国際問題に関する調査会

2026-03-04 参議院 全75発言

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会議録情報#0
令和八年三月四日(水曜日)
   午後一時七分開会
    ─────────────
   委員氏名
    会 長         鈴木 宗男君
    理 事         藤井 一博君
    理 事         吉井  章君
    理 事         塩村あやか君
    理 事         原田 秀一君
    理 事         窪田 哲也君
    理 事         石井 苗子君
    理 事         大津  力君
                鈴木 大地君
                堀井  巌君
                若井 敦子君
                脇  雅昭君
                福士 珠美君
                三上 えり君
                庭田 幸恵君
                伊藤 孝江君
                石   平君
                杉本 純子君
                伊勢崎賢治君
                伊波 洋一君
    ─────────────
   委員の異動
 二月二十日
    辞任         補欠選任
     伊波 洋一君     高良 沙哉君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         鈴木 宗男君
    理 事
                藤井 一博君
                吉井  章君
                塩村あやか君
                原田 秀一君
                窪田 哲也君
                石井 苗子君
                大津  力君
    委 員
                鈴木 大地君
                堀井  巌君
                若井 敦子君
                脇  雅昭君
                福士 珠美君
                三上 えり君
                庭田 幸恵君
                伊藤 孝江君
                石   平君
                杉本 純子君
                伊勢崎賢治君
                高良 沙哉君
   事務局側
       第一特別調査室
       長        有安 洋樹君
   参考人
       公益財団法人国
       際文化会館常務
       理事・
       慶應義塾大学総
       合政策学部教授  神保  謙君
       政策研究大学院
       大学教授     岩間 陽子君
       株式会社日本総
       合研究所国際戦
       略研究所特別顧
       問        田中  均君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
○国際問題に関する調査
 (「世界の平和と安定に向けた日本の役割」のうち、現下の国際情勢と世界の安定に向けた日本外交(総論(自国第一主義と国際協調))について)
    ─────────────
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鈴木宗男#1
○会長(鈴木宗男君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、ラサール石井君、高木真理君及び伊波洋一君が委員を辞任され、その補欠として福士珠美君、三上えり君及び高良沙哉君が選任されました。
    ─────────────
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鈴木宗男#2
○会長(鈴木宗男君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際問題に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ参考人の出席を求め、その意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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鈴木宗男#3
○会長(鈴木宗男君) 御異議ないと認めます。
 なお、その日時及び人選等につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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鈴木宗男#4
○会長(鈴木宗男君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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鈴木宗男#5
○会長(鈴木宗男君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 国際問題に関する調査のため、今期国会中、必要に応じ政府参考人の出席を求めることとし、その手続につきましては、これを会長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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鈴木宗男#6
○会長(鈴木宗男君) 御異議ないと認め、さよう取り計らいさせていただきます。
    ─────────────
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鈴木宗男#7
○会長(鈴木宗男君) 国際問題に関する調査を議題といたします。
 本日は、「世界の平和と安定に向けた日本の役割」のうち、「現下の国際情勢と世界の安定に向けた日本外交」に関し、「総論(自国第一主義と国際協調)」について三名の参考人から御意見をお伺いした後、質疑を行います。
 御出席いただいております参考人は、公益財団法人国際文化会館常務理事・慶應義塾大学総合政策学部教授神保謙さん、政策研究大学院大学教授岩間陽子さん及び株式会社日本総合研究所国際戦略研究所特別顧問田中均さんでございます。
 この際、参考人の皆さん方に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、神保参考人、岩間参考人、田中参考人の順にお一人二十分程度で御意見をお述べいただき、その後、二時間程度質疑を行いますので、御協力方をよろしくお願いいたします。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、会長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず神保参考人からお願いをいたします。神保参考人。
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神保謙#8
○参考人(神保謙君) 参議院外交委員会の皆様、本日は、発言の機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 御紹介いただきました国際文化会館、慶應義塾大学の神保でございます。
 冒頭二十分ほど、この第二期トランプ政権、いわゆるトランプ二・〇の外交・安全保障政策が、インド太平洋の戦略環境、日米同盟、そして日本の外交・安全保障政策にどのような影響を与えるかということをできるだけ構造的に整理をしたいと思っております。
 現下中東で展開しているアメリカとイスラエルの対イラン攻撃についても、後半の方で扱いたいというふうに思っているところでございます。
 まず、スライド二を御覧いただきたいと思いますけれども、これ、世界のマクロトレンドとして二〇〇〇年代から現代まで一体どういう変化が起きているかということを概観したものでございますけれども、今から二十五年ぐらい前の二〇〇〇年代の初めの頃、我々が何を議論していたかというと、それは、グローバル化と経済相互依存が平和的な発展を後押しして、新興国が国際システムにいずれ統合されるという見取図だったように思います。
 ところが、二〇一〇年代、特に後半ですね、以降、地政学の復活とよく言われますけれども、地政学的な世界が非常にこの世界を覆うようになったということでございます。
 重要なのは、この緊張が高まっているという世界の情勢を抽象論で語るということだけではなくて、政策上のこの具体的な影響、インプリケーションを持っているという点だと思います。必ずしも経済相互依存関係だけでは平和を保証できないということもありますし、また、力の不均衡や空白が生じた場合に、それがこの軍事侵攻を誘発し得るという構図も様々な事例で確認ができます。
 また、権威主義国家はいずれ経済発展に伴ってG7、OECDの世界に吸収されるんだという見通しですけれども、これも実は自明の前提ではもはやなくなってしまったとともに、その権威主義国家の権力集中が様々なところに進んでいる結果、その意思決定において、成功への過信と相手への過小評価、まあ基本的に戦争が起こるときの要件というのはそういうことなんですけれども、こういったことが招きやすいということだと思います。
 したがって、国際法、国際制度、経済相互依存という戦後の世界が育んできた安定の方程式みたいなものがこの二十年ぐらいでがたがたっと崩れて、そして今、パワー、力がむき出しな世界の中でどのようにバランスを保っていくのかということが、私の観点からしても、誠に残念ながら今世界の主流になってしまっていると。
 その抑止力の重要性というのは常に言われるわけなんですけれども、ただ、その抑止というのは破れるまで分からない仮説なんですよね。なので、その仮説をどのように成り立たせるかということは、国民のコンセンサスをつくるためにしっかりと議論しなければいけないということだと思います。
 また、その抑止を成り立たせるための諸条件も、実は、次のスライドで説明するように、固定した見立てができないということなんですね。常に変化しているので、動体視力の中でこの安定を保たなければいけないということだと思います。
 現代の国際環境の最大の特徴は、危機が一つの戦域、戦域というのは一つの戦場を概念化したものですけれども、それで完結しないということだと思います。それが連接しやすいことだと思います。つまり、欧州、中東、インド太平洋という三つの、三戦域と、そして、我々の国家安全保障戦略に記載されているロシア、中国、北朝鮮という三つの正面が相互に連動して軍事能力と軍事活動が増幅するという、こういう状況をこの国際関係のトレンドとして見るべきだろうというふうに思います。
