憲法審査会
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会
会議録情報#0
平成二十九年三月二十三日(木曜日)
午前九時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 上川 陽子君 幹事 中谷 元君
幹事 根本 匠君 幹事 平沢 勝栄君
幹事 船田 元君 幹事 古屋 圭司君
幹事 武正 公一君 幹事 辻元 清美君
幹事 北側 一雄君
青山 周平君 赤枝 恒雄君
安藤 裕君 伊藤 達也君
池田 佳隆君 衛藤征士郎君
大塚 高司君 大見 正君
鬼木 誠君 後藤田正純君
佐々木 紀君 佐藤ゆかり君
園田 博之君 田畑 裕明君
高木 宏壽君 辻 清人君
土屋 正忠君 野田 毅君
福山 守君 星野 剛士君
三ッ林裕巳君 宮崎 政久君
村井 英樹君 保岡 興治君
山際大志郎君 山下 貴司君
山田 賢司君 奥野総一郎君
岸本 周平君 北神 圭朗君
後藤 祐一君 中川 正春君
古本伸一郎君 升田世喜男君
山尾志桜里君 太田 昭宏君
斉藤 鉄夫君 遠山 清彦君
赤嶺 政賢君 大平 喜信君
足立 康史君 小沢 鋭仁君
照屋 寛徳君
…………………………………
参考人
(首都大学東京教授) 木村 草太君
参考人
(弁護士) 永井 幸寿君
参考人
(防衛大学校教授) 松浦 一夫君
衆議院憲法審査会事務局長 阿部 哲也君
—————————————
委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
村井 英樹君 青山 周平君
山際大志郎君 大見 正君
山田 賢司君 三ッ林裕巳君
枝野 幸男君 升田世喜男君
細野 豪志君 後藤 祐一君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 村井 英樹君
大見 正君 山際大志郎君
三ッ林裕巳君 山田 賢司君
後藤 祐一君 細野 豪志君
升田世喜男君 枝野 幸男君
—————————————
三月二十三日
立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(田村貴昭君紹介)(第四九九号)
同(藤野保史君紹介)(第五〇〇号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第五八六号)
は本憲法審査会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(参政権の保障をめぐる諸問題(緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等))
————◇—————
この発言だけを見る →午前九時開議
出席委員
会長 森 英介君
幹事 上川 陽子君 幹事 中谷 元君
幹事 根本 匠君 幹事 平沢 勝栄君
幹事 船田 元君 幹事 古屋 圭司君
幹事 武正 公一君 幹事 辻元 清美君
幹事 北側 一雄君
青山 周平君 赤枝 恒雄君
安藤 裕君 伊藤 達也君
池田 佳隆君 衛藤征士郎君
大塚 高司君 大見 正君
鬼木 誠君 後藤田正純君
佐々木 紀君 佐藤ゆかり君
園田 博之君 田畑 裕明君
高木 宏壽君 辻 清人君
土屋 正忠君 野田 毅君
福山 守君 星野 剛士君
三ッ林裕巳君 宮崎 政久君
村井 英樹君 保岡 興治君
山際大志郎君 山下 貴司君
山田 賢司君 奥野総一郎君
岸本 周平君 北神 圭朗君
後藤 祐一君 中川 正春君
古本伸一郎君 升田世喜男君
山尾志桜里君 太田 昭宏君
斉藤 鉄夫君 遠山 清彦君
赤嶺 政賢君 大平 喜信君
足立 康史君 小沢 鋭仁君
照屋 寛徳君
…………………………………
参考人
(首都大学東京教授) 木村 草太君
参考人
(弁護士) 永井 幸寿君
参考人
(防衛大学校教授) 松浦 一夫君
衆議院憲法審査会事務局長 阿部 哲也君
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委員の異動
三月二十三日
辞任 補欠選任
村井 英樹君 青山 周平君
山際大志郎君 大見 正君
山田 賢司君 三ッ林裕巳君
枝野 幸男君 升田世喜男君
細野 豪志君 後藤 祐一君
同日
辞任 補欠選任
青山 周平君 村井 英樹君
大見 正君 山際大志郎君
三ッ林裕巳君 山田 賢司君
後藤 祐一君 細野 豪志君
升田世喜男君 枝野 幸男君
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三月二十三日
立憲主義の原則を堅持し、憲法九条を守り、生かすことに関する請願(田村貴昭君紹介)(第四九九号)
同(藤野保史君紹介)(第五〇〇号)
同(赤嶺政賢君紹介)(第五八六号)
は本憲法審査会に付託された。
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本日の会議に付した案件
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件(参政権の保障をめぐる諸問題(緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等))
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森
森英介#1
○森会長 これより会議を開きます。
日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に参政権の保障をめぐる諸問題(緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等)について調査を進めます。
本日は、本件調査のため、参考人として首都大学東京教授木村草太君、弁護士永井幸寿君及び防衛大学校教授松浦一夫君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、去る十六日の自由討議に引き続き、特に緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等についてさらに議論を深めるため、幹事会の総意に基づいた御専門の方々を参考人としてお招きしております。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
本日の議事の順序について申し上げます。
まず、木村参考人、永井参考人、松浦参考人の順に、それぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
御発言は着席のままでお願いいたします。
それでは、まず木村参考人、お願いいたします。
この発言だけを見る →日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する件、特に参政権の保障をめぐる諸問題(緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等)について調査を進めます。
本日は、本件調査のため、参考人として首都大学東京教授木村草太君、弁護士永井幸寿君及び防衛大学校教授松浦一夫君に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。
本日は、去る十六日の自由討議に引き続き、特に緊急事態における国会議員の任期の特例、解散権の在り方等についてさらに議論を深めるため、幹事会の総意に基づいた御専門の方々を参考人としてお招きしております。参考人それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
本日の議事の順序について申し上げます。
まず、木村参考人、永井参考人、松浦参考人の順に、それぞれ二十分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対しお答え願いたいと存じます。
なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることとなっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないこととなっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
御発言は着席のままでお願いいたします。
それでは、まず木村参考人、お願いいたします。
木
木村草太#2
○木村参考人 本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
私の方からは、内閣の衆議院解散権についてお話をさせていただこうと思います。
憲法が制定された当初は、衆議院に自律解散権があるのか、また、解散権行使のための条件はいかなるものかをめぐり、国会実務でも、また学説でも激しい議論が交わされたところでございました。
しかし、現在では、皆様も御存じのように、衆議院に自律解散権はないと理解されております。また、内閣が解散権を行使できるのは、内閣不信任案が可決したケースに限られず、解散の大義があれば内閣の自由な判断で解散権が行使できるとする、いわゆる七条解散説が実務上定着している状態かと思われます。
また、学説を見ましても、七条解散を違憲とする憲法学説はさほど多くないと言われております。もっとも、近年、学界では、解散権をめぐる議論が再び活性化してきており、解散権の行使に何らかの制限をかける解釈ないし憲法改正を行うべきとの議論もふえてきているところでございます。
議論が活性化するきっかけとなったのは、二〇〇五年のいわゆる郵政解散でありました。衆議院で可決した郵政民営化関連法案が参議院で否決されたことを理由に、小泉内閣が衆議院を解散いたしました。重要法案を可決した側、すなわち内閣の意向に沿った側である衆議院が解散されるという事態には違和感を禁じ得ないものがありました。その合憲性や立憲制について、学界でもそれを受け、議論が重ねられてきたところでございます。
また、二〇一四年の解散についても、かなりの任期を残した時点での解散であり、また、首相が示した解散の理由が、増税先送りの是非を問うからいわゆる経済政策を問うというふうに変遷するなど、その説明が明確でなかったために、恣意的な解散権の行使ではないかという議論が提起されたところでございました。
さらに、日本の実務から離れ、世界の議会の解散権制限の動きなどの検討からも、内閣の自由な解散権については理論的な批判が出てきているところでございます。つまり、ドイツではボン基本法の制定された一九四九年当初から、またイギリスでは二〇一一年より、内閣の解散権を明文で、憲法または法律で制限しているところでございます。
その理由は、内閣に自由な解散権を与えた場合、例えば政権に不利な統計が発表される前の段階や野党の選挙の準備ができていない段階など、与党に有利なタイミングを選んでの党利党略での解散が横行する可能性があり、何らかの歯どめが必要だと考えられたものと、それが主な要因であるというふうに考えることができます。
そこで、解散権を制限すべきか否かを検討する前提として、そもそも衆議院の解散権とは何のためにある制度なのかということを検討してみたいと思います。
君主制の時代、あるいは君主主権と呼ばれる時代にありましては、君主が、国民代表たる議会に圧力をかけるために解散権を行使するという時代がありました。昔の君主主権の時代においては、議会の解散権は議会に対する君主からの懲罰という色彩があったという指摘もあるところでございます。しかし、現在の国民主権原理を採用する現行憲法下における解散権は、国民全体のために、より民主的な政治決定を行うために行使されるべきであることは論をまたないと思われます。
この観点から、議会の解散には大きく分けて二つの機能があるとされております。
すなわち、第一の機能は、内閣と議会が対立した場合、主権者国民にその対立の裁断をしてもらう、そうした機能でございます。内閣と議会の対立については、内閣不信任案が議会で可決された場合や信任決議が否決された場合、あるいは内閣が信任をかけた重要法案が否決された場合なども含まれます。こうした場合に、内閣の方針に沿う議員を選ぶのか、それとも議会の方針に沿う議員を選ぶのか、その結果によって国民に裁断を下してもらうことができるというのが解散権の機能であります。
また、解散の第二の機能は、国政選挙で問われなかった重要な争点が新たに選挙後に発生した場合に、国民の意思を明確にするために、国民投票の代替として選挙を実施する機能です。これは、内閣と議会が必ずしも対立していない状態であっても、これまで民意の示されたことがない重要な論点が発生した場合を想定したものであります。
解散にこれらの機能があることからすれば、内閣と議会の対立が生じた場合と重要な争点が発生した場合には解散の大義があると言えるものと思われます。
そのほかに、内閣の基本的性格が変更された場合や選挙法の大改正が行われた場合、あるいは任期満了が迫っている場合など、そうした場合には解散を認める大義があるという議論もあります。しかし、これらは、突き詰めれば、今申し上げました二つのいずれかに分類可能ではないかというふうに思われます。
では、実務を離れて、現行憲法の条文を見たときに、どのような場合に解散権の行使が認められるかという点について解釈をしてみたいと思います。
皆さんも御存じのとおり、憲法が明示的に解散権の行使を想定しているのは、内閣不信任案が可決された場合ないし信任決議が否決された場合の憲法六十九条のみであります。この文言から、解散権の行使は六十九条の場合に限られるという見解、解釈にも一定の支持があるところでございます。
しかし他方で、学説の多くは、憲法七条の文言または議院内閣制という制度を理由に、解散権の行使は六十九条の場合に限定されないとの見解も採用しております。
こうした六十九条非限定説をとる学説も、純粋な党利党略での解散など、大義のない解散まで合憲と評価しているわけではありません。もっとも、憲法には解散権を制限する手がかりとなる文言がありません。このため、学説は、前例や最高裁判例の積み重ねにより、解散権を制限する慣行や判例、習律を形成すべきと指摘をしてきたところでありました。
しかしながら、残念なことに、冒頭に挙げた解散実務の前例を見る限り、解散権行使を制限する慣行や習律が確立されているとは評価しがたく、また、最高裁は解散権行使の合憲性について判断を避ける態度をとっているのも皆さんの御存じのとおりのところでございます。
このように、解散権の行使を限定する慣行や習律が十分に形成されなかった歴史を踏まえると、現状、何らかの対応をとるべき必要があると思われます。
それには二つのアプローチがあるというふうに考えられます。
まず第一は、現行憲法を前提とした上で、解散権の行使について法律で手続的な限定をかけるものであります。諸外国の憲法を見ても、解散権を行使する場合に、議長の意見表明の手続を設けたり、解散権発生の引き金となる内閣信任の動議から採決までに一定の時間をあけることを要求するものがあります。
現行憲法下で解散の前例が慣行や習律を形成できなかった一因は、内閣が解散の理由を議会で丁寧に説明したり、公式の解散理由を文書化し、明確にする手続がなかったところに大きな原因があるというふうに思われます。法律で、解散権を行使する場合には、解散の宣言から解散まで一定の時間を置き、衆議院で解散理由についての審議を行うなどの手続を設ければ、少なくとも解散理由が不明確なまま総選挙に突入するという事態は防ぐことができるように思われます。
こうした法律をつくる場合、解散権の行使を法律で制限することは合憲かということが問われることになりますが、この点、もともと憲法七条は内閣に完全に自由な解散権を認めているわけではなく、合理的な制約を法律で設けることは許されるという憲法解釈に立つのであれば、こうした法律に違憲の疑いは全く生じません。
また、仮に憲法が内閣に自由な解散権を与えているという解釈をとったとしても、今述べた法律は、内閣の解散権それ自体を制限するものではなく、慎重な手続を要求するだけのもので、憲法違反とは評価されないものと思われます。
実際、憲法が国家機関に与えた権限を法律で手続的に制限をする、あるいは慎重な手続を設けるというのはさまざまな例があるところでございまして、国会が立法を行う場合に国会法上の手続を踏む、これは当然のことでありますし、最高裁が判決を書く、司法権を行使する場合、あるいは違憲立法審査権を行使する場合に裁判所法や各種訴訟法の手続を踏むということも、これもまた当然のことであります。内閣の解散権についてもこれと同様な考えに立ち、その手続に慎重な歯どめ、手続を設けることは、憲法の理念を実現するためにも全く問題がないのではないかというふうに考えられます。
