外交・安全保障に関する調査会

2025-02-26 参議院 全90発言

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会議録情報#0
令和七年二月二十六日(水曜日)
   午後一時開会
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   委員の異動
 二月二十五日
    辞任         補欠選任
     上野 通子君     古庄 玄知君
     比嘉奈津美君     藤井 一博君
     塩村あやか君     羽田 次郎君
     伊波 洋一君     高良 鉄美君
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  出席者は左のとおり。
    会 長         猪口 邦子君
    理 事
                朝日健太郎君
                越智 俊之君
                吉川ゆうみ君
                高木 真理君
                高橋 光男君
                串田 誠一君
                浜口  誠君
                岩渕  友君
    委 員
                赤松  健君
                こやり隆史君
                古庄 玄知君
                永井  学君
                藤井 一博君
                松川 るい君
                森 まさこ君
                古賀 之士君
                杉尾 秀哉君
                羽田 次郎君
                広田  一君
                塩田 博昭君
                梅村みずほ君
                高良 鉄美君
                齊藤健一郎君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        有安 洋樹君
   参考人
       慶應義塾大学法
       学部教授     細谷 雄一君
       公益財団法人国
       際文化会館地経
       学研究所主任研
       究員       相良 祥之君
       一橋大学大学院
       法学研究科教授  市原麻衣子君
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  本日の会議に付した案件
○外交・安全保障に関する調査
 (「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」のうち、「包摂的平和(Inclusive Peace)の実現に向けた課題と方策」について)
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猪口邦子#1
○会長(猪口邦子君) ただいまから外交・安全保障に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、上野通子君、比嘉奈津美君、伊波洋一君及び塩村あやか君が委員を辞任され、その補欠として古庄玄知君、藤井一博君、高良鉄美君及び羽田次郎君が選任されました。
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猪口邦子#2
○会長(猪口邦子君) 外交・安全保障に関する調査を議題といたします。
 本日は、「21世紀の戦争と平和と解決力~新国際秩序構築~」のうち、「包摂的平和(Inclusive Peace)の実現に向けた課題と方策」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 御出席いただいております参考人は、慶應義塾大学法学部教授細谷雄一君、公益財団法人国際文化会館地経学研究所主任研究員相良祥之君及び一橋大学大学院法学研究科教授市原麻衣子君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席いただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、細谷参考人、相良参考人、市原参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、午後四時頃までをめどに質疑を行いますので、御協力のほどよろしくお願いします。
 また、発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず細谷参考人からお願いいたします。細谷参考人。
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細谷雄一#3
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
 慶應義塾大学法学部の細谷と申します。
 今日は、貴重な時間をいただきまして、このような私の方から説明をさせていただけることを大変光栄に存じます。
 私の方からは、お手元に資料がおありかと存じますが、リベラルな国際秩序の展開と再編という、やや大きな歴史的な枠組みから、今起きている、目の前で起きている大きな変動というものを、国際的な変動というものを私の方からお話をさせていただければと存じます。
 まず、一ページ目の「はじめに」というところでございますけれども、冒頭でまず戦争と平和、今回の調査会の重要なテーマである「21世紀の戦争と平和と解決力」のこの戦争と平和についての幾つかの重要な文献からの考え方を御紹介したいと思います。
 まず一つ目でございますが、こちらは、イギリスの十九世紀の法学者、ヘンリー・メインが述べた言葉でございます。この中では、戦争は、人類と同じほど古いもののように思えるが、平和とは近代に発明されたものであるというふうに述べております。これは、戦争とはそもそも国家の権利であって、この時代においては戦争を制約するというものがほとんどなかった。つまり、戦争というものは正しいもの、あるいはそれが悪いものとは一般的に見られていなかったということが重要な点でございます。
 そして二つ目が、二十世紀後半に活躍したイギリスのオックスフォード大学教授のヘドリー・ブルが述べた言葉です。その中で、ブルは次のように述べております。国際社会は、主権国家システムの存続と両立するような限界内に、国家間戦争を限定することに一定の成功を収めてきた。つまりは、主権国家というものは、主権を用いて戦争を行う権利を持ちながらも、様々な制度、国際法に基づいて、二十世紀においては、いかにして戦争を制度的に制約を加えるか、規範的に制約を加えるかということが重要な試みであったわけでございます。そのような試みが一定程度成功しまして、冷戦が終結するときには多くの人たちが、我々は平和の時代が訪れるということを期待したわけでございます。
 戦争と平和について最も優れた日本語の書籍をお書きになられている委員長の猪口邦子先生が一九八九年の「戦争と平和」という著書の中で次のように書いておられます。第二次世界大戦勃発から五十年目の世紀の今日、これはちょうど一九八九年ということでございますけれども、人々は長い文明史の中で初めて戦争という制度を事実上放棄する可能性の光に照らされた大協調の構造に挑みつつあると言えようと。当時の時代の雰囲気として、これはアメリカのブッシュ大統領も同様に、新世界秩序というものが法の支配に基づいて秩序がつくられるということを高らかに述べたわけでございますが、ところが、今我々が見ている目の前の世界というものは必ずそのようになっておりません。
 二ページ目を御覧いただきますと、冒頭のところで、イギリスの著名な国際政治学者のクリストファー・コーカーの言葉があります。コーカーはその著書の中で次のように述べています。一言で言えば、戦争は驚くほど強靱なのだ、戦争はあらゆる光の中で常に色を変えてきたということで、例えばサイバー戦争もございますし、認知戦という言葉もございます。いろいろな形で、カメレオンのように姿を変えながら戦争が持続してきたということで、そのことを強調して論じているわけでございます。
 また、オックスフォード大学からハーバード大学に移り、現在はスタンフォード大学におられるニーアル・ファーガソン、著名な歴史家の方ですけれども、この方、イギリス人の歴史家の方は次のように述べています。人口の拡散は平和裏に、感知できないほど緩やかに行われてきたが、異民族との関係は極めて危険なものだと認識されてきた、この矛盾をどのように説明すればよいのだろう、生物学的には極めて似通っているのに、異民族を宇宙人のようにみなしたがる、二十世紀に最悪の戦争が起こった根本にはこのような精神構造があったのではないか。他者というものを脅威と感じ、不安に感じるこの精神構造が永遠に人類とともに戦争が続いてきた大きな要因ということをこのニーアル・ファーガソン教授は述べております。
 一方で、我々が今生きている世界においては国連憲章がございます。アメリカもロシアも日本も中国も皆この国連憲章に同意し、そして批准をしているということでございますが、この国連憲章第二条では、皆様御承知のとおり、紛争、国際紛争を平和的手段で解決する義務というものがございます。また、第四項では、国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を慎むということが合意されております。
 したがって、今目の前で起きている戦争というものは明確にこの国連憲章の第二条、第二条の第三項、第四項に対する違反ということを我々はもう一度これを認識しなければならないということで、三ページ目に移りまして、こちらは私がウクライナ戦争が始まった直後に書いた「外交」という雑誌の中の論考でございますが、そこで私が書いたのは、これは、第二次世界大戦後の国際秩序の根幹を大きく動揺させて、今後の世界政治を変質させるような巨大なインパクトを持つものとなるであろうと。
 同様に、岸田前総理も、二〇二三年、二年前の一月のアメリカでの演説で同じようなことを述べております。国際社会は歴史的な転換点にあること、そして我々が奉じてきた自由で開かれた安定的な国際秩序は今重大な危機にさらされていることということで、日本はこれまで世界の平和と繁栄や自由で開かれた国際秩序を能動的につくり出す努力を続けてきました。ところが、そのような努力というものが今大きく崩れる危機にある、重要な今転換点に、歴史的な転換点にいるということが我々にとっては重要な認識であるべきだろうというふうに考えております。
 そのような問題意識を前提としまして、続いて、リベラルな国際秩序と呼ばれるものが一体何なのか、そしてそれがどのように発展してきたのかという歴史的な経緯を御説明をさせていただきたいと存じます。
