憲法調査会基本的人権の保障に関する調査小委員会

2004-02-19 衆議院 全105発言

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会議録情報#0
本小委員会は平成十六年一月二十二日(木曜日)憲法調査会において、設置することに決した。
一月二十二日
 本小委員は会長の指名で、次のとおり選任された。
      小野 晋也君    倉田 雅年君
      棚橋 泰文君    平井 卓也君
      船田  元君    古屋 圭司君
      松野 博一君    園田 康博君
      辻   惠君    村越 祐民君
      山花 郁夫君    笠  浩史君
      太田 昭宏君    山口 富男君
      土井たか子君
一月二十二日
 山花郁夫君が会長の指名で、小委員長に選任された。
平成十六年二月十九日(木曜日)
    午前九時一分開議
 出席小委員
   小委員長 山花 郁夫君
      小野 晋也君    倉田 雅年君
      棚橋 泰文君    平井 卓也君
      船田  元君    古屋 圭司君
      松野 博一君    園田 康博君
      辻   惠君    村越 祐民君
      笠  浩史君    太田 昭宏君
      山口 富男君    土井たか子君
    …………………………………
   憲法調査会会長      中山 太郎君
   憲法調査会会長代理    仙谷 由人君
   参考人
   (中央大学(法科大学院開設準備室)教授)     内野 正幸君
   衆議院憲法調査会事務局長 内田 正文君
    —————————————
二月十九日
 小委員土井たか子君同日委員辞任につき、その補欠として土井たか子君が会長の指名で小委員に選任された。
    —————————————
本日の会議に付した案件
 基本的人権の保障に関する件(法の下の平等)
     ————◇—————
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山花郁夫#1
○山花小委員長 これより会議を開きます。
 この際、一言ごあいさつを申し上げます。
 先般、小委員長に選任されました山花郁夫でございます。
 小委員の皆様の御協力をいただきまして、公正円満な運営に努めてまいりたいと存じますので、何とぞよろしくお願い申し上げます。
 基本的人権の保障に関する件、特に法の下の平等について調査を進めます。
 本日は、参考人として中央大学教授内野正幸君に御出席をいただいております。
 この際、参考人に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
 本日の議事の順序について申し上げます。
 まず、内野参考人から法の下の平等、特に一票の格差の問題、非嫡出子相続分等の平等原則に関する重要問題について、企業と人権に関する議論を含め御意見を四十分以内でお述べいただき、その後、小委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、発言する際はその都度小委員長の許可を得ることとなっております。また、参考人は小委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 御発言は着席のままでお願いいたします。
 それでは、内野参考人、お願いいたします。
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内野正幸#2
○内野参考人 御紹介いただきました内野正幸でございます。
 お配りしましたもののうち、三枚とじで、その1、その2、その3となっております「〔改訂版レジュメ〕現憲法下で差別撤廃策の推進を」というものに即しまして、これをアレンジした形で話していきたいと思います。
 先ほどの御紹介の中で一票の格差の問題などなどを含むという御指摘がありましたけれども、これはあくまでも含むということでございまして、それを中心とするという趣旨ではございませんので、あらかじめ申し上げておきます。
 それで、このレジュメその1の「1、はじめに」というところですけれども、憲法改正を主張するよりも現憲法下でさまざまな施策を充実化させよというところであります。
 (1)です。伝統的に日本社会は、人々がいわば異質な少数者に対して偏見を抱きやすい同質性社会の傾向があります。単一民族社会という不正確な言葉が使われることもあるわけですけれども、いずれにしましても、同質性を重んじる傾向があると思います。また、そこでは、不利な立場の人々、いわば社会的弱者ですが、そういう人たちに対する配慮の不足というものも感じられるわけです。
 そこで、社会的弱者に優しい社会とか、あるいは社会的弱者の苦しみを最小化することを目指す社会、あるいは社会的弱者の人たちがより快適に暮らせるような社会を築き上げることに向けて、国や地方自治体に啓発を含めいろいろな責務があると思います。その中では、人々が多かれ少なかれ抱きがちな差別意識を克服していくという課題も重要になってくると思います。
