環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会
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会
会議録情報#0
平成二十八年十一月十八日(金曜日)
午後一時開会
─────────────
委員の異動
十一月十六日
辞任 補欠選任
杉尾 秀哉君 藤田 幸久君
宮崎 勝君 高瀬 弘美君
木戸口英司君 福島みずほ君
十一月十七日
辞任 補欠選任
佐藤 啓君 青山 繁晴君
中西 哲君 堂故 茂君
平野 達男君 今井絵理子君
藤木 眞也君 小川 克巳君
山田 俊男君 高野光二郎君
田名部匡代君 野田 国義君
浜口 誠君 宮沢 由佳君
藤田 幸久君 江崎 孝君
真山 勇一君 川合 孝典君
高瀬 弘美君 佐々木さやか君
平木 大作君 谷合 正明君
山添 拓君 井上 哲士君
藤巻 健史君 石井 苗子君
福島みずほ君 青木 愛君
行田 邦子君 薬師寺みちよ君
中山 恭子君 中野 正志君
十一月十八日
辞任 補欠選任
松川 るい君 渡辺美知太郎君
川合 孝典君 藤末 健三君
井上 哲士君 大門実紀史君
石井 苗子君 片山 大介君
中野 正志君 中山 恭子君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 林 芳正君
理 事
石井 準一君
二之湯武史君
福岡 資麿君
三宅 伸吾君
山田 修路君
小川 勝也君
大野 元裕君
浜田 昌良君
紙 智子君
委 員
青山 繁晴君
今井絵理子君
小川 克巳君
古賀友一郎君
佐藤 正久君
進藤金日子君
高野光二郎君
高橋 克法君
滝波 宏文君
堂故 茂君
徳茂 雅之君
中西 祐介君
堀井 巌君
舞立 昇治君
松川 るい君
吉川ゆうみ君
渡辺美知太郎君
渡邉 美樹君
相原久美子君
石上 俊雄君
江崎 孝君
徳永 エリ君
野田 国義君
藤末 健三君
宮沢 由佳君
河野 義博君
熊野 正士君
佐々木さやか君
谷合 正明君
大門実紀史君
辰巳孝太郎君
片山 大介君
儀間 光男君
青木 愛君
薬師寺みちよ君
中山 恭子君
事務局側
常任委員会専門
員 藤田 昌三君
常任委員会専門
員 宇佐美正行君
常任委員会専門
員 大川 昭隆君
参考人
岐阜大学応用生
物科学部教授 荒幡 克己君
明治大学農学部
准教授 作山 巧君
九州大学准教授 磯田 宏君
─────────────
本日の会議に付した案件
○公聴会開会承認要求に関する件
○環太平洋パートナーシップ協定の締結について
承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、
第百九十二回国会衆議院送付)
○環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関
係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会
内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)
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この発言だけを見る →午後一時開会
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委員の異動
十一月十六日
辞任 補欠選任
杉尾 秀哉君 藤田 幸久君
宮崎 勝君 高瀬 弘美君
木戸口英司君 福島みずほ君
十一月十七日
辞任 補欠選任
佐藤 啓君 青山 繁晴君
中西 哲君 堂故 茂君
平野 達男君 今井絵理子君
藤木 眞也君 小川 克巳君
山田 俊男君 高野光二郎君
田名部匡代君 野田 国義君
浜口 誠君 宮沢 由佳君
藤田 幸久君 江崎 孝君
真山 勇一君 川合 孝典君
高瀬 弘美君 佐々木さやか君
平木 大作君 谷合 正明君
山添 拓君 井上 哲士君
藤巻 健史君 石井 苗子君
福島みずほ君 青木 愛君
行田 邦子君 薬師寺みちよ君
中山 恭子君 中野 正志君
十一月十八日
辞任 補欠選任
松川 るい君 渡辺美知太郎君
川合 孝典君 藤末 健三君
井上 哲士君 大門実紀史君
石井 苗子君 片山 大介君
中野 正志君 中山 恭子君
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出席者は左のとおり。
委員長 林 芳正君
理 事
石井 準一君
二之湯武史君
福岡 資麿君
三宅 伸吾君
山田 修路君
小川 勝也君
大野 元裕君
浜田 昌良君
紙 智子君
委 員
青山 繁晴君
今井絵理子君
小川 克巳君
古賀友一郎君
佐藤 正久君
進藤金日子君
高野光二郎君
高橋 克法君
滝波 宏文君
堂故 茂君
徳茂 雅之君
中西 祐介君
堀井 巌君
舞立 昇治君
松川 るい君
吉川ゆうみ君
渡辺美知太郎君
渡邉 美樹君
相原久美子君
石上 俊雄君
江崎 孝君
徳永 エリ君
野田 国義君
藤末 健三君
宮沢 由佳君
河野 義博君
熊野 正士君
佐々木さやか君
谷合 正明君
大門実紀史君
辰巳孝太郎君
片山 大介君
儀間 光男君
青木 愛君
薬師寺みちよ君
中山 恭子君
事務局側
常任委員会専門
員 藤田 昌三君
常任委員会専門
員 宇佐美正行君
常任委員会専門
員 大川 昭隆君
参考人
岐阜大学応用生
物科学部教授 荒幡 克己君
明治大学農学部
准教授 作山 巧君
九州大学准教授 磯田 宏君
