國重徹の発言 (憲法審査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○國重委員 中道改革連合の國重徹です。
前回の審査会で、私は主として次のことを述べました。選挙権は極めて重要な憲法上の権利であり、その実効的な行使は国民主権の核心である。だからこそ、選挙の実施をできる限り可能にするため、平時から選挙制度の強靱化に力を尽くさなければならない。その選挙実施優先原則、さらに、繰延べ投票、参議院の緊急集会を最大限尊重してもなお、国会機能維持の観点から制度的な空白が生じ得るのか。仮にそのような制度的空白が認められる場合には、立憲主義の観点から、補充条項としての議員任期特例を検討することになる。その際、濫用の危険を防ぐために、憲法及び法律でその要件を厳格に定め、恣意的な解釈の余地をできる限り狭めることが不可欠である。その要件の核心部分は憲法そのものに明確に定めるべきである旨述べました。
本日は、仮に議員任期特例を創設するとした場合の広範性要件と長期性要件を中心に、憲法の条文を手がかりに問題提起をしたいと思います。
まず、広範性要件について、イメージ案は、国政選挙の一体性が害されるほど広範な地域としています。
確かに、国政選挙の公正性確保との関係で、選挙の一体性は重要な視点です。しかし、広範な地域の具体的基準が法律に委ねられることで、法改正によって要件が実質的に緩和されるリスクはないのか、また、選挙の一体性がそれだけで国民の選挙権行使を延期し得るほどの憲法上の根拠となるのかについては、更に議論を深める必要があります。
そもそも、補充条項としての議員任期特例の目的は、政府に権限が集中しがちである緊急時において、国民の代表機関である国会の機能を発揮させることにあります。とすれば、適正な選挙を実施した結果、国会、とりわけ衆議院が安定的に議事を開き議決を行い、立法機能、行政監視機能を果たし得る状態になるのかどうかという点がポイントになります。
その意味で、着目すべきは、定足数を総議員の三分の一以上とした憲法五十六条一項の趣旨です。これは、少数派の審議拒否等による流会を回避し、国会をできる限り機能させるとともに、一定数の出席により国会の権威を保つ点にあります。
この趣旨を踏まえ、どの程度の議員が選出されれば安定的に定足数を満たし国会の機能を維持できるかを検討することが、条文に根拠を持つ客観的基準を考える上で重要な視点になるのではないでしょうか。
もっとも、具体的な数値基準をどう置くかは、慎重な検討を要します。ここで申し上げたいのは、広範性要件を単なる地域的な広がりとして捉えるのではなく、こうした機能的な観点からも検討する必要があるのではないかということです。
このように、憲法五十六条一項を手がかりに広範性要件を構成することは、認定の恣意性を抑制する上でも重要な検討軸になり得ます。従来の選挙の一体性論と併せて、この視点からの議論を深めることを提案いたします。
次に、長期性要件について、イメージ案では相当程度長期間としていますが、その憲法的な根拠は何か。判断の軸がないまま政治判断に委ねることは、立憲主義の観点から問題があります。
ここでも、憲法の条文を手がかりに考えてみたいと思います。
憲法六十七条一項は、内閣総理大臣を国会議員の中から指名することを、六十八条一項は、国務大臣の過半数を国会議員から選ぶことを定めています。前者は在任要件とされ、後者は内閣の構成上の要件を定めたものとされています。
これまでの内閣の構成を踏まえると、衆議院が解散された場合には、通常、これらの要件を欠くことになります。もっとも、この場合にも、内閣は、憲法七十一条により例外的に、次の内閣総理大臣が任命されるまで引き続きその職務を行うこととされています。この職務継続が憲法上認められているのは、解散後四十日以内に総選挙が行われ、その後三十日以内に召集される特別会において新たな内閣総理大臣が指名されるという時間的枠組みがあるからです。
つまり、このような一時的な職務継続は、あくまで、七十日程度の間に総選挙が実施され、新たな内閣が構成されることを前提とした、暫定的な仕組みと言えないでしょうか。
したがって、その状態が長期化すれば、憲法六十七条、六十八条が予定する議院内閣制の仕組み、すなわち、内閣が国会との結びつきの中で民主的正統性を確保するという構造との関係で、内閣の正統性に深刻な問題が生じます。
そのため、相当程度長期間とされている長期性要件を深掘りするに当たっては、議院内閣制の趣旨に照らしてどの程度の期間であれば暫定的な内閣の職務継続を憲法上許容できるのかという観点からの議論も重要です。
以上は要件そのものの問題ですが、その要件をどのような手続で認定、承認するのかも重要です。
例えば、武力攻撃事態では、選挙困難事態の認定に必要な情報が、作戦情報や同盟国との機密情報と不可分に絡み合う可能性があります。公開情報による通常の国会審議を原則としつつ、機密情報については、情報監視審査会の仕組みを参考にしつつ、限定的な秘密審査手続を設けることも一つの方向性として考えられます。
しかし、機密を理由に情報提出が過度に制限されれば、国会の実質的な検証ができず、国会の承認は内閣の判断を単に追認するだけのものになりかねません。こういった点も議論を深める必要があります。
イメージ案が示されたことは、これまでの議論を可視化する点で意義のあることですが、本日申し上げたとおり、それぞれの論点を詰め切るには更なる議論が必要です。
先週の審査会では、平時の国会機能維持に関する臨時会の召集期限や解散権行使の在り方及びその制限を議論することについても、日本維新の会、国民民主党から前向きな御発言をいただきました。これらは国会機能維持の点で共通するテーマです。
仮に、新たな制度を憲法上設けるにしても、設けないにしても、問うべきは同じ、国民の権利を守るために権力をどう縛るのかです。その仕組みを憲法上あるいは法律上可能な限り明確にしていくことが、立憲主義の要請です。その問いに正面から向き合い、国民のための真摯な憲法論議を積み重ねていく決意を申し述べ、本日の意見表明といたします。