 なお、平等論の枠を超えて言いますと、例えば過疎地における医師不足などの問題も重大だと思います。
 (2)ですが、人権の領域では、プライバシーの権利などの明文化ということも含めまして、憲法改正の必要性は当面少ないと考えております。現在の日本国憲法の解釈によってプライバシーの権利などを引き出すことができるわけでして、むしろ、現在の憲法のもとで、国際人権諸条約の国内実施も含めて、法令、その充実化あるいは行政措置などを通じて人権保障や差別撤廃を推進していくという課題が重要だと思います。
 なお、「人権擁護法案」というやや厚めの資料も用意してありますが、これについては後に述べます。また、学校教育関係にかかわる平等や差別の諸問題については省略いたします。さらに、外国人の権利や国籍にかかわる問題につきましても、深入りしないことにいたします。
 そこで、(3)典型的な差別禁止事由というところです。
 きょうお配りした資料で、一枚の紙でいろいろな条文が掲げられているものがあります。その最初に日本国憲法の十四条が引かれていますが、その第一項では、「人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、」「差別されない。」とあります。この場合の人種を初めとする差別禁止事由の列挙は例示的なものだと思います。
 憲法四十四条というのがその下に引かれていますけれども、これは、「両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。」と本文がなっておりまして、そのただし書きで差別禁止事由が列挙されています。これもやはり例示的なものだと思います。
 そこに書きましたように、部落出身者であるということは社会的身分に含まれるということです。
 それから、人種差別撤廃条約の抜粋の条文もこの資料で用意しましたけれども、その第一条で、この条約で「「人種差別」とは、人種、皮膚の色、世系」、「世系」という国語辞典に余り載っていない日本語なんですけれども、「世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、」とあります。ここで言う「世系」という中にも、部落出身者であるということを含ませるべきではないかと考えます。なお、このような主張は、部落を人種と同列に扱おうとする趣旨に基づくものではありません。
 なお、そこに書きましたけれども、住宅ローン拒否の事件に関する東京地裁の平成十三年の判決では、この「世系」を人種に準じて狭く解釈しています。
 いずれにしましても、差別を受けやすい人たちとしては、部落住民、アイヌ民族、在日定住韓国・朝鮮人を初めいろいろな在日外国人、心身障害者、さらに女性、同性愛者などの性的マイノリティー、それからハンセン病などの一定の病気の(元)患者、さらには宗教的少数者というものが挙げられますし、そのほかに刑事事件の関係者、被疑者とかあるいは出所者などです。さらには、高齢者などなどが挙げられます。
 なお、障害者の害という漢字を気にする人もいるようで、平仮名でがいと書いて障がいのある人でもいいわけですけれども、広くは、排せつ機能の障がいとか顔面、顔の障がいなどなど、いろいろなタイプの人を含むと思われます。
 そこで、次の項目、「2、憲法の「平等」条項の読み方」というところです。
 先ほど条文を確認しました憲法十四条や四十四条ただし書きによる差別禁止というのは、絶対的なものではありませんで、合理的な区別を許すものであります。
 四十四条ただし書きに関するちょっとした説明ですけれども、供託金を出せなければ立候補できないとしても、財産による差別として違憲とは言えないわけです。また、机の上の話ですけれども、仮に、初歩的な政治的教養を試す試験にあらかじめ合格していなければ立候補できないという仕組みを将来設けたとしても、それは教育による差別として違憲であるということにはならないと思います。
 次に、その2というところですけれども、(2)で、憲法十四条が原則的に禁止しております差別というのは、差別的取り扱いであるというふうに考えるべきだと思います。差別的取り扱いといいますのは、いろいろな施設を利用させないことなどなど各種のタイプのものを含みますけれども、いずれにしましても、差別意識や差別的表現を憲法十四条が差別として禁止しているというわけではないというふうに確認しておきたいと思うわけです。
 それで、(3)としまして、差別的表現について言及しておきました。不特定多数の人たちのグループに対する差別的表現、例えばアイヌ民族は何とかだという発言、そのような差別的表現に対しまして、民事救済とかあるいは行政的対応というのは認められるわけですけれども、しかし、刑罰つきの法的規制を行うことは慎重にすべきだと考えます。
 行政的対応という場合、従来からあるものとしまして、地方法務局による勧告など、例えば、このような差別ビラまきはしないようにとする勧告、そういうタイプの勧告などのほかに、人権擁護法案における人権委員会の特別救済手続も含まれるわけです。