憲法審査会の任務は、憲法改正そのものについての検討だけでなく、憲法の理念を実現するための制度の整備についての検討も当然含まれていることと思われます。衆議院の解散権の議論を行うのであれば、ぜひ、法律による解散手続の整備についても御検討いただきたいというふうに考えております。
次に、解散権に合理的な制限をかける第二のアプローチとしては、現行憲法を改正し、解散権の行使条件を明文化することが考えられます。
そのための手法としてわかりやすいのは、先ほど触れましたとおり、ドイツのボン基本法やイギリスの議会任期固定法のように、解散権の行使を限定する文言を設けることであります。
ドイツのボン基本法におきましては、首相が提出いたします首相の信任決議、これが否決された場合にのみ解散権が行使できるとされておりますし、イギリスの議会任期固定法においては、基本的には不信任が可決された場合にのみ解散ができるということが決められているわけであります。
もっとも、このように、いわゆる日本国憲法六十九条型のみに解散権の行使を制限いたしますと、解散が国民投票の代替的な機能を果たせなくなるという問題は生じることと思われます。ですから、もしも六十九条型の解散に限定をするのであれば、それとあわせて、内閣や国会が重要案件を国民投票に諮る手続などを導入することも検討に値することと思われます。
国民投票への諮問手続は、解散のない参議院と内閣の意思が対立した郵政解散のような事態の調停、あるいはイギリスにおけるEU離脱問題のように、与野党、各政党の内部でもそれぞれに深刻な意見対立があり、政党単位での意思決定を主な意思決定の手法としております解散・総選挙ではうまく意思決定ができない場合の決定手続としても機能することがあります。この点では、国民投票制度は非常に魅力があり、検討に値する制度と思われます。
ただし、国民投票制度を導入する場合、その国民投票の結果にどのような効力を持たせるのかについては、国会を唯一の立法機関とする憲法四十一条との関係が大きな問題となります。国会や内閣を拘束するようなものにするのか、それとも諮問的なものにとどめるのかなど、日本国憲法の統治機構の根本的な部分にかかわる議論が必要となり、この点について合意を得るのはかなり大変かとは思われますが、しかし、解散権の制限の場合にはあわせて検討をすべき制度であろうとは思います。
以上のように、党利党略での解散を抑制するために、解散権には何らかの制限をかけていくことが合理的と考えます。
以上、解散権についての意見陳述を終えたいと思います。拍手
この発言だけを見る →私の方からは、内閣の衆議院解散権についてお話をさせていただこうと思います。
憲法が制定された当初は、衆議院に自律解散権があるのか、また、解散権行使のための条件はいかなるものかをめぐり、国会実務でも、また学説でも激しい議論が交わされたところでございました。
しかし、現在では、皆様も御存じのように、衆議院に自律解散権はないと理解されております。また、内閣が解散権を行使できるのは、内閣不信任案が可決したケースに限られず、解散の大義があれば内閣の自由な判断で解散権が行使できるとする、いわゆる七条解散説が実務上定着している状態かと思われます。
また、学説を見ましても、七条解散を違憲とする憲法学説はさほど多くないと言われております。もっとも、近年、学界では、解散権をめぐる議論が再び活性化してきており、解散権の行使に何らかの制限をかける解釈ないし憲法改正を行うべきとの議論もふえてきているところでございます。
議論が活性化するきっかけとなったのは、二〇〇五年のいわゆる郵政解散でありました。衆議院で可決した郵政民営化関連法案が参議院で否決されたことを理由に、小泉内閣が衆議院を解散いたしました。重要法案を可決した側、すなわち内閣の意向に沿った側である衆議院が解散されるという事態には違和感を禁じ得ないものがありました。その合憲性や立憲制について、学界でもそれを受け、議論が重ねられてきたところでございます。
また、二〇一四年の解散についても、かなりの任期を残した時点での解散であり、また、首相が示した解散の理由が、増税先送りの是非を問うからいわゆる経済政策を問うというふうに変遷するなど、その説明が明確でなかったために、恣意的な解散権の行使ではないかという議論が提起されたところでございました。
さらに、日本の実務から離れ、世界の議会の解散権制限の動きなどの検討からも、内閣の自由な解散権については理論的な批判が出てきているところでございます。つまり、ドイツではボン基本法の制定された一九四九年当初から、またイギリスでは二〇一一年より、内閣の解散権を明文で、憲法または法律で制限しているところでございます。
その理由は、内閣に自由な解散権を与えた場合、例えば政権に不利な統計が発表される前の段階や野党の選挙の準備ができていない段階など、与党に有利なタイミングを選んでの党利党略での解散が横行する可能性があり、何らかの歯どめが必要だと考えられたものと、それが主な要因であるというふうに考えることができます。
そこで、解散権を制限すべきか否かを検討する前提として、そもそも衆議院の解散権とは何のためにある制度なのかということを検討してみたいと思います。
君主制の時代、あるいは君主主権と呼ばれる時代にありましては、君主が、国民代表たる議会に圧力をかけるために解散権を行使するという時代がありました。昔の君主主権の時代においては、議会の解散権は議会に対する君主からの懲罰という色彩があったという指摘もあるところでございます。しかし、現在の国民主権原理を採用する現行憲法下における解散権は、国民全体のために、より民主的な政治決定を行うために行使されるべきであることは論をまたないと思われます。
この観点から、議会の解散には大きく分けて二つの機能があるとされております。
すなわち、第一の機能は、内閣と議会が対立した場合、主権者国民にその対立の裁断をしてもらう、そうした機能でございます。内閣と議会の対立については、内閣不信任案が議会で可決された場合や信任決議が否決された場合、あるいは内閣が信任をかけた重要法案が否決された場合なども含まれます。こうした場合に、内閣の方針に沿う議員を選ぶのか、それとも議会の方針に沿う議員を選ぶのか、その結果によって国民に裁断を下してもらうことができるというのが解散権の機能であります。
また、解散の第二の機能は、国政選挙で問われなかった重要な争点が新たに選挙後に発生した場合に、国民の意思を明確にするために、国民投票の代替として選挙を実施する機能です。これは、内閣と議会が必ずしも対立していない状態であっても、これまで民意の示されたことがない重要な論点が発生した場合を想定したものであります。
解散にこれらの機能があることからすれば、内閣と議会の対立が生じた場合と重要な争点が発生した場合には解散の大義があると言えるものと思われます。
そのほかに、内閣の基本的性格が変更された場合や選挙法の大改正が行われた場合、あるいは任期満了が迫っている場合など、そうした場合には解散を認める大義があるという議論もあります。しかし、これらは、突き詰めれば、今申し上げました二つのいずれかに分類可能ではないかというふうに思われます。
では、実務を離れて、現行憲法の条文を見たときに、どのような場合に解散権の行使が認められるかという点について解釈をしてみたいと思います。
皆さんも御存じのとおり、憲法が明示的に解散権の行使を想定しているのは、内閣不信任案が可決された場合ないし信任決議が否決された場合の憲法六十九条のみであります。この文言から、解散権の行使は六十九条の場合に限られるという見解、解釈にも一定の支持があるところでございます。
しかし他方で、学説の多くは、憲法七条の文言または議院内閣制という制度を理由に、解散権の行使は六十九条の場合に限定されないとの見解も採用しております。
こうした六十九条非限定説をとる学説も、純粋な党利党略での解散など、大義のない解散まで合憲と評価しているわけではありません。もっとも、憲法には解散権を制限する手がかりとなる文言がありません。このため、学説は、前例や最高裁判例の積み重ねにより、解散権を制限する慣行や判例、習律を形成すべきと指摘をしてきたところでありました。
しかしながら、残念なことに、冒頭に挙げた解散実務の前例を見る限り、解散権行使を制限する慣行や習律が確立されているとは評価しがたく、また、最高裁は解散権行使の合憲性について判断を避ける態度をとっているのも皆さんの御存じのとおりのところでございます。
このように、解散権の行使を限定する慣行や習律が十分に形成されなかった歴史を踏まえると、現状、何らかの対応をとるべき必要があると思われます。
それには二つのアプローチがあるというふうに考えられます。
まず第一は、現行憲法を前提とした上で、解散権の行使について法律で手続的な限定をかけるものであります。諸外国の憲法を見ても、解散権を行使する場合に、議長の意見表明の手続を設けたり、解散権発生の引き金となる内閣信任の動議から採決までに一定の時間をあけることを要求するものがあります。
現行憲法下で解散の前例が慣行や習律を形成できなかった一因は、内閣が解散の理由を議会で丁寧に説明したり、公式の解散理由を文書化し、明確にする手続がなかったところに大きな原因があるというふうに思われます。法律で、解散権を行使する場合には、解散の宣言から解散まで一定の時間を置き、衆議院で解散理由についての審議を行うなどの手続を設ければ、少なくとも解散理由が不明確なまま総選挙に突入するという事態は防ぐことができるように思われます。
こうした法律をつくる場合、解散権の行使を法律で制限することは合憲かということが問われることになりますが、この点、もともと憲法七条は内閣に完全に自由な解散権を認めているわけではなく、合理的な制約を法律で設けることは許されるという憲法解釈に立つのであれば、こうした法律に違憲の疑いは全く生じません。
また、仮に憲法が内閣に自由な解散権を与えているという解釈をとったとしても、今述べた法律は、内閣の解散権それ自体を制限するものではなく、慎重な手続を要求するだけのもので、憲法違反とは評価されないものと思われます。
実際、憲法が国家機関に与えた権限を法律で手続的に制限をする、あるいは慎重な手続を設けるというのはさまざまな例があるところでございまして、国会が立法を行う場合に国会法上の手続を踏む、これは当然のことでありますし、最高裁が判決を書く、司法権を行使する場合、あるいは違憲立法審査権を行使する場合に裁判所法や各種訴訟法の手続を踏むということも、これもまた当然のことであります。内閣の解散権についてもこれと同様な考えに立ち、その手続に慎重な歯どめ、手続を設けることは、憲法の理念を実現するためにも全く問題がないのではないかというふうに考えられます。
憲法審査会の任務は、憲法改正そのものについての検討だけでなく、憲法の理念を実現するための制度の整備についての検討も当然含まれていることと思われます。衆議院の解散権の議論を行うのであれば、ぜひ、法律による解散手続の整備についても御検討いただきたいというふうに考えております。
次に、解散権に合理的な制限をかける第二のアプローチとしては、現行憲法を改正し、解散権の行使条件を明文化することが考えられます。
そのための手法としてわかりやすいのは、先ほど触れましたとおり、ドイツのボン基本法やイギリスの議会任期固定法のように、解散権の行使を限定する文言を設けることであります。
ドイツのボン基本法におきましては、首相が提出いたします首相の信任決議、これが否決された場合にのみ解散権が行使できるとされておりますし、イギリスの議会任期固定法においては、基本的には不信任が可決された場合にのみ解散ができるということが決められているわけであります。
もっとも、このように、いわゆる日本国憲法六十九条型のみに解散権の行使を制限いたしますと、解散が国民投票の代替的な機能を果たせなくなるという問題は生じることと思われます。ですから、もしも六十九条型の解散に限定をするのであれば、それとあわせて、内閣や国会が重要案件を国民投票に諮る手続などを導入することも検討に値することと思われます。
国民投票への諮問手続は、解散のない参議院と内閣の意思が対立した郵政解散のような事態の調停、あるいはイギリスにおけるEU離脱問題のように、与野党、各政党の内部でもそれぞれに深刻な意見対立があり、政党単位での意思決定を主な意思決定の手法としております解散・総選挙ではうまく意思決定ができない場合の決定手続としても機能することがあります。この点では、国民投票制度は非常に魅力があり、検討に値する制度と思われます。
ただし、国民投票制度を導入する場合、その国民投票の結果にどのような効力を持たせるのかについては、国会を唯一の立法機関とする憲法四十一条との関係が大きな問題となります。国会や内閣を拘束するようなものにするのか、それとも諮問的なものにとどめるのかなど、日本国憲法の統治機構の根本的な部分にかかわる議論が必要となり、この点について合意を得るのはかなり大変かとは思われますが、しかし、解散権の制限の場合にはあわせて検討をすべき制度であろうとは思います。
以上のように、党利党略での解散を抑制するために、解散権には何らかの制限をかけていくことが合理的と考えます。
以上、解散権についての意見陳述を終えたいと思います。拍手
森
永
永井幸寿#4
○永井参考人 私は、阪神・淡路大震災で事務所が全壊して以来、二十二年間、被災者支援にかかわってきた者です。その立場でお話をいたします。
第一に、災害を理由に緊急事態条項を憲法に設けるべきかということです。
私は、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することには反対です。
緊急事態条項とは、国家緊急権を憲法に創設する条項です。国家緊急権とは、戦争、内乱、大規模災害など、平時の統治機構では対処できない非常事態に、国家の存立を維持するために人権保障と権力分立を停止する制度です。
日本国憲法は国家緊急権を置いていませんが、その趣旨は、昭和二十一年七月十五日、帝国憲法改正案委員会の議事録の中での政府の答弁で明らかにされております。国家緊急権の濫用の危険からあえて憲法には国家緊急権は設けないが、緊急事態には平常時から法律などで準備するというものです。
では、災害関連の法規は整備されているのでしょうか。これは大変よく整備されております。
例えば、内閣は、災害緊急事態には、国会のコントロールのもとで、四つの項目に限り罰則つきの政令制定権が認められております。また、内閣総理大臣は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長などに対する指示権が認められ、防衛大臣に対する自衛隊の部隊派遣要請ができ、警察庁長官を直接指揮監督して一時的に警察を統制するなど、権力が集中するシステムとなっております。
また、人権の制限に関して見ると、都道府県知事に、医療関係者に対する従事命令、財産権の管理、使用、物資の保管命令、収用の権限、職員の立入検査などが認められ、これらを罰則つきで強制しています。さらに、市町村長に対しても、瓦れきの撤去などにつき強制権が十分認められております。
では、被災者にとって一番重要な国のルールというのは何でしょう。これは、憲法ではなく、それよりも下位のルールである法律、通達、条例などです。
例えば、仮設住宅に断熱材が入るのか、あるいは復興住宅に入居するには連帯保証人が必要か、これらは被災者にとって大変重要な問題ではありますが、法の運用や条例の問題であって、憲法の問題ではありません。
災害対策の原則は何でしょう。これは、医療の専門家あるいは建築の専門家など、災害の専門家が口をそろえて言うのは、準備していないことはできないということです。
国家緊急権は、災害が発生した後、泥縄式に権力を集中する制度です。しかし、災害後にどのような権力を強力に集中しても対処することはできません。東日本大震災で国や自治体の不手際というものが言われましたが、その多くが事前に準備していなかったことが原因です。例えば、原発事故で、原発から四・五キロの双葉病院などでは、寝たきりの高齢者が避難の前後の混乱で五十人亡くなりました。
これは、なぜこういうことが起きたのでしょう。法律の制度では、国は防災基本計画、都道府県、市町村はこれに基づいて地域防災計画を策定する義務があり、そして、指定行政機関、自治体の長は防災教育の実施に努め、防災訓練の実施義務が認められています。