 このリベラルな国際秩序とは一般的に、プリンストン大学のジョン・アイケンベリー教授によって論じられたものであって、第二次世界大戦を契機としまして、アメリカを中心とした開放的で制度化された協調的な国際秩序と見られております。より具体的には、国際的な規範としては、一九四一年の大西洋憲章、四二年の連合国宣言、四五年の国連憲章、四九年の北大西洋条約、六六年の国際人権規約、そして七五年のヘルシンキ最終議定書などがその土台となったものでございます。
 したがって、このような規範というものを、今回のロシアによるウクライナ侵攻は明らかに、明確にこれを違反するものであるということを認識する必要があるだろうと考えております。
 続いて、四ページ目に行きまして、冒頭に、先ほども御紹介しましたヘドリー・ブルのこの国際秩序に対する認識、我々は、国際秩序を維持するためにはそこに共通の利益と共通の価値というものが必要である、そして、共通の規則体系によって拘束されているということが重要である、このことを共に責任を負っているという認識が重要な前提となるわけですが、今、世界は分裂し、対立し、まずこの共通の価値というものは大きく崩れている、そして、幾つかの大国が共通の規則体系によって拘束されていないというように、自由に行動するようになった。このことが、先ほど申し上げた国際秩序が大きな危機にある、動揺しているということの大きな原因であろうというふうに思っております。
 また、元に戻りまして、アイケンベリー教授が述べているリベラルな国際秩序の重要な要素として、アイケンベリー教授は幾つかの要因を、要素を述べております。それは、一つ目には経済的な開放性、二つ目が政治的な互恵性、そして三つ目の多国間の管理ということでございますけれども、この三つについては、明確に今のロシア、あるいは近年トランプ政権でロシアに歩み寄っているアメリカがこの三つの要素に対して大きな挑戦となっているということが御理解いただけるのではないかというふうに感じております。
 そして、四ページ目の一番下のところにございます国際秩序の弁証法ということでございますが、これは、十年以上前に私が書きました「国際秩序」という本の中で示した考え方でございます。すなわち、国際秩序とは、時代や国際環境の変化に応じて推移して変容していくと。つまり、固定的なものではない動的なものであって、常に時代とともに大きく変容しているということでございます。
 例えば、近年の変化ということで申し上げれば、従来のような西側の欧米諸国のみでこの国際的な規範あるいはルールというものを作ってきたわけでございますけれども、これが中国やインドのような非欧米の新興国の台頭、あるいはグローバルサウス諸国の影響力が拡大していることによって、このような規範や制度を欧米が独占することはもはやできない、そのような構造的な変化というものを我々は認識する必要があるんだろう、このことが、国際秩序が柔軟に変わっていくという、国際秩序の弁証法というふうに私は書いております。
 もう一つ重要なポイントとして、国際秩序を見る上ではソリダリズムとプルラリズムという考え方がございます。ソリダリズムというのは、国際社会、国際秩序を非常に結束とした一つの共同体として見る見方でございます。プルラリズムは、その中に多くの異なるパワー、規範というものがあるというふうな認識がございますから、今の世界はこのソリダリズム的な世界からプルラリズム的な世界へと大きく移行しているということが近年の特徴ではないかと思います。
 例えば、かつての保護する責任であるとか人間の安全保障、これは、国際社会が一体であるというソリダリズム的、連帯主義的な理念が浸透していった反映でありました。ところが、そのような認識が今大きく後退し、むしろそれぞれの国が自国第一主義という形で自国の国益を最優先し、国際的な結束、連帯が大きく今崩れつつある。そのことが、六ページにもございますこのリベラルな国際秩序の衰退ということにつながっている。
 すなわち、ちょうど今年で戦後八十年が経過するわけでございますけれども、この戦後八十年が経過する今年、リベラルな国際秩序というものがかつてないほど巨大な危機に直面していると。そして、その危機を乗り越えることができなければ、もう恐らくその乗り越えることが今難しい段階に来ていると思いますが、この国際秩序というものが大きく崩壊していく。その結果、待っているのは、パワーポリティクス、むき出しの暴力というものがそのまま衝突し、軍事的な大国が自らの正義というものを中小国に押し付ける、このジャングルのような時代へと我々は移りつつあるのかもしれない。言い換えると、それを止めるということが日本外交にとっての大きな使命であるというふうに私自身も考えております。
 すなわち、現在におけるリベラルな国際秩序は、二つの方面からの巨大な挑戦を受けている。
 一つ目は、外部からの挑戦です。これは、中国やロシアという権威主義的な大国が影響力を拡大し、そしてグローバルサウス諸国が一定程度それらの国々、権威主義的な国家と足並みをそろえることによって、リベラルな国際秩序を守るという意思を持った国がむしろ国際社会の中ではマイノリティーになってしまっているということでございます。ウクライナ戦争が始まった直後の三月の国連の、国連総会特別決議では百四十の国々がロシアの侵略を非難したわけでございますけれども、今やその数が三分の二ほどに減ってしまっているというのが、まさに三年が経過した現在の状況ということが言えるだろうと思います。
 そして、リベラルな国際秩序に対するもう一つの、第二の重要な挑戦が、それぞれの国の内部からの挑戦でございます。例えば、アメリカの大統領選挙の結果として、二〇一七年、そしてさらには今年の一月、ドナルド・トランプ氏が勝利をし、大統領に就任するということで、このドナルド・トランプ大統領もまたリベラルな国際秩序というもの、まあリベラルというものに対しても国際秩序に対しても非常に強い違和感や、場合によっては嫌悪感というものを示すことがあるということで、それぞれの国の内部からこのリベラルな国際秩序を大きく動揺し、破壊する衝動というものが今噴出しているというふうに言うことができるんだろうと思います。
 また、もう一方では、そもそも国際政治学におけるリアリズムの観点からこのような認識に対する批判がございました。例えば、その代表的な論者の一人であるシカゴ大学のジョン・ミアシャイマー教授は、一貫してこのリベラルな国際秩序というアイケンベリー教授の考え方には批判的でした。それについて、例えば次のように述べております。冷戦後のアメリカは一般的にリベラルヘゲモニーと呼ばれる究極のリベラリズム外交政策を取れるほど強大な力を持っていたというのが私の主張である、主張の基本である、リベラルヘゲモニーという野心的戦略は、できるだけ多くの国を自由民主主義国家に変えながら、同時に、開かれた国際経済を促進し、強力な国際機関を構築することを目的としている、つまり、アメリカは自分たちの思惑で世界をつくり変えようとしてきた、ところが、リベラルヘゲモニーは最初から失敗する運命にあり、実際そうなった、なぜなら、この戦略は最終的にリベラリズムよりも国際政治にはるかに大きな影響力を持つナショナリズムとリアリズムと対立する政策を生むからだということでございます。
 つまりは、国際政治の重要なドライビングフォースは、リベラリズムではなくてナショナリズムであってリアリズムである。自国の利益を最優先し、また軍事力によって問題を解決しようとする思考が優先するような世界においては、このリベラルな国際秩序という考え方自体が最初から崩れ落ちる運命にあった。
 このミアシャイマー教授は、世界で核兵器を広げることを進めておりました。例えば、ウクライナが、これ一九九四年ですけれども、何としてでもロシアから自国を守るためには核兵器は不可欠である。結局は他国を誰も助けてくれない、自国を助けることができるのは自国だけである、そして自国を助ける最終的なツールとなるのが核兵器であるという認識でございますから、したがって、この認識に基づけば、核兵器の拡散というものは不可避ということになるわけでございます。
 ここではそれが正しいかどうかということは申し上げませんが、もう一人、ハーバード大学教授の著名なグレアム・アリソン教授も、リベラルな国際秩序を次のように批判しております。リベラルな秩序が過去七十年の間の平和を生み出してきたと主張する論者は重要な事実を看過している、すなわち、その最初の四十年はリベラルな秩序として規定されていたのではなく、二極対立に基づく冷戦として規定されてきたことである、長い平和と名付けた歴史家が説明するように、大国間戦争を阻止してきた国際システムは、ソ連とアメリカとの闘争という意図せざる結果として生まれたものなのである。
 つまり、冷戦時代の平和は、リベラルな国際秩序が守ったのではなくて、米ソの核兵器を中心とした勢力均衡によってつくられた、これ重要なジョン・ルイス・ギャディス教授の考え方、歴史家の考え方でございますが。このように、結局のところは、現在の世界というものはリアリズムとナショナリズムによって動いている。
 下に書いてございますアーロン・フリードバーグ教授も同様に、結局のところ、中国、ロシア両国共に、過去の屈辱と不正義に対するふんまんを抱いている、これは西側諸国によりもたらされたものだと考えられているということで、現在の中ロ両国は、共に大国としての地位と威信を確立することを求めており、また同時に、より実態のある具体的目標も追求している、すなわち、自国が明白かつ圧倒的な優位を誇る地域的な勢力圏の確立である、ロシアはかつてのソ連の領域を統制したいと望んでおり、中国は東アジアの海域から大陸の外縁部を含むユーラシア大陸の東側における優越的な地位の獲得を目指している。つまりは、もうこれ十年前にフリードバーグ教授が言っていたことですけれども、中国とロシアが勢力圏を確立するために軍事的な手段を用いるというのは必然である、あるいはそれが大きな趨勢であるということをもはや十年前から述べていたわけでございます。
 いずれにしましても、八ページでございますけれども、国際秩序の改革は不可避である。まず第一に、国際社会において、かつてほど求心力がない、連帯主義がない、ばらばらとなっていて、そしてそれぞれの国が自己中心的な行動を起こすようになった。その事実というものを我々はやはり前提にしなければいけない。そして、かつては欧米の価値観というものが中心だった世界においてそれが崩れつつあるということ、つまりは、グローバルサウス諸国といかにして連携し、またその主張というものに我々が耳を傾けるかということが鍵となるということが、こちらからも御理解いただけると思います。
 さて、残り時間も少なくなりましたので、最後に、日本が何ができるか、リベラルな国際秩序の擁護者としての日本ということでございますけれども。