 なお、確認のためですけれども、特定の個人、Aさん、Bさんに対する差別的表現に対しては、現行法上も処罰可能です。侮辱罪や名誉毀損罪になるわけです。
 それで、この差別的表現に関しましては、人種差別撤廃条約の四条というのがありまして、これは条文が資料で確認できると思うのですけれども、この第四条の中でも特に(a)、さらには(b)です。この条文資料の上の左の方にあるんですけれども、四条の(a)によりますと、「人種的優越又は憎悪に基づく思想のあらゆる流布、」というふうになっておりまして、こういうものについて法律で処罰すべき犯罪であることを宣言せよとなっているわけです。日本政府はこの条約の四条を留保したわけですけれども、私の立場からいいましても、このような留保は原則的に支持できるわけです。
 と申しますのも、人種差別撤廃条約の四条の(a)は、広い領域におきまして差別的表現やそれに類するものに刑罰を求めているわけでして、表現の自由という見地から見て、規制が行き過ぎているのではないかと思うからであります。
 次に、3としまして、「形式的平等と実質的平等」というところであります。
 レジュメには「(その定義は別紙)」と書いてありますけれども、「法の下の平等」というタイトルの縦書きのプリントがあるんですけれども、その中の十行目近く、「第三に、」というところですけれども、平等の観念には二つあると。形式的平等というのは、諸個人をその事実上の違いにかかわらず一律に同等に扱うべきことを求めるものだと。それから、実質的平等というのは、事実上劣った地位にある人をより有利に扱うことにより結果を平等なものに近づけようとするものであるということです。
 それで、憲法十四条は、実質的平等ではなくて、形式的平等を原則的に命じるものである。その際に、合理的区別を例外としているということであります。
 その2というレジュメの真ん中あたりの(a)というところですけれども、衆議院では議員定数不均衡を格差二対一内におさめることが憲法上要請されるにしましても、参議院につきましてはそこまでは言えないだろうと考えております。と申しますのも、半数改選に伴います偶数選出の要請がありますし、また、都道府県別選挙区というのは、これは憲法が要請しているものではありませんけれども、許容しているものだと思われまして、そういう点を考慮する必要があるからであります。
 それで、政治的平等としましては、ほかに選挙資格や投票の機会の保障の点で現行制度をもう少し再点検する余地があるのではないかと思います。
 次に、(b)ですけれども、いわゆる非嫡出子、婚外子というふうに呼ぶこともできるんですけれども、婚外子への差別は違憲であるというふうに書きました。とりわけ、最高裁で相続分に関する非嫡出子差別の事件の判決が出ていまして、そこでは依然として少数意見にとどまっているわけですが。
 他方、非嫡出子とは別に、選択的夫婦別姓ですけれども、これは憲法十四条が要請するものであるとは考えておりません。立法政策的に望ましいものとして、その実現、推進を図るべきだと思うわけです。
 それから、(c)としまして、性的指向による差別です。この性的指向というのは、シというのを志すという字ではなくて指という字で書くということなんですけれども、同性愛者に対する差別、あるいは、ここには書きませんでしたけれども、両性愛、同性も異性も愛するという両性愛者というのもこの性的指向でカバーできることだと思います。同性愛者に対しては、施設利用などの点で差別があってはいけないのは当然であります。
 最近話題になっておりますのは、同性愛者同士の結婚であります。あるいは結婚に準じるパートナーシップの形成です。その場合、条文ですと、日本国憲法二十四条で、その第一項ですけれども、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」というところで、「両性の合意」という言葉がひっかかるわけです。文理解釈いたしますと、憲法二十四条一項を改正することなしには同性愛者の結婚は認められないというふうになりそうですけれども、その点の解釈については議論のあるところだと思います。
 最近の話題としましては、そこに書きましたように、昨年十一月のアメリカ合衆国のマサチューセッツ州最高裁判決が、同性愛者に対する結婚を認めるべし、認めないのは平等違反であるとしたわけでして、それに対するブッシュ大統領の批判的反応などのいきさつがあるわけです。
 次に、(2)です。立法や行政の施策によって、いわゆる積極的差別是正措置、アファーマティブアクション、あるいは似たような意味でポジティブアクションと呼ばれますけれども、そういうものも含めまして、今後、実質的平等を推進すべきだと思うわけです。
 それで、そこに書きましたように、障害者のためのバリアフリーなどであります。ここでは具体的な中身をお話しする余裕はありませんけれども、最近の動きとしまして、改正公職選挙法による障害者の投票機会の保障とか、あるいは性同一性障害者特例法、それから身体障害者補助犬法というのが注目されるわけであります。
