経済産業委員会

2015-06-19 参議院 全86発言

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会議録情報#0
平成二十七年六月十九日(金曜日)
   午後一時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十八日
    辞任         補欠選任
     安井美沙子君     石上 俊雄君
     柳澤 光美君     浜野 喜史君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         吉川 沙織君
    理 事
                磯崎 仁彦君
                滝波 宏文君
                宮本 周司君
                加藤 敏幸君
                倉林 明子君
    委 員
                阿達 雅志君
                岩井 茂樹君
                高野光二郎君
                松村 祥史君
                渡邉 美樹君
                石上 俊雄君
                直嶋 正行君
                浜野 喜史君
               佐々木さやか君
                浜田 昌良君
                東   徹君
                松田 公太君
                中野 正志君
                荒井 広幸君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        奥井 俊二君
   参考人
       一橋大学大学院
       国際企業戦略研
       究科教授     相澤 英孝君
       一般社団法人日
       本経済団体連合
       会知的財産委員
       会企画部会部会
       長代行
       NTTアドバン
       ステクノロジ株
       式会社顧問    澤井 敬史君
       日本労働組合総
       連合会総合政策
       局長       川島 千裕君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○特許法等の一部を改正する法律案(内閣提出、
 衆議院送付)
○不正競争防止法の一部を改正する法律案(内閣
 提出、衆議院送付)
    ─────────────
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吉川沙織#1
○委員長(吉川沙織君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、柳澤光美君及び安井美沙子君が委員を辞任され、その補欠として浜野喜史君及び石上俊雄君が選任されました。
    ─────────────
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吉川沙織#2
○委員長(吉川沙織君) 特許法等の一部を改正する法律案及び不正競争防止法の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
 本日は、両案の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
 御出席いただいております参考人は、一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授相澤英孝君、一般社団法人日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会部会長代行・NTTアドバンステクノロジ株式会社顧問澤井敬史君及び日本労働組合総連合会総合政策局長川島千裕君でございます。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様から忌憚のない御意見を拝聴し、両案の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 それでは、議事の進め方について申し上げます。
 まず、相澤参考人、澤井参考人、川島参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 御発言の際は、挙手していただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、参考人、質疑者共に御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず相澤参考人にお願いいたします。相澤英孝参考人。
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相澤英孝#3
○参考人(相澤英孝君) 本日は、先生方の貴重な御時間をいただきまして、参議院経済産業委員会で参考人として意見を述べさせていただく機会を与えていただき、ありがとうございます。
 特許法改正案及び不正競争防止法改正案について若干の意見を述べさせていただきます。
 特許法改正案は、職務発明に関する特許法第三十五条の改正案と、特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約の加入に伴う国内法的整備を含んでおります。特許法条約及び商標法に関するシンガポール条約につきましては、グローバル化した現代における多数国による特許権の取得等の特許権及び商標権の管理というものが向上すると考えられますので、これについては異議のないところだというふうに理解をしております。
 そこで、職務発明に関しまして意見を述べさせていただきたいと思います。
 現在の特許法第三十五条は、従業員の職務上の発明につきまして、使用者である企業等に勤務規則等の使用者の決定により特許権を取得させるということを認めつつ、使用者にその対価を従業者に支払う義務を課しております。これは、従業者の発明に関して、その発明からの利益を踏まえた対価を支払うとするいわゆる成果主義的なものが採用されているものでありまして、通常の従業者の職務の成果に関する一般的な取扱いとは異なっているものであります。
 その理由は発明の奨励にあるわけでありますが、企業その他の研究開発組織におきまして技術開発がなされる過程は多種多様にわたっております。一義的に成果主義、結果を伴う報酬を求めることが妥当しない場合があるのではないかというふうに考えております。円滑に研究開発が行われるためには、それぞれの企業や研究組織が自らの研究開発投資を踏まえて、職務発明の取扱いについて自由に決めて研究開発を促進するということが究極としての研究開発の促進につながるというふうに考えております。
 改正案は、従業員等の発明者が引き続き相当の経済的利益を受ける権利を有するとすることで、これまでの職務発明規程を踏襲しながら、相当の利益の決定について、より柔軟な取扱いを可能とすることを目的とするものと理解されます。これによりまして、使用者である企業その他の研究組織と発明者との協調により円滑に技術開発を進めるという日本の課題解決についての改正であるというふうに理解することができると思います。
 なお、今回の改正では、現在の特許制度が抱えている大きな課題であります特許権の侵害に対する救済のための制度的な整備については含まれておりません。今後、技術開発の成果を十分に保護し、知的財産の価値を高めていくためには、知的財産制度の国際的な整備による日本産業の国際的展開という目的を踏まえ、国際的な交渉の基礎となる日本の特許制度の保護を充実させていくための紛争処理システム、その改善をしていかなければならないというふうに考えております。
