小塩隆士の発言 (国民生活・経済に関する調査会)

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○参考人(小塩隆士君) 一橋大学の小塩と申します。こういう貴重な御報告の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。(資料映写)
 私の方からは、社会保障の展望ということで簡単に御説明したいと思います。
 一ページ目めくっていただきまして、本日お話しする内容を紹介しております。
 早速一番目のテーマについてお話をいたします。
 要するに、政府におかれましては社会保障の将来展望をできるだけ早めに出していただきたいということでございます。現在政府から公式に出ている見通しは実は八年前のものでして、二〇一八年のものです。二〇一八年から二〇四〇年にかけて社会保障の給付がどういうふうに変化するかというのを四省庁が合同で出したもの、これが最新なんですね。その後、コロナの問題等々ありまして、なかなか新しい数字を出すのが大変だったというふうに思うんですけれども、これだけ社会保障の問題というのが深刻になって将来見通しがはっきりしないということですので、是非出していただきたいなと思います。
 御存じのように、社会保障国民会議というのが開始されていますけど、中身は消費減税の話とか、あるいは給付付き税額控除の話ですよね。それはそれぞれ重要だと思うんですけど、社会保障国民会議と言うぐらいですから、是非社会保障についても議論進めていただきたいなと思っています。
 次のページに、今ある見通しと、それから足下の実績がどうなっているのかというのを簡単に見せさせていただいたのがこれなんですけど、実績というのが青い曲線、それから見通しに書いてある計画が赤い線なんですね。
 二〇一八年が計画のスタートラインなんですけど、これを見ていただくと分かりますように、今走っている計画は二〇〇〇年に入ってからやや落ち着いた動きをそのまま外挿しているということだと思うんですね。その後、コロナ関連の社会保障給付費、ばんと膨らんだんですけど、その後落ち着いてきております。
 二〇二三年が一番新しい数字なんですけど、今その昔の計画で想定していたものに戻るのかどうかというのが非常に重要なポイントだと思うんですね。私の感じでは、かなりのところまで昔の計画に戻るんじゃないかなと思います。そうすると、それほど、高齢化でもう社会保障給付が雪だるま式に拡大して、もうどうしようもない、手が付けられないということではないかと思うんですけれども、それでも、将来の見通しがはっきりしないと、足下の消費減税の話どうするかとか、給付付き税額控除の話をどうするかという話を長期的な観点からできないので、是非これは政府に出していただきたいなと思っています。
 そこで、じゃ、具体的にどういう問題が今あるのかということなんですけど、社会保障の問題は、お話をすると大体暗い話が中心になって気がめいってしまうんですけど、明るい話からお話始めさせていただきたいと思います。
 少子高齢化といいますと、普通私たちはどういうふうに考えるかというと、社会の支え手がだんだんと減ってくるということですね。それを示すのが生産年齢人口の数字なんですけど、十五歳から六十四歳までですね。その人たちの総人口に占める比率というのは確かに低下しています、それを示したのがこの上の方の曲線なんですけど。でも、世の中の支え手というのを考えると、生産年齢人口の上限は六十四歳なんですけど、六十五歳を超えても働いていらっしゃる方もいますし、それから、十五歳が下限なんですけど、高校生は働いていないわけですから、支え手かと言われると、そうでもないところありますね。
 じゃ、支え手ってどうやって計算したらいいのかなと思うんですけど、一番単純な方法は、就業者の比率を、総人口に対する比率を見ればいいということなんですけど、これを見ていただきますと、二〇一〇年ぐらいをボトムにして上昇傾向にあります。だから、少子高齢化が進んだとしても、世の中の支え手はむしろ上昇に転じているということです。
 この上昇に転じている主役はどなたかといいますと、高齢者なんですよ。六十歳後半、まあ前半もそうですけど、後半の人たちの労働市場に入ってくる機会が増えてくるということですね。これが非常に新しい、しかも明るいニュースかなというふうに思っております。
 この動きを着実なものにしていただきたいなと私強く思います。そうすることによっていろんな改革が進みやすくなるんじゃないかなと思いますね。高齢者の人が働けば、それだけ経済も、経済の供給能力も高まりますし、それから税や保険料の収入も増えますからね、政府から見て。そうすると、改革が非常にやりやすいなというふうに思いますので、これを是非進めていただきたいなと思います。
 じゃ、どれだけ高齢者の人に追加的に働いていただけるのかという試算の結果をお見せいたします。
 これは、健康だけが人々の働き方を決めるということであれば、年金とかそういうのを、定年とかそういうのを除いてですね、健康だけが働くか働かないかというその決定要因であるというふうに想定すると、潜在的にどれだけ高齢者の就業率が高まるのかということを計算したんですね。それぞれ男女別にしたんですけど、六十歳後半が一番政策的に重要なんですけど、大体男性の場合三割、女性の場合は二割ぐらい引き上げることができます。