 ポジティブアクションといいますと、さまざまな分野での女性の積極登用というのが今後重要な課題になってくると思います。その中には女性の政治進出を促進するための政策も含まれるわけでして、幾つかのヨーロッパ諸国あるいはアジアの幾つかの国で女性が積極的に政治家として進出できるための枠組みづくりが行われていますけれども、今後日本でそのような政策をとるべきかどうかは議論のあるところだと思うわけです。
 それで、女性ということですと、次の4という項目に入るわけです。「女性差別(ジェンダー平等)」と書きました。
 まず、(1)ですけれども、憲法十四条などは性別による差別を禁止しているわけです。その判断基準につきましては、縦書きの別紙の一番最後の三行に書いてあるのですけれども、男女の肉体的・生理的条件の違いに由来する性差別は合憲であるが、男は仕事、女は家庭といった男女の役割分担についての固定的な観念、ないしは女性の地位についての偏見、男尊女卑の思想に由来するものは違憲となると言えると思います。
 関連しまして、憲法二十四条には、「夫婦が同等の権利」とか、あるいは「両性の本質的平等」という言葉があります。
 女性差別に関しましては、女子差別撤廃条約の一条から六条という最初の部分をプリントで示したわけですけれども、その中では、そこに書きましたように、特に五条による男女役割分担慣行の撤廃ということが注目されるべきだと思います。先ほど触れましたポジティブアクションのことは、条約の第四条で、暫定的な特別措置という形で規定されているわけです。
 このような点も含めまして、最近のスローガンとなっております男女共同参画社会を築き上げていくということが今後の重要な課題になると思うわけです。
 次に、レジュメのその3というところですが、(2)としまして、女性天皇についてであります。
 男系か女系かという問題もあるわけですが、男系であれ女系であれ、女性天皇を認めるかどうかは立法政策の問題であるというふうに私は考えております。言いかえますと、女性天皇を認めなくても憲法十四条違反にはならないと解釈しております。と申しますのも、世襲の象徴天皇制そのものが、生まれによる差別の禁止という原則に対する大きな例外を憲法が明文で定めたものだからであります。
 次に、(3)としまして、一定のスポーツ競技や刑務所などの男女別は合理的な区別として許容されると思います。あるいは、国公立の女子大や女子校が合理的な区別としてどこまで許容できるかは議論のあるところだと思います。
 次に、(4)ですけれども、間接差別という言葉が最近時々話題になっておりますけれども、例えば、世帯主でない者、非世帯主に対して劣った扱いをする。こういう場合に、事実上の傾向として、男性よりも女性の方が、夫よりも妻の方が劣った扱いをされる結果をもたらす可能性が高いわけですけれども、このような間接差別に対する規制というのも今後考えていく必要があるわけでして、枠組みとしましては、合理的理由なく形式的平等を侵してはならないというこれまでの枠組みのもとで、間接差別に対する規制は理屈の上では可能でありますが、何をもって間接差別と見るかの基準づくりは今後の課題だと思います。
 最後に、5という項目で、「民間社会における平等と差別」というところであります。
 企業関係の問題は、男女雇用機会均等法とか労働基準法などの法律によって、少し、あるいはかなり解決されつつあるわけです。少なくとも、法的側面においては解決に向かっているわけです。
 最近の話題としましては、住友電工男女差別訴訟で、大阪高裁で画期的な和解が行われたということであります。これは、仮に判決という形式をとったならば、このような画期的な内容のことは書けなかったかもしれないと思われるほど、男女差別撤廃に向かってのいい方向を裁判所が示したものとして評価できるわけです。
 関連しまして、企業の社会的責任ということが最近よく言われますけれども、環境保護の責任などのほかに、企業内で男女平等の推進あるいは女性の積極登用を行うということも、企業にとって中長期的に見てプラスになることだと思うわけです。その意味で、企業の社会的責任ということに関連づけられると思います。
 一般的に言いまして、民間社会における差別につきましては、公序良俗違反に関する民法九十条や不法行為に関する民法七百九条などを媒介にしまして憲法の人権規定を私人間へ間接適用することによって、理屈の上では十分対応できるわけです。その場合、民間における差別は憲法十四条違反とはならず、憲法十四条の精神に照らして違法になり得るわけです。
 ただ、三菱樹脂事件に関する最高裁判決によりますと、私的な支配関係におきましては、平等に対する具体的な侵害またはそのおそれがあり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度を超えるときに違法となり得るとされるにとどまるわけです。この言い方は漠然とした抽象論です。
 思いますに、ある人たちの人格や地位を低く見る内容の差別、人種差別とか部落差別などですけれども、このような種類の差別というのは、民間のお店とか宿とか住居、その他の施設でも厳しく禁止されるというルールづくりが必要になると思うわけです。確かに、差別禁止あるいは排除禁止という要請と、ほかのお客さんたちへの配慮などの民間施設側の営業的利益というものが衝突するということがよくあるわけでして、一般論としては、この二つのものとの間でバランスをとれということになるかもしれませんけれども、しかし、その場合であっても、差別禁止の要請をずっと重視するべきだと思うわけです。
