菅野拓の発言 (災害対策特別委員会)

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○菅野参考人 よろしくお願い申し上げます。大阪公立大学というところから参りました菅野と申します。
 本日は、このような機会をいただきまして、ありがとうございます。
 防災庁の設置法案、非常に歓迎しているという大前提の下に、もう少しだけこの部分を更に注力いただけるとうれしいなとか、こういったことをもうちょっと考えていただけるとうれしいなということを、つけ加えるような形で今日は発言を述べさせていただきたいというふうに思っております。
 まず、大前提として、国の各機関とか都道府県、市町村や営利企業、あとソーシャルセクター、NPO、NGOや我々学術機関なんかも、やはり様々な主体が協働して、餅は餅屋と言っておりますけれども、そういった防災の要として防災庁を設置するということをまず歓迎をしているということでございます。
 まず、平時から政府とか地方自治体がやっていらっしゃる仕事の延長にある仕事というのは、非常に我が国は災害対策上上手だというふうに考えています。例えば、ハード整備なんかも非常に強く造られていますし、回復も早いなと思いますし、消防とか治安維持、まさに、例えば国土交通省さんや消防庁さんや、あとは警察庁さんなんかが非常に力を入れて頑張られているところというのは、本当に防災大国と言っても過言ではないぐらいの制度ができ上がっているなと思いますし、能登半島クラスでもそんなに課題が上がらないというふうには考えています。
 ただ、やはり不得意な部分があるということなんだというふうに思っています。例えば、平時はマーケットの中で供給されているような物やサービス、例えば食料なんかもそうですし、家なんかもそうかなと思います。あと、例えば福祉サービスとか医療サービスなんかも、実はこれは、制度は政府でつくっておりますが、やっていらっしゃる方はみんな民間ということでございます。要は、この部分というのを地方自治体が急に慣れない中でやらなければいけなくなってしまう、これが私は災害時の混乱の基本構造だというふうに考えております。なので、餅は餅屋という言葉が非常に大事だと思っておりまして、やはりプロにお任せして、どのように支援の質を上げていくのか、これが、防災庁が最も考えるべき重要な点ではないかというふうに感じております。
 なので、やはり防災における様々な主体、当然、政府内というところで勧告権や尊重義務という話はありますけれども、それだけじゃなくて、民間の世界、例えば医療や福祉の業界とはどうなんだ、物資をふだん扱っていらっしゃるような民間の流通、小売業界とはどうなんだ、そういったところときっちりと信頼関係や協働関係というのをつくっていただいて、そこと一緒に災害対応をしていく。そうしないと、このように関連死という非常に不名誉な言葉が出ていますけれども、そういったものが減っていくという社会は築けないんじゃないかなと思います。そのためにも、出身セクターが様々なプロパー職員を中心に専門性を蓄積する防災庁でしっかりと総合調整をしていただきたいなというふうに考えております。
 今までの内閣府防災ですと、皆さんすばらしい職員さんが来て、いろいろな対応をされるんですが、やはり出身省庁に二年ほどで戻っていかれるんですね。そうなると、やはりそこに専門性というのはなかなか蓄積しませんし、さらには大きな法改正というのも難しい。要は、基本構造を変えるような改正というのはなかなか難しい。これが今までの日本の防災の実情だったのではないかなというふうに思います。
 その内閣府さんなんですけれども、まさに被害想定と対策というのは非常にきっちりとやられてきたなと思いますし、発災直後は本当に総動員、逆に言うと、平時の仕事が止まってしまうぐらいの総動員で対応に当たられるということなんですけれども、それだとやはり、事前防災の観点であるとか、大きな枠組みを見直していくという観点でなかなか難しいだろうというふうに考えています。なので、防災庁が事前防災から復興までかなりの人員を充てて対応されるということを非常に高く評価をしているということになります。
 特に、災害が起こって数年たってから発覚するような問題というのも多数ございます。例えば、在宅被災者や在宅避難者という言葉が、今はやっと世間でも普通に使われる言葉になりましたが、これは東日本大震災から数年たってやっと出てきた言葉でございます。
 要は、これは、既に内閣府防災で検証を終えて、様々な対応を考えた後に出てきた言葉、ただ、これが非常に問題だということで、ずっと社会問題として取り扱われてきたわけですね。こういうものは要は検証がされなかった、それでなかなか対応ができなかったということなので、復興まで見据えて、ちゃんと検証や制度改正ということができてこなかったんだというふうに思います。
 また、被災地の復興に関することならひとまず何でも引き受けて、実務を行う現地や関係府省との意見交換とか事業の調整を行うといった、復興庁さんが東日本大震災当時に見出したようなこういった役回りというのは、やはりどの災害でも必要だなというふうに思います。