 過去十年間、日本はこの国際秩序の擁護者として働いてきた、これは十年前の安倍談話に示された考え方です。つまりは、戦前の日本が国際秩序の挑戦者ないしは破壊者として行動した。それに対して、今度、戦後の日本はむしろこのリベラルな価値というものを守る、擁護する立場に立ったのだ、平和国家としての道のりを歩んだ。そのような考え方が二〇一五年の安倍談話、そしてさらには、その翌年に発表されました自由で開かれたインド太平洋構想というものに結実したわけでございます。
 この安倍総理が発表した自由で開かれたインド太平洋構想というものが更に深化しまして、岸田政権の下では、多様性、包摂性、開放性ということが重要な鍵となったわけでございます。この調査会の重要なテーマでもございます、今日の重要なテーマでもございますこの「Inclusive Peace」ということでございますけれども、日本は、自由で開かれたインド太平洋戦略の中で明確に、この多様性、つまり、かつてのような一体性が崩れている中で多様性を尊重し、一方で、包摂性、しかしながら全ての国を取り込む秩序を構想する、同時に、それぞれの国が閉鎖的になるのではなくて開放性というものをどうにか維持しなければいけない、これが今の日本の外交の重要な精神であろうと思います。
 最後に、「おわりに」というところでございますけれども、第二次世界大戦で国際秩序の挑戦者となった日本は、戦後は平和国家としての道のりを歩み、リベラルな国際秩序の擁護者として重要な役割を担ってきました。近年は、中国やロシア、さらにはトランプ政権下のアメリカも大国主義的でパワーポリティクスに基づいた国際秩序を推進しようとしていることからも、日本のそのような役割というものがかつてないほど高まっているということが言えるんだろうと思います。
 そして、現在の石破茂政権でも、引き続き、この多元性、多様性、包摂性、開放性を基礎とした国際秩序構想というものが推進されている。私は、この方向性というものを引き続き日本は堅持するべきだというふうに考えております。
 御清聴、誠にありがとうございました。
 以上でございます。
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猪口邦子#4
○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。
 次に、相良参考人にお願いいたします。相良参考人。
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相良祥之#5
○参考人(相良祥之君) 国際文化会館地経学研究所の相良と申します。
 本日は貴重な機会を賜り、御礼を申し上げます。
 私は、シンクタンクで国際政治経済を研究しておりますけれども、以前は民間企業、JICA、国連、そして外務省で勤務をしてきた実務家でございます。
 調査会のテーマであります包摂的平和の実現に向けた課題として、私は、この第二期トランプ政権において国際の平和と安全を維持するためのリーダーシップと推進力が失われ、国際社会に深刻な空白が生じつつあると考えております。包摂的であるべきところで飛び地ができているというお話をしたいと考えております。
 こういった状況を踏まえて、まずは多国間枠組みについての現状の課題、そしてこれからの日本の取組の在り方について、とりわけ健康医療領域に焦点を当てつつ、意見を申し述べさせていただきます。
 まず、多国間枠組みの現状についてであります。
 国際的な枠組みや二国間のバイ、多国間のマルチ、そして複数国家によるプルリに分けられます。この多国間枠組みにおける主要なアクターが国連であります。
 日本と一口に言いましても様々な顔がありますように、国連も様々な顔を持っております。一つ目が、政治の場としての国連であります。ニューヨークの国連総会や安保理、ジュネーブの人権理事会などがこれに該当します。百九十三の加盟国がそれぞれの国民を代表して一国一票を持ち、これは日本でいえば国会に当たるような国連でございます。二つ目が、行政機関としての国連ということでございまして、国連の事務局やUNDP、ユニセフ、WFPなどの国連機関を指します。これは日本でいえば霞が関に当たるような国連ということになります。そして三つ目が、専門家の集う国連であります。
 国連はそれ自体極めて多様性の高い存在ですけれども、全く違う三つの顔を併せ持つということは、国連について論じる際に大切な点だというふうに考えております。
 その上で、この第二期トランプ政権が発足して、多国間枠組みに注目が集まっております。
 それでは、そのトランプ政権の特徴についてどう見るかということで、まず、このトランプ大統領の掲げるアメリカ・ファーストは孤立主義、ユニラテラリズムであります。自国を優先し、対外関与を縮小すると、外交・安全保障よりも国内政治を重視するという方針であります。その一環として保護貿易主義というものもあるわけでございます。
 あわせて、私は、トランプ政権には、言わばトランプ・ファーストともいうべき機会主義、オポチュニズムの特徴があるというふうに考えております。マルチやプルリで議論するよりも、バイ、二国間での取引を重視する。トランプ一期目の外交交渉については回顧録や検証等出ておりますけれども、そういったものを読みますと、トランプ氏にとっては、アメリカの国益のみならず、御本人の信念に照らしてどうかという評価がディールにおいては重要なようであります。一貫性を欠く取引主義、トランザクショナルということも重要な点です。自らに有利なディールができれば手のひら返しもいとわないというところであります。
 こういったところが、我が国や欧州など同盟国からすれば、国際秩序を支えてきた基軸国としてのアメリカが内向き志向になっているというふうに見えるわけであります。あわせて、アメリカが戦後八十年築いてきた信頼性、USクレディビリティーと申しますけれども、これが損なわれるリスクということがあるというふうに危惧をしております。
 続いて、二ページ目ですけれども、一つ興味深いところとして、ワシントンDCのシンクタンク、USIPというところで、政権移行の直前にバイデン政権とトランプ政権の国家安保担当大統領補佐官がそろい踏みで出席する会議が開かれました。そこで問われたのは、トランプ第二期政権にとって最大の安全保障の挑戦は何かということであります。バイデン政権のサリバン補佐官の答えは中国でありました。他方で、マイク・ウォルツ氏の答えは南の国境、すなわち不法移民というものでした。トランプ氏は西半球に強い関心があり、中国との紛争は回避できると信じているともおっしゃっておられたのが大変興味深いというふうに感じております。
 その後、政権発足後に、ルビオ国務長官がウォール・ストリート・ジャーナルに「アン・アメリカス・ファースト・フォーリン・ポリシー」という論考を寄稿しております。そこで書かれているのは、トランプ政権は、不法移民と薬物の違法流通対策のために、アメリカス、すなわちアメリカ大陸により一層の注意を払うということであります。ルビオ氏は厳しい対中観で知られておりますけれども、トランプ政権の中では、バイデン政権のように、中国こそが外交・安全保障における最優先事項というわけではないように見えます。
 また、アフリカや南アジア、東南アジアについての関心もそれほど高くはございません。なぜアメリカがこういったところに支援をしなければならないのかということをトランプ大統領は平場でも堂々とお話しになられるわけでございます。こうした点に、私は戦後アメリカが果たしてきたリーダーシップの危機を感じずにはおれません。すなわち、国際社会に空白地帯が生じつつあるということであります。
 そこで、私は二つの事例に焦点を当てたいと思います。
 一つは、WHOと人権理事会からのいわゆる離脱であります。
 これは一期目でも宣言していた方針であります。いわく、WHOは中国寄りであり、人権理事会については反ユダヤ主義を広めているのがその理由として挙げられております。そして、資金拠出を停止し、アメリカ政府職員を引き揚げよと求めております。これ、いずれにも共通するのは、政治の場としての国連からの、アメリカが自ら撤退をするということであります。国際保健や人権をめぐる国連の議場からアメリカのリーダーシップや強い声が失われてしまうということであります。
 二つ目は、USAIDの活動停止です。
 USAIDは、御案内のとおり、日本のJICAのように、アメリカのODA、二国間の政府開発援助において中心的な役割を果たす組織であります。トランプ大統領は就任初日に、対外援助を九十日間停止し、内容を見直すという大統領令に署名をされました。これにより、USAIDが実施をしていた活動のほとんどが停止をされております。
 停止された活動は多岐にわたりますけれども、中には、中南米の麻薬対策や不法移民流出対策など、本来であればトランプ外交の方針に沿うものも含まれております。私がこの中でもとりわけ深刻だというふうに考えておりますのが、感染症の予防・対応能力の向上の活動の停止であります。四十九か国で実施をされておりました鳥インフルエンザの監視が止まっております。鳥インフルエンザが発生すれば、家畜や畜産業の方々にどれほどの被害が生じるかというのは先生方もよく御案内のとおりというふうに存じます。さらには、IS、イスラム国を打倒した後に、再び若者が過激派に取り込まれないように脆弱な地域社会を再建すると、こういった活動も止まっております。
 このように、開発援助をめぐるアメリカの貢献が突然止まり、空白地帯が生じております。
 さて、国際社会に空白が生じると何が問題なのでしょうか。
 これ、三ページに書いておりますけれども、このトランプ政権の保護主義と関税引上げに着目し、一九三〇年代に見られた排他的な経済のブロック化がなされるのではないかという議論がございます。戦後、アメリカは寛大にも関税を一方的に引き下げ、自由貿易を推進してきたわけでございますけれども、トランプ政権においてそうしたアメリカの寛大さというのは見る影もなく、相互関税、レシプロシティーが重視をされております。しかし、過去と異なるのは、一九九〇年代以降に経済や金融、情報、ITのグローバル化が急速に進展したということでございます。
 近年、中国とロシアによるUSAIDの評判をおとしめるプロパガンダが世界中で活発化をしております。USAIDは、二〇二四年の後半だけで世界各国で八十件以上のプロパガンダキャンペーンを確認しておりました。こうしたプロパガンダというものは、ITやSNSのプラットフォームがあるからこそ勢いを増しており、また、言論の自由が保障されている日本こそ、こうしたプロパガンダの脅威にさらされているという状況もございます。
 いずれにせよ、そういった一度伸び切ったグローバル化を前提とした大国間競争が現在の国際社会の特徴でございます。
 私は、そこで進んでいることは、飛び地化と言えるものではないかというふうに考えております。ある国や行政区画に属しながら、主たる地域から離れてほかの区域内にある土地のことを飛び地と呼びますけれども、アメリカでいえばアラスカとか、ロシアのカリーニングラード、あるいはガザなどが飛び地としてよく知られております。日本でも長野ですとか和歌山、千葉などに飛び地があるというふうに承知をしておりますけれども、この国際社会においても、グローバルな政治、経済、社会を土台にしながら、戦略的に重要な領域については、世界に分散していた財、資本、情報、そして人を集約化し、高い壁で取り囲み、飛び地を形成すると、そうした動きが進展しつつあるように見えます。