 そこで、「なお、」として旅館業法五条に触れてありますけれども、そこでは、宿泊を拒める場合の一つとして、「宿泊しようとする者が」「風紀を乱す行為をする虞があると認められるとき。」が挙げられています。仮に旅館業者が、この条項に基づいて、日本に来た外国人とかあるいは知的障害者とか同性愛者などなどの宿泊を拒むということがあったとしましたら、これは憲法十四条の精神に照らして違法になるわけです。また、別の言い方をしますと、この旅館業法の五条も、憲法十四条の精神に沿うように解釈されるべきだと思うわけです。
 次に、(2)で、人権擁護法案というところであります。
 これは、おととしの三月国会に提出されながらも、審査未了でいわば廃案になった扱いだと思うんですけれども、その見直しや再提出を検討すべきだと思うわけです。先ほど言いましたように、民間社会における平等や差別というのは、憲法の人権規定を私人間に間接適用することによって理屈の上では対応できるわけですけれども、しかし、人種差別などが厳しく禁止されるというルールづくりのために、そのための特別の法律を整備するということも必要なのではないかというふうに考えるわけです。その手がかりとしまして人権擁護法案というものが参考になるわけです。この法案は、公の機関も民間の団体も適用対象になっております。
 お配りしましたやや分厚い資料で一つページをめくっていただきますと、第二条とか第三条というのが出てきます。第二条の五項ですけれども、この法律案における差別禁止事由の中では、その終わりに「性的指向」という言葉が出てくるわけで、この点は評価できると思います。
 それで、三条で、これこれの人権侵害をしてはならないということで、その第一項で、「次に掲げる不当な差別的取扱い」となっています。先ほど申しましたように、差別とは差別的取り扱いであるということをこの文脈でも確認してよかろうかと思います。
 なお、人権擁護法案の第二条の五項に差別禁止事由が列挙されていますけれども、これにつきましても、「その他の事由」という言葉をその後に入れるのも一案だと思います。
 なお、人権擁護法案については、人権委員会の独立性などの問題があるわけです。
また、差別禁止法などの名称の法律案を新たに準備するということも検討されてよかろうかと思います。
 最後に、(3)で、最近の判決としまして、宝石店外国人拒否に関する静岡地裁浜松支部の平成十一年十月十二日判決、それから、小樽での外国人入浴拒否に関する札幌地裁平成十四年十一月十一日判決などが注目されますけれども、時間の関係上、その内容に立ち入るのは差し控えまして、以上で私からの陳述を終えたいと思います。拍手
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山花郁夫#3
○山花小委員長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
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山花郁夫#4
○山花小委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野晋也君。
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小野晋也#5
○小野小委員 内野参考人におかれましては、平等と差別という観点からの人権問題について、いろいろな例を挙げながらの御陳述、ありがとうございました。
 まず、ちょっとお尋ねを申し上げたいのは、この平等と差別という問題を少し超える話になろうかとは思いますが、憲法第三章の部分における国民の権利と義務についてということでの項目がずっと挙がるわけであります。
 内野参考人は、冒頭に、憲法改正の必要性よりもその運用に努力すべきであるというふうなことをおっしゃっておられるわけでありますが、私ども、いろいろな議論をする中において、憲法全体として、権利規定は非常に多いけれども、義務規定においては、例えば納税、勤労、そして教育を受けさせる義務等々と、非常にその数が少ない。これはいかにもバランスを欠いたものになっているのではないかというような指摘があるわけですね。加えて、最近の世相を見ておりますときに、社会的秩序を守るということにおいての義務的、また責任感を伴うような観念が国民の中から薄らいできているのではないかというような指摘も多々なされているわけであります。
 この点、憲法における権利規定と義務規定、このバランスの問題についてはいかなる御見解をお持ちか、お尋ねしたいと思います。
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内野正幸#6
