宮田律の発言 (国際問題に関する調査会)
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○参考人(宮田律君) お手元に資料があると思いますけれども、ちょっと多いので、かいつまんで御説明していきます。
御存じのとおり、イスラエルとアメリカ、国連決議もなく、イラン攻撃を始めた。その目的は、一ページ目のレジュメにあるとおり、イラン・イスラム共和国体制を打倒するといって国際法に違反する戦争を開始し、ハメネイ最高指導者を開戦当日の二月二十八日に殺害したわけですけれども、最高指導者を選ぶ専門家会議はハメネイ師の息子のモジタバ・ハメネイという人を後継者として即座に選出した。それから、アメリカ、イスラエルは文民から登用されたアジーズ・ナシールザーデという国防相をやはり開戦当日に殺害しております。しかし、その後任にはマジド・エブネ・レザーという革命防衛隊の将軍が直ちに就いている。それから、アメリカ、イスラエルは現実的な文民のアリー・ラリジャニという国家安全保障最高評議会事務局長を殺害し、その後任には強硬派のモハンマド・バゲル・ゾルガドルというやはり元革命防衛隊の将軍が就任しております。
アメリカ、イスラエルは、中道穏健派の政治指導者たちを次々と殺害し、極右の反米、反イスラエルの強硬派の人物たちに置き換えていったというわけですね。ですから、イランのその体制を転換するという目標は見事に失敗したというわけであります。
一ページ目の少し下の方ですけれども、イランは中東の十三の米軍基地を攻撃し、そのほとんどが著しく破壊された。米軍基地はホスト国を守るどころか、かえって重大な危険にさらすことが判明した。米軍の将兵たちは基地から離れ、近隣のホテルに避難したわけですけれども、湾岸地域の情報を収集するイランは、その米軍関係者たちが滞在するホテルをも攻撃の対象としております。
イランのアラグチさん、外相ですけれども、日本の駐日大使をやられた方ですが、湾岸諸国に米軍基地の閉鎖を求めたわけですけれども、少なくとも国民レベルでは米軍基地の存続を望まないムードが高まった。イラクのシーア派住民たちはイランを支持し、イラク戦争の舞台となったイラクでは元々米軍の駐留に対する反発が強い。
二ページ目行きまして、イスラエルでは、軍の情報統制によって被害状況が明らかにされていませんけれども、ハイファという地中海に面する都市の製油所が被害を受け、テルアビブでもイランのミサイルやドローンの着弾が頻繁に報告された。どれぐらいの被害があったかはこれ明確には分からないところでありますけれども、かなりの被害をテルアビブ辺りは受けているんではないかなという気がします。
それから、石油価格が上がったこと、これはイランにとっては追い風になっているんではないかなという気がします。
二ページ目の下の方ですけれども、ロシアと中国は、ベトナム戦争時代に北ベトナムを支援したわけですけれども、今はイランを支援している。中国は世界のドローンの部品の八割ぐらいを生産すると見られておりますけれども、地理的に近いイランへの支援は中国、ロシアとも容易で、さらに、中央アジア諸国はイラン、中国、ロシアと良好な関係にあります。中央アジアも、イラン、中国、ロシアのトライアングルとの協調を継続することと思います。
イランには、十二万人から十九万人の革命防衛隊に加えて四十万人の正規軍が存在します。さらには、四十万人から八十万人の民兵組織のバシジ、まあバスィージュとペルシャ語では発音しますけれども、バスィージュも活動します。これらの軍体制が米軍、イスラエル軍の攻撃によって弱体化したようには到底思えません。ホルムズ海峡を艦載機雷、高速攻撃艇、海軍ドローンで封鎖する能力をイランは有していると見られております、実際に封鎖しましたけれども。革命防衛隊は、イランの石油輸出の約五〇%を支配し、三千発以上の短距離、中距離ミサイルを保有しているというわけです。
