本会議

2024-04-26 参議院 全38発言

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会議録情報#0
令和六年四月二十六日(金曜日)
   午前十時一分開議
    ━━━━━━━━━━━━━
○議事日程 第十五号
  令和六年四月二十六日
   午前十時開議
 第一 国家公務員等の旅費に関する法律の一部
  を改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
 第二 流通業務の総合化及び効率化の促進に関
  する法律及び貨物自動車運送事業法の一部を
  改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ━━━━━━━━━━━━━
○本日の会議に付した案件
 一、議員辞職の件
 一、食料・農業・農村基本法の一部を改正する
  法律案(趣旨説明)
 以下 議事日程のとおり
     ─────・─────
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尾辻秀久#1
○議長(尾辻秀久君) これより会議を開きます。
 この際、議員の辞職についてお諮りいたします。
 本日、渡邊紗耶香君から議員辞職願が提出されました。
 辞表を参事に朗読させます。
   〔参事朗読〕
   辞 職 願
  このたび一身上の都合により議員を辞職いた
 したいので、ご許可くださるようお願い申し上
 げます。
   令和六年四月二十六日
          参議院議員 渡邊紗耶香 
  参議院議長 尾辻 秀久殿
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尾辻秀久#2
○議長(尾辻秀久君) 渡邊紗耶香君の議員辞職を許可することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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尾辻秀久#3
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。
 よって、許可することに決しました。
     ─────・─────
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尾辻秀久#4
○議長(尾辻秀久君) この際、日程に追加して、
 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について、提出者の趣旨説明を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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尾辻秀久#5
○議長(尾辻秀久君) 御異議ないと認めます。坂本哲志農林水産大臣。
   〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕
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坂本哲志#6
○国務大臣(坂本哲志君) 食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明申し上げます。
 我が国の食料・農業・農村施策の基本的な方針を定める食料・農業・農村基本法については、制定から四半世紀が経過する中で、世界的な食料需給の変動、地球温暖化の進行、我が国の人口の減少などの食料、農業、農村をめぐる情勢の変化が生じ、その制定時の前提が大きく変化しております。
 このため、こうした変化を踏まえて食料・農業・農村施策を講ずることができるよう、基本理念を見直すとともに、関連する基本的施策等を定める必要があることから、この法律案を提出した次第であります。
 次に、この法律案の主要な内容につきまして御説明申し上げます。
 第一に、食料安全保障の抜本的な強化についてであります。
 食料安全保障について、食料の安定供給に加えて国民一人一人の農業の入手の、食料の入手の観点を含むものとして定義し、その確保を基本理念に位置付けます。この考え方に基づき、国内農業生産の増大を基本とし、農業生産の基盤等の食料供給能力の確保の重要性、生産から加工、流通、消費に至る食料システムの関係者の連携などを位置付けます。
 その上で、国内農産物、農業資材の安定的な輸入の確保、食料の円滑な入手の確保、輸出の促進、価格形成における合理的な費用の考慮などの基本的施策を講ずることとしております。
 第二に、環境と調和の取れた産業への転換についてであります。
 食料供給が環境に負荷を与えている側面があることに着目し、環境と調和の取れた食料システムの確立が図られなければならない旨を基本理念に位置付け、この考え方に基づき、農業生産活動、食品産業の事業活動等における環境への負荷の低減の促進などの基本的施策を講ずることとしております。
 第三に、生産水準の維持発展と地域コミュニティーの維持についてであります。
 我が国全体の人口減少に伴い農業者・農村人口が減少することが見込まれる中においても農業の持続的な発展と農村の振興を図っていくことができるよう、農業法人の経営基盤の強化、先端的な技術を活用した生産性の向上、農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進、農村関係人口の増加に資する産業振興、農地の保全に資する共同活動の促進などの基本的施策を充実しております。
 政府といたしましては、以上を内容とする法律案を提出いたしましたが、衆議院におきまして、この法律案に対し、先端的な技術等を活用した生産性の向上に資する施策について、その対象として多収化に資する新品種を明記するとともに、育成に加えて導入の促進を明記する修正が行われております。
 以上が、この法律案の趣旨でございます。拍手
    ─────────────
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尾辻秀久#7
○議長(尾辻秀久君) ただいまの趣旨説明に対し、質疑の通告がございます。順次発言を許します。藤木眞也君。
   〔藤木眞也君登壇、拍手〕
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藤木眞也#8
○藤木眞也君 自由民主党の藤木眞也です。
 会派を代表し、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について質問いたします。
 私は、昭和六十一年に就農して以降、現行基本法の下で農業を営んできました。その中で一番肌で感じていたことは、新自由主義的な発想により行き過ぎた市場原理が働き、生産コストの価格転嫁が適切にできなかったことです。その結果、離農が進み、耕作放棄地が増加しました。
 一九九五年には二百五十六万人いた基幹的農業従事者の数が二〇二二年には百二十三万人と半減し、さらに、これから二十年後には約三十万人に減ると言われています。さすがに三十万人まで減らすわけにはいきません。スマート農業などで効率化を図ったとしても、一定程度、農業者がいなければ農業、農村の維持発展は図れません。こういった状況になったのは、再生産可能な農業が実現できていないからだと思っています。
 再生産可能な農業を構築していくためには、本法案に明記されている食料安全保障の確保、食料の合理的な価格形成、多様な農業者を含む望ましい農業構造の実現、農地等の農業生産基盤の確保、これらの事項に対して有効かつ具体的な施策と抜本的な予算の拡充、万全な予算の確保を行うことが極めて重要です。総理に意気込みを伺います。
 再生産可能な農業を構築していくために一番重要な事項は、生産コストの農畜産物への適正な価格転嫁です。
 本法案では、農業者、食品事業者、消費者などの食料システムの関係者によりその持続的な供給に要する合理的な費用が考慮されるようにしなければならないと明記されました。つまり、生産コストが適正に農畜産物への価格に転嫁されなければならないとの方向が示されたものと受け止めています。
 現在、政府において法制化も視野に入れた検討が行われていますが、合理的な費用の考慮がされるための具体的な施策をどのようにお考えでしょうか。農林水産大臣に伺います。
 また、農畜産物への適正な価格転嫁を実現するためには、消費者理解が極めて大事です。本法案には消費者の役割も位置付けていますが、消費者の理解をどのように得ていくのか。本法案にある、消費者は食料の持続的な供給に資する物の選択に努めるをどのように求めていくお考えでしょうか。農林水産大臣に伺います。
 今回の基本法の改正では、最も重要な政策として食料安全保障の確保を挙げております。食料安全保障の確保について、改めてどのように実現されようとしているのか、決意も含めて総理に伺います。
 また、食料安全保障の確保の基本となる国内の農業政策の拡大を図るためには、農業従事者の減少傾向が続く中、農地の受皿となる担い手と併せて多様な農業者の役割も大きいと考えますが、本法案にある効率的かつ安定的な農業経営を営む者及びそれ以外の多様な農業者により農業生産活動が行われることは、具体的にどのように実現するお考えでしょうか。農林水産大臣に伺います。
 農村というコミュニティーが維持されてこそ、農業生産は成り立ちます。農業経営を持続可能としていくためには、農業経営の支援を行う事業者、いわゆる農協を含めたサービス事業体の活動維持及び強化が重要となります。農村のコミュニティーの維持や再構築のために、本法案にある農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進を具体的にどう実現するお考えでしょうか。農林水産大臣にお伺いをして、私の質問を終わります。
 御清聴ありがとうございました。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#9
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 藤木眞也議員の御質問にお答えいたします。
 再生産可能な農業の構築に向けた施策と予算の確保についてお尋ねがありました。
 農業の持続的発展のためには、議員御指摘の再生産可能な農業の実現が必要です。このため、需要に対応した農業構造への転換等による食料安全保障の確保を図る中、担い手の経営発展を後押しし、担い手とそれ以外の多様な農業者による農地の適正管理等を通じた望ましい農業構造の実現を進め、生産性の向上等を図りながら農地等の農業基盤を確保することで、収益力を高めてまいります。さらに、人件費等の恒常的なコストに配慮した合理的な価格形成の仕組みについて、法制化も視野に検討を進めてまいります。そして、こうした施策を体系的に実行するために必要な予算をしっかりと措置してまいります。
 食料安全保障の確保についてお尋ねがありました。
 基本法の改正案において、基本理念として新たに位置付けた食料安全保障の確保を実現していくため、輸入依存度の高い麦、大豆等の国内生産の拡大を進め、需要に対応した農業構造への転換を後押しします。また、担い手の育成、確保を図りつつ、スマート技術の導入による生産性の向上、市場拡大に向けた輸出の更なる促進等を行います。あわせて、食品アクセス問題に対応し、フードバンクや子供食堂等への未利用食品の提供体制づくりの支援等を進めてまいります。