 この国際社会に空白地帯が生じると、そこに飛び込んで飛び地を形成してしまおうと考える国も出てまいります。そうした件で私が懸念しているのが中国でございます。
 最近の国際社会の空白というのは、中華民族の偉大な復興を掲げる中国にとっては絶好のチャンスであります。中国が世界中に拠点をつくり、勢力圏を拡大してきたのは御承知のとおりであります。南シナ海への海洋進出、また一帯一路による港、道路、空港などの建設であります。国際社会、とりわけ多国間主義に生じた空白を中国は見逃しておりませんで、積極的な外交を展開してきております。
 先週、安保理では、多国間主義をめぐる会合が開催をされました。議長国は中国であります。ここで王毅外相は、真の多国間主義を再活性化し、より公正で公平なグローバルガバナンスを構築するための努力を加速させる必要がある、中国は国連が国際問題で中心的な役割を果たすことを支持するなどと述べておられます。中国は、安保理においてこうした会合を主催するとともに、王毅外相自らが世界に発信をしておられます。
 このPKOの貢献に関してですけれども、今やPKOの予算拠出国の二位は中国であります。また、中国はPKOへの人的貢献も最近はよく知られるようになってきております。二〇二四年十月時点ですけれども、中国は千八百人以上を南スーダンなどのPKOに派遣をしております。軍や警察の人員の派遣数としては第八位という規模でございます。
 中国は、冒頭に申し上げました国連の三つの顔というのをよく理解をしているように思います。それに応じて、財政拠出や人員展開によってグローバルガバナンスにおいてリーダーシップを取ろうと、硬軟織り交ぜた緻密な対応をしてきております。
 中国は、欧米主導のリベラルな国際秩序に対抗する国際秩序観として、人類運命共同体というものを掲げております。その背景には、欧米主導で形成されてきたマルチラテラリズムについて、中国流の多国間主義に上書きをしたいという思惑が透けて見えるわけでございます。アメリカも欧州もそして日本も、もちろんこれに対抗して国際秩序の維持を努力してきたのですけれども、その大黒柱はアメリカでありました。しかし、その大黒柱が揺らいでいるのが現状でございます。
 その意味で、私にとって衝撃的だったのが、ロシアのウクライナ侵略から三年の節目に国連総会と安保理で展開された決議案をめぐる多国間交渉でございます。
 言うまでもありませんが、ロシアのウクライナへの軍事侵攻は、国連が想定してきた集団安全保障体制への深刻な挑戦であります。しかし、二〇二二年の二月二十四日にロシアがウクライナに軍事侵攻を開始した際、安保理では、ロシアが拒否権を有するために、経済制裁や国際的な軍事行動はもとより、その前段階として国連憲章第三十九条に基づく侵略、アグレッションを認定することすらできませんでした。
 そこで、議論は安保理から国連総会に移ります。二〇二二年の三月にウクライナをめぐり緊急特別会合が開催され、ウクライナへの軍事侵攻を侵略として非難し、ロシアの即時撤退を求める決議が採択をされたわけでございます。この緊急特別会合では、各国からロシアを非難する声明というのが続きました。賛成は百四十一という圧倒的多数でありましたけれども、国連加盟国百九十三と比べますと、少なからずの棄権票があったこと、また、その中立の姿勢を貫くインド、また日和見主義で態度を明らかにすることを避けたい新興国や途上国を総称したグローバルサウスへの関心が高まったのもこの時期でございます。
 それから三年がたち、アメリカがバイデン政権からトランプ政権に替わった二月二十四日の国連総会緊急特別会合では、アメリカはロシアの侵略に言及するどころか、紛争の早期終結を要請すると、ロシアの侵略を相対化した大変簡素な決議案を提出をしたわけでございます。アメリカがロシア非難に当たりリーダーシップを取らなければ、グローバルサウスの国々も棄権に回ってしまうわけでございます。結果的に、欧州、日本、ウクライナなどが提出をした決議案は、採択はされましたけれども、賛成は九十三票にとどまったわけでございます。三年前の百四十一か国から大幅に減少いたしました。
 こういったロシアのウクライナ侵略非難においてリーダーシップを発揮してきたアメリカが大きく方針転換をして空白地帯が生じているというところでございますけれども、こうした状況下で日本はどういった取組を取っていくべきかということで、大きく五つ申し述べたいと思います。
 第一に、日本が世界に提唱してきた人間の安全保障について、人間の尊厳と併せて国際社会に訴えていくということが大事であろうというふうに考えております。
 第二に、グローバルヘルス、国際保健の空白を埋める資金動員であります。
 WHOやUSAIDなどを通じた開発援助の停止により、アフリカ、アジア、中東の途上国や新興国では落胆と絶望が広がっております。こうした中、求められているのが、健康医療領域の支援であります。日本のこの領域における開発援助は貴重な外交資産であります。母子手帳の導入を始めとする母子保健、またコロナ危機におけるワクチン供与、流通支援などは大変に感謝をされております。また、日本は、ウクライナ、ガザ、スーダン、南スーダンなど、紛争地でも地道に平和構築支援を続けてまいりました。WHOなどグローバルヘルスに関わる国際機関への支援を今こそ強化するべきではないかというふうに考えております。
 また、この際、世界銀行やアジア開発銀行など、日本が加盟国の国際開発金融機関を通じた支援強化も有効でありましょう。日本はアフリカ開発銀行の加盟国でございます。邦人職員も勤務をしております。こうした開発金融を通じたグローバルサウスへの支援は、日本ならではの貢献になろうかというふうに思います。
 また、政府の資金供与のみならず、日本政府は民間資金の動員においてもイニシアティブを発揮をしてきております。二〇二三年の九月ですけれども、岸田前総理がニューヨークのジャパン・ソサエティにおいてトリプル・アイという民間資金を動員するイニシアティブを提唱しております。ODAを呼び水に民間資金も動員してグローバルヘルスに貢献すると、日本ならではのリーダーシップの発揮の仕方ではないかというふうに考えております。
 この際、第三に、日本が強みを持つユニバーサル・ヘルス・カバレッジ、UHCというのが非常に重要な概念というふうに考えております。このUHC達成に向けたリーダーシップでございます。
 日本は、国民皆保険制度など、世界で有数の健康長寿社会を維持するために、社会保障についても巨額な財政拠出も行ってきたわけでございます。こうした経験を踏まえて、日本はこのUHCについては豊富な知見を有しておりまして、これに基づく国際貢献によって世界からも評価をされておるところでございます。日本はUHCの旗振り役として、昨年は、イタリアのG7のプーリア首脳コミュニケ、ブラジルのG20リオデジャネイロ首脳宣言でもUHC推進の重要性が強調されております。
 ここで一つ興味深いことに、ロシアで開催されたBRICSのカザン宣言というものもUHCの重要性を指摘しております。我が国にとってUHC推進の強力なパートナーであったアメリカが国際保健から後退したとしても、欧州やほかの国々、そしてWHOなど国際機関とともに我が国がUHC達成に向けたリーダーシップを発揮し続けることは極めて重要だというふうに考えております。さもなくば、UHCを自らのアジェンダとして看板を掛け替えようとする国が出てくるやもしれないというところを危惧しております。
 第四に、医薬品、治療薬、ワクチンの社会実装と流通であります。
 コロナ危機において、日本はワクチン流通に関するグローバルサウスへのラストワンマイル支援を行いました。その保冷配送や冷凍庫については、日本企業の貢献も非常に大きいものがあったわけでございます。
 最後に、健康安全保障をめぐるインテリジェンスサイクルと初動の確立についてというところで提言をさせていただければというふうに存じます。
 ここまで国際社会における空白とグローバルヘルスについて述べてまいりましたけれども、コロナ危機で明らかになったとおり、感染症は国境を越える地球規模課題であり、グローバルな課題であるとともに、我が国の国民の命と健康を脅かす脅威でもあります。つまり、グローバルヘルスセキュリティー、グローバルな健康安全保障とナショナルヘルスセキュリティー、主権国家における健康安全保障は密接に関連をしております。
 ここで重要なのが、感染症や病原体のサーベイランスの体制であります。パンデミックは引き続き脅威ですけれども、それのみならず、これまで想定されていた生物兵器の脅威についても、ゲノム編集など合成生物学、また生成AIが急速に発展する中、質、量共にリスクが増幅をするおそれがございます。外交・安全保障と同様に、感染症や生物学的な脅威が日本に迫っているとき、それが脅威であると把握し、事態認定し、即応していく必要がございます。
 先生方の地元でも、一月には春節で多くの外国人観光客がいらっしゃった地域もあるんではないかというふうに存じます。そうした中で、五年前のコロナのように、ひょっとすると新たな感染症が静かに持ち込まれるかもしれない。感染症を始めとする生物学的脅威というのは、ミサイルや爆弾と違って、目に見えない、いつどこで脅威にさらされるのか分かりにくい脅威であるというものでございます。しかし、この発生源が権威主義国の場合は、外部からの実効的な調査は困難であるというのが新型コロナの一つの教訓でありました。
 したがって、早期警戒のためにも、民主主義諸国の間で日頃から健康をめぐるインテリジェンスを共有する、言わばバイオレーダーといったようなものを構築することは一案ではないかというふうに考えております。
 この健康安全保障をめぐるインテリジェンスサイクルと初動の確立というのは、国民の命と健康を守り抜くのみならず、懸念国による感染症や生物化学兵器の潜在的脅威にさらされている日本としても重要でございます。
 国際社会に空白が生じる中、多国間枠組みを通じて地球規模課題を解決すべく、アメリカのリーダーシップをできるだけ引き戻すこと、そして我が国の国民の命と健康を守り抜くことが日本の守るべき国益であるということを申し述べて、私の意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございます。
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猪口邦子#6
○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。
 では次に、市原参考人にお願いいたします。市原参考人。
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市原麻衣子#7
○参考人(市原麻衣子君) ありがとうございます。