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本日の会議に付した案件
○公聴会開会承認要求に関する件
○環太平洋パートナーシップ協定の締結について
承認を求めるの件(第百九十回国会内閣提出、
第百九十二回国会衆議院送付)
○環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関
係法律の整備に関する法律案(第百九十回国会
内閣提出、第百九十二回国会衆議院送付)
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林
林芳正#1
○委員長(林芳正君) ただいまから環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、宮崎勝君、杉尾秀哉君、木戸口英司君、中山恭子君、藤巻健史君、山添拓君、真山勇一君、平木大作君、行田邦子君、佐藤啓君、中西哲君、平野達男君、藤木眞也君、山田俊男君、浜口誠君及び田名部匡代君が委員を辞任され、その補欠として中野正志君、石井苗子君、井上哲士君、川合孝典君、谷合正明君、薬師寺みちよ君、佐々木さやか君、青木愛君、青山繁晴君、堂故茂君、今井絵理子君、小川克巳君、高野光二郎君、江崎孝君、宮沢由佳君及び野田国義君が選任されました。
また、本日、石井苗子君、川合孝典君、井上哲士君及び中野正志君が委員を辞任され、その補欠として片山大介君、藤末健三君、大門実紀史君及び中山恭子君が選任されました。
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この発言だけを見る →委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、宮崎勝君、杉尾秀哉君、木戸口英司君、中山恭子君、藤巻健史君、山添拓君、真山勇一君、平木大作君、行田邦子君、佐藤啓君、中西哲君、平野達男君、藤木眞也君、山田俊男君、浜口誠君及び田名部匡代君が委員を辞任され、その補欠として中野正志君、石井苗子君、井上哲士君、川合孝典君、谷合正明君、薬師寺みちよ君、佐々木さやか君、青木愛君、青山繁晴君、堂故茂君、今井絵理子君、小川克巳君、高野光二郎君、江崎孝君、宮沢由佳君及び野田国義君が選任されました。
また、本日、石井苗子君、川合孝典君、井上哲士君及び中野正志君が委員を辞任され、その補欠として片山大介君、藤末健三君、大門実紀史君及び中山恭子君が選任されました。
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林
林芳正#2
○委員長(林芳正君) 公聴会の開会承認要求に関する件についてお諮りいたします。
環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、来る十一月二十五日午後一時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
この発言だけを見る →環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の審査のため、来る十一月二十五日午後一時に公聴会を開会いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
林
林芳正#3
○委員長(林芳正君) 御異議ないと認めます。
つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
この発言だけを見る →つきましては、公述人の数及び選定等は、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
林
林
林芳正#5
○委員長(林芳正君) 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を一括して議題といたします。
本日は、両案件の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、岐阜大学応用生物科学部教授荒幡克己君、明治大学農学部准教授作山巧君及び九州大学准教授磯田宏君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、荒幡参考人、作山参考人、磯田参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
御発言の際は挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず荒幡参考人にお願いいたします。荒幡参考人。
この発言だけを見る →本日は、両案件の審査のため、三名の参考人から御意見を伺います。
御出席いただいております参考人は、岐阜大学応用生物科学部教授荒幡克己君、明治大学農学部准教授作山巧君及び九州大学准教授磯田宏君でございます。
この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございました。
皆様から忌憚のない御意見をお述べいただき、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方でございますが、荒幡参考人、作山参考人、磯田参考人の順序でお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