 こうした取組を総合的に進め、平時からの食料安全保障を確かなものにしてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。拍手
   〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕
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坂本哲志#10
○国務大臣(坂本哲志君) 藤木眞也議員の御質問にお答えいたします。
 合理的な費用の考慮についてのお尋ねがありました。
 将来にわたって持続的な食料供給を行っていくためには、生産から消費に至る各段階の事業者が取引を通じて収益を確保し、食料システム全体を持続可能なものとしていくことが重要です。
 他方、近年、資材価格高騰等の、資材価格等の高騰は、生産から消費に至る各段階に幅広く影響が及んでおり、食料の持続的な供給を行っていくためには、食料システムの段階で合理的な費用が考慮されるようにしなければならないと考えています。
 このため、農林水産省では、令和五年八月から食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を開催し、合理的な費用の考慮が行われる仕組み構築に向けて協議を進めているところです。引き続き、協議会における関係者間での論議を、議論を重ね、丁寧に合意形成を図りながら、法制化も視野に検討してまいります。
 次に、消費者の理解をどのように得ていくのかについてのお尋ねがありました。
 改正法案において、消費者の役割として、農業等への理解を深めるとともに、食料の消費に際し、環境への負荷低減など食料の持続的な供給に資する選択に努めていただくことを規定しているところです。
 このため、農林水産省では、生産者の環境負荷低減の努力を分かりやすくラベル表示し、消費者に伝える見える化を推進するとともに、食や農林水産業への理解の増進や意識の変化を図るための農林水産体験等の食育の推進等を進めることとしています。
 次に、多様な農業者についてのお尋ねがありました。
 今後、農業者の急速な減少が見込まれる中、食料の安定供給を図るためには、担い手である効率的かつ安定的な農業経営を育成、確保することが引き続き必要です。
 一方で、担い手だけでは管理できない農地が出てきている中で、担い手以外の多様な農業者に農地の保全、管理を適切に行っていただく重要性が増しております。
 このため、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案においては、担い手の育成、確保を引き続き図りつつ、担い手とともに地域の農業生産活動を行う担い手以外の多様な農業者を位置付けたところです。
 これらを踏まえ、担い手に対しては、補助金、金融措置、税制措置など各種施策により重点的な支援を行うとともに、担い手以外の多様な農業者に対しては、多面的機能支払や中山間地域等直接支払による地域の共同作業への支援など、それぞれの役割に応じた支援を行うことで、双方で連携の下、一体となって地域農業を支え、農業生産の基盤である農地の確保を図ってまいります。
 次に、農業支援サービス事業者の事業活動の促進についてのお尋ねがありました。
 農村のコミュニティーの維持や再構築のためには、人口減少や高齢化が進む中においても、地域の主要産業である農業の持続的な発展を進める必要があります。そのためには、担い手だけでなく、担い手以外の多様な経営体に対しても専門的に経営、技術等をサポートする農業支援サービス事業者の育成、確保が欠かせないと考えております。
 このため、改正基本法案の第三十七条では、農作業の受託や農業経営に係る情報の分析、助言など、農業経営の支援を行う事業者の事業活動の促進に必要な施策を講ずる旨、位置付けたところです。
 具体的には、農業支援サービスの新規事業の立ち上げに係る人材育成やスマート農業機械の導入を支援するとともに、今国会に提出しているスマート農業技術活用促進法案において生産と開発に関する二つの計画認定制度を設け、認定を受けたサービス事業体等に対して税制、金融等により一体的に支援することとしているところであり、これらの施策を通じて農業支援サービス事業者の育成、確保を積極的に推進してまいります。拍手
    ─────────────
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尾辻秀久#11
○議長(尾辻秀久君) 横沢高徳君。
   〔横沢高徳君登壇、拍手〕
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横沢高徳#12
○横沢高徳君 立憲民主・社民の横沢高徳です。
 ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案について、会派を代表し、生活の現場第一で質問いたします。
 冒頭、自民党において不祥事が噴出していることについて、総理に伺わざるを得ません。
 旧統一教会との癒着、派閥の裏金問題は、いまだ全容が明らかになったとは言えません。ほかにも、総理自らの脱法的総理就任パーティー、自民党青年局の破廉恥な懇親会、不適切な男女関係も国民の政治への信頼を失わせ続けています。
 昨日も、宮澤前防衛副大臣が突然辞職されました。辞職願を提出した理由を問われた際、総理は、一身上の都合と繰り返し、その理由をお答えになっていません。
 スキャンダルが出る度に総理は勇ましく信頼回復に向けて先頭に立って取り組むとおっしゃっているのですが、それでも不祥事が噴出し続けているのは、自民党の体質のみならず、総理のリーダーとしての判断にも問題があるからではないですか。
 疑惑を持たれた議員にきちんと事情を尋ねているのでしょうか。国民に向けて説明をするよう促しているのでしょうか。明確な理由を示した厳格な処分をしていると胸を張って言えるのでしょうか。
 総理は、自民党から不祥事が噴出している原因はどこにあり、どのような手法で改善されるとお考えか、答弁を求めます。
 法案について伺います。
 立憲民主党は、全国の農業現場を訪問し、生の声をお聞きし、一緒に政策を練り上げていく取組である農林水産キャラバンを全国で展開してきました。
 また、基本法見直しに際し、農業関係団体や学者、研究者から御意見を伺い、党内で協議を重ね、昨年六月には中間取りまとめを取りまとめ、農林水産大臣に提出いたしました。
 法案の審議においても、基本法改正により、より良いものとするため、現場の声を反映した修正案を作成し、与党と協議をしてまいりました。
 しかし、与党からは、規定済み、対応不可、検討すらしないという返事でした。全国の農業、農村現場の意見を全く受け入れようとしない、総理の言う国民の声を聞く力のかけらもない姿勢では、国民の理解を得られる法改正などできるわけがありません。
 熟議の参議院では、国民の皆様の思いを形にできるよう、充実した審議と真摯な対応を求めて質問に入ります。
 地方では、人口減少に歯止めが掛かりません。特に中山間地域では高齢化が進み、子供の数はどんどん減っていく。学校は閉校し、熊や鹿、イノシシなどの被害はどんどん増えていく。先祖代々受け継がれてきた水田、畑は耕作放棄地となり、地域の伝統文化や伝統芸能の継承、地域コミュニティーの維持すら難しくなっている。
 我が国のこの現実が、先日アメリカ議会でスタンディングオベーションを受けた総理の目にはどのように映っているのか、まずはお聞きしたいのであります。
 改正案提出の背景と現行法の評価について伺います。
 背景の一つとして、食料自給率の低下が挙げられます。米の消費の減退、畜産物、油脂の消費の増加という食生活の変化によるものです。次に、農業者の高齢化やリタイアが進み、担い手の育成、確保が不十分であること。さらに、農地が減少し、耕作放棄地は増加、農地を有効に利用する体制も十分でないこと。そして、農業生産の場であり、生活の場でもある農村の多くが高齢化の進行と人口減少により、地域社会の維持が困難な集落も相当数見られると説明されています。
 今申し上げたこれらの内容は、一九九九年の現行基本法審議の際、政府がその背景として説明したものです。四半世紀前の課題が何一つ解決されていないまま現在まで続いていると、議場の皆様や国民の皆様は御理解いただけると思います。
 そこで質問です。
 総理は、今国会の施政方針で、農政を抜本的に見直すと発言されました。総理の言う農政の抜本的見直しとは、これまで国が進めてきた農政とどこがどのように違うのか、そして、多くの不安と危機感を持っている生産現場の皆様や、地域コミュニティー維持が難しくなっている農村部の生活は、総理の言う農政の抜本的見直しによって今よりどのように良くなっていくイメージを持っておられるのか、国民の皆様に分かりやすく具体的にお答えください。
 今回、理念法を全面的に見直すというのであれば、この二十五年間の現行法の下の制度や政策の検証、現行法の理念が現在において妥当か否かを判断する必要があったはずです。しかし、基本法検証部会では、情勢の変化とその対応について整理することに力点が置かれ、これまでの制度、政策の在り方の検証、評価を十分行わないまま改正案が提出されています。これでは、食料安全保障という新たな理念を加えたところで、その実現につながるとは限らず、この四半世紀に解決できなかった課題への答えにもなりません。
 そこで、改めて、改正案提出の背景と、現行法の下の制度と政策が現場にどのような影響を及ぼしてきたのか、改めて検証、評価を行う前向きな意向があるのか、併せて総理に伺います。
 食料安全保障について伺います。
 食料安全保障とは、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態と定義しております。改正案における食料安全保障の定義は、FAO、国連食糧農業機関の四つの定義を踏まえたものとされています。FAOが言う安全や十分な量といった平易で分かりやすい言葉にする方が国民の理解も深まり、理念の実現に近づくことができると考えますが、農林水産大臣の見解を伺います。
 また、食料の安定的な供給において、国内における食料の安定的な確保を最も重視すべきと考えます。しかし、こうした考えを基本理念において明確にしようとする修正案は、なぜか衆議院で受け入れられませんでした。
 改正案第二条第二項の食料安全保障に関する条文に国内における食料の安定供給の確保の重要性を明記するとどのような支障が生じるのか、農林水産大臣の具体的な説明を求めます。
 日本の野菜の種子の生産は約九〇%が海外で作られており、種子自給率は一〇%程度です。
 昨年三月二十三日の予算委員会にて、我が党の田名部委員が総理に食料安全保障の基本である種を守ることを質問した際、来年度中に食料・農業・農村基本法の改正案を国会に提出することを視野に、御指摘の点も念頭に置きながら、日本の農業の在り方、ありようについて考えていきたいと答弁されました。
 にもかかわらず、改正案には、食料安全保障の基本であり、国民全体の財産である種子の確保の重要性の視点がありません。改めて、総理、種子の重要性の明記について総理のお考えを伺います。
 食料自給率目標について伺います。
 我が国の食料自給率目標は三八%、先進国では最下位、食料自給率の目標はここ二十年、一度も達成されておりません。スポーツの世界で生きてきた私としては、二十年間一度も目標を達成してこなかったことは、作戦や取組自体に問題があったとしか言いようがありません。
