今福章二の発言 (法務委員会)

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○今福参考人 皆様、おはようございます。
 本日は、このような名立たる国会議員の先生方の前で発表の機会をいただきましたことを心より御礼申し上げます。
 私は、長らく更生保護行政に携わってまいりましたが、現在では、保護司を始め民間の立場から、犯罪をした者などの社会復帰を支援する活動を行っており、その傍ら、幾つかの大学で学生の指導に当たっております。本日は、そのような立場から、昨今の矯正、更生保護行政に関する諸課題について、幾つかに絞ってお話をさせていただきたいと思います。
 最初に、明治四十年の刑法制定以来、初めての刑罰の種類変更として新たに拘禁刑が創設され、本年六月一日から施行されました。拘禁刑に処せられた者に対し、改善更生と再犯防止のために必要な作業を行わせ、又は必要な指導を行うことが可能となり、円滑な社会復帰が目指されています。現行の刑事収容施設法の下でこれまで処遇改善に努めてこられた矯正の現場職員の皆様の御努力を更に前に推し進める意義が認められます。それらを絵に描いた餅としないよう、理念の実現に向けて引き続き処遇内容を見直し、十分な実施体制を確立すること、そして、処遇人材の育成確保策を更に充実していっていただきたいと思います。
 特に、個々の特性に応じた処遇を効果的に行うため、高齢者や障害者の矯正処遇課程を新設したり、改善指導に対話の手法を取り入れるなど、様々な取組が始まっております。この充実とともに重要なのは、在所中から就労支援、福祉につなげる支援などの社会復帰支援を本人の必要性に応じて行い、スムーズに社会での生活につなげていくことであると思います。
 社会復帰支援は今般の刑法改正に伴い刑事収容施設法に新たに規定されたものであり、支援が必要となる高齢者、障害者について多機関連携によるチーム処遇を行い、福祉の支援につなげたり、これまで積み上げてきた就労支援を充実させることとなりますが、いずれについても、個々の支援ニーズに基づき、更生保護を始めとする関係機関や地方自治体、民間企業、民間団体としっかりと連携できるかが重要になってくると思います。
 更生保護においては、このように矯正施設による社会復帰支援との連携を強化するほか、矯正施設収容中における更生緊急保護の申出、刑執行終了者等に対する援助、更生保護に関する地域援助などの新たな制度を積極的に活用することにより、刑事司法手続の入口から出口、保護観察等の終了後を含む地域に至るまでの処遇、支援をシームレスにつなぐ、いわゆる息の長い支援、これによる再犯の防止の実践を着実に積み上げていくことが大切だと思います。
 その際、特に更生保護施設の役割が重要になってまいります。更生保護施設は、仮釈放者の三分の一を受け入れるほか、行き場のない満期釈放者のための受皿として、その社会復帰の成否を左右する重要な存在です。地域における自立支援の中核的担い手として、たとえ処遇が難しいと見込まれる出所者等でも、これを積極的に受け入れる努力がなされております。
 拘禁刑に基づく矯正処遇の実践によって受刑者の動機づけが高まることが期待されますが、たとえ社会の中で困難な現実という壁にぶつかっても、その動機づけを維持し、さらに、諸困難を乗り越えて犯罪から遠ざかるための力を培っていくためには、いきなり単身で地域生活を始めるよりも、このような更生保護施設での訓練や教育を経ることが大変重要だと思います。
 現在、更生保護施設では、その再犯防止効果を発揮するため、きめ細やかな生活指導や自立援助、特性に応じた専門的な手法を駆使した働きかけなどの多彩な実践が始められております。それに加えて、更生保護施設を退所してからも、その自宅を定期的に訪問して相談に乗る訪問支援活動が始められており、金銭管理の破綻、失職、病気など、様々な生活上の危機を未然に回避して、高い再犯防止効果を上げております。しかし、そのために国から指定を受けている施設は全体の二割にも達しておらず、その早期かつ計画的な拡充が望まれます。
 なお、更生保護施設は国からの委託費によって運営される民間施設であり、特に地方の施設を中心に、赤字経営のところがほとんどです。近年は物価高のあおりも直接受けるなど厳しい経営環境が続いており、必要な予算の確保が課題であると考えます。
 我が国の保護観察は、専門職である保護観察官と、地域の隣人としての保護司の両者が、それぞれの特性を遺憾なく発揮し、相乗効果を得る形で処遇を行う協働態勢が取られております。
 このうち、保護司の制度は、世界的にも余り例がなく、その国際的な評価も年々高まっているところです。保護司は、保護観察対象者と日常的に接し、その相談相手となるとともに、再びやり直そうとしている人を受け入れて、そっと支えられる社会づくりのために地道な活動を続けておられます。このようにして、保護司は安全、安心の社会の実現のためになくてはならない存在ですが、その数が年々減少していることが大きな課題です。そんな中、先日、この委員会におきまして、慎重審議の上、可決していただきました保護司法改正案については、私も大変期待をしているところです。
