山花郁夫の発言 (憲法審査会)

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○山花委員 立憲民主党の山花郁夫でございます。
 今、船田幹事から、積み上げてきたものがあるというお話でございますけれども、私どもからすると、視点として欠落しているものがあるのではないかという認識でございます。
 憲法十五条に選挙権についての規定があります。この選挙権というのは、有権者団の構成員としての公務であるとともに、このような公務に参与することを通じて国政に関する自己の意思を表明することができるという個人の主観的権利でもあるといういわゆる二元説が通説的な見解と言っていいでしょう。
 芦部教授も、選挙権が、アメリカの判例、学説流に言えば、表現の自由と密接に関連し、平等権保護条項等によって保障される優越的権利だということであるとされています。この論文は投票価値の平等に関するものではありますけれども、司法審査が行われる場合には厳格な合理性基準によるべきだとされています。
 ところで、視点として落ちているのではないかと思われる点ですけれども、憲法四十五条で、衆議院については解散がなければ任期は四年、四十六条で、参議院については任期は六年で、三年ごとの半数改選と規定されています。
 十五条と四十五条、四十六条を併せて読めば、衆議院については最長で四年以内に、参議院については三年ごとに代表者を選出するということが選挙権の主観的権利の内容となっていると言うことができます。
 選挙困難事態において議員任期を延長するということは、ルールを変更するというだけではなくて、選挙権を行使し得る期間について制限を加えるということになりますから、その意味で、任期延長問題というのは、かつて参考人でここで御意見をいただいた学者の方のお言葉をかりれば、ルールと原理が交錯する問題と言うことができると思います。
 さて、選挙困難事態の具体例として、今、船田委員からは東日本大震災が挙げられました。また、阪神・淡路大震災などが議論されてきましたけれども、この二つのケースで特例法を制定したではないかという議論がございます。
 形式的には、地方の首長だとか議員というのは、この任期は憲法上のものではなくて法律上のもの、地方自治法上のものですから、法律、特例法によったというものですけれども、より重要な点は、首長は当該地方公共団体の有権者から直接公選されるものであること、地方議会議員については一般に大選挙区制度が取られていることなどから、選挙そのものが定数全部にわたってなし得ないという事情であります。
 これに対して、これら二つの震災は、災害としては甚大なものであったということは間違いありませんけれども、地方議会のように、衆議院議員が一人も選出できないというような事態ではないことが、地方選挙の特例の場合とは大きく異なるということが言えます。
 東日本大震災に関しては、先ほどこれは立法事実になるのだという御指摘ですけれども、仮にこのタイミングで総選挙があったとしても、八割強の議員は選出できると試算されておりますところ、このようなケースで任期延長を行うということは、八割強の有権者の選挙権を行使し得る機会を制限する、延期をするということを意味しています。
 選挙の一体性という御指摘もありますが、民主制のプロセスそのものである選挙権の意義であるとか法的性質ということからすると、全部について選挙権行使の機会を停止する、制限するよりも、繰延べ投票などの方法により選挙の時期をずらすということの方が、より制限的でない、他の選び得る手段だと考えられます。
 もっとも、この議論は法律の違憲審査の局面ではありません。立法論であるとか憲法改正論としては、したがって、比例原則だとか比較衡量で考えることが適切なのかもしれません。そうだとしても、一部地域で選挙を行うことが困難であることをもってより多くの地域の選挙権を制限するというのは、比較衡量、比例原則の観点からも明らかにバランスを失していると言わざるを得ないと思われます。
 このようなことから、大規模災害のケースを立法事実として想定することは難しいのではないかと考えられます。
 これに対して、感染症の全国的な蔓延が深刻な事態となった場合というのを想定すると、投票所で密になるであるとか不要不急の外出を控えるなどの状況というのは、これは一部地域だけじゃなくて、日本全国において選挙が困難になるという可能性は、これはゼロではないのかもしれません。
 しかし、これも先般御指摘をさせていただきました。現行の公職選挙法を前提にして議論がされている。つまり、下位の規範である法律の規定を根拠に、上位の規範である憲法の説明をしてしまっているように思われます。すなわち、投票日を定めて、入場券を郵送し、その場所に足を運んで自書で候補者の氏名を記入するというやり方を前提に選挙が実施をできないという結論を出してしまっているのではないかということです。
 憲法の方が言うまでもなく上位の規範ですから、その規範が求めていることが現行法で難しいということであれば、順序としては、公職選挙法の改正などにより憲法の求める価値を実現するのが立法府の役割であると考えます。避難所、避難場所でも投票ができるようにする方法を模索することであるとかインターネット投票などの方法で大規模災害などのときでも公正な選挙が確保できるような仕組みを追求することなどを検討することが、論理的に先行すべきことと考えられます。
 このような手を尽くした上で、いかんともし難い事態があるのだということが確認されて初めて、そのことが立法事実となります。
 その意味で、私どもとしては、現時点では立法事実が確認できないと申し上げて、意見表明といたします。

発言情報

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発言者: 山花郁夫

speaker_id: 324

日付: 2025-03-13

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会