 一橋大学の市原麻衣子と申します。本日は、機会を頂戴いたしましてありがとうございます。
 私は、民主主義と国際政治に絡むところの研究をしておりまして、主に民主主義を擁護する動きと、それから民主主義に対する攻撃の動き、両方とも見ております。それですので、民主主義外交、民主化支援ですとか、あるいは権威主義国の影響工作、民主主義社会に対するものですね、そういったものを見ておりまして、その観点から、自由、法の支配、人権などの規範をベースにつくられている民主主義規範というものを重視する国際秩序、国際規範というものが今どういう状況になっていて、今後どういうふうになっていくのかということを少しお話をさせていただきたいと思っております。
 基本的に、お二人の参考人の先生方とかなり重複するところがございます。
 まず、前提条件として、昨今、トランプ政権が発足してから、それが与える民主主義に対するダメージというものが大きく報道されることが多いかと思います。しかし、民主主義に対するダメージというのはそれ以前からかなり深刻なものとなっていたというところをまず初めに御提示させていただきたいと思います。
 一ページ目を御覧いただきますとお分かりいただけるかと思いますが、点線で示されているところが民主化の動きというものを示しています。二〇〇〇年代に入りますと、この民主化の動きというのが非常に弱まって弱体化をしてきたということが分かるかと思います。また、他方、実線の太い線の方ですね、これは権威主義化の動きですけれども、それに反して権威主義化の動きというものが非常に加速をしてきたというのが背後にございます。
 次のページの方で、より新しいところをカバーしたデータをお示しさせていただきましたが、自由主義規範というものが良くなっている国というものが青で示されておりますけれども、そういった国の数が二〇〇六年頃から極端に減ってまいりました。このトレンドは現在も続いております。そういうわけで、西欧民主主義国においても民主主義の制度と規範というものが弱体化し、民主主義への信頼も弱まっているというものが現在のトレンドです。
 そういうふうにお話をさせていただくためには、そもそも民主主義とは何なのかということを一旦踏まえておく必要があるかと思います。
 例えば、最近、選挙で選ばれたリーダーというものは、結局その民主的な選挙を経ているわけだから、民主主義的に選ばれた、民主主義に即した動きなのであるという議論も見られますが、ここで気を付けておかなければいけないのは、自由、平等、そして定期的な選挙を行うためには市民的自由というものが根底として必要だということです。つまり、これは、様々な報道の自由、言論の自由、集会、結社の自由、信念の自由など、様々な自由権というものを守らなければ真の民主主義というものは達成できないということです。
 それに対して、例えばアメリカでは報道の自由が近年弱体化をしてきておりまして、そして、トランプ政権が例えば選ばれてからマイノリティーに対する権利の侵害ですとか制度への攻撃というものはやはり強まっているということは踏まえておかなければいけないと思います。そういったことで、市民的自由に対する攻撃というものはアメリカにおいても非常に深刻であるということを指摘せざるを得ません。
 そして、次のページに移りまして、その根底として世界的にポピュリズムの波が底流に流れているということは御承知のとおりかと思います。グラフだけ示させていただきました。
 六ページ目の方に参りますけれども、そのポピュリズムの波を引き起こしている前提条件として、やはり国民の間に存在している不満というもの、それからそれにプラスしてSNSに対する中毒症状というものが一つあって、それがフィルターを通さない声の発出と、表出という形になったときに、かなり現状に対して問題のあるような声というものも残念ながら出てきてしまう傾向があるといったことが言えるかと思います。
 特に、経済格差などその他の格差によって比較対象がある中、ある状態で不満を抱えている、国民の中で、彼らよりは私たちの方がずっと苦労しているんだという感覚がある方々というのが、現実逃避の願望を持って、その現実逃避願望がSNSの持つ関心経済モデルと合わさったときに、刺激に対して中毒性を持っているその動きから、例えば偽情報ですとか、あるいは極端な感情を惹起させるような情報というものに飛び付いてしまうという傾向につながっています。
 そして、全体として、世界的に、例えば移民ですとかトランスジェンダーの方々ですとか、マイノリティーの権利がこのポピュリズムの波の中で侵害されるという傾向が強まっていますが、これはマイノリティーがスケープゴートになりやすいということです。実はこれは、選挙で多数派を形成するために大勢の人たちを動員できるアイデンティティーカテゴリーがあるならば、それをどんな形でも容易に使い得るというわけですので、必ずしも移民やトランスジェンダー、LGBTQなどでなくても、様々なマイノリティー性というものが利用されてしまう可能性があり、どんな人でもこのスケープゴートになりかねないということを示しています。
 そして、こうした底流に流れる動きに加わって、ここ数年で見られるようになった言説上の問題を二点指摘させていただきたいと思います。一つは、権威主義国に起因する言説上の問題、そしてもう一つは、民主主義国側に起因する言説上の問題です。
 一点目の権威主義国側に起因するものは、七ページ目のところ、「対処すべき問題①自由主義規範の利用」というふうにタイトルを付けさせていただきました。非自由主義的民主主義国や権威主義国が、非常に自由主義の規範の中心である選挙、人権、法の支配、民主主義、こういった概念を恣意的に利用するというトレンドが非常に強まっています。
 これは、統治の正当化に用いる道具として行われているわけですけれども、例えば、我が国では選挙が行われていて、選挙によって選ばれた指導者がこの方ですというふうに示すときに、これは日本のことじゃなくて一般的に示すときに、その選挙自体がそもそも不正選挙を経て行われた選挙であったり、あるいは野党を解党した状態で行われた選挙であったり、あるいはメディアが抑圧された状態で、政府の批判ができない状態で行われた選挙であったりした場合でも、選挙で選ばれた指導者であるという形で正当性を表していこうとします。
 典型的に、ロシアが行っている選挙と、それからプーチン大統領がそれに基づく正当化をしていることはこの典型として見られるわけです。
 そして、今、ウクライナに対してロシア側が、大統領選挙を経ないゼレンスキー大統領というのは正当性がないというふうに主張を強めているわけですが、これに関しては、ロシアが長年行ってきた選挙介入というものが非常に効果を現して、上げてきているという感覚を権威主義国側が持ってきているということを示していると言えると思います。そして、権威主義国も我こそが民主主義国であるという主張を行っています。
 次のページ、八ページの方に行っていただきますと、これは大阪総領事の薛剣氏のツイッター上での言説を分析したものです。特に、民主主義という言葉との関連でどんな単語を使っているかということを分析しました。
 ここの中で、黄色でハイライトさせていただいているところを見ていただきますと、ここから彼が作っているナラティブというものが出てくるかと思うんですけれども、つまり、西側の国々は民主主義や自由主義というものを主張しているけれども、それは真の政治体制ではなくて、そういった虚名、うその、まあ偽の概念を使ってそれを主張しているだけであると、人々はそれにうんざりしていて、民主主義というものは既に自壊しているんだと、民主主義という言葉を権力の維持のために使用しているんだというような議論をしているわけです。このようにして、我々の方がより民主的である、民主主義国と名のっている西側諸国は真に民主的ではないというナラティブを形成しています。
 それに加えまして、九ページ目の方ですが、権威主義国も人権重視の姿勢を示しています。
 次のページに行っていただきますと、十ページ目の方で、参考として、人民日報で人権という言葉とともに用いられた単語を二〇二三年の七月から二〇二四年の十月までの記事を取り上げまして、これを対応分析というものを行いました。
 そこで示されている、単語で近い関係にあるもの、リンクが張られた単語というのはかなり強い関係性を持って使われた単語で、いずれの単語も人権という概念とともに使われた単語です。ここから読み取れることは、アメリカは人権に関して問題を提起してくる、けれども、中国にとっては発展というもの、社会の発展というものこそが本来の人権なのであると、そして中国は国家の安全を重視していて人々の発展というものを保護する権利を行使しているのだと、それなので、こういった行動を重視し、他国による内政干渉というものはするべきではないと、そういう主張をしていることがここから読み取れます。
 このように、権威主義国側が自由主義規範を様々利用してきていることに加えて、民主主義国の中からも自由主義規範の恣意的な利用というものが見られているということが更に懸念されることかと思います。
 十一ページ目に示させていただきましたように、例えばバンス副大統領がミュンヘン安全保障会議において、真の脅威は国内から来るものである、言論の自由に対する抑圧であるというような発言をされていました。これはプラットフォーマー規制を指摘して行われた発言ですが、実際、プラットフォーマー規制というものは事実に基づいた自由な言論空間というものを守るために行われているものであり、逆に、民主主義にとって重要な行動であるはずのところ、これを攻撃するという行動を取ったわけです。こうしたことは、民主主義という概念の偽善性が、まあ偽善的な概念であるという印象を付けてしまうという効果があります。
 次のページに行っていただきまして、このようにして自由主義規範というものが恣意的に利用されてきたのは、逆にこの自由主義規範に国際的な正当性があるからです。しかし、こうした恣意的な利用によって自由主義的な価値の正当性が国際的に弱体化してきておりまして、この現在のアメリカからの言説というものはこの民主主義にとどめを刺す可能性もあると、かなり危険な動きだと考えております。
 これに加えまして、民主主義諸国からの動きとして懸念すべきものを次に示させていただきます。「対処すべき問題②民主主義言説の安全保障利用」というふうに書かせていただきました。
 民主主義という概念は、実は三つの要因によって構成されています。一つは規範です。民主主義を重視するという考え方そのものです。それは、人権を保護する大切さ、法の支配、自由を重視する考え方などです。そして、二つ目は制度です。それを実際に守るための、例えば三権分立ですとか、様々な人権保護のための法、法整備ですとか、様々な制度があるかと思います。それに加えて、民主主義にはイデオロギーの側面もあります。