 総理、法改正の前に、まずはどうして食料自給率の目標はここ二十年達成されないままだったのか、お答えください。総理が得意の様々な要因と曖昧にするのでは、残念ながら結果にはつながりません。はっきり明確に原因を検証した上で政策を練り直し、確実に結果につなげるべきと考えますが、総理の答弁を求めます。
 改正案では、法案成立後に定める基本計画において、食料自給率の向上その他の食料安全保障の確保に関する項目の目標を定めるとしています。しかし、この規定ぶりでは、食料自給率の目標がその他幾つかある目標の一つに埋没してしまうのではないかと危惧をしております。
 食料安全保障というのであれば、平時からの国内の食料生産の増大を基本とし、食料自給率を向上させるという方向性をはっきり打ち出すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
 食料の価格形成と直接支払について伺います。
 四半世紀前の課題が何一つ解決されていない以上、農政の転換が必要です。
 政府は、新たに食料システムという言葉を用いて生産から消費までをトータルで見る視点を入れ、食料の持続的な供給に要する費用が考慮されるべきとした点は一歩前進かもしれません。しかし、現状を見る限り、生産コストの高騰の影響は生産者に重くのしかかり、再生産可能な価格とはなっておりません。
 食料の価格形成においては、生産コストが十分考慮され、適正であることが重要です。食料の持続的な供給のみならず、再生産可能な価格形成の確保が考慮されるべきと考えますが、農林水産大臣の見解を伺います。
 農業経営を持続可能なものとし、食料安全保障を確保する観点から、農家への直接支払に踏み込むべきと考えます。
 総理は、過去の戸別所得補償制度を引き合いに出し、農地の集積、集約化等が進まず生産性向上が阻害されているおそれや、需給バランスや取引価格への影響等についての懸念を口にしますが、これらは直接支払に対する本質的な批判とは言えません。これまでの政策に対する反省もなく、変革へのプランもなく、単に農家への不利益を押し付けているだけのように見えます。
 今申し上げたことを踏まえ、直接支払の是非について総理の考えを伺います。
 農業の持続可能性という視点では、水田活用交付金の見直しにより、五年に一度の水張りルールなど現場の実情にそぐわないルールの徹底の影響による生産現場の混乱、離農につながるとの懸念の声が根強くあります。水田活用交付金見直しの見直しが必要と考えますが、総理の答弁を求めます。
 次に、農村の総合的な振興について伺います。
 国民の皆様の命の源、食料を守ることは、国を守ること、地域コミュニティーを守ることです。都市部の皆さんが食べる食料を守り、国や国土を守っているのが地方の生産者の皆さんです。
 我が国の農業経営体のうち、家族経営体の割合は九六%です。この二十年で家族農業の方が約六割減、十軒中六軒が離農していることになります。
 農業従事者の数はここ二十年で約半分に減っています。しかも、現在の生産者の八割は六十代、七十代の方です。六十代、七十代の方です。現場の皆さんの中には、いつまで田んぼや畑を続けていけるか分からないと不安を口にされることが大半です。
 これから二十年後には担い手の数が三十万人になるとの推計です。もはや限界集落どころか、消滅する集落が出てきます。
 総理、農村振興といいながら、ここ二十年でなぜここまで農業従事者が減少し、農村の衰退が進んでしまったのか、総理の見解を伺います。
 改正案を見ると、関係人口、ジビエ、農泊など施策が一貫性なく並べられ、農村の総合的な振興に向けた体系化は見当たりません。農村は食料の安定的な供給を行う基盤、また、多面的機能が発揮される場であること、こうした農村振興の意義をきちんと基本理念に書き込むべきと考えます。そして、基本理念と施策とを結び付け、農村の総合的な振興を図るべきと考えます。
 農村振興施策はどのような体系化が図られ、今後展開していく意向か、総理の見解を伺います。
 岩手県の農村に生まれ育った者として、農は国の基である、この思いを強く訴え、私の質問とさせていただきます。
 御清聴いただき、ありがとうございました。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#13
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 横沢高徳議員の御質問にお答えいたします。
 政治不信についてお尋ねがありました。
 御指摘の各事案については、それぞれの事案に応じてけじめを付けておりますが、自民党の派閥の収支報告書をめぐる問題等により深刻な政治不信を招いていることについては、自民党総裁として改めておわびを申し上げます。
 御指摘の各事案は、それぞれ内容、背景を異にするものであり、その原因等について一概にお答えすることは困難ですが、我々国会議員は、その責任を自覚し、国民に疑念を持たれないよう常に襟を正していかなければなりません。
 自民党としても、ガバナンスコードを改訂するなどし、党のガバナンス強化を進めているところであり、疑念を持たれた場合に丁寧に説明責任を尽くすことを含め、厳正なコンプライアンス対応等により、国民からの信頼回復、信頼確保に努めてまいります。
 農村地域の現状に対する認識についてお尋ねがありました。
 日本全体の人口が減少する中、農村人口は急速に減少し、農業を支える地域コミュニティーの機能も低下していることは大変重要な問題です。
 このため、食料・農業・農村基本法の改正案では、基本理念である農村の振興において地域社会の維持を位置付けた上で、そのための施策として、農地保全に資する共同活動、地域資源を活用した事業の創出による関係人口の増加等を盛り込みました。これらに基づき、農村地域の維持、そして活性化を図ってまいります。
 農政の抜本的見直しについてお尋ねがありました。
 今回の基本法の見直しは、我が国の農業が食料等の世界的な需給変動、環境問題、国内の急激な人口減少と担い手不足といった国内外の深刻な社会課題に直面する中、これらの社会課題に官民連携で正面から取り組み、課題克服を地域の成長へとつなげていくべく農政を再構築するものです。
 具体的には、食料安全保障の抜本的な強化、環境と調和の取れた農業、食品産業への転換、人口減少下における農業生産の維持発展と農村の地域コミュニティーの維持等により、生産現場の皆さんの所得の向上、農村地域の関係人口の増加等に取り組んでまいります。
 基本法改正案提出の背景と現行法の下の政策の検証、評価を行う意向についてお尋ねがありました。
 基本法の改正案は、先ほど申し上げたとおり、現下の国内外の社会課題に対応し、農政を再構築するために提出したものです。改正案の提出に至るまで、食料・農業・農村政策審議会において、基本法制定以降二十五年間の情勢の変化や現行政策の課題について集中的な議論を行うとともに、地方意見交換会や国民からの意見募集など幅広く御意見を伺っており、十分な議論、検証、評価、行ったものと考えております。
 新たな基本法の下、我が国の社会課題を正面から捉え、引き続き、現場の声を十分にお聞きしながら、課題克服を地域の成長へとつなげていくべく新たな農政を展開してまいります。
 種子の重要性についてお尋ねがありました。
 種子は、肥料、飼料などと並んで農業生産に欠かせない重要な農業資材です。
 基本法の改正案においては、種子を含む農業資材について、農業資材の安定的な供給を確保することを新たに明記したところであり、安定供給に向けた取組、後押ししてまいります。
 食料自給率についてお尋ねがありました。
 食料自給率については、自給率の高い米の消費の減少等による低下が想定より大きく、輸入に依存する小麦、大豆の国内生産拡大等による上昇を上回ってきたところ、これが目標未達の主因と分析をしています。こうした消費傾向はしばらく継続すると見込まれますが、食料安全保障の観点から、麦、大豆等の輸入依存度の高い品目を始め、国内生産の増大を基本とした取組を進めることが重要であると考えています。
 また、基本法の改正案においては、食料自給率の目標に関し、食料自給率の向上が図られるよう、農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨明記をしているところであり、基本計画の策定に当たり、食料自給率を含め、食料安全保障の確保に関する事項について適切な目標を設定するべく議論を進めてまいります。
 直接支払の是非についてお尋ねがありました。
 農業者への直接支払については、現在、農地等の保全管理を行うための多面的機能支払、中山間地域の農業生産条件の不利を補正するための中山間地域等直接支払など、我が国の農業の課題と政策目的に応じた直接支払政策を講じているところです。
 新しい基本法の下、直接支払制度を含め、必要な農業政策をしっかりと、しっかり講じ、農業の持続的発展を後押ししてまいります。
 一方、農業所得の補償については、過去の戸別所得補償制度を見ても、農地の集積、集約化が進まず、生産性の向上が阻害されるおそれがあるなどの問題があると承知をしております。
 水田活用直接支払交付金についてお尋ねがありました。
 食料安全保障の強化のためには、主食用米の需要が減少を続ける中、輸入に依存する麦、大豆の生産拡大が必要であり、これらの生産が定着した水田は、本格的な畑地転換により麦、大豆の収量増大を図ることが農業所得の向上の観点からも重要です。
 他方、気候風土等から本格的な畑地化に適さない水田等については、稲と麦、大豆の輪作体系を確立し、農業所得の向上を図ること、これが有効です。
 こうした農地利用に関する各産地の主体的な判断に応じて、産地が本格的な畑地転換を行う場合には排水対策等の基盤整備や畑作物生産の安定化を支援する一方で、水田機能を維持する場合には水田活用の直接支払交付金により支援することとしており、御指摘の見直しによる水田機能の維持を確認しているものであります。
 引き続き、現場に混乱等が生じないよう、丁寧な説明を行いながら支援を進めてまいります。
 農村の衰退についてお尋ねがありました。
 農村のこの人口減少は、以前は都市への人口流出が主要因だったものの、近年は、高齢化が進む農業者を中心に出生数の減少及び死亡者数の増加に伴う自然減が主要因となっています。
 国内の人口が減少を続ける中で、農業従事者を含め農村人口の減少も避け難い状況にありますが、こうした中にあっても農業を下支えする農村コミュニティーの基盤が維持されるよう、農村地域の活性化を図ってまいります。
 農村振興施策についてお尋ねがありました。
 農村については、現行の基本法の基本理念において、食料その他の農産物の供給の機能及び多面的機能が適切かつ十分に発揮されるようその振興を図る、こうした旨明記されているところです。
 その上で、今回の改正案において、基本理念に農村の振興は地域社会が維持されるよう行う旨、これを追記し、この基本理念を実現する施策として、農地の保全に資する共同活動の促進、地域の資源を活用した事業活動の促進、農村への滞在機会を提供する事業活動の促進、これらを体系立てて位置付けたところであり、これらに基づく農村の振興施策を効果的に展開をしてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。拍手
   〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕
