浅倉むつ子の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○参考人(浅倉むつ子君) 浅倉と申します。よろしくお願いいたします。
 私、男女賃金格差の解消と同一価値労働同一賃金という少し小難しいテーマを選んでしまいましたので、今ちょっと後悔をしておりますが、気を取り直して報告させていただきます。
 ページの二ページなんですが、一番目は男女賃金格差の実態です。
 ①で、男女間の賃金格差は、男性一〇〇としたときに、女性は七四・八と言われております。ただ、この中には非正規のパート労働者が入っておりませんので、②で申し上げているんですが、男女別ではない正規、非正規の賃金格差、時給で見てみますと、正規の労働者を一〇〇としたときに、パートは六九・一になっております。③で、非正規労働者の割合を見ますと、男性は二二・五%で女性は五三・二%なものですから、まあ女性が圧倒的に非正規です。そして、④で言っておりますが、女性たちの実感としては、やはりこの女性が男性の五五・五でしかないという、この平均給与の格差というのがかなり実感として捉えているところだと思います。
 二番目に参りますが、現行の法規定を見ますと、労働基準法四条は、御存じのように、賃金に関する性差別を禁止しております。ただし、同一価値労働同一賃金原則とは言っておりません。
 次の四角ですが、労働基準法というのは罰則付きの強行規定で、労働基準監督官が行政指導を行いまして、悪質と判断する場合には刑罰を科するために送検をいたします。ただ、この送検件数というのは非常に少なくて、年間に数件あるかないかだと思われます。また、監督官は未払賃金を徴収はいたしませんので、未払の賃金を求めたいとなると、労働者自身が民事訴訟を提起するということになり、かなりの負担があると思います。
 このように見てくると、立法上は男女賃金格差の救済というのがなかなか難しいかなという実態にございます。
 大きい三番目ですが、国連の女性差別撤廃委員会が昨年十月に第六回目の対日審査を行いました。二〇二四年十月三十日にはそこから総括所見という文書が出ておりますが、そのパラグラフの三十九というところでは、同一価値労働同一賃金の原則の実施が不十分であるということが留意されております。
 次のページに参りまして、ページ三ですが、そのパラグラフ四十というところでは、(c)で、ジェンダー賃金格差を縮小してなくすためには同一価値労働同一賃金原則を有効に実施することと言われておりまして、その二番目ですが、非差別的かつ主観的でない職務分類、職務評価方法を適用しなさいということが勧告されております。
 さて、四番目ですが、それでは、同一価値労働同一賃金原則とそれから職務評価というものをどのように考えたらいいのかということについて触れたいと思います。
 一つ目は、一九五一年のILOの百号条約でございます。ただし、この百号条約は同一価値労働についての男女労働者への同一報酬に関する原則をうたっておりますけれども、ただ、同一価値労働の明確な定義はこの条約の中にあるわけではありません。
 ILOは、その下に行きますと、ただ、二〇〇八年に採用すべき職務評価のガイドブックというものを出版しております。これによりますと、労働をですね、職務を、二つの異なる職務を、価値を比較しなさいということを言っておりまして、そのためには職務評価が必要であると言っておりまして、その方法の中には、いろいろあるんですけれども、得点要素法というものが最適の方法であると言っております。
 得点要素法についてちょっと説明をしていないので申し訳なかったんですが、七ページのちょっと資料に飛んで見ていただきたいのですが、これは資料ですので後ほどは御説明できないんですが、私どもがちょっと実施した職務評価の中のやり方を示しておりますが、ステップ三というところを見ていただくと、職務評価の四大ファクターと出てまいります。職務評価の四大ファクターというのは、知識・技能、それから負担、責任、労働環境ですね、この四つの大きなファクターを使って職務を分析し、点数評価をする、これが得点要素法というものです。
 戻っていただきまして、三ページですね、に戻っていただきまして、下から十行目ぐらいの(2)というところなんですが、性に中立的な職務評価制度というものはどういうものかということなのですけれども、それが得点要素法であるというふうに言われております。
 ただ、それをいきなり日本に持ってくる場合には、日本的な特殊性というのがありまして、その下に書いてありますが、正規、非正規格差というのが日本の場合は非常に大きいものですから、そもそも同一価値労働同一賃金原則というのは男女間の賃金格差について言われているものなのですけれども、日本の場合には、この正規、非正規格差というものもやはり触れないとなかなか格差が把握できないと考えております。