しかし、国、自治体、事業者において、事実上、災害で原発事故は起こらないということになっていたんです。つまり、事前に、県境を越えた避難者の避難経路、あるいは渋滞のときのサブの経路、あるいは事前のドライバーや車両の確保、そして、避難した後の長期の生活の場の確保の計画、あるいはその訓練、これについての自治体の連携や住民参加がなかったことが原因です。
法律の適正な運用による事前の準備がなかったことが原因であり、緊急事態条項を創設しても対処することはできません。
では、国と市町村の役割分担について被災市町村はどう考えているのでしょうか。このグラフの資料をごらんいただきたいと思います。
私は、平成二十七年七月から九月まで、被災三県、岩手、宮城、福島の市町村を訪問して首長にヒアリングを行い、また、日本弁護士連合会は九月に三十七市町村にアンケートを実施し、二十四市町村から回答を得ました。
アンケートでは、国と市町村の役割分担について、市町村の権限は強化すべきか、現状維持にすべきか、軽減すべきかと聞きました。現状とは、災害対策基本法による第一次的な災害対策の権限は市町村にあり、国はその後方支援を行うということです。
そのアンケートの結果は、権限強化というのが二九%、現状維持が六七%、権限軽減が四%でした。つまり、これらを総合すると、市町村は第一次的権限を持つ、または権限を強化するというのが九六%でした。
なぜこのような結果になるんでしょう。関東大震災では死者の八〇%が焼死したということです。阪神・淡路大震災では死者の八〇%が圧死しました。自宅に押し潰されたんです。東日本大震災では死者の八〇%以上が溺死しました。津波に流されたんです。このように、同じ災害というものは二つとしてありません。
そして、一つの災害でも、時間の経過によって、命を救う七十二時間以内、避難所、仮設住宅の設置、あるいは復興住宅の設置などの過程でニーズは刻々と変わっていきます。このニーズに関する情報が直ちに入り、これに対して最も効果的な対処ができるのは国ではありません。被災者に一番近い市町村です。逆に、国がこれに対処すると、情報が入らず、また公平性、画一性が求められてしまい、妥当性を欠く対応をしてしまうことになります。
では、国の役割は何か。これは後方支援です。人、物、金を出すことです。
人について言えば、マンパワーや専門性の補完のための職員の派遣です。物は、被災地の求めに応じて物資を送ることです。そして、金、これが一番重要です。市町村を信用して予算の裁量を認めるということです。
問題なのは、市町村に予算や災害対応の裁量を認めないことです。国の許認可権など法制度、運用が平常時対応であり、縦割り行政であることです。そこで首長は国との折衝に膨大な時間と労力を費やしてしまい、この時間は被災者のために費やしたいというのが首長の願いです。
福島県の浪江町長は、被災者のために一時的な医療施設をつくろうとしました。しかし、これは医療法、建築基準法、消防法、景観法に違反するということで反対されました。
災害対策は、このような災害時に包括的な適用除外法令をつくることによって対処すべきものです。
また、東日本大震災では、多くの官庁が法律の弾力的運用について通知を送りました。しかし、その数は、一自治体に千通送られたんです。被災自治体はこれに対応することは到底できませんでした。
これらは、平常時から過去の災害を調査検討して、災害時の適用除外の法律や法律の特例について恒久的な法律を制定すべきことです。そして、これは皆さんがいらっしゃる国会が行うべきことです。
また、自治体は、いつ起こるかわからない災害のために費用や時間をかけて準備するというのは現実には困難な面があります。そこで、災害時には自治体は何をどうしていいかわからないということがあります。
このノウハウを持っているのは過去の被災経験のある自治体であり、国ではありません。東日本大震災でも、神戸市や新潟県など被災経験のある自治体の職員が派遣され、適切な対応を初動期から実施することができました。これをシステム化したのが関西広域連合であり、また災害対策基本法三十条二項の職員派遣の調整の制度であります。国が行うべきことは、これらの職員派遣について予算面で後方支援することであります。
東日本大震災では、災害対策について憲法が障害になることが明らかになったという意見が繰り返し述べられたことがありました。そこで、先ほどのアンケートでは、災害対策について憲法は障害になりましたか、なったとすれば、具体的にどんな事例ですか、憲法の何条が障害になりましたかということを質問しました。すると、障害にならなかったという回答が九六%、なったという回答が四%でした。
障害になったという一自治体は、瓦れきに含まれる車両は所有者の同意が得られないので処理できなかった、憲法の財産権の改正が必要だと回答しました。しかし、憲法はもともと財産権に一定の法律の制限を認めております。そして、災害対策基本法六十四条二項は、市町村長は災害を受けた工作物または物件などに必要な措置をとれるとしています。この必要な措置には最小限の破壊も含まれます。瓦れきの車両は所有者の同意を受けずに瓦れき置き場に搬送することができ、市場価値がなければ廃棄することができます。失礼ながら、この一自治体は法律のことを御存じなかったということです。
国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の国会事故調査報告書でも、憲法が災害対策の障害になったという記載はありません。あるいは、災害対策に政府の権力を集中すべきだ、あるいは人権の大幅制約が必要だという記載もありません。憲法改正ではなく、原子力規制法規という法律の制度の改正を提言しているのです。また、新しい規制組織の設置を提案していますが、政府からの強い独立性を求めており、権力の集中とは真逆のことを述べているのです。この報告からも、憲法改正の立法事実、改正の正当性を支える社会的事実は認められません。
災害対策で最も重要なのは現場です。目の前にいる個々の被災者を救済するためにはどうすればいいのか、それが全ての出発点です。国家にどのような権力を持たせるかが出発点ではありません。災害対策は、被災者から話を聞き、被災の現場を見て、そして課題を抽出して、将来の災害を予想して策定するものです。そして、災害が発生したときは、被災者に最も近い自治体がこの準備に基づいて行動すべきものです。
災害をだしにして憲法を変えてはいけない、これは東日本大震災での被災者の言葉です。立法府の皆様には、ぜひこの言葉を理解していただきたいと思います。
以上から、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することに私は反対します。
第二に、緊急事態における国会議員の任期について申し上げます。
衆議院議員の任期は四年、または衆議院解散のときは期間満了前、これは憲法四十五条に書かれております。参議院議員の任期は六年、これは憲法四十六条に書かれています。そこで、大規模災害が選挙のときに発生した場合のために、憲法を改正して議員の任期を延長すべきかが議論されています。特に、衆議院の解散や任期満了が問題となります。
結論から申し上げますと、私は、憲法を改正して議員の任期を延長することに反対です。
まず、憲法は大規模災害時の制度を二つ設けています。一つは、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会です。衆議院が解散されたときで、国に緊急の必要があるとき、内閣は参議院の緊急集会を求めることができます。緊急集会でとられた措置は、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合は効力を失います。
二つ目は、憲法七十三条六号の法律による政令への罰則委任です。永田町での直下型地震が発生した場合のように、参議院の緊急集会も請求できない場合は、内閣は法律に基づいて政令で対処することになり、政令に実効性を持たせるためには罰則が必要となります。他方で、内閣の権力の濫用の危険があるので、特に法律の委任がないと政令に罰則が設けられないとする制度です。
これを受けて、災害対策基本法の厳格な要件のもとで、緊急時に内閣は罰則つきの政令、緊急政令が制定できます。
では、衆議院解散中に大規模災害が発生したときはどう考えるべきでしょう。
先ほどのように、内閣は参議院の緊急集会を求めて対処できます。また、災害緊急事態においては、国会閉会中や衆議院解散中で臨時国会や緊急集会の措置を待ついとまがない場合でも、災害対策基本法による緊急政令で対処できます。
では、衆議院の任期満了時に大規模災害が発生したときはどうすべきでしょう。
参議院の緊急集会の規定は、文言上は、衆議院解散のときと定めています。何らかのニーズがあった場合、憲法は最高法規でありますので、まず法律で対処することを考え、それができない場合は憲法の解釈で対処することを考え、それができないときに初めて憲法改正を検討すべきです。
まず、この場合、公職選挙法三十一条で、議員の任期満了の三十日前までに選挙を実施すると定めています。そこで、任期満了時に災害があったとしても、次の議員が選出されているので、この場合は問題がありません。
では、この三十一条の選挙の公示直前に災害があって選挙ができないとき、そのときは次の議員が選出されないことになりますが、その場合はどうすべきでしょうか。この場合は憲法の解釈となります。
参議院の緊急集会は、衆議院が解散され、議員がいなくなった場合に、参議院に国会を代替させる制度です。そして、任期満了の場合も衆議院議員がいなくなるという事態は解散の場合と同じです。したがって、同一事項については同じ扱いをすべきですので、この場合も緊急集会の規定を適用すべきものと考えます。
これに対しては、少数の参議院議員、例えば、ダブル選挙のときは全議員の一八%の議員になってしまう、これで議決をすることになる、あるいは被災地の民意を反映する議員がいないのではないかという意見があります。
しかし、緊急集会による措置というのは、これは暫定的なものでありまして、事態が回復後に速やかに衆議院の総選挙を行って、国会開会後十日以内に衆議院の同意を得るということで対処できます。被災地の民意の反映はそこで行うことができるわけです。
また、被災地域については、公職選挙法五十七条は、天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないとき、被災地域の都道府県選挙管理委員会が投票期日を延期するという繰り延べ投票を規定しています。これによって対処することが可能です。
これに対しては、繰り延べ投票では、一部選挙区では開票できず、比例代表区の議員が確定しないということが考えられますが、比例代表区の議員は衆議院議員の三分の二を超えることはないので、定足数である三分の一を満たし、衆議院は活動することができます。
ここで私が一番申し上げたいことは、被災地域の住民の意思を国会に反映することは大切でありますけれども、災害対策の法律は平常時から国会において整備しておくべきものであるということであります。先ほど申し上げたとおり、災害対策の原則は、準備していないことはできないということです。災害対策の法律の制度は、平常時から過去の災害を検討して、そして、十分時間をかけて準備しておくべきものであり、災害が発生してから準備すべきではないというふうに考えます。
以上から、緊急事態における国会議員の任期の問題は、参議院の緊急集会、公職選挙法の繰り延べ投票で対処でき、また、平常時から災害対策は行っておくべきであるという点からも、憲法改正による議員の任期延長には反対いたします。
以上です。拍手
この発言だけを見る →第一に、災害を理由に緊急事態条項を憲法に設けるべきかということです。
私は、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することには反対です。
緊急事態条項とは、国家緊急権を憲法に創設する条項です。国家緊急権とは、戦争、内乱、大規模災害など、平時の統治機構では対処できない非常事態に、国家の存立を維持するために人権保障と権力分立を停止する制度です。
日本国憲法は国家緊急権を置いていませんが、その趣旨は、昭和二十一年七月十五日、帝国憲法改正案委員会の議事録の中での政府の答弁で明らかにされております。国家緊急権の濫用の危険からあえて憲法には国家緊急権は設けないが、緊急事態には平常時から法律などで準備するというものです。
では、災害関連の法規は整備されているのでしょうか。これは大変よく整備されております。
例えば、内閣は、災害緊急事態には、国会のコントロールのもとで、四つの項目に限り罰則つきの政令制定権が認められております。また、内閣総理大臣は、関係指定行政機関の長、地方公共団体の長などに対する指示権が認められ、防衛大臣に対する自衛隊の部隊派遣要請ができ、警察庁長官を直接指揮監督して一時的に警察を統制するなど、権力が集中するシステムとなっております。
また、人権の制限に関して見ると、都道府県知事に、医療関係者に対する従事命令、財産権の管理、使用、物資の保管命令、収用の権限、職員の立入検査などが認められ、これらを罰則つきで強制しています。さらに、市町村長に対しても、瓦れきの撤去などにつき強制権が十分認められております。
では、被災者にとって一番重要な国のルールというのは何でしょう。これは、憲法ではなく、それよりも下位のルールである法律、通達、条例などです。
例えば、仮設住宅に断熱材が入るのか、あるいは復興住宅に入居するには連帯保証人が必要か、これらは被災者にとって大変重要な問題ではありますが、法の運用や条例の問題であって、憲法の問題ではありません。
災害対策の原則は何でしょう。これは、医療の専門家あるいは建築の専門家など、災害の専門家が口をそろえて言うのは、準備していないことはできないということです。
国家緊急権は、災害が発生した後、泥縄式に権力を集中する制度です。しかし、災害後にどのような権力を強力に集中しても対処することはできません。東日本大震災で国や自治体の不手際というものが言われましたが、その多くが事前に準備していなかったことが原因です。例えば、原発事故で、原発から四・五キロの双葉病院などでは、寝たきりの高齢者が避難の前後の混乱で五十人亡くなりました。
これは、なぜこういうことが起きたのでしょう。法律の制度では、国は防災基本計画、都道府県、市町村はこれに基づいて地域防災計画を策定する義務があり、そして、指定行政機関、自治体の長は防災教育の実施に努め、防災訓練の実施義務が認められています。
しかし、国、自治体、事業者において、事実上、災害で原発事故は起こらないということになっていたんです。つまり、事前に、県境を越えた避難者の避難経路、あるいは渋滞のときのサブの経路、あるいは事前のドライバーや車両の確保、そして、避難した後の長期の生活の場の確保の計画、あるいはその訓練、これについての自治体の連携や住民参加がなかったことが原因です。
法律の適正な運用による事前の準備がなかったことが原因であり、緊急事態条項を創設しても対処することはできません。
では、国と市町村の役割分担について被災市町村はどう考えているのでしょうか。このグラフの資料をごらんいただきたいと思います。
私は、平成二十七年七月から九月まで、被災三県、岩手、宮城、福島の市町村を訪問して首長にヒアリングを行い、また、日本弁護士連合会は九月に三十七市町村にアンケートを実施し、二十四市町村から回答を得ました。
アンケートでは、国と市町村の役割分担について、市町村の権限は強化すべきか、現状維持にすべきか、軽減すべきかと聞きました。現状とは、災害対策基本法による第一次的な災害対策の権限は市町村にあり、国はその後方支援を行うということです。
そのアンケートの結果は、権限強化というのが二九%、現状維持が六七%、権限軽減が四%でした。つまり、これらを総合すると、市町村は第一次的権限を持つ、または権限を強化するというのが九六%でした。
なぜこのような結果になるんでしょう。関東大震災では死者の八〇%が焼死したということです。阪神・淡路大震災では死者の八〇%が圧死しました。自宅に押し潰されたんです。東日本大震災では死者の八〇%以上が溺死しました。津波に流されたんです。このように、同じ災害というものは二つとしてありません。
そして、一つの災害でも、時間の経過によって、命を救う七十二時間以内、避難所、仮設住宅の設置、あるいは復興住宅の設置などの過程でニーズは刻々と変わっていきます。このニーズに関する情報が直ちに入り、これに対して最も効果的な対処ができるのは国ではありません。被災者に一番近い市町村です。逆に、国がこれに対処すると、情報が入らず、また公平性、画一性が求められてしまい、妥当性を欠く対応をしてしまうことになります。