 このうち、イデオロギーの側面というものが残念ながら戦争の文脈で前面に出てきてしまっているというのが過去三年で見られている現象です。彼らとしての権威主義国から我らである民主主義国を守るという言説が形成されてきまして、これが戦争と対立の文脈で用いられてきました。特に、ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、そうした言説が最初に出てきたのがここ三年間の動きだったわけですが、これは、実際には、権威主義国、ロシアがウクライナに対して行ったことは、ウクライナの国家主権と生存への侵害でした。それを国家主権に対する侵害が見られているというふうに主張するのではなくて、民主主義が危機にさらされている、民主主義が侵害されているというふうにフレームを民主主義国側はしてきたわけですが、これは民主主義国間での共同戦線を張るために重要と考えられた動きでした。言い換えれば、民主主義の旗の下で結集するための動きだったわけです。
 これは実際に民主主義国を結集するために非常に重要な役目を果たしたことは間違いありませんが、他方で、ポピュリズムによって規範と制度というものが弱体化していく中で取られてきた動きであるということ、それから、この概念利用の仕方自体が排他性を持っているということ、これが国際社会に非常に難しい問題を突き付けています。特に、グローバルサウスの非自由主義的な民主主義国、そして権威主義国にとっては踏み絵を踏まされているという感覚を強めざるを得ない状況になっているわけです。
 十四ページ、十五ページ目、十六ページ目で示させていただきましたが、ウクライナのゼレンスキー大統領は民主主義のリーダーシップを必要としていると主張してきたわけで、実際にそれによって民主主義国の連携が強まってきたのは望ましい動きではあったのですが、このウクライナにとっての民主主義というのは親EUの動きであり、これが制度を強化する、思想ですとか規範を強化したいということというよりは、やはり主権を守るためにEUと連携をしたいということの言い換えであったということを意識しておく必要があるかと思います。
 そういった形で、ウクライナ支援のための言説として、民主主義と専制主義、自由と弾圧、ルールに基づく秩序と武力による秩序との戦いですとか、あるいはフォン・デア・ライエン欧州委員会委員長などからも独裁政治による民主主義への戦争というフレーミングが出てきて、これが二項対立の世界というものを強め、グローバルサウスにとって非常に難しい状況を形成、強めてきたというふうに言わざるを得ません。
 それに更に歯止めを掛けてきたのが、イスラエル支援のための言説です。
 アメリカ側からは、バイデン大統領が、イスラエルは民主主義国であると、それなので我々はイスラエルを防衛するのだというような言葉が十月十日にすぐに出てきましたし、また、ブリンケン国務長官なども、イスラエルは民主主義国であって、人間の命に最も高い価値を置くものであるというふうにフレームをしました。
 こういったフレームにもかかわらずイスラエルのガザに対する攻撃があったということが、もちろんそれはハマスのテロに対する報復であったわけですが、この事実がグローバルサウスにとっては非常に民主主義を理解する上で居心地の悪い思いをさせているというのが現状です。
 そもそも、十九ページを見ていただきますとお分かりいただけるかと思いますが、例えばASEANは民主主義という言葉を使うことを避けてきました。インド太平洋に関するASEANアウトルックなどでも、例えば開放性、透明性、包括性、ルールに基づく枠組み、グッドガバナンスなどの概念は使いますが、民主主義という言葉は使わないでまいりました。
 次のページの二十ページ目に行きますと、こうした状況を踏まえて、中国はこれを利用しようとしてきております。これは言説上のことです。
 例えば、チャイナ・デーリーで見られた言説をそこに一つ取り出しましたが、こんなことを言っています。G7は国連憲章についてほとんど触れず、代わりに民主主義やいわゆるルールに基づく国際秩序について語り続けている。しかし、G7諸国が国際ルールについて語るとき、それは西側諸国が設定したルールを意味し、小さなサークルのイデオロギーと価値観に基づいて線を引き、地域対立をエスカレートさせる可能性があると。
 こういった言説は明らかにグローバルサウス向けに形成されているものです。元々これ、こういった言説が響きやすい対象に対して、中国側に歩み寄らせるための動きというふうに理解する必要があります。
 このように、民主主義をめぐる言説が権威主義国側からも民主主義国側からも残念ながら弱体化させられている現状を踏まえて何をすべきかということで、最後、三点出させていただきました。
 一つは、カウンターナラティブの国際的な醸成が必要だと考えます。特に、アメリカの中でも現政権に忖度する動きというものが非常に強化されてきたことに鑑みまして、民間アクターを前面に出した欧州と日本の協調というものが重要かと思います。
 第二点目に、民主主義を国家間対立の文脈で語ることをやめて、あくまで制度と価値の文脈で語るということが必要かと思います。戦争同意の旗印としては、主権や国家の生存というものを使うということが重要だと思われます。
 そして最後に、民主主義、自由、人権、法の支配を守る制度と、この規範を擁護しようとする取組への支援というものを日本としては拡大できるのではないかと思います。現在ある草の根無償支援を政治的なNGOにも例えば拡大するですとか、あるいは民主活動家に対する支援を行う、私の方が実はプログラムを立ち上げたんですけれども、そういったプログラムに御支援いただければ有り難いですし、また議員の先生方から民主主義の規範を強化するようなナラティブを形成される議員連盟などをおつくりいただけるといいかなというふうに考える次第です。
 どうもありがとうございました。
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猪口邦子#8
○会長(猪口邦子君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 本日の質疑はあらかじめ質疑者を定めずに行います。
 まず、大会派順に各会派一名ずつ指名させていただき、その後は、会派にかかわらず御発言いただけるよう整理してまいりたいと存じます。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 また、質疑者には、その都度答弁者を明示していただくとともに、できるだけ多くの委員が発言の機会を得られますように、答弁を含めた時間がお一人十分以内となるように御協力お願いいたします。
 質疑のある方は順次御発言願います。
 越智俊之君。
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越智俊之#9
○越智俊之君 自由民主党の越智俊之です。
 まず、三名の参考人の皆様、本当に今日は貴重な御意見をいただきまして、心から感謝いたします。ありがとうございます。
 まず、細谷参考人と相良参考人に、この包摂的平和の実現に向けた多国間枠組みについて質問させていただきたいと思います。
 冷戦後の国際秩序ではルールや協調が重視されてきました。しかし、近年、軍事や経済といった力を用いた国益の実現を重視する方向へ流れていっているのではないかと思っております。そのような中、これまでの国際秩序の中心的な存在であったアメリカでは、多国間外交や法の支配を軽視するとも思われるいわゆる第二次トランプ政権が誕生しました。また、ヨーロッパにおいても極右勢力の台頭が見られるなど、今後の国際秩序がより一層、協調とかルールではなく力によって物事を決める方向へ進むことが今懸念されていると思います。
 今回の調査名、調査テーマとして掲げられたこの「Inclusive Peace」についてですが、まずは法の支配という価値を共有する国々との連携を進めるとともに、国連とかNATOなど様々な多国間の枠組みを組み合わせて活用していくことも重要だと思います。
 そうした取組を進める中で、今のこの枠組み、国連やNATOなどの枠組みがいいのか、それとも新しい枠組みをつくっていくとすれば、またそれはどういった枠組みがいいのか、そしてまた、その中で日本が果たすべき役割について聞きたいのと、もう一つ、あわせて、もう一つその流れでお聞きしたいんですけど、今のトランプ政権ですけど、国際保健を担うWHO脱退、そしてパリ協定からの脱退表明と、この多国間枠組みを通じた地球規模の課題の解決には極めて消極的、否定的な姿勢を示していると考えています。
 一方で、今、経済規模の拡大に伴って、参考人も言われた、この中国の国際機関に対する財政面の比重が非常に増しておりまして、主要ポストの獲得を始め、中国が国際機関における影響力を増している中でのこの米国の、アメリカの国際機関に対する消極的や否定的な姿勢は、一帯一路とか、中国の影響力増大を一層加速させてしまわないかという危惧をしておりますが、その点についてどのように考えるかと、また、これに関しても日本としてどのような対策を取るべきか、御意見があれば聞かせていただきたいと思います。
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細谷雄一#10
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。貴重な御質問、御意見いただきました。大変重要な課題だと感じております。
 私の方から簡潔にお答えさせていただきたいと思います。
 まず第一に、今の世界が大変不透明性を増していて、また、いろいろな要因というものが複合的に結び付いている時代というふうに認識をしております。したがって、日本の外交もそれに合わせて、まあ必ずしも一つの方向に向かっていくのではなくて、より重層的あるいは多層的、そして多角的に進めていく必要があるというふうに考えております。
 より具体的に申し上げれば、やはり、力の論理ということを考えたときに、日本の周辺には日本の五倍の軍事力、軍事費を持つ中国がいて、また、日本に対して公然たる敵意を示す北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返しております。したがって、日米同盟というものをいかにして持続するかということは、日本の外交においても引き続き重要な課題だろうと思います。困難に直面しても、やはり日本の安全を担保する重要な基礎としての日米同盟というのは引き続き重要であろうと思います。そのことは、二月七日の石破総理訪米における日米首脳会談での成果、共同声明で十分にその成果というのは示されていると感じております。
 そして、二つ目の、三つの層で考えるときの二つ目の層が有志国連携でございます。これは、マルコ・ルビオ国務長官が最初に行った外相会談が、まさに日米豪印、この四か国でのクアッドの外相会談でした。日本やインドやオーストラリアとの外相会談を優先したと。このことに見られるように、現在の第二次トランプ政権においても、第一次トランプ政権と同様に、このような有志国連携というものが重要な位置を占めるだろうというふうに考えております。言い換えれば、中国やロシアを含める形での多国間主義的な枠組みというものが機能することは極めて難しい段階へと我々は今来ているんだろうと思います。