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坂本哲志#14
○国務大臣(坂本哲志君) 横沢高徳議員の御質問にお答えいたします。
 食料安全保障の定義についてのお尋ねがありました。
 基本法改正案における食料安全保障の定義は、国連食糧農業機関、FAOの定義も踏まえたものです。具体的には、適切な品質の食料を十分な量を供給する、全ての国民が栄養ある食料を入手できる、安全かつ栄養のある食料を摂取できる、いつ何どきでも適切な食料を入手できる安定性があることが求められています。
 この定義も踏まえて、本改正案におきましては、安全で栄養のある食料については「良質な食料」と、総量として十分な食料を供給することについては「安定的に供給」と、それぞれの趣旨を漏れなく端的に規定することとしております。これにより、食料安全保障の定義を、良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態としたところです。
 次に、国内における食料の安定的な確保に対する考え方についてのお尋ねがありました。
 条文の修正協議につきましては、立法府の中でお決めいただくものであります。その上で、政府原案についての考えを申し上げます。
 改正案第二条第二項は、国民に対する食料の安定供給の確保の重要性を規定したものであり、国民に対する食料の安定的な供給については国内の農業生産の増大を図ることを基本と明記しており、議員御指摘の点については既に規定されていることから、重ねて規定する必要はないものと考えています。
 次に、食料の価格形成についてのお尋ねがありました。
 近年の資材価格等の高騰は、生産、加工、流通、小売、消費等の食料システムの各段階に幅広く影響が及んでおり、食料の持続的な供給を行っていくためには食料システム全体の持続性が確保されなければならないと考えています。
 このため、農林水産省では、令和五年八月から食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を開催し、協議を進めているところですが、協議の中では、どこか一部の関係者にだけしわ寄せが及ぶ仕組みでは食料システムの持続性を確保することは難しいとの指摘がなされているところです。
 御指摘の再生産可能な価格形成は生産者だけに着目していますが、生産から消費に至る食料システム全体の関係者が納得する合理的な価格の形成に向けた仕組みづくりを行っていくことが重要であり、こうした考え方を今後の改正法案におきましても基本理念として盛り込んでいるところであります。拍手
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尾辻秀久#15
○議長(尾辻秀久君) 河野義博君。
   〔河野義博君登壇、拍手〕
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河野義博#16
○河野義博君 公明党の河野義博です。
 ただいま議題となりました食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案につきまして、会派を代表して質問いたします。
 現行法の制定以降、貿易、投資の自由化を通じて世界の一体化が進む一方、かつて第三世界と呼ばれていた国々がグローバルサウスとなり、多極化、流動化も同時に進行しています。
 食料の安定供給を脅かす紛争リスク、気候変動リスクが増し、農業に対しては環境負荷への対応も求められています。そうした中、このタイミングで基本法を見直すことは時宜にかなったものであり、早期成立が期待されます。
 改正案は、こうした情勢変化を背景に、国内の農業生産と併せて安定的な輸入と備蓄の確保を図ることを改正事項としています。その点、農業生産に輸入と備蓄を組み合わせるという今の考え方から一歩踏み込んだ印象を受けますが、国民に対する食料の安定的な確保は、あくまで安心、安全な国内の農業生産の増大を基本にすべきです。
 そこで、食料の安定供給は、従来方針のとおり、国内の農業生産の増大を第一とするということを岸田総理に確認させていただきます。
 次に、輸出との関係について伺います。
 国内需要の減少に生産を合わせていては、農地などの生産基盤の縮小が避けられず、輸出を通じた食料供給力の維持が必要です。同時に、農業者の収益性を確保する視点も必要であり、公明党は、一昨年、農林水産物等の輸出促進に関するプロジェクトチームを設置、農林水産物、食品の輸出額は着実に増加をし、二〇三〇年の輸出額目標五兆円の達成に向けて政府の取組を後押ししています。
 改正案では、農産物の輸出の促進に関して規定していますが、農業者の収益性の向上に資するための具体的な施策を総理に伺います。
 改正案では、食料安全保障を良質な食料が合理的な価格で安定的に供給され、かつ、国民一人一人がこれを入手できる状態と定義しています。この一人一人にという点を踏まえれば、今後、食品アクセスに関する施策を講じていく必要があります。
 公明党は、二〇一五年、食品ロス削減推進プロジェクトチームを設置、竹谷とし子座長を中心に食品ロス削減推進法案を取りまとめ、その後、全会派一致での新法成立を力強くリードしました。
 改正案成立の暁には、フードバンクや子供食堂等の活動に対し従来の食育や食品ロス対策以上の支援が期待されているところですが、具体的な施策を坂本大臣に伺います。
 改正案では、生産から消費に至る各段階の総体を食料システムと定め、関係者により食料の持続的な供給に要する合理的な費用を考慮することとしております。
 農業者が誇りと夢を持って生産活動を継続するには、こだわりや品質の高さが価格に反映され、消費され、消費者も満足を得るという好循環が必要です。
 政府は、生産コストを考慮した価格形成の法制化も視野に入れて農業者の所得向上を支援する意向を示していますが、合理的な価格形成に向けた取組状況について大臣に伺います。
 昨今、農村の総合的な振興が不可欠と認識される中、改正案では農福連携が規定されています。農福連携は、農村と関わる者を広げるという意義があるとともに、障害者の方々が就農を通じて自信や生きがいを持って社会参画を実現するという成果も生まれています。
 新設された第四十六条に基づき、更に農福連携の動きを進めていくための施策を大臣に伺います。
 かつて世界の食料事情は、世界人口の増加に穀物生産の増加が追い付いていることが重要でした。しかし、所得の増加による生活水準の向上は、穀物中心から畜産物を取る食生活へと変化をもたらします。時代の潮流を見極め、食料をめぐる環境を正しく認識し、リスクにも適切に対処していく必要があります。
 改正案の成立により食料の安定供給が万全となるよう期待し、質問を終わります。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#17
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 河野義博議員の御質問にお答えいたします。
 国内の農業生産の増大についてお尋ねがありました。
 現行の食料・農業・農村基本法において国内の農業生産の増大を図ることを基本とする方針を明示しているところ、今回の改正に当たっても、その方針に変わりはありません。
 その上で、食料安全保障をめぐっては、輸入リスクが増大していることも課題となる中、輸入相手国の多様化等による安定的な輸入と備蓄の確保を適切に行うことが重要であり、改正案にこの点を盛り込んだところです。
 今後、こうした規定に基づき、国内の農業生産の増大を後押ししつつ、輸入と備蓄を適切に組み合わせながら食料安全保障の確保を図ってまいります。
 農産物の輸出促進策についてお尋ねがありました。
 国内市場の縮小が見込まれる中、農産物輸出の取組は、食料安全保障を確保し、農業の持続的発展を図る上で不可欠です。
 こうした考えの下、基本法改正案では農産物の輸出の促進に関する規定を設けたところであり、これに基づき、輸出先の具体的なニーズや規制に対応した輸出産地の育成、品目別輸出促進団体によるオールジャパンでのプロモーション体制の強化、輸出先の多様化に向けた情報発信の強化、こうした取組を進めてまいります。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。拍手
   〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕
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坂本哲志#18
○国務大臣(坂本哲志君) 河野義博議員の御質問にお答えいたします。
 食品アクセスに関する施策についてお尋ねがありました。
 経済的理由により十分な食料を入手できない方が増加しているなど食品アクセスの問題が顕在化している中、平時から国民一人一人が食料にアクセスでき、健康な食生活を享受できるようにすることが重要です。
 この課題に対応するため、改正案では、食料の円滑な入手に必要な施策を講ずる旨を位置付けているところです。具体的には、農林水産省では、フードバンクの活動を支援するとともに、フードバンクや子供食堂等への多様な食料の供給に向け、自治体を中心とした地域の関係者が連携する体制づくり等の支援を進めています。
 また、食品アクセスの取組に当たっては、様々な省庁が関連予算を措置しているところであり、これらの施策が各地で活用されるよう、こども家庭庁や厚生労働省等の関係省庁と連携しながら取り組んでまいります。
 次に、合理的な価格形成についてのお尋ねがありました。
 農産物や食品の価格は需給事情や品質評価を反映することが基本であり、農産物の品質やこだわりが消費者に評価され、農業を夢と誇りある、夢と誇りの持てる産業としていくことが何よりも重要であると考えています。
 他方、近年の資材価格等の高騰は、生産から消費に至る各段階に幅広く影響が及んでおり、食料の持続的な供給を行っていくためには、食料システムの各段階で合理的な費用が考慮されるようにしなければならないと考えています。
 このため、農林水産省では、令和五年八月から、食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を開催し、合理的な費用の考慮が行われる仕組みの構築に向けて協議を進めているところです。
 今月五日に開催された協議会においては、仕組みを設ける必要性や法制化も視野に検討することについて共通の認識が得られたところであり、引き続き、関係者間での議論を重ね、丁寧に合意形成を図ってまいります。
 次に、新基本法に基づく農福連携の今後の施策についてのお尋ねがありました。
 今後、農村地域では人口減少、高齢化が急激に進行することが見込まれる中、障害者を始めとする多様な人々の社会参画と同時に、これを通じた地域農業の振興が期待されます。
 このため、新たな基本法で農福連携の推進を位置付け、障害者等が農業活動を行うための環境整備を進め、地域農業の振興を図る旨を規定しております。
 今後、この新たな基本法の趣旨を踏まえ、農福連携の実践手法を現場でアドバイスする専門人材の育成や、障害者が現場で働きやすい環境の整備等の従来の取組に加えて、地域ぐるみの取組に向けた地域協議会の取組の拡大の後押しや、障害者だけでなく社会的に支援が必要な者の社会参画の促進等により、関係省庁一体となって農福連携の取組をしっかり推進してまいります。拍手