○内野参考人 御指摘の意味はよくわかるところでありますけれども、そもそも憲法とは何かという場合に、歴史的に見ても今日的に見ても、公的機関による侵害に対して人々の人権を保障する、いわば国家権力を制限することによって人々の権利を保障するというのが憲法の最も重要な任務であると考えますので、そのような憲法のそもそもの任務に照らしますと、権利規定が非常に多くて国民の義務の規定が非常に少なくなるというのは、いわば自然の成り行きであるというふうに考えます。
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小野晋也#7
○小野小委員 その点に関しまして、私自身の個人的見解ということになるかもしれませんが、国民側から政府に対する権限を制約する形での契約を結んだものである、これは歴史的に見るとそういうことであるかもしれませんが、私はむしろ、今日的な意味から見るならば、政府と国民が相互にお互いのなすべきことを規定し合う契約というふうにみなす方がうまく社会が運営されるのではなかろうか、こんな見解を持っているものでございます。
 まあこれは見解の違いだといえばそれだけのことになるわけでございますが、内野参考人、そういう考え方に対していかがお考えか、御教示いただきたいと思います。
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内野正幸#8
○内野参考人 今の質問に対して今すぐきれいに反応するような答えができる自信はないのですけれども、社会契約説のような発想でいった場合であっても、政府の側の権限を制限するというタイプの契約だというのが憲法に対する私の理解でありまして、御指摘のような点は、一般の人々に対してさまざまな法典でどのようなメッセージを発すべきかという文脈では、有意義な指摘が含まれていたと感じます。
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小野晋也#9
○小野小委員 質問を移らせていただきますが、平等という問題を考える場合、そして、その差別救済という問題を考える場合、そこには一つの価値観が反映されないと、実際の働きを行うことができないと思いますね。特に、先ほどの陳述の中に弱者という言葉が出ておりますが、この弱者ということが出てくるということについては、その強弱の判定の物差しが存在するということになろうかと思います。
 これは一体、社会的にどういうものをもってその強弱というものを判定する物差しと認定することが可能なのか。そしてまた、公的機関がその物差しを人に当てることによってこの人は弱者であると認定することは、これはかえって社会的差別をそこで実行しているということになるのではなかろうかという気持ちがいたしますが、御見解、いかがでございましょうか。
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内野正幸#10
○内野参考人 私は、陳述の中では、不利な立場の人々、いわば社会的弱者という言い方をしまして、私自身も弱者という言葉を積極的に使おうとは思っておりません。便宜上、このような短い言葉を使ったわけであります。
 それで、強い、弱いという言い方を、有利、不利というふうに言いかえましても、依然としてどのような判定基準なのかということが問われると思うわけです。ですから、仮に不利な立場の人々というふうに私が言いかえましても、依然として何をもって不利だというふうに判定するのかというふうに質問され得るわけです。
 これは、一概には言えませんで、さまざまな種類の差別禁止事由に即して個別に見ていくしかないと思います。
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小野晋也#11
○小野小委員 またちょっと次の課題に移らせていただきますが、選挙区の違憲状態の問題についてもお触れになられました。
 実は、御存じのとおり、もうこの夏に参議院の選挙が控えておりますが、参議院における選挙区選挙の五倍を超える有権者数の差は、違憲状態に近いのではないかという御意見が各界から出され、最高裁の判決においても、違憲ではないとしたものの、今回それで施行される、そのまま施行されるならば違憲判決も出すかもしれないというようなこともその意見の中に含まれていたということもお伺いをいたします。
 先生の御意見は、これは、参議院においてはそうではないということをおっしゃっておられるのでありますが、もう少しその点、細かくお聞かせをいただきたいと思います。
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内野正幸#12
○内野参考人 参議院につきましては、どこら辺から違憲と見るかについての判定基準は、私は述べなかったわけですが、正直言って迷っているところであります。
 一つ参考になりますのが、憲法学者の佐藤功氏の意見や元最高裁裁判官の園部逸夫氏の意見でありまして、都道府県別選挙区を前提とした場合に、人口の最も少ない選挙区との比較というところでは相当程度の格差は許さざるを得ないであろうと。つまり、一人区といいますか、両方合わせて二人区といいますか、一番小さいところをベースにした場合には、それとの格差はある程度まで許さざるを得ないであろうと。しかし、二人区といいますか四人区といいますか、それとの関係の場合ですと、三倍か四倍に抑えなければいけないということは憲法上要請されるだろうというふうに考えております。その場合でも、二倍に抑えるというところまでは要請されないと思います。
