加藤孝明の発言 (災害対策特別委員会)

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○参考人(加藤孝明君) よろしくお願いいたします。東京大学の加藤と申します。
 今、私、生産技術研究所って理科系の研究所とそれから社会科学研究所という文科系の研究所、両方に所属しております。恐らく、大学関係の研究所の所属の方で文系、理系、両方所属しているというのはきっと私一人かなというふうに思っております。
 まず、簡単に自己紹介した上で本題に入ってまいりたいと思います。
 まず、専門は、社会的には防災の専門家というふうに言われているんですけれども、本来の分野は都市計画それから地域づくりを専門にしております。ですから、現場に出て、住民の方とか行政の方と一緒になって総合的に地域づくりをしていくと。ただし、災害からの安全という防災を主軸にしながら、総合的により良い地域をつくっていくと、そういうスタンスでこれまで実践活動それから研究活動をしてきております。
 そういった背景ですので、専門家としての特徴は、社会をシステムとして捉えると。個々の要素技術を見るのではなくて、それも理解した上で、社会全体をシステムとして捉えて見ていく、あるいは総合化していく技術を開発していると、そういうスタンスで取り組んでおります。
 それから、防災のフェーズ様々あります。事前の予防から復旧復興までいろんな段階があるんですけれども、それについても全体をトータルに捉えた上で物事を考えていると。
 加えて、今説明させていただいたように、やっぱり現場からのフィードバックというのを大学の研究者として非常に重要視しておりまして、ここ一週間だと、大学の研究室の椅子に座っていたのは多分数時間ぐらいで、大半は外でいろいろ活動しながら、そこから持ち帰ったものを机上で理論化していると。そういうキャラクターです。
 国などの委員会については、ここに書いてあるとおり、強靱化とか防災庁の設置含めて、防災関係の委員会で議論をさせていただいております。
 今日のプレゼンの構成なんですが、この一、二、三プラス今後の方向性ということでお話しさせていただきたいと思います。
 今日何をお話ししようかなと思って考えてきたんですが、今日は、あえて俯瞰的、それから抽象的な方に振って、割とベーシックな話をさせていただければなというふうに思っております。
 じゃ、それでは、まず一点目です。一つ目が、問題の構造を俯瞰的に理解するということで説明させていただきたいと思います。
 右側のこの図を見ていただきたいと思います。このA3のこれですね、A3の右側の図を見ていただきたいと思います。今の状況というのは一〇〇%、縦軸、機能があって、災害が起こるとその機能がぐっと下がっていくと。ここから災害のフェーズが始まるんですが、急性期というものと、その後、復旧復興に入っていくと、そういう時間軸になっています。
 今の日本社会を考えると、もうデフォルトは一番下のラインです。災害を受けます、で、急性期においては更に被害が拡大して、災害関連死を含む様々な不幸が生じてしまうと。この後、復旧復興フェーズに入るんですが、今の日本社会、特に地方を見ると、今後を考えると、もう復興できないというのがデフォルトになるのではなかろうかと。向こう二十年見ると、人口が半減する地域というのは決して珍しくはないわけですね。そういう状況の中で、復興ができないんだというのをデフォルトとして問題を捉えていく必要があると思っています。
 問題は、根幹的な問題は大きく二つあると思っています。一つは、急性期において災害関連死を含む被害が拡大してしまうと。これを何としてでも防がなければいけないと。二つ目が、復興できない状況に陥ると。これも何としても防がなければいけないと。この大きな二つの根幹的な問題を見据えてこれからの災害対策というものをきちんと考えていく必要があるんだというふうに思っています。
 対策の柱は三本柱だというふうに思っています。まず一つ目は、急性期を乗り切って、かつ復興可能なレベルに被害を抑えるという黒丸の一番の対策が一つ目。そして二つ目が、急性期を乗り切る、要するに急性期に被害を拡大させないというのが二本目の柱になると。そして三番目が、適切かつ円滑かつ速やかな復旧復興を実現させていこうと。
 この①と②をやると、この緑の水平のラインに行くわけですね。この後、復旧復興のフェーズで右肩上がりの点線に入っていくわけなんですが、その途中でいろんなつまずきがあって、それに引っかかってしまうとまた復興できないという右肩下がりのフェーズに入ってしまうと。
 なので、復旧復興を実現させるためには、まず、その障害となるものをあらかじめ事前に取り除いておく必要があるんだと。加えて、復旧復興を加速化、迅速化させる必要があるということで、赤の右肩上がりの点線を緑の右肩上がりの点線に引き上げていく必要があるんだと。