 次のページです。四ページになります。
 私どもが日本の企業の中で実際に得点要素法というものを使いまして職務評価を実施した事例というのが幾つかあります。それを御紹介しているのが一番上に①、②とあるものなんですが、そのうちの②というのが二〇二二年に出版した本の中で御紹介しているものです。大手家電量販店の販売職というのが男性が主に就いている職種です。それから、レジカウンター職というのが女性が主に就いている職種です。その中にはパート、正社員、契約社員というのが混在しております。これをどのようにして分析したかというのが、先ほど御覧いただいた後ろの方にあります資料一なんですけれども、それは後で御覧いただければと思います。
 そこで、大きな五番目ですが、同一価値労働同一賃金原則をそれでは実施するための法制度というのはどのようなものがあるだろうかというふうに考えてみたいと考えております。
 まず、日本はこの原則を実施していないという批判を何度も何度も国際機関から繰り返し言われております。一九六七年には日本はILO百号条約を批准いたしましたけれども、批准した際に、余りこの原則のことを深刻に捉えていなかったものですから、法改正はありませんでした。その後、ILOの条約勧告適用専門家委員会は、繰り返しになりますけれども、この条約の原則を日本は十分に反映していないというふうに指摘しております。この対応を日本は迫られているのではないかと考えています。
 ただし、これをいきなり日本に導入するというのも非常に難しくて、この原則は日本になじまないという意見も当然あります。なぜかといいますと、欧米では基本的に職務給というものが確立しておりまして、法制度の中にこの同一価値労働同一賃金原則を導入するというのは当然のことだというふうに理解されておりますけれども、日本の場合は、御存じのように、職能給制度が大企業では主にありますので、なかなかこれを実現させる、同一価値労働同一賃金原則というのを実現させるのは困難だという考え方を取る研究者も多いと思います。
 私たちは、私たちといいますか、私は、確かにこの原則というのは職務の内容と格付に応じた職務給制度というのが採用されている国で取られてきた原則であるというふうには考えますけれども、ただ、これはやはり日本においても導入されるべき原則だと考えております。自然に委ねていては日本では実現しないからこそ、立法の中にこれを導入して、何とかどのようにしたら実現できるだろうかと知恵を絞るべきであるというふうに考えています。
 基本給の在り方というのは様々で、実はパート・有期労働法、それから同一労働同一賃金ガイドラインというのは今現在厚労省も取っている政策ですけれども、この中でも厚労省は、基本給の在り方を法的に強制することはできない、それから、職務給制度を法的に義務付けるのではないというふうに繰り返し述べつつ、しかし、どのような形態の賃金制度とするかは基本的に労使の決定に委ねるけれどもという前提を置きながら、この有期労働法というものを運用していると思います。
 ただし、私は、男女間の賃金差別とか、それから正規、非正規間の賃金差別をめぐる個別紛争の事案の中で、その解決手法として同一価値労働同一賃金原則を実施していくということが極めて重要ではないかと考えております。なぜなら、この原則が基準とするのはあくまでも労働、それから職務なものですから、この性と雇用形態に中立的な職務分析や職務評価システムを紛争解決の手法の中に組み込むことによって、日本でも公正な解決方法が実現するのではないかと考えております。
 さて、五ページ目に参ります。
 以下、二つのことを提案させていただきたいと思っております。
 (3)と(4)というのがそれに当たるのですけれども、一つは、個別的な紛争解決の事案を解決する法制度としての同一価値労働同一賃金原則というものです。これを盛り込むためには、同一価値労働同一賃金原則を明文化する、まずは立法の中に明文化するということが必要だと考えております。
 例えば、労働契約法の中にこのように書くというのも一つの仕方ですし、それから、労働基準法四条というのを改正して、労働基準法四条の中に書き込むというのも一つのやり方だと考えております。実は、韓国の法制度もまさに労働基準法四条に当たる法律を改定して、後ろの方に資料二として載せておきましたけれども、そのような条文化をして、この問題を解決しております。
 それから、その下の②では、やり方としてはもう一つ、個別紛争事案の解決制度の中に職務評価能力を持つ独立専門家という方を置いて、報告書を依頼できる仕組みというのを導入するということもやり方だと思っております。これは、イギリスの制度を参考にした提案でございます。イギリスではこのようなやり方でこれを運用しております。