 スライド三に行っていただくと、インド太平洋のこれ軍事バランスを描いたものでございます。
 二〇一〇年から二〇三〇年にかけての軍事支出の推計値を示しているわけですけれども、いろいろ数字が並んでおりますが、この細かな数字以上に押さえるべき点は、地域全体でこの軍事力が増勢し、競争の密度が上がっているという点でございます。これによって、平時から有事への移行速度というものがやはりマグニチュードを高めて上がっていて、そして、以前我々が議論をしていたグレーゾーンの長期化、深刻化という現象と通常戦へのエスカレーションが連続的に起こり得る現象というものが常態化していくということだと思います。
 危機の初動で主導権を握られないための即応性も大事なんですけれども、それが長期化した場合の持久性みたいなことを考えて抑止力を考えなければいけないということとともに、やはり構造的に言えることは、二〇〇五年見ていただくと、大体中国と日本の国防費ってドルベースで同じぐらいだったんですね。ところが、今や六、七倍になって、日本が仮にGDPの二%を目指したとしても対中劣勢の大きな構図というものは変わらないという構造的な変化が起きている。そして、その中国は、アメリカが西太平洋、第一列島線の中で戦える能力をどれだけ拒否できるかということに徐々に自信を高めているということでございます。
 アメリカが圧倒的な優位を持ち、そして日本が対中戦略においても海空優勢というものを維持できる時代から、もう根本的な構造変化が今起きているということを読み取らなければいけないということだと思います。
 スライド四を御覧いただくと、こうした環境の上にトランプ二・〇がどういう政権なのかということなんですが、すごく毎日のようにいろんなことが動いているので抽象化することがすごく難しいんですけれども、私自身の仮説的な捉え方をお話ししたいというふうに思います。
 トランプ政権、単なる孤立主義とか同盟軽視とか自国第一主義とかいろんなことが言われているわけなんですが、地政学的に申し上げると、そのアメリカの自己像、自画像の大きな変化というのは、まさにかつてのようなシーパワーとして、海洋国家としての超大国、つまり、多くのその同盟関係、パートナー関係を世界中に張り巡らせて、その地域にアメリカの関与を通じて安定を図っていき、それがまたアメリカの安定につながるという、こういう発想から、アメリカはむしろ、大陸国家、つまり、国境線を重視し、そこにバッファーゾーンと影響圏をつくって、そして西半球の優位性を確立するという大陸国家型の自画像に転換しているんだというのが自分自身の見方ということであります。
 もちろん、アメリカがシーパワーの超大国であること自体は、現在のイランの、パワープロジェクション能力とかを見ても、イランに対する能力を見ても明らかなんですけれども、どこまで、どの条件で、どの程度コミットするのかというのは、同盟に五条があるからとか同盟に書いてあるからということではなくて、よりアメリカの価値基準に基づいた、選別的になりやすい構図があるということだと思います。こうした観点から、やはり我々の日米同盟の運用の在り方というものを考えていかざるを得ないということだと思います。
 次のスライドを御覧いただくと、これは、昨年十二月に発表されたアメリカの国家安全保障戦略の問題設定を整理しているものでございます。
 出発点は大変シンプルで、アメリカは世界の全ての地域、全ての課題に等しく注意を払うことはできないという考え方です。ここから地域ごとに優先順位と設計が与えられて、これは報道で明らかになっているとおりですけれども、まさに西半球においてその優先順位を定め、そこにエンラージ・アンド・エンリスト、動員と拡張というものを掲げていくと。なぜそんなことをするかというと、アメリカの現在のナショナルセキュリティーにおいて、移民の管理、越境犯罪、重要インフラの保護、域外勢力の浸透の排除というものが大きな中心課題となっているからということだと思います。
 インド太平洋も必ずしも軽視されているわけではないんですけれども、同じトランプ政権でも、二〇一七年、一八年に出た戦略の考え方とはやはり一味違うといいますか、アジアにおいては経済的な未来を勝ち取り、軍事的な衝突を防ぐという、こういうバランスの関係性の下で語られているということだと思います。対中競争、戦略的な競争というのは中心課題であり続けるわけですし、台湾をめぐる抑止も優先的に位置付けられているということではあるんですけれども、その条件を達成するためには、同盟国、パートナー国がより大幅な負担を通じて勝ち取らなければいけないという関係性になっております。
 ヨーロッパは、ヨーロッパ自身が一次的責任を負う方向での移行を促し、中東は、今のイランを見ると少しちょっと信じられない気持ちもしますが、この戦略の中では、アメリカは関与を限定するという、こういう整理になっているということでございます。
 日本にとってはインド太平洋がどのぐらい重要なのかと気になるところではあるんですけれども、その重要性があるがゆえに、アメリカが関与し続けるための条件を我々同盟国がどれだけ整えていける、いくことができるかという問いが重要だというふうに私自身は考えております。
 スライドの六は、その世界観をモジュール化した世界として図示しているということでございます。
 世界を相互に連結した一つの戦略回路として考える発想から、地域ごとに独立性とコストの分担を求める発想へとアメリカが移行しているということで、これをアメリカの表現で言えば、世界秩序全体を、ギリシャ神話のアトラスという世界を抱える神様がいるんですけれども、そのように支え続ける時代はもはや終わったのだということなんですね。
 ただ、先ほど、冒頭申し上げたように、実態としての戦域というのはまさにその連結性を深めているというのが専門家としての私の見方なんですけれども、アメリカは必ずしも連接性というものを主軸に置いて今世界を見ることをしていないということだと思います。
 では、スライド七を御覧いただければと思います。
 これ、トランプ外交が一体どういう、いわゆる外交思想、思潮の下で今の世界を捉えているかということをかなり無理やり整理してみたものなんですけれども、縦軸に介入と不介入、そして横軸に競争観とディールの世界という、こういった四軸、四つの象限で描いているということなんですけれども、やはりその実務的なインプリケーションとしては、トランプ二・〇を読み解くというのは物すごく難しいということなんだと思います。
 対中競争を強く押し出す右上のアジア・ハードピボットという側面がある一方で、アメリカ自身の関与を絞って同盟国にアウトソースするこのオフショア的な思考というものも併存しているということだと思います。また、大統領個人に絞れば、そこには一定の取引あるいは大国間の調整で安定をつくるグランドバーゲン的な衝動というものが強く見られるということでございます。
 したがって、日本にとっての課題は、アメリカは必ずこう動くという予言ではなくて、アメリカの意思決定がこの三角形の構図の中でどう振れても耐えられる設計、つまり、振れ幅の管理というものが非常に重要だと思います。
 第二期のトライアングルは何かということはちょっと次のページで御覧いただきたいと思うんですけれども、私自身の仮説の変化なんですけれども、トランプ政権は、冒頭、いろいろなこの閣僚人事を見ても、右上の競争的な世界観でアメリカがそこには関与していくだろうと、そこで同盟を共に盛り上げていくという、こういう構想で、去年の前半はそういう発想で見れるのかなと思っていたんですが、トランプ政権の世界の関わり方、様々見てみると、どうやらトランプ政権自身は、様々な世界の紛争をディールによって解決を連続的に続けていきながら、最終的にアメリカが不必要な紛争に関わらなくてよい世界をつくるために今やっているんだ、つまり、左下の世界を目指した行動をやっているというのが今私の強い仮説的な設定でアメリカを見る視点ということになります。そうした視点が、じゃ、朝鮮半島や台湾にどう働くのかということは、今年以降の大変重要なポイントになるだろうというふうになります。
 九番目、スライド九を御覧いただきたいんですが、国防省と軍という視点をこれからお話ししますが、その条件を理解する鍵が、このヘグセス国防長官が演説等の中で述べている大統領の意思決定の余地という、ディシジョンスペースという概念として捉える見方が重要だというふうに私自身は考えております。すなわち、アメリカの国防長官及び統参本部の仕事は、大統領に代わって意思決定をすることではなくて、大統領の選択肢をどれだけ多くつくり、それを大統領に提示できるかということが仕事なんだということだと思います。
 つまり、今回の武力介入にしてもディールによる解決にしても、様々な選択肢をどれだけ広く取るかという形で大統領に、ここに選択肢がたくさんありますと、これだけですということを言わないということがすごい重要な今のホワイトハウスの力学になっているということで、逆に言うと、この大統領のディシジョンスペースを狭める相手は、徹底的にこれを対抗していかなければいけないということになるんだと思います。
 じゃ、そのディシジョンスペースを狭めるのは誰かというと、それはもう、一つは懸念国ですよね。ロシアや中国が仮に威圧、軍事行動を強めたりすると大統領は選択を迫られるので、そうしたことは牽制するというのが第一なんですけれども、第二に重要なのは、実は、同盟国がただ乗りしたり、あるいは同盟国がアメリカを巻き込むような挑発的な行動をするというのも、これもアメリカの選択肢を狭めるということなので、ここにも厳しく対応するということで、こうした理屈の目線というのは同盟国にも向いているということだと思います。
 じゃ、日本、韓国、オーストラリアが一生懸命防衛費を伸ばしたらアメリカの関与が増えるのかというと、そのような比例的な関係には必ずしもなっていないというのが、これがトランプ政権と同盟関係のすごくつらいところだというふうに思うわけでございます。ディシジョンスペース論というものを念頭に置きながら、どのような形に同盟するのかというのはちょっと結論で申し上げたいと思います。
 スライド十以降は、これまでアメリカが軍事介入をした三つの事例について申し上げたいと思います。
 スライド十は、アメリカによるイランの核関連施設への攻撃、昨年の六月に展開されたオペレーション・ミッドナイト・ハンマーですけれども、これはフォルドゥやナタンツなどの地下深層を含む標的に対してB2やバンカーバスター、潜水艦からの巡航ミサイル等を組み合わせた大規模統合作戦をしたということでございます。
 このときの教訓は、軍事介入をしないトランプ政権という単純な見立ては成り立たない、トランプ政権は軍事介入をするべきときにはするんだという教訓があるということなんですが、ただ、その介入の仕方に関しては、何か長期戦とか占領や国家再建ではなくて、能力破壊など限定的な目的を短期間で達成する設計に寄っているというのが昨年六月の時点での教訓ではないかというふうに思います。
 スライド十一を御覧いただくと、今年のベネズエラの軍事介入ですけれども、同じ論点を別の角度から示したと私自身は解釈しております。ここでは、占領や国家再建を避けて短期集中的な圧力で行動変更を狙う限定的な強制というものが前面に出ていると考えています。また、十二月の国家安保戦略で示したとおり、西半球優先という地理的な優先順位の中で、迅速性と決断力を示し、域外勢力へのシグナルと捉えるロジックだということだと思います。