トランプ大統領は、三ページ目へ行きますと、トランプ大統領は、今夜一つの文明が消滅するだろうということを言いましたけれども、これに対してはアメリカ国内から猛烈な反発があったというわけですね。民主党のペロシ下院議長ら七十人がこの発言を問題視し、憲法修正二十五条の発動による副大統領への権限委譲を主張し、ジョン・ラーソン下院議員は声明で、トランプ氏は罷免に値する要件をはるかに超えているし、日増しに不安定になっていると語りました。確かに精神的に不安定になっているという印象は、日々の発言を聞いていると分かりますけれども。
イラン攻撃は超法規的措置、これはそのとおりでありまして、体制転換というのはもちろんイランの人々、イラン国民が決めるものでありますが、アメリカ、イスラエルは外部からの軍事攻撃によってイランの体制転換を考えた。
イスラエルが国際法を無視することは、これはヨルダン川西岸でイスラエル人の入植地の拡大を図ったり、あるいは、昨年十二月にはソマリランドというアフリカの国家承認を行いましたけれども、ソマリランドにガザの人々を追い出す、移住させるということもどうやらイスラエルは考えているようであります。
三ページ目の下の方ですけれども、体制転換、つまり、革命には軍隊の動静が鍵となるわけですけれども、最高指導者に忠実な革命防衛隊が体制打倒の側に容易に寝返るとは目下のところ考えにくい。革命防衛隊は、その名のとおり、イラン革命のイデオロギーによって思想訓練された軍隊で、イランのゼネコン、エネルギー、金融分野を支配するなど、イスラム共和国体制から莫大な経済的利益も得ております。そういう革命防衛隊が反体制側に寝返るというのは目下のところ考えにくいというわけですね。
四ページ目へ行きまして、トランプ大統領のイラン攻撃の背景とモサドの工作でありますけれども、四ページ目の真ん中から下の辺り、トランプ政権一期目のポンペオ国務長官は、イランで反政府運動が高揚したのを受けて、今年一月の上旬に反政府運動が高揚したわけですけれども、今年一月三日に、街頭に立つ全てのイラン人、そして彼らの隣を歩く全てのモサド工作員に、新年おめでとうございますという書き込みをXにしております。
というように、恐らくイスラエルのモサドはイラン国内で工作活動をやっているんではないか、やってきたんではないかというふうに考えられます。
何でイラン人がアメリカを嫌うかでありますけれども、これ王政時代、一九二五年から七九年、五ページ目のところですね。王政時代にイランでは反米意識が高まった、根付いた、定着したというわけであります。
五ページ目の少し下の方ですけれども、一九七七年にイランの国家予算の四〇%が軍事費に投入されるようになると、イランの国政はアメリカの利益によって決定されていることは、イラン国民にとってますます明瞭な事実となり、反米感情をいやが上にも増幅させていった。
特に、国王は兵器マニアだったが、計画性も秩序もなく大量の最新兵器が国民の福利とは関わりなく購入されていったことは、国民の王政や、その背後にあるアメリカに対する反感を強めていった。また、多数のアメリカの軍事顧問の駐留に伴って、アメリカの文化や風俗もイランに流入していった。キャバレー、ナイトクラブ、ディスコ、さらにはB級ポルノ映画など、敬けんなムスリムから見れば眉をひそめたくなるようなアメリカンカルチャーが流入していった。これらの理由から、イラン革命は反米的性格を持っていった。
イランではその反米的なムードが高まったわけですけれども、対するアメリカもイランを嫌いになる事件が起こります。それは、一九七九年の十一月に起きたテヘランのアメリカ大使館占拠事件であります。
これ、六ページ目に書きましたけれども、そのとおり、学生たちがテヘランのアメリカ大使館を占拠しまして、もちろんこれも国際法違反なわけですけれども、それに対してアメリカ国民一般にイランに対する反感が強まった。カーター政権はイーグルクローという救出作戦を展開したわけですけれども、これが見事に失敗する。
それから、一貫しなかったアメリカの政策がありますけれども、アメリカは一九八〇年代のイラン・イラク戦争中はイラクを支援したわけです。アメリカは、御存じのとおり、その後、イラク戦争ではサダム・フセイン政権が大量破壊兵器を持っているといってイラク攻撃、イラク戦争を行ったわけですけれども、一九八〇年代のイラン・イラク戦争ではイラクを支援して、イラクが化学兵器を使用しても、これに目をつぶったというわけですね。