 そのための手段としましては、例えば侵害者に偏在する証拠を開示させ、侵害に関する事実を隠蔽することを阻止するための制度を充実させること、侵害者に侵害による利得を保持させず、むしろ侵害をすることによって損失を受けるような、侵害を抑制する賠償制度のような法制度を整備を急がなければいけないという状況にあるものと考えております。
 次に、不正競争防止法の改正案について若干申し上げさせていただきます。
 近年、日本企業の営業秘密が国外において不正に使用され生産された製品が各国を流通するという状況が明らかになっていることは先生方御了知のところであると思います。グローバル化した現代社会において、国際的に活動する日本企業の技術開発の成果であります技術が十分に保護されなければ、技術開発投資からの収益が得られないことになり、日本の経済発展にも影響を及ぼすおそれがあります。
 技術開発投資を保護するためには、特許権の保護のみならず、営業秘密の保護を含めた知的財産の全般にわたる保護が重要であります。知的財産の侵害の立証では、一般に証拠が侵害者側に偏在するということがあります。特に営業秘密に関しましては、製造方法等の侵害過程は侵害者によって隠されるということが多いので、その場合には不正使用者に証拠があることから立証ができない、したがって営業秘密の侵害が認められないというおそれがあります。したがいまして、この立証の困難を除去することが重要になるというふうに考えます。
 また、営業秘密の不正使用によって生産された製品の流通を放置すれば、不正使用者はそこでその流通によって利益を得ることになります。この利益を得ることを阻止するために、不正使用によって生産された製品の流通を抑止することも必要です。さらに、不正使用によって得た利益を剥奪し、不正使用によって利益は得られず、かえって損失を受けるかもしれないということが、そういう賠償制度ができることによって営業秘密の不正使用を抑止することができると思います。
 改正案は、不正使用に関する推定規定を設けることによって、権利者の立証負担を一定程度軽減し、不正使用者による証拠の不提出による侵害の不成立ということを和らげる効果を有しています。また、不正使用によって生産された製品の輸入を阻止するために、不正競争の範囲を拡大させることも含んでおります。さらに、インターネット等を使った産業スパイ等、言わば新しい時代の情報環境における営業秘密の保護というものも踏まえた刑事罰規定の整備なども盛り込んだものとなっておりまして、現代における営業秘密の保護に関して意義のあるものであるというふうに考えております。
 今後、侵害の立証のための証拠の提出義務を拡大する制度等の充実、今回の改正で侵害とされた、外国において不正使用により生産された製品の輸入を税関で阻止するための関税法の改正、不正使用により利得を得られない賠償制度などの制度整備が進められるべきものであるというふうに考えております。
 知的財産の改革は、今回の特許法の改正案、不正競争の改正案で完結しているものではないと考えております。今後の日本の成長を支える知的財産の価値を高めていくためには、先生方のお力によりまして、更に知的財産の保護を充実させるための紛争処理システムの整備、更にグローバル化時代に即した日本による通商交渉等が進められることが必要であるというふうに考えております。どうかよろしくお願いいたします。
 私の意見はここまでです。ありがとうございました。
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吉川沙織#4
○委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
 次に、澤井参考人にお願いいたします。澤井敬史参考人。
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澤井敬史#5
○参考人(澤井敬史君) 経団連の知的財産委員会企画部会長代行の澤井でございます。本日は、このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 さて、本日、二つの法改正についての参考人ということでありますので、まず総論的なお話をさせていただいてから、特許法、次いで不競法という順で、それぞれについて簡単に意見を述べたいと思います。
 まず総論ですが、イノベーション創出をめぐるグローバル競争が熾烈化しておりまして、知財に関する国の政策、制度が従来にも増して重要な時代となっています。
 こうした中、個々の企業においても知財が経営戦略と密接に結び付くようになってきており、戦略の多様化、複雑化が進行中です。それを象徴するキーワードはオープンイノベーションです。企業は、自前主義の時代から多様なプレーヤーと様々な形で連携して新しい知を生み出す時代に入っております。
 その際に重要なことは多様性だと思います。いろいろな選択が可能なように、柔軟な制度が用意されていることが必要です。そして、どのような制度であっても、生み出された知が侵害されることのないようにしっかりと保護され、安心して活用できる抑止力ある仕組みになっていることが大切です。
 例えば、特許化については権利取得が法的安定性を持って行われることが重要ですし、秘匿化については、合理的な秘密管理をしていれば不正取得、使用した相手に対して相応のペナルティーが科されることが重要でございます。
 その観点から我が国の現在の法制を見ると、特許化あるいは秘匿化というどちらの選択肢を取るにせよ、やや不十分な点がまだ残っています。
 そこで、経団連ではそれぞれについての改正を要望してまいりました。今次の法改正によって、オープンイノベーション時代にふさわしい多様性と抑止力を確保する環境整備ができるものと思っております。それによって、我が国企業の知財戦略の機動力が高まり、イノベーション創出につながることができると大いに期待しております。
 したがって、いずれの法案においても経済界の総意として早期の成立、施行を希望いたします。
 それでは次に、二つの改正法案に関しての意見を簡単に述べたいと思います。
 まず、特許法の改正についてでございますけれど、ここは職務発明制度の見直しについて焦点を当ててお話しさせていただきたいと思います。
 まず、現行の特許法の職務発明制度の問題点でございます。
 先ほど相澤参考人からもお話ありましたように、我が国の職務発明制度は従業者帰属と称される形になっております。従業者帰属では、職務発明に関する特許を受ける権利がまず発明者である従業者に発生します。企業は、その権利を相当の対価をもって従業者から譲り受けた上、企業として特許出願をするという形になります。この制度では、相当の対価を通じた権利譲渡によって帰属が従業者から企業に変更するというものであり、構造上大きな問題点を抱えています。
 その問題点を簡単に御紹介いたします。
 まず、企業から見て大きな問題は、従業者から譲り受ける構図となるために、権利が安定的に取得できないという点です。例えば、従業者が、その特許を受ける権利を勤務している会社に報告することなく第三者に勝手にあるいは意図的に譲渡し、その第三者が先に特許出願をした場合には、会社は権利者になることができません。いわゆる二重譲渡問題というものです。
 この点は今まで実はほとんど公になっていない問題点ですが、人の流動化が激しくなり、またグローバルで企業がしのぎを削るようになってくると、このような根本的な不備を抱える制度では海外などからもいろいろと付け込まれる隙を与えることになると危惧しております。