御発言の際は挙手をしていただき、その都度委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきをください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず荒幡参考人にお願いいたします。荒幡参考人。
荒
荒幡克己#6
○参考人(荒幡克己君) 御紹介いただきました岐阜大学の荒幡でございます。座らせていただきます。
初めに、本日このような場で発言の機会を与えていただきましたこと、深く感謝申し上げる次第です。
私は、農業経済学、特にその中でも水田農業を中心に研究をしております。本日は、このような視点からの見方に限られますが、少しでも御審議のお役に立てるような知見を提供できればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
お手元には三枚ほどの資料を用意しております。一枚目は全体の発言要旨、二枚目以降がそのバックデータ等でございます。一枚目に示しました順序に沿って御説明させていただきます。
まず初めに、世界の農産物貿易の現状について見ていきます。二枚目のグラフがそのバックデータです。これは、世界の農産物貿易の動向として、ある国が同じものを輸入もすれば輸出もするという双方向の貿易がどれだけ進んできたかを表す指数でございます。これは、例えば日本がパソコンを輸出する、その一方で同じ金額だけ輸入もするということになりますと一・〇になります。輸出ばかりで一切輸入しない、この場合はゼロでございます。半分だけ輸入すれば〇・五ということで、資料のバックデータの縦軸の数字が、〇・七が一番上に来ておりますが、その数字でございます。
この双方向の貿易は、工業製品では既にかなり前から当たり前のように行われております。例えば、日本が自動車をアメリカに輸出して、アメリカも同様に日本に輸出するということが行われてきたわけでございます。
ところが、農産物では必ずしも当たり前ではなかったわけであります。このグラフの最初の一九七〇年代の数字を見ますと、大変低くなっております。これはそのことを表しております。しかし、ここに表しました農産物、すなわちタマネギ、トマト、オレンジ、牛肉、豚肉、チーズ、それから米、いずれの品目も、牛肉だけはBSEの件がありましたのでちょっと変則的な動きがありますが、それ以外はいずれも数字が上昇、右上がりになっております。
この双方向の貿易の例として、例えばアメリカは、御承知のように、今回のTPP交渉では日本に強く牛肉の輸入、すなわちアメリカにとっての輸出を迫ったわけでございますが、そのアメリカは、オーストラリアから大量にコンビーフ用の低品位の牛肉を輸入しております。
では、なぜ農産物でも双方向の貿易が進んだのか。それは、食文化の交流、それから食品市場での高品質と低品質の製品の差別化、これが進んで、それに応じて生産分担も進んだからであります。
それでは、今後、自動車の貿易のように、つまり工業製品の貿易のようになっていくかということでございますが、注意しなければならない点がございます。製造業の品目も含めて全ての品目でこの指数を計測しますと、大体〇・六ぐらいになります。グラフの数字で確認していただくと分かるんですが、〇・六辺りのところに来ます。つまり、これと比較しますと、農産物ないしは食料では、ここに示した中では最も高いチーズでも〇・五五程度で、ほかの品目は〇・三とか低い数字でございます。ちなみに米は〇・一五程度であります。製造業と相当な違いがあるということでございます。
いかに双方向の貿易が進んだとはいえ、自然条件に左右されるのが農業でございます。したがいまして、レジュメの方に書いておりますが、工業製品と同様に双方向貿易、つまり輸出もする、輸入もするということが増加する傾向にはあるんですが、しかし同じ水準にはならないという、この両面性を理解することが重要であると私は考えております。
こうしたことも踏まえながら、今回御提案されているTPP協定の承認と関連法案の是非につきまして私の姿勢をお示しいたしますと、レジュメの方にも書いてございますが、今後、長期的に見て農産物でも一層の貿易拡大は避けられないという認識に立てば、関税等の国境措置を選択的、重点的に維持しつつも、短期的影響を回避した上で、品目に応じて可能なものは長期的、漸進的にそれらを削減する、その一方で、国内対策を競争力強化に重点を置いて実施する、輸出振興もまた同時に推進していくということは、方向としては妥当と考えます。
私は、交渉結果と国内対策をセットとして見るならば賛成の立場に立つものであります。ただし、そこで重要なことは、あくまで適切かつ十分な国内対策の充実が前提であります。
そこで、以下では、国内対策の具備すべき要件を三点ほど述べたいと思います。なお、国内対策といってもいわゆる産業政策の部分と地域社会政策としての部分がございますが、以下では産業政策の方に、しかもその中でも競争力強化という論点に絞って述べさせていただきます。
第一に、既に述べましたように、今回の交渉結果は、国境措置における削減までの期間を十分に長く確保したということが高く評価できる点でございます。これは農業という産業分野の特質として極めて重要であります。どんなにバイテク等によって新品種開発の速度が速まっても、現場では作物は生産者は一年に一回しか試すことができないというのは今も昔も変わらないわけでございます。そこで、国内対策もまたこれに対応して、是非とも息の長い取組としていただきたいと考えております。