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尾辻秀久#19
○議長(尾辻秀久君) 松野明美君。
   〔松野明美君登壇、拍手〕
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松野明美#20
○松野明美君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の松野明美です。
 私は、会派を代表いたしまして、食料・農業・農村基本法の一部を改正する法律案に対し、全ての質問を岸田総理にお尋ねいたします。
 私は、農業はやりがいのある職業だと思っています。マラソンとも似ているところがあり、自然の中で働くことにより四季を感じることができる、雨の日も負けず、風の日も負けず、粘り続けることが大切です。命を育て、命をつなぐ、農業はかけがえのない職業です。
 今回、食料・農業・農村基本法が二十五年ぶりに改正されます。しかし、これまでの二十五年間の歩みはどうだったのでしょうか。現行の基本法は、農業の現場に確実に生きてきたのでしょうか。良かったのか、それとも悪かったのか、改革の針が逆戻りするようなことは決してないと言えるのでしょうか。
 政府はこれまでの二十五年間をどのように総括しているのか、現行法の基本理念はどの程度実現し、どのような課題が残っているのか、また、これから二十五年後の二〇五〇年の日本の農業の未来像をどのように描いているのでしょうか、伺います。
 現在、食料自給率は三八%と、先進国で最低水準が続いています。これは、米の減反政策や、小麦、大豆、飼料作物を輸入に頼ってきたことが原因ではないでしょうか。
 食料自給率が低水準であることの原因と向上策について認識をお聞かせください。
 私たち日本維新の会・教育無償化を実現する会は、自民党、公明党と協議を重ね、本法案の一部修正で合意し、衆議院で可決いたしました。
 我が会派の提案は、多収化に資する新品種の育成及び導入の促進の明記です。特に米の生産性向上のため、多収化に資する品種の育成と導入は、小さいかもしれませんが、大事な一歩であると評価いたします。我が党は、農家の皆様が豊作を喜べる農業の実現、食料供給能力の向上を目指します。
 総理は、日本の農業の未来にとって作物の多収化はどのような意義があるとお考えでしょうか。
 また、多収化を実現するためには品種の開発が不可欠ですが、品種改良にはかなり年月が掛かります。人材の育成、予算の確保が必要です。国は、新品種の開発にどのような責任を持ち、どのように取り組んでいるのでしょうか、伺います。
 基幹的農業従事者は、二〇〇〇年には二百四十万人でしたが、二〇二三年には百十六万人と半減しています。さらに、今後二十年後には現在の四分の一の約三十万人になると言われています。この半減した期間の日本の人口は二百五十七万人減の僅か二・〇二%の減少でしかなく、人口減少、そして高齢化が大きな要因とは思えません。
 農業従事者の減少の理由を高齢化、人口減少を理由にするのではなく、真の原因を把握することから改革を進めることが必要だと考えますが、どのようにお考えでしょうか。
 農業に従事する人を増やすには、若い人たちにとって農業が魅力ある職業であることが必要です。職業としての魅力に今の農業が欠けているものは何なのでしょうか。魅力を高めるためにはどんな方策が必要なのでしょうか。お考えをお示しください。
 また、農地集積の進捗状況は五九・五%で、目標の八割には程遠い状況です。耕作放棄地も増えています。農地の集積、集約を進めるためには、農地バンクへの登録を義務化すべきだという意見もあれば、農家の納得こそ大事にすべきだという意見もあります。農地の集積を進めるには大きな動機付けが必要です。
 総理は、農地バンクへの登録を推進するためのインセンティブについてどのようにお考えなのか、お答えください。
 また、リース方式による参入法人は四千二百二法人に増えましたが、企業の参入は思ったほど進んでいません。もっと多様な企業に関わってもらうことが必要です。見解を求めます。
 企業の農業参入は、後継者発掘の手段になるのではないかと考えます。法案では、食品事業者等からの出資で農地所有適格法人の経営基盤の強化を図るとしていますが、農業を真剣に経営していくことを条件に農業、食料以外の他業種の企業を参入に導くことは農業の新たなイノベーションにつながると考えますが、認識を伺います。
 次世代の担い手を育てていく鍵となるのは、先端技術を活用したスマート農業の実現であると考えます。ロボット、AI、センサーなどの技術の導入で農業にゲームチェンジを起こすことができるのではないかと期待いたします。
 しかし、スマート農業の導入には、人材や多額の設備費、また中山間地が四割を占めるなど、課題もあります。今後、これらの課題をどう解決し、スマート農業の社会実装をどのように加速させていくのでしょうか、伺います。
 今回、基本法に農福連携という言葉が入りました。
 農業も福祉も、自分だけが良ければよいという世界では成り立ちません。障害者が農業の現場で働くことによる地域社会への影響は非常に大きく、その支援を行う健常者の働く場も生まれ、地域コミュニティーの活性化のきっかけともなり、農福連携を是非進める必要があります。
 農業側と福祉側の懸け橋となる農福連携技術支援者が圧倒的に不足するなど課題もありますが、基本法に農福連携に関する条文を入れた意義とは何か、農福連携がもたらす効果とは何か、また今後どのような展開が必要と考えているのか、見解を伺います。
 次に、輸出拡大についてです。
 リンゴと米の輸出の伸びが顕著です。一方で、苦戦したのがシャインマスカット等のブドウです。リンゴと米の輸出が伸びている理由について、また、ほかの農作物の輸出拡大の可能性について認識をお示しください。
 農地が狭い日本で輸出を推進するのは、量や価格ではなく、付加価値で勝負するしかありません。フードテック、そしてゲノム編集などの取組を加速する必要があります。おいしさはもちろんのこと、現地のマーケットを捉えた柔軟な対応策や、食のイノベーションをリードする取組が必要ですが、いかがお考えでしょうか。
 改正案では、新第二十四条に不測時における措置が設けられました。これまで食料不足を経験したことのない国民が大多数となった今、危機感が共有されているとは思えません。例えば、台湾有事又はシーレーンの遮断、食料だけでなくエネルギーまでもが不足になったとしても本当に大丈夫なのでしょうか。もし国民が飢えるような事態になったとしても、国民を飢えから守ることが本当にできるのでしょうか。
 国民に食料安全保障に対する認識、危機意識を共有していくことが大切だと考えますが、周知広報の取組についてもお聞かせください。
 今回提案の食料供給困難事態対策法では、食料、農業従事者に罰則付きで政府への協力を求めていますが、なぜ罰則が必要なのでしょうか。また、有事になって罰則を強制するよりも、平時からの協力関係を築いておくことの方が重要ではないかと考えますが、答弁を求めます。
 私たち日本維新の会・教育無償化を実現する会は、日本の農業を地球と人の健康を守る命の産業へと進化させ、農業を選んでくださいの精神で、是非若者たちから農林水産業の門をたたいてもらえるよう、強い農業、そして豊作を喜ぶ農業を目指して、これからも全力で走り続けてまいります。このことをお誓い申し上げ、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#21
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 松野明美議員の御質問にお答えいたします。
 現行の基本理念の実現と農業の未来像についてお尋ねがありました。
 食料・農業・農村基本法の制定以降、農地の集積、集約や基盤整備の推進など、食料の安定供給の確保、農業の持続的な発展等の基本理念の実現に向けた施策を展開してまいりました。その結果、人口減少に伴い国内市場は縮小し、農業の担い手が減少する中にあっても、農業総産出額は九兆円前後を保っているところです。
 一方、現下の課題として、世界の食料供給が不安定化する中、輸入に依存する農産物の国内生産の拡大が急務となり、また農村人口の継続的な減少が見込まれる中、少ない農業者でも食料を安定供給できる体制の確保も重要となっています。
 こうした課題を踏まえ、需要に応じた生産を基本にスマート技術等による生産性の向上などを図るとともに、ブランド化による付加価値向上、輸出を含めた販路拡大等の取組を支援していくことにより、農業所得の向上が図られ、農業に携わる皆さんが夢と希望、自信を持って活動できる農業を実現してまいります。
 食料自給率についてお尋ねがありました。
 我が国では、国内で自給可能な米の消費の急速な減少、輸入依存度の高い飼料を多く使用する畜産物の消費の増加など消費面での変化が進み、これが食料自給率の減少要因となっています。
 こうした食料消費の傾向はしばらく継続すると見込まれますが、食料安全保障の確保の観点から、麦、大豆等の輸入依存度の高い品目の国産転換といった食料自給率の向上に資する取組を更に推進することが重要であると考えています。
 作物の多収化についてお尋ねがありました。
 食料安全保障の確保に向け、農業の生産性向上が重要な政策課題となる中、多収性品種の開発とその普及は極めて重要なものであると認識をしています。
 食料・農業・農村基本法の改正案に関する衆議院の修正として、多収化等に資する新品種の育成及び導入の促進が追記されたところであり、国として、農研機構を活用しつつ、自治体と連携をして多収性に優れた品種の開発、普及、また研究人材の育成、これらを進めてまいります。
 農業従事者の減少の理由及び農業の魅力を高める方策についてお尋ねがありました。
 我が国人口が減少する中、基幹的農業従事者はこの二十年で百四万人減少しましたが、その七割以上である七十七万人を米の生産者が占めています。このように、機械化が進む中で多数の高齢の米生産者のリタイア等により農業者が全体として減少したものと考えておりますが、法人経営体の増加などを背景に農業総産出額は九兆円前後を保っています。
 今後、若い世代がより魅力ある職業として農業を捉えられるよう、若手農業者との交流イベント等による農業のやりがいなど、生のこの魅力の発信のほか、スマート化による生産性向上や付加価値向上等により農業所得の向上を図ってまいります。
 農地バンクの活用と企業の農業参入についてお尋ねがありました。
 農地バンクの活用促進に向けては、農地バンクに貸し付けた農地について、農家負担を伴わずに大区画化等を行うとともに、固定資産税の軽減等を措置しています。こうしたインセンティブによる農地バンクの一層の活用を通じて農地の集積、集約化、加速化してまいります。
 また、株式会社等の農業参入については、平成二十一年のリース方式の下での完全自由化後、それ以前と比べて約五倍のペースで進んでおり、今後も制度の適切な運用等を通じて地域と調和した農業参入、農業生産を後押ししてまいります。
 農地所有適格法人の経営基盤強化の措置についてお尋ねがありました。
 農地を取得、所有できる農地所有適格法人については、経営面での農業者の主体性確保のために議決権割合等の要件を定めているところ、食料安定供給と農業経営の発展に資するものとして、食品事業者等からの出資を通じて経営基盤の強化を図るための農地制度の改正法案を提出したものです。