 また、相当の対価をめぐって訴訟で争える仕組みが取られていますが、相当の対価を算定することは大変な困難を伴います。特に近年、製品の高度化、複雑化が進んでおりまして、一製品に数百あるいは数千の特許が使われているものも増えており、個別の特許の価値の算定は実に難しいものでございます。事実、相当の対価をめぐる裁判例においても、裁判所の算定価格も乱高下しており、地裁と高裁で二桁近く異なる算定をされる例もあります。しかも、企業におきましては、退職後であっても十年以上にわたり退職者をトレースして、その対価のお支払をしなきゃいけないという実態もございます。
 平成十六年改正の後の判例が少ないというのは御案内のとおりでございますけれども、衆議院の経済産業委員会でキヤノンの長澤参考人が自社では十年間で十数億円ぐらいと発言されているように、訴訟にならないようにかなり膨大な労力やコストを掛けている現実が企業にはございます。これらのコストは、本来はイノベーション創造に向けるべきリソースを効果的に使えていないということを是非御理解いただきたいと思います。
 それから、研究開発のスタイルも相当変わっておりまして、個人からチームへ移ってきているということも付言したいと思います。特に製薬業界はこれが顕著だと聞いております。さらに、重要な点は、イノベーションという観点から見ますと、イノベーションは個人の力でなされるものではなく組織で行われるものであるという点です。
 ソニーの創始者のお一人である盛田昭夫氏の言葉がそれを如実に語っていますので、御紹介します。発明とか技術だけではビジネスは成り立たない、その技術を使ってどんな製品を作るかを考える際にもう一度知恵を絞る必要がある、売り広めるときにも更に知恵が要ると。すなわち、イノベーションにつながる製品の販売には発明部門以外に多数の部門の貢献があるのが現実であり、発明者のみに多額の対価を認めるということは、インセンティブ施策を従業員の間で公平に講じたいと願う立場から見ると実に扱いにくい側面を含んでおります。そこで、我々経済界としては、従業者帰属を法人帰属に転換することを要望してまいりました。
 ここで、ちょっと補足的に一言申し上げたいことがございます。
 法人帰属ということで我々はお話ししたんですけど、その法人帰属と法人発明というのをちょっと混同されている向きもあるので、法人発明という言葉を使うときには法人そのものが発明者になるというもので、法人帰属はあくまでも特許を受ける権利を最初から法人のものにするだけでありますので、したがって、法人帰属となっても、発明者は従来どおり発明した従業者であって、特許証にはきちんと発明者の氏名が掲載されます。そもそも、発明は会社と従業員とが各々の役割を果たし、全体として生み出すものでございますので、二項対立では語れないものであると現場では痛感しております。
 今般、最初から法人帰属になるという考え方を採用することになれば、従業者から会社への譲渡ということがなくなるので、潜在的に大きな危険性をはらんでいる、先ほども申し上げました二重譲渡等の問題が根本的に解決されると期待しております。
 改めまして今回の特許法の改正案を眺めてみますと、権利の帰属に関しては極めて柔軟性に富んだ制度設計がなされていると我々は感じております。すなわち、従前の従業者帰属を採用したい意向を有する中小企業あるいは大学、研究機関等は、これまでどおりの対応ができることが認められております。その一方で、法人帰属を望む企業は、意思表示によって最初から法人帰属とすることができる制度となっております。要は、法人の意思によって帰属を選択できる柔軟な制度として設計いただいたものと理解しております。
 また、相当の利益という規定になりまして、金銭以外の報奨でも認められることになることから、留学などの多様な方策を自由に企業は設計できるようになります。やる気を引き出す施策が仕事の内容に応じて多様かつ柔軟に行われるようになることは、労使双方にとっても望ましい結果を生み得るものと考えております。
 なお、法人帰属に転換することによって海外に人材が流出するとの批判が一部にあるようですが、ドイツ以外の欧州を始め、ほとんどの国が法人帰属を採用しており、米国も契約によって事実上の法人帰属であることを考えれば、多分杞憂にすぎないでしょう。ちなみに、経団連では、昨年二月に職務発明の法人帰属化に向けた声明を公表し、企業における自主的な取組を促しているところでございます。
 イノベーションの創出に向けて人材獲得にしのぎを削っている企業の観点から見れば、魅力的な処遇を用意すべく創意工夫を施しております。そうでなければ、グローバルな競争原理の中で中長期的には淘汰されることは誰よりも企業自身が認識していることを強調しておきたいと思います。
 経営陣としましては、自社の特性を踏まえ、研究者はもとより、他の従業員も含めた形でモチベーション向上策を考え、最大限の効果が上がるインセンティブ施策を自由に設計したいと考えております。今回の法改正によりインセンティブ施策の自由化が認められることは、企業にとっても有益であることのみならず、そこで働く個々の従業員のためにもなると考えております。
 それで、あと、改正法を踏まえたちょっと要望でございますけれども、イノベーションの実効が上がるためには、今後定められる指針が重要になってくると考えて我々はおります。指針は、企業と従業者の間の手続を明示することで、双方の納得感を高める効果や企業にとっての予測可能性の向上が期待できるものと理解しております。今回の職務発明の制度の改正は、さきにも言いましたように、柔軟性を重視した設計になっているので、指針の策定においても是非その精神にのっとり、使用者と従業者との自主的な取決めの多様性を尊重して、かつ実務に即した現実的なものを定めていただきたいと願っております。
 次に、不正競争防止法については簡単にお話しさせていただきます。
 不競法については、近年、海外競合企業による我が国企業の技術情報、営業秘密の不正な取得の問題が顕在したことを受けて改正をお願いしたところでございます。また、日本成長の要がイノベーション創出にあり、そのキーが、企業が長年にわたる研究開発で蓄積してきた知にあることに鑑みれば、営業秘密の保護は一企業の問題であるだけでなく、国益にも直接結び付く最重要の課題と認識しております。
 現行の不競法は、これまでも罰金の上限引上げ等何度かの法改正を行ってきており、そのたびに抑止力の向上が図られてきたと理解しております。他方、実際には、営業秘密が漏えいした際、立件においては、その秘密がしっかり管理されているかが企業実務の実態を超えて厳しく問われます。民事における損害賠償請求においても、営業秘密が使われても、具体的な被害を受けたことを被害を受けた側が証明するように求められるなど、被害側のハードルが極めて高いと思われます。
 こうした実情は、抑止力が実質的には機能しているとは必ずしも言い切れず、結果として犯罪のやり得や被害者の泣き寝入りを生んでいる可能性が高いのではないかと考えております。特に、海外企業によって時に組織的な形で営業秘密の不正取得、使用が図られるケースは極めて深刻ですし、国の成長につながるイノベーションの源泉が侵されるという形で国益が阻害されているとも言えます。諸外国では、国益の確保という視点も加味して内外で罰則等に軽重を付け、国家としての姿勢を示していると理解しております。
 我々としては、最近顕在化してきた事態の深刻さに鑑み、抜本的な改正を要望してまいりました。今回、そのほかに、法改正と併せて、実際の営業秘密管理指針の改定を通じ合理的な秘密管理の在り方を明確にし、さらには、営業秘密漏えいに関する情報や危機感を官民で共有するためのフォーラム設置等も御提案いたしました。これらがセットとなることによって我が国の営業秘密強化がなされるものと認識しております。
 今回の法改正に関しましては、国益を守るという視点も入って、刑事、民事共に従来の考え方では難しいと思われるところまで踏み込んだ極めて野心的なものとなっており、従来に比して格段の抑止力向上が図られるものと理解しております。あわせて、営業秘密指針につきましても抜本的と言えるスリム化、簡素化を図っていただいたことも大きな成果と言えます。同指針は警察当局も参考としており、その書きぶりは極めて大きな影響があるものと理解しております。さらに、本年一月、官民戦略会議において官民フォーラムの設置が決定され、七月にも開始すると聞いております。こうした具体的な成果が着実に見えてきていることも頼もしい限りでございます。