七ページ目の真ん中辺りですけれども、トランプ大統領の経済制裁によって、イランというのは経済的には大変苦しい状態にあるというわけですね。二〇一五年に成立したイラン核合意ではイランに対する経済制裁は解かなきゃいけなかったわけですけれども、トランプ大統領は、そうした国際的な合意を無視して、イランに対する制裁をかえって強化した。その結果、イランの石油の日量の生産量も下がりましたし、それから若年層の失業率も上がる、それからインフレ率も上がっていったというわけであります。
日本に求められる役割でありますけれども、そこにグラフがあります。これは、二〇一九年にイランポールというカナダの世論調査会社が行った世論調査であります。イラン人にどの国を一番好みますかという調査ですね。それでトップになったのが日本というわけです。そのグラフに、ジャパンというのが一番上に来ておりますけれども、日本に好感を持つイラン人は多いというわけです。
八ページ目の真ん中辺りでありますけれども、イランポールは、日本に対する好感度が高いのは安倍首相が、これは、ごめんなさい、二〇一九年の六月に日本の首相として四十一年ぶりにイランを訪問したことを理由の一つとして挙げているが、良好な対日感情は、イランに対して、ヨーロッパ諸国のように、イランが核合意を守らなければ再び制裁を科すなどの政治的圧力を掛けていないこともその理由としてあります。
日本とイランというのは相互に助け合う関係にあった。例えば、八ページ目の下の方ですけれども、イラン南東部のバム大地震の際に日本は血液を空輸してイランを援助する。他方、イランは、東日本大震災の際にイランの赤新月社が日本に缶詰を寄附してくれることなどがあった。
それから、画像を載せましたけれども、日本のポップカルチャーはイランでは大変人気がある。それと、九ページ目に載せましたけれども、日本の「おしん」というドラマはイラン人が見て、八〇%も九〇%も視聴率があったと言われるほどイラン人が好むドラマであった。あそこに出てくる日本人のイメージがそのまま日本人全体のイメージになっているというわけですね。イランに行くと、「おしん」と言って声掛けられるケースが多いですけれども。
九ページ目の下の方に、アラグチ外相の回想録の中で、イランの町に行って一般の人々に日本を含め思い付く十の国の名前を聞いてみろ、そしてそれらの国でどの国が一番信頼できるか聞いてみろと言っています、十人中九人が日本と答えるに違いありません、これはあなた方日本にとっての財産ですというふうにアラグチ大使は言っております。
十一ページ目に行きますと、世界で最も美しい歌というのはイランにあるというふうに、小泉文夫さんという東京芸大の教授が言っていました。この人は、大変活躍していたんですけれども、早くして亡くなって、美智子妃であるとか、あるいは吉永小百合さんが大変ファンであった。特にラジオのDJをやっておりました。
で、歴史的に見て、イランという国は絶えず外敵の侵入を受けてきた。十一ページの真ん中からちょっと下ですけれども、アレクサンダー大王、アラブ・イスラム勢力、モンゴル、さらには、近現代においてはイギリス、ロシアの帝国主義勢力、また第二次世界大戦後はイラク、イスラエル、アメリカの干渉を受けた。地政学的に見て、イランは外敵の侵入を受けやすいところに位置している。とはいえ、イランを征服したアラブ人やモンゴル人に対して、イランは多大な文化的、社会的影響を及ぼし、一方的な征服に甘んじることはなかった。それから、一九八〇年代のイラン・イラク戦争を戦い抜いて、八年間も戦ったわけですけれども、イランは、それでも形勢不利な局面はいろいろありましたけれども、敗れることはなかったというわけですね。
それから、イランという国は映画が盛んな国ですけれども、日本の映画も高く評価される。いろんな意味で親日感情を持っているわけで、そういうイランですから、日本は、やはりそのイランの親日感情という資産を大事にして、アメリカ一辺倒になるのではなくて、イランの親日感情を大事にしながらこの危機に取り組んでもらいたいというふうに考えます。
終わります。