井村辰二郎の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(井村辰二郎君) 公益社団法人日本農業法人協会の井村と申します。
 本日は貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、石川県金沢市周辺と奥能登の八つの市町で広域に有機農業、環境保全型農業を営んでおります。
 石川県農業法人協会会長も拝命しておりまして、昨年一月の能登地震、九月の豪雨災害、二回の激甚災害から仲間とともに農業復興を目指しております。国や全国の自治体からは、その際、多大な支援をいただき、本当に感謝申し上げます。
 しかしながら、四月に石川県発表の今年度の水稲作付け予想面積は、震災年の昨年より更に百ヘクタール減る千七百ヘクタールの作付けの見込みとなっております。つまり、震災前の二千八百ヘクタールから千百ヘクタール減る見込みとなっております。思ったような農業の復興復旧は進んでおりません。是非、今後も引き続き御支援賜りますよう、この場を借りて皆様にお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いします。
 さて、公益社団法人日本農業法人協会は、我が国農業経営体の先駆者たる全国約二千百社の農業法人などを会員とする団体であり、一九九九年の設立以来、都道府県農業法人協会組織を始め関係各位と連携し、農業法人の経営確立、発展のための提案、提言、情報提供等の活動を行っております。
 また、私自身も農業者であり、株式会社金沢大地、アジア農業株式会社の代表取締役として、千年産業を目指してという経営理念と、石川県で環境保全型農業を営んでおります。加えて、日本農業法人協会の副会長として政策提言委員長を拝命しており、適正な価格形成に関する協議会のメンバーとして食料システム法案の検討に参画してまいりました。
 本日は、農業者側として、農業現場の課題も踏まえながらお話をさせていただこうと思います。
 法人協会の把握する課題と法案の内容です。
 日本農業法人協会では、会員を対象に毎年調査を実施し、農業法人白書として取りまとめております。二〇二四年の農業法人白書では、現在抱えている経営課題は、資材コストが五九・一%と最多となっているほか、経営リスクについても、生産コストの上昇が七五・七%と第一位となっており、これらのコストを価格に転嫁していくことが経営の課題となっております。
 また、二〇二二年には、農業生産現場におけるコスト高騰による農業経営への影響を把握するため、生産者である会員に対し、農業におけるコスト高騰緊急アンケートを行っております。その調査の結果、日頃のコミュニケーションによって価格転嫁できている会員もいる一方で、八八・九%の会員はコスト上昇分を一〇〇%転嫁できていないと回答しています。転嫁できていない会員からは、転嫁できない理由として、交渉を求めましたがその交渉すら受けてもらえなかった、あるいは、交渉したが一方的に断られた、実需サイドのバイイングパワーが強いと感じるなど、様々な意見が寄せられています。
 適正な価格の形成についての会員企業から具体的な声としては、例えば、低価格の取引を要望する量販店を含む小売店が、取引条件に応じなければ取引を中止すると言われるなど、量販店を始め小売店の都合による値下げ要請により値上げ交渉が困難だったという声です。
 また、単に価格の交渉に限らず、不合理な商習慣を押し付けられているという声もございます。例えば、野菜を生産しているある農業法人は、店舗展開、物流センターを構える小売店に野菜を販売しているところ、小売店は物流センターへの一括納入による保管、仕分、配送のコストの抑制を理由に納入者、生産者がセンターフィーを負担することを条件としているといったことがありました。本来、センターフィーは生産者と小売店が折半するべきところ、立場の弱い農業者に、この取引条件をのまざるを得なかったようです。
 食料システム法案では、コストなどの取引条件を示して協議の申出があった場合には誠実に協議をする、不合理な商習慣の改善など持続的な供給に資する取組の提案があった場合には検討、協力することが事業者の努力義務として定められています。その上で、必要な場合には農林水産大臣による指導、助言や、勧告、公表することとされています。