 今後は、法改正と同時に、法執行に係る体制の強化充実が図られることを大いに期待しております。また、企業におきましても、営業秘密保護の強化に向けた体制づくりが必要です。職務発明と同様、地方、中小企業に対しては知財総合支援窓口等を通じた包括的な支援が講じられることが望ましいものと考えております。
 最後でございますけど、今回のこの二つの法改正により、多様性と抑止力の向上が図られ、我が国のイノベーション創出環境は大きく前進するものと思います。この先は、多様性や抑止力をどう生かすかという点で、規模の大小を問わず、企業の知恵と力量が問われているものと覚悟しております。日本の発展に向けて、産業界としても精いっぱい努力したいと思います。
 どうもありがとうございました。
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吉川沙織#6
○委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
 次に、川島参考人にお願いいたします。川島千裕参考人。
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川島千裕#7
○参考人(川島千裕君) ただいま御指名いただきました連合の川島と申します。
 本日は、私たち連合の意見を表明する機会をいただきまして、まず感謝を申し上げます。
 特許法等改正法案の中の職務発明制度の見直し及び不正競争防止法改正法案について、働く者の立場から意見を述べさせていただきます。
 本日は、お手元に発言要旨をA4一枚お配りしておりますので、この内容に沿って御説明を申し上げます。
 まずは、特許法改正法案に対する受け止めについてであります。
 職務発明制度の見直しについては、連合も参加しました産業構造審議会特許制度小委員会において、立場の異なる委員による様々な議論の積み重ねを経て報告書が取りまとめられました。本法案は、小委員会で確認された報告書の内容を適切に反映したものであり、また、その中で連合の意見も反映されていることから、妥当な内容であると受け止めております。小委員会での議論経過や報告書の趣旨が十分反映された法律となるよう、国会での審議においてこれらの趣旨が確認されることを強く求めるものでございます。
 また、今回の法改正は、我が国における職務発明の促進、産業の発展につながることが重要でありますので、法改正後の運用についてもしっかりと調査、検証が行われる必要があると考えております。
 次に、国会で御審議、確認いただきたい事項として四点申し述べます。
 一点目は、職務発明に関する権利の帰属に関してであります。
 法案では、職務発明に関する特許を受ける権利を初めから法人帰属とすることを可能としております。この法人帰属化については、マスコミなどでも大きく取り上げられたところでもありますし、研究者の関心も高い論点であります。
 法案では、法人帰属とするためには、契約、勤務規則等であらかじめ定めることを要件としております。したがいまして、契約、勤務規則等で法人帰属とすることを定めない会社については従業者帰属のままであり、現行法と変化はありません。また、現行法の下で、大企業のほとんどは職務発明に関する規程を設け、その中の多くの企業は規程において特許を受ける権利を従業者から承継するようにしております。
 小委員会の報告書の段階では、この法人帰属とする際の前提条件が必ずしも明確にはなっておりませんでした。どのような法案になるのか若干心配をしておりましたが、特許を受ける権利の取扱いについての変更は実質的には小幅にとどまるものと受け止めております。
 いずれにしましても、国会審議において、特許を受ける権利の帰属を見直すべきとした立法事実、法人帰属を可能とすることの意義、さらには、これが従業者のインセンティブ確保にどのように寄与するのかという点について確認をお願いしたいと思います。また、職務発明は全て無条件に法人帰属となるといった誤ったメッセージが伝わらないようにする必要があると考えております。
 二つ目は、相当の利益を受ける権利に関してであります。
 従業者に対し、相当の金銭その他の経済上の利益を受ける権利を法定化することは、初めから法人帰属とした場合でも従来の法定対価請求権に相当する従業者のインセンティブを確保するものであり、妥当と考えます。
 小委員会の報告書には、これにより、従業者には現行の職務発明制度における法定対価請求権と実質的に同等の権利が保障されることとなる旨が記載されております。従業者のインセンティブがそがれることがないよう、この趣旨を十分に踏まえた法律、運用となるよう確認をお願いしたいと思います。
 三点目は、指針の策定に関してであります。
 法改正後、相当の利益の内容を決定するための手続の指針が策定をされます。現在でも特許庁において手続事例集はありますが、今回、法により指針を定めることが明記されたことを評価しております。
 指針の具体的な中身は産業構造審議会で検討されることとなっておりますが、検討に当たっての留意点として三点申し上げます。
 一つ目は、相当の利益を定める際に、従業者の関与の必要性をより重視するような手続ルール、また苦情処理の在り方について指針に盛り込むという点であります。
 相当の利益の内容は、使用者と従業者の協議や意見聴取などが適切に行われ、その結果を十分に踏まえたものでなくてはなりません。また、社内に苦情、異議申立ての仕組みや相談窓口、問題解決を行う場を設けること、その場には労働者代表や研究者代表を含めた形で構成するなど、より従業者の納得性を高めるような内容が盛り込まれることが重要であります。
 二つ目は、相当の利益の内容に対する考え方を指針に盛り込むべきという点であります。
 法案では、相当の金銭その他の経済上の利益と定めておりますが、金銭以外にどのようなインセンティブがふさわしいのかなど具体例を示し、インセンティブの切下げにならないことを担保する必要があると考えます。
 三つ目は、現在、職務発明に関する規則がない企業に対して、規則制定の促進となるような指針とすべきであるという点であります。
 特に、中小企業の規則制定を促進するための一助となるような工夫を凝らす、分かりやすく実効性のある指針となることを求めます。
 そして四点目は、法改正後の調査、検証についてであります。
 今回の法改正が今後従業者のインセンティブにどのような影響を与えるのかは現時点では分かりません。法改正前後で企業の職務発明規則が変わったのかどうか、変わったとすればどのように変わったのか、従業者のインセンティブに変化があったのかなど、法改正後の運用に対する調査、検証を行うべきと考えます。
 次に、不正競争防止法改正法案について説明をいたします。
 不正競争防止法の見直しについては、連合も参加しました産業構造審議会の下での営業秘密の保護・活用に関する小委員会において働く者の立場から意見を述べてまいりました。
 連合としても、営業秘密の漏えいが後を絶たないことを大きな問題だと捉えております。企業及び労働者の努力の結晶とも言える技術情報などが不当な形で窃取、使用され、結果として企業の健全な発展や労働者の雇用、労働条件に悪影響を及ぼすようなことがあってはならないと考えております。
 今回の改正案の内容は、営業秘密の侵害に対する抑止力の強化や処罰範囲の整備など、罰則強化を含めた法整備を講ずるというものであり、評価をしております。
 続いて、国会で御審議、御確認いただきたい事項として二点申し上げます。
 一点目は、事業者、労働者への周知徹底についてであります。