 法案の成立を見れば、まずはしっかり運用することが重要であり、今後の業種拡大は、議員御指摘のイノベーションにつなげる観点や農業現場の懸念等を踏まえ、丁寧に検討していくことが必要であると考えております。
 スマート農業の社会実装の加速化についてお尋ねがありました。
 スマート農業技術は、人口減少下においても生産性の高い食料供給体制を確立するために重要なものであると考えております。その際、スマート農機等の導入コストが高く、また、それを扱える人材が不足しているなどの課題、明らかになっています。
 このため、今国会に生産性向上のためのスマート農業の振興などを進めるための関連法案を提出しており、これに基づく税制、金融等の支援を講ずるとともに、人材の育成も図りながら、スマート農業の社会実装の加速化に取り組んでまいります。
 基本法に農福連携を位置付けた意義についてお尋ねがありました。
 今後、農村地域では人口減少、高齢化が急激に進行することが見込まれる中、農福連携の推進は、障害者を始め多様な人々の社会参画を実現すると同時に、これを通じた地域農業の振興が期待されるところです。
 今後、新しい基本法に基づき、農と福をつなぐ専門人材の育成等の取組に加えて、地域ぐるみの取組に向けた地域協議会の活動の拡大を後押しするとともに、障害者のみならず、社会に支援が必要、社会的に支援が必要な者の社会参画を促進し、政府一体となって農福連携を一層推進し、地域農業の振興を図ってまいります。
 農産物の輸出についてお尋ねがありました。
 リンゴの輸出は、日本産の味、色などの品質が評価され、春節の贈答需要などを捉えて拡大してきました。また、米の輸出については、日本産の味の良さのPRなどを実施し、海外におけるおにぎりやレストランなどの需要開拓、進めてきたところです。
 これらのほかにも、カンショ、緑茶など、輸出先のニーズを捉えて輸出額が増加している品目は多数あり、農林水産物・食品の輸出目標である二〇三〇年五兆円に向けて取組を加速してまいります。
 具体的には、輸出先国のマーケットニーズや規制に対応した輸出産地の形成、輸出の際に鮮度を維持する冷蔵保管技術など新たな技術の活用促進、これらを図ってまいります。
 食料の不測時への対応等についてお尋ねがありました。
 食料安全保障に関する周知広報については、我が国の食料安全保障リスクの高まりや対策の必要性などについて、国民への正確で分かりやすい情報提供を丁寧に行ってまいります。
 また、食料供給困難事態対策法案に関し、罰則は、食料供給が大幅に減少する事態において、生産、流通など食料供給に関わる事業者の供給力を把握するために必要最小限の措置として設けるものです。
 不測時の対策を実効的に行うため、事業者との協力関係の構築、国内生産基盤の強化、また安定的な輸入の確保など、これらの取組を平時から進めてまいります。拍手
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尾辻秀久#22
○議長(尾辻秀久君) 舟山康江君。
   〔舟山康江君登壇、拍手〕
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舟山康江#23
○舟山康江君 国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
 会派を代表し、食料・農業・農村基本法改正案について質問をいたします。
 法案審議の前に、私たち国会議員の自由な政治活動を脅かす重要な問題を共有させてください。
 香港国家安全維持法違反容疑の裁判で、ジミー・ライ被告の共謀者として菅野志桜里元衆議院議員が名指しされています。我々にとっても対岸の火事ではなく、いつどのような活動、言動が狙い撃ちされるか分かりません。
 四月十八日の衆議院本会議での我が党玉木代表の質問を受けた、香港当局に対して関心表明を行っている、言論の自由が保障されるよう毅然と対応していくとの総理答弁から、もう一歩踏み込んだ対応が不可欠です。三月の予算委員会で上川大臣に約束していただいた主権侵害に当たるかどうかの判断を政府は下していただいたのか、抗議はしないのか、不透明な裁判の詳細を把握しているのか、また、刑事共助条約上の扱いなど、総理から御答弁願います。
 さて、法案への質問に入ります。
 基本法は、一般的に政策の理念や方向性を示すもので、それゆえに、食料・農業・農村基本法は農政の憲法とも言われます。そうした性格上、制定や見直しの際は十分な現状分析や検証、議論が必要です。
 実際、一九九九年制定の現行食料・農業・農村基本法は、旧農業基本法制定から三十年後の一九九一年に、見直しを含めた検討を農水大臣が示唆したことで議論が始まりました。農水省での議論を経て、総理府に、総理の諮問機関、食料・農業・農村基本問題調査会を設置、以降約一年半、五十回超の調査会、部会などで検討を重ね、法案の閣議決定にこぎ着けるまで実に約八年の歳月を掛けています。
 一方、今回は、二〇二二年二月設置の自民党食料安全保障に関する検討委員会が僅か三か月でまとめた提言の総理への提出を契機に、九月に官邸が基本法見直しを指示したのを受ける形で、農水大臣から食料・農業・農村政策審議会に見直しを諮問、審議会の下に設置された基本法検証部会が十月に第一回の部会を開催、以降、翌年五月まで僅か十六回の部会での議論で九月に最終答申が決定。議論提起から法案閣議決定までも合わせても僅か二年で、拙速感が拭えません。
 農政の憲法である以上、前回同様、総理直属の諮問機関を中心に政府全体での十分な議論が不可欠だったはずが、なぜ結論を急いだのか、総理の答弁を求めます。
 加えて、今回の答申は、大臣からの諮問に答えていない疑念もあります。
 現行基本法では、効率的かつ安定的な農業経営を中心に強い農業を目指していましたが、これは実現されたのか。農業者も農地も維持され、農村は豊かになったのか。まずは、このような基本事項に対して答申ではどのように分析、評価しているのか、大臣、教えてください。
 食料、農業、農村をめぐる現下の課題は、単に人口減少など社会情勢がもたらしたものではなく、政策によってつくられた、その側面が大きいと考えます。だからこそ、諮問文では、基本的な政策の検証及び評価並びにこれらの政策の必要な見直しを求めているんです。基本政策の評価と現状分析なしには次なる施策は打ち出せません。
 残念ながら、現状は農業者も農地も減少、国内生産の増大も実現できず、自給率は下がる一方、生産基盤の弱体化と農村の疲弊に歯止めが掛かっていません。この現状を打破するために、これまでの政策の何を反省し、どう転換していくのか、見直しの方向性について大臣の見解を伺います。
 現場の声を反映させたのかも疑問です。昨年五月の基本法検証部会の中間取りまとめ時には、我が党も八項目にわたる提言書を直接大臣に申し入れました。この提言書は参考にしていただいたでしょうか。また、十一か所での地方意見交換会やパブコメ募集などで寄せられた多くの意見は最終答申にどのように反映しましたか。大臣、お聞かせください。
 中間取りまとめと最終答申との違いは僅か一か所、ファーストマイルという言葉の追加のみで、あとは一切変更がありません。多様な意見から浮かび上がった重要な論点に目をつぶり、拙速に組み立てた法案作成のプロセスには重大な瑕疵がないのか、総理の見解を伺います。
 具体的な内容についてお聞きします。
 現行基本法には、価格により所得確保を図るという価格政策の考え方を見直し、価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねるという明確な柱があったからこそ、議論の過程で例えば当初は否定的だった直接所得補償方式が最終答申では新たな公的支援策として有効な手法の一つと明記され、中山間地域等直接支払制度につながりました。
 WTOなどの国際交渉で価格支持政策が赤の政策として削減対象になる中、欧米型の価格支持から所得補償へ踏み出した点を私は評価しています。今回改正では、これを一歩進めるか否か、新たな基軸が見えません。政府が柱の一つとして掲げた食料安全保障も、食料の安定供給から表現を変えただけに映ります。違いを挙げるとすれば、不測時の個々への分配にウエートを置いたぐらいですが、分配するには供給が必要です。
 世界的にリスクが高まる中、国内の食料供給困難事態を迎えてから慌てて生産者に作付け指示をしても遅く、平時からの国内生産の増大こそが食料安全保障の要であり、その観点からも二条二項に食料自給率向上を明記すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
 一方、食料自給率目標が未達成で、要因などの検証もされていないことを会計検査院が指摘しています。目標を達成できなかった理由と施策の検証、併せて自給率向上に必要な施策について大臣に伺います。
 広島県が地元の総理はよく御存じでしょうが、今、農村現場は危機的状況です。条件のいい平地農業地域でさえ、高齢農家や兼業農家を含め、あと何年もつのか、ぎりぎりの状況で営農を続けています。政府の言うスマート化や効率化だけでは何の解決にもなりません。農業者減少の最大の理由は所得の低さであり、長引くデフレによる安売り競争の常態化や、関税撤廃や引下げによる海外の安価な農産物の市場席巻、資材価格の高騰による更なる収益性悪化が主な要因です。
 こうした中、改正案の二条で食料安全保障の柱の一つに掲げている合理的な価格の形成は果たしてうまく機能し、所得確保につながるのか、大臣の所見をお伺いします。
 野菜や果樹のような労働集約型かつ品質の差が価格に反映しやすい品目でさえ価格転嫁は容易でなく、ましてや土地利用型で国際価格の影響を受ける米や麦、大豆などは、海外産との競合もあり、なおさらです。さらには、低所得者層への安定供給確保の面からも、消費者負担型にはおのずと限界があります。何より必要なのは所得の確保です。先も見えず、もうかりもしないことを誰がやるのか。このままでは地域の将来計画すら描けません。
 政府は、生産性向上と高付加価値化で所得の向上を目指すと言うだけで、所得確保を担保する具体策を示していません。それどころか、法案には所得という言葉が一つも出てこないんです。価格よりも所得を基本法で明記すべきではないか、総理に伺います。
 また、改正案では農業の環境負荷ばかりが強調されていますが、本来、農業は環境調和型の産業です。有機農業など負荷低減活動への支援に加え、価格に反映されない景観形成や生物多様性の保全、洪水防止機能など、多面的な役割や価値を政策によって評価することで、再生産可能な所得を実現し、国内生産の増大による食料安全保障の確保につなげる、海外では当たり前の本格的な直接支払の政策、例えば農地への面積支払を基本とした食料安全保障基礎支払等を導入するべきです。こうした政策の必要性に対する総理の見解を伺います。
 結びに、防衛予算が特に昨年度から大幅な増額となっている一方で、同じく安全保障の要を成す食料・農業・農村関係予算は減少し続けています。国を守るのは防衛力だけではありません。食料安全保障の重要性が高まる中、農林水産予算の増額について、改めてその実現への御決意を総理からここで表明いただくようお願いし、私の質問とさせていただきます。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#24
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 舟山康江議員の御質問にお答えいたします。