思い起こしますと、二十年前ですね、約二十年前に、ガット・ウルグアイ・ラウンドの締結後、関税猶予の例外措置で五年後に再交渉というような話がありましたので、五年後までに対策をという、非常にそういうフレーズが当時の政府の文書の各所に見受けられました。このためもあってちょっと短期間という雰囲気があったわけでございますが、今回は是非とも、そうではなく、息の長い本腰を入れた競争力強化の対策を継続してほしいと考えております。
第二に、競争力強化といいますと、農業分野を専門とする方以外ではどうしても、商工業分野での単純なシナリオ、すなわち市場原理に従い厳しい環境にさらせば、中小規模の競争力の弱い経営が淘汰され、強い大規模だけが生き残り、競争力が強化されるというシナリオを描きがちであります。しかし、これは農業ではうまくいかないわけであります。
二枚目の下の表はこのことを示すデータです。一番左は、畜産、園芸等を全て含めた全営農類型の指標です。この場合、集約的経営もありますので、面積を指標として表すことは不適切です。そこで、保有労働力を尺度として、専従者がいるかいないかによって分類しております。右の二つの指標は、水田作経営に絞った指標であり、規模によって数字を見ております。
いずれのデータでも、いわゆる大規模経営ないし専業経営は農業では財務体質が弱い、小規模兼業農家の方がかえって財務体質が強いという、商工業とは皮肉にも逆の関係になっているわけでございます。このため、単純なやり方ではなくて、単純なやり方をやりますと、大規模農家の方が打撃を受け、小規模安定兼業農家だけが生き残るという、競争力強化の視点からは望ましくない方向に変化してしまうわけでございます。したがって、そうではない、大規模にターゲットを絞って強化策を講ずるということが重要でございます。
第三に、日本産農産物は高品質という過信は禁物という点を指摘したいと思います。
一般に、競争力は、価格競争力と非価格競争力、これは品質であるとかブランドであるとかでございますが、この二つから構成されます。確かに贈答品などでは高くても売れるという状況はありますが、今後一層の輸出増加を図ろうとするならば、その下の中間層の日常の食料消費として日本からの輸出を拡大することが不可欠であります。
その場合、例えば米を例に取りますと、海外では、私がデータにより計測しましたところ、かなり価格に反応しておりますし、また業界紙を見ても、実際に卸で輸出を手掛ける業者の方が指摘していることでございます。価格に反応しているんだということですね。したがって、是非、価格競争力の方を高めていく、こちらの方をやってほしいというわけでございますが。
そこでポイントとなるのはコストダウンであります。コストダウンで重要なことは、日本が幾らコストダウンしても、それ以上の速度で海外が進めば競争力は劣化するわけでございます。
三枚目の上に示しましたグラフ、これは日米の米生産費の比較でございます。為替レートの影響を取り除いております。折れ線が上昇すれば日米のコスト倍率が高まり、日本米が割高になる。つまり、競争力が劣化したということであります。下降すれば競争力が挽回できたということであります。
これを見ますと、四十年間トータルとしては日本の米の競争力は残念ながら劣化したわけでございます。この間、日本の稲作では相当努力いたしまして労働時間の大幅短縮とかが実現しているわけでございますが、それよりもアメリカがもっとコストダウンしたということであります。元々広大な国土を有するアメリカに日本が作付け規模等で劣っていることは事実でありますが、せめて差を広げられないようにしたいと思うわけでありますが、現実にはそうではなかったわけであります。これは日本人として残念なことですが、事実であります。
ここで私が特に強調したいことは、常に世界を見て競争力を磨いていく必要があるということでございます。コストダウンの手法としては、直まき、あるいはほかにも幾つかございますが、他品種の組合せによる作付け分散を図るとか、こういうことも是非やっていただきたいと思います。
ところで、今御覧いただきましたグラフの一番下の折れ線でございますが、これはもし日本がアメリカと同じぐらい単収が増加したならば実現したであろうコスト比率です。すなわち、アメリカが単収が増加したにもかかわらず、日本ではその間余り増加しなかった。よって、生産物当たりのコストでは劣化したわけであります。
実際、世界の農業では単収増加が進んでおります。例えば米を例に取りますと、アメリカ・カリフォルニアでは、最近十五年間で玄米換算で毎年十四・八キロの増加を記録しております。この間、日本は五百三十キロ程度で、余り増えていないわけでございます。こうしたこともあって、大変残念な結果なんですが、世界の稲作ランキングで見ますと、単収ではちょっと下がってしまったということでございます。
この単収が余り上がらないという現象は、日本国内の市場だけを見ると、消費者はおいしい米が欲しい、高品質の米が欲しい、需給は過剰ぎみであると。高い単収を狙うと過剰在庫を招いて、かえって生産者は所得減も危惧されるということで、余り高単収を狙わないということは妥当な行動であります。しかし、一たび目を海外に転じますと、ほかとの違いが分かるわけでございます。
ただ、御存じの方も多いと思いますが、かつて日本では米作日本一表彰事業がございました。ここでは、いわゆる一トン取り、最高は千五十二キロという秋田県の工藤さんの記録がございますが、これだけの潜在的な技術が日本にはあるわけでございますので、当面は過剰生産をすると価格低下が危惧されるのですが、長期的には是非高単収を狙っていただいて、コストダウンを図ってほしいと思うわけでございます。