 最後三番目が、復興で何を目指すのかということが非常に重要になってくるだろうと。今、向こう二十年で人口が半減するような地域社会をこれ元に戻したとしても、これ、じり貧状態のものをまたじり貧状態に戻すわけですので、また未来が開けなくなってしまうと。そういうわけで、適切な復興像を目指していくということが非常に重要になってくる。これについても、事後ではなくて、やっぱり事前にきちんと考えておくということが必要だというふうに思っています。
 ですから、この三本柱を核に進めていく必要があるんだということです。
 二つ目の話題に移らさせていただきたいと思います。二つ目は、今の三本柱の二つ目です。急性期を乗り切るための必要な視点という話題に入っていきたいと思います。
 これ、できれば難なく乗り切りたいと、乗り切ることを目標にすべきだというふうに思っています。この急性期の問題の構造は何かということなんですけど、これは、必要とされる対応需要に対して、対応するための資源、人、物、機能が桁外れに少ないという、このアンバランスが根本的な問題であるということです。
 右側に写真が写っています。この写真は、災害時のこれ避難所の写真ではなくて、これ娘が小学校六年生のときの運動会のお昼御飯の様子なんですね。実は、この日は非常に日差しの強い日で、運動場で御飯食べ始めたんですけど、余りにも暑かったので体育館で食べようかといって出遅れて行ったら、既にこんな状態になっていたと。つまり、小学生の家族の六、七割が体育館に入るとこんな状態になるわけですね。ですから、被災地で避難したい人を公共施設に全て入れるなんということは非常に難しいということなわけです。
 災害を難なく乗り越えていくためには、この需要と資源のアンバランスをなるべくバランスできるような方向に動かしていくということが不可欠だというふうに思っています。これ、仮に需要を小さくすることが難しいとするならば、資源を大きくするしかないと。それがあるべき対策の方向性というところに書かれています。
 これ、二つあります。一つは対応資源を最大化していくと、もう一つが持てるリソースを最大限活用していくと、これに尽きるかなと思っています。
 まず、対応資源の最大化ということなんですけど、事前に地域社会の中に対応資源を整備して拡充しておくということが非常に重要かなというふうに思っています。足りないものを被災した後、外から持ってくるのではなくて、できる限り地域の中でそれをつくり上げていくということが重要だというふうに思っています。それから、被災後、外から対応資源をきちんと持ってくるということも必要であるというふうに思っています。だから、この二つで対応資源を増やしていく必要があるんだということです。
 それ実現に向けてということなんですけど、ここでやっぱり頭に置いておかなければいけないことは、公の資源だけで何とかするということにはもはや大きな限界があるんだと。なので、発想を柔軟化、転換していく必要があるというふうに思っています。
 この公の資源の少なさというのは、これ最近僕が使っている説明は、地震が起きて、けがしたら救急車呼べばいいというふうに思うわけなんですけど、東京の場合、東京消防庁の救急車って三百数十台、仮に三百五十台だとしましょう、三百五十台と。一人患者さんを、傷病者を病院に連れていくのに大体二時間ぐらい掛かるんですね。そうすると、発災十二時間で一台の救急車で六人運べると。仮に三百五十台だとすると、三百五十掛ける六をすると二千百人なんですね。一方で、東京都の地震被害想定の発生する負傷者数を見ると九万人なんですね、九万人。三百五十掛ける六の二千百人ですので、ある意味抽せんで当たった二千百人が救急車に乗れるだけと。つまり、頑張ればできるという数字ではないということをやっぱりちゃんと頭に置いておく必要があるだろうと。
 そういう意味では、未利用資源をやっぱりもっともっとしっかり発掘して、それを活用していくということを何か位置付ける必要があるだろうというふうに思っています。
 その方向性として二つあって、一つは、被災地域内にある災害時遊休施設と僕は呼んでいるんですけれども、それを社会的に活用していこうと。この災害時遊休施設というのは、災害時に本来目的で利用する必要のない民間の施設や設備、これ多分いろいろ探せばあると思います。例えば、スポーツクラブの施設なんかもそうだろうし、分かりやすい例で言うとパチンコ屋さんなんかももしかしたらそうかもしれないと。要するに、災害時に使わなくてよい施設を活用していくと。
