山田昌弘の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(山田昌弘君) よろしくお願いいたします。中央大学の山田昌弘でございます。(資料映写)
 ほぼ二十年ぐらい前にこちらで一回発表させていただいたことがあるんですけれども、そのときとほとんど同じことを言わなくてはいけないというのは、果たしていいことか悪いことかということでございます。
 自己紹介ということで、こういうふうになっておりますが、全国を調査、家族関係の調査、結婚支援のため飛び回っておりますが、まあ自称ワン・オブ・ザ・モスト・ペシミスティック・クリティクス・イン・ジャパンと海外では言っておりまして、例えば学生に対しては、皆さん方の、百人いたら、うち二十五人は一回は、二十五人は一生結婚できないぞ、結婚した七十五人のうちの二十五人は一回は離婚するぞ、皆さんのうちで結婚して離婚せずに高齢を迎える人は二人に一人もいないんだぞというふうに脅して、学生に暗い顔して帰らさせて、帰ってしまっているんですが、まあ少子化問題というのはもう三十年以上少子化、少子化と言われ続けていて、結局、日本では放置してしまったということだと思います。三十年前から少子化が始まったということは、その頃に生まれた子供が出産期に入っているから、それは出生数の減少が起きるのは当然でございます。
 あと、天野参考人がお話ししていたように、東京は実は余り減っていないんですね。報道であったように、去年、藤井参考人がいらっしゃるんですが、報道であったように、去年は東京では何と子供の数が増えたという速報値で報道があります。
 東京では、天野参考人は十五年単位でしたけど、二十四年単位で見ると、東京区部では六%しか減っていないんだけれども、岩手、青森、秋田といったようなところでは子供の数が六割減っている。いや、それ以上に私は、統計を取ってびっくりしたのは離婚の変化で、二十年ぐらい前は全国どこでも大体三組に一組の離婚という割合だったんですけれども、ここ二十五年で東京の離婚の割合がどんどん低下して、逆に地方における離婚の割合がどんどん上昇して、とうとう青森、高知、沖縄では、二組結婚あると一組離婚するという状況になっております。これも経済的な状況が影響しているんだと思います。
 ということを見ますと、テーマとして、なぜ日本で少子化対策が失敗したかというテーマなんですけれども、よく考えたら、東京では日本の少子化対策は成功しているとも言えるわけです。
 つまり、私の判断だと、日本の少子化対策は都市部の正社員、特にオフィスワーカーの女性を主たる対象としてきた。つまり、保育所の整備がなされて育児休業が充実した、つまり、正社員での共働きがしやすくなったということが東京での少子化を食い止めている。
 一方で、地方では、そもそも正社員女性が少ない上に、まあ私、地方の調査等をしていますけれども、地方は観光業とかいわゆる夜職と呼ばれる女性が結構多いので、そういう人たちは保育所は利用できないわ育児休業は利用できないわ、つまり、地方で存在している弱い立場の女性になかなか少子化対策の恩恵が及んでいないというのが現実だと思います。
 私も、あるフリーランスの女性にインタビューしたときには、夫は自営業なので何も手当がないし、フリーランスだから育児休業も何も手当がない、踏んだり蹴ったりというふうに言っていたのを思い出しました。
 藤井委員が説明したように、日本の少子化の直接要因は未婚化の進展、結婚していない人の増大でして、三十年ぐらい前から、四分の三が結婚して大体二人弱産んで、四分の一が未婚という構造はほとんど変化していない。そのために一・二から一・五の間を、合計特殊出生率が三十年間ほぼ低いままだということが言えると思います。
 先ほど藤井委員からもありましたけれども、最近低下傾向にありますが、いまだに男性の八割、女性の八四%は結婚をしたいと思っている。思っていた、いや、結婚した人も加えると、二十歳時点では少なくとも九〇%以上の人が結婚したい、したいと思っていたということだと考えられます。
 ここで、まあちょっと問題があるところなんですけれども、少子化問題の不都合な真実というのがありまして、結局収入の不安定な男性が結婚相手として選ばれない。マッチングアプリに幾ら登録しても、いや、そもそも登録できないような相談所も多いわけですけれども、日本では結婚は出産の前提であり、収入が安定した男性の人数は減少し、限りがあるというところがあります。
 結局、少子化対策に必要なことは、収入が不安定な男性であっても結婚できるような条件を整えるようなことを行わないと、なかなか少子化対策にはならない。ヨーロッパやアメリカだって収入が不安定な男性たくさんいるじゃないかと言われるかもしれませんけれども、私は、三十年前にパラサイトシングルという言葉を言われましたけれども、日本やアジア、南ヨーロッパといった国々は結婚まで親と同居しているんで、親と同居していると、収入が不安定と、で、結婚すると生活水準が落ちるというところがあります。逆に、ヨーロッパやアメリカでは、そもそも収入が少ない同士で結婚するということが、まあ同棲、結婚ということがむしろ合理的な選択になるわけですね。
