根本祐二の発言 (国民生活・経済に関する調査会)
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○参考人(根本祐二君) 東洋大学の根本と申します。本日は、貴重な機会いただきまして、ありがとうございました。
それでは、資料に基づきまして御説明を申し上げます。
一枚めくっていただきまして、いただいた課題は社会資本の経年劣化ということなんですけれども、私どもの世界ではインフラというふうに総称しておりますので、インフラという言葉を使わせていただきます。
まず、インフラ老朽化を放置するとどうなるかということなんですが、インフラというのは、コンクリートとか金属とか木材、寿命が有限の資源でできていますので、これはいずれは壊れるということです。
建築物であれば倒壊するということですね。全体が倒壊することはそうはないんですけれども、天井が壊れたりとか、あるいは柱が壊れて使えなくなるということは割と頻繁に起きているということです。
それから、道路につきましては、高速道路と一般道路とありますが、高速道路は既に首都高速道路が、ほぼ橋なんですけれども、老朽化の更新の時期に入って更新工事が始まっているということ。
それから、一般道路につきましては、一番怖いのは陥没事故でございまして、皆さん御案内のとおり、八潮市の方で陥没事故が起きましたということで、ここだけ特に御注意いただくために、右側にちょっと参考情報として書いてございます。
中でも道路陥没事故が一番怖いということで、なぜ怖いかというと、まず見えないからなんですね。地面の下に空洞が起きている。なぜ起きるかというと、下水道管が破損して、その穴の中に上部の土砂が吸い込まれていって空洞ができるということですので、道路の表面を見ていても気付きようがないと。ある日突然、空洞が地表表面まで到達して崩落するという、こういうことになりますので、見えないというのが一番怖いことです。
もう一つ怖さがありまして、実は管理者が別々でございます。道路は道路管理者、下水道は下水道管理者ということで、例えば国道の下に地方の下水道が通っていたりすると、国と地方の縦割り行政という弊害が出てまいります。下水道の方のマネジメントを幾らやっても、空洞は道路の下に発生していますので、なかなかあそこまで届かないということがありますので、下水道だけではなくて、道路法の方もしっかりと点検を義務付けていく必要があるということであります。
それ以外に、橋につきましては崩落をするということ、トンネルにつきましては、笹子トンネルの事故がありましたけれども、天井板が崩落するということ、ダムは決壊、あと、水道につきましては、人身事故にはならないんですけれども、破裂すると断水するということで、水道管の管渠の事故が年間実は二万件発生しているということで、毎日のように新聞等でどこそこの水道管が破裂しましたというのが流れているということであります。
下水道につきましては、今申し上げた空洞の事故、空洞が一番怖いんですけれども、下水道に起因する道路陥没事故は年間三千件起きているということですから、今そこにある危機ということになります。
次のスライドです。問題発生の原因ということで、本質的な対策は、これ老朽化していますので、造り替えるということしかありません。幾ら手当てをしても限界がありますので、更新するということですね。更新投資ということが最も根源的な解決方法になるので、そうすればいいではないかということなんですけれども、それができないのは、これは予算の問題になります。
インフラ投資比率という数字があります。これは、GDPの中に公的資本形成といういわゆる公共投資がありますけれども、それのGDPに占めるウエートを見たものでございまして、高度成長期は一〇%程度、GDPの一〇%を公共事業に使っていたということです。近年はこれが五%、半分になっているということです。
これからインフラをもう何もしないということであれば少なくてもいいんですけれども、少なくとも、一〇%の時代に造ったインフラを更新しなければならないわけですよね。にもかかわらず、財源は五%しかないということでありまして、ざっくり言うと、今のままではインフラの半分しか維持できないということであります。これが分かったというのが近年の研究の大きな成果というふうに言われております。
ちなみに、個別に見てみますと、一番厳しいのは橋梁、橋でございまして、右側のピラミッドグラフ御覧いただきますと、一九七〇年代に年間一万本の橋を日本全国で架けていました。橋の耐用年数は六十年と言われていまして、二〇三〇年代には、この一万本の橋を架け替える時期が到来するんですけれども、足下の橋の架け替え件数というのは百本から二百本ぐらいということです。百本の予算で一万本の橋を架け替えることは土台無理だということになりますので、どうすればよいかということです。
これは橋だけではございませんで、下に学校もあります。学校も同じようなピラミッド型をしています。水道、下水道、あと公営住宅、こういったものも全てこのピラミッド型の投資をしてきた。その結果が、この左側のGDPのウエートが一〇%から五%になったということであります。
恐らく、この五%の予算を一〇%に増やしてくださいというふうにお願いするのが従来型のお願いになるんですけれども、それができるとは到底思えないということでありまして、五%の予算の範囲内で何とかやりくりするにはどうすればよいかというのを今地方の現場ではいろいろと考えているということであります。その話をこれからいたします。
