柴愼一の発言 (本会議)

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○柴愼一君 立憲民主・社民・無所属の柴です。柴愼一です。
 財政演説、令和六年度補正予算案について、会派を代表して質問いたします。
 石破政権が発足して総選挙を挟み約二か月が経過しましたが、安全保障政策や地方創生に対する一定の熱意は感じる一方、経済政策の全体像や裏付けとなる哲学が見えてきません。
 過日、閣議決定された総合経済対策には、「安倍内閣の経済財政政策(アベノミクス)の成果の上に立ち、岸田内閣の「新しい資本主義」を始めとする経済財政政策の取組を引き継ぎ、更に加速・発展させていく。」と書かれています。これでは、成長を重要視したアベノミクスと、分配を重要視しようとしたが頓挫した岸田政権の方針に対して、石破政権がどちらを目指しているのか全く読み取れません。
 石破総理の所信演説からは、岸田政権にあった分配というワードが消えました。代わりに、賃上げと投資が牽引する成長型経済がキーワードとなっています。
 賃上げと投資が牽引の実現には、そのための分配が重要なのではありませんか。結果として期待されたトリクルダウンは起こらず、代わりに企業には巨額の内部留保が蓄積し、所得・資産格差は広がり、労働分配率も低下しました。
 九月二十七日の総裁就任直後に大幅な株価下落となったいわゆる石破ショックは、石破総理の金融正常化への考えや、総裁選でも主張していた金融所得課税強化等の政策に対する市場からの拒否反応でした。その後、十月二日の日銀総裁との会談で追加利上げの環境にないと発言したのは、日銀の独立性を脅かす政府介入とも言え、問題意識を持つものですが、市場の圧力に屈して、かつての考えを早々に翻したと言えるのではないでしょうか。これは、アベノミクスからの転換を同様に目指したはずの岸田政権発足時をほうふつとさせる朝令暮改と言わざるを得ません。
 石破総理は自身の著書で、通貨も過度な円安誘導に頼らず、実質経済に見合った水準を目指すべき、日銀の財務悪化、財政規律の麻痺、銀行の体力低下など、マクロ経済運営について危機に備えた体制をつくっておくべき、異次元の金融緩和によって元々抱えている病気が治るわけではないと、金融緩和の限界を説いていました。
 総理のこうした経済政策に対する考え方は、総理になった途端に放棄され、何をしたいのか分かりません。石破政権は経済政策に対する考え方、基本方針を明確に示すべきです。総理、アベノミクス、あるいは新しい資本主義の何を引き継ぎ、更に加速、発展させていくのか、そして見直すことはないのか、政府の方針を明確にお答えください。
 政府の総合経済対策では、デフレを脱却し、新たな経済ステージに移行を目指すとしていますが、デフレ脱却と物価高対策を同時に行うことに強い違和感があります。
 いまだに政府はデフレ脱却を経済対策に掲げていますが、国民は継続的な物価高に苦しんでいます。既に三十八か月間、つまり約三年超、物価上昇は続いており、物価下落を意味するデフレとは全く異なる状況です。
 政府は、デフレ脱却の判断について、物価が持続的に下落する状況を脱し、再びそうした状況に戻る見込みがなくなることとしていますが、経済は循環するものであり、戻る見込みがなくなると判断をできる人がいるのでしょうか。
 政府のデフレ脱却を口実とする不要な歳出の積み増しはもうやめるべきです。
 政府はミスリーディングな物言いはやめて、デフレ脱却宣言を一度きちんと行い、物価高対策などの政策を分かりやすく推進するべきと考えますが、デフレ脱却担当として加藤大臣の認識をお示しください。
 また、政府の総合経済対策には日銀への期待という項目があります。そこには「政府は、引き続き、日本銀行と緊密に連携し、デフレからの早期脱却と物価安定の下での持続的な経済成長の実現に向け、一体となって取り組んでいく。」と記述されています。これは、二〇一三年の政府・日本銀行の共同声明、いわゆるアコードとほぼ同内容のものですが、物価高対策が必要な現在は、当時の経済状況とは大きく異なっています。
 日銀の経済見通しでは、消費者物価について、二〇二四年度に二%台半ばとなった後、二〇二五年及び二〇二六年度はおおむね二%程度で推移すると予想される、物価安定目標とおおむね整合的な水準で推移すると考えられるなどとしており、二%の物価安定目標を実現するためのフェーズに入っていると言えます。
 そのような状況にあっても、政府はアコードが現在も経済状況に即した有効なものと考えているのでしょうか。総理に伺います。
 デフレ脱却の判断と併せて、ピンぼけとなったアコードの発展的解消又は大胆な見直しが必要と考えますが、総理の認識をお聞かせください。
 石破政権は、コストカット型経済からの転換を掲げており、その点は岸田政権の方針を基本的に継承していると考えます。所信演説で賃上げの重要性を繰り返している点も岸田政権と一致していますが、そのための経済対策は、具体策はいわゆる政労使会議での要請にとどまり、政府としての政策面での後押しは不十分なままです。
