天野馨南子の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(天野馨南子君) 株式会社ニッセイ基礎研究所の天野です。
 本日は、研究内容に御理解を賜り、本委員会にお招きいただき、深く御礼申し上げます。(資料映写)
 国内人口移動につきまして、一、東京一極集中、二、社会減、すなわち転出超過エリアの特徴、三、合計特殊出生率のわな、人口問題を考えるに当たり、三つの必須データの知識の解説をさせていただきます。
 まず、東京一極集中です。お伝えしたいことは大きく二点。一点は、人の動きをデータサイエンスの見地で検証することが人口問題解決の基本であるということ。そして、性別、年齢構造を見ない総数勘定では何も見えてこないという二点です。
 バブル崩壊後の一九九六年に東京都への転入超過が女性から発生し、昨年でちょうど東京一極集中三十年となりました。株式市場におけるバブル崩壊は九一年から九三年ですが、実際に人々が経済低迷を体感したのは九五年辺りからと言われています。
 九六年に女性から始まった東京一極集中は、バブル期を含み、大きく四期に分類できます。一期目は八六年から九五年のバブル経済期で、地方への人口拡散期、東京都の社会減期です。第二期は九六年から二〇〇八年で、ほぼ男女同数が東京都に右肩上がりに社会増していた時期になります。第三期は、二〇〇八年のリーマン・ショックが引き金になり、翌二〇〇九年以降、常に男性より女性が増加する男女の集中格差拡大期です。二〇〇九年から現在に至るまで、東京都の社会増は女性大なり男性で続いています。コロナ期に社会増規模は縮小しましたが、男女差はむしろ拡大。都道府県間の移動制限が条例等によって発令されていた二〇年から二二年の三年間では、実に男性の二・二倍の女性が東京都に社会増しました。最後に、現在に至るまでの第四期ですが、コロナで一旦は縮小傾向であった東京都の社会増が再膨張しています。男女格差はコロナ後縮小するかに見えましたが、昨年、二五年にはまた拡大を始めています。バブル期から現在まで、女性の社会増減が東京の中長期社会増減の予兆的存在となっている状況です。
 ここで、社会減エリアでよくある誤解について御説明します。
 どのエリアでも、人の移動は、片道だけを見ると、転出数や転入数がいずれも男性が女性より多い状況です。つまり、男性はよく動き、出ていく人も多いが、入ってくる人も多く、女性ほどは純減いたしません。一方、女性は男性ほどは出ていかないものの、戻り率が悪い。結果的に、男性より女性が大きく純減している状況です。このからくりを理解いただくために、資料に簡単な計算式を書かせていただきました。
 昨年も、北海道から九州まで講演のためエリア分析を行いましたが、地方自治体の多くがいまだに総数でデータを捉え、男女の差を見ることなく、アンコンシャスに男性の方が女性より多く減っている社会減イメージを持つ傾向にあります。昭和や平成前期時代は、男性の方が高学歴で当たり前、男性の方が仕事を求めて当たり前という常識があったのですが、それが統計的には令和の非常識となっており、アンコンシャスバイアスを深刻化し、社会減の解決を難しくしている面があります。
 こちらも非常に誤解が多いのですが、東京都で社会増しているのは圧倒的に二十代前半人口で、増加人口の六割超が二十代前半人口です。二十代後半人口も含めると、二十代人口が一極集中の八割から九割を常に占めています。東京一極集中は東京二十代前半人口集中とイメージください。いまだにこれを進学問題だと思っておられる方が御高齢者ほど多いですが、進学に関する東京都の社会増は常に一割台にとどまります。同様に、子育て世帯誘致が成功しているのだろうという見方についても、三十代人口の増加はゼロ割、二五年、二%という状況です。
 男女共に二十代前半人口が集中している背景には、四年制大学進学率がZ世代では男女共に五〇%を超過し、男女差も僅か六ポイントになっていることがあります。女性についてはいまだに短卒や高卒をイメージする方もいらっしゃいますが、徳島県などは女性の方が四年制大学進学率が高い状況です。男女共に、主に四年制大新卒男女が仕事を選んだ結果が東京一極集中の本質であると御理解ください。
 東京一極集中の各歳年齢構造の留意点です。
 三割が二十二歳、四年制大卒年齢です。二十二歳と一浪又は一留の二十三歳で四割を占める状況で、大卒新卒男女一極集中と言っていいかもしれません。また、十八歳の住民票移動は高卒就職をも含むこと、女性に多い二十歳は専門卒就職期に当たります。また、二十代後半の人口の社会増は、より働きやすい環境を求める若者、そして、結婚が統計的に多発する年齢ゾーンのため、男性については世帯生涯所得を落とさないための寿転職も含まれます。