以上をもちまして私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。
この発言だけを見る →初めに、本日このような場で発言の機会を与えていただきましたこと、深く感謝申し上げる次第です。
私は、農業経済学、特にその中でも水田農業を中心に研究をしております。本日は、このような視点からの見方に限られますが、少しでも御審議のお役に立てるような知見を提供できればと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
お手元には三枚ほどの資料を用意しております。一枚目は全体の発言要旨、二枚目以降がそのバックデータ等でございます。一枚目に示しました順序に沿って御説明させていただきます。
まず初めに、世界の農産物貿易の現状について見ていきます。二枚目のグラフがそのバックデータです。これは、世界の農産物貿易の動向として、ある国が同じものを輸入もすれば輸出もするという双方向の貿易がどれだけ進んできたかを表す指数でございます。これは、例えば日本がパソコンを輸出する、その一方で同じ金額だけ輸入もするということになりますと一・〇になります。輸出ばかりで一切輸入しない、この場合はゼロでございます。半分だけ輸入すれば〇・五ということで、資料のバックデータの縦軸の数字が、〇・七が一番上に来ておりますが、その数字でございます。
この双方向の貿易は、工業製品では既にかなり前から当たり前のように行われております。例えば、日本が自動車をアメリカに輸出して、アメリカも同様に日本に輸出するということが行われてきたわけでございます。
ところが、農産物では必ずしも当たり前ではなかったわけであります。このグラフの最初の一九七〇年代の数字を見ますと、大変低くなっております。これはそのことを表しております。しかし、ここに表しました農産物、すなわちタマネギ、トマト、オレンジ、牛肉、豚肉、チーズ、それから米、いずれの品目も、牛肉だけはBSEの件がありましたのでちょっと変則的な動きがありますが、それ以外はいずれも数字が上昇、右上がりになっております。
この双方向の貿易の例として、例えばアメリカは、御承知のように、今回のTPP交渉では日本に強く牛肉の輸入、すなわちアメリカにとっての輸出を迫ったわけでございますが、そのアメリカは、オーストラリアから大量にコンビーフ用の低品位の牛肉を輸入しております。
では、なぜ農産物でも双方向の貿易が進んだのか。それは、食文化の交流、それから食品市場での高品質と低品質の製品の差別化、これが進んで、それに応じて生産分担も進んだからであります。
それでは、今後、自動車の貿易のように、つまり工業製品の貿易のようになっていくかということでございますが、注意しなければならない点がございます。製造業の品目も含めて全ての品目でこの指数を計測しますと、大体〇・六ぐらいになります。グラフの数字で確認していただくと分かるんですが、〇・六辺りのところに来ます。つまり、これと比較しますと、農産物ないしは食料では、ここに示した中では最も高いチーズでも〇・五五程度で、ほかの品目は〇・三とか低い数字でございます。ちなみに米は〇・一五程度であります。製造業と相当な違いがあるということでございます。
いかに双方向の貿易が進んだとはいえ、自然条件に左右されるのが農業でございます。したがいまして、レジュメの方に書いておりますが、工業製品と同様に双方向貿易、つまり輸出もする、輸入もするということが増加する傾向にはあるんですが、しかし同じ水準にはならないという、この両面性を理解することが重要であると私は考えております。
こうしたことも踏まえながら、今回御提案されているTPP協定の承認と関連法案の是非につきまして私の姿勢をお示しいたしますと、レジュメの方にも書いてございますが、今後、長期的に見て農産物でも一層の貿易拡大は避けられないという認識に立てば、関税等の国境措置を選択的、重点的に維持しつつも、短期的影響を回避した上で、品目に応じて可能なものは長期的、漸進的にそれらを削減する、その一方で、国内対策を競争力強化に重点を置いて実施する、輸出振興もまた同時に推進していくということは、方向としては妥当と考えます。
私は、交渉結果と国内対策をセットとして見るならば賛成の立場に立つものであります。ただし、そこで重要なことは、あくまで適切かつ十分な国内対策の充実が前提であります。
そこで、以下では、国内対策の具備すべき要件を三点ほど述べたいと思います。なお、国内対策といってもいわゆる産業政策の部分と地域社会政策としての部分がございますが、以下では産業政策の方に、しかもその中でも競争力強化という論点に絞って述べさせていただきます。
第一に、既に述べましたように、今回の交渉結果は、国境措置における削減までの期間を十分に長く確保したということが高く評価できる点でございます。これは農業という産業分野の特質として極めて重要であります。どんなにバイテク等によって新品種開発の速度が速まっても、現場では作物は生産者は一年に一回しか試すことができないというのは今も昔も変わらないわけでございます。そこで、国内対策もまたこれに対応して、是非とも息の長い取組としていただきたいと考えております。