 しかしながら、同時に、三つ目の層として、多国間協力というものを引き続き日本が努力をする。例えば、国連でも引き続き、つい先日でございますけれども、ロシアの侵略を非難する決議が出されました。様々な側面で引き続き国連は重要な役割を担っていると考えます。仮にアメリカが国連を軽視し十分にコミットしない、あるいは中国やロシアが日本とは大きく異なるイデオロギー、価値観、利益を持っていたとしても、やはり国際社会における良識というものに日本は依存して、多数の国がやはり国際社会の平和と安全のために努力をするという、この国連憲章の精神というものを引き続き擁護し、またそれを尊重していくような方向へと日本外交が牽引することが重要であると。
 この三つの層を重層的に、多角的に結び付けるということが日本外交の課題だと考えております。
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相良祥之#11
○参考人(相良祥之君) ありがとうございます。二つ御質問をいただきました。
 まず一つ目のこのインクルーシブ・ピースのための多国間枠組みというところでございますけれども、私は、やはり国連をもっと活用していくべきであろうというふうに考えております。新しい組織をつくるにしても何のためにというところがどうしても大事になってくるわけですけれども、この戦後八十年積み上げてきた国連における貢献、これは日本も多大な貢献をしてまいりました。こういったものはやはり積極的に、今こそリバイタライズといいますか、再活性化すべきであると。
 そのために、私は、やはり新興国、途上国、グローバルサウス、またアメリカも含めて糾合する理念というのがどうしても必要だというふうに考えておりまして、私は、これは、やはり日本が世界に提唱してきた人間の安全保障と、あとは人間の尊厳ですね、これはやはり途上国にもっと訴えていってもいいのではないかというふうに考えているところでございます。
 人間の安全保障自体は、元々、一九九八年に小渕総理が提唱した概念であって、それ以来、日本はずっとこれを支えてきたわけですけれども、コンセプトは非常にシンプルでありまして、プロテクションの保護とエンパワーメントの能力強化という、この二つをあらゆる人々のために推進していきましょうという大変シンプルな概念なんですね。これを立ち戻って連帯を意識をしながらできるだけ広げていく、その際にこの人間の尊厳に光を当てるというところは、私は一つ有効な方向性ではないかと思います。
 手短に、あと二つ目の中国と国際機関とのありようについてですけれども、私は、日本は、まずはこの政治の場の国連においては、今の状況というのは、言わば外務省が一票持ってニューヨークであるいはジュネーブで頑張っているというところはあるんですけれども、やはりこういったところこそ議員外交の果たすべき役割というのはあるんではないかなというふうには考えております。
 その上で、実は、非常に緻密に計画を立てて行政機関としての国連に対してアプローチを取っていくことが重要だというふうに考えておりまして、よく言われるのが、幹部が中国人だとその国際機関というのは中国流になってしまうのかというところは、実はそれほどシンプルではないというところがございまして、私が国連で勤務をしておりましたときに、同僚に中国人がおりました。その方というのは、中国におれないので言わば国連で働いているというような方でございます。こういった方というのは、実は国際機関の中には多数おられます。なので、そこは極めて緻密に行政機関の国連に対してアプローチを取っていくというのは必要であろうというふうに考えております。
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越智俊之#12
○越智俊之君 ありがとうございます。
 市原参考人に、このインクルーシブ・ピースの実現に向けてのグローバルサウスとの連携の在り方、質問したかったんですけど、時間となりましたので、また次回よろしくお願いします。
 質問を終わります。ありがとうございます。
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猪口邦子#13
○会長(猪口邦子君) それでは、広田一君。
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広田一#14
○広田一君 会長、誠にありがとうございます。
 そして、三人の参考人の皆さんには、とてもすばらしい御意見賜りまして、心から感謝を申し上げます。
 自分の方からは、まず、市原参考人の方にお伺いをいたします。
 取るべき手段の二番目の方に関連してお伺いをしたいと思うんですけれども、参考人の方は、今年一月の論文の中で、民主主義のイデオロギー回避をというふうな論文があったというふうに思いますが、その中でも、国家間対立の文脈で、もうこれからは民主主義を語るということはやめる必要があるというふうにおっしゃられております。特に、ウクライナへの支援動員といったことに関しまして、民主主義ではなくて、先ほどもお話あったように、国家の主権、論文の中では独立という言葉を使われ、そして今は生存というふうにおっしゃっておりますけれども、こういった普遍的な価値といったものが侵害された事実に焦点を当てるべきだというふうにおっしゃっております。
 確かにそうだなというふうに、説得力があるなというふうに感じると同時に、このターゲットとして、いわゆる権威主義国家のところまで意識をされてこのことを主張されているのかどうかということと併せて、自分たちにとってこれから大事なのは、今回のウクライナ侵攻というのが台湾有事に結び付いてはならないということなんですが、この今参考人がおっしゃっている国家の主権と独立と生存というふうな規範で果たして台湾有事というふうなことに関して中国に対して説得力を持ち得るのかどうか、このことも併せてまずお伺いします。
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市原麻衣子#15
○参考人(市原麻衣子君) ありがとうございます。私の中核的な議論のところを御指摘いただいて、広田先生、ありがとうございました。
 民主主義を戦争の文脈で語らないというのは実は余り見られてこなかったことなんだと思います。冷戦期にも民主主義対権威主義、まあ民主主義陣営と共産主義陣営という形で議論が行われてきました。ただ、この冷戦期であろうと現在であろうと、その政治体制あるいは政治的な価値の違いというものを前面に押し出した言説の形成というものは、民主主義ではない側にいる国々を更に我々と連携しにくい立場に追いやるという形になると思っています。
 台湾有事に関して考えますと、もちろん、台湾と日本の間、あるいは台湾とアメリカ、日本などの間では政治体制の共有というものが見られて、それが理念的な連携を起こしやすいということは確かではありますが、台湾有事の際、日本、台湾、アメリカや韓国などだけではなくて、それ以外の様々な国々も連携をしなければならなくなるはずです。そういうふうに考えたときに、例えば権威主義国であるベトナムはどうなのかとか、あるいは民主主義の中でも自由がかなり侵害されてきているようなフィリピンとかインドネシア、こういった国々も連携をしていただかないといけないということになると思います。
 そうしたときに民主主義国連携というふうにフレームをすると、そういった国々にとっては非常に動きづらいというような状況も生まれようかと思いますので、主権という概念を、特に反帝国主義の文脈でやってきたグローバルサウスにとって、そして非同盟中立という考え方が今でも影響を強くもたらしているこうしたグローバルサウスの国々にとっては、民主主義の文脈で語らず主権の文脈で語るという方が効果的かと思っています。
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広田一#16
○広田一君 ありがとうございます。
 次に、細谷参考人の方にお伺いをしたいと思います。
 細谷参考人の方は、二〇二三年の三月に朝日の方に投稿されている中で、このままロシアの一方的な現状変更、これを国際社会が許してしまうと、いわゆる法の支配による国際秩序が崩壊をすると、そして今は国際政治史の大きな転換点に立っているんだと、こういうふうなことを述べられているわけでございます。
 そういう中で、参考人もホッブズ主義の世界における日本の進路というふうなことも絡めて、現状、今までリベラルな国際秩序を牽引していたアメリカが百八十度変わるような形で、先生がおっしゃるリベラルな国際秩序の崩壊に手を貸すかもしれないと、こういったような今状態になっているのかもしれないんですけれども、この現状に対して、もし、先般の小泉参考人がおっしゃっていたんですけれども、ひょっとしたら、このまま行くと、停戦合意という名のウクライナにとっては降伏を強いられるかもしれないという状態になってしまう、こういったことがもし現実になった場合に、先生がおっしゃる国際秩序の崩壊というふうな理解でまずよろしいのかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
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細谷雄一#17
○参考人(細谷雄一君) 貴重な御質問ありがとうございました。
 恐らく日本には二つの戦略を同時に進めることが必要だろうと思います。
 まず第一に、今までは、例えばアメリカ、同盟国のアメリカや国連安保理の常任理事国の善意に基づいて、我々は平和と安定というものを維持してきた。ところが、その善意が期待できない。つまりは、第二次世界大戦後ほとんど初めてとも言える、国連の安保理常任理事国が自らの軍事力で領土を変更し、膨張すると。これはやはり、かつてはなかった新しい状況、戦争は何度もあったわけですけれども、領土を膨張するために軍事力を用いて大国が現状変更する。そうすると、これからの日本は、まず自助というもの、自分たちの国や安全を自分たちの力で守ると、国連も頼りにできなければアメリカも頼りにできないという時代が来るかもしれません。今はそうではないかもしれません。
 ですので、まず自助というものに備えるということと、同時に、しかしながら日本が率先して国際社会の多数とともに、やはりそのような国連、戦後、維持してきた国連を基礎としたシステムを擁護する、この二つの戦略を同時に、楽観主義、悲観主義の両方に基づいて戦略を進める必要があるというふうに考えております。
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広田一#18
○広田一君 そうすると、現状というか、万一、今回の停戦というのが、先ほど先生がおっしゃったように第二次世界大戦後初の軍事侵攻による国境線の変更というふうな状態になったとしても、国際秩序が決して崩壊をしたわけではないんだと、先ほどおっしゃっている二点のことを日本とも駆使をしながら再構築をするべきだと、そういうふうな理解でよろしいんでしょうか。