 結婚の二つの意味というのは、経済的に新たな生活をスタートさせるという側面と心理的側面、好きな人と一緒に暮らすという側面がありますが、現代社会は一の実現が困難になり、二の面も弱くなっているということがあります。つまり、独身時代の生活と比べ、結婚後の生活が良くなるかどうか、結婚して生活が落ちちゃったら嫌だという意識は当然働きますし、それ以上に、自分が育った以上の環境を子供に提供できるかどうか、子供につらい思いをさせたくないという意識が日本、まあ日本だけではなくて、これは東アジアの少子化にも関連しています。
 一九八〇年頃までは、結婚すればほとんどの人が今以上の、親以上の生活が期待できた。そして、子供を自分と同等以上に育てることができた。しかし、一九九〇年以上は、結婚して今以上、親以上の生活が送れないかもしれないという不安が強まってきた。これが日本の少子化の原因だと思っています。
 八〇年代頃までは、まあ経済的な心配はなく、出会いが容易で、恋愛への憧れがあったんですけれども、九〇年以降は、むしろ結婚したら中流生活を送れなくなるんではないか、もう既に今、一九九〇年頃から若者は豊かな環境で育っている。私はもう六十八歳、もう相当年ですけれども、私が小さい頃は、本当に親が貧乏で、早く家から出て結婚すればもっといい生活ができるという期待を多くの人が持ったんですけれども、もう三十年くらい前から、親に豊かに育てられたから、それ以上の環境を子供に与えられなければ結婚しないという意識がつくられていったわけですね。
 さらに、若者の格差というものが、男性も、書きましたけれども、男性も女性も、格差社会という言葉も私がつくったんですけれども、格差社会と呼ばれるように、若い人たちの収入格差が開いていく。とすると、どうしても収入格差の弱い人たちがなかなか結婚できなくなるということなんですね。
 今日は時間がないので、主に経済的な不安についてのお話をしたいと思いますが、これは、これもう十五年ぐらい前の調査なんですけれども、結婚相手に望む年収と現実の未婚男性の年収の比較なんですが、男性の多くは女性に収入はこだわらないと言いますけれども、女性の多くは四百万以上、六百万以上、八百万以上というふうに答えて、かつ、それが現実の男性の収入には遠く及ばないという状況になっております。
 実はこれ、十年ぐらい前にイギリスで発表したとき、イギリスの研究者から、おまえはこんなルード、失礼な質問をするのかと言われたことがあります。イギリスだったら、相手を年収で選ぶなんてけしからぬ、愛情で、愛情で選ぶべきであって、愛情があれば相手の収入なんか関係ないと男女とも答えるはずだというふうに言われたことがあります。
 で、コロナ前ですから七年ぐらい前、これを中国で発表しました。中国で発表したら、中国では相手の男性の年収ではなくて男性の親の貯金を聞くというふうに言っていまして、中国だと男性の親が家とか車を用意しないと結婚できない。だから今、日本以上の、中国も格差が広がっていますから、日本以上の少子化が進んでいるわけですけれども、これは八年前です、ほぼそれに関しては変わっていません。
 先ほど藤井参考人がデータで示したように、最近は男性も女性に収入を求めるようになってきているというのも事実であって、つまり、男性も女性も収入が少ない人はなかなか結婚相手として選ばれにくいという構造が続いているわけです。
 ちなみに、これは読売新聞の「発言小町」というサイトから引用してきたんですけれども、年収四百万というのが気に入らなくて、会わないと言っています、ここがポイントなんですよ、ママは専業主婦だったのに私が働かなきゃいけないなんて、まあけしからぬとは言いませんけれども。
 つまり、経済が成長している時代は、幾らでも自分の父親よりも収入の高い男性が見付かって、自分の母親以上の生活ができたんだけれども、経済が余り成長しない時代には、自分の父親と同等以上の収入を稼げる男性を見付けることがだんだん難しくなっている。それが、まあ四分の三の人はそういう形で見付けるわけですけれども、四分の一の経済的に弱い層がなかなか結婚できなくなっているというのが現実でございます。
 ということで、ヨーロッパと同じような対策をしたのではなかなか難しい。一つは、パラサイトシングルという、いわゆる自分の親の元で過ごす。仕事よりも子供という意識が強い、かつ、恋愛感情というものが余り日本では強くない。そして、一番大きいのは子供の将来に対する責任意識の強さで、子供に惨めな思いをさせたくないという意識が強い。これは先ほど藤井参考人がしたデータなので、割愛させていただきます。
 かつ、日本では生活においてリスクを回避する志向がとても強い。私が一番ショックだったのは、どういう人と結婚したいかって学生にアンケートを取ったときに、母親から、奨学金を借りている人とは付き合ってはいけませんというふうに言われたという回答が出てきたときは、これは私はのけぞりました。特に、娘の親は特にこだわるわけですよね。
 人のマイナス評価を避けようとする意識があって、日本って中流意識が強いですから、友達と比較して遜色のないような結婚がしたい、遜色が、何か差が付くような結婚はしたくないという意識もあるんだと思います。つまり、将来結婚して子供を育てて、老後まで中流生活が送れないということであれば、親元で待つというような戦略が取られて、結果的に四分の一の人が未婚になるという状況でございます。これは今言ったことをまとめたことでございます。