 つまり、このトランプ二・〇の介入が、この二つの事例からは、介入の是非以前に介入を可能とする条件を整えると、それによってアメリカは介入をしていくと、それは、勝敗基準が比較的明確で、時間軸を短く切って、アメリカの作戦優位が担保され、アメリカのエスカレーション管理が可能であると、しかも撤収ができるということであればアメリカは軍事介入をするんだという論文をこの二月の中旬に私は出したところ、このイラン介入が始まってしまったので、もう論文直せないんですけれども、ちょっと困ったなと思っているところでございます。
 そのスライド十二が現在進行している対イラン攻撃なんですけれども、まさにその条件付介入の性格が問われるということだと思います。
 これも、アメリカ、イスラエル側が掲げる目的としては、指揮統制の麻痺、ミサイル戦力や海軍能力の破壊、核保有の阻止、そして今回、最高指導者を殺害したということを含めて体制の転換の圧力まで複層的な政治目的が並ぶということだと思います。ただ、非常に重要なのは、出口戦略が本当にアメリカはできているのかということでございまして、この今回のイラン攻撃を何をもって終わりとみなすのかという定義がまだアメリカの中ではっきりしていないということだと思います。
 第一の問いは、その終結条件に何を置くのか。それは核能力を潰したということなのか、イランの報復能力を低下させたということなのか、それとも攻撃停止や交渉への復帰をするというその行動変容を起こしたということなのか、どういうことかということをはっきりさせないといけないということだと思います。
 第二の問いはエスカレーション管理ですけれども、このエスカレーションがどこまで普及するのかということで、短期限定でありたいと思うことが結果として長期化しやすい。つまり、短期的な作戦の成功は必ずしも長期的な戦略の成功を意味するわけではないのではないかというのが第二番目の問いということになるということだと思います。
 こうした出口戦略の問題は、必ずしもその中東だけの話ではないと私は考えております。アメリカがほかの正面でも介入を選ぶときに、その介入が短期で終わる保証はなくて、政治の注意力、軍事資源、弾薬や補給、即応態勢がどうなるのかということに及び得ると思います。つまり、私たちが見るべきは、中東かアジアかという二者択一ではなくて、同時多発の危機が連鎖する時代にアメリカのディシジョンスペースがどこでどのように形成されるのかということが非常に重要なポイントになるということだと思います。
 スライド十三が台湾海峡でございます。これは話し出すと切りがないので、非常に短くまとめたいと思いますけれども、これも単一のシナリオで語るというよりは、限定侵攻、離島、ハイブリッドまで様々な幅があるということだと思います。それでも、いずれのシナリオでも共通するのは、初動の時間が短く、エスカレーション管理が難しく、また、先ほども申し上げたトランプ政権二・〇の武力介入が本当にこうしたシナリオと適合するのかという点において極めて難しい性格を持っているというふうに思います。
 時間も限られていますので、最後のページに進みたいと思います。
 政策的なインプリケーションを三点に整理したいと思います。
 第一に、東アジアの安全保障環境、厳しさが継続し、リスクが連鎖をするということです。通常戦力の競争に加えて、核を含む多層的な抑止への移行というものが進んでいくということが第一番目でございます。
 第二番目に、アメリカ第一主義時代の我々の防衛と日米同盟は、価値基準が、アメリカは日米安保条約第五条があるんだから関与は自動的に担保されているという、こういう発想ではなくて、アメリカの大統領のこのディシジョンスペースの中で管理しているというふうに発想を転換するべきだというふうに思っております。したがって、我々がどういう形でこの同盟の負担分担をしていくのか、また、どのようにその価値基準を共有化していくのかということについての作業というのは、今後も非常に重要なポイントになるだろうというふうに思います。
 最後に、自由で開かれたインド太平洋、これは故安倍総理が提唱してから今年は十周年ということになりますが、十年前と比べてもそのインド太平洋の重要性というのは増しておりますし、その性格というのも変化しているなというふうに思います。アメリカがその公共財を広くグローバルに供給するというモデルから、やはり同志国、パートナー国、そして必ずしもライクマインデッドとは言えない国々ともネットワークを形成して、そこでどのようにその公共財を提供していくのかという発想を積み上げていくということが大変重要になるというふうに思っております。
 時間も超過いたしましたので、私の冒頭の発言とさせていただきます。
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鈴木宗男#9
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 次に、岩間参考人にお願いいたします。岩間参考人。
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岩間陽子#10
○参考人(岩間陽子君) ありがとうございます。
 政策研究大学院大学の岩間です。
 参院国際問題に関する調査会の皆様、本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
 まず、お手元のレジュメに沿って御説明したいと思いますけど、最初に、今の情勢を私自身がどのように考えているかということを説明したいと思います。
 国際問題に関する調査会ではあるのですが、やはり私は国内レベル、それから個人レベルとの関連というものをしっかり見ながら対処を考えていくことが重要だと思います。その意味で、このケネス・ウォルツという人が最初に言いました三つのレベルの分析ということを申し上げたいと思います。
 現在、非常に混乱して厳しい情勢にあるわけですけれども、そういうふうになった一つの要因は、まず個人レベルでトランプ大統領の信条、世界観、スタイルというものが間違いなくあると思います。構造によって全てが変わるという説もあるんですけれども、私はやはり、個人がどのように世界を捉えているか、そしてどういうふうにそれを実現していくかが大きく世界を変えると思っています。ですから、現在起こっている変化の速度というのは、かつてゴルバチョフ氏が冷戦という構造に引き起こしたレベルでの急速な変化であるというふうに思っています。
 それから第二に、国内社会、国家レベルでも、これはアメリカに限らないんですけれども、様々な構造変化が起こっていると。
 よく言われていることですけれども、トランプ支持層、いわゆるMAGAと言われる人々は米国内の製造業の空洞化による中産階級の貧困化がもたらした人々であるということで、こういう国内問題が解消されない限り、それはやはり国際社会にも響き続けると、簡単に国際社会レベルだけで問題を解決しようと思ってもうまくいかない可能性が大きいということを申し上げたいと思います。
 それから三つ目に、もう既に神保参考人の方からお話ありましたけど、国際秩序、構造レベルでの大きな変化が起こりつつあると。
 長い間、冷戦では二極体制と言われていたんですけれども、冷戦終結以後のアメリカの一極体制というものが続いていたわけですけれども、このシステムの維持コストというのはアメリカに集中していたと。
 大きな枠組みというのは第二次世界大戦終結時につくられたわけですけれども、冷戦が終結したことによってシステム維持コストというのがアメリカに集中していて、それは安全保障だけでなく、金融であるとか経済の秩序を運営するコストもアメリカに集中していたということで、その負担というものに対する不満感というのは出てきていると。
 それから、もうこれは日本の直近の問題ですけれども、中国という経済大国が特に二〇一〇年代以降出現し、そして経済大国だけでなく軍事大国化していると。近年はかなりアメリカにこれは挑戦をしているという現状があり、アメリカには自分が運営してきたオープンで自由なシステムを悪用されたという感情があるということです。
 それから、やはり見逃せないのは、冷戦後急速に進んだグローバリゼーション。規制緩和自体は一九八〇年代から既に始まっていて、これが一層九〇年代に加速し、そこにやはり情報革命というのが重なりました。これがいろんな問題を複雑化させているし、我々が取り得る選択肢というのも制限していると思います。
 その中で、人の移動が激化したということで、御参考までにそこにグラフを付けていますけれども、この青がアメリカに入っている移民の絶対数ですけれども、オレンジの方がその割合です。
 見ていただくと、一九二〇年代以来ずっとこれは低下していました。人口に占める移民の割合で、御記憶のとおり、二〇年代というのは排日移民法を始めとする排外主義というのがアメリカにおいてすごく強まった時代です。それはやはりそれなりに社会的な理由があったというのがこの数字からお分かりいただけると思います。この割合は、二十世紀後半を通じてずっとそれより低かったんですが、二十一世紀に入り、最近になってそのレベルに迫っていて、その反応というのがアメリカ社会に出ていることは、トランプ政権が今出てきたということの背景の一つにあると思います。
 二番に参りまして、アメリカによるリベラル国際秩序がどのようにつくられたかというのは、なぜ第二次大戦が起こったかという問いに対する答えが戦後秩序を形成してきたと。そこには一定の世界観というものがあったわけで、世界恐慌とファシズムを生み出したのは保護主義やブロック経済化、一九三〇年代の大恐慌の結果として起こったことがこういう現象を生み、世界大戦へつながったと。
 それから、国際連盟不参加というアメリカの孤立主義が間違いであったということで、それらを是正しなければいけないという歴史観が戦後のアメリカの行動を支えてきたと。国際政治のアクター、中心的形成者になるという見方から、国連、世銀、あるいは自由貿易制度、資本の自由な移動などをアメリカ自身が支えてきたという背景があります。これが先ほど神保さんがおっしゃった国際的な公共財というものなんですけれども、同時に、旧大陸、ヨーロッパにおける勢力均衡にもコミットしなければいけないということで、米軍の常駐がNATOという形で実現しました。
 それからもう一つは、ドイツ経済を一九二〇年代において抑え付けたということが間違いであったということで、欧州統合の中での西ドイツの復興というのが実現したと。
 それから、もう一つ見逃せないのは、独裁者を宥和しようとしたのは間違いだということが、スターリンが当時いた共産主義との対決、そして軍事的な封じ込めというふうにつながっていったと。
 このアメリカを支えた多くの先進国は民主主義国であったということで、これもやはり国内レベルの話になるんですけれども、今、民主主義というものが非常に世界的に挑戦を受けていると思います。特に、私はヨーロッパの研究者ですので、その点を強く感じます。