では、国の役割は何か。これは後方支援です。人、物、金を出すことです。
人について言えば、マンパワーや専門性の補完のための職員の派遣です。物は、被災地の求めに応じて物資を送ることです。そして、金、これが一番重要です。市町村を信用して予算の裁量を認めるということです。
問題なのは、市町村に予算や災害対応の裁量を認めないことです。国の許認可権など法制度、運用が平常時対応であり、縦割り行政であることです。そこで首長は国との折衝に膨大な時間と労力を費やしてしまい、この時間は被災者のために費やしたいというのが首長の願いです。
福島県の浪江町長は、被災者のために一時的な医療施設をつくろうとしました。しかし、これは医療法、建築基準法、消防法、景観法に違反するということで反対されました。
災害対策は、このような災害時に包括的な適用除外法令をつくることによって対処すべきものです。
また、東日本大震災では、多くの官庁が法律の弾力的運用について通知を送りました。しかし、その数は、一自治体に千通送られたんです。被災自治体はこれに対応することは到底できませんでした。
これらは、平常時から過去の災害を調査検討して、災害時の適用除外の法律や法律の特例について恒久的な法律を制定すべきことです。そして、これは皆さんがいらっしゃる国会が行うべきことです。
また、自治体は、いつ起こるかわからない災害のために費用や時間をかけて準備するというのは現実には困難な面があります。そこで、災害時には自治体は何をどうしていいかわからないということがあります。
このノウハウを持っているのは過去の被災経験のある自治体であり、国ではありません。東日本大震災でも、神戸市や新潟県など被災経験のある自治体の職員が派遣され、適切な対応を初動期から実施することができました。これをシステム化したのが関西広域連合であり、また災害対策基本法三十条二項の職員派遣の調整の制度であります。国が行うべきことは、これらの職員派遣について予算面で後方支援することであります。
東日本大震災では、災害対策について憲法が障害になることが明らかになったという意見が繰り返し述べられたことがありました。そこで、先ほどのアンケートでは、災害対策について憲法は障害になりましたか、なったとすれば、具体的にどんな事例ですか、憲法の何条が障害になりましたかということを質問しました。すると、障害にならなかったという回答が九六%、なったという回答が四%でした。
障害になったという一自治体は、瓦れきに含まれる車両は所有者の同意が得られないので処理できなかった、憲法の財産権の改正が必要だと回答しました。しかし、憲法はもともと財産権に一定の法律の制限を認めております。そして、災害対策基本法六十四条二項は、市町村長は災害を受けた工作物または物件などに必要な措置をとれるとしています。この必要な措置には最小限の破壊も含まれます。瓦れきの車両は所有者の同意を受けずに瓦れき置き場に搬送することができ、市場価値がなければ廃棄することができます。失礼ながら、この一自治体は法律のことを御存じなかったということです。
国会の東京電力福島原子力発電所事故調査委員会の国会事故調査報告書でも、憲法が災害対策の障害になったという記載はありません。あるいは、災害対策に政府の権力を集中すべきだ、あるいは人権の大幅制約が必要だという記載もありません。憲法改正ではなく、原子力規制法規という法律の制度の改正を提言しているのです。また、新しい規制組織の設置を提案していますが、政府からの強い独立性を求めており、権力の集中とは真逆のことを述べているのです。この報告からも、憲法改正の立法事実、改正の正当性を支える社会的事実は認められません。
災害対策で最も重要なのは現場です。目の前にいる個々の被災者を救済するためにはどうすればいいのか、それが全ての出発点です。国家にどのような権力を持たせるかが出発点ではありません。災害対策は、被災者から話を聞き、被災の現場を見て、そして課題を抽出して、将来の災害を予想して策定するものです。そして、災害が発生したときは、被災者に最も近い自治体がこの準備に基づいて行動すべきものです。
災害をだしにして憲法を変えてはいけない、これは東日本大震災での被災者の言葉です。立法府の皆様には、ぜひこの言葉を理解していただきたいと思います。
以上から、災害を理由にした緊急事態条項を憲法に創設することに私は反対します。
第二に、緊急事態における国会議員の任期について申し上げます。
衆議院議員の任期は四年、または衆議院解散のときは期間満了前、これは憲法四十五条に書かれております。参議院議員の任期は六年、これは憲法四十六条に書かれています。そこで、大規模災害が選挙のときに発生した場合のために、憲法を改正して議員の任期を延長すべきかが議論されています。特に、衆議院の解散や任期満了が問題となります。
結論から申し上げますと、私は、憲法を改正して議員の任期を延長することに反対です。
まず、憲法は大規模災害時の制度を二つ設けています。一つは、憲法五十四条二項の参議院の緊急集会です。衆議院が解散されたときで、国に緊急の必要があるとき、内閣は参議院の緊急集会を求めることができます。緊急集会でとられた措置は、次の国会開会の後十日以内に衆議院の同意がない場合は効力を失います。
二つ目は、憲法七十三条六号の法律による政令への罰則委任です。永田町での直下型地震が発生した場合のように、参議院の緊急集会も請求できない場合は、内閣は法律に基づいて政令で対処することになり、政令に実効性を持たせるためには罰則が必要となります。他方で、内閣の権力の濫用の危険があるので、特に法律の委任がないと政令に罰則が設けられないとする制度です。
これを受けて、災害対策基本法の厳格な要件のもとで、緊急時に内閣は罰則つきの政令、緊急政令が制定できます。
では、衆議院解散中に大規模災害が発生したときはどう考えるべきでしょう。
先ほどのように、内閣は参議院の緊急集会を求めて対処できます。また、災害緊急事態においては、国会閉会中や衆議院解散中で臨時国会や緊急集会の措置を待ついとまがない場合でも、災害対策基本法による緊急政令で対処できます。
では、衆議院の任期満了時に大規模災害が発生したときはどうすべきでしょう。
参議院の緊急集会の規定は、文言上は、衆議院解散のときと定めています。何らかのニーズがあった場合、憲法は最高法規でありますので、まず法律で対処することを考え、それができない場合は憲法の解釈で対処することを考え、それができないときに初めて憲法改正を検討すべきです。
まず、この場合、公職選挙法三十一条で、議員の任期満了の三十日前までに選挙を実施すると定めています。そこで、任期満了時に災害があったとしても、次の議員が選出されているので、この場合は問題がありません。
では、この三十一条の選挙の公示直前に災害があって選挙ができないとき、そのときは次の議員が選出されないことになりますが、その場合はどうすべきでしょうか。この場合は憲法の解釈となります。
参議院の緊急集会は、衆議院が解散され、議員がいなくなった場合に、参議院に国会を代替させる制度です。そして、任期満了の場合も衆議院議員がいなくなるという事態は解散の場合と同じです。したがって、同一事項については同じ扱いをすべきですので、この場合も緊急集会の規定を適用すべきものと考えます。
これに対しては、少数の参議院議員、例えば、ダブル選挙のときは全議員の一八%の議員になってしまう、これで議決をすることになる、あるいは被災地の民意を反映する議員がいないのではないかという意見があります。
しかし、緊急集会による措置というのは、これは暫定的なものでありまして、事態が回復後に速やかに衆議院の総選挙を行って、国会開会後十日以内に衆議院の同意を得るということで対処できます。被災地の民意の反映はそこで行うことができるわけです。
また、被災地域については、公職選挙法五十七条は、天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないとき、被災地域の都道府県選挙管理委員会が投票期日を延期するという繰り延べ投票を規定しています。これによって対処することが可能です。
これに対しては、繰り延べ投票では、一部選挙区では開票できず、比例代表区の議員が確定しないということが考えられますが、比例代表区の議員は衆議院議員の三分の二を超えることはないので、定足数である三分の一を満たし、衆議院は活動することができます。
ここで私が一番申し上げたいことは、被災地域の住民の意思を国会に反映することは大切でありますけれども、災害対策の法律は平常時から国会において整備しておくべきものであるということであります。先ほど申し上げたとおり、災害対策の原則は、準備していないことはできないということです。災害対策の法律の制度は、平常時から過去の災害を検討して、そして、十分時間をかけて準備しておくべきものであり、災害が発生してから準備すべきではないというふうに考えます。
以上から、緊急事態における国会議員の任期の問題は、参議院の緊急集会、公職選挙法の繰り延べ投票で対処でき、また、平常時から災害対策は行っておくべきであるという点からも、憲法改正による議員の任期延長には反対いたします。
以上です。拍手
森
松
松浦一夫#6
○松浦参考人 本日は、意見発表の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
私は、憲法に緊急事態条項は必要であると考え、その中に、緊急事態における国会議員の任期延長と議会解散権の制限を盛り込むことに賛成の立場から、主に比較憲法的視点から意見を述べさせていただきます。
自民党が平成二十四年に憲法改正草案を発表して以来、その九十八条、九十九条にある緊急事態条項が内閣独裁条項であるとして批判を受けています。特に、自然災害を緊急事態に含め、政府への権力集中を認めさせることについては、災害対応の必要を口実にすれば国民の理解を得られやすい、改憲への突破口にできるといった自民党の下心を指摘する論者もあります。
こうした論者の中には、諸外国の緊急事態条項のほとんどは戦時対応を目的としており、自然災害を緊急事態として明文化するものは少ないと主張し、大規模災害対応の必要を改憲の糸口としようとする姿勢を批判する者があります。
しかし、諸外国の例が少ないことを挙げて、日本でも災害緊急事態を憲法上想定する必要はないと主張することは、若干的外れであろうと思います。日本ほど大災害が多発する国はまれであり、特に大地震が周期的に発生する我が国においては、諸外国にはない災害緊急事態条項の必要が認められるものと考えます。仮に諸外国の憲法に災害緊急事態の規定が少ないとしても、国家の中枢機能が脅かされるほどの大規模自然災害が発生する可能性が少ないからであることも考えられます。
一方、自然災害により国家が壊滅的打撃を受けた経験がある国の憲法には、災害緊急事態の規定が明文化される場合があります。例えばモルディブ。地震や津波の被害をたびたび経験し、地球温暖化による海面上昇に悩む島嶼国であるモルディブの憲法は、自然災害を緊急事態条項の最初に挙げております。これは二百五十三条であります。
ポルトガル憲法第十九条二項は、戒厳または緊急事態は、外国軍による侵略が現にあり、あるいはこれが急迫している場合、憲法の民主主義的秩序への重大な脅威または妨害、もしくは公共の災害の場合にのみ、ポルトガルの領土の一部または全部において宣言することができるとして、災害を緊急事態布告の対象に含めております。ポルトガルは一五三一年と一七五五年に大地震があり、リスボンが壊滅的打撃を受けた経験があります。災害を緊急事態に含めるのも、そうした歴史が多少影響しているのかもしれません。
ところで、緊急事態憲法条項を導入することに反対する論者の中には、法律レベルの対応で十分であると主張する者があります。日本には、防衛、治安、災害対策の各分野で緊急事態対応を定める規定が既にあり、不足があればこれを改善すればよい、緊急時に必要となる人権制限も公共の福祉による制約で説明できる、憲法を改正しなくても緊急事態法律規定の拡充で十分対応できると。
私も、このような考えを全面否定するつもりはありません。これまでも東日本大震災を含め多くの大規模災害を経験してきた日本では、その反省を生かし、平常時から予想できる緊急事態については、通常の法律を十分に整備すべきだということに全く異論はありません。日本も既に災害対策法制や武力攻撃事態対処法制の整備に努め、制度の改善にも努めてきました。しかし、それでも大災害や他国の武力攻撃などに見舞われた場合には、どうしても想定外の事態は生じ得る可能性はある。
自然災害に限ってみても、政府が公表した南海トラフ地震による被害推計は、想定外をなくすということで最悪の場合を想定していますが、死者・行方不明者は三十三万人。これは東日本大震災は一万九千人であります。建築物の全壊棟数が約二百三十九万棟と推計しております。これは東日本大震災は十三万棟。津波による浸水面積は千十五平方キロメートル。これは東日本大震災の場合は五百六十一平方キロメートルであります。
そのようなことからしまして、南海トラフ地震の被害規模は東日本大震災等とは異次元であり、これまでの経験則が通用するとは限りません。首都圏直下型地震が発生し、首都機能や国家の中枢機能が麻痺した場合、これをバックアップすることも困難です。想定できない非常事態に臨機応変の対応に迫られたとき、憲法の通常のルールでは対応できない場合、どのように対応するかの憲法上の制度枠組みは必要です。憲法条項の例外は憲法自体が定めるよりほかないからです。
そして、日本の場合、憲法の例外を定めるべき事項の一つが、衆議院の議員任期の延長と解散権の制限であります。
衆議院が解散され、あるいは任期満了により総選挙が必要になったとき、大震災などの混乱を理由に選挙ができないことが仮にあったとしても、参議院の緊急集会があれば国会の機能は維持され、対応はできるという意見がありますが、これには問題もあります。
既に多くの論者が指摘するように、緊急集会でとられた措置は衆議院選挙後の次の国会開会までの臨時的措置であり、衆院解散から最長でも七十日以内には国会の召集ができることを前提にしております。大災害により選挙が半年以上延期され衆議院が機能しないような最悪の事態を想定するならば、参議院の緊急集会で十分対応できるとは考えにくいと思います。
衆議院議員の任期延長は、国民の参政権を奪うことになるから行うべきではない、選挙は実施すべきであり、任期の延長を安易に認めるべきではないとする意見もあります。もちろん、非常時においても有権者の投票機会はできる限り確保されるべきであり、可能であれば総選挙が実施されるべきことは言うまでもありません。
それでも、被災地においては選挙の実施は困難なことがある。その場合は、繰り延べ投票で対処すべきとする意見がありますが、これには繰り延べ投票の対象地域の議員が一定期間不在となる欠陥も指摘されているところであり、繰り延べ期間が長期にわたる場合、被災地及び被災地を含む比例区の住民の選挙権のみが相当期間停止されることになり、問題が残ることは既に指摘されております。
仮に、現憲法下で大規模災害により緊急事態が発生した場合、むしろ内閣による衆議院解散権の濫用の危険があるとも考えられます。
政府の緊急事態対応に対し、国会、特に衆議院がこれを支持せず、緊急の必要がある立法措置が円滑にとれなくなった場合、内閣が衆議院を解散し、国会の機能は参議院の緊急集会で代行させ、緊急案件を次々に通過させる、参議院を単なる政府の翼賛機関として利用し、衆議院は総選挙を実施できる見込みもないまま放置、無視されるという事態は考えられないのか。参議院の緊急集会には会期はなく、内閣が提示する緊急案件が全て議決されるまで継続することになりますから、衆議院選挙が可能な状態が回復され特別会が召集されるまで、このような不適切な状態が続くことになります。
もちろん、災害対応が急務のときに解散に打って出るようなことは異常事態というべきでありますが、議院内閣制の運用の行き詰まりからそのような異常事態が発生する可能性は、完全には否定できないようにも思います。
自民党改憲案の緊急事態条項は独裁条項であると批判されますが、真に独裁をもくろむ権力者が政権にある場合には、現行憲法のもとでも、緊急事態対応を大義名分として権力の独裁的濫用の可能性は考えられます。むしろ、緊急事態条項を導入し、緊急事態宣言のもとでは、従来の国会両院の機能を維持するため衆議院の解散を禁じ、議員任期を延長して国会が政府を監視する方がよほど安全ではないのか。そうであるからこそ、諸外国の憲法にも、緊急事態における議員任期の延長や議会解散を禁じる憲法規定を定めるものがあるのだと考えます。