 これはまさに地方自治体を伴走するということかと思いますが、南海トラフの巨大地震なんかに備えても、地方自治体が策定する事前計画というのを後押しすることも重要ですし、そういった伴走する役割というのはやっていただきたいなと思うんですが、ただし、もう一つ、時代の変化というのも防災庁の皆さんに捉えていただきたいなというふうに思っています。
 実は、今の災害対応、特に復旧復興に関わる枠組みというのは、高度成長期以降ほぼ変わっていません。要は、どんな人口減少地域であっても、復旧という形で全て直るということです。
 それはどういうことかというと、例えば、水道が直るとどういうことが起こるか。そのときはいいんですけれども、その維持管理若しくは水道料金は次の将来世代に乗ってくるわけですね。そこで人口減少していくとどうなるかというと、水道料金が上がって、そのツケを何らかほかの方法で払わなければいけない、こういう事態もやってくるということですので。
 是非、激甚災害法や公共土木施設災害復旧事業費国庫負担法、こういったもので今の制度が枠づけられているわけですが、そういったところを前提とせずに、どうやって大きな災害のときは持続可能な復興を成し遂げるのか、こういった制度の下に是非事前復興なんかを進めていただくということかと思いますし、そうしないと、やはり国家財政上の負担も極めて重くなるというふうに考えております。
 南海トラフ巨大地震のときに高度経済成長のような復旧復興をやってしまうと、我が国の財政というのはどうなるかということを是非考えていただいて、そういった大きな枠組みにも是非とも検討のメスを入れていただく、こういうこともすごく大事だろうというふうに思っています。
 また、三つ目になりますが、災害対策基本法の基本理念の改正、特に、全ての被災者がその被災地にかかわらずできる限り良好な生活環境をあまねく享受できるようにする等というものが追加されるというふうに伺っております。
 これは非常に大事なことだと思っています。場所、避難所から人、被災者への支援の転換というのを実は内閣府さん自身ももうずっと言ってくださっていますが、こういうものが端的に表れる表現だというふうに評価しています。
 南海トラフ巨大地震とか首都直下地震クラス、また、実は能登半島地震クラスでも多数の広域避難者という方が出ています。要は、住民票を異動させずにほかの自治体に避難をされる、こういうことなんですが、被災自治体からすると、その方々はどこに行ったかすらつかめないという事態が起こっています。しかも、その方々に対して支援するのは、例えば東京に避難されても名古屋に避難されても、能登の方々ということになります。これで首都直下や南海トラフを迎えるとどうなるかということを考えていただきたいと思います。
 例えば、高知の方が大阪に来て支援をする、そういったことが現行法では基本ということになっています。やはりこれはまずいというふうに考えていますので、そういったものを変えていかなければならない。
 また、現行の避難所では十分な支援が受けられない要配慮者や、生活再建が困難な被災者が多数存在するなと思っています。
 災害対応を行った政府や地方自治体の職員の方は、やはり、ふだんできることしかできなかったと口にされます。平時と有事を切り分けずに、有事に備えて平時の仕組みを設計していくフェーズフリーの考え方というのを、各種の社会保障制度やケアを支える人員、若しくはこども計画のように、要は、ふだんなかなか声が上げられない方の声を受け止めて、様々な施策に反映していくような仕組みに、ちゃんと災害時のことも考えておかないと、当然災害時はできないということになってしまいますので、こういったフェーズフリーの仕組みをつくっていただきたいです。
 さらに、発災時には、被災地において避難環境の水準を当然高めつつ、確実に、例えば広域避難された方なんかにも、今政府でも進めていただいています伴走型の被災者支援の制度であります災害ケースマネジメントということができるように、そういう体制整備をしていただきたいなというふうに思っています。これこそが、まさにこの理念に掲げられたものが実現されるということかと思っています。
 また、四つ目です。
 伝家の宝刀としての勧告権とか尊重義務以外に、首相を始めとした閣僚を中心に構成される中央防災会議に関係行政機関相互の調整を規定しているのはすごくありがたいことだなと思います。ただし、同時に、有識者とか実務者による審議の機能というのをどのように考えるかということだと思います。
 実は、図一というふうに何ページか後に書かせていただいていますが、現行の内閣府防災さんでも実は様々な委員会や検討会があるんですが、どこで何が審議されていて、一体どれが重要なのかはさっぱり分からない。要は、普通の省庁だとお持ちのような審議会のような機能がないんですね。例えば、厚生労働省さんだったら社会保障審議会の様子を見ておけば、いろいろな主体が、ああ、こういうふうに制度が動くんだな、こういう方向で考えるんだなというのを検討できるんですが、現行の内閣府防災さんではなかなかその機能がないということになります。