 それから、一方で、被災地外の民間リソースも最大限使っていこうと。これも様々あります。例えば、警備業務の従業者数って五十六万人もいると。これ、全国の警察官の数よりも多分多いだろうと。被災していない地域のセントラルキッチンや物流システムもあるだろうと。そういったものを総動員することで外のリソースを被災地に生かしていくと。そう考えていくと、やっぱり新たな官民連携の形というものも今後模索していかなければいけないかなというふうに思っています。
 加えて、今度は持てるリソースの最大活用ということになります。これ、リソースはあるけど使えていないものというのが実はたくさんあるかなというふうに思っています。
 まず一つは、いろんなリソースとリソースの間に隙間があると。その隙間をつないで全体最適を図っていくという視点が非常に重要かなと思っています。その隙間とは、これ縦割りの隙間、それから国、都道府県、市町村の隙間、それから官民などのセクター間の隙間、様々な隙間があると。これを上手につないでいく機能を強化する必要があるし、全体像を俯瞰する機能、そういったものを今後強化していく必要があるだろうということです。
 そして、次が対応の効率化。これ、ある種のやっぱり簡便化と柔軟化のようなものがもう必要かなというふうに思っています。ここでは二つ挙げています。
 一つは、マニュアル主義からミッション主義へと。マニュアルに従って動くのではなくて、今この目標を達成しなければいけないというものを中心にして、それを何としてもやり遂げるというような対応の仕方にやっぱり転換していくことが重要かなというふうに思っています。
 それから、ブリコラージュという言葉があります、エンジニアリングからブリコラージュ。これは物づくりの一つの方法なんですが、エンジニアリングというのは、工学的な知見に基づいて設計図を書いて、いろんな道具といろんな材料を集めてきて組み立てていくことがエンジニアリングなんですが、ブリコラージュは、未開の文化の土地での物づくりのようなもので、要は、何かしたいと思ったときにその辺にあるものを上手に集めて使いこなしていくと、そういう対応の仕方であると。今の災害対応というのは基本、エンジニアリング的な方法なんですが、ブリコラージュ的な方法と上手に組み合わせることで逆に効率性が高まっていくのではないかなというふうに思っています。
 ちょっと時間来ちゃいましたけど、あと二分ぐらいで終わらせたいと思います。
 そして、三番目です。この復旧復興を実現するための事前の準備という話なんですね。
 今、国土交通省の資料を見ると、まだこの復興のための事前の準備をしている自治体というのは非常に多くはないと、まだやっていないところがまだまだ散見される状態です。この復興の事前準備というのは、そもそもやって当たり前の対策であるという理解をする必要があると思っています。今、全国見渡すと、備蓄物資を買っていない自治体というのはもう皆無であると。それは、被災して被害を受けると大変なので、事前に物資を買っておきましょうと。これ、同じです。被災して復旧復興しなければいけないので、そこで困るといけないから復興のための事前準備をしていくんだと。ですから、この復興の事前準備の普及促進、拡充というものを今後していく必要があるだろうというふうに強く感じます。
 対して、それをするに当たって、僕は二つの視点が重要かなと思っています。それは、被災地という地域の復興と、それから被災者という人の復興、これ両方同時にバランスよく考えていくことが重要だというふうに思っております。
 そして、最後、今後に向けてということで、今回の法改正含めてですけれども、能登半島とか熊本地震とか、それぐらいの災害を念頭に置いた改正かなというふうに思っています。今後起こり得る南海トラフあるいは首都直下地震、そういった超大規模災害へ備えるためには、別モードの検討が僕は必要かなというふうに思っています。
 例えば、南海トラフですと、能登半島地震のこれ二桁ぐらい違う規模の被害が出る。そうすると、必要とされる支援のニーズに対して、全国の支援能力を集めたとしても対応できない可能性があると。そうすると、ある種の我慢のシェアが必要になるということが想定されます。そうなると、その場合、災害時のシビルミニマムをこれ切り下げる必要が出てくるかもしれないと。切り下げて設定した上で、それに対して社会的な合意を得ていく必要があるかもしれないと。その上で、全ての人がシビルミニマム以上の水準で災害をしのげる、そういう状況をつくっていくことが非常に重要だというふうに思っています。
 ちょっと残り説明し切れないので、時間になりましたので、あとは質疑の中で補足説明させていただければというふうに思います。
 以上で終了いたします。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 加藤孝明

speaker_id: 26288

日付: 2025-05-09

院: 参議院

会議名: 災害対策特別委員会