諸外国の例につきましては、事務局が作成しました資料九十二号五十四ページから五十五ページに整理されていますが、少し補足説明をいたします。
フランス憲法第十六条、大統領の非常措置権は、大統領が非常措置をとる間、国会は当然に集会し、国民議会を解散することができない旨定めます。
ドイツ基本法第百十五h条は、防衛事態、防衛事態というのは日本で言う武力攻撃事態を意味しますが、この防衛事態の期間中に満了する連邦議会または州議会の議員の任期は、防衛事態の期間は延長され、事態終結後六カ月を経て終了するものと定めています。防衛事態の期間中に連邦大統領の任期が満了した場合にも任期は延長され、事態終結後九カ月を経て終了するものとされています。また、防衛事態の発生に際して連邦議会が集会不能になった場合に備え、連邦議会議員三十二名と連邦参議院議員十六名から構成される合同委員会というものが設置されることになっており、平常時からその委員が任命されておりまして、連邦議会が集会不能となった場合に直ちに活動を開始できる仕組みを憲法上備えております。これは五十三a条であります。
これ以外にも、緊急事態における議員任期の延長や国会解散禁止を定める国は多くあります。
例えば、エストニア憲法第百三十一条は、緊急事態または戦争事態において、国会、大統領及び地方政府の代表機関は選挙されることはなく、また任期が当該事態の終結から三カ月以内まで延長されることが規定されております。
ハンガリー憲法第四十八条七項は、国家危機事態の期間中、国会は自律的にも他律的にも解散することはできないと定めています。そして、緊急事態の期間、選挙は実施されず、新国会のための選挙は緊急事態終結後九十日以内に実施されることになっています。
スペイン憲法第百十六条によれば、警戒事態、緊急事態及び戒厳のいずれかが宣告されている期間中は、下院の解散が禁じられます。
先ほど、憲法に災害緊急事態を定める例として挙げたモルディブ憲法八十条も、非常事態のとき、議会選挙の延期と議員任期を延長する旨を定めております。
ポルトガル憲法も、百七十二条一項で、戒厳または緊急事態が布告されている間は国会を解散することはできないと定めるとともに、その間の憲法改正も禁じております。
緊急事態における議員任期の延長については、これ以外にも、イタリア憲法六十条、スロベニア憲法八十一条などにも定められるところであります。
自民党の憲法改正草案九十九条が、緊急事態の期間、衆議院の解散を禁じ、両議院の議員の任期等の特例を設けることとしたのも、政府の緊急事態対応を国会が継続して監視できるよう配慮したものと評価できます。
もっとも、私は自民党改憲案の全てに賛成しているわけではなく、欠陥があることも既に別の場所で指摘しております。
自民党案を批判する論者が特に問題視するのは、政府の緊急政令制定権の濫用のおそれです。自民党案では、内閣総理大臣による緊急事態宣言に対する国会の承認手続も、政府による緊急政令の制定と、これに関する国会の事後承認についても、その詳細は法律で定めることになっています。したがって、緊急事態憲法条項を実施する法律が制定されないと明確にならない点が多く残されています。
例えば、緊急政令について国会の事後承認がいつまでに必要なのか、承認が得られない場合には、緊急政令により既にとられた措置の効力はどうなるかなどについては、自民党案の条文だけでははっきりしない。また、緊急政令にも限界はあるはずで、緊急事態対処に必要であることを名目に何でもできるということにはならないはずです。
緊急政令は法律と同一の効力を有するとされていますが、ということは、既存の法律を全面改正し、どのような内容にでも変更できるのか、既存の法律を廃止することすらできるのか、改憲案九十八条、九十九条の施行法律すらも緊急政令により改正、廃止できるとすれば問題であります。施行法律が緊急政令により無効化され、あるいは施行法律がそもそも制定されない、このようなことになれば憲法上の政府の緊急立法権だけが残り、これを規律する法がないことになります。ナチス独裁を招いた原因としてしばしば批判されるドイツ・ワイマール共和国憲法四十八条の大統領非常措置権が濫用された一因も、この条項を実施する法律が制定されなかったことにありました。
私は、自民党改憲案にあるこのような不安を払拭するために、改憲論議と並行して、緊急事態憲法条項の施行法律を緊急事態基本法として案文の詳細を詰めておくべきであると考えます。
この法律の中で、緊急政令に委任すべき事項を限定列記するとともに、緊急政令ではできないことを定める、例えば、緊急事態においても停止されてはならない特定の基本権を国際人権条約に従い明記するなどが考えられます。そして、緊急事態施行法律自体は、緊急事態宣言下では緊急政令によっては変更できないことを憲法に明記する必要があると考えます。
二〇〇四年五月、民主、公明、自民三党間で緊急事態基本法の制定について合意がなされております。しかし、その後、この議論が進展したという話は聞きません。広島県議会、福井県議会など多くの地方議会が地方自治法第九十九条に基づき緊急事態基本法の早期制定を求める意見書を提出していますが、いまだに進展はありません。
当時の民主党の緊急事態基本法骨子案では、国家緊急事態について、我が国に対する外部からの武力攻撃、テロリストによる大規模な攻撃、大規模な自然災害等の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態と定義しており、自民党の改憲案第九十八条一項の定義と共通点があります。
緊急事態憲法条項の導入の是非に関する議論にあわせ、この緊急事態基本法制定への具体的取り組みを期待しつつ、私の意見を終わらせていただきます。
以上であります。拍手
この発言だけを見る →私は、憲法に緊急事態条項は必要であると考え、その中に、緊急事態における国会議員の任期延長と議会解散権の制限を盛り込むことに賛成の立場から、主に比較憲法的視点から意見を述べさせていただきます。
自民党が平成二十四年に憲法改正草案を発表して以来、その九十八条、九十九条にある緊急事態条項が内閣独裁条項であるとして批判を受けています。特に、自然災害を緊急事態に含め、政府への権力集中を認めさせることについては、災害対応の必要を口実にすれば国民の理解を得られやすい、改憲への突破口にできるといった自民党の下心を指摘する論者もあります。
こうした論者の中には、諸外国の緊急事態条項のほとんどは戦時対応を目的としており、自然災害を緊急事態として明文化するものは少ないと主張し、大規模災害対応の必要を改憲の糸口としようとする姿勢を批判する者があります。
しかし、諸外国の例が少ないことを挙げて、日本でも災害緊急事態を憲法上想定する必要はないと主張することは、若干的外れであろうと思います。日本ほど大災害が多発する国はまれであり、特に大地震が周期的に発生する我が国においては、諸外国にはない災害緊急事態条項の必要が認められるものと考えます。仮に諸外国の憲法に災害緊急事態の規定が少ないとしても、国家の中枢機能が脅かされるほどの大規模自然災害が発生する可能性が少ないからであることも考えられます。
一方、自然災害により国家が壊滅的打撃を受けた経験がある国の憲法には、災害緊急事態の規定が明文化される場合があります。例えばモルディブ。地震や津波の被害をたびたび経験し、地球温暖化による海面上昇に悩む島嶼国であるモルディブの憲法は、自然災害を緊急事態条項の最初に挙げております。これは二百五十三条であります。
ポルトガル憲法第十九条二項は、戒厳または緊急事態は、外国軍による侵略が現にあり、あるいはこれが急迫している場合、憲法の民主主義的秩序への重大な脅威または妨害、もしくは公共の災害の場合にのみ、ポルトガルの領土の一部または全部において宣言することができるとして、災害を緊急事態布告の対象に含めております。ポルトガルは一五三一年と一七五五年に大地震があり、リスボンが壊滅的打撃を受けた経験があります。災害を緊急事態に含めるのも、そうした歴史が多少影響しているのかもしれません。
ところで、緊急事態憲法条項を導入することに反対する論者の中には、法律レベルの対応で十分であると主張する者があります。日本には、防衛、治安、災害対策の各分野で緊急事態対応を定める規定が既にあり、不足があればこれを改善すればよい、緊急時に必要となる人権制限も公共の福祉による制約で説明できる、憲法を改正しなくても緊急事態法律規定の拡充で十分対応できると。
私も、このような考えを全面否定するつもりはありません。これまでも東日本大震災を含め多くの大規模災害を経験してきた日本では、その反省を生かし、平常時から予想できる緊急事態については、通常の法律を十分に整備すべきだということに全く異論はありません。日本も既に災害対策法制や武力攻撃事態対処法制の整備に努め、制度の改善にも努めてきました。しかし、それでも大災害や他国の武力攻撃などに見舞われた場合には、どうしても想定外の事態は生じ得る可能性はある。
自然災害に限ってみても、政府が公表した南海トラフ地震による被害推計は、想定外をなくすということで最悪の場合を想定していますが、死者・行方不明者は三十三万人。これは東日本大震災は一万九千人であります。建築物の全壊棟数が約二百三十九万棟と推計しております。これは東日本大震災は十三万棟。津波による浸水面積は千十五平方キロメートル。これは東日本大震災の場合は五百六十一平方キロメートルであります。
そのようなことからしまして、南海トラフ地震の被害規模は東日本大震災等とは異次元であり、これまでの経験則が通用するとは限りません。首都圏直下型地震が発生し、首都機能や国家の中枢機能が麻痺した場合、これをバックアップすることも困難です。想定できない非常事態に臨機応変の対応に迫られたとき、憲法の通常のルールでは対応できない場合、どのように対応するかの憲法上の制度枠組みは必要です。憲法条項の例外は憲法自体が定めるよりほかないからです。
そして、日本の場合、憲法の例外を定めるべき事項の一つが、衆議院の議員任期の延長と解散権の制限であります。
衆議院が解散され、あるいは任期満了により総選挙が必要になったとき、大震災などの混乱を理由に選挙ができないことが仮にあったとしても、参議院の緊急集会があれば国会の機能は維持され、対応はできるという意見がありますが、これには問題もあります。
既に多くの論者が指摘するように、緊急集会でとられた措置は衆議院選挙後の次の国会開会までの臨時的措置であり、衆院解散から最長でも七十日以内には国会の召集ができることを前提にしております。大災害により選挙が半年以上延期され衆議院が機能しないような最悪の事態を想定するならば、参議院の緊急集会で十分対応できるとは考えにくいと思います。
衆議院議員の任期延長は、国民の参政権を奪うことになるから行うべきではない、選挙は実施すべきであり、任期の延長を安易に認めるべきではないとする意見もあります。もちろん、非常時においても有権者の投票機会はできる限り確保されるべきであり、可能であれば総選挙が実施されるべきことは言うまでもありません。
それでも、被災地においては選挙の実施は困難なことがある。その場合は、繰り延べ投票で対処すべきとする意見がありますが、これには繰り延べ投票の対象地域の議員が一定期間不在となる欠陥も指摘されているところであり、繰り延べ期間が長期にわたる場合、被災地及び被災地を含む比例区の住民の選挙権のみが相当期間停止されることになり、問題が残ることは既に指摘されております。
仮に、現憲法下で大規模災害により緊急事態が発生した場合、むしろ内閣による衆議院解散権の濫用の危険があるとも考えられます。
政府の緊急事態対応に対し、国会、特に衆議院がこれを支持せず、緊急の必要がある立法措置が円滑にとれなくなった場合、内閣が衆議院を解散し、国会の機能は参議院の緊急集会で代行させ、緊急案件を次々に通過させる、参議院を単なる政府の翼賛機関として利用し、衆議院は総選挙を実施できる見込みもないまま放置、無視されるという事態は考えられないのか。参議院の緊急集会には会期はなく、内閣が提示する緊急案件が全て議決されるまで継続することになりますから、衆議院選挙が可能な状態が回復され特別会が召集されるまで、このような不適切な状態が続くことになります。
もちろん、災害対応が急務のときに解散に打って出るようなことは異常事態というべきでありますが、議院内閣制の運用の行き詰まりからそのような異常事態が発生する可能性は、完全には否定できないようにも思います。
自民党改憲案の緊急事態条項は独裁条項であると批判されますが、真に独裁をもくろむ権力者が政権にある場合には、現行憲法のもとでも、緊急事態対応を大義名分として権力の独裁的濫用の可能性は考えられます。むしろ、緊急事態条項を導入し、緊急事態宣言のもとでは、従来の国会両院の機能を維持するため衆議院の解散を禁じ、議員任期を延長して国会が政府を監視する方がよほど安全ではないのか。そうであるからこそ、諸外国の憲法にも、緊急事態における議員任期の延長や議会解散を禁じる憲法規定を定めるものがあるのだと考えます。
諸外国の例につきましては、事務局が作成しました資料九十二号五十四ページから五十五ページに整理されていますが、少し補足説明をいたします。
フランス憲法第十六条、大統領の非常措置権は、大統領が非常措置をとる間、国会は当然に集会し、国民議会を解散することができない旨定めます。
ドイツ基本法第百十五h条は、防衛事態、防衛事態というのは日本で言う武力攻撃事態を意味しますが、この防衛事態の期間中に満了する連邦議会または州議会の議員の任期は、防衛事態の期間は延長され、事態終結後六カ月を経て終了するものと定めています。防衛事態の期間中に連邦大統領の任期が満了した場合にも任期は延長され、事態終結後九カ月を経て終了するものとされています。また、防衛事態の発生に際して連邦議会が集会不能になった場合に備え、連邦議会議員三十二名と連邦参議院議員十六名から構成される合同委員会というものが設置されることになっており、平常時からその委員が任命されておりまして、連邦議会が集会不能となった場合に直ちに活動を開始できる仕組みを憲法上備えております。これは五十三a条であります。
これ以外にも、緊急事態における議員任期の延長や国会解散禁止を定める国は多くあります。
例えば、エストニア憲法第百三十一条は、緊急事態または戦争事態において、国会、大統領及び地方政府の代表機関は選挙されることはなく、また任期が当該事態の終結から三カ月以内まで延長されることが規定されております。
ハンガリー憲法第四十八条七項は、国家危機事態の期間中、国会は自律的にも他律的にも解散することはできないと定めています。そして、緊急事態の期間、選挙は実施されず、新国会のための選挙は緊急事態終結後九十日以内に実施されることになっています。
スペイン憲法第百十六条によれば、警戒事態、緊急事態及び戒厳のいずれかが宣告されている期間中は、下院の解散が禁じられます。
先ほど、憲法に災害緊急事態を定める例として挙げたモルディブ憲法八十条も、非常事態のとき、議会選挙の延期と議員任期を延長する旨を定めております。
ポルトガル憲法も、百七十二条一項で、戒厳または緊急事態が布告されている間は国会を解散することはできないと定めるとともに、その間の憲法改正も禁じております。
緊急事態における議員任期の延長については、これ以外にも、イタリア憲法六十条、スロベニア憲法八十一条などにも定められるところであります。
自民党の憲法改正草案九十九条が、緊急事態の期間、衆議院の解散を禁じ、両議院の議員の任期等の特例を設けることとしたのも、政府の緊急事態対応を国会が継続して監視できるよう配慮したものと評価できます。
もっとも、私は自民党改憲案の全てに賛成しているわけではなく、欠陥があることも既に別の場所で指摘しております。
自民党案を批判する論者が特に問題視するのは、政府の緊急政令制定権の濫用のおそれです。自民党案では、内閣総理大臣による緊急事態宣言に対する国会の承認手続も、政府による緊急政令の制定と、これに関する国会の事後承認についても、その詳細は法律で定めることになっています。したがって、緊急事態憲法条項を実施する法律が制定されないと明確にならない点が多く残されています。
例えば、緊急政令について国会の事後承認がいつまでに必要なのか、承認が得られない場合には、緊急政令により既にとられた措置の効力はどうなるかなどについては、自民党案の条文だけでははっきりしない。また、緊急政令にも限界はあるはずで、緊急事態対処に必要であることを名目に何でもできるということにはならないはずです。