 不正競争防止法の保護対象である営業秘密と、企業が自社で定め運用している機密情報の関係性が不明確なケースも多いと思われます。労働者の萎縮防止の観点からも、悪意のない労働者が罪に問われることがないよう、業務を遂行する上で何が営業秘密に当たるのか、労働者における正しい理解と納得が必要不可欠であると考えております。
 そのためにも、処罰範囲の拡大などの法改正点、また営業秘密管理指針について、事業者、労働者に周知徹底を図るとともに、刑事罰の対象となる具体的な行為類型を明確にし、周知することが必要であると考えます。また、企業内における営業秘密の取扱いに関する規程などについての労使協議を促すことが重要だと考えます。
 二点目は、発明、技術を営業秘密としてクローズした場合における研究者に対する適正な処遇についてであります。
 営業秘密漏えいの原因の一つに、研究者の処遇への不満があるということも聞くところであります。営業秘密漏えいに対する抑止力の強化も重要でありますが、同時に、研究者の適正な処遇の確保に向けた取組も必要であります。
 発明、技術をオープンにするのかクローズにするのかは企業が戦略的に判断することではありますが、どちらの場合においても、企業がその発明者たる研究者に対して適正な処遇を行うことが重要であると考えます。今後策定される職務発明制度に関する指針や営業秘密管理マニュアルなどにおいてこのことを明確に示し、実効性のあるものとする必要があると考えます。
 以上、これらの点についての御審議、御確認をお願い申し上げ、発言といたします。
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吉川沙織#8
○委員長(吉川沙織君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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阿達雅志#9
○阿達雅志君 自由民主党の阿達雅志です。
 本日は、参考人の皆様、改正案につきましての非常に具体的な御意見表明をいただき、ありがとうございました。これからの審議でも十分に参考にさせていただきたいと思います。
 やはり我が国の発展にとって、この知的財産、非常に大事なものだという御意見が皆さんからあったと思うんですけれども、そういう中で、まずちょっと相澤参考人にお聞きをしたいんですけれども、この知的財産権というのを考えたときに、今回の改正案では、特許権、それから営業秘密、この二つが問題になっているわけですけれども、知的財産権として、通常の財産権とやはり大分違うのではないかと、こういう気がするんですけれども、この知的財産権というものと通常の財産権とどういう点に違いがあるのか、また、その中で、この特許と営業秘密、財産権として見た場合にどういう点に違いがあるのかをちょっと教えていただければと思います。
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相澤英孝#10
○参考人(相澤英孝君) 今御指摘のとおりでありますが、有体物、いわゆる物と違いますのは、情報は物理的存在を有しないということでございます。物は物理的存在を有するので、その物を物理的に管理、支配することによって利益を享受できます。しかしながら、知的財産は情報でありますので、法律で守ってあげなければ利益が享受できないということになります。ここが知的財産とその他の有体物、不動産であるとか動産であるとかという財産と大きく異なっている点だと思います。
 現代社会におきましては、この情報というのが極めて重要な要素になっております。その中で、今日申し上げました特許と営業秘密というのは、実はこの両方があって技術開発が行われるということになります。
 例えば、今日お話に出ています営業秘密を秘密にしようと思っても秘密にできないものがあります。例えば、製品を売ってしまえば、これを購入した人は、これはどういうふうなものからできているかということを解析することができます。解析すれば同じものを作れます。そういう同じようなものを作れるようなものを営業秘密で守ろうと思っても、そうはいきません。反対に、もしこの、これは水ですが、この物が何らかの原液で薄められて作っている、その原液は何だか分からないという状態であれば、原液を秘密にしておくことによってそれをずっと売り続けることができます。これが営業秘密と言わば特許のもの、使い方、製品に応じて使い分けていかなければいけないということになります。
 時間を取って恐縮ですが、更にビジネスはその先を行っておりまして、特許とか営業秘密で言わば技術を囲い込んでいる自分たちが有利な間に、今度は商標、ブランディングをすることによってブランド価値が高まると。前は中身が欲しかったんだけれども、この中身を買うならこのブランドだということになればそのブランドで物を売ることができます。国際競争の時代にあってはそれが非常に重要なことになります。
 そういう意味で、知的財産というのはそれぞれいろんな制度がありますが、それを組み合わせて企業が利益を上げていく、その企業の利益が社会に還元され、経済の発展につながっていくというふうに考えております。
 少し長くなりました。
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阿達雅志#11
○阿達雅志君 どうもありがとうございます。
 非常に今、知的財産について分かりやすく御説明をいただいたわけですけれども、やはりそうなってくると、これをどういう形で保護していくか、これは非常に大事だと思うんですけれども、今日のお話の中でも、不正競争防止法の改正案についての御意見の中で、営業秘密を侵した、そういう商品の輸入をこれを防ごうというお話がございました。
 今回の法律案の中では日本への水際規制というのは入っていないわけでございますけれども、ただ、これを、将来水際規制というのを入れたとしても、例えばアジアのどこかの国がこういう営業秘密を使って作った、これを日本に入ってくるのを防ぐだけで済むんだろうかと。むしろ、マーケットとしてのヨーロッパ、アメリカ、そういったところでの流通を防ぐ、あるいはこれを侵害したその国における流通を防ぐ、そういったことをしていかないと実はこれ実効性がないのではないかと思うんですが、この辺りについてはどういうお考えでしょうか。
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相澤英孝#12
○参考人(相澤英孝君) それはまさに必要なことです。
 アメリカは既に制度がありますけれども、例えばアジアの国に対してそういう制度をつくるということをこれから通商交渉で働きかける場合にも、日本にその制度がないものを外国につくるということを交渉で求めるということはなかなか難しいことであります。つまり、日本でこういう制度をつくって、お互いに制度を守りましょう、お互いに知的財産を守りましょうということであって、それであって通商条約における知的財産の保護というのが成り立っていくわけですから、そこは日本がまずきちっとするということがあって、それからこれから国際交渉でそれをアジアの各国に勧めていく。
 もちろん、交渉に応じない国もありましょう、それから原産国の一部には交渉に応じない国があるとしても、流通するところで止まっていけば、徐々に国際流通性のないものを作るということは私は少しずつ収まっていくのではないかというふうに期待をしております。
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阿達雅志#13
○阿達雅志君 ありがとうございます。
 そうしますと、これ知的財産というもの自体も、今現在、特許権、特許というのは各国によって違うわけですね。国によって特許が認められる認められないがある。だけれども、こういう知的財産をいろんな各国で保護していくように、そういう通商協議をしていくということを考えると、知的財産そのものについてもやはりハーモナイゼーションが要るという、そういうお考えでしょうか。