 賃上げに対しては、賃上げに向けては、賃上げ促進税制が主な施策と認識していますが、これまでの政策評価でも明らかなように、効果が見られません。巨額の税額控除、税の減免は、賃上げができた力のある企業への御褒美にはなりますが、賃上げしたくてもできない中小企業の賃上げ促進にはつながらないと明確に申し上げます。
 日本商工会議所の調査では、昨今の賃上げについて、業績の改善が伴わないのに、人手を確保するための防衛的な賃上げが六割に上ると言われています。賃上げに対する民間企業の自助努力を政府が支える、特に最低賃金の引上げによる人件費増加に苦しむ中小企業等に焦点を当てた支援策が必要です。
 中小企業への直接支援、例えば社会保険料負担軽減などを行うべきと考えますが、賃上げ促進税制の効果検証とともに、我々が求める企業への直接支援に対する政府の認識を総理に伺います。
 あわせて、労務費の価格転嫁に向けて、石破政権となって初の新しい資本主義実現会議において、中堅・中小企業の賃上げ環境の整備を進めるため、労務費の価格転嫁が進まない業種を所管する省庁に労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針の遵守状況についての実態調査及びその結果に基づく改善を年末までに終えるよう求めたとされますが、その改善策を確実に実施するための必要な財源はこの補正予算でどのように措置されているのか、総理、お答えください。
 補正予算は、その編成に当たっては財政法により、予算策定後に生じた事由に基づき特に緊要となった支出を行う場合に限り認められるものです。これまでも我が会派を始め多くの問題指摘がされてきましたが、また同じことを言わなければなりません。
 さきの総選挙での自民党の公約の一番が、ルールを守るでした。総理、財政法、守りませんか。
 本補正予算案には、緊要と到底言えない予算が多く盛り込まれています。例えば、地方創生二・〇、さらには、投資立国及び資産運用立国の実現や防災・減災、国土強靱化対策などの政策は長期的に取り組むべき国家政策であり、本予算の審議で時間を掛けて議論すべきものです。
 石破総理は、さきの衆議院選挙の第一声で、何の根拠も示さないまま、十三兆円を超える補正予算の提出を行うことを明言していました。これこそ今回の補正予算が規模ありきであることの何よりの証拠です。総理、何の根拠でこんな発言をされたんですか。お答えください。
 規模ありきでないと言うなら、今回の補正予算案で掲げられた政策はどのような緊要性があるのか、総理の明確な回答を求めます。
 また、補正予算案には、基金の積み増しなどが多く見られます。立憲民主党は、補正予算における基金の造成や積み増しには、緊要性、財政民主主義、財政規律の要件を満たさないものについてはこれを認めるべきではないと主張しています。
 今回、補正予算で計上された基金について、政府はこの三つの要件を満たしていると考えるのか。とりわけ、複数年度を前提として取り組むべき施策のために造成された宇宙戦略基金のような基金は、これを補正で計上することの合理的根拠は存在しないと考えますが、総理、政府の見解をお示しください。
 立憲民主党は、十一月七日に能登復興・物価高克服のための緊急総合対策を発表しました。緊急対策としたとおり緊要性の高いものだけに絞り、一つに、極めて異例な複合災害への対応として、能登半島の加速的な復旧・復興〇・六兆円、二つに、賃金・所得の底上げで経済再生として、家計への直接支援五・三兆円、三つに、事業を支え、賃上げを促進として、事業者への直接支援一・五兆円、総額七・四兆円の規模としています。
 本年一月に発生した能登半島地震、そして九月に発生した奥能登豪雨への対応こそ、政府が補正予算を通じて緊要性を持って取り組むべき第一のことであると我が党は繰り返し主張してきました。
 ようやくその具体策が補正予算で出てきましたが、遅きに失すると言わざるを得ません。政府はこの間、予備費で対応してきたと主張しますが、復興支援に対して予算として計上し、国会での審議を行い、国全体で復興支援を行うことの意思を明確に示すためにも、予算としてしっかりとした財源を確保するのが被災地に対して真に心を寄せる態度ではないでしょうか。
 地震は元日、豪雨被害は九月の発災です。なぜ今まで補正予算の編成を行ってこなかったのか、総理、政府の見解をお示しください。
 また、政府が補正予算に復興支援として掲げた政策も不十分です。立憲民主党は、被災地の生活再建を第一に考え、本年一月の段階から被災者生活再建支援金の倍増を掲げていますが、なぜ取り入れていただけないのか、総理、お答えください。
 補正予算を通じて政府が真に緊要性を持って、緊要性を持ってなすべき第二のことは、国民生活を苦しめている物価高への対策です。
 政府は物価高対策として住民税非課税世帯向けに三万円の給付を支給するとしていますが、消費支出に占める食費の割合であるエンゲル係数が四十二年ぶりに高水準となるなど、住民税非課税世帯のみならず幅広い層が物価高の影響を受けています。
 なぜ政府は、今回、給付金の対象世帯を極めて限定的とするのか、その理由を、総理、お答えください。