緊急政令は法律と同一の効力を有するとされていますが、ということは、既存の法律を全面改正し、どのような内容にでも変更できるのか、既存の法律を廃止することすらできるのか、改憲案九十八条、九十九条の施行法律すらも緊急政令により改正、廃止できるとすれば問題であります。施行法律が緊急政令により無効化され、あるいは施行法律がそもそも制定されない、このようなことになれば憲法上の政府の緊急立法権だけが残り、これを規律する法がないことになります。ナチス独裁を招いた原因としてしばしば批判されるドイツ・ワイマール共和国憲法四十八条の大統領非常措置権が濫用された一因も、この条項を実施する法律が制定されなかったことにありました。
私は、自民党改憲案にあるこのような不安を払拭するために、改憲論議と並行して、緊急事態憲法条項の施行法律を緊急事態基本法として案文の詳細を詰めておくべきであると考えます。
この法律の中で、緊急政令に委任すべき事項を限定列記するとともに、緊急政令ではできないことを定める、例えば、緊急事態においても停止されてはならない特定の基本権を国際人権条約に従い明記するなどが考えられます。そして、緊急事態施行法律自体は、緊急事態宣言下では緊急政令によっては変更できないことを憲法に明記する必要があると考えます。
二〇〇四年五月、民主、公明、自民三党間で緊急事態基本法の制定について合意がなされております。しかし、その後、この議論が進展したという話は聞きません。広島県議会、福井県議会など多くの地方議会が地方自治法第九十九条に基づき緊急事態基本法の早期制定を求める意見書を提出していますが、いまだに進展はありません。
当時の民主党の緊急事態基本法骨子案では、国家緊急事態について、我が国に対する外部からの武力攻撃、テロリストによる大規模な攻撃、大規模な自然災害等の国及び国民の安全に重大な影響を及ぼす緊急事態と定義しており、自民党の改憲案第九十八条一項の定義と共通点があります。
緊急事態憲法条項の導入の是非に関する議論にあわせ、この緊急事態基本法制定への具体的取り組みを期待しつつ、私の意見を終わらせていただきます。
以上であります。拍手
森
森
森英介#8
○森会長 これより参考人に対する質疑を行います。
質疑者におかれましては、本日の議題に沿った質問をしていただくようお願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
この発言だけを見る →質疑者におかれましては、本日の議題に沿った質問をしていただくようお願いいたします。
質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中谷元君。
中
中谷元#9
○中谷(元)委員 自由民主党の中谷元であります。
参考人の皆様には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。
まず、緊急事態における国会議員の任期の延長に関して、永井参考人にお伺いをいたします。
永井参考人は、緊急事態には参議院の緊急集会があって、衆議院解散中や任期満了の際も類推適用をして開くことができるという御意見でありますが、人権規範については別として、政治のルールを定めた統治機構の分野におけるこの憲法の規範について軽々に類推適用を認めるということは、憲法の権力、統制力、これを著しく弱めることになってしまい、危険なことになるのではないでしょうか。
緊急集会の正当性について疑義を残して、その立法に基づいてされた行政処分が不安定なものとなるために、仮に任期満了の際も参議院の緊急集会で対応すべきとするならば、これは憲法改正によって議員任期延長また選挙の延期ができるように明記をするというのが筋ではないでしょうか。
そして、任期満了の際の参議院の緊急集会を憲法が想定していないということは佐藤幸治教授の「日本国憲法論」にも書かれておりますが、この点での御所見を伺いたいと思います。
また、御著書で、参議院の緊急集会が任期満了で欠員のときも適用できるとする意見は複数の有力な憲法学者の御意見でもあると紹介されておりますが、どなたが唱えておられるのか教えていただきたいと思います。
次に、地方で対応するから国家緊急権は要らないということでありますが、やはり、国民の生命財産の保護は、平時のみならず緊急時においても国家の重要な役割でありまして、確かに都道府県には従事命令、保管命令があり、市町村には瓦れきの撤去などの強制権もあります。しかし、憲法に国家の緊急権の規定がないために、国が住民に直接指示、命令する権限が今の法律上ございません。
大規模災害の際に、役場が消滅をしたり担当者が死亡するなど県庁や市町村が機能できないときや、甚大な被害で地方では対応できない場合、国家として緊急に対処する権限、手続を規定して、国家が存在をし、また、国会が政府の緊急権濫用を防止する機能として憲法に緊急事態条項を明記するというのは必要があり、その際、国会の議決、承認などの機能は維持していかなければならないと考えますが、お尋ねします。今の憲法でも、緊急事態に国が直接瓦れきの処理、従事命令、収用などの行為を行うことができるというお考えでしょうか。
また、現在、国民保護法では、武力攻撃事態において、住民の要請は全て協力を求めるという形でしか規定をされておりませんが、地方にも求めるとしか書かれておりません。憲法上、国が住民に直接指示、命令するように規定することができるかどうか、この点についてお伺いをいたします。
この発言だけを見る →参考人の皆様には、大変貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございます。
まず、緊急事態における国会議員の任期の延長に関して、永井参考人にお伺いをいたします。
永井参考人は、緊急事態には参議院の緊急集会があって、衆議院解散中や任期満了の際も類推適用をして開くことができるという御意見でありますが、人権規範については別として、政治のルールを定めた統治機構の分野におけるこの憲法の規範について軽々に類推適用を認めるということは、憲法の権力、統制力、これを著しく弱めることになってしまい、危険なことになるのではないでしょうか。
緊急集会の正当性について疑義を残して、その立法に基づいてされた行政処分が不安定なものとなるために、仮に任期満了の際も参議院の緊急集会で対応すべきとするならば、これは憲法改正によって議員任期延長また選挙の延期ができるように明記をするというのが筋ではないでしょうか。
そして、任期満了の際の参議院の緊急集会を憲法が想定していないということは佐藤幸治教授の「日本国憲法論」にも書かれておりますが、この点での御所見を伺いたいと思います。
また、御著書で、参議院の緊急集会が任期満了で欠員のときも適用できるとする意見は複数の有力な憲法学者の御意見でもあると紹介されておりますが、どなたが唱えておられるのか教えていただきたいと思います。
次に、地方で対応するから国家緊急権は要らないということでありますが、やはり、国民の生命財産の保護は、平時のみならず緊急時においても国家の重要な役割でありまして、確かに都道府県には従事命令、保管命令があり、市町村には瓦れきの撤去などの強制権もあります。しかし、憲法に国家の緊急権の規定がないために、国が住民に直接指示、命令する権限が今の法律上ございません。
大規模災害の際に、役場が消滅をしたり担当者が死亡するなど県庁や市町村が機能できないときや、甚大な被害で地方では対応できない場合、国家として緊急に対処する権限、手続を規定して、国家が存在をし、また、国会が政府の緊急権濫用を防止する機能として憲法に緊急事態条項を明記するというのは必要があり、その際、国会の議決、承認などの機能は維持していかなければならないと考えますが、お尋ねします。今の憲法でも、緊急事態に国が直接瓦れきの処理、従事命令、収用などの行為を行うことができるというお考えでしょうか。
また、現在、国民保護法では、武力攻撃事態において、住民の要請は全て協力を求めるという形でしか規定をされておりませんが、地方にも求めるとしか書かれておりません。憲法上、国が住民に直接指示、命令するように規定することができるかどうか、この点についてお伺いをいたします。
永
永井幸寿#10
○永井参考人 御質問いただき、ありがとうございます。
まず最初の、衆議院議員の任期満了のときに参議院の緊急集会の規定が適用できるかどうかという御質問でございます。
これについては、先ほど申し上げたとおり、参議院の緊急集会は、衆議院が解散されて議員がいなくなった場合、参議院に国会を代替させるという制度でありまして、この衆議院が解散され議員がいなくなるという状態は任期満了の場合にも同じ事態であるということで、同一事項については同じ扱いをするということであります。これは、もちろん解釈という言い方もされております。北海道大学の名誉教授であり上智大学の名誉教授である高見勝利教授の御説でございます。
これについて、国会が機能しないときに参議院によってそれを一時的に代替させるということによって大きな人権侵害の危険があるということでもございませんので、中谷委員の危惧されるようなことにはならないというふうに考えております。
複数の憲法学者が申し上げたと本には書きました。これは事実でありまして、ある大学の名誉教授お二人と、ある大学の教授が意見を述べてくださったのですが、その方々は、まだ論文にしておりませんので名前を出すことは控えてほしいということだったので、著書ではあのような書き方になっております。
以上でございます。
この発言だけを見る →まず最初の、衆議院議員の任期満了のときに参議院の緊急集会の規定が適用できるかどうかという御質問でございます。
これについては、先ほど申し上げたとおり、参議院の緊急集会は、衆議院が解散されて議員がいなくなった場合、参議院に国会を代替させるという制度でありまして、この衆議院が解散され議員がいなくなるという状態は任期満了の場合にも同じ事態であるということで、同一事項については同じ扱いをするということであります。これは、もちろん解釈という言い方もされております。北海道大学の名誉教授であり上智大学の名誉教授である高見勝利教授の御説でございます。
これについて、国会が機能しないときに参議院によってそれを一時的に代替させるということによって大きな人権侵害の危険があるということでもございませんので、中谷委員の危惧されるようなことにはならないというふうに考えております。
複数の憲法学者が申し上げたと本には書きました。これは事実でありまして、ある大学の名誉教授お二人と、ある大学の教授が意見を述べてくださったのですが、その方々は、まだ論文にしておりませんので名前を出すことは控えてほしいということだったので、著書ではあのような書き方になっております。
以上でございます。
中
中谷元#11
○中谷(元)委員 参議院の緊急集会について、議員がいなくなるということで、衆議院の解散中から特別会が召集されるまで、これは約七十日間を想定した制度でありますが、しかし、東日本大震災のときは、被災地では約八カ月、二百五十日の長期の間、地方選挙が執行できませんでした。そうなりますと、国政選挙ができないということで、被災地のことを知る被災地選出議員が欠いた状態で、本当に適切な立法や行政監視を行うことができるのであろうかどうか。
そして、繰り延べ投票という手段もありますけれども、しかし、これでは多くの議席が確定しないまま、特に比例区でありますが、一部の国会議員のみで国会を構成することになってしまいまして、比例代表のみで議員を出している少数政党ほど、この影響は大きく受けるのではないか。国政選挙同時実施の原則、こういうものがなくなってしまうわけで、こうして公平な国政の判断ができないのではないか。
それから、参議院の任期が切れている場合は、総員の二百四十二名の三分の一である八十一名、これが出席できなければ集会ができません。同日選挙が実施できなかった場合は、参議院議員が半分の百二十一名しかいない状態で、しかも暫定的な措置が何カ月も運営をされるということで、やはり国会議員が全国民の代表であるという観点からいきますと、民主的コントロールを欠いてしまい、そして、国民主権の機能、これが果たせないというふうに考えます。
したがいまして、国会の任期延長はしっかり手当てしておくべきだと考えますが、これはいかがでしょうか。
この発言だけを見る →そして、繰り延べ投票という手段もありますけれども、しかし、これでは多くの議席が確定しないまま、特に比例区でありますが、一部の国会議員のみで国会を構成することになってしまいまして、比例代表のみで議員を出している少数政党ほど、この影響は大きく受けるのではないか。国政選挙同時実施の原則、こういうものがなくなってしまうわけで、こうして公平な国政の判断ができないのではないか。
それから、参議院の任期が切れている場合は、総員の二百四十二名の三分の一である八十一名、これが出席できなければ集会ができません。同日選挙が実施できなかった場合は、参議院議員が半分の百二十一名しかいない状態で、しかも暫定的な措置が何カ月も運営をされるということで、やはり国会議員が全国民の代表であるという観点からいきますと、民主的コントロールを欠いてしまい、そして、国民主権の機能、これが果たせないというふうに考えます。
したがいまして、国会の任期延長はしっかり手当てしておくべきだと考えますが、これはいかがでしょうか。
永
永井幸寿#12
○永井参考人 先ほどの御質問でまだ答えておらなかったところがあります。
まず、市町村に第一義的な権限を持たせるべきかどうかということなんですが、先ほど言いましたように、市町村に関する問題、災害のときは、県レベルでもない、市町村レベルでもない、もっと狭い地域でのニーズが必要になります。そういうとき、例えば、地域の地形はどのような状態なのか、あるいは高齢化率は何%か、コミュニティーの状態はどうなっているのか、産業は何か、そのようなことに基づいて対応しなければいけないんですね。それも、なるべく迅速に、最も柔軟な方法で。これができるのは、情報が入ってきてそれがわかるのは、やはり被災者に一番近い市町村なんです。国ではないんです。ですから、市町村に権限を持たせるべきだということです。
熊本地震のとき、四月十四日に前震がありました。そのとき、内閣総理大臣は河野大臣に対して、屋外に避難している人たちに対して屋内に避難するように指示をされました。しかし、そのとき、益城町の体育館の副館長が、これは危険だというので対応しませんでした。そうしたら、二日後の四月十六日に本震が起きて、天井が本当に落ちたんです。あのとき、もしあそこに入っていれば多数の方が亡くなったのは確実です。
国が行うべきことは、そういうことではなくて、被災地からの要請があったときに、例えば物資を送るとか、あるいは被災地の自治体の長に広い裁量権を認める、予算などを使えるようにするということであります。
それから、二番目。参議院の緊急集会ということで、それで対処するということになると、一部の地域の住民の意向だけではないのかということをおっしゃいました。しかし、先ほども言いましたけれども、災害対策というのは、準備していないことはできないということでありまして、平常時からその対処はしておかなければいけないわけなんです。
例えば、今回の東日本大震災の後、災害対策基本法が改正されて、例えば被災者台帳といって、今まで自治体ごとにばらばらに対処していたものを、被災者を単位にした台帳がつくられました。これによって、被災者に対する支援というのが一本化されるという形になったわけです。これが、災害対策基本法が改正されるのには三年七カ月かかっているんですね。やはり法律の制定に関しては、冷静な分析とそして合理的な判断が必要であり、これには時間がかかるということです。
それから、済みません、あと御質問、ちょっと……。
大体、以上でございます。
この発言だけを見る →まず、市町村に第一義的な権限を持たせるべきかどうかということなんですが、先ほど言いましたように、市町村に関する問題、災害のときは、県レベルでもない、市町村レベルでもない、もっと狭い地域でのニーズが必要になります。そういうとき、例えば、地域の地形はどのような状態なのか、あるいは高齢化率は何%か、コミュニティーの状態はどうなっているのか、産業は何か、そのようなことに基づいて対応しなければいけないんですね。それも、なるべく迅速に、最も柔軟な方法で。これができるのは、情報が入ってきてそれがわかるのは、やはり被災者に一番近い市町村なんです。国ではないんです。ですから、市町村に権限を持たせるべきだということです。