 民主主義がどのように生まれてきたかというと、これは比較的、世界史的には新しいものです。十八から九世紀のヨーロッパにおいて、自由主義とかナショナリズムが生まれて、そこから民主主義というものが生まれてきたわけですけれども、これは、その当時起こっていた産業革命、産業化社会というものを考えないと理解できないと思います。この産業化された社会というのは、教育された豊かな中流階級、ブルーカラー、ホワイトカラーの労働者というものを必要として、これが国の製造力、技術力、競争力を支えてきたということで、彼らの声を国政に反映させるシステムとしての民主主義というものがあったというふうに私は理解しています。
 経済の相互依存、経済交流、経済発展というのが、ヨーロッパ、それから日本のような国の経験から体制の民主化につながるのではないかというのが二十世紀後半に強まったと、希望であったわけですけれども、実際、韓国、台湾、インドネシアなど一定の国においてはこれが実現したというふうに思われたわけです。中国もこれに続くのではないかという期待が膨らんだのが一九九〇年代であったと思いますけれども、二十一世紀に入ると違う方向に中国が転換し始めたという現状があります。
 今、アメリカが、トランプ二・〇が起こしている現状修正というのは、やはり米国が多大な負担を強いられているということへの不満が募っていると。それが同盟国への公正な負担要求になっていて、これは、何というか、アメリカにとっては、ヨーロッパにしろ日本にしろ韓国にしろ、かなりただ乗りの部分があったと見えるということは、これは否定できない事実だろうと思います。
 それから、国際機関の多くが非効率的であるというのも、これもやはり事実ではあると思うんですね。ただ、それをどのような方向で修正していくかということはいろいろなやり方があると思いますけれども、非常にトランプ政権はドラスチックなやり方で協力を停止しつつあると。
 もう一つ、やはりトランプ二・〇の価値観の問題として、やはり左派イデオロギーへの反発というのがあります。背景には、アメリカの保守派の変化。これは、やはりヨーロッパ社会でも同じで、いわゆる保守党が、保守党までもがかなり中道化、左派化していったという現実があって、それへのやはり国民の共感が付いていかなかったという現実はあるだろうと思います。そこで何かイデオロギー的な揺り戻しというものが来ていると。
 したがって、アメリカにおいてもヨーロッパにおいても、そして多分日本においても、国内社会における国民としての共感というものをいかに取り戻すかというのが重要な問題となると思います。
 この関連においてトランプ政権は、アメリカの製造業を立て直したいと思い、関税戦争を仕掛け、あるいは移民政策、それから国際機関の脱退、協力停止などなどの行動を起こしているわけですけれども、ですから、問題があって、それへの反応があって、そしてさらにトランプが取ろうとしている手段があるということで、手段が正しいかどうかという議論も必要ですけれども、なぜ今出ていることが起こったかというその問題の根っこというものを見ていくことも必要だろうと思っています。
 四番として、私の専門であるヨーロッパの反応、といいましても、国によって相当今ばらけていますので一概には言いにくいんですけれども、ざっくりとお話ししておきたいと思います。
 一つには、公正な安全保障負担をすべしという要求には応じざるを得ないということで、ほとんどの国において五%の防衛支出ということが主流になりつつあります。それから、ウクライナに対する軍事的な支援というものが、物の面ではアメリカから急激に減っているということで、これを肩代わりせざるを得ない。これはほとんどドイツが肩代わりしているのが現状ですけれども、それはやらざるを得ないということです。
 一番そのヨーロッパの反応が揺れているのは、やはり価値観においてアメリカが変わってしまったのではないかという違和感があるということです。これは、最も具体的には、欧州内右派政党へのアメリカによる支援がバンス副大統領を始めとする政権内の主要な人々からはっきりと出されている。それから、記憶に新しいのはグリーンランドに対する要求であって、これらを通じてやはりアメリカに対する違和感というのが強まっています。
 その結果として、ヨーロッパ自身がアメリカから一定の自立を達成すべきであるという議論は出てきていて、ここ数日、フランスの方から新しい核政策などが出てきたりしておりますけれども、ただ、日本も同様ですけれども、アメリカから自立するというのは現代の世界においてそれほど簡単なことではないですから、まだ議論は始まったばかりであります。
 残りの時間で、世界の安定化に向けた日本外交のお話をしていきたいと思います。
 国家のレベルとしては、まず、当然、その防衛力の強化というのはいろんな意味で必要とされるんですけれども、同時に、インフラをひっくるめた社会的レジリエンスの強化というのも必要だと思います。現に、様々なエネルギーインフラが攻撃を受けて世界的な影響を及ぼしておりますので、そういう意味で、日本のインフラのレジリエンスというものをもう一度見直す必要があるだろうと思います。
 今まで私は、特にNATO、EUとのつながりというものを非常に重視してきたんですけれども、それに加えて、アジアとのつながりというのも地域的にこれから重視しなければいけないだろうと思っています。
 済みません、ちょっと前後してしまいましたけれども、経済、社会、人的つながりの強化、法の支配の重視というのをやはり、ASEAN諸国、それから地域の同志国、韓国やオーストラリア、ニュージーランドなどと共にやっていくと。ここは、北岡伸一先生が西太平洋連合という提案を随分前にされていますけれども、そういう、何というか、経済だけでなくて人的なつながりを強化しつつ、その中で法の支配の重視を広げていくというような取組が必要なんだろうなと思っています。
 そして、ごめんなさい、ちょっと前後していますけど、国家レベルに戻りますと、人への投資と新たな再分配の方法と、中産階級を犠牲にしない社会モデルの提示というのは、これは、やはり日本のような国が努力して、それをやはりアジアにおいても共有してもらうというようなやり方が必要だろうと思っています。世界的にやはり格差の拡大が広がり、それが民主主義に非常に負担掛けていると思いますので、この点でやはり日本のようなまだ比較的格差が少ない社会が最もモデルを示すべき立場にあるのではないかと。
 それから、ある種の私は行き過ぎた自由主義への修正というものが必要なのではないかと。これもやはり、グローバルエリート層というのはどこにでも逃げていって、国家に対する義務を果たさなくてもよいというような構造があることは私は問題なのではないかと思って、そこに先日書評しましたフィリップ・テーアという方の議論を紹介しております。
 地域レベルの、そのASEANの話は先ほどしましたけれども、それに加えて、やはり私は、軍備をやりつつ対話も重視するべきだというのがやはり日本のような国がやることだと思っています。それは、何というか、翌年効果が出ることではないんですけれども、長い目で見て、対話のためのフォーラムを根気強くつくり続けていくような努力をしていくのは、やはり歴史的にも日本が果たすべき役割だろうと思います。そういう意味で、将来的な東アジア地域における軍備管理・軍縮、信頼醸成のための知的な準備をしていき、あるいは人的なつながりをつくっていく努力、それから地域の緊張緩和外交の推進、この関連ではアジア版OSCEというような御提案も出ております。
 いろんなやり方があると思いますし、私自身もここに関心を持って議論を続けていますので、こういう面で日本がリードしていくべきというふうに思っていますし、これは決して本当に、繰り返しますけど、数年で結果は出ないかもしれない。中国が話合いには応じませんよというのはいろんな方に言われるんですけれども、チャンスというのはいつやってくるかは分からないので、十年、十五年、二十年掛かるとしても、私はこういう知的努力は日本がやるべきことだと思っています。
 それから、グローバルレベルで、そのルールに基づく国際秩序というのは、現在、諸大国が非常に力に基づく行動をしている中で維持するのはとても難しくはなっていますけれども、最近、一九三〇年代との比較が盛んになされますけれども、当時との最も大きな違いというのは、やはり私はグローバルサウスの存在だと思います。
 これらの諸国は、一九六〇年代以降に国際社会に登場した国がほとんどですけれども、今後の世界の成長を引っ張っていくのはこれらの国ですから、彼ら自身は別に全くルールがない社会で大国の後ろを付いていきたいとは決して思っていないわけで、そういう国々と連携して何らかのルールがある空間というのを維持していくという努力が日本のような国には求められているのだと思います。
 同時に、国際機関も改革が必要なものは多いのは事実ですけれども、アメリカが余り努力しない中で、日本のような規模の国ができることは限られているとは思いますけれども、優先順位を決めて維持しつつ改革を進めるというのがあるべき姿だろうと思います。それから、もちろんグローバルサウスの国の中で必要とされている支援はODAの形で継続していくというようなことだと思います。
 最後に、フィンランドのアレクサンダー・ストゥブ大統領が最近フォーリン・アフェアーズ誌で発表された論文の中では価値に基づく現実主義というのを提唱されているんですけれども、やっぱり世界の将来、行方というのは最終的にはグローバルサウスが決めるんだということをおっしゃっていますし、これから日本が発展していくためにも、口を閉ざすのではなくて、やはり開いて、日本の知恵を世界の中に生かしていくという方向性が必要だろうと思います。
 以上で終わります。ありがとうございました。
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鈴木宗男#11
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人。
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田中均#12
○参考人(田中均君) どうもありがとうございます。田中均です。よろしくお願いします。
 この席に座った思い出というんですか、二十数年前に外務省の局長で、ここに座ったときの緊張感ですかね、だから、何を言っても言葉尻をつかまれないようにというのが、今でも多分そうだと思いますが、政府委員の鉄則だったんですね。ですから、余計なことは一切言わないということでした。だけど、今日はちょっと余計なことを言うかもしれませんので、是非、言葉尻をつかまれないようにしたいと思います。
 今、神保さんと岩間さんが言われたこと、いずれも極めて妥当な御説明だったんですけど、余り重複しても意味がないので、ちょっとそれを補完するような形でお話をしたいと思います。ただ、私、若干ニュアンスが違う話をするかもしれないので、そこは留意していただきたいと思います。
 レジュメに沿ってお話を申しますけど、今、岩間さんが言われた、いわゆるリベラルな国際秩序、これは、私が外務省を辞めたのは二〇〇五年ですが、それまでの世界というのは、いかにそのリベラルな世界を増進していくかということだったんですね。援助を増やそう、貿易を自由化しよう、要するに環境被害を防ごう、戦争を違法化しよう、こういう形で、まさにそのリベラルな秩序の維持に努めるというのが日本の使命であったと思うんですね。