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相澤英孝#14
○参考人(相澤英孝君) これまで、実は十九世紀の終わりからずっと努力を続けてきて、一九九四年のWTO・TRIPS協定で言わば知的財産の全分野、ほぼ全分野に当たるミニマムスタンダードがつくられております。しかし、それをこれより進めていくことによって、私は更なる日本の知的財産の保護が図られるのではないかというふうに考えております。
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阿達雅志#15
○阿達雅志君 ありがとうございます。今のお話、非常によく分かりました。
 次は、澤井参考人にちょっとお伺いをしたいんですが、最近よくオープン・クローズ戦略ということが言われますし、今回の参考人の資料もそれを意識して、企業戦略で特許としてオープンにする場合、営業秘密としてクローズにする場合、こういう絵を描いていただいているわけですけれども。このオープン、クローズをこうやって分けていくようになった背景なんですけれども、こういう分け方、特に議論をされるようになったというのは割と最近のことのような気がするんですね。
 それには、やはり一つは、先ほど相澤参考人のお話にもありましたように、ある技術、これをまねをする国がいろいろ出てきて、昔はそのまねをする国というのは割と限られた国だった。それが、最近はどこの国もある程度そういう技術が発達してきたために同じようにまねをし出した。そういう中で、特許にして本当に公開するのがいいのかどうか。
 特許にした場合にやっぱり問題になってくるのは、特許というのが国によって違うと、保護されるかどうか。先ほど相澤参考人がお話ししたとおり、法律で守られている権利だということの裏返しで、結局、日本で特許を取っていても、それ以外、アメリカでも特許を取らないといけない、中国でも取らないといけない、ヨーロッパでも取らないといけない。これは、PCT国際出願ないしは各国移行ということでまとめていくということになると思うんです。これがやっぱり全ての国でそういう特許を取り切れないと。
 そういう中で、特許で、例えばの話、日本だけで全部技術を公開してしまって、それをほかの国が特許情報を見て、それでまねされるのが嫌だと、そういう部分もあるんじゃないかなというふうに思うんですけれども、このオープン・クローズ戦略を取る背景、日本の企業がなぜ最近こういう議論をよくするようになったか、その辺もし御意見があればお聞かせいただけますでしょうか。
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澤井敬史#16
○参考人(澤井敬史君) 私が御説明するより今先生がおっしゃったとおりの背景で、やはり日本の企業は、本当にどんどん伸びていたときはいろんなことができたんですけど、やっぱり近隣諸国が力を付けてきて、ある技術をトレースしてやれると。そうすると、やっぱり特許の場合は、御案内のように一年半たつと自動的に情報が公開されてしまいますと、そこから読み取れるものが相当あって、多分、それまでは日本はどちらかというとアメリカ、欧米を中心にして見ていて、追い付け追い越せの時代でやってきたからそれでよかったんでしょうけど、今度、後から追っかけてくる人たちがどんどん力を付けてきたときに、確かに、企業でも出願をすると、結果的にもうその翌日には、例えば雑誌なんかにある技術を載せればすぐ翌日にはもう全部その情報が向こうで翻訳されているとか、そのキャッチアップのスピードがすごく高まっているのと、さっき相澤先生がおっしゃったように、何を見せていいのかどうかということを相当企業がやっぱりいろいろ考えるようになったわけですね。
 先ほど先生がおっしゃったように、リバースエンジニアみたいなものでやってみて分かるものをわざわざ出して、特に製造方法で隠しておけば全然分からないものをそこまで出しちゃうと、ああ、こういう作り方あるいはこういう成分でやればいいんだなというところまで全部手のうちをさらけ出しちゃうと、もうそれを、そこの情報を得たら、そこから先に行けばいいわけですから、そこの時間が途端に短縮されちゃうので、そういうことをやっぱり我々もあるところで失敗しながら学んできて、アメリカなんかでオープン、クローズだということが言われて、さっき、冒頭お話ししたように、オープンイノベーションということはどこかと組むわけですね。組むときも、じゃ、自分たちのアドバンテージというかストロングポイントが何で、向こうのものは何かといったときに、それをどうやって守るかということをやらないと、素っ裸で行くわけにはいかないので、だから、そこら辺がすごくいろんなことの事例を積み上げてきて企業が考えるようになった結果じゃないかと思いますね。
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阿達雅志#17
○阿達雅志君 ありがとうございます。
 ちょっと時間も限られていますのでこれを最後の質問にしたいんですが、今、澤井参考人おっしゃられたいろんなところと組むと、これを考えると、特許というものがやはり単なる発明者のものだけであってはなかなか困ると。これがやっぱり今回の職務発明の原始帰属の議論にもなっていると思いますし。
 また、そういう中で、特許をつくる過程においても、やはりそういう技術をつくるエンジニアを育てるためにいろんな学会へ行かせたりいろんなことをやった結果、技術ができて、それをまた企業が権利を持っているからそういう提携もできる、そういういろんな展開もできると。こういう、特許自体が、昔と違って一つの発明で一つの製品ができる時代でなくなったという、こういう背景があるんじゃないかと思うんですけれども。
 そういう中で、例えば職務発明の対価を考えるときに、どういうことを考慮して対価というのを考えていけばいいのか。それは、単なる発明というのが非常に評価をしにくくなっている中で、やはりどういう、何らかの基準というのは、例えば指針に織り込むとして、考えられるものなのかどうか、その辺ちょっと御意見があればお聞かせいただけるでしょうか。
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澤井敬史#18
○参考人(澤井敬史君) 分かりました。
 今おっしゃったように、今回の法改正によれば対価ではないので、相当の利益というところをどう考えるかということなんですけど、我々企業としてはやっぱりいいものを生み出してほしいと。だから、そのためにどういう環境なり条件を研究開発者に与えればいいかということが多分最大の眼目になると思うんですよね。
 だから、その与え方はすごくバラエティーに富んでいるので、一律に何か指針の中でこうやればいいというふうにはむしろいかなくて、こういう類いのものがある、こういう類いのものがありますと、金銭以外の、先ほどちょっとお話しした留学の機会とか、あるいは、私のところでも経験あるんですけど、非常にトップクラスの研究者がいると、その研究者と交流してその人が持っている暗黙知みたいなものを取り入れて自分も研究のステージを上げたいと、そこへ人が集まってくるんですよね。
 だから、そういう、研究者が本当に自分たちが研究開発していいものを生み出したいという環境をどうやって企業が整えるかというところは、本当にこれから企業同士のそこの知恵の競争になるんじゃないかなという感じはしています。
 ちょっとお答えになっていないかも分かりませんけれども、以上でございます。
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阿達雅志#19
○阿達雅志君 どうもありがとうございました。
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直嶋正行#20