熊本地震のとき、四月十四日に前震がありました。そのとき、内閣総理大臣は河野大臣に対して、屋外に避難している人たちに対して屋内に避難するように指示をされました。しかし、そのとき、益城町の体育館の副館長が、これは危険だというので対応しませんでした。そうしたら、二日後の四月十六日に本震が起きて、天井が本当に落ちたんです。あのとき、もしあそこに入っていれば多数の方が亡くなったのは確実です。
国が行うべきことは、そういうことではなくて、被災地からの要請があったときに、例えば物資を送るとか、あるいは被災地の自治体の長に広い裁量権を認める、予算などを使えるようにするということであります。
それから、二番目。参議院の緊急集会ということで、それで対処するということになると、一部の地域の住民の意向だけではないのかということをおっしゃいました。しかし、先ほども言いましたけれども、災害対策というのは、準備していないことはできないということでありまして、平常時からその対処はしておかなければいけないわけなんです。
例えば、今回の東日本大震災の後、災害対策基本法が改正されて、例えば被災者台帳といって、今まで自治体ごとにばらばらに対処していたものを、被災者を単位にした台帳がつくられました。これによって、被災者に対する支援というのが一本化されるという形になったわけです。これが、災害対策基本法が改正されるのには三年七カ月かかっているんですね。やはり法律の制定に関しては、冷静な分析とそして合理的な判断が必要であり、これには時間がかかるということです。
それから、済みません、あと御質問、ちょっと……。
大体、以上でございます。
中
中谷元#13
○中谷(元)委員 どうもありがとうございました。市町村の機能を欠くとき、どうするかということをお尋ねしましたが。
次に、解散権についてお伺いします。
自由な解散に対しては、理由を明確にするために何らかの手続が必要ではないかという御意見でございました。それも一案だと思っておりますが、最近の解散につきましては、最新の民意を下院に届ける、衆議院に届けるというような側面もあろうかと思います。
そこで、解散権の行使を六十九条の場合に限定するという見解に対しては、芦部東大名誉教授が、政党内閣のもとでは、多数党が支える内閣に対して不信任決議が成立する可能性は極めてまれであるために解散権を行使する場合が著しく限定されてしまうと。また、長谷部早稲田大学教授も、解散制度の目的は、衆議院が民意を反映しているかどうか疑わしい場合に民意を確かめることにあるため、内閣を信任しない旨の決議がある場合に限らず、国政上の重大な問題について民意を確かめるために行われるべきであると御指摘をされております。
そして、その上、イギリスの例を言われましたが、これは確かに、二〇一一年に、五年に一回の任期満了により解散するということになりましたが、これは、二〇一〇年、前の年の総選挙の結果、保守党と労働党が単独過半数を獲得することができずに、いわゆるハングパーラメントに陥った際にキャスチングボートを握った自由民主党が、保守党との連立協議の過程において、みずからの政策実績を国民に示す時間を確保するためにこの法律の制定を迫ったという政局的な事情があったからだと承知をしております。しかし、この結果、EUの離脱に関しまして、総選挙によって国民の意思を改めて確認するということができなくなっております。また、誤情報に基づく国民投票の結果の是非を試みることができなくなっているという指摘がございます。
そういうことに関しまして、この解散権に歯どめをかける慣習というのが、我が国においては、ある意味確立しつつあるというふうにも見えるわけでございますが、木村参考人に、法律によって解散の手続を縛るというものについて、これは阻止をし得るものであるかどうかという点について、お考えをお伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →次に、解散権についてお伺いします。
自由な解散に対しては、理由を明確にするために何らかの手続が必要ではないかという御意見でございました。それも一案だと思っておりますが、最近の解散につきましては、最新の民意を下院に届ける、衆議院に届けるというような側面もあろうかと思います。
そこで、解散権の行使を六十九条の場合に限定するという見解に対しては、芦部東大名誉教授が、政党内閣のもとでは、多数党が支える内閣に対して不信任決議が成立する可能性は極めてまれであるために解散権を行使する場合が著しく限定されてしまうと。また、長谷部早稲田大学教授も、解散制度の目的は、衆議院が民意を反映しているかどうか疑わしい場合に民意を確かめることにあるため、内閣を信任しない旨の決議がある場合に限らず、国政上の重大な問題について民意を確かめるために行われるべきであると御指摘をされております。
そして、その上、イギリスの例を言われましたが、これは確かに、二〇一一年に、五年に一回の任期満了により解散するということになりましたが、これは、二〇一〇年、前の年の総選挙の結果、保守党と労働党が単独過半数を獲得することができずに、いわゆるハングパーラメントに陥った際にキャスチングボートを握った自由民主党が、保守党との連立協議の過程において、みずからの政策実績を国民に示す時間を確保するためにこの法律の制定を迫ったという政局的な事情があったからだと承知をしております。しかし、この結果、EUの離脱に関しまして、総選挙によって国民の意思を改めて確認するということができなくなっております。また、誤情報に基づく国民投票の結果の是非を試みることができなくなっているという指摘がございます。
そういうことに関しまして、この解散権に歯どめをかける慣習というのが、我が国においては、ある意味確立しつつあるというふうにも見えるわけでございますが、木村参考人に、法律によって解散の手続を縛るというものについて、これは阻止をし得るものであるかどうかという点について、お考えをお伺いしたいと思います。
木
木村草太#14
○木村参考人 済みません、阻止をし得るというのは、何を阻止し得るという御質問なのか……(中谷(元)委員「解散すること」と呼ぶ)はい。
私が現行憲法下で手続を制定すべきというふうに申し上げた点については、これは解散を阻止し得るものではなく、あくまで解散の理由を明確化するための手続を設けるべきだということでございます。
内閣不信任決議の可決の場合には、不信任には当然理由があるわけでありますから、これについては、特に特別の手続がなくても解散についての理由は明確であろうかと思いますが、一方で、不信任決議を待たず内閣の側から解散をする場合に、もちろん首相の記者会見等はあるわけですけれども、きちんと議会で解散の理由を内閣が説明する手続はあってもよいのではないかということでございまして、また、それを審議して内閣の側から解散を引っ込めるということはあり得るかもしれませんが、手続を置くことによって解散権の行使を完全に縛る、あるいは国会の同意を要求とする、そういうような法律の整備が現行憲法下で必要だというふうに述べたわけではないということでございます。
この発言だけを見る →私が現行憲法下で手続を制定すべきというふうに申し上げた点については、これは解散を阻止し得るものではなく、あくまで解散の理由を明確化するための手続を設けるべきだということでございます。
内閣不信任決議の可決の場合には、不信任には当然理由があるわけでありますから、これについては、特に特別の手続がなくても解散についての理由は明確であろうかと思いますが、一方で、不信任決議を待たず内閣の側から解散をする場合に、もちろん首相の記者会見等はあるわけですけれども、きちんと議会で解散の理由を内閣が説明する手続はあってもよいのではないかということでございまして、また、それを審議して内閣の側から解散を引っ込めるということはあり得るかもしれませんが、手続を置くことによって解散権の行使を完全に縛る、あるいは国会の同意を要求とする、そういうような法律の整備が現行憲法下で必要だというふうに述べたわけではないということでございます。
中
中谷元#15
○中谷(元)委員 最後に、松浦参考人にお伺いしますけれども、こういう緊急事態において、平時以上に権限が集中した行政による権力の濫用や対応措置の内容を国会がチェックして国民の声を反映させる必要がありますが、このような民主的な機能を維持させるために国会がいつでも活動できる状態にしなければならなくて、緊急事態において選挙の実施が困難な場合には国会議員の任期の延長ができるようにしなければなりませんが、もう少し詳しく、こういった参議院緊急集会で対応できるという御意見に対して、それではいかがかという点について参考人にお伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →松
松浦一夫#16
○松浦参考人 先ほどの私の意見の中でも述べたわけですけれども、解散あるいは任期満了によって選挙が行われないことによって、議員、特に被災地議員を欠いてしまうという状態が長期にわたって続くということはやはり避けるべきであるということで、参議院の緊急集会でそれを代行するといいましても、これはケース・バイ・ケースではありましょうけれども、どこまでチェック機能が働くのかという問題があります。やはり両院の、特に下院の機能というものを維持していくということが諸外国でも緊急事態条項においては求められているところが多いわけでありまして、参議院だけで長期にわたって国会の意思を代弁させるということはちょっと不適切であろう。
それから、今の御質問とはちょっと関係ないかもしれませんが、国によっては、国会の機能というものを維持させるだけではなくて、緊急事態調査委員会というようなものを国会の中に設ける、その中で、政府がとった緊急事態の緊急措置、これが憲法に照らして問題がないのかというようなことを調査させる、そのような機関を緊急事態において設けるというようなことを規定する憲法もございます。
先ほど申しましたドイツの合同委員会のケースはこれとはまた別でありますが、いずれにせよ、特にドイツの場合には、災害ということよりも、戦時にそのような合同委員会のような特別な小委員会を設けて議会の意思を代行させるというようなことをやっている。やはり日本の場合も、首都圏直下型が想定されるようなこともありますし、国会の機能の持続と維持ということについて、現行憲法の枠組みの中とかそういうことにとらわれずにもう少し議論した方がよろしいのではないかというように思います。
この発言だけを見る →それから、今の御質問とはちょっと関係ないかもしれませんが、国によっては、国会の機能というものを維持させるだけではなくて、緊急事態調査委員会というようなものを国会の中に設ける、その中で、政府がとった緊急事態の緊急措置、これが憲法に照らして問題がないのかというようなことを調査させる、そのような機関を緊急事態において設けるというようなことを規定する憲法もございます。
先ほど申しましたドイツの合同委員会のケースはこれとはまた別でありますが、いずれにせよ、特にドイツの場合には、災害ということよりも、戦時にそのような合同委員会のような特別な小委員会を設けて議会の意思を代行させるというようなことをやっている。やはり日本の場合も、首都圏直下型が想定されるようなこともありますし、国会の機能の持続と維持ということについて、現行憲法の枠組みの中とかそういうことにとらわれずにもう少し議論した方がよろしいのではないかというように思います。
中
森
奥
奥野総一郎#19
○奥野(総)委員 会長、発言させていただきます。民進党の奥野総一郎でございます。
きょうは、参考人の先生方、貴重な御意見、本当にありがとうございます。
まず最初に、解散権の制約について伺っていきたいと思うんですけれども、木村参考人の方からは、七条解散を認める立場からも解散権に一定の制約を認めるというのが多くの学説、日本の学界においては多数だというようなお話だったと思います。
そこで、永井参考人と松浦参考人にそれぞれ伺いたいんですが、解散権の制約、これは必要でしょうか。法律上の措置、憲法上の措置、それぞれあると思いますが、制度として設けるべきだと思われますか。
それから、松浦参考人にもう一つ追加して、災害時の解散権の制約というふうにおっしゃっていましたが、一般的な解散権の制約を法律あるいは憲法で規定しておけば、こうした災害時の解散権の制約というのは重ねて規定する必要はないかと思いますけれども、いかがでしょうか。それぞれお答え願いたいと思います。
この発言だけを見る →きょうは、参考人の先生方、貴重な御意見、本当にありがとうございます。
まず最初に、解散権の制約について伺っていきたいと思うんですけれども、木村参考人の方からは、七条解散を認める立場からも解散権に一定の制約を認めるというのが多くの学説、日本の学界においては多数だというようなお話だったと思います。
そこで、永井参考人と松浦参考人にそれぞれ伺いたいんですが、解散権の制約、これは必要でしょうか。法律上の措置、憲法上の措置、それぞれあると思いますが、制度として設けるべきだと思われますか。
それから、松浦参考人にもう一つ追加して、災害時の解散権の制約というふうにおっしゃっていましたが、一般的な解散権の制約を法律あるいは憲法で規定しておけば、こうした災害時の解散権の制約というのは重ねて規定する必要はないかと思いますけれども、いかがでしょうか。それぞれお答え願いたいと思います。
永
永井幸寿#20
○永井参考人 災害時の解散権の制約についてですが、まず、政府の方から行うことに関して言えば、災害時というのは被災者支援活動に最も勢力を使うべき場面であり、予算とか人員など、それに集中しなければいけない場面です。そのようなときに、選挙の方に予算あるいは人員を集中してしまう解散を行うことが適切なことなのかどうかということを考えると、通常は不適切と考えられますので、このような解散は自制するだろうということが考えられます。
そして、万が一解散権を行使してしまったような場合は、参議院の緊急集会がありますし、あるいは、そのような政権に関しては、選挙の過程で、主権者である国民の意思による解散権の行使の適否についての判断がなされるものと考えます。
また、国会の方から内閣の不信任決議案を出すという形によって結果として内閣が衆議院を解散するような場合になった場合、このような場合にも、国会のそのような決議に関する適否は、最終的には国民の判断によって行われるものと考えます。
以上です。
この発言だけを見る →そして、万が一解散権を行使してしまったような場合は、参議院の緊急集会がありますし、あるいは、そのような政権に関しては、選挙の過程で、主権者である国民の意思による解散権の行使の適否についての判断がなされるものと考えます。
また、国会の方から内閣の不信任決議案を出すという形によって結果として内閣が衆議院を解散するような場合になった場合、このような場合にも、国会のそのような決議に関する適否は、最終的には国民の判断によって行われるものと考えます。
以上です。
松
松浦一夫#21
○松浦参考人 一般論として、衆議院の解散権を制限すべきであるという御意見なんですが、もちろん、今の制度のもとでも、党利党略による解散をよいという憲法学説はないわけでして、そういった意味では、解散権を濫用するようなことはもちろん慎むべきであるわけですが、制度として、では、六十九条だけの問題にすべきかどうかということになりますと、先ほど中谷幹事の方からも御説明がありましたように、民意を問うて、特に下院にその意思を反映させる、議院内閣制の中で内閣と衆議院、議会が対立した場合に民意を問うというその制度が過度に制約されてしまうというところに問題があるということであります。
イギリスの例は中谷幹事がおっしゃるとおりだと思うんですが、先ほどドイツの例がちょっと挙がっておりました。ドイツは、ワイマール憲法時代に解散権が濫用されるというようなこともありましたが、一方で、内閣不信任も濫用された部分があるわけで、そういった中で、戦後のボン基本法では、不信任に関しましても建設的不信任という形で、次の首相を決めない限りは不信任はできないんだ、つまり、政権の安定というものを図る上で、解散権も確かに制限されてはおりますけれども、不信任投票のあり方も制限されている。このバランスがやはりあるものですから、解散権の制限というものが機能するわけなんだろうと思います。
ですので、一般論として、現行憲法のもとでこれは制約すべきかどうかということについては意見は差し控えますが、そういうことで、単に制約すればいいというものではないんだろうと思います。