 そういうリベラルな秩序というのは、私はもう返らないと思うんですね。なぜ返らないかというと、まさに戦後、これを主導してきたのはアメリカだったわけですね。で、アメリカの今トランプ政権が言っていることというのは、これまでつくられてきたリベラルな秩序とは全く違うことを言っているわけですね。もう援助を切るぞ、それからパリ協定から離脱だ、国際機関から離脱をし、自由貿易どころか関税をぶっ掛けていくという、WTOの世界では考えられないことですよね。それを平気でやる、アメリカだからできるということですね。
 アメリカ一国主義というのは、基本的にはアメリカが主導国として自由主義体制、リベラルな体制を支えてきたという時代の終えんだと思うんですね。岩間さん言われたように、アメリカは相当な持ち出しをしていたんですね。だから、リーダーシップは当然そうだと思うんですよ、政治の世界でもリーダーシップが、やっぱり率いていくからにはそれなりの自己犠牲というのか、自分が余計にコストを払うということをやらない限り付いてこないわけですから。で、そういうアメリカ、寛容なアメリカは終わったということなんですね。
 トランプだから終わったのか、あるいは構造的な変化があるから終わったのかというと、私は後者だと思うんですね。トランプはその終えんを加速したということは言えると思うんですが、だけど、実際問題として、やっぱりこの八十年の金属疲労みたいなものですね、とりわけ二十年の中東における戦争というのが非常に大きかったと思います。
 その間、中国やインドやブラジルといった新興国が台頭してきて、なぜアメリカだけが余計にコストを払わなきゃいけないのかというそれが構造的な問題で、トランプはそれを極端に述べていますが、だけど、多分そういう構造変化のゆえにアメリカの政策が決まっているわけで、これは元へ戻らないというふうに思います。
 トランプさん、私自身も力による平和というのは一体何を言っているんだろうかと。今まで言われていた、トランプさん自身、海外に派兵して、アメリカ側の兵士が犠牲の上で、その平和を追求するということはもうしないんだということですね。
 だけど、それでは力による平和というのはどういうことかというと、基本的には、ロシアや中国といった軍事大国に対しては、力による平和というのは当てはまらない、それはもう取引なんだと。取引に当たっては、私たちは以前は自由、民主主義という価値に基づいて取引をしてきたわけだけど、トランプの頭の中にはそういうことはないんですね。まさに、戦略的取引であって、価値に基づく取引ではないということですね。だから小国、要するにアメリカの犠牲が多く伴わない小国に対しては力を行使するということはいとわない、だけど大国に対しては取引ということなんですね。
 私はびっくりしたんだけど、イランに対する攻撃をやって、アメリカ人の兵士が三人死んだと。そのときに彼は何を言ったかというと、三人の犠牲者が出たと、これに対する報復をするんだということをカメラの前で堂々と言うわけですね。戦争を仕掛けた人が、一部の兵士が死んだからといって、それに対する報復だと、こういうその言葉の使い方自身に、まさにアメリカが追求しているのは価値ではなくて、まさに損得の世界なんだということが出てしまっているということですね。
 それから、国家安全保障戦略というのは、これは今、神保さんも言われた、あるいは岩間さんも言われたけど、やっぱり具体的に意味を持っていくと思います、これからね。
 それは、一番我々にとって注意しなければいけないのは、それが東アジアにどういうインパクトがあるかと。文字どおり読むとね、文字どおり読むと、まさにヨーロッパ、ソ連との関係はヨーロッパやりなさいと、中東は一定のマネジメントのためにアメリカは力を貸すよと。で、東アジアというのは、この国家安全保障戦略というのは、ある意味、二〇一七年に出た国家安全保障戦略、それはピボットだったんですね。中東からアジアに対してその力点を変えるよと、アジアはリバランスするぞという、戦略を変えたんですね、この西半球のプライオリティーをつくるということは。
 そうすると、具体的な姿として北朝鮮有事でどうするんだ、台湾有事でどうするんだということが多分現実的な問題として出てくるだろうというふうに思う。私たちはそういうことに備えていなきゃいけないというふうに思うんですね。
 それに対して、世界が一体どういう対応をしているのかということについて、日本の対応というのは大事なことなんだけど、その前に世界がどういう対応をしているかということについてお話をしますけれども、アメリカの国内はどうかと、これはもう非常に日々動いているわけですね。
 トランプは、アメリカの国内のその岩盤支持層を回復するためにイランをたたいた。というのは、宗教的な問題とか、イスラエルに対する、私は基本的にこのイランの攻撃というのはイスラエルにせっつかれたことであることは間違いないと思うんですね。通常のアメリカであればこんなことしていませんよ。これだけその結果的なコストが多い行動を取る、それはやっぱりトランプの自己認知欲というんですか、何かイスラエルにせっつかれた、場合によってはサウジにせっつかれたかもしれませんが、やっぱりそれでダックするのは嫌だと、討つというところにやっぱり彼の精神構造はあったのだろうと思います。
 この実はイランに対する米国の行動というのは、私は多分見誤っていると思うんですよね。というのは、私は一九七九年にワシントンにいたんですね。そのときに何が起こったかというと、イラン人質事件、大使館が人質に取られた。あれからのアメリカのイランに対する怨念みたいなものは物すごく強いんですよ。だから、我々が、アメリカがイランを攻撃したと、核の問題だと言うけど、核の問題であればもっと早くやっていればよかったわけで、この期に及んで核の問題で軍事行動を取るかと。そうではない、やっぱり体制なんでしょうね、お坊さんがトップに座るような体制に対して鉄槌を加えるということ。これはイスラエルの主張であって、それに乗っかったということではないかというふうに思います。
 私は、このイラン攻撃がトランプさんの支持率上げることにはならないと思います。今、三七%ぐらいですか。むしろ私はこれはトランプの人気を更に下げていくというふうに思います。関税の最高裁判決とか、あるいはエプスタイン問題とか、いろいろ国内的には更に広がる問題がいっぱいあるわけですね。だから、結果的に何が起こるかというと、それは、下院は民主党側が取るということは多分間違いがないと、上院はちょっと分かんないねということなんだけれども、何が大事かといったら、アメリカの分断というのが更に深まっていくということが大事なことであって、その結果、トランプ的な世界がなくなるかというと、そうじゃない、もっと激しく対立が出てくるんじゃないかなというふうに思います。
 ヨーロッパについては、さっき岩間さん言われたように、デリスキングということ。要するに、ちょっとアメリカと一緒に行動するのは危ないんじゃないかと。ヨーロッパは圧倒的にアメリカに依存度が高いわけですね、軍事的にも、NATOの中で、あるいは貿易面においてもね。だから、それを、やっぱり過剰な依存を下げようというヨーロッパの努力は現実に起こっています。
 それは、例えば国防費をGDP比三%、あるいはインフラを入れると五%、あたかもアメリカの要求に屈したかのように思われてはいるけど、そうじゃない。あれはまさにヨーロッパが自立していくために自分たちの国防力を増加させなきゃいけないということであって、それから、メルコスールとの自由貿易協定とかインドとの自由貿易とか、貿易の多角化、これはかなり深刻なイシューとしてやっていくというふうに思います。
 それだけじゃない。中国北京詣でをしているわけですね、ほとんどのヨーロッパの主要国の首脳がね。だから、やっぱりアメリカとの関係を考えるにおいて中国との関係をどうするかという意識がヨーロッパにも非常にあるということは我々念頭に置くべきじゃないかというふうに思います。
 三ポツ、これが一番大事なことなんですが、一体、日本外交はどう対応していくのかということですね。多分、皆さんの中にも意識、意見の違いがあると思うんだけど、この十年、二十年の間に、外務省もそうだけど、意識の違いというのがどんどん出てきた。最近は抑止力至上主義、とにかく平和を、力による平和と同じようなことなんだけど、抑止力を強めることが平和をつくるために必要なことなんだと、こういう意識の人と、おい、ちょっと待てよと、幾ら国防力を上げたところで問題解決するわけじゃないんじゃないかと、したがって、より外交を重んじる人。
 少なくとも、私たちが外務省にいたときには、要するに物事を解決するのは外交だと、対話だと思ってきたわけですね。だから、対話がない抑止力の向上なんてあり得ない。ただ、今見ていると、ほとんど多くの議論がいかに抑止力を上げるかということに費やしているような気がする。
 二つ問題意識があるんですけど、我々、外交の基軸は日米関係だと言っているじゃないですか。日米関係はなぜ日米同盟関係なのかというと、価値観の共有があったんですね。やっぱり自由、民主主義で、その行動するときに価値観を基準にやっているという我々気持ちもあったし、アメリカにもそういう気持ちがあった。今、全く違いますよ。アメリカ第一と、その下での日米同盟関係というのは違う。本当に今のままでいいのか。日本は日米関係が外交の基軸だということでいいのかと。
 最近十年間の外交の基軸というのは、中国をいかにして抑止するかということになってきた、びっくりしましたけど。私たちが外務省にいたとき、二〇〇五年まで、議論の中心というのはアジア太平洋という言葉だった。アジア太平洋というのは中国を含んで、いかに中国を、変えられないんだけど変えていくかという、だから、一種のエンゲージメントですね、中国を入れて、その中国の行動を変えていこうというアプローチだった。ところが、アメリカは、いや、中国の行動は変わらないと言ったわけですね。
 それで、二〇一七年にピボット、まさに国家安全保障戦略の変更、それから安倍内閣のときのインド太平洋構想というのは、基本的には中国を牽制するコンセプトなんですね。ですから、そういう意味から、今の外交の主軸というのはいかにして中国を牽制するかと。
 で、私は皆さんにお聞きしたい、本当にそれでいいですかと。中国のように、日本の貿易の二割以上が中国ですよ。日本にとって最大の貿易パートナーである。それから、あっという間に二〇一〇年に日中はGDPで肩を並べたわけだけど、今中国は日本の四倍ですよ。それが、ますますその格差が広がっていくでしょう。それが隣国であり、いや、とにかく日本国民の反中意識というのは、九割の人が中国嫌いだと言っているわけですね。だから、いかにそれに乗っかった政治をするかと思っておられるかもしれないが、だけど、本当にそれでいいですかと、中国という国をアメリカと一緒に牽制していくということでいいんですかと。
 ところが、アメリカは明らかに戦略を変えているわけですよ。さっき申し上げたように、アメリカの力による平和というのは、小さな国に対しては軍事力も使うぞと。だけど、ロシア、中国についてはむしろ取引なんだと。現に昨年の米中首脳会談なんか見ても、あえて台湾の問題は触れないということで合意しているわけですね。
 だから、貿易戦争、中間選挙の後まで延長するとか、もろもろのインディケーションを見ると、やっぱりアメリカの意図というのは、中国ととにかくマネージしてうまくやっていこうと。そのときに、日本が中国にただ牽制するんだと、台湾について、その台湾の今の答弁は変えないよということで突っ張っていくことがどれだけ日本の国益に資するかということを私は是非国会議員の方は考えていただきたいと思うんですよ。
