無藤隆の発言 (文部科学委員会)
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○無藤参考人 白梅学園大学の無藤でございます。
今日は、お呼びいただいて、ありがとうございます。
学校教育の課題というのは極めて多様だとは思いますけれども、私は幼児教育を専攻しておりまして、主に幼児教育がどういうような状況にあるのかということを申し上げたいというふうに思います。
お手元に資料配付をお願いいたしましたけれども、それと同じ内容をもう少し短く、十五分ということでお話しさせてください。
幼児教育と今私が呼んでいるのは、幼稚園、保育園、認定こども園の教育をまとめて呼んでおります。近年、その三つを合わせて幼児教育という言い方が定着してまいりました。
現在の幼児教育の体制というのは、おおむね二〇一〇年前後につくられてきたというものであります。もとより、幼児教育は、明治の初めから始まり、幼稚園、明治の終わりぐらいには保育所が始まって、戦後に引き継がれたわけでありますけれども、それらが本当の意味で幼児期の教育として有効かということについては、主に平成期に議論され、最終的に制度としてまとまってきたのが二〇一〇年から二〇一三年ぐらいというふうになるわけです。
特に、二〇一三年においては、内閣府において子ども・子育て会議というものを発足させ、当時の厚生労働省と文部科学省が協力しながら進めております。現在は、こども家庭庁と文部科学省の協力の下で、子ども・子育て支援制度、その中における幼稚園、保育園、こども園とともに、それと別途の形で、私学補助による私立幼稚園というものを併置しながらの体制をつくり、そして、その三つが、根拠法律としては異なっておりますけれども、同様に幼児期の教育を進めるという立場での共通性が非常に高いということで、十数年かけてその共通性を確立してきたというのが現状であります。
その上で、幼児教育の中身につきましては、幼稚園においては幼稚園教育要領、保育所は保育所保育指針、認定こども園は幼保連携型認定こども園教育・保育要領と名前が異なりますけれども、その中身の、いわばガイドラインというものを作ってございます。これは二〇一七年に同時改訂をいたしました。その同時改訂において、幼稚園、保育所、認定こども園の教育というものは基本的には共通であるということを認識し、その趣旨を確立したわけであります。
その後、幼児教育、保育の量的な充実、これは保育所が足りない等々のことで努力してまいりましたけれども、同時に、単に量を拡充するだけでは足りないので、その質を上げていく必要があるということで、その施策を様々に打ってまいりました。
特に文部科学省における施策としては、幼児教育センターを各都道府県につくっていくということが、半ば以上の段階に来ております。そして、幼児教育は、当然子供たちは全て小学校に行くわけですので、小学校教育とのつながりという意味で、架け橋プログラムと呼んでおりますけれども、それを数年前に発足して、現在、それを全国化してございます。それ以外にも、重要なのは、やはり、園で実際に携わる先生方、幼稚園教諭、保育士の皆さんの力量を上げていくことですので、そのための研修の充実を工夫している最中であります。
以上のような形で幼児教育体制をつくってまいりましたけれども、その上で改めて、どういうことが今幼児教育において言えるということになるのか。非常にはっきりしてきたのは、幼児教育、乳幼児期でありますけれども、そこでの教育が人生の土台づくりなんだ、そして、小中高と続く学校教育の基盤なのだということであります。
それについては、極めて多くの国際的な欧米における研究、また続いて日本の国内における研究、また実践が多く二十一世紀に入り出てきて、いわゆるそのエビデンスを通して、幼児期の教育が、その後の人生、また学校教育において不可欠であり、重要であることが分かってきたわけであります。
また同時に、幼児教育のもう一つの特徴は、家庭教育との連動であります。家庭教育というものが、丁寧に、愛情を込めてなされることと並行しながら、そこと手をつなぎながら幼児教育が進められるということが肝腎だということもはっきりしてきたところであり、さらに、三番目といたしましては、その幼児教育の成果が小学校において生かされていくことということが実は極めて肝腎であるということも分かりました。
そのようにして幼児教育というものの望ましさがはっきりしてきましたけれども、では、より具体的な中身は何かということで、国内的にも整備し、また国際的にもそれが議論され、ある程度の方向が見えてきたというのがこの十年と言っていいと思います。その考えは、例えば幼稚園教育要領などに示されておりますけれども、すごく簡潔に言えば、四つほどの特徴を持ちます。
一つは、園の環境を通しての教育だということです。教科書などはないのですけれども、その代わり、園庭や積み木や絵本があるということであります。
二番目は、子供の遊びというものが学習活動の要なんだということであります。幼い子供ほど、楽しいから学ぶということであります。