 これは参考までに、幾つか私の調査した中で、男性の収入が高くなかったので娘のためにと大反対して結婚をやめさせたんだけれども、その後現れなくて四十代独身、どうしたらいいと。私、読売新聞の人生相談の回答者もしていますので、こういう相談も出てくるわけですし、娘にはいい教育受けさせたんだからお金持ちとしか結婚させないというふうに言っている親の話を聞いたこともありますし、仲人に関しても、契約社員の男性を釣書きとして持っていったら、何でこんな男を紹介するんだ、もっと高収入の男性を持ってこいというふうに言われて絶交されてしまった仲人さんの話とか、そういう話をよく聞くわけでございます。
 ということで、あともう、済みません、時間が限られてきましたので簡単に説明させていただきますと、収入が不安定な若者の結婚を推進するために必要なのは、一つは、まず男女共同参画の更なる推進だと思います。特に、天野委員がおっしゃっているように、地方において女性の地位というのはとても低いということが女性の移動を促しますので、特に地方において女性の経済力を高める、夫婦二人の収入で人並みの生活が、つまり、子供に惨めな思いをさせなくて済むような生活をということです。
 あと、これは効果としては少ないんですけれども、例えば、地方を調査していくと、一人息子と一人娘が余っている地域に私はよく行きました。じゃ、結婚すればと言うと、お互いに後継ぎだから結婚させられないというようなことがあります。だから、夫婦別氏などを進めればそういう多少の効果はあると思います。
 あと、今、家族社会学会、私、去年まで会長だったんですけれども、そこでは今、レズビアン女性で子供を育てている人の研究がすごく盛んになっております。そういうところも認めれば、認めるようにすれば多少は増える、まあ多少ですけどね。もちろん、社会保障に重要なのは一と三で、社会保障による子育ての下支えが必要かなというふうに思います。
 結婚前は親同居というのはなかなか変えられないでしょうし、女性が収入の安定した男性を求めるというのは、女性の収入がより安定すれば男性を収入で選ばなくなるという側面もあるでしょうし、ただ、お金より愛は大切というふうになかなか、言ってもなかなか、今は学生、恋愛離れが進んでいますので、若い人は恋愛離れが進んでいます。子供は子供という意識にはなかなかならないということです。
 あと、対策ということで、一つはもちろん、若者が結婚し、子育てが負担にならない条件を整える、これはもちろんやってきていることですけれども、それも特に地方で収入が少ない人に対する対策ということを考える必要があると思いますし、さらに、もう少子化がこれだけ進んでしまっているので、中高年独身者が今、藤井さんのグラフにあったようにたくさん、たくさんというか、もう三割、四割というレベルで出てきてしまっていますので、中年独身、高齢者の居場所づくりが必要ですし、また介護労働力不足への対策も必要になってくると思います。
 男女共同参画の視点、正社員支援の正社員中心主義、都会、地方格差等を重点的に考えていただければと思います。特に、高等教育費の軽減なり結婚支援というものが必要になってくると思います。
 もちろん、私が調査している中で好事例があります。農家の嫁といって募集したら誰も来なかったんだけれども、牧場の共同経営者募集といってパーティーをするとたくさん集まってくる。これ、言葉だけではなくて本当にそういう形、今農業、若い人たちで農業への関心が高まっていますから、農家の嫁でこき使うというような発想では地方の農業の未来はない。女性もしっかり共同経営者として活躍できる環境を整えるといったことが特に農村地域では必要になってくると思っております。
 ということで、もう時間がないので、報告書、もし後で質問があればお答えしたいと思います。
 私は二つの問題関心があって、じゃ、独身者の親密関係はどうやって満たすのか。最近新聞にお願いされたのは、AIと結婚した人についてのコメントとか頼まれたことがありますけれども、ペットであるとか推しであるとか市場調達である。市場とキャバクラ、例えばキャバクラは、日本で五万五千店、大体百万人ぐらいの人がキャバクラで働いている計算なんですが、そういう人に話を聞いてもらっている男性もたくさんいるわけでして、そういう日本的な文化というものが独身者の寂しさを埋めている、埋めてはいるんですけれども、果たしてそういう形がいいだろうかという疑問は生じるわけです。
 さらに、今、私が、そうですね、三十年前にパラサイトシングルという言葉をつくったときに、何十年後かには中高年になって大変なことになるぞというふうに二十五年前の本で指摘しておいたんですけれども、結局、当たってほしくない予言どおりになってしまいまして、中年、高齢者の親同居未婚者がたくさん出てきてしまっているという対策をする必要はあるかと思います。
 これは私、講演の後で常に引用しているんですけれども、ビル・クリントン元大統領、もうみんな、若い人全く知らないんですけれども、過去は過去、過去を追い求めると未来を失う。つまり、昭和の時代、男は仕事、女は家事でみんな結婚して子供を産んだじゃないか、その過去に戻せばいいんだという人もいらっしゃることはいらっしゃるんですけれども、でも、そういう経済環境、社会環境が変わっている中で、そういう過去の成功体験、伝統意識にしがみつくと未来を失ってしまうんではないかということで、閉じさせていただきたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 山田昌弘

日付: 2026-03-04

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会