 僕は別に、中国に対して融和主義を取ろうということを提案しているわけでは全くないですよ、全くない。だけど、隣国で、日本の四倍、五倍の大きさを持った国がこれから五年、十年たつときに、今のような、何というんですか、ある意味、非常に制裁の打ち合いをするような関係でよいのかと。それは、僕は外交の怠慢だと思う、政治の怠慢だと思う、申し訳ないですけどね。だけど、やっぱり何か方法を考えなきゃいけない。それが、アメリカと一緒になって中国を牽制するということではいけない。なぜかというと、もうアメリカの方針は変わりつつあるから。
 それから、日本にとってもっと深刻な問題は、対中融和主義と言われない形で中国を取り入れていくにはどうするかと。そういうときにやっぱり必要なのは、一対一でやるよりも五対一ぐらいでやった方がいいよと。ASEANや韓国や、あるいは豪州とか、そういう国々と中心に中国との関係を整理していくということが必要なんじゃないかというふうに思うんですね。
 私はやっぱりCPTPPというのは日本の武器だと思います。CPTPPに中国や台湾や韓国やEUを入れていくという行動を日本が取ることによって、自由貿易主義だということと、中国をみんなで抑え込みましょうよというような意図表示にもなる。だから、そういうことを是非考えてほしいというふうに思うんですね。
 さっき申し上げた、自由で開かれたインド太平洋もいいけれども、アジア太平洋協力というのも少なくとも並び立つような重点にしてくれないかと。今や、インド太平洋だけ、それは十分ではないんじゃないかということを申し上げて、私のお話としたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。
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鈴木宗男#13
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 まず、大会派順に指名をさせていただきます。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構であります。
 お一人十分以内となるように御協力をお願いいたします。
 質疑をさせていただきます。
 最初に、私から三人の参考人に質問させていただきます。
 神保参考人、岩間参考人に御見解をお尋ねしますけれども、今回の、アメリカがイランに対し武力行使をいたしました。これは国際法に違反しているのか、いないか、両参考人の御見解をお尋ねいたします。
 神保参考人、お願いします。
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神保謙#14
○参考人(神保謙君) 御質問ありがとうございました。
 先ほど田中均参考人からもお話がありましたとおり、二十世紀の国際法の歴史というのは、戦争をいかに違法化していくのか。一八九九年のハーグ陸戦条約から一九二九年の様々なこの取組、そしてケロッグ・ブリアンですね、そして一九四五年、戦争が終わってようやく国連憲章ができ、その中で、この加盟国は基本的に戦争の違法化ということの原則に同意をして入ると。ただし、そこには例外があって、第一の例外は、憲章五十一条の個別的及び集団的自衛権の行使は、これは武力の行使のその違法化のカテゴリーに入らないということと、二つ目は、その国連七章で広く定義された集団安全保障の枠組み、当然、国連成立時の国連軍の制定とかその運用はいろんな意味で難しかったので、それでも安保理がそこで授権をする、安保理の合意を通じた授権をしながら武力を動員するという、こういう仕組みになっているんだと思います。
 九〇年代の後半に、じゃ、例えばNATOのコソボ介入がこうした合法性に該当するのか、恐らくこういった場でももう真剣に討議したと思うんですね。その中でも、例えばジェノサイドが起きているとか、一般国際法の様々なこの類型に関して国連安保理が十分に機能しないと言われる場所でも何らかの国際法の根拠を持ってこの強制力というものを考えていこうと、国際法条理においては必ずしも結論が出ていない問題ですけれども、そのようなことが議論されてきたというのが国際法を尊重する安全保障の歴史だったように思います。
 今の、鈴木会長がおっしゃられたアメリカのこの今回のイラン攻撃がこうした国際法の正当性、合法性に該当するかということに関して、私自身はもちろん国際法の専門家ではないので断定することはできませんけれども、解釈としてその合法性は極めて疑わしいというふうに思っているわけでございます。
 無理やり解釈すれば、それは一定の、イランを、いわゆるこの国家の方向性や、そして軍事力からいって自衛権の必要性が生じたみたいな解釈というのはできるかもしれませんけれども、ただこれも、自衛権はその様々な国際法解釈においてかなり限定的に定義をされ、その切迫性であったり、仮にその対応するときの比例原則であったり、そういったものがいろいろ言われてきたという点においても、なかなかこれまで議論したフレームワークとアメリカの軍事介入というものがしっかり当てはまるという状態にはないという、こういう解釈で捉えているところでございます。
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鈴木宗男#15
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 岩間参考人、お願いします。
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岩間陽子#16
○参考人(岩間陽子君) ありがとうございます。
 今、神保さんがおっしゃられたように、戦争の違法化というのは二十世紀の初めから進んできたわけですけれども、国際社会の特徴として、国際法の実効性を担保する国家を超える機関というのは存在しないという現実があります。ですから、各国が、自分が自主的に従う範囲においてしか国際法は実効性を持たないという現実があり、そして近年、多くの大国が余り国際法を尊重しない方向に流れてきていることから国際法の実効性というのは弱ってきていると言わざるを得ないと思います。
 今回の件に関しては、私は、これはイスラエルの自衛権というものをどう考えるか、あとはイラン国内において行われた弾圧をどのような性質のものかと捉えるかというところに解釈は落ちてくるのかなと思います。イスラエル自身が、自分の自衛権を解釈するのは最終的には主権国家の権利に属するので、自分の存立がイランによって脅かされているというふうに感じたという解釈はできなくはないと思います。
 ただ、それであっても、やはり一定の国際制度上の手続、具体的には国連安保理にかけてみるだとか、そういう手続が全くなかったというのは非常に遺憾であるし、合法性をより疑わしくする手続上の瑕疵があったというふうに言わざるを得ないかなと思います。
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鈴木宗男#17
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 田中均参考人にお尋ねします。
 二〇〇二年九月十七日、日朝首脳会談、歴史的なあの会談が行われました。このときの約束として、拉致被害者の名前、あるいは死亡者が明らかになりました。
 その後、五人の被害者が、十月十五日ですけれども、帰国されました。このとき、二週間で北朝鮮に戻すということを約束しての一時帰国だったと聞いておりますが、これ、事実としてはどうだったんでしょうか。
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田中均#18
○参考人(田中均君) その話を聞かれるとは思いませんでしたけど、あえて、まさに御関心事であるということで、できるだけ事実関係に正確にお答えをしておきたいというふうに思います。
 当然のことですが、あのときに、拉致被害者の人々をできるだけ早く帰ってもらわなきゃいけないという折衝をしていたわけです。そのときに、私が個人でやったというよりも、当時、小泉総理大臣、それから福田官房長官、それから安倍官房副長官、それから外務大臣、それから私ということで、必ずそういう関係者全て集まる席でその条件をどうするかという議論をした。
 そのときに、私が以前から聞いていた話は、そういう被害者の人たちは子供がいる、子供に対して自分たちが日本人で拉致被害者であるということは言っていない。したがって、子供たちのことを考えると直ちに荷物をまとめて日本に帰る、帰すわけにはいかない。したがって、取りあえず一旦一時帰国ということにしてくださいということを言われて、その期間として一週間ということを言ってきたので、再びまた総理のところで御前会議をやって、一週間は短過ぎると、二週間ということで提案をしてくれということで、彼らに二週間の予定で帰国させたいということを言った。結果的には一、二週間ということで日本に帰ってこられたわけですね。
 確かに、北朝鮮は、結果的に何が起こったかというと、彼らが故郷に帰られて、やっぱり家族、国内におられる拉致被害者の家族の人たちはもう絶対北朝鮮に返したくないということを言われて、ついては北朝鮮に返すことをやめたいという話が、中山さんですかね、当時の拉致担当だった中山さんを通じてもたらされた。これまた総理の下で御前会議をやって、確かに、故郷のお父さん、お母さんが子供たちを北朝鮮に返したくないということを言っておられるわけだから、これを無視するわけにはいかないよねと。だけど、家族の反対で帰らなかったということになるとやっぱり子供たちの身が危ないので、したがって政府が決めたことにしようということで、政府としてこれは永住帰国にするという結論を出したんですね。
 そのときに総理が、田中さんもそれでいいかと言われたので、僕は、もちろん、政治家が決める話だから私がとやかく言う話ではありませんと、だけど、官僚として申し上げれば、その結果として子供を取り返すのに時間が掛かりますよということを申し上げたんですが。
 したがって、私は電話で北朝鮮と交渉した。そのときに、彼らは、約束違反だと言う、約束違反だと。で、私は、ちょっと待ってくれと、日本人だよ、これは、日本人の拉致された人たちを返す返さないという話をあなたに言われたくないと。したがって、日本の政府の決定として永住帰国にするということを一方的に言い放って交渉は終わったということですね。その結果としていろんなリパーカッションがあったと思いますが、結果として、それから一年半たって再び小泉さんに行ってもらって子供を取り返したということなんですね。
 だから、一連のことというのは、少なくともみんなで協議して、みんなで決めたことで、世の中には、いや、私が返せと主張したということが言われているし、いまだにそういうコメントがありますけど、そんなことあり得ないですよね。こういう大事な話を私の一存で決めるなんということはそもそも考えられない。
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鈴木宗男#19