思い起こしますと、二十年前ですね、約二十年前に、ガット・ウルグアイ・ラウンドの締結後、関税猶予の例外措置で五年後に再交渉というような話がありましたので、五年後までに対策をという、非常にそういうフレーズが当時の政府の文書の各所に見受けられました。このためもあってちょっと短期間という雰囲気があったわけでございますが、今回は是非とも、そうではなく、息の長い本腰を入れた競争力強化の対策を継続してほしいと考えております。
第二に、競争力強化といいますと、農業分野を専門とする方以外ではどうしても、商工業分野での単純なシナリオ、すなわち市場原理に従い厳しい環境にさらせば、中小規模の競争力の弱い経営が淘汰され、強い大規模だけが生き残り、競争力が強化されるというシナリオを描きがちであります。しかし、これは農業ではうまくいかないわけであります。
二枚目の下の表はこのことを示すデータです。一番左は、畜産、園芸等を全て含めた全営農類型の指標です。この場合、集約的経営もありますので、面積を指標として表すことは不適切です。そこで、保有労働力を尺度として、専従者がいるかいないかによって分類しております。右の二つの指標は、水田作経営に絞った指標であり、規模によって数字を見ております。
いずれのデータでも、いわゆる大規模経営ないし専業経営は農業では財務体質が弱い、小規模兼業農家の方がかえって財務体質が強いという、商工業とは皮肉にも逆の関係になっているわけでございます。このため、単純なやり方ではなくて、単純なやり方をやりますと、大規模農家の方が打撃を受け、小規模安定兼業農家だけが生き残るという、競争力強化の視点からは望ましくない方向に変化してしまうわけでございます。したがって、そうではない、大規模にターゲットを絞って強化策を講ずるということが重要でございます。
第三に、日本産農産物は高品質という過信は禁物という点を指摘したいと思います。
一般に、競争力は、価格競争力と非価格競争力、これは品質であるとかブランドであるとかでございますが、この二つから構成されます。確かに贈答品などでは高くても売れるという状況はありますが、今後一層の輸出増加を図ろうとするならば、その下の中間層の日常の食料消費として日本からの輸出を拡大することが不可欠であります。
その場合、例えば米を例に取りますと、海外では、私がデータにより計測しましたところ、かなり価格に反応しておりますし、また業界紙を見ても、実際に卸で輸出を手掛ける業者の方が指摘していることでございます。価格に反応しているんだということですね。したがって、是非、価格競争力の方を高めていく、こちらの方をやってほしいというわけでございますが。
そこでポイントとなるのはコストダウンであります。コストダウンで重要なことは、日本が幾らコストダウンしても、それ以上の速度で海外が進めば競争力は劣化するわけでございます。
三枚目の上に示しましたグラフ、これは日米の米生産費の比較でございます。為替レートの影響を取り除いております。折れ線が上昇すれば日米のコスト倍率が高まり、日本米が割高になる。つまり、競争力が劣化したということであります。下降すれば競争力が挽回できたということであります。
これを見ますと、四十年間トータルとしては日本の米の競争力は残念ながら劣化したわけでございます。この間、日本の稲作では相当努力いたしまして労働時間の大幅短縮とかが実現しているわけでございますが、それよりもアメリカがもっとコストダウンしたということであります。元々広大な国土を有するアメリカに日本が作付け規模等で劣っていることは事実でありますが、せめて差を広げられないようにしたいと思うわけでありますが、現実にはそうではなかったわけであります。これは日本人として残念なことですが、事実であります。
ここで私が特に強調したいことは、常に世界を見て競争力を磨いていく必要があるということでございます。コストダウンの手法としては、直まき、あるいはほかにも幾つかございますが、他品種の組合せによる作付け分散を図るとか、こういうことも是非やっていただきたいと思います。
ところで、今御覧いただきましたグラフの一番下の折れ線でございますが、これはもし日本がアメリカと同じぐらい単収が増加したならば実現したであろうコスト比率です。すなわち、アメリカが単収が増加したにもかかわらず、日本ではその間余り増加しなかった。よって、生産物当たりのコストでは劣化したわけであります。
実際、世界の農業では単収増加が進んでおります。例えば米を例に取りますと、アメリカ・カリフォルニアでは、最近十五年間で玄米換算で毎年十四・八キロの増加を記録しております。この間、日本は五百三十キロ程度で、余り増えていないわけでございます。こうしたこともあって、大変残念な結果なんですが、世界の稲作ランキングで見ますと、単収ではちょっと下がってしまったということでございます。
この単収が余り上がらないという現象は、日本国内の市場だけを見ると、消費者はおいしい米が欲しい、高品質の米が欲しい、需給は過剰ぎみであると。高い単収を狙うと過剰在庫を招いて、かえって生産者は所得減も危惧されるということで、余り高単収を狙わないということは妥当な行動であります。しかし、一たび目を海外に転じますと、ほかとの違いが分かるわけでございます。
ただ、御存じの方も多いと思いますが、かつて日本では米作日本一表彰事業がございました。ここでは、いわゆる一トン取り、最高は千五十二キロという秋田県の工藤さんの記録がございますが、これだけの潜在的な技術が日本にはあるわけでございますので、当面は過剰生産をすると価格低下が危惧されるのですが、長期的には是非高単収を狙っていただいて、コストダウンを図ってほしいと思うわけでございます。