 まず、香港での裁判において菅野志桜里氏が共謀者として名指しされたことについてお尋ねがありました。
 関連の裁判は現在継続中であり、政府としては、引き続き在外公館等を通じて情報収集を行うとともに、今後の進展を注視し、菅野志桜里氏に対する対応が我が国主権の侵害に当たるか否かも含め、状況の具体的な詳細について精査しながら、更なる対応ぶりについて適切に検討していく考えであります。
 その上で、我が国の民主主義の根幹を構成する言論の自由、とりわけ国の代表たる国会議員の表現の自由は尊重されるべきであり、政府として既に香港当局に対し関心表明を行ってきているほか、我が国として、国会議員の言論の自由が保護されるよう毅然として対応していく所存です。
 なお、我が国は、中国及び香港との間でそれぞれ刑事共助に関する条約又は協定を締結しており、先方から刑事共助の請求がある場合には、刑事共助の請求を受ける側が拒否できる事由があるかを含め、条約の規定に基づき個別具体的に検討の上、対応することとなります。
 食料・農業・農村基本法の見直しに関する議論の進め方についてお尋ねがありました。
 基本法の見直しは、ウクライナ情勢に見られるサプライチェーンの混乱や気候変動による世界的な不作の頻発など、世界の食料供給が不安定となり、我が国食料安全保障の強化が待ったなしの課題であるとの認識に基づくものです。
 こうした危機感とスピード感を持ちつつ、食料・農業・農村政策審議会における集中的議論、地方意見交換会や国民からの意見募集など、幅広く意見を伺い、十分な議論を経て国会に改正案を提出したものであると考えております。
 改正法案の作成プロセスについてお尋ねがありました。
 食料・農業・農村政策審議会における中間取りまとめに対して、地方意見交換会等において、資材の安定供給や適正な価格形成の必要性など、多くの貴重な御意見をいただきました。そして、それらのこの御意見の内容については、農林水産省において精査したところ、中間取りまとめの中で整理されていると認められたところです。
 そしてその上で、最終答申の取りまとめを行ったわけでありますが、最終答申の取りまとめや様々な御意見を踏まえた改正案の作成プロセスについては問題はないものであると認識をしております。
 改正案に食料自給率向上を明記することについてお尋ねがありました。
 御指摘の食料自給率については、改正案第十七条第三項において、基本計画の記載事項として、食料自給率の目標に関し、食料自給率の向上が図られるよう農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める、こうした旨明記をされています。
 基本計画の策定に当たっては、食料自給率を含め食料安全保障の確保に関する事項について、国内外の食料需給の動向等を踏まえつつ、適切な目標を設定するべく議論を進めてまいります。
 基本法への所得の明記についてお尋ねがありました。
 基本法の改正案では、基本理念において、農業経営の収益力そのものを高める観点から、新たに生産性の向上と付加価値の向上により農業の持続的な発展を図ることを規定した上で、農業経営の安定、発展を図る施策として、農地の集積、集約、収入保険等のセーフティーネット対策等に加え、スマート技術による生産性向上等を進めるための規定を盛り込んだところです。
 農業の持続的な発展を図る上で農業所得の向上が不可欠であることはおのずと明らかであり、基本法上の農業の持続的な発展との基本理念の下、各般の施策により農業所得の向上に取り組んでまいります。
 そして、直接支払政策の導入についてお尋ねがありました。
 農業の有する多面的機能が適切に発揮されるよう、農地や農業用水等の管理等を適切に行う地域の共同活動に対する直接支払として、多面的機能支払交付金を設置しています。
 基本法の改正案でも、農地保全に資する共同活動の促進に必要な施策を講ずる旨明記したところであり、今後とも、我が国の課題と、そして政策目的に対応した直接支払を含めた各般の農業政策により、食料安全保障の確保等を通じた農業の持続的な発展、これを後押ししてまいります。
 農林水産予算の増額についてお尋ねがありました。
 基本法の改正案が成立を見れば、政府として、食料安全保障の確保等に向けた施策を体系的に進めてまいります。それに合わせ、施策の実行に必要な予算についてしっかりと措置をし、食料安全保障の確保等につながる農業の現場の取組を後押ししてまいりたいと考えております。
 残余の質問については、関係大臣から答弁をさせます。拍手
   〔国務大臣坂本哲志君登壇、拍手〕
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坂本哲志#25
○国務大臣(坂本哲志君) 舟山康江議員の御質問にお答えいたします。
 農業者や農地などの基本事項に対する答申での分析、評価についてのお尋ねがありました。
 食料・農業・農村基本法が制定されて以降、約四半世紀において、人口減少に伴い国内市場は縮小し、基幹的農業従事者が半減する中にあっても、農業総産出額は九兆円前後を保っています。
 また、担い手への集積率が六割であることや、販売額五千万円以上の経営体や法人経営体の増加など、望ましい農業構造の実現に向けて進展をしています。
 一方、農村の人口減少は、以前は都市への人口流出が主要因だったものの、近年は出生減、死亡増に伴う自然減が主要因となっており、集落機能の低下を課題としています。
 次に、これまでの政策の反省、見直しの方向性についてのお尋ねがありました。
 国内人口減少、国内人口の減少に伴い農業者の減少が不可避となる中で、将来にわたって国民に食料を安定的に供給するためには、担い手の育成、確保を図りつつ、少ない人数でも食料供給可能な体制を整えることが必須だと考えています。そのためには、生産性の向上と付加価値の向上により、収益性の高い農業を実現することが重要であると考えています。
 このため、需要に応じた生産を推進しつつ、農業法人等の経営管理能力の向上、農産物のブランド化による付加価値向上や輸出による販路拡大を通じた収入の増加、地域計画の策定を通じた農地の集積、集約化や、スマート技術の開発、実用化の加速化等による生産性向上等の施策を推進してまいります。
 次に、最終答申への意見反映についてのお尋ねがありました。
 全国十一ブロックで開催された地方意見交換会やホームページを通じた意見、要望の募集では、種子の安定供給、適正な価格形成、食育等を通じた国民の理解醸成、食品アクセスの改善、人口減少下における農地や農業インフラの維持などに関する意見が主なものとしてございました。
 これらの意見については、その内容のほとんどが既に中間取りまとめの段階で網羅的に整理されていましたが、産地から集出荷場、そして貨物駅などへの輸送という、いわゆるファーストマイルに関するアクセスの課題などについては中間取りまとめに明記されていなかったことから、最終答申において追記されました。
 国民民主党の提言書については、政府に対して多岐にわたる項目について提言をいただきました。その内容については、政府と見解の分かれる食料安全保障基礎支払の導入を除けば、食料安全保障の強化、環境と調和の取れた食料システムの確立、人口減少下における生産水準の維持と発展と農村の地域社会の維持など、その趣旨は基本法改正案に反映されていると考えており、具体的な施策は法案の成立後に具体化を進めてまいります。
 次に、食料自給率についてのお尋ねがありました。
 基本法制定以降、自給率は微減傾向にあります。これは、国内で自給可能な米の消費が減少していることなど消費面での変化が主な要因となっています。目標を達成できていない要因については、米の消費の減少等による自給率の低下分が想定より大きく、海外依存の高い小麦、大豆の国内生産拡大等による上昇分を上回ってきたことと考えています。
 食料自給率の変化につきましては様々な要因が関係していますが、食料安全保障の確保の観点から最も大切なことは、国内生産を一層増大することにより輸入に過度に依存している状態を改善することだと考えています。
 このため、麦、大豆、飼料作物や加工原料用野菜等の輸入依存度の高い品目の国産転換の推進や、米粉の特徴を生かした新商品開発等による利用拡大や、米の輸出促進等による米の消費拡大や販売促進を図ってまいります。
 次に、合理的な価格形成と所得確保についてのお尋ねがありました。
 近年の資材価格等の高騰は、生産から消費に至る各段階に幅広く影響が及んでおり、食料の持続的な供給を行っていくためには食料システムの各段階で合理的な費用が考慮されるようにしなければならないと考えています。
 このため、農林水産省では、令和五年八月から、食料システムの関係者が一堂に集まる協議会を開催し、合理的な費用の考慮が行われる仕組みの構築に向けて協議を進めているところであり、この仕組みが機能するものとなるよう、丁寧に合意形成を図りながら、法制化も視野に検討を行ってまいります。
 また、農業者の所得については、こうした価格形成の仕組みづくりに加えて、生産性の向上や付加価値の向上に取り組む農業者への支援を通じて収益性の向上を促すとともに、様々な経営環境の変化に備えて、収入保険等の経営安定対策や急激な価格高騰に対する影響緩和対策等を講じ、農業者の所得向上を図ってまいります。拍手
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尾辻秀久#26
○議長(尾辻秀久君) 紙智子君。
   〔紙智子君登壇、拍手〕
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紙智子#27
○紙智子君 私は、日本共産党を代表して、食料・農業・農村基本法の一部改正について総理に質問いたします。
 一九九九年の基本法制定から二十五年、四半世紀ぶりの改定です。国民は、食料自給率の低迷、農業者や農地の急激な減少、農村の存亡の危機を強く憂えています。
 本改正案は、今後の日本の農政の方向を決める重要な法案であり、参議院において徹底審議を行い、地方と中央の公聴会を持つなど、関係者からも十分に意見を聞き取り、その意見を反映させたものとなるように強く求めます。
 現行の基本法の原案には、農業生産という言葉はあっても増大という言葉がなく、食料自給率はあっても向上という言葉はありませんでした。
 当時、世界の貿易がWTO体制に移行し、輸入自由化が進む中で、食料の国内生産を重視しようという運動と議論が展開されました。その結果、食料自給率の向上と農業生産の増大をセットで明記する修正がされたのです。この国会の意思を総理はどのように認識していますか。
 食料自給率の向上を位置付けたにもかかわらず、二〇〇〇年に四〇%あった自給率は三八%に低下しました。食料自給率目標は一度も達成されたことがありません。総理、なぜ目標が達成できなかったのですか。その反省はあるのですか。
 一九八〇年の四月に参議院は、食糧自給力強化に関する決議を採択しました。当時、ソ連によるアフガニスタン侵略によってアメリカが穀物などの対ソ禁輸措置をとったことから、世界で食糧需給が不安定化しました。決議案の提案者は、食糧が外交手段の一つとして用いられるなど、食糧輸入国である我が国にとって食糧問題は極めて重大な、重要な課題となっているとして、政府に国民生活の安全保障体制として食糧自給力の強化を求めたのです。
 ところが、アメリカから農産物を買うように求められ、日本は、日米の首脳によって設置された日米諮問委員会が一九八四年に、日本の食糧安全保障政策は、構造調整を妨げ、真の食糧安全保障をも阻害しているとの報告書を出したんです。