 なぜこの人たちは就業していないかというと、年金をもらっているということ、あるいは定年を迎えて引退しているということなんですけど、健康面から見るとまだまだ働けるよというふうな人が多いので、もったいないわけですよね。これだけ支え手が少なくなっているんじゃないかというふうな危惧が高まっているのですから、是非こういう人たちに働いていただければなというふうに思っています。
 ただ、そのためにいろんな改革が必要だと思います。一番手っ取り早く手を付けないといけないのは、在職老齢年金という仕組みなんですね。これは、働いたらそれだけ賃金がもらえますから、あなた、年金要らないでしょうということで削減される仕組みなんですね。それは公平な仕組みなんですけど、一人一人から見れば、働くことに対してブレーキを掛けるという面があります。ですから、これは私は避ける、改めるべきではないかなと思います。
 ただ、そうすると、高賃金で年金も高い層を優遇するという、そういう金持ち優遇の仕組みじゃないかというふうに言われるんですけど、そういう面はあるかもしれないけれども、それは税で見たらいいんじゃないかなと思います。年金でもどんな所得でもいいんですけど、たくさんあなたは所得もらっていますね、じゃ、税金もたくさん納めていただきましょうというのは、それこそ現役世代との公平性というので見ればいいんじゃないかなと思います。
 具体的に言うと、公的年金等控除という仕組みがあります。これ自体は年金だけで頼っている人たちを支援するという仕組みであるんですけれども、たくさんお金もらっている人からは現役と同じような税金の負担の仕方をお願いしますということは、ある程度言っていいんじゃないかなと思いますね。
 それからもう一つは、定年を迎えて第二の人生を歩むときに、サラリーマンとして元の会社あるいは違う会社で働くか、あるいは自営業で働くかで、全然社会保障の仕組みが違ってまいります。保険料の納め方も違ってくるわけですね。これはやっぱり改めるべきじゃないかなと思います。ちょっと超越的な話になるかもしれないですけど、賃金だけじゃなくて、どんな所得でも、得られた所得に応じて社会保障の負担をするという仕組みが、高齢者の人も働き続けるためには重要な改革ではないかなというふうに思っております。
 これがもう少し高齢者の方々に働いてくださいよということですけど、ここで注意していただきたいのは、全ての人に働けよというようなことを言っているわけでは決してありません。無理のない形で働く、それで世の中に貢献するというような仕組みの方がいいんじゃないかなと、そういうことを申し上げていることです。
 それから二番目は、じゃ、そういう高齢者の所得保障がどれだけしっかりとしたものになっているのかということなんですけれども、先生方は年金の二千万円問題というのをお聞きになったと思いますね。月々大体五万円ぐらい赤字が出て、三十年ぐらい生きると年間で二千万円ぐらい足りないよということで、政府はちゃんと高齢者の所得保障をしているのかということなんですけど、あれは、よく考えると、金融資産というかね、預貯金をカウントしていないんですよ。それから、あくまでも平均的な姿ですので、どういう人がどういう形で生活しているのかという点については何も言っていないんですね。
 そこで、私はほかの研究者と一緒に、預貯金も含めて、それから生涯亡くなるまでどれだけ年金がもらえるのかというのを計算して、亡くなるまで生活費がどれだけ賄えるのかというのを計算してみたんですね。そうすると、八割ぐらいの人は何とか生きていけるだろうということなんですけど、残りの二割ぐらいは働かないと食べていけない、生活していけないということがありますので、そこはちゃんと注意しておく必要があるだろうと思います。
 なぜそういうことを言いますかといいますと、高齢者の貧困問題というのは、これから深刻になる可能性があるんですね。これ、生活保護を受ける人が将来どれぐらい増えるかという話を考えているんですけど、いわゆる就職氷河期世代の人たちが年金を迎える頃になりますとね、今はその親御さんに扶養してもらっている人たちが、親御さんがいなくなると自分たちで老後の世話をしないといけない、自分のお世話をしないといけないということになります。そうすると、今私たちが直面しているその貧困の問題が、予想以上の深刻さで姿を見せるのじゃないかなと思います。
 その生活補助をするために生活保護という仕組みがあるんですけれども、果たして今の仕組みでうまくそういう高齢の貧困化に対応できるのかなというふうな気がいたします。政府もそういう問題を無視しているわけじゃなくて、今回の年金制度改革で基礎年金の底上げというのを行いました。これは非常にすばらしい取組で、これで老後の生活保障に対して大きな成果を上げられると思うんですけれども、ただ、実際にこの底上げをしましょうかというのはもうちょっと時間たってから判断させてくださいというのが厚労省のスタンスなんですね。それから、財源どうするのかという点についても、もう少し様子を見ましょうということがあります。
