伊藤仁の発言 (厚生労働委員会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(伊藤仁君) 日本商工会議所専務理事の伊藤でございます。
 法案の審議に際しまして意見を申し述べる機会をいただき、ありがとうございます。特段資料は用意しておりませんが、口頭でやらせていただきます。
 私ども商工会議所は、全国に五百十五か所設立されておりまして、傘下の会員数約百二十五万者が属しております。地域の総合経済団体として、中小企業の活力強化、それから地域経済の活性化という使命に向けて活動を展開しております。
 年金制度につきましては、商工会議所の中で社会保障専門委員会を組織いたしまして、各地からの意見を集約し、昨年十一月には提言として政府にお示ししている次第でございます。また、厚生労働省の年金部会にもその専門委員会から委員を派遣させていただき、我々の意見を申し述べさせていただきました。
 本日は、この法案について、中小企業の、主として中小企業の立場から私どもの考えを申し立てたいと思います。
 まず、我が国、現在、賃上げと投資が牽引する成長型経済の実現というところに向けて官民が協力して取り組んでいるところであります。中小企業におきましても、非常に厳しい人手不足に加えまして物価上昇が続く中で、生産性の向上を含めて価格転嫁を進め、従業員の賃上げの実現に向け懸命に努力をしているところでございます。
 一方で、医療、介護などを含め社会保険料の負担は増加を続けております。現役世代の可処分所得を押し下げ、消費の低迷の原因の一つとも言われております。また、企業の賃上げや将来に向けた成長投資といったところに対する阻害の要因にもなっております。このため、現役世代とそれから中小企業の負担を抑制しつつ、持続可能な社会保障制度を維持していくために改革を進めていく必要があると考えております。
 先ほど中小企業と地方、もうこれが我々の使命と申し上げましたけれども、中小企業は全国の雇用の七割、生み出す付加価値でいいますと約五割強でございます。かつ、三大都市圏を除くいわゆる地方部におきましては、雇用の九割、付加価値の八割近くを中小企業が生んでおります。まさに地域経済の基盤でありますので、社会保障制度の担い手としても極めて重要な存在であると考えております。
 こうした構造の中で、年金制度に関しまして我々が特に注意している点を二点申し上げます。
 一つは、昨今の深刻さを増す人手不足、人材不足。中小企業や地域経済の成長の大変な足かせになってきております。この中で、就労抑制の要因となるような制度は極力なくしていただきたいと考えております。就労抑制の要因から外すというところが一つでございます。
 第二が、中小企業にとってやはり社会保険料の負担も大きな課題の一つであります。業種にもよりますが、小規模な事業者ほど厳しい状況にあります。保険料の負担額が、負担増がですね、経営に与える影響は小さくないというふうに考えております。
 以上の観点に立ちましていろんな要望をさせていただき、今回の改正法案につきましては、全体の方向性については中小企業の現状を踏まえた内容となっておりまして、基本的に賛同する観点から、以下、主要な項目五点について意見を申し上げたいと思います。
 一つ目が、被用者保険の適用拡大でございます。
 年金財政の安定性の確保といった効果、それから適用拡大の趣旨、方向性については十分理解をしております。一方で、適用拡大の対象となる事業所には、先ほど申し上げました保険料の負担に加えまして、保険加入や保険料納付に係る事務負担も発生、増加いたします。中小企業においては専任の総務担当を置くことが難しい事業所も数多くあります。経営にそうした悪影響を与えないような配慮が必要と考えております。
 この観点から、改正案については、事業主が予見性を持って準備することができるよう規模別にスケジュールを明記し、十分な時間を掛けて段階的に拡大するという案になっておりまして、評価しております。今後も、適用拡大によってどのような影響が生じるのか、その状況をきちんとフォローしていただくことが引き続き必要だとは考えております。
 二つ目が、在職老齢年金制度でございます。
 人手不足が深刻化する中で、中小企業においても、長年その企業に貢献された高齢者の方、そうした方に活躍してもらうためにも就業抑制の要因となる制度は極力見直していくべきだと考えております。
 この観点から、改正案のようにまずは基準額を引き上げるべきだと考えております。また、将来的にはこういったものを廃止することを見据えて引き続き検討をお願いしたいと考えております。
 三つ目が、標準報酬月額の引上げでございます。
 負担能力に応じた負担、それから将来の給付の充実、こういった観点から引上げの必要性は理解しております。しかしながら、上限に該当する労働者がいる中小企業にとっては保険料負担の急激な増加はかなりのインパクトがあると考えております。
 この観点から、今回の改正案は、引上げによる影響を最小限に抑えるため予見可能性を高めた上で段階的な引上げを講じていくものとなっており、評価できる内容と考えております。今後も、こうした引上げの効果、中小企業への影響などについて十分検証していくことをお願いしたいと考えております。
 四点目が、基礎年金の底上げ措置についてです。
 基礎年金の水準の低下、これは国民年金にしか入っていない人、また厚生年金に加入していてもその期間が短い被保険者にとっては、老後の貧困化の要因となりかねません。将来世代の不安を軽減するためにも、基礎年金の給付水準の底上げが重要だと考えております。
 マクロ経済スライドの調整期間を短縮することで多くの人々の年金受給額が増加し、足下の受給世代と将来世代との世代間の公平性、これも図れることになると理解しております。調整期間の一致といったちょっと一般的には難しい内容もありますので、政府から国民に対して分かりやすく、かつ納得のいく丁寧な説明をお願いしたいと考えております。
 五つ目は、私的年金制度です。
 人手不足の中で、従業員になるべく長く働いていただきたいというのが現状であります。事業主もモチベーションアップのために企業年金の導入を検討したいのですけれども、事務負担や財政負担等の問題があり、中小企業にとって導入を足踏みしてしまうのが現状であります。
 このような中でも、iDeCo+のように、企業年金の導入が困難な中小企業が従業員の福利厚生を充実させることができる選択肢として重要な制度であると認識しております。積極的な活用を促すためにも、その基となるiDeCoの改正が含まれる本法案に賛同いたします。今後も、私的年金普及拡大に向けた取組の推進をお願いしたいと考えております。
 最後に、今回の法案には盛り込まれなかった今後の検討課題について二点申し上げます。
 第一が、基礎年金拠出期間の延長についてです。
 将来世代の年金給付水準を全体的に底上げをし、制度の安定性を確保するため、基礎年金拠出期間の延長については議論を進めるべきだと考えております。
 第二点が、第三号被保険者制度の見直しについてです。
 今後、更に調査研究を進め、その在り方について検討を行うこととされておりますが、将来的な解消に向け、国民の合意を得る努力、検討を開始すべきではないかというふうに考えております。
 いずれの問題も、現在の制度の全体像をできるだけ分かりやすく国民に示していただき、議論を重ねていくことが重要と考えております。
 意見については以上でございます。
 将来世代のため、今後も年金制度改革を進めていくことは非常に重要だと考えております。国家百年の計を持って骨太の姿勢で改革に臨んでいただきたいと考えております。年金制度の全体像を国民誰もが理解できるように可視化し、その上で制度改革の大筋を描き、どのような制度としていくのか、本質的な議論を行っていただくよう改めてお願いいたします。
 以上でございます。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121714260X02020250611_007

発言者: 伊藤仁

speaker_id: 23274

日付: 2025-06-11

院: 参議院

会議名: 厚生労働委員会