 より幅広い層への支援とすべく、例えば我が党が提案する所得に応じたきめ細かい物価高手当の給付などを通じて幅広い世帯を支えるべきと考えますが、総理の見解をお示しください。
 足下の物価高に対策を講じることは、あくまで応急処置とするべきです。なぜなら、物価高の主たる要因である過度な円安の是正を行わない限り、財政出動を繰り返すことになるからです。
 石破政権は円安に対してどのように向き合っていくのか。アベノミクスは円安誘導を経済政策の基本としていましたが、異次元金融緩和による内外金利差を背景とした円売りなどにより円安が進み、輸入物価高騰などによる物価高が国民生活を苦しめています。
 石破政権は実質経済に見合った為替の水準についてどのように認識しているのか、総理、お答えください。
 円安は自然現象ではありません。様々な要素が複雑に関連し、一国の政府が自由にコントロールできるものではありませんが、要因を丁寧に分析し、必要な対応を行うことが政府の責任です。
 為替相場は各国経済のファンダメンタルズや市場の需給によって決定されるものであるならば、我が国のファンダメンタルズをどうしていくのか、政府の対応が求められます。金融政策も含めた今後の対応について、総理、お答えください。
 令和七年度税制改正について、百三万円の壁が引き上げられる方針が示されましたが、これは実質的には所得減税です。勤労者の手取りが増えるその一方で、政府は防衛増税を予定しており、その実施時期の決定が年内に行われるのか注目が集まっています。減税と増税という相矛盾する政策を同時に掲げることで、減税による経済効果が失われることとなります。
 防衛費四十三兆円の在り方、予算査定の精査を再度行い、真に必要な規模に見直し、防衛増税は撤回するべきと考えますが、総理の認識をお答えください。
 そもそも今回の補正予算では、防衛費において、円安に伴い不足する外貨関連経費として三百八十億円が予算計上されていますが、その詳細が示されていません。
 どのような装備、契約により追加の予算措置が必要になったのか、そして、このことが五年間で四十三兆円とする計画全体にどのような影響が生じるのか、防衛大臣、お答えください。
 これまでの政府答弁にあるように、効率的、効果的契約により円安の影響をのみ込めるとするならば、当初の予算見積りが甘かったということになります。効率的、効果的な契約をやってこなかったということです。
 四十三兆円の計画に収めるため調達する装備を見直すのか、実態に即した対応が必要です。円安が防衛費四十三兆円に及ぼす影響について、根拠のない言い訳ではない、防衛大臣の明確な答弁を求めます。
 今回の補正予算が規模ありきと言われる要因の一つに、会計検査院が指摘する巨額の繰越しが生じている実態があります。
 政府は、昨年度までに繰り越された補正予算の精査をきちんと行った上で今回の補正予算案を提出しているのか。このタイミングでの巨額の補正予算の編成、年度内に使い切れるのか疑問です。繰り越された補正予算の執行状況及びその残額について、財務大臣、お示しください。
 規模ありきで十三・九兆円もの予算を組んだ結果、その財源についても問題が生じています。税収の上振れがあるとはいえ、政府は今回新たに六・六兆円の国債発行を余儀なくされています。
 政府は経済あっての財政と言いますが、我が国財政への信認が失われれば、経済、国民生活にも大きな影響が生じます。国家財政に対する将来不安は、減税政策の効果を打ち消すほどの心理的影響を国民にもたらします。真に効果的な財政出動で国民生活を支えながら、政府は財政に対する安心感を同時に提供するべきです。
 緊迫度を増す国際情勢、トランプ政権が世界経済に与える影響など、先の見通せない今だからこそ、不測の事態に的確に対応、必要に応じた財政出動を行える財政余力を確保しておくことが必要です。財政状況の改善に向けてどのように取り組むのか、総理、お答えください。
 我が党の緊急総合対策では、財源に対する考え方も同時に示しています。新規国債の発行抑制に最大限努めるために、例えば、一億円の壁を解消することで応分の負担を求める税制改革や、日銀が保有するETFの分配金、売却益の活用、基金剰余金の国庫返納等で財源調達することを掲げています。
 私たちの緊急総合対策の総額は七・四兆円であり、本補正予算案に示された税収上振れ分、税外収入、前年度剰余金受入れなどでほぼ賄えるものであり、国債発行を必要としないものです。
 総選挙で示された民意を反映し、国会審議の在り方も変わりました。明日からの予算委員会での審議を通じて、我が党の案も含めて野党の声を聞き、補正予算の組替えを行うべきです。総理の見解を求めます。
 民意に基づき国会が変わることが政治への信頼を取り戻す第一歩です。石破総理の前向きな取組を強く強く求め、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣石破茂君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 121615254X00520241209_004

発言者: 柴愼一

speaker_id: 11483

日付: 2024-12-09

院: 参議院

会議名: 本会議