 そこで取り上げたい点は多々ございますが、より多くの方に保護司になっていただくための取組を保護司任せにせず、加えて、保護司の活動環境の改善や安全確保のために、保護観察所や国がより積極的に関わるとした点は大変重要です。さらに、保護司制度の持続性を高めるため、地方公共団体による保護司会等への協力について努力義務が明記されたほか、民間企業による保護司である従業員への配慮義務などが盛り込まれた点は大いに評価すべきと思います。今後は、これらの規定に基づき、社会全体で保護司の活動を支える仕組みが具体的に進展することに大いに期待しているところです。
 なお、保護司の存在や活動内容、また更生保護そのものについて、社会的な認知度を一層向上させることも重要です。これまでも様々な媒体を通じて発信がなされてきましたが、更に社会に更生保護や保護司の存在や取組を広めていき、その理解を地域に練り込んでいくような活動を展開していく必要があると思います。
 一方、保護司が安全で安心して活動するために、保護観察官が地域に出向き、保護司からの相談等に応じたり、関係機関、団体と連携した支援を実施することがますます重要となってまいります。また、保護観察の開始期に情報が最も少ないとされる保護観察付執行猶予事案につきまして、保護観察官が専門性を生かして充実したアセスメントを行ったり、処遇上の危機場面に即座に介入できる体制が必要です。そのための保護観察官の大幅増員は、誠に古くて新しい課題だと考えます。
 最後に、今般の令和四年刑法改正により、再度の全部執行猶予を言い渡すことができる宣告刑の上限を一年から二年に引き上げるとともに、初度の保護観察付執行猶予中の再犯について、再び執行猶予を付すことができることとされました。また、同時に改正された更生保護法において、再保護観察付全部執行猶予者に関する保護観察処遇の特則が設けられ、処遇の強化が図られております。
 今般の改正は、実質的には、初度目の全部執行猶予に保護観察をつける割合を高める狙いがあるとされますが、実際にも、その割合は顕著に高まっている傾向が認められます。これは誠に歓迎すべきことだと考えます。
 保護観察を付すことによって、一定の行動を禁止して問題行動を踏みとどまらせ、逆に一定の行動を義務づけて望ましい行動を促すことが可能になります。専門的処遇プログラムの実施などにより、教育的機能を働かせることもできます。さらに、生活を見守り、行動変容の意欲を持続させたり、生活に支障を来している人のために実際的な支援を行うことも可能になります。そうすることによって、再犯防止の効果が期待できる対象者の範囲は更に広がるものと思います。
 例えば、飲酒、ギャンブルなどの依存の問題を抱えている者や、家族や交際相手などの関係で問題行動を繰り返す者、不就労など社会適応への困難に課題を抱えている者などは、保護観察が有用であると考えられます。そのような理解が今後とも関係者間で共有されていくことを大いに期待しております。
 昨今では、検察庁において、検察官が執行猶予見込みの事案で再犯のおそれがあるなと考えたときに、積極的にこの保護観察つきの求刑をなさっているという実践が認められるところでありますが、大いに賛同するところであります。
 更に言えば、刑の一部執行猶予制度についても、現在は薬物事犯者にほぼ限定された運用となっておりますが、施設内処遇と社会内処遇の相乗効果が期待でき、社会内での相応期間の処遇や満期釈放の回避などの効果が見込めるという同制度の利点を考えますと、保護観察付全部執行猶予の場合と同様に、その適用範囲の拡大が図られるべきと考えます。
 なお、保護観察付全部又は一部執行猶予の更なる拡大適用と適切なケース選択を目指すのであれば、諸外国において実施されている判決前調査制度の導入も今後の検討に値すると思われます。
 例えば、性犯罪、暴力事案、あるいはストーカーの事案であっても、単純執行猶予よりは保護観察による効果が大いに期待できますし、しかし、中には、ストーカーでも、一定の人に向かっている場合もあれば、それが多数、複数にまたがっている場合もある、ころころ変わってしまう場合もある。あるいは、根深い怨念のようなものが背景にあるというような場合は、まずは一定期間、実刑という形で刑務所で冷却期間を置いて、それから保護観察につく、そのようなケースも中にはあるかもしれません。そのような適正な選択ということを可能にする仕組みが今後検討されていっていただけたらと思う次第です。
 ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 今福章二

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日付: 2025-12-03

院: 衆議院

会議名: 法務委員会