というのが大変重要であるということを、一点述べさせていただきたいと思います。
電池、これからますます重要に、役割を担うと考えています。電池の特性がもしもっと良ければこのようなデバイスができるのに、更に電池の特性が良くなれば、これまで考え付かなかったようなデバイスが可能になるということもあると思っています。これから基礎研究、それを産業に展開する開発研究、ますます重要になると考えています。
どうも御清聴ありがとうございました。