次のページが省インフラというふうに題しております。予算を増やせない以上、大幅に増やせない以上、インフラの原単位をできるだけ下げる必要があります。二〇一三年にインフラ長寿命化基本計画というのを国の方で策定をしておりまして、したがって、国の政策としてはもう転換しているということなんですが、やはり削減する、インフラを減らすということには非常に抵抗が強いという現状にあります。
したがいまして、インフラがあることが豊かなのではなくて、インフラが減っても豊かな生活を送れるようにするという発想の転換が必要だよねということで、これを省インフラというふうに名付けております。これは省エネルギーと同じことでございまして、エネルギーをふんだんに使う生活が豊かかもしれないけれども、それができない以上は省エネルギーをしましたよねということと同じでございまして、インフラを今までどおり維持することができないのであれば、どうやってインフラが減っても生活が豊かになるかを考えましょうということであります。
ちなみに、四ポツ目に、二十世紀は世界中が高度成長しというふうに書いてあります。これは、実は日本固有の問題ではなくて、これから世界の各国が同じような危機に見舞われます。そのときに省インフラを日本が産業化していれば、これ輸出産業にすることができると。省エネがもうまるでそうであったように、日本経済を支える大きな原動力になり得るのではないかというふうに考えているところであります。
その下にあります表は、こういうふうに考えると省インフラができますよということで私が提唱しまして、様々な地方自治体の皆さんに提示をして、御自分の担当のところで何ができるかを考えてくださいというようなことを発想していただくための簡単なシートでございまして、これ切り取って机の前に貼っておいてくださいと、こういうふうにお願いをしているところであります。インフラが減らせないということを理由付けするのは簡単にできるんですけれども、減らしてもインフラが持っていた公共サービスの提供機能を維持するということに知恵を絞ってほしいということであります。
その次のページ以降に少し事例も含めて書いてありますので、簡単に御説明をしたいと思います。
まず、機能を維持して量を削減する方法ということで、これは主に公共施設、箱物について適用可能でございます。箱物は、箱そのものが公共的なのではなくて、箱を使って行うサービスが公共的なわけですので、箱を減らしてもできるでしょうということになります。
一つは広域化で、近隣の自治体同士で一つのインフラを共同設置する。例えば、廃棄物処理施設とか病院とか学校とか、様々事例はございます。
それからソフト化、これはインフラを所有する以外の方法で提供しましょうということで、民営化であるとかリース方式であるとか、あるいは利用権方式というのが最近出てきておりますけれども、箱をつくるのではなくて、民間につくっていただいた箱を時間借りするというような、そういうやり方、これが行政財産になるんですけれども、そういうやり方も出てきております。人口減少時代に、資産を増やすという方向ではなくて、必要なものはソフトで対応するという発想になります。
それから集約化、これはいわゆる統廃合のことでありまして、学校統廃合、実は公立小学校の数はピーク時二万五千校あったところが今は一万九千校に減っています。既に六千校統廃合が行われていて、これだけの廃校舎が存在するというような状況にありますので、これを更に加速していく必要があるということです。
それから、共用化というのは、学校と地域で同じ施設、同じ種類の施設を持っている場合があります。図書室とか体育館とか、あるいは調理室とか、そういったものは一つにして時間を決めて共用してはどうかということで、これも多くの事例がございます。
あと、多機能化ということで、一つの施設に多くの機能を設置するという、複合化施設であるとか、あるいは既存施設に機能を移転していくというような事例もございます。
いわゆる土木インフラには、なかなかこの量を削減するというのは難しいんですけれども、横断歩道橋を廃止しているという事例はかなり多く出てきているということで、これは、横断歩道があれば横断歩道橋を渡る必要ないし、そもそも高齢化してなかなか渡らないので歩道橋を廃止しましょうという事例でございます。
今申し上げたのは主に箱物について適用するんですけれども、土木インフラの方はなかなか難しい。というのは、ネットワークですので、人がいなくてもネットワークつないでいないとサービスが提供できないんですね。したがって、今行われているのは、量は維持するけれども費用を削減する方法ということでありまして、予防保全、日常点検をしっかりやって壊れないようにするというようなこと、ここが一番脚光を浴びて様々な技術開発がなされているところであります。
しかしながら、修繕の予算がないよということもありますので、その先にあるのがリスク・ベース・マネジメント、これはもう重要度に応じてグレードを変えるということであります。重要なところはしっかりと予防するけれども、そうでないところはもう壊れたら対応する、あるいは壊れても対応しないというようなことを階層分けしていく必要がありますということで、ここでは富山市の橋梁トリアージというのを出していますけれども、まさに医療用語のトリアージをインフラに適用するということで、もう資本を投下しても意味がないようなところは、もう申し訳ないけどそこはギブアップするというようなことも現実には始まっているということであります。
それからその次が、施設やネットワークを使わない方法ということで、箱物がないとできない、あるいはネットワークインフラがないとできないとなりますと、これは人口減少時代にはもうとても維持できなくなります。
したがって、別の方法を使うということで、分散処理というのは需要地で処理をすると。典型的なのは、下水道における合併処理浄化槽になります。公共下水道の計画はあったけれども、ここから先はもう下水道をやめて、公共下水道をやめて合併処理浄化槽に切り替えていくという事例も非常に多く増えています。