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細谷雄一#19
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
 やはり、おっしゃるとおり、国際社会の多数の国は、大国の一方的な都合によって現状変更し、領土を膨張するということに対して強い違和感、批判を持った国は私は依然として多数だと思っております。
 したがって、その多数の国々と連携して、そのことが国際的な正当性を持たせないような外交努力というものが引き続き必要というふうに考えております。
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広田一#20
○広田一君 その中で、先ほど、冒頭、冒頭に猪口会長の「戦争と平和」の本を引用したお話があったんですけれども、私も学生時代に岡澤憲芙先生の方からこれを読むようにと指導いただいたわけなんですけど、十分に理解できないまま今日に至っていることを恥じるわけでございますが、その中で、猪口会長の本の中で、経済的相互依存関係が戦争の発生させる確率を減少させるというふうなお話がございました。
 そういう中で、多国間連携の必要性の中で、やはり日本として、特にこの経済面での相互依存関係を構築をするというふうな役割も大変重要になってくるんじゃないかなというふうに今後思うんですけれども、そういう中で、参考人として具体的に日本がどういう役割を果たすことができるのか、御所見があれば教えていただければと思います。
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細谷雄一#21
○参考人(細谷雄一君) ありがとうございます。
 まさにおっしゃられたとおり、経済的な相互依存が戦争を防ぐという考え方、これは元々のイギリスのマンチェスター学派と呼ばれるような、平和の問題と経済の問題を結び付けると。現在におけるまでそれは私は有効だと思っています。つまりは、ブレトンウッズ体制によって多角的で開放された自由な経済秩序をつくると。
 一方で、近年新しい現象が起きておりまして、それは相互依存というものを武器化する、ウエポナイゼーションする。つまりは、相手国に自国の経済的な物資、例えば鉱物資源などを依存させて、それを道具として利用すると。中国がまさにレアアースで行っていることでございますけれども。
 一方では経済的な相互依存によって平和を維持するというこの思想を維持しながら、同時にこのような経済の武器化、相互依存の武器化というものに対しても防衛的な、まさに日本が経済安全保障推進法で行ったような取組ということを両面として進めるということが重要なんだろうと思っております。
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広田一#22
○広田一君 どうもありがとうございました。
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猪口邦子#23
○会長(猪口邦子君) それでは、高橋光男君。
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高橋光男#24
○高橋光男君 ありがとうございます。
 本日は、三名の参考人の皆様より大変貴重な御説明、御示唆をいただき、ありがとうございます。
 私は、今年戦後八十年、日本が、やはり今混迷するこの国際社会に対してどのように関与し貢献していくかについて大変関心がございます。今日御説明いただいた中にも、アメリカを始めとする今の自国第一主義、こうした今流れがある中において、日本がそれによって影響を受けてはならないと私は思っております。
 一方で、やはり自国第一主義を日本が克服していくためには、まず、まず自国内における不公正、これを是正していかなければいけないと考えています。例えば、その争い事のやはり原因というのは、社会的な不平等又は経済的な不安定、こうしたものがやはりあるわけでございまして、こうしたものを是正し、公正な社会を実現していかなければいけないと思います。また、排外主義、これを克服していかなければいけないのは、私は日本の大きな課題だと考えています。
 もう一つ、国際協力の必要性への理解の増進、これが大変大事だと思っておりまして、なかなかこれが、私は一方で、一面は、一面において、コロナ禍、これによってより日本においても自国中心主義的な考え方が進んだのではないかなというふうに思います。国際的な支援、対外的な支援というのは協力を通じて私は自国のためにもなると考えておりますけれども、とりわけ日本は島国でありますので、なかなかそういったことを想像するのが難しい。その中で、自国の、自国民の支持がなければ国際協力を進めることが難しいというこのジレンマに接していると思っております。
 そこで、三名の参考人の方にお伺いしたいと思うんですけど、まず細谷参考人から、そうした自国第一主義を克服するためにどのような取組が必要と考えるかということにまずお伺いしたいと思います。
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猪口邦子#25
○会長(猪口邦子君) 細谷さんでいいですか。
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細谷雄一#26
○参考人(細谷雄一君) よろしいでしょうか。ありがとうございます。
 なぜ今、自国中心主義が広がっているのか。これはもうポピュリズム、ナショナリズム、いろいろなものがございますけれども、やはり私の認識では、一九八〇年代以降の新自由主義とグローバル化によって、これらが多くの恩恵をもたらしながら社会に巨大なひずみや問題をもたらしていると。このグローバルな新しい情勢に基づく社会の様々な不平等、格差、ひずみ、問題というものに対して、それぞれのナショナルなガバメントというものが対応ができていない。本来だったら、国際的な課税もそうですが、本来であればプラットフォーマーに対して国際協力に基づいてやはり対応しなければいけないけれども、しかしながら、逆にそのことが、自国中心主義というものがより一層国際協力を難しくしていると。この矛盾というものが、悪循環というものが今の世界での困難を私は増幅させているんだろうと思います。
 したがって、富が一部に偏在する極端な現在の新自由主義とグローバル化に基づくこの現状というものに対して、例えばアメリカのトランプ政権、あるいはアメリカのトランプ政権を生む大きな力となった有権者の人たちが社会の変革を求めているとしたら、この変革に対応できなければ、どれだけ国際協調を実現したとしても、これはかつての十九世紀のウィーン体制で王政貴族が中心となった秩序というものが二十世紀初頭に壊れたように、グローバルなエリートによってつくられた秩序というものもいずれ崩れていくんだろうと思います。
 したがって、国際協調が重要ということと同様に、新自由主義やあるいはグローバル化が見落としてきた、取り残された人たち、まさにこの今日のテーマである包摂的な平和、取り残された人たちに対してどういうような恩恵をもたらすことができるか、それによって今我々が向き合っている問題というものを乗り越える何かヒントが得られるんだろうと思います。
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高橋光男#27
○高橋光男君 ありがとうございます。
 それでは、市原参考人、お願いいたします。
 そういう中で、日本において、まさに国民に対して、そうした国際的な関与又は貢献、こうしたものが大事だということを、どのような言説を通じて、やはりそれを理解を深めていくためには必要だというふうにお考えになるかについて御見解をお伺いします。
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市原麻衣子#28
○参考人(市原麻衣子君) ありがとうございます。
 まず、ベースとして、日本の場合、例えばアメリカに比較して考えますと、余りパニックになり過ぎないということは必要なんだと思います。アメリカは社会が全体的に小さな政府を志向する社会でありまして、日本の方は大きな政府を志向する社会かと思います。それですので、アメリカに比べてより福祉重視ということが基底にあると思いますので、経済的な不平等はアメリカに比べると表出しにくいというのが基底にあります。
 他方で、経済的な不平等が拡大してきたことは間違いがなく、高橋先生がおっしゃるように、ナラティブの面でもそれを克服していかなければならないと思います。
 私としては、これに関しては、ナラティブの面と、それからオンライン空間を超えた対面の対話の加速というものが必要だと思っています。人々は、オンラインの空間で対話をするときにはどうしても相手をスペックで見てしまうというところがありますが、他方で、同じ空間をオフラインで共有したときにはお互いを理解しようとする傾向があると思います。そして、ナラティブの点では、相互理解の例をできるだけ拡散をしていくという、何というか、すごく小さな具体的な例の積み上げというものが必要なのではないかと思っています。
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高橋光男#29
○高橋光男君 ありがとうございます。
 まさに私も、対話、一対一といいますか、このフェース・トゥー・フェースの対話の重要性、大変感じているところでございまして、そこで、相良参考人、最後お伺いしたいと思うんですけれども、その対話外交の象徴的な場が国連であるわけで、先ほども越智先生からも御質問あったかと思いますが、やはり国連は、ただ、今本当に機能不全といいますか、限界にもう直面しているのも事実なわけでありますけれども、そうした中で、やはり我が国としてどのようにこれを改善していくために働きかけていくべきか、これは、様々なフォーラムがあると思うので、一面的に政治的なフォーラムもあれば経済的なフォーラムもありますけれども、一つの取組として、私は、途上国が多いグローバルサウスに対してやはりこういう協力をしていくこと、今日は健康安全保障のお話をいただきましたけれども、それを取り組むべき一つの一番大きな地域がアフリカだと思っております。
 トランプは余り関心がない、そこを別に日本が埋め合わせをするということでは必ずしもないと思うんですけれども、ただ、日本は一九九三年からですかね、TICADを始めておりまして、そうした中で今年も横浜でTICAD9がございます。そうしたアフリカへの自立的な、アフリカが自立するための支援、こうしたところ、やはり日本がリーダーシップを発揮できると思うんですけれども、是非、国連のそうした限界にどう対処するのか、その中で日本がどのようなマルチ外交を展開すべきかについて御見解をお願いします。
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