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小野晋也#13
○小野小委員 それでは、これで終わります。ありがとうございました。
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山花郁夫#14
○山花小委員長 次に、笠浩史君。
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笠浩史#15
○笠小委員 本日はどうも、内野参考人、御苦労さまです。貴重な御意見、ありがとうございました。
 民主党の笠浩史でございます。
 先生の御意見の中で、憲法十四条について、平等についてどう考えるべきかという意見陳述がなされたわけでございます。この十四条が要求しているのは形式的な平等である、実質的な平等についてはまさに立法政策に期待されているという見解を先ほどレジュメで示されておりますけれども、この実質的な平等をどう確保していくかということが、もちろん立法府であるこの国会の最大の役割であるというふうに理解をしたんです。
 そこでお尋ねをしたいことは、私は、二十一世紀のこの国の姿というものを考えていくときに、やはり官から民へ、そして中央から地方へという形に移行して、小さな政府の実現を図らなければいけないと思っております。そのときには、当然ながら自己責任というものがこれまで以上に伴ってくる中で、やはり結果の不平等というものをどうしても今まで以上に許容せざるを得ないと考えているものでございますけれども、この点については、十四条のもとの平等の概念とどのように憲法上関連をしてくるのか、お聞かせいただければと思います。
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内野正幸#16
○内野参考人 自己責任という発想が強まってくることに伴って、結果の不平等がふえてくるとしましても、憲法十四条違反にはなりにくいだろうと考えております。もたらされた結果の不平等は、立法や行政の力で政策的に解決を図っていくべきものだと思います。
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笠浩史#17
○笠小委員 そして、先生先ほど、この十四条第一項の五項目、人種とか信条、この五項目に限定されるものではない、例示的なものであるということをおっしゃったわけですけれども、今日、平等に関するいろんな概念というものが大変ふえてきている、そういったことでいろんな訴訟等も起こっているわけでございますけれども、例えばこれについて限定的にとらえる見方というものも多いんでしょうか。
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内野正幸#18
○内野参考人 十四条一項の列挙事由が限定的であるという考え方は、学界ではごく少数であります。ただ、列挙事由に特別の意味を認めるという見解はかなりあるとは思いますけれども。
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笠浩史#19
○笠小委員 私はやはり、今後生まれてくる新しい権利といったものも含めて、どうしても憲法の中に規定すべき、差別にかかわる項目等も今後出てくるのではないかと思いますけれども、この部分というものはどうしてもいじれない、そういったものを憲法の中に新たに加えていくということは、将来考えられないとお考えでしょうか。
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内野正幸#20
○内野参考人 将来の課題として、私は、憲法の条文を一切いじくってはまずいというふうには考えておりません。当面、人権領域に関して憲法改正の必要性は少ないと申し上げたにとどまるわけです。
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笠浩史#21
○笠小委員 私は、この憲法の、これから二十一世紀、新しい形を我々若い世代として考えていくときに、この人権にかかわる問題についても、先ほど先生が改正の必要性は当面はこの人権の領域では少ないということをおっしゃっておりますけれども、やはり、今違憲審査というものがなかなか機能していない、最高裁が消極的である中で、例えば憲法裁判所等を新設するとかそうしたことなくして、余りにも解釈等が広がり過ぎていて、そこが非常に問題を複雑にしているような気がしているわけですけれども、この点についてしっかりとやはり憲法に明記をしていくような姿勢が大事ではないかなと。あるいは、憲法裁判所等をしっかりとつくることによって憲法の解釈というものをきちんと判断していくということをやるか、どちらかにしないといけないのかなという気がしているんですが、その点についてはいかがでしょうか。