○会長(鈴木宗男君) 田中参考人、貴重な御意見ありがとうございました。
 次に、塩村あやかさん。
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塩村あやか#20
○塩村あやか君 ありがとうございます。立憲民主の塩村でございます。
 参考人の皆様、本日は、示唆に富む御講演、本当にありがとうございました。
 今まさにお話がありましたように、中東ではイランへの侵攻が発生いたしておりまして、国際秩序が根本から揺らいでいると思います。これを受けて、先ほど岩間参考人も述べられましたけれども、フランスのマクロン大統領は、アメリカの安保コミットメントへの不信を背景としたのか、三十四年ぶりになると思うんですが、核弾頭の増強を表明したということになります。
 翻って、我が国でも防衛装備移転の五類型を撤廃して完成品の輸出を事実上解禁しようとする歴史的な方針転換が進められています。これは、政府によれば同志国との連携強化ですが、その実態というのは、アメリカが三正面の戦況を抱え、リソースが分散をする中で、日本を含む同盟諸国が生存を懸けた戦略的自立の模索、あるいは独自の安全保障体制の再構築へとつき動かされている姿ではないかというふうにも思います。
 一方で、アメリカが単独行動を強める陰で、国際法や安定を説く中国が、グローバルサウスの諸国から安定の守護神としての信頼を着実に集めているという現実も報じられています。
 この大転換期における日本の立ち位置についてお伺いをしたいと思います。三名の参考人の皆さんにお伺いをしたいと思います。
 岩間参考人もXで注視されておりましたけれども、韓国の米軍基地のTHAADの中東移設の検討という、そういう報道もありました。これはアメリカのリソースがアジアから引き剥がされるかもしれないという事実を物語っているのではないかという声もあります。
 こうしたアメリカの不在に対して、日本が防衛装備移転を加速させて補完をする役割を深めるということが、資料にも、読ませていただいているんですけれども、神保参考人が説く新興国との橋渡しや田中参考人が提言をされております自立的なアジア外交において平和国家としてのブランドとどのような整合性を持ち得るのか、両立させていくのか、伺いたいと思っています。
 私は、理想論だけでは国は防衛できないという現実を直視して防衛面を議論するという立場に立たせていただいております。しかし、それは、日本が普通の国になると、これ同義ということでもないというふうにも考えています。日本が戦後歩んできた唯一無二の平和国家という立場を、単なる制約としてではなくて、むしろ他国にはない外交的レバレッジとして、米国の今の状況をある種抑制をしながら地域を安定させるためにこそ使いこなすべきだというふうに思っております。
 防衛的な拒否戦略を構築しつつ、一方で日本らしい平和のブランドを毀損させないよう、この極めて困難な二律背反をどう乗り越えていくべきか、今回の難局において日本が特別な平和国家という立場を生かした対応、賢明な世渡りと外交の知恵について、御講演の中にも回答はあったとは思うんですが、改めて三名の御意見を短く伺いたいと思います。それぞれの皆様にお伺いいたします。よろしくお願いします。
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神保謙#21
○参考人(神保謙君) 塩村委員、ありがとうございます。
 大変重要な御質問で、短く答えるのは大変難しいですけれども、例に挙げられた防衛装備移転と平和国家としての日本の役割という点について絞ってお話ししたいと思います。
 今回の装備移転五類型の見直し、いろいろな論点はあるんですけれども、これまでの日本が取ってきた五類型というのは、まさにこの国際紛争や直接的なこの殺傷性の高い武器ということと距離を取る形であれば積極的にこれは移転をするという方針から、いよいよこの制限を外して、よりその事案に沿った文脈の中で定義をしていくという方向になるんだろうというふうに思います。
 その際にやはりこれまでの心構え等を変えて考えなければいけないのは、国際紛争を直接助長したり、それを支援したりするというところでなかったとしても、それに間接的に結び付くような殺傷性の武器を出していくということが、当然その出される国にとっての助けになるかもしれませんけれども、それと敵対する国、またその敵対する国を支援する国との関係でやはり大きなマイナス効果を生むことも考えられるということを考えると、やはり非常に、いわゆる装備品の市場に入っていくという経済的な利益だけではなく、これ外交戦略の中での立場決定等、大きな意味を持つということだと思うんですね。ある国を支援すると、場合によっては日本の隣国にある、ある国がそれを理由にもしかすると装備を強化したり敵対的な行動を強めるかもしれないという、こういったその戦略上の意思決定とかなり接近したところで判断をしなければいけないということが入るということを十分認識した上でこの政策を進めてほしいというのが一点です。
 二つ目は、その装備移転にも実はいろんなものがあるということだと思います。
 特に、これ、装備というカテゴリーでやるかどうかという問題はあるんですけれども、例えば、フィリピン、インドネシア等に、海上防衛能力と広くはいうんですけれども、いわゆる警察とか、いわゆる日本でいうと海上保安庁に相当するような警備艇ですよね、これを出していくという、積極的に出し、それをオペレーション上も支援するということによって、例えばその装備がなかったとしたら、それらの国はいきなり海軍の艦艇を出して対応しなければいけないところを、警察力を強化することによってエスカレーションの幅というものを一段階上げて、すぐにそのグレーゾーンの事態が武力闘争にならないような装備を支援することによって安定を確保するとか、こういったその装備移転においても実はいろいろな形で平和国家としての日本の考えを支援するというやり方はたくさんあるというふうに思っておりますので、しっかりとその中身を吟味して出すということが大事というのが二番目です。
 そして最後に、この異なる正面における装備の需要の変化というのは、戦争が起こると物すごい起こるわけですね。
 ウクライナ軍は、常に装備のまさに足りないという状況にこの三年ずっと直面して、いろんな国にお願いをして集めていくということによって戦線を維持するということをやっているわけなんですけれども、まさに一日に一万発以上の弾薬が消費されるような戦場において、その弾薬をどれだけ供給できるかということ自体がその継戦能力そのものにつながってくるということは、生産能力というものがその国際情勢の事態によって大きくこの需要の幅というものが変わるということだと思います。この幅をどう考えるのか。つまり、足りない国には助けてあげなければいけないし、我々が足りないときには助けてもらわなければいけない、こういう関係を同志国同士でどれだけつくるのか。いわゆるその共同のサージ能力というふうに、予備能力と言ってもいいしサージ能力と言ってもいいんですけれども、これをその装備移転をより柔軟化する中でもう一つの概念として同志国同士で協力してつくっていくと、こういう発想が重要なのではないかと思っている次第です。
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岩間陽子#22
○参考人(岩間陽子君) ありがとうございます。
 平和国家としてのブランドということなんですけど、私自身も、日本が安易に軍事力を行使しない、あるいはその武器の輸出をしないということでいろんな国で培ってきた信用というものは大事にしていくべきだと思っています。
 他方で、やはり今までの日本の政策は、アメリカという国が防衛面で大きな役割を果たしてきたことによって可能であったということもやはり無視できないであろうと。そして、その大前提が大きく変わろうとしている中で、日本のその平和国家としてのブランドを守っていくということはこれまで以上に非常に大きなチャレンジになると思っています。
 私自身は、その抑止と対話ということは決して矛盾しないし、むしろ常にその二つは並行して二重の外交として追求すべきことだと思っています。その効果が出てくるタイミングであるとかはやはりずれは出るんですけれども、どちらか片方だけでは私は駄目だと思っています。それは、日本自身が自分たちの国民とその生き方というものを守るという能力を持つことは必要だと思いますし、先ほども言いましたように、アメリカの役割というものが変わっていく中でより大きな自立性というものをどうやって確保するかというのは、これからも真剣に日本は国家として議論しなければいけないことだと思っています。
 他方で、地域及び世界が無制限の軍拡スパイラルの中に陥るということは決して誰のためにもならないと思いますので、そこは、常にある種の制限、落ち着きどころというのを見付けていくための努力が必要だろうと思います。
 日本にはこれまでの世界にその歴史の中で培われてきた軍備管理とか軍縮に関するノウハウ、知見というものが蓄積しているとは思いますけれども、他方で、世界が二極から多極に変わったということで、今までと同じようにはできないという難しさもあると。でも、さはさりながら、やはりアジアを見渡しても日本ほどこの面で地域をリードしていける国というのは私は存在しないと思いますので、やはりヨーロッパとかカナダであるとか、そういう地域外の国とも協力しながらアジアにおける対話外交、あるいは将来における軍備管理・軍縮がどうあるべきかということの議論をリードしていくべきだと思っています。
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田中均#23
○参考人(田中均君) それはすぐれて日本をどういう国にしたいかということにかかってくると思うんですね。日本の安全を担保する、とにかくアメリカの後ろにくっついていれば日本の安全は担保される、当然その核の抑止力なんていうのはアメリカに依存するよりほかないわけだから。したがって、アメリカの喜ぶことをするということの延長として、まさにインド太平洋で日本が武器輸出をやってフィリピンとかいろんな国の軍事力の向上を助けるということは、それはアメリカは喜ぶでしょう。
 だけど、本当にそれでいいですかということが問われているわけで、私は、日本にとってベストな形は、例えばサッチャーの英国のような形にすることだと。それはどういうことかというと、イギリスはアメリカに対する影響力が最も大きな国だった、最も大きな国だった。だから、要は、日本がアメリカに影響力を行使できる国にするためにはどうするかという議論だと思うんですね。
 皆さん、日本という国はアメリカに追随してきたと思われるかもしれないけど、全くそうじゃないんですよ。例えばイランの話だって、イランの核交渉が始まったのは一九九〇年代の終わり、あっ、二〇〇〇年代の初めなんですが、あのときにヨーロッパに頼まれたんですね。EU3がイランと核交渉したいのでアメリカの了承を取り付けるのを助けてくれないかと言われた。当時はパウエル国務長官で、ネオコンの気違いみたいな人が国務次官をやっていた。私はリチャード・アーミテージという人に頼んで、何とかアメリカはヨーロッパのイランに対する交渉をうんと言ってくれないかということで、結果的にはうんと言ってもらったんですよ。そこからEUとの交渉が始まり、それがそのP5とドイツ、あのときに僕は日本は入るべきだったと思いますけどね、P5とドイツの交渉になり核合意ができた。アメリカは抜けていたわけですね。まさに、そのときに日本としての役割は発揮したんですよ。