 売手である農業者は取引の交渉において長らく弱い立場におりました。この法案は、農業者が食料を安定的に国民に供給するためにも必要なものであり、大変画期的なものだと考えております。
 また、アンケート調査においては、交渉するに当たり自分たちが客観的な数字やエビデンスを用意できなかったという反省の声もあります。これについては、我々農業者も、自ら農業生産に要するコストを把握しなければならないと考えております。農業者側も、生産だけでよいという時代ではないことを認識して、販売先と対等な立場で交渉し、計画的な生産、販売をしていかなければなりません。コストの把握は、世界で戦える農業経営のためにも必要なことであると考えております。
 食料システム法案では認定団体がコスト指標を作成することとなっており、これにより、農業者は自らのコストを把握しつつ、コスト指標を活用しながら農産物の販売に取り組んでいけると考えております。法案の運用に当たっては、コスト指標が農業者にとっても分かりやすく活用しやすいものとなることを期待しています。
 我々農業者が持続可能な生産を続けるためには、再生産できる価格となることが必要です。私たちは、たくさんの従業員を抱えていることから、持続可能な経営を通じて、従業員の賃上げもしながら、適正な価格で消費者の皆様に食料を提供したいと決意しております。
 適正な価格での供給を進めるためには、消費者の御理解も重要です。日本農業法人協会では、農業団体、外食団体及び大学などとの連携の下、国民や子供たちに農業の魅力と大切さを発信するための体験型イベント、ファーマーズ&キッズフェスタを主催し、継続的に食農、食育活動に取り組んでおります。
 政府におかれましては、法律の運用と併せて、国内の食料生産の拡大の重要性を広く国民に周知し、理解してもらい、国産農畜産物を自発的かつ積極的に選択、消費してもらえるための取組に努力いただきたいと考えております。
 計画制度です。
 先ほど御紹介しましたとおり、私は石川県で環境保全農業を営んでおります。持続可能性があって生物多様性にも資するような農業がしたく、農業は千年後も持続する産業でなければならないという理念を持って取り組んでおります。
 食料システム法案の正式名称には、食品等の持続可能な供給を実現するためという文字が入っております。持続可能な食料システムを構築するには環境保全の取組などを進めていかなければなりませんが、それは、生産者のみではなく、消費者につながる形で取り組む必要があります。
 この法案は大きく二つの柱となっており、先ほどお話しした取引の適正化のほかに、食品等の持続的な供給や提供を実現するための食品産業の事業活動への支援も盛り込まれております。
 私自身も食品産業としての面も持っております。具体的には、農業者との連携など安定的な取引確立、経費の削減など流通の合理化、温室効果ガスの削減など環境負荷低減、持続可能な食品などの消費者への情報伝達の四つとなっています。
 消費者への持続的な食料の供給を進めていくには、生産者のみではなく、間に入っていただく加工、製造、流通、小売が持続的な食料を供給するという共通の目的の下、一体となって取り組んでいくことが必要です。このため、食品産業の皆様に向けた支援策は食料システムの一員である農業者としても重要なものであると考えております。生産者サイドも、実需、食品産業と手を取りながら、食料の持続的な供給に取り組んでまいりたいと考えています。
 最後に、農林水産省の資料によると、趨勢ベースでは農業経営体が二〇二〇年の百八万経営体から二〇三〇年には五十四万体まで半減し、経営規模の拡大がない場合では二〇二〇年と比べて約三割の農地が利用されなくなるおそれがあるとの予測が示されております。我が国農業は、担い手の確保や農地の持続において存在の危機にあると私自身認識しております。食料システム法案は、我が国農業を一層発展させ、農業が若者の将来就きたい職業の第一位となるような、そうなるためには必要なものであると考えております。
 以上、簡単ではございますが、私からの意見陳述とさせていただきます。
 どうもありがとうございます。

発言情報

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発言者: 井村辰二郎

speaker_id: 20787

日付: 2025-06-05

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会