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内野正幸#22
○内野参考人 憲法の条文を解釈するだけではわかりにくいところがあるという御指摘も確かに言えるところがあるのですけれども、憲法改正を考える場合の基本的視点は、憲法のそれぞれの条文について、この条文を改正する必要性があるのか必要性はないのか、そういう視点からまず考えるべきだと思うわけでして、御指摘の憲法裁判所につきましては、憲法改正をしなければできないという意見と、現在の憲法のままでもできるという意見があるわけでして、そういう点も踏まえて検討すべきだと思います。
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笠浩史#23
○笠小委員 もう一点、先ほど質問にもありましたけれども、先ほど先生の説明で、政治的平等としては選挙資格や投票機会保障の点で現行制度を再点検する余地があるということをおっしゃったわけです。例えば、この中で選挙の資格について、今世界の大半の国が選挙権を十八歳としているわけですけれども、二十歳から十八歳に引き下げること。高校を出て働かれている方はほとんど納税義務が課せられている、その一方で選挙権がない。このことについては十四条における差別とのかかわりというもの、あるいはこうした物の考え方というものについての御意見を承れればと思います。
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内野正幸#24
○内野参考人 選挙権を十八歳に引き下げるということは立法政策として望ましいことだと思いますが、憲法がそういうふうにせよと命じているわけでありませんで、その意味で、この文脈では憲法十四条違反の問題も生じないと考えます。
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笠浩史#25
○笠小委員 政治的平等としてはやはり望まれるということで、それは立法政策でということで、確認なんですけれども、やるべき課題であるという。
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内野正幸#26
○内野参考人 政治的平等という場合に、憲法上の要請としての政治的平等というのが一方であり、他方で立法政策的に望ましいという意味、緩やかな意味での政治的平等があるわけでして、選挙年齢十八歳引き下げというのは後者の方に属すると思います。
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笠浩史#27
○笠小委員 やはりこの一票の格差の問題というのがさきの最高裁の平成十三年度の参議院選挙における判決からも大変今大きなテーマになっていると思うんですけれども、この参議院の一対五以上でも今合憲とみなされているような状況で、衆議院は一対二であると。こうしたことについて、先ほどちょっと同じような質問があったんですけれども、少しわかりにくかったのが、やはり衆議院と参議院の違い。先生先ほどおっしゃっていた、参議院はなぜそうは言えないんだと、衆議院に対して。そのことをもう少し詳しく説明をいただければと思うんです。
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内野正幸#28
○内野参考人 憲法の四十六条によりますと、「参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。」となっているわけです。こう定めています以上、特定の、一つの選挙区から偶数の参議院議員を出す。ですから、ある年一人選んで三年後に一人という意味で二人、最低二人選ぶということが憲法上の要請になると思います。この点については一部に異なった意見もあるんですけれども。
 このような一選挙区偶数選出の要請というのが、参議院の衆議院とは異なった特性として考慮せざるを得ないわけでして、その偶数選出の要請を、学説が言っている衆議院で最大格差二対一を修正するについてどのように考慮すべきか、反映すべきかについては、三対一なのか、四対一なのかという点については、私も今自信を持ってこれというふうには言えないわけですけれども、今言いましたような偶数選出の要請が参議院の特殊性だと思います。
 あと、最高裁の判例によりますと、都道府県代表のような地域代表的性格というのも言われていますけれども、これは憲法が要請する特性ではなくて、そのような性格づけを参議院に対して行っても、立法政策の問題であって、憲法上は許されるであろうという意味では、参議院の特性と言ってよかろうかと思います。
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笠浩史#29
○笠小委員 終わります。
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