あとは、次がデリバリーですね。インフラを使わずに公共サービスそのもの、あるいは担い手が移動するということで、訪問診療とか訪問介護というのは、診療所はつくらないけれども、看護師さんが訪問してくれるというようなサービスですね。あとは、移動図書館をつくると、設置すると、車で移動するというようなものです。
あと、バーチャル化ということで、これはDXになりますけれども、図書館の代わりに電子図書館にするとか、あるいは学校を設置しないで遠隔教育で対応すると、こういったことが実際に行われているということであります。
次のページが、サービスの受け手が移動する方法ということで、実は今まで申し上げた方法もかなりドラスチックだと思われたかもしれませんが、人々が居住しているところにサービスを届けるという大変優しい政策であるというのは共通しています。サービスの受け手が移動する方法というのは、そういったサービスが持続できなくなったら、今度は受け手の方に移動してもらうしかないのではないかということであります。
ただ、やはり実際に移動するというのは大変なことですし、なかなか実現性がありませんので、私の発想では、人口一万人ごとに一つの拠点を設ける、そこに日常生活の用が一〇〇%足りるようなものとして、小中学校であるとか商業施設、ガソリンスタンド、あるいはクリニック、コインランドリー、こういったものを配置する。これは人口一万人であれば十分に成立するようなものです。
これが全国に一万か所設置できるということで、実際にどこに設置したらよいかというのをシミュレーションをしております。右下の日本地図がそのシミュレーション結果でございまして、これ東京一極集中していないですよね。地方圏にも十分残ると。一万人のまとまりをつくるのはそんなに難しいことではありませんということですので、これなら実現可能ではないかということで、多くの地方で御相談をしているところであります。
人々、住民の皆さんはみんなここに集まってくださいという必要もありませんで、今までのお住まいにそのまま残っても構いません。ただし、公共サービスの提供形態は変わりますと。拠点に近づいていただければ小学校はあります。今お住まいのぽつんと一軒家みたいなところにお住まいになりたければそれでも構いませんけれども、学校はそこにはありませんよと、水道管もありませんよと、公共下水道もありませんよと、その代わり別の方法で対応いたしますというようなやり方で選択をしていただくということを考えております。
こういった拠点がないと、結局は日常の用が全く足りないということになりまして、みんな大都市の方に移動してしまうということですけれども、日常の用が一〇〇%足りる拠点が身近にあれば、そこで止まるのではないかというふうに思います。
したがって、拠点をつくってそこに集中投資するというのは、地域の切捨てではなくて、過疎化の防波堤になりますよというふうなことを考えております。計算いたしますと、全ての日本国民の九九%の方は、この拠点の周辺、車で一時間以内の場所にアクセスできるということでありますので、十分カバーできるということです。ここはこういうビジョンをつくって促していくという意味で、国の大きな指導力を期待しているところでございます。
次が、こういうことをやったら一体どうなりますかということなんですけれども、計算をしてございます。結果的には、今申し上げたようなことを行った場合の削減率というのは四八・八%と。冒頭、予算がざっくり半分しかないと申し上げましたけれども、こういうやり方であれば予算が半分であっても持続することができるということであります。言い換えると、このぐらいのことをやらないと予算が足りなくなって更に危ない事態になってしまいますよということであります。
最後に、最後のスライドになりますが、とはいっても、今までと全然違うことをやるので、なかなか合意が形成できないんではないかということです。
実はインフラの九割は地方が持っています。国が持っているのは一割だけですので、地方公共団体の方でしっかりしていただかないといけないんですけれども、どうしても、住民の声を聞いてしまいますと、今までどおりの学校が欲しい、今までどおりの公民館が欲しいと、ここに橋を架けてほしいという、そういう要望が出てきますので、なかなか対応に苦しんでいるということです。
これら省インフラを進めるための三原則というのを私、出しております。一つは、全体計画の明示。一部のことだけを言わない、全体でこういう計画で進めるんですよということを言う。それから、合理的な基準の設定。その計画を作る上でどういう基準に基づいて作ったんですかということをしっかりと説明をする。公平な運用。一回作った基準をぶれさせないということは非常に大事だろうと思います。声の大きな人の意見は通るけれども、そうでない人の意見は通らないとなると、誰も従わなくなるということであります。
御参考までに、東洋大学の方でずっと支援をしております岩手県紫波町、オガール地区という有名な地区がありますけれども、ここがオガールの再生の次に学校統廃合に着手しておりますが、このような形でしっかりと計画を作って、何年にどことどこを統合するかというビジョンをしっかり示す、廃校舎も次に何に使うかというのをしっかりと予定をして、地元の方に見せながら合意を形成していくというようなやり方を取っております。
したがって、この三原則を守ることで合意形成は進むのではないかということで、日々私自身はこれを説得して回っているということですけれども、全体として深刻な問題ではありますが、全く解決策がないわけではないということが本日の結論となります。
以上、どうもありがとうございました。