 それから、中国との国交だってそうなんですよ。アメリカの言うとおりはやらなかったわけだし、正常化した後、日本はまさに田中角栄さんが切り開いた。中国の応援だったわけですね。ですから、あっという間に日本は、一九七八年に円借款を始めて、圧倒的に中国に対する最大の援助国になったんですよ。私たち、アメリカからもう文句言われた、日本の円借款、ひも付きだと、だから日本の経済を助けるためにやっているじゃないかと、猛烈に文句言われた。
 それから、天安門事件があったのが一九八九年ですが、その後まさに制裁をしたんですね。その制裁を破ったというか、真っ先に総理大臣、海部さんを中国にやったのは日本だった。それは文句を言われましたよ。アメリカが一貫して日本に対して持ってきた、もっと人権の配慮があっていいんじゃないかということを言っていた。
 あのときに日本はサミットにも入れようとしたんですね、中国をね。だけど、それは、要するに、ヨーロッパ並びにアメリカにロシアを入れるべきだという話になって、結果的にはロシアが入ったわけですけどね。
 だから、私は、アメリカに追随してきたわけじゃないと、これまでだってね。世の中にそれを見せることはなかったけど、やっぱりアメリカに対しててこを持つ、アメリカに対して影響力を強めるということが日本の外交にとって必要じゃないかと。アメリカが喜ぶことだけやっているのが日本の外交なんですかということが事の本質だと思うんですよ。最も安易な道を取れば、それは戦闘機を百機買い、それはアメリカの装備品を買って、トランプが喜ぶ姿を見ていればそれでいいと。で、私はそれでいいとは思いません。
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鈴木宗男#24
○会長(鈴木宗男君) ありがとうございました。
 次に御質疑のある方。
 原田秀一さん。
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原田秀一#25
○原田秀一君 国民民主党・新緑風会の原田秀一です。
 参考人の皆様、大変御示唆に富んだお話をお聞かせいただきまして、ありがとうございました。
 これまで日本外交は、自由、民主主義、法の支配といった普遍的価値の共有を国際協調の基盤としてきました。しかし、参考人の皆様がおっしゃられるように、西側諸国は、米国の自国主義、自国第一主義への転換により、価値の共有の危機に直面しております。欧米諸国は米国の依存度を減らすといったデリスキングの動きも見られておりますが、日本は欧米諸国とは異なって、日米安保という二国間条約の下、米国の核の抑止力に圧倒的に依存しているのが現実であります。
 そこで、参考人の皆様は、そういった中で、そうはいっても日本の自立度を増す必要がある、とりわけアジアの外交を深化すべきという御見解をお持ちと認識をしております。そこで、具体的に日本はアジアとどういった外交を行って、あるいはアジアのどういった国々と深く付き合うことによって、その各国との間でどういった成果物を得ていくかということで自立度を増す、あるいはアメリカに対してのバーゲニングパワーを持つという観点から有効かについて、御三方の参考人の皆様の御意見をいただければと思います。
 田中参考人の方からは、CPTPPの拡大といったところで御回答もいただいておりますので、もし補足があればという形で御回答をいただければ幸いでございます。
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神保謙#26
○参考人(神保謙君) ありがとうございます。
 価値の共有、法の支配が極めて維持することが難しくなっている時代背景という前提ではありますけれども、日本にとって法の支配というのは、私は国益そのものと考えています。法の支配、それに基づく国際制度、多国間制度というものがなければ、世界の市場へのアクセス、重要な資源の確保、そしてシーレーンの安定、どれも維持することが難しいと。いろいろその大国が自国中心主義を振りかざしている世界にあったとしても、日本はその法の支配とマルチラテラリズムの中に生きているということはしっかりと守っていかなければいけないということだと思います。
 さはさりながら、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなる中で、先ほど来議論されております抑止力の関係性というのは常にアップデートしていかなければこれはいけないと。その中で、日本は、まあプランBといいますか、アメリカ以外の手段によってこの抑止力を達成できるかというのが極めて難しいとするならば、アメリカがもしその価値が揺らいだとしても、そのアメリカに手綱を付けて抑止力を我々の国益にとって優位な形で維持し続けなければいけないというのは、これはリアリズムの世界なんだと思います。
 ただし、その中で、価値を共有する国々との関係性というものを高めるということは矛盾なく進めていくということが日本にとっては非常に重要なポイントで、安全とかそして生存という点においては、これはもう変えられない制度、立場というものがあるにしても、でも、それでも日本が目指すべき、まさに自由で開かれたその地域制度や市場というものをどうやって確立するか、それがおっしゃったそのアジア政策の意味だというふうに思いますので、田中参考人のおっしゃられたCPTPPは大変重要な二十一世紀の開かれたアジアの制度、経済制度をつくるというときの大きなてこで、しかもこれは中国が参加したがっているという意味においても非常に大きなてこになると思いますし、同時に、岩間参考人がおっしゃられた安全保障上における信頼醸成の制度化づくり、これも非常に重要な視点だと思い、強く賛同する次第です。
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岩間陽子#27
○参考人(岩間陽子君) ありがとうございます。
 既にこの私の発表の中で西太平洋連合というキーワードを出しましたけれども、名称はいろいろあると思うんですけれども、やはり、CPTPPは一つのきっかけになると思いますが、経済にとどまらない社会的、人的なつながりを特にASEAN諸国を中心として強化していくという必要があると思います。
 日本にとって、この経済が成長していて、かつ人口がまだ非常に若いリージョンが近くにあるということは物すごく大きな資産であると思います。これらの国々と良好な関係を持って、これまで以上に人の移動がうまくいくように、自由に移動できるような、場合によっては、日本の人がこれらの国々で学び、あるいはこれらの国々の学生に来てもらい、そして日本で働いてもらえるような社会を実現していく。これを実現していくためには、やはりそれぞれの国の国家の行政のレベル、そして法の支配の質というものを日本と共に上げていくということが、最終的にはやはり国の連結をより容易にすることだと思うんですよね。
 そういう意味で、私は、やはり貿易だけでなくて人の交流というものを今まで以上に重視して円滑化していく、そこでやはり人が自由に動き、学び、働けるような行政的な前提条件を整えていく、その過程においてそれぞれの国家のやはり行政や法の支配というものが上がってくるんだろうと思いますので、私はこれまでの日本のアジア政策というのは決して間違っていなかったと思いますけれども、それはやはり、東南アジアが成長してきて非常に今豊かな国になりつつあるという現実に、それをやはり新たなレベルに進めていくような創造的な外交をしていっていただければと思います。
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田中均#28
○参考人(田中均君) 私自身は、余りその法の支配とか自由で開かれたという言葉が好きじゃないわけで、アメリカのような国を前にして、いや、あなた方、法の支配なんてないんじゃないかと、トランプ自身が国際法は自分の基準じゃないということを公言しているときに、余りそれを強調しない方がいいと僕は思うんですね。
 ですから、日本の戦略的利益は、それは北朝鮮との関係でも対話はしなきゃいけない、ロシアもそうですよ。それが、いや、かくかくこういうことをしたから駄目だといって門戸を閉ざすことの愚かさみたいなものがあるんですよね。
 だから、その法の支配といって大上段に振りかぶってやったら物事は動いていかない。それは、東南アジアの諸国に十分な法の支配があるか、そんなのないですよ、それは住んでみられると分かるけどね。だけど、それを捨てるのは良くないと思う。
 なおかつ、誤解しないでほしいんだけど、私はアメリカとの関係を切れと申し上げているわけではない。アメリカとの関係は切れない。アメリカのその核の傘に依存せざるを得ない、アメリカのマーケットに依存しなければいけない、だけど、アメリカとの関係を維持していて、かつ日本が影響力を持つためにはどういうてこをつくるか。それは、アジアとの関係を強化する。アジアとの関係の肝のところは、だって、ASEANの国とか、それは韓国とかいろんな国に行って意見交換されると分かるけど、彼らは困っているんですよ、アメリカのような国に依存してきたけど、それは駄目だな、だって黙っていりゃ中国に圧倒的に巻き込まれちゃうと。だから日本何とかしてくれよというところで日本は勝負をすべきだ、日本にはまだその力があるというふうに思うんですね。
 だから、具体的に申し上げれば、一つは先ほど岩間さんが言った信頼醸成。このために、だって、敵国同士の間でも信頼醸成は成り立つんですよ。ソ連とアメリカの間で信頼醸成の枠組みというのをつくっていたわけで、当然、戦争をしたくないのに偶発的な衝突をするなんてことはあり得ないんですよ。だから、ホットラインとかその訓練計画とかもろもろのことをきちんと透明にするような枠組みをつくっておかなきゃいけない。
 それから、さっき申し上げた貿易。貿易を二国間でやるのはなかなかしんどいな、中国のような国とね。だから、マルチで、CPTPP、CPTPPというのは我々は中国を入れてやる方だから、中国に対していろんな注文を付けられるんですよ。だから、それを活用すべきだ。それ以外にも、アメリカが嫌いな気候変動とかエネルギーとかもろもろのことについて対話の場を従来はつくっていたんですよ。
 ところが、インド太平洋、とにかく戦略だ、とにかく自由で開かれた云々云々ということで、政治の力って強いんですよ、やっぱり。それで、要するに中国に対抗していくんだということになった途端に、中国を入れて何かをやるということに対する非常に強い拒否感が出てきた。その拒否感を破るのは政治しかないんですよ。官僚が、いや、中国とやろうなんて言えないですよ。だから、いろんなメニューはありますよ、だからそのメニューをやっぱり進めていくということが政治の役割なんじゃないかと思います。
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鈴木宗男#29
○会長(鈴木宗男君) 次に、窪田哲也さん。
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