 また、中央防災会議は、どうしても閣僚の皆さんで構成される会議体です。ということは、そこで審議をするというよりは、やはり実際の調整の場だということなんですね。ですので、是非、審議の場をちゃんと恒常的に見える形でつくっていただかないと、様々な主体が一緒に協働して防災をしていくということがなかなか難しいのではないかなと思います。
 特に、混乱する部分というのはきっちりと考えていただきたいなと思います。一つ目が、国、都道府県、市町村の役割分担の抜本見直しをする審議会のような機能。二つ目が、被災者支援の抜本改善。まさに民間が関わっている部分だからこそ自治体ではなかなかできない、こういう部分。さらに、防災DXの推進ですね。我が国は人口減少過程に入っていますので、やはりここで高度化しなければいけない。さらには、どうやって民間の力をかりるのか。こういった四つの部分というのはしっかりとやらないと、なかなか今までできていなかったことですので、是非とも安定的な審議の場をしていただきたいと思います。
 一つ一つ簡単に説明していきたいと思います。
 まず、国、都道府県、市町村の役割分担の抜本見直しの審議機能。
 これはやはり、災害対策基本法というのが過度に地方分権的だというふうに考えています。恐らく、様々な法体系の中でも市町村の責務が一番重い。自治体にやらなきゃいけないことが相当にある。
 これは逆ですよね、災害のときというのは。本来であれば、市町村だと大規模災害のときに機能しないから、都道府県が助けましょう、国が助けましょうという補完性の原理を最も働かせなければいけないところに、市町村が全部やらなければいけない。しかも、それは大規模災害であっても、ちっちゃい災害であっても同じということです。なので、南海トラフが来ても基本的には市町村の皆さんが対応する、被災者であるにもかかわらず。この構造を我が国は持っているということでございます。
 これをどうやって見直すのか。当然、地方自治法にも関係するような部分が出てくるかと思いますので、長い審議になると思います。しっかりと審議をしていただきたいと思います。
 もう一つ、何十年も、はっきり言います、環境が改善していない被災者支援の部分ということです。これも、慣れない事務を市町村中心に自治体の方が行う、こういうことが今の状況を生み出しています。
 昨年度の災害対策基本法改正でも、福祉サービスの提供を追加いただいて一歩進められたというふうには認識していますが、更に進めていただきたい。
 しかも、例えば、持家や借家も関係なく、たまたま住んでいた家の壊れ具合で全ての支援制度を決めていくような状況に今は、全ては言い過ぎですけれども、大きな支援制度ほとんどを決めていくような状況に陥っています。持家も借家も関係ないんですね。
 本当にそれで適切に被災者の方を支援できているのか。この基準の見直しなんかもしっかりしなければいけないですし、災害ケースマネジメントということを実現していかなければいけない。
 さらには、防災DXですね。
 先ほどの広域避難のことを一つ取っても、デジタル的に、誰がどこに行ったのかというのは本当はつかめますよね。でも、つかめないんです、今は。そんな基幹システムもないからです。なので、そっちで被災者支援してよ、災害ケースマネジメントしてよというふうにしたところで、誰がそこに行っているかすら分からない。これが東日本大震災以降の広域避難の最大の問題だと思います。
 是非、パーソナルデータや個人情報のことをしっかりとどの地域でも扱えるような枠組みをつくっていただいて、ちゃんと、大きな災害であっても、いろいろなところが相互応援しながら、被災地じゃなくて避難先で人を支えられるような、そういう状況にしていただきたいというふうに思っています。
 官民協働防災は、まさに餅は餅屋の要でございます。今までだと、NPOの皆さんや医療、福祉の皆さんは結構入っていただいておりますが、例えば流通、小売の皆さんとか不動産の皆さんとか、もっと入っていただく日本の力というのはありますよね。こういった方とどうやって協議会のようなものをつくって一緒に対応していくのか、是非考えていただきたいと思います。
 最後になります。防災大学校を是非つくっていただきたいなというふうに思います。
 やはり、防災庁に関わる人員の専門性を高めるというのは非常に大事なことです。いろいろな文化を学びながらいろいろなところと交わらないと、一緒に協働していくということはできないはずです。やはり、同じ釜の飯を食い、同じ景色を見て育つ、これが防災庁職員の専門性を形作る非常に大きなことになると思います。是非、防災大学校等の、研修及び研究を行う文教施設、必ず設置をしていただきたいというふうに思います。
 以上になります。ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 菅野拓

日付: 2026-04-28

院: 衆議院

会議名: 災害対策特別委員会