三番目は、その具体的な中身が保育内容として五つの領域に分けてありますが、それがいわば小学校以上の教科の基、芽生えであるということであります。
そして、そこで、いわゆる保育者、幼稚園教諭、保育士は、直接的にあれこれ指示することは比較的に控えるのでありますけれども、それを、子供たちの活動を援助し、そこから子供たちがいろいろなことを学ぶことを助け、成果を上げていくということが基本になるということです。
そのような考え方は、日本国内のみならず、国際的には、特にOECDを中心とした教育部門がありますけれども、そこにおいて、様々な形で発信されております。その要点というのは、日本と同様でありますけれども、子供の遊びを中心とする教育でなければならないこと、環境あるいは教材を重視すること、とりわけ保育者の研修がその要にあるということであります。
以上がこの十数年の概要をざくっとまとめたものでありますけれども、それを踏まえて現在の課題というものを整理いたしました。羅列して九つというふうに、ちょっと多いのでありますけれども、挙げさせていただきます。
第一は、幼児教育センターに触れましたけれども、それをもっと増やしていくことであります。幼児教育センターというのは、基本的には都道府県などに置かれ、幼稚園、保育所、認定こども園を問わず、その保育の質を上げるための研修の中心的な仕組みであります。
二番目は、これも申し上げた、架け橋プログラムの全国化、普及、そして拡充であります。幼児教育の成果が小学校教育に生きるようにしていくためには、幼児教育とともに小学校教育の中身を変革させていかなければならないというふうに考えております。
三番目は、保育者の研修体制であります。勤務時間の厳しい中、どうやるかの工夫、また、単に偉い先生のお話を聞くということにとどまらず、それをいかに保育の質を具体的によくするために使うかの工夫をこの十年、進めてまいっております。
四番目は、保育の質であります。量的な拡充は相当進みましたので、保育の質を高めていく必要がある。そのための実践的な研究を盛んにやっておりますけれども、同時に、量的に、客観的に保育の質の尺度を構成して、それによってチェックするという試みを進めてまいりました。これは、文部科学省においては国立教育政策研究所が中心になって行っております。
五番目は、保育者が子供たちを保育する場合の人数、いわゆるクラスの人数でありますが、それが余りに多いとやはり難しいので、それを減らしていくという試みで、現在、保育所などにおいては一、二歳児、そして幼稚園などにおいて三、四、五歳の先生一人当たりの子供の数を減らすという試行に入っているところであります。
六番目は、家庭、地域側の困難に応じていくということでありまして、様々ないわゆる格差というものがあることは否定できません。経済的な問題や、あるいは発達的に困難があるお子さんの問題、また、この何年かは外国系のお子さんが増えておりますけれども、そこでは日本語をうまく話せるかどうかの問題が出てまいりますが、それに十分幼児教育側の体制ができているのかという問題が問われると思います。
七番目は、先ほどから申し上げている保育者の皆さんの処遇の改善でありますが、この十数年、先ほどの子ども・子育て会議などの働きにより、著しく処遇が改善されてきましたけれども、なお、例えば、民間企業の平均と比べたときに、そこにまだ到達していないという問題、それと相まって、保育士不足というものがかなり深刻な状況になってきております。
八番目でありますけれども、現在、この数年、少子化が急激に進行しておりますけれども、当然、まずは乳幼児というものは減るわけですが、それによって、特に地方において著しくお子さんが少ない地域が生まれ、そうすると、幼稚園でも保育所でもこども園でも、その数が激減するということになり、統廃合も求められるでありましょうけれども、その中で、なおかつ、保育の質を高く保つにはどう工夫すればいいのかということが大きな課題になってまいりました。
最後に九番目でありますけれども、幼児教育を量的にも拡充するとともに質を上げていく中で、特に私は幼稚園の働きが非常に大きかったというふうに考えております。
幼稚園というものは、明治の初めにできて以来、いろいろな形で発展し、特に戦後、昭和四十年代以降、私立幼稚園が拡充する中でこの保育の質の改善に取り組んできたわけですけれども、その私立幼稚園の働きとともに、全国の国立大学には附属幼稚園がありますが、その附属幼稚園が実践研究を行って、近隣の保育の質の改善に成果を上げてきたこと。さらに、全国の市町村の多くには公立の幼稚園があります。いろいろな事情で今、数は減りつつありますけれども、なおかつ、その地域の幼児教育の質を担保し、更によくしていく上で、公立幼稚園の働きも大きいというふうに考えておりますので、是非、その拡充も課題であるというふうに申し上げて、私の話とさせていただきます。
以上です。ありがとうございました。(拍手)