 東京周辺の社会減エリアの団体や自治体とともに五年間実施してきた首都圏在勤、地方出身二十代女性インタビュー若しくはアンケート調査からは、今や二十代での複数回転職が女性でも珍しくなく、基本的に働き方環境ステップアップ転職であることが見えてきています。
 最後に、ふるさと人口の分析結果です。
 二四年、二五年と愛知県が前住所地で一位です。二三年は大阪府が一位でしたが、愛知県が抜きました。大阪府と愛知県で首位争いを継続しており、一極集中人口の約五人に一人が大阪又は愛知からです。
 よく、進学で地方から大阪や愛知の大学に進学し、そしてその学生が東京に来ているのではないかという御質問を受けますが、大学進学時にそもそも住民票を移動せずに実家のままにしている学生が四国経済連合会の内部調査では七割強存在し、二十代女性インタビュー調査でも、学校は仙台で住民票は実家の青森のまま、就職時に東京に移しましたといった回答が多い。大阪の大学での学生アンケートで出身地が大阪の学生が多い結果を考えますと、大阪や愛知をふるさととする学生の東京への就職移動が多いと思われます。
 男性は上位七府県、女性は上位九道府県だけで集中人口の五割を超過します。ふるさと人口の半数以上が愛知、大阪、兵庫、福岡、静岡、北海道、宮城、広島の僅か八エリアで形成されている状況です。
 東京の社会増の大半が二十代前半に集中していることを考えると、つまりは大都市間雇用競争での劣後、地方中核都市雇用人口ダムの決壊が東京一極集中の大きな要因と言えます。
 二つ目のテーマ、社会減エリアの基礎知識です。
 お伝えしたいことは二点。一点目は、人口のサステナビリティーを考えるなら年齢構造を常に意識しなくてはならないこと。二点目は、人の移動をあたかも駒のように考えてはならないことです。返してほしい、取られたという表現は、若者が地元を去った理由に向き合わず、残っている人々の都合からの欲しい人口の表明であり、解決にはつながりません。
 社会減エリアは、現在、大半の地域で若年男性減より若年女性減が進んでいます。二十代前半人口では特に女性が大きく純減しています。首都圏、大阪、福岡はバブル崩壊以降も社会増をキープしていますが、三大都市圏に定義されている愛知県でさえも、二〇一九年以降、社会減エリアとなっており、雇用人口ダムを持つ大都市は大阪と東京、二大都市圏だけとなっています。愛知県豊田市であっても社会減エリアで、福岡県も二十代人口では転出超過にあるため、今後の状況が懸念されます。
 グラフは、一都三県、大阪、福岡、滋賀以外の二五年に社会減した四十道府県の社会減を五歳階級と男女で見たグラフです。御覧のように、男性の一・三四倍の女性の減少となりました。ミラーで、社会増エリアは男性の一・三四倍の女性増です。際立っているのが二十代前半の社会減で、社会減全体への影響度は男女とも六割を超えます。二十代前半の女性の社会減は、御覧のように男性の一・二九倍。二十代前半において、男性の一・三倍の女性減はコロナ前から恒常的な社会減エリアの特徴となっております。
 社会減エリアの二十代男性余りについて御説明します。
 東京一極集中の三十年間で東京都に社会増した人口は、約男性八十三万人、山梨と和歌山の間の人口、女性九十八万人で、ほぼ富山の人口に匹敵し、女性が男性の一・二倍東京に増加しました。母娘一世代の間だけで、東京都に地方二県分の若者が移動純増しています。
 女性の方がそんなに東京に増えているなら、東京は女性余り、地方に婚活で女性を呼べるのではとの声があると伺いますが、統計的な答えはノーです。前回国勢調査で、東京都の二十代男女比は女性一〇〇、男性九九で、国全体の女性一〇〇、男性一〇四よりも良好なマッチングバランスです。
 ヒトという生物は、世界各国、男児が女児より五%多く出生します。男児の方が乳児死亡率が高いため、医療がない状態ならば二十歳辺りで男女同数になりますが、日本は医療先進国なので二十代でも男性が四%余っています。東京では出生時の五%の男女の差分が大きく、地方から女性が多めに流入超過することにより数がバランシングしているのです。
 このような二十代男性余りの弊害についてです。
 二〇年国勢調査時点で二十代男性が二十代女性よりも一割以上多い都道府県並びに二十一大都市は、秋田、山形、福島、茨城、栃木、宇都宮、群馬、富山、石川、福井、山梨、浜松、滋賀でした。
 九州エリアは、二〇年時点では二十代人口は女性が男性より多い構造だったのですが、コロナ以降、女性が男性より大きく社会減する現象が発生。例えば昨年、総数で、佐賀は男性の二・五、鹿児島は二・二、熊本は二、宮崎は一・五の女性が社会減しています。社会減四十エリア平均一・三倍と比べると、非常に大きな男女差となっています。