 その後、アメリカの圧力を受けて、牛肉・オレンジの自由化、WTO協定による自由化を進め、二〇一〇年代に入ると、安倍政権は、日豪EPAを締結し、環太平洋経済連携協定、TPPやメガFTAなど自由化を進めました。
 国内では、二〇二二年十一月の財政制度審議会が自給率の向上には疑問と投げかけ、国際分業、国際貿易のメリットを無視しているという建議を出しました。アメリカの圧力と、そして政府の経済財政政策こそが食料自給率を低下させたのではありませんか。
 ところが、本改正案には、自らの農政を反省するどころか、現行法にある、食料自給率の目標はその向上を図る指針という文言を、食料自給率の向上の改善が図られるという抽象的な表現に変えました。幾つかの目標の一つに格下げしたのではありませんか。
 一方で、食料安全保障を確保するために、あえて輸入の頭に安定的という言葉を付け加えて、安定的な輸入に依存する条文に変えています。輸入を重視し、国内生産の増大を軽視するのではありませんか。
 安倍晋三元総理は二〇一三年の日本再興戦略で、十年間で全農地面積の八割を担い手に集積すると掲げました。担い手が減っても大規模な農家に農地を集めれば耕作面積は維持できるという政策です。
 ところが、二〇二〇年の農林業センサスでは、二〇一五年から農地面積は十七万ヘクタールも減少し、五年単位で見ると最も多く減少しました。主として農業で生計を立てる基幹的農業従事者も五十万人減少、担い手が減っても規模拡大すれば農地は維持される、食料の供給は保たれるというこの政策は破綻したのではありませんか。
 農政審議会農業基本法検証部会で農業法人協会の会長は、若い人がなぜ定着しないかといえば、農業で食えないからだと発言しました。
 今から三十年前、一九九〇年当時、約二万二千円を超えていた米価は、二〇二一年には全国平均で約一万二千円まで下がりました。米作って飯食えないという叫びが出て当然です。
 全国平均の最低賃金は時給一千四円、一般労働者の平均賃金は二千百六十三円です。ところが、稲作農家の時間当たりの農業所得は、一戸当たり二〇二一年から二年連続して十円です。専業農家、主業経営体でも六百九十九円です。酪農は赤字です。総理、稲作農家で十円、酪農は赤字、これで生活できると思いますか。
 一方、生産者には米は過剰だと、作るなと言いながら、ミニマムアクセス米、輸入米は毎年減らさずに七十七万トンも輸入しています。ミニマムアクセス米の赤字は累積で六千億円を上回り、税金で穴埋めしています。この赤字をどう解消するのですか。税金は生産者の所得を増やすために使い、アメリカなどのアグリビジネスのために使うべきではありません。答弁を求めます。
 生産者の再生産を保障することは待ったなしの課題です。
 二〇二一年の各国の農業関係予算に占める直接支払などは、イギリスで六八・三%、スイス七六・八%、フランス四八・四%、ドイツ三三・九%であるのに対して、日本は二八・〇%と余りにも低い水準です。
 日本生活協同組合連合会が出した基本法見直しに関する意見書では、財政支出に基づく生産者への直接支払を求めています。今必要なのは、生産者の再生産を保障する直接支払に踏み出すことではありませんか。
 担い手について聞きます。
 農水省は、基幹的農業従事者が今後二十年で約四分の一の三十万人になると推定しています。JA全中も二〇五〇年に三十六万人に減少するとしています。
 政府の担い手政策は、効率的かつ安定的な経営体である専業農家は支援するが、兼業農家など農業以外で生計を立てている生産者は専業農家の補助者という位置付けです。新規就農者は十年前の六万五千人が今や四万五千人に減っています。政府の担い手政策は、生産者の高齢化は強調しても、新規就農者を増やす点でも経営継承を進める点でも無策そのものではありませんか。
 最後に、本改正案が食料安全保障について、国民一人一人がこれを入手できる状態であるとの定義を設けたことについてお聞きします。
 FAO、国連食糧農業機関は、食料安全保障を十分で安全かつ栄養ある食料を物理的、社会的及び経済的にも入手可能であるときに達成されると定義しています。
 農村の人口が減少し、飲食店が撤退し、買物難民が問題になり、コロナ禍、非正規で働く一人親家庭や学生が食料難に陥り、格差社会が言わば食料を手に入れることさえも困難にしました。一人一人の食料安全保障を確保するには、非正規雇用の増大といったこの格差社会を変えることが必要ではありませんか。
 今必要なのは、生産者に自己責任を迫る新自由主義の農政の転換です。私たち日本共産党は、綱領で農業を国の基幹的生産部門に位置付けています。食料自給率の向上を国政の柱に据えることを強く求め、質問といたします。拍手
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕
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岸田文雄#28
○内閣総理大臣(岸田文雄君) 紙智子議員の御質問にお答えいたします。
 基本法制定時の議員修正に関する国会の意思についての認識についてお尋ねがありました。
 現行の食料・農業・農村基本法の制定時は、衆議院において、共産党を除く各会派の共同提出で、国民に対する食料の安定供給については国内の農業生産の増大を図ることを基本として行われなければならないこと、そして、食料自給率の目標はその向上を図ることを旨として定めること、政府は基本計画を定めたときは遅滞なく国会に報告することを内容とした修正案が提出され、可決されたものと承知をしております。
 こうした国会での修正内容については、政府としてこれまで対応を進めてきたところであり、今回の改正案においても基本的には規定を維持しているところであります。
 食料自給率についてお尋ねがありました。
 食料自給率については、米の消費の減少等による低下が想定より大きく、輸入に依存する小麦、大豆の国内生産拡大等による上昇を上回ってきたところ、これが目標未達の主因と分析をしています。
 また、これまで幾多の農産物貿易交渉を重ねる中にあって、我が国の農業生産に重大な支障を招くことがないよう、必要な関税等の措置を確保してきたところです。実際、この二十年間の自給率の低下はFTA等による影響は大きくなく、また、国の政策としても自給率の向上に取り組んできたところであり、アメリカの圧力と政府の経済財政政策が自給率低下を招いたとの御指摘は当たらないと考えております。
 食料自給率と国内の農業生産の増大についてお尋ねがありました。
 食料自給率については、改正案では、基本計画の記載事項として、食料自給率の向上が図られるよう、農業者等の関係者が取り組むべき課題を明らかにして定める旨明記しており、格下げしているものではありません。また、現行の基本法において、国内の農業生産の増大を図ることを基本とする方針を明示しているところ、今回の改正に当たってもこの方針に変わりはありません。
 その上で、食料安全保障をめぐって輸入リスクの増大も課題となる中、安定的な輸入と備蓄の確保を適切に行うことが重要であることから改正案にこの点を盛り込んだところであり、国内の農業生産の増大を後押ししつつ、輸入と備蓄を適切に組み合わせながら食料安全保障の確保を図ってまいります。
 担い手の減少と農地の維持についてお尋ねがありました。
 これまで、現行基本法に基づき、食料の安定供給において中心的な役割を果たす担い手について、経営規模が大規模か中小規模か、家族経営か法人経営かにかかわらず、その経営の安定、発展を後押ししてきたところです。
 この二十年で農地面積は転用などにより約一割減少したものの、法人経営体の増加、生産性の向上などを背景に農業総産出額は九兆円前後を保ってきており、これまでの政策が破綻しているとは考えておりません。
 農業所得についてお尋ねがありました。
 将来にわたって食料の安定供給を確保するためには、収益性を確保し、農業が持続的に発展していくことが重要です。このため、改正基本法に基づき、生産性の向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、農業所得の向上を図ってまいります。
 なお、御指摘の農家の収入の統計については、例えば稲作経営の年間収入は、自家消費を目的としたり、農外収入を主と、失礼、農外収入を主としたりしている小規模農家を含めた平均値であり、農業で生計を立てていく水田作経営体の所得に着目していく必要があると考えております。
 ミニマムアクセス米についてお尋ねがありました。
 ミニマムアクセス米については、我が国の国産米の保護措置を含む全体のパッケージであるガット・ウルグアイ・ラウンド合意を受けて、ミニマムアクセス米が国産米の需給に悪影響を与えないよう国家貿易で管理をしているところであります。これに伴う財政負担は売買差損や管理経費の増により増加していますが、財政負担をできる限り削減するために、新たな仕向け先の開拓や管理経費等の削減に努めつつ、この枠組みを維持してまいります。
 他方、農業者の所得向上に向けては、改正基本法に基づき、生産性向上や付加価値向上の後押し、適正な価格形成の推進などを基本に、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講じながら、しっかりと取り組んでまいります。
 直接支払についてお尋ねがありました。
 農業者への直接支払については、現在、農地等の保全管理のための多面的機能支払、中山間地域の農業生産条件の不利を補正するための中山間地域等直接支払など、我が国農業の課題と政策目的に応じた直接支払制度を講じているところです。
 新しい基本法の下、直接支払制度と併せて、生産性向上や付加価値向上の後押し、また合理的な価格形成の推進、収入保険制度等の経営安定対策を適切に講ずることにより、農業者の所得の向上を図ってまいります。
 担い手政策についてお尋ねがありました。
 我が国農業の持続的発展に向け、新規就農者の確保や経営継承の実現は極めて重要な課題であり、現場の実態を踏まえながら、その推進を図ってきたところです。
 具体的には、新規就農施策について、支援対象者が就農後の早い段階で所得を得られるよう、令和四年度から新たに機械導入等の初期投資への支援や就農後の技術サポートを含む総合的な支援施策を追加するなど、施策の改善等を行ってまいりました。
 引き続き、現場の実態をよく踏まえながら、効果的な施策の展開に努めてまいります。
 そして、一人一人の食料安全保障の確保等についてお尋ねがありました。
 十分な食料を入手できない方々が足下で増えている現状に対応することは重要な課題であると認識をしております。このため、改正案において、新たに食料の円滑な入手の確保を位置付けたところであり、フードバンクや子供食堂等への未利用食品の提供体制づくりの支援、全国的な政府備蓄米の無償供与等の取組を進めてまいります。
 また、非正規雇用労働者の雇用の安定や処遇改善に向けてリスキリングや正規化支援を進めるとともに、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の遵守の徹底、これらの施策に取り組んでまいります。拍手
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尾辻秀久#29
○議長(尾辻秀久君) これにて質疑は終了いたしました。
     ─────・─────
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