それから、一般論として、解散権を制限すれば、緊急事態においてわざわざ制限する規定を置かなくてもいいのではないかという御意見でありますけれども、今、ドイツの例を挙げましたが、ドイツも解散権は制限されているんですが、やはり緊急事態において連邦議会、連邦参議院の意思を継続させるという意味で、任期の延長というものを改めて規定しているわけでありまして、そこはダブルで置いておきませんと、やはり緊急事態だから例外を認めるというようなことにならない、そういう制度設計になっているんだろうと思います。
以上でございます。
この発言だけを見る →イギリスの例は中谷幹事がおっしゃるとおりだと思うんですが、先ほどドイツの例がちょっと挙がっておりました。ドイツは、ワイマール憲法時代に解散権が濫用されるというようなこともありましたが、一方で、内閣不信任も濫用された部分があるわけで、そういった中で、戦後のボン基本法では、不信任に関しましても建設的不信任という形で、次の首相を決めない限りは不信任はできないんだ、つまり、政権の安定というものを図る上で、解散権も確かに制限されてはおりますけれども、不信任投票のあり方も制限されている。このバランスがやはりあるものですから、解散権の制限というものが機能するわけなんだろうと思います。
ですので、一般論として、現行憲法のもとでこれは制約すべきかどうかということについては意見は差し控えますが、そういうことで、単に制約すればいいというものではないんだろうと思います。
それから、一般論として、解散権を制限すれば、緊急事態においてわざわざ制限する規定を置かなくてもいいのではないかという御意見でありますけれども、今、ドイツの例を挙げましたが、ドイツも解散権は制限されているんですが、やはり緊急事態において連邦議会、連邦参議院の意思を継続させるという意味で、任期の延長というものを改めて規定しているわけでありまして、そこはダブルで置いておきませんと、やはり緊急事態だから例外を認めるというようなことにならない、そういう制度設計になっているんだろうと思います。
以上でございます。
奥
奥野総一郎#22
○奥野(総)委員 今の御意見ですと、条件つきながら、やはり解散権というのは無制限に発せられるべきじゃないというふうに理解させていただきました。そして、今、任期延長との関係で、そこは確認的に憲法に規定しておくべきだ、こういうお考えだと理解しました。
それから、永井参考人にもう一度確認しておきたいんですが、一般論として、解散権の制約、法律にしろ憲法にしろ、認めるべきかどうか、先ほど、そこが第一の問いだったんですが、そこを伺っておきたいと思います。
それから、この問題は木村参考人の方に。国民投票、先ほどのお話の中では、国論を二分するようなイシューについては問うべきであるという解散の機能、これは新しい今日的な意義だと思うんですが、これを、仮に解散権を制限すべきだとすれば、国民投票にかけてはどうか、こういう御提案がありました。
国民投票について、ほかの国はどういう定めをして、どういう効力を認めているのか。国論を二分するような問題について、あるいは、どのような問題について国民投票にかけられることになっていて、その効力はどういうふうなものか、例があったら御教示願いたいと思います。
この発言だけを見る →それから、永井参考人にもう一度確認しておきたいんですが、一般論として、解散権の制約、法律にしろ憲法にしろ、認めるべきかどうか、先ほど、そこが第一の問いだったんですが、そこを伺っておきたいと思います。
それから、この問題は木村参考人の方に。国民投票、先ほどのお話の中では、国論を二分するようなイシューについては問うべきであるという解散の機能、これは新しい今日的な意義だと思うんですが、これを、仮に解散権を制限すべきだとすれば、国民投票にかけてはどうか、こういう御提案がありました。
国民投票について、ほかの国はどういう定めをして、どういう効力を認めているのか。国論を二分するような問題について、あるいは、どのような問題について国民投票にかけられることになっていて、その効力はどういうふうなものか、例があったら御教示願いたいと思います。
永
永井幸寿#23
○永井参考人 解散権一般についてのお話でありますと、これは政府と国会との関係をどのように考えるかということと、また、衆議院と参議院との関係をどのように考えるべきかということも問題になりますし、また、政府と参議院との関係もどのように考えるかということも問題になりまして、これは大変深い問題でありまして、統治機構全体にかかわってくる問題になりますので、申しわけありませんが、ちょっときょうは発言を控えさせていただきたいと思います。
この発言だけを見る →木
木村草太#24
○木村参考人 国民投票についてのお尋ねでありますけれども、たしか、お隣の韓国には、大統領が国民投票にかけるという手続はあったかと思いますし、また、EU関係におきましては、EUの加入に際して、国によりますけれども、国民投票で判断をするということはしばしばあることでありまして、また、先ほど中谷幹事からも御指摘があったように、イギリスでは、EU離脱に関しては国民投票という形で、もちろん国民投票だけで全てが、手続が終わるわけではないわけですけれども、決定が行われるということはあったということでございます。
この発言だけを見る →奥
奥野総一郎#25
○奥野(総)委員 ありがとうございます。
次に、国家緊急権の話、緊急事態の話に移りたいと思います。
日本国憲法は、その制定時に、金森国務大臣答弁というのが残っていまして、いわゆる国家緊急権については定めないんだ、行政権の自由な判断の余地をできるだけ少なくするように制度設計をしたと答弁があります。そして、平素からきちんと立法措置を講じておくことで十分だ、あらかたこういうことを答弁されています。
政府も、この答弁をこれまで踏襲してきたということであります。武力攻撃事態への対処に関する法律、このときも、こういう金森答弁を踏襲する形で、現行憲法の範囲内で権利義務の制限を定めていく、こういうことで来たと思います。
松浦参考人に伺いたいんですけれども、先ほど永井参考人の方から、東日本大震災のときに憲法は障害になったか、こういうアンケートをとったところ、障害になったというのは一自治体だけであって、ほとんどの自治体は、障害はなかった、こう答えているわけですね。そうなると、果たして憲法を変える必要があるのか、改めてここで憲法を変えるだけの立法事実があるのか、何か状況は変わったのかということなんですが、その点についてどうお考えかということと、それからもう一点、いわゆる緊急政令ですね。緊急政令について、自民党案は広過ぎるというお考えのようですが、そもそも、憲法にそれを規定しておく必要があるのか、今支障がないとすれば、今の制度で十分であって、新たに一般的な緊急政令の根拠規定を憲法に設ける必要があるのかということを伺いたいと思います。
この発言だけを見る →次に、国家緊急権の話、緊急事態の話に移りたいと思います。
日本国憲法は、その制定時に、金森国務大臣答弁というのが残っていまして、いわゆる国家緊急権については定めないんだ、行政権の自由な判断の余地をできるだけ少なくするように制度設計をしたと答弁があります。そして、平素からきちんと立法措置を講じておくことで十分だ、あらかたこういうことを答弁されています。
政府も、この答弁をこれまで踏襲してきたということであります。武力攻撃事態への対処に関する法律、このときも、こういう金森答弁を踏襲する形で、現行憲法の範囲内で権利義務の制限を定めていく、こういうことで来たと思います。
松浦参考人に伺いたいんですけれども、先ほど永井参考人の方から、東日本大震災のときに憲法は障害になったか、こういうアンケートをとったところ、障害になったというのは一自治体だけであって、ほとんどの自治体は、障害はなかった、こう答えているわけですね。そうなると、果たして憲法を変える必要があるのか、改めてここで憲法を変えるだけの立法事実があるのか、何か状況は変わったのかということなんですが、その点についてどうお考えかということと、それからもう一点、いわゆる緊急政令ですね。緊急政令について、自民党案は広過ぎるというお考えのようですが、そもそも、憲法にそれを規定しておく必要があるのか、今支障がないとすれば、今の制度で十分であって、新たに一般的な緊急政令の根拠規定を憲法に設ける必要があるのかということを伺いたいと思います。
松
松浦一夫#26
○松浦参考人 お答えになるかどうかわかりませんが、その立法事実がない、要するに、憲法に緊急事態条項を導入する必要性を裏づける社会的な事実がないという点については永井参考人の方から御指摘があったわけなんですが、先ほども申しましたように、戦後我々が経験してきた従来の災害であるとか、戦争はもうしておりませんから、災害緊急事態、こういったものについて、法律レベルで枠組みができているということについては何の異論もございません。また、武力攻撃事態、戦争はしないにしましても、まだ武力攻撃を受ける可能性はありますから、それについての備えをしているということも、これは異論はございません。
ただし、災害というのはやはり想定外のことが起こり得るわけで、やはり、東日本大震災の後で災害対策基本法が改正されたりという必要が生じたのも、発生当時、そうした対応に法的な不備があったから後で直したわけでありまして、災害発生当時に法的な不備があったことは、これは間違いないんだろうと思います。後でそれを十分に検討して修復していくということは、これはそれまでも努力してまいりましたし、徐々に完備されていくものなんだろうと思います。
しかし、東日本大震災のようなときに憲法が支障にはならなかったといいましても、先ほども申しましたけれども、南海トラフ地震の被害想定というものは、これはもう東日本大震災や阪神・淡路大震災の規模とは格段に違います。しかも、首都機能や、あるいは中央官庁の機能等にも損害が生じるというようなことは従来の枠組みでは想定できなかったことでありまして、それに対して柔軟に対応するということは立法事実の問題とはまた別の問題なんだろうと思います。
一応、最悪、想定外をなくすということで政府も被害推計を出しているわけでありまして、それに応じて予想できることを法律で整備していくという努力は当然必要になってくるだろうと思います。
ただ、その発動の枠組み、これは議員任期の問題とか議院解散権の制限であるとかも含めまして、憲法の例外を認めるべきだという点に関しましては、やはり憲法改正が必要なんだろうと思います。どういう被害を想定するか、その規模がどの程度のものであるか、また憲法の規定にその措置が抵触する可能性がないのかどうかということをやはり検討する上から、緊急事態条項というものが必要なんだろうということであります。
この発言だけを見る →ただし、災害というのはやはり想定外のことが起こり得るわけで、やはり、東日本大震災の後で災害対策基本法が改正されたりという必要が生じたのも、発生当時、そうした対応に法的な不備があったから後で直したわけでありまして、災害発生当時に法的な不備があったことは、これは間違いないんだろうと思います。後でそれを十分に検討して修復していくということは、これはそれまでも努力してまいりましたし、徐々に完備されていくものなんだろうと思います。
しかし、東日本大震災のようなときに憲法が支障にはならなかったといいましても、先ほども申しましたけれども、南海トラフ地震の被害想定というものは、これはもう東日本大震災や阪神・淡路大震災の規模とは格段に違います。しかも、首都機能や、あるいは中央官庁の機能等にも損害が生じるというようなことは従来の枠組みでは想定できなかったことでありまして、それに対して柔軟に対応するということは立法事実の問題とはまた別の問題なんだろうと思います。
一応、最悪、想定外をなくすということで政府も被害推計を出しているわけでありまして、それに応じて予想できることを法律で整備していくという努力は当然必要になってくるだろうと思います。
ただ、その発動の枠組み、これは議員任期の問題とか議院解散権の制限であるとかも含めまして、憲法の例外を認めるべきだという点に関しましては、やはり憲法改正が必要なんだろうと思います。どういう被害を想定するか、その規模がどの程度のものであるか、また憲法の規定にその措置が抵触する可能性がないのかどうかということをやはり検討する上から、緊急事態条項というものが必要なんだろうということであります。
奥
奥野総一郎#27
○奥野(総)委員 私、自民党の改憲草案を見ましたけれども、緊急事態もその他の法律で定める場合と極めて広いですし、松浦参考人自体もお認めのように緊急政令の範囲も極めて曖昧であります。
ですから、こうした一般的な緊急事態条項、これは日本国憲法に私は必要ないと思うんですが、木村参考人、その点について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
この発言だけを見る →ですから、こうした一般的な緊急事態条項、これは日本国憲法に私は必要ないと思うんですが、木村参考人、その点について伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
木
木村草太#28
○木村参考人 自民党草案につきましては、緊急政令の対象事項が個別具体的に列挙されていないという点はかなり深刻な問題であろうということは、私もそう思っておりますし、多くの憲法学者が指摘するところでございます。
ただ、あの草案では、法律の定めるところにより、法律と同等の効力を定める政令を制定できるとなっておりまして、その前提として「法律の定めるところにより、」というふうに書いてありまして、法律で定めるところによるというところの意味が、それ自体がよくわからない条項になっております。
したがって、あの草案については、そもそも曖昧で濫用の危険が大きいという点とは別に、意味内容を明確化するためにあの文言の意味というのをもっと詰めないと、そもそも議論ができない条項であろうとは思っております。
この発言だけを見る →ただ、あの草案では、法律の定めるところにより、法律と同等の効力を定める政令を制定できるとなっておりまして、その前提として「法律の定めるところにより、」というふうに書いてありまして、法律で定めるところによるというところの意味が、それ自体がよくわからない条項になっております。
したがって、あの草案については、そもそも曖昧で濫用の危険が大きいという点とは別に、意味内容を明確化するためにあの文言の意味というのをもっと詰めないと、そもそも議論ができない条項であろうとは思っております。
奥
奥野総一郎#29
○奥野(総)委員 時間もなくなってまいりましたので、最後に一点伺いたいんですけれども、この議論の中で一番議論になっているのは、スポットライトが当たっているのは、国会議員の任期の特例延長であります。これが皆さんにすとんとくる、納得されやすいのは、東日本大震災のときに県会議員の任期を延長した、こういう事例があるからですね。
先ほど来議論になっていますけれども、もちろん、緊急集会を開けば国会の意思決定はできるわけでありますけれども、しかし、被災地の当事者である議員がいなくて議論ができるのか。もちろん、法律で定めておけばそうなんですが、ただ、予算の措置とかもありますし、できれば当事者である地域の議員が国会に出て議論した方がいいんじゃないか、国民主権の、あるいは地域の代表としての観点からもいいんじゃないか、こういうことだと思うんです。
こうした観点から、議員の任期の特例的延長、長期にわたる場合、長期間選挙が行い得ないような場合に限定しますが、選挙が行われるまでの間の特例的延長を認めるべきかどうか、これについて、それぞれ三人の参考人から伺って終わりにしたいと思います。
この発言だけを見る →先ほど来議論になっていますけれども、もちろん、緊急集会を開けば国会の意思決定はできるわけでありますけれども、しかし、被災地の当事者である議員がいなくて議論ができるのか。もちろん、法律で定めておけばそうなんですが、ただ、予算の措置とかもありますし、できれば当事者である地域の議員が国会に出て議論した方がいいんじゃないか、国民主権の、あるいは地域の代表としての観点からもいいんじゃないか、こういうことだと思うんです。
こうした観点から、議員の任期の特例的延長、長期にわたる場合、長期間選挙が行い得ないような場合に限定しますが、選挙が行われるまでの間の特例的延長を認めるべきかどうか、これについて、それぞれ三人の参考人から伺って終わりにしたいと思います。