 男性余りのエリアでは、婚活面で男性が苦労する例が多く見られています。例えば、男女比が一・一倍以上の滋賀の結婚相談所では、登録者の九割が男性で、慢性的女性不足との報告です。また、東北の婚活イベントでは、中年男性の参加が多く、若い女性がそれを忌避して来なくなるという状況です。北関東も男性が非常に多く余るエリアですが、若い男性たちからは、マッチングアプリで二十代女性が少な過ぎるので首都圏の女性で検索するとのことです。
 最後に、二十代男性の寿退社についてです。
 結婚の際、女性が勤務先を変えるのではなく、男性が勤務先を変えて女性の就業地に転居する現象です。この話は、企業規模にかかわらず、二〇年辺りから人事担当者様から訴えを耳にしています。女性が所得を落とさず働き続けられる職場がある地域に男性が引っ張られる結果ですが、Z世代の男性は、生涯世帯所得を落とさないので済むのであれば寿転職に全く抵抗がなく、合理的な判断だと考えている状況です。
 社会減エリアの皆様が立ち向かわなければならないのは、実はジェンダーギャップなのではなく、ジェネレーションギャップであることをお伝えいたします。
 最後に、三つ目のテーマ、就職期の女性の社会減が生み出す合計特殊出生率のわなについてです。
 最初に結論です。日本では、都道府県単位、市区町村単位において、合計特殊出生率の高低と出生数減(少子化)に相関関係はありません。
 合計特殊出生率は、その計算構造上、上昇要因が三つあります。測定年度において、一、未婚女性割合が減少すること、二、既婚女性で子を産む女性の方の割合が上昇すること、そして三番目です、こちらが厄介なことですが、未婚女性が測定エリアから社会減すると高止まりします。ここが知られていないことが大問題。
 二十代の未婚女性が社会減する結果として、自動未婚化解消が発生します。国単位では、日本は移民定着率が非常に低く、女性人口構造への移民女性の影響がほぼゼロなので、女性移動の出生率への影響を無視しても構いません。一方、国内移動女性の九割が日本人女性の移動になっておりますので、自治体間出生率の影響を無視することができません。本日二つ目のテーマで御説明したように、日本の社会増減のメインプレーヤーは二十代前半女性であり、二十代前半女性の九割以上が未婚者です。つまり、自治体間では当然に未婚女性社会減による地方、中山間地域等における出生率の高止まりが発生しています。
 計算構造の御説明とともに、データ解析結果をお伝えします。都道府県単位でこの十年間において出生率の高さと出生数の減少率には相関関係はありません。つまり、これまでさんざん議会やメディアで議論されてきた出生率高低による少子化測定、評価は意味がありません。
 事前配付資料、基礎研レポート、都道府県合計特殊出生率、少子化度合いと無相関ですが、こちらは二五年三月、新潟県立大学国際経済学部学校推薦型選抜の小論文でほぼ全文近く出題され、学生のデータを読み解く力、社会に蔓延するデータ情報をうのみにしない能力が試されました。データサイエンスの重要性が認知され、データサイエンス学部を持つ大学が増える中で、ホットイシューとして出題されたと考えます。
 むしろ、出生率ではなく、都道府県の社会増減率と自然増減率が高相関となっている状態です。〇・八の相関はとても強い相関関係です。
 社会増減率と自然増減率の関係性では大きくパターンが二つあります。パターン一は、若年女性が出ていくことにより婚姻減から出生減へ、そして自然減率が悪化するという正の相関。パターン二は、社会減で高齢者が出ていく例えばアメリカの年金村、リタイアメントコミュニティーのケースです。高齢者が流出することで死亡減が発生し、自然減と社会減が負の相関に傾く傾向となります。
 日本の社会減エリアは、二十代女性流出率が高いエリアほど深刻な出生減が引き起こされています。つまり、出ていった女性から発生するはずだった婚姻機会損失が少子化を加速しているパターンです。
 以上が二十分という時間での御説明となります。不足分は、二四年出版、一月に第三刷りとなっている拙書、「まちがいだらけの少子化対策」がネット、書店などで御購入可能ですので、お手に取っていただければ幸いです。
 また、最新のデータ分析結果はニッセイ基礎研究所のホームページで公開しており、メールマガジン会員にはリンクが届きますので、皆様の科学的な人口問題解決の一助となればと願っております。
 御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 天野馨南子

日付: 2026-03-04

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会