 更に言うと、基礎年金の拠出期間は今まで四十年だったんですけど、四十五年にしたら、そういう高齢の貧困の問題、貧困の高齢化の問題もある程度対応できるんじゃないかと私は思うんですけど、いやいや、年金財政は四十から四十五に拠出期間延長しなくてももつから大丈夫ですということで今回は改革に含まれなかったんですけど、これはやっていいんじゃないかなと思うんですね。それで、貧困の高齢化に対応をすることが簡単になるんじゃないかなというふうに私は思っています。
 時間がないのでどんどん言いますけど、次は医療の話ですけど、医療については、高齢化の要因が重要じゃないかと皆さんおっしゃる、思われると思う、それはそのとおりなんですけど、その他という高齢化以外の要因が結構重要になっています。
 それが何かというと、高額医薬品等々、医療の高度化が大きな原因になっているんですね。これが今後の医療費を大きく左右しますので、これへの対応というのが必要になるのかなというふうに思っています。
 高齢化そのものは、思ったほど医療費の増大に悪さをしません。これ見ていただくと、その赤いところが高齢化要因なんですけど、だんだんと高さが低くなっていますよね。それに比べると、黄色い部分、これはその他ですけど、コロナ対応で出入りがありますけど、それを除くと結構大きなウエートを占めています。最近は、お薬を買っても高いものがたくさん出てくるようになりましたので、これが医療費増大の大きな不確実要因としてこれから重要になるのかと思います。
 そこで、足下で、医療費についていろいろ議論ありますので、三点ほど申し上げます。
 まず、高齢者の窓口負担引き上げろという議論があります。私は、それは非常によく分かるんですよ。応能原理で所得の高い人からたくさんもらうというのはいいんですけど、高齢時になると疾病リスクが高まりますから、同じ窓口負担三割でも、三割の重みが違うんですよね。それを一緒に、現役層と平等でやりましょうというふうな考え方で進めていいのか、ちょっとそれは問題だろうなというふうに思っています。
 二番目は、OTCの類似薬の扱いですけど、これは私は、手を付けるところとすれば付けやすいというか、いや、付けていいんじゃないかなというふうに思っています。次に出てくる高額療養費とか、あるいは後期高齢者等々の高齢者の窓口負担に比べると、OTC類似薬に対する支援というのは軽減していいんじゃないかと思います。ただし、それでも所得の低い人たちに負担が余りに掛かるような仕組みって良くないですし、それから、疾病リスクによって過度な負担掛かると、これは避けるべきだと思います。
 それから、高額療養費なんですけど、これは、私は今まで中医協、中央社会保険医療協議会の会長をしておりましたので、これはここで言わないといけないなと思っているんですけど、これはできるだけ維持していただきたいなと思っています、国民皆保険の岩盤みたいな仕組みですので。しかも、そんなに大きなウエートを占めていませんから、本当にお金がたくさん掛かる、掛かって困っている方、それほど多くないんだけど困っている人はいらっしゃるので、そこに負担が掛かるような仕組みというのは私は避けていただきたいなと思います。それは、この仕組みは国民皆保険の岩盤ですので、慎重に、見直しが必要であるとしても慎重にしていただきたいと思います。
 そこで、最後のグラフですけど、余り耳慣れない言葉なんですけど、破滅的医療支出というのがあります。これは、支出全体のうち医療費がどれだけ、四割以上を占めているとこれは大変だと、破滅的医療支出だというんですけど。それが、これもまだ分析は更に必要だと思うんですけど、徐々に高まっているんです、ウエートが高まっているんですね。高齢者だけじゃなくて現役の人たちも高まっている。それは、いろんな高額のお金が必要なんですね。医療費が増えていますので、その破滅的医療支出のリスクに直面することはこれから増えてくると思うんですね。そうすると、できるだけめり張りの利いた改革が必要になるんじゃないかなと思います。それで、最後のとりでみたいな、国民皆保険を守るというふうなスタンスが必要になっていくのかなと思います。
 時間が来ましたので、このページで要約させていただきます。
 まず、働く人、支える人を増やすということが一番重要なことだと思います。これによっていろんな改革がしやすくなると思います。私、余り子育て支援、政府が行っている子育て支援、余り効果ないんじゃないかなと思いますので、それよりは高齢者の就業支援というのが必要だと思います。
 それから、困っている人は今まで以上に支援する仕組みというのが必要になると思います。その問題は、これから貧困の高齢化というのが現実問題になりますので、これまで以上に慎重に考える必要があると思います。
 以上です。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 小塩隆士

日付: 2026-05-20

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済に関する調査会