以上をもちまして私の意見陳述を終わります。ありがとうございました。
林
作
作山巧#8
○参考人(作山巧君) 今御紹介をいただきました明治大学農学部の作山でございます。
本日は、意見陳述の機会をいただき、光栄に存じます。
私は、現在、大学で貿易交渉や貿易協定を中心とする研究と教育に従事をしておりますけれども、三年前までは農林水産省に在籍をしておりまして、行政官として二十五年間勤務をいたしました。農水省では通算で十年近く貿易交渉を担当いたしまして、例えば世界貿易機関、WTOのドーハ・ラウンド交渉、スイスなどとの経済連携交渉、これはEPAです、それからEUとのEPA交渉に向けた協議などにも従事をいたしました。特に、二〇〇八年から二〇一二年にかけては国際交渉官として、またその一時期は内閣官房に併任となり、日本のTPP参画協議などにも従事をいたしました。
本日は、こうした私の実務経験と研究成果を踏まえまして、TPP協定に関する意見を述べさせていただきます。
私のTPP協定に対する基本的な立場は、必ずしも反対というものではございません。
私もかつて従事をしましたWTOでの交渉が進展しない中で、次善の策はTPPのような有志国間での自由貿易協定、FTAしかないのが現状であります。また、TPPの持つ政治的、戦略的な意義も否定できません。例えば、私は二〇〇九年にチェコでEUとの協議に参加しましたけれども、EU側は日本とのEPA交渉には極めてその当時消極的でした。しかし、日本がTPP交渉に参加すると、一転して積極的な姿勢に転じたのも目の当たりにしております。このように、TPPがほかのメガFTAを推進するてこになるという意味で戦略的な効果を持っていることは事実と考えています。
こうした中で、TPPをめぐる論議で私が残念に感じておりますのは、いわゆる賛成派はTPPのメリットのみを喧伝し、いわゆる反対派はTPPの問題点のみをあげつらっている点であります。私は、TPP協定は日本にとってメリットもデメリットもあると思っておりますから、その両者を冷静に見極めるべきでありまして、研究者はその判断材料を提供をするのが使命だというふうに考えております。
その上で、私が問題視しておりますのは、TPP協定の内容そのものよりも、国民への説明に関する政府の姿勢であります。
私は、政府は実際には政治的、戦略的な理由でTPPを推進しているにもかかわらず、国民に対してはその経済的なメリットを過大に説明しているというふうに考えています。また、合意されたTPP協定に対しては生産者の皆さんを中心に多くの懸念が出されているにもかかわらず、政府の説明や情報公開は依然として不十分だというふうに考えております。
このため、本日は、時間も限られておりますので、この問題に絞って意見を述べさせていただきます。
問題点の第一ですが、政府によるTPPの農林水産業への影響試算が大きくぶれているという点であります。
配付資料を用意してございますので、配付資料の二ページを御覧ください。
農水省は二〇一〇年、全世界に対して関税を全廃すると生産額が四・五兆円減少し、供給熱量ベースの食料自給率が一四%に低下するという試算を発表しました。次に、安倍首相がTPP交渉参加を表明した二〇一三年には、TPP参加国に対して関税を全廃すれば生産額が三兆円減少し、食料自給率は二七%に低下するとの試算を出しました。これに対して、大筋合意後の二〇一五年には、TPP合意を反映した市場開放によって生産減少額は最大でも二千百億円にとどまり、三九%の食料自給率も維持されるという、それまでとは著しく異なる試算を示しております。
ここで試算の細かな想定に立ち入ることは差し控えたいと思います。しかし、生産者にとっては二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の衝撃が非常に強く、TPPによって農林水産業に壊滅的な影響が出るという固定観念が形成されたと考えられます。また、二〇一三年と二〇一五年の試算を比較すると、例えば加工用トマトのように、関税撤廃という想定は同一にもかかわらず、生産量の減少率が一〇〇%からゼロ%に変更された品目も見られます。こうした一貫性を欠いた三つの異なる影響試算を公表した結果、合意を反映した二〇一五年の影響試算がほとんど信用されず、生産者のTPPに対する不安はいまだに解消されていないというふうに考えます。
これら三つの影響試算は、いずれも政府の責任で出されたものです。したがって、二〇一五年の影響試算が正しいということであれば、二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の誤りを率直に認め、どの品目でどのような過大評価がなされたのかを生産者に対して詳細に説明することによって政府に対する不信感を解消すべきだというふうに考えます。
問題点の第二は、国会決議との整合性です。
私は、今回のTPP合意は明らかに国会決議に反しており、政府はその事実を明確に認めるべきだというふうに考えています。衆参の農林水産委員会は、二〇一三年四月、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とするということを求める決議を採択いたしました。
配付資料の三ページを御覧ください。