○直嶋正行君 民主党の直嶋でございます。
 三人の参考人の皆さん、今日はどうもありがとうございました。先ほどのお話も大変私どもにとって参考になったと思います。
 それで、私の方からは、ちょっと時間の関係もありますので、今回の特許法の職務発明制度に関わる部分を中心に御質問させていただきたいと思います。
 今回の職務発明制度において、先ほどお話ありましたように、いわゆる特許を受ける権利の帰属について、従来からの発明者個人に対する帰属を残すと同時に、企業にその帰属を、最初から企業の帰属にすると、その両立を図ったものだと。言い換えますと、発明者個人に対する特許制度に対するインセンティブと企業の投資に対するインセンティブの、この両立を図ると、そういう発想に立っているというふうに思うんですが。
 そこで、まず企業に対するイノベーションのインセンティブということで申し上げますと、例えば、我が国の民間企業の研究開発投資というのは大体年間十二兆円強。リーマン・ショックの前はこれが十三兆円から十四兆円近い金額もあったんですが、少し減っています。対GDP比で見ると三%弱というんですかね、二・七、八%ぐらいで、ただ、これはかなり世界でもレベルが高い方であります。
 例えば政府の方針なんかを見ますと、今後これを三%以上になるように一生懸命後押しをしていこうと、こういう構想になっていまして、私なんかはもっと政府が金出せと、こう言っているわけですけど。そのことはちょっと別にして、政府もそう言っていることもあってということなんでしょうが、例えば企業に対して研究開発・投資減税とかあるいは様々な予算措置を付けて、企業に対する投資への意欲喚起を一生懸命取り組んでいるわけですね。
 今回のこの特許をめぐる議論を聞いていまして、私、むしろ企業に対するインセンティブということで申し上げると、特許で帰属をどうするかということより、むしろこういう政府の税制や予算含めて、さっきの知財立国の話じゃありませんが、やはり国家の一つの大きな目標として、知財、技術のレベルアップのためにしっかり開発投資をやるんだと、こういうコンセンサスですね、こういうことをしっかり保つ方がはるかに効果が大きいんじゃないかというふうに思っています。
 そういう意味でいいますと、今回の改正によって、企業じゃなくて、むしろ発明者個人というんですか、そこで研究開発されている方へのインセンティブがもし低下するようなことになれば、逆に社会的に見るとマイナスになるんじゃないかと、そういうふうに思っていまして、その点に関してちょっとお三方の御意見を頂戴したいんですが、今申し上げたように、今回のこの権利の帰属の変更によって個人の研究者に対するインセンティブ力が低下をするおそれがないのかどうか。それから、その個人のインセンティブを確保するために、じゃ、どういう寄与ができるのかということについて御所見を賜りたいんです。
 特に、例えば経団連の澤井さんのお話さっき聞いていますと、既に多くの企業では契約やあるいは勤務の規程においてもううたわれているんだと。ただ、今度、対価から利益に変わったからこれ変えようということになると、今私が申し上げたようなことになりかねないということを私はちょっと危惧するわけでありますが、この点についてコメントをいただければと思います。
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澤井敬史#21
○参考人(澤井敬史君) インセンティブは低下しないのかという御質問に端的に答えると、僕は低下しないと思うんですよね。
 というのは、実は私、NTTの研究者、数千人のいろんな発明を見ていた時期があるんですけど、それで、彼らが職務発明制度の何かお金を当てにして研究開発やっているわけじゃないんですよね。多分、こういうお仕事をされている方も皆さん、やっぱりお金のためだけに仕事をやっているのかというとそうじゃなくて、ある志があって皆さんお仕事をされていて、結果として何かお給料をいただくとかいろんなものが入ってくるんですけど。
 特許庁さんがアンケートを取っていただいた、ずっといろんな項目でやった中で、これはちょっと出典、後で確認しますけど、研究開発を行う上で一番重要だと思うことは何かという質問に対して、一番多かったのは、知的好奇心を満たす仕事に従事することの満足感というのが断トツで一番。それから、現実的な問題を解決したいと思う願望が二番目。それから三番目は、所属している組織の業績の向上。これらが三〇%以上あって、そのほかに、プロジェクトチームの成果の貢献とか社会困難解決に役立っているとかいうのがあって、職務発明に対する金銭的な報酬への期待感みたいなのが七番目ぐらいで、相当下がっているんですよね。下がっているというか、そんなに高次のレベルじゃなくて。
 これは日本だけじゃなくて海外でも同じような話なので、今回こういう法改正があって、別に、企業、我々は当然いい人材を確保するためにインセンティブいろんなことを考えますから、その施策は変わらないので、余りそれによって、法律によってどうのこうのということはまず私は起きないんじゃないかなというふうに考えております。
 それで、もう一つあるのは、じゃ、そのインセンティブ確保という話が、先ほどちょっとお話ししたように、組織としていろんなことをやっていって、研究開発の成果だけでは最終的なものができるわけじゃないので、いろんなそこに、設計に関わるやつとか営業する人とかいろんなセクションが関わって最終的なものができてくるわけなんで。
 我々、会社で仕事をやっていて非常につらかったのは、何で発明者だけそんなに報奨金を与えるんだという逆の質問が出ることがよくあったんですよね。同じ会社で同じ製品を世に出していって事業功績を、事業に貢献しているときに、何でそんなに発明者だけと。そうすると、我々が答えなきゃいけないのは、いや、これは一応特許法で決まっていて法律で強制されているから、これをやらなかったらイリーガルになっちゃうんでやりますというような話なので。
 だから、そういう意味で、それがなくなればもっと公平にいろんなことができるんじゃないかなと。
 ちょっと済みません、長くなりました。
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川島千裕#22
○参考人(川島千裕君) 今回の法改正が従業者におけるインセンティブの切下げにつながりやしないかといった点についてまず申し上げたいと思います。
 一つには、審議会の報告書の中で全体として確認された内容が、インセンティブの切下げであってはならないと、これによって従業者の受ける利益を確保することができるというような取りまとめがされました。今回の法案はそれを受け入れた形で、この条文の内容、構成自体が法改正前、法改正後、ほぼ同じ内容であるというようにも考えておりますし、また、今、澤井さんもおっしゃったように、やはり多くの経営者の方々も、切り下げるということであればいい人材が逃げていくんだというような声もよく聞くところであります。
 したがいまして、この法律の内容そのものから直ちに従業者のインセンティブの切下げにつながるということはまだ読み取れないというように考えております。
 望むべくは、この相当の利益が現行法におけるものと同等のものとして確保されることを前提に、今回、金銭以外の部分で、それぞれの企業の労使が知恵を出し合いながら、どうしたらみんなやる気を持ってより良い発明が生まれるのか、そういった議論が尽くされる、それを、大企業だけでなくて中小企業においてもそうした取組がされることによって、法目的であります特許、職務発明の振興につながればというように思っております。
 ただ、一つだけ申し上げますと、これはやってみないと分からない部分がございますので、本日、冒頭皆様にお願いいたしましたように、法施行後のやはり事後の検証というものが非常に重要だというように思っておりますので、必ずそれについては実施していただきたいというようにお願いをいたします。