 それから、③は、パート・有期労働法を改正して、一案ですけれども、基本給については、合理的と認められない相違の有無は、客観的で公平な職務評価を用いて判断されなければならないとここに書き込むというのも手だと思います。
 実は、現在、厚労省も、パート・有期労働法の下に、基本給に関する不合理な待遇差を解消する一つの方法として職務評価の手法というものを紹介しておられます。職務評価を用いた基本給の点検・検討マニュアルというものです。これは、少し先ほど御紹介した国際的な基準に照らすと、私の考えからいえば修正が必要だと思いますが、しかし、基本的にはこの国際的な評価項目を運用している考え方に通ずるものだと考えております。
 さて、四番目ですが、もう一つの提案になりますが、こちらの方は賃金格差是正のプロアクティブモデルというものです。個別救済の申立てをして、自分で格差賃金、差別賃金を取り戻すということは非常に個人が負担になりますので、その効果というのはしかも本人に及ぶだけでありまして、職場全体の賃金格差解消にはなっておりません。
 そこで、今の各国の法制度のトレンドとしては、一定規模以上の事業主に賃金格差の是正を義務付けるというプロアクティブなモデルというものを導入していこうというのがヨーロッパなどを中心に行われている立法政策です。典型的には、最初に取り上げたのはカナダのオンタリオ州のペイエクイティー法というものですが、こちらについては後掲の資料三に少しだけ載せておきましたので、後ほど御参考いただきたいと思います。最近では、イギリスの二〇一〇年平等法、またドイツ、それからフランス、またEUの二〇二三年の賃金透明化指令というものも出ております。
 プロアクティブモデルの一番の特色というのは、個人の申立てを待たずに事業主が一定の作為をするというところにありまして、また、効果は職場全体に及ぶというものでございます。
 ここまでお話しすると、御存じだと思いますが、日本も二〇二二年に女性活躍推進法の省令と指針を改正しまして、三百一人以上の事業主に男女間の賃金の差異の状況把握と公表を義務化しております。これが一種のプロアクティブなシステムであるということが言えると思います。
 ただし、日本の場合には幾つかまだ限界がありまして、賃金の差異というものが、全労働者の中の男女比、それから正規労働者の中の男女比、それから非正規労働者の中の男女比として示されることになっておりまして、これではなかなか格差の実態が見えにくい状態です。
 なぜかといいますと、賃金の格差は、最高位にあるのが恐らく正社員の男性であり、最低位にあるのが非正規の女性なんですけれども、その格差が比率として示されて初めて賃金の格差が認識できるのですけれども、少なくとも非正規労働者の中での男女比を比較しても余り実態の賃金格差には理解が進まないと考えております。そこがちょっとポイントです。
 それから二番目は、男女の賃金の差異の縮小というものが行動計画で目標化されるべき項目にはなっておりませんので、縮小がなかなか難しいだろうと、現状のままでは。また、③は、行動計画の実現が努力義務にすぎず、モニタリングの仕組みがないという問題点がございます。
 そこで、最後のページですけれども、より国際基準に沿ったプロアクティブモデルを提案するということが、一つの賃金格差の縮小のポイントかと考えます。
 第一に、事業主が、男女、それから正規、非正規の賃金格差の状況把握義務を負って、その場合に、やはり男性の多い職、男性職と、それから女性の多い職、女性職とを職務評価の手法を使って比較するということをやるべきではないかと思っております。で、格差がある場合には、その正当化理由の有無を確認してはどうかと考えます。
 ②に、その正当化理由がない場合には、賃金格差を調整する義務を負うというふうにしてはどうかということです。カナダのオンタリオ州などではそのようにしております。
 それから、③では、一定以上の規模の事業主が賃金格差調整行動計画の策定義務を負うとして、それは一挙にやるのではなくて、少しずつ賃金格差を調整していくというプログラムを組むということです。
 ④は、その行動計画に沿って格差調整を実施していく。それが実現したか否かというときに、企業内の労使委員会というものがモニタリングしていく。そのような仕組みを取っていきますと、かなり日本の男女賃金格差の縮小に有益な立法政策になるのではないかというふうに考えております。
 私の報告は以上です。どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 浅倉むつ子

speaker_id: 32140

日付: 2025-02-05

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会