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相澤英孝#23
○参考人(相澤英孝君) この法改正によって従業者の発明に対するインセンティブが下がるかどうかという、例えばアメリカではこの対価の請求権というのはないわけで、アメリカ企業における発明のインセンティブが低いかというとそうではないわけでありまして、企業にとってみれば、これから技術開発をしていかなければこの国際競争を生き残っていけないわけですから、そこはきちっとつくっていくと。そうしなければその企業が駄目になっていくわけですから、そこは私は企業を信頼していいんではないかと。
 その中で、今度の規定でも、従業者とよく、言ってみれば、発明者と企業というのが対立軸に立つものではなくて、やはり一緒になって発明をつくっていくわけですから、その中で協議をする、開示をするという現行法の規定はそのまま残っているわけですから、それがきちっと履行されることによって従前と異なるようなことが起きるということはないというものと理解をしております。
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直嶋正行#24
○直嶋正行君 ありがとうございました。
 企業と研究者は目的は同じですから、そこは共有できると思うんです。ただ、処遇ということになると立場の違いが出てくる部分もあるんじゃないかと思うので、さっき川島さんおっしゃった、後のフォローというのも非常に重要なことかなというふうに思います。
 時間がないので、もう一点、これは相澤先生と澤井さんにちょっとお伺いしたいんですけど、実は日本の一番今大きな問題点は、これ特に中小企業の方中心にそうなんですが、いわゆる起業、業を起こすとか、それから開業する、これがすごく少ないですよね。開業率を見ましても、もう欧米の大体半分以下で、今五%切っているぐらいです。
 例えば、特許法の第一条は何て書いているかというと、「この法律は、発明の保護及び利用を図ることにより、発明を奨励し、もつて産業の発達に寄与する」と、こういうふうに書かれているんですね。こういう観点から見ると、ちょっと私思い出すのは、例の青色発光ダイオードの中村先生がインタビューで、アメリカでは、発明したらもうすぐそれで、自分で業を起こして、その会社にはいなくなって自分でやるんだと、こういうことをおっしゃっていたのを思い出すんですけど。
 やはり、本来特許法というのはそういう要素を持っていたと思うんですが、この特許法の今の、現状の運用を見ていると、必ずしもそういう目的につながっていないような気もするんですけれども、この点についてもし御所見があれば簡単にコメントをいただけると有り難いんですが。
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相澤英孝#25
○参考人(相澤英孝君) ありがとうございます。
 今おっしゃられた例えば起業、ベンチャーというようなものに対する投資を成立させるためには、投資家からすると、研究開発成果しか投資対象がないんですね。そうすると、そこがやっぱりきちっと特許権で保護されていないと、投資家は何もないところに投資をするということになってしまうと。
 そういう面でいうと、特許権をきちっと保護してあげるということがやっぱり投資の前提になる。もちろん金融も、そういう特許、ベンチャーの開発した新しい事業に投資をするという投資家も必要です、投資制度も必要だと。例えば、政府系の投資でいうと、産業革新とか政策投資とか、そういうことも努力も必要でしょう。ただ、特許権をきちっと保護してあげないと、どうしてもそこの投資価値がなくなってしまうので。
 そういう意味でいうと、日本とアメリカと比べれば、アメリカの方が特許権をきちっと保護しているという側面があります。
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澤井敬史#26
○参考人(澤井敬史君) 今の質問はすごく難しくて、どうお答えしていいか分かりませんけれども、昔に比べると相当発明あるいはそれをどうやって事業化していくかというのは組織的に行われるようになっているので難しい側面があって、多分、アメリカはすごくダイナミックに動くところで、エンジェルなんかがいて、割と本当のアーリーステージのところにお金をやるようなことがあって、すごくそこはいい仕組みがあるのかなと思います。
 経団連では、ちなみに、今年の六月に起業・中堅企業活性化委員会という委員会を立ち上げまして、ベンチャー企業等とのマッチングイベントなどを実施し始めておりまして、今後更にこういうのを強化していく。
 だから、いろんな形で大きな企業が持っているものをうまく中小企業とやれるようなことになってくるといいんじゃないかなと思います。
 ちょっとお答えになっているかどうか分かりませんけれども。
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直嶋正行#27
○直嶋正行君 終わります。ありがとうございました。
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佐々木さやか#28
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかでございます。
 今日は、参考人の皆様、お忙しい中、貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。
 早速でございますけれども、まず澤井参考人に御質問させていただきたいと思います。
 先ほど、お話の中で、特許を受ける権利の帰属、これが従業員から現行制度の下で使用者に承継化されて、それで相当の対価について紛争となった場合に、仮に裁判所で判断をするとしても非常に算定も困難でありますし、また、そうした訴訟の予防のためといいますか、それを避けるための企業の負担というものも現行制度では非常に大きいと、こういうお話があったかと思います。
 今回の改正がなされた場合に、改正によりましても最終的に裁判になる可能性があるという点は変わらないと思いますけれども、違うところといたしましては、相当の対価というところから相当の利益ということで、必ずしも金銭に限らないと、また、どういう形で相当の利益を付与するかというところについて、現行制度でも使用者と発明者の話合いですとかそういうことはされますけれども、政府がガイドラインを定めると、こういうことになっております。
 こうした改正によって、冒頭申し上げました企業の訴訟を予防するための負担、訴訟に至るような危険ですとかそういう不合理な負担というものがどの程度軽減されるとお思いか、その点について評価を教えていただければと思うんですけれども。
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澤井敬史#29
○参考人(澤井敬史君) 分かりました。
 今のところは、まだこれ、皆さんに審議していただいて、法ができて、その後指針ができて、その指針がどういう形のものになって、それを会社がどういう形で運用していくかというちょっとアンノウンのファクターがあるので、今の時点でどうなのかというのは必ずしも即答はできないんですけど。
 今回の法改正の狙いが、すごく職務発明制度を柔軟に設計したわけですね、従業者帰属でもいいし法人帰属でもいいよ。だから、そういうことによって相当会社の意思が反映して自由にできるということになっているので、多分、その精神にのっとると、指針も少しミニマムリクワイアメントみたいな、最低限の手続的なものを決めてある程度柔軟性を持つようになってくれば、今よりは負担は定性的にいうと軽くなるんじゃないかな、なってほしいなというのが正直なところでございます。
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