これは、TPP合意における農林水産品の全二千三百二十八タリフライン、これは関税の細目ですけれども、の内訳を整理したもので、重要五品目でも三〇%のタリフラインで関税が撤廃されました。また、関税が撤廃されなかったのは四百四十三ラインございます、この資料には書いてございませんが。そのうち百五十一ラインは税率を維持したものとされ、その割合は重要五品目の二六%にすぎません。
では、この税率を維持したもの、百五十六でも百五十一でもよろしいのですが、これは除外というふうに言えるのでしょうか。
配付資料の四ページを御覧ください。
これは精米の例ですが、関税割当て制度を取っている品目では、あらかじめ定められた輸入量に適用される枠内税率とそれを超えた輸入に適用される枠外税率があるため、タリフラインは二本あります。
私は、本年三月の学会発表で、税率を維持したとされるこの百五十一ラインは、実は全てが関税割当て品目の枠内又は枠外のいずれかである旨を指摘いたしました。つまり、TPP合意では、タリフライン単位で見れば税率を維持したものはありますが、枠内と枠外の二つのタリフラインを合わせた通常の品目単位で見れば税率を維持したものは一つもありません。私のこうした主張については、四月十九日の衆議院TPP特別委員会の質疑において森山農林水産大臣が、枠内税率も枠外税率も変更を加えていないものがあったかと問われれば、それはないと答弁し、結果的に正しかったことを認めています。
従来の日本のEPAでは、除外は、品目を単位として一切の約束から除外するという意味で用いられてきました。つまり、森山大臣の答弁は、国会決議が求めた除外がTPP合意にはないことを認めたものです。それでも政府は依然として、国会決議の趣旨に沿う合意を達成できたと答弁し続けています。これを詭弁と言わずして何なのでしょうか。
TPP合意に除外が皆無な以上、国会決議は一〇〇%守られていないことは明白です。この点は、日本とオーストラリアとの経済連携協定、日豪EPAですが、と比較すればより明確となります。日豪EPAでは、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目は除外又は再協議とする二〇〇六年の衆参の農林水産委員会の決議にもかかわらず、牛肉等で関税削減を約束いたしました。しかし、米のように明示的に除外とされた品目もありますから、決議が守られた面もあるわけです。つまり、今回のTPP合意のように国会決議が一〇〇%守られなかった事例を私は寡聞にして存じ上げません。
問題点の第三は、TPP交渉に関する政府の情報公開の在り方についてであり、私はいまだ不十分であるというふうに考えております。政府は、TPP交渉参加時に締結した秘密保持契約を理由に、交渉経過に関する情報公開を拒んでいます。
ここで、配付資料の五ページを御覧ください。
これは、ニュージーランド政府が公表した秘密保持契約の抜粋でありまして、交渉に関係する文書などをTPP協定発効後四年間は秘匿するという旨が明記されています。しかし、なぜ協定発効後四年間なのでしょうか。交渉官を務めた私の経験からしましても、交渉について秘匿する必要があるのは協定の署名までであり、条文が確定した後の国会審議で秘匿し続ける必要性は乏しいというふうに思います。
次に、配付資料の六ページを御覧ください。
これは日本とASEANとのEPAに関する説明資料で、外務省のウエブサイトに掲載されているものです。資料右下の各国の物品貿易自由化の方式において、日本側は、即時関税撤廃と段階的関税撤廃とを合わせて、貿易額を基準に九三%で関税撤廃することが明記されています。
なぜASEANとのEPAではこうした自由化基準に関する情報が公開でき、TPPではできないのでしょうか。もう一度問いたいと思います。なぜTPP協定にのみ秘密保持契約があり、そして、なぜ秘密保持期間は署名後ではなく協定発効後四年間なのでしょうか。それは、TPPでは日本にとって著しく不利な参加条件が存在し、それを署名直後に公開すると何かと都合が悪いことがあるということだからというふうに考えています。
配付資料の七ページを御覧ください。
これは、各種の報道や私の調査結果を踏まえて要約した日本のTPP交渉への参加条件です。具体的には、日本は、二〇一三年の交渉参加時に先行九か国が合意した事項を原則として受け入れ、再協議は認められない。二番目として、交渉を打ち切る権利は先行九か国にあり、遅れて交渉入りした国には認められないという条件を受諾したと見ています。また、前者の合意済みの事項の中には、一つ目は、品目数ベースで関税撤廃率は九五%以上とする、二つ目は、一切の自由化をしない除外は認められないの二点が含まれていたと考えられます。
まず、九五%の関税撤廃率について検証したいと思います。配付資料の八ページを御覧ください。
この資料は、TPP合意における日本の総タリフラインの内訳に関し、九五%の関税撤廃率の基準を前提とした場合と、これが左側ですが、実際の合意内容とを対比したものです。左側の基準の列を見ると、日本の関税撤廃率を九五%とするためには、工業品の全てで関税を撤廃しても農林水産品で千八百七十八ラインの関税撤廃が不可欠です。これは、三ページにお示しをした関税撤廃の前例がある農林水産品、千四百九十四ラインございますが、これよりも多いので、九五%の関税撤廃率の基準を満たすためには、重要五品目の一部でも関税撤廃が避けられないことを意味します。
再び配付資料の八ページ左、右側の列の下段を御覧いただきますと、九五%の関税撤廃率を前提としますと、関税撤廃を回避できる農林水産品は四百五十ラインとなります。他方で、右側の実際の列の下のところを御覧いただきますと、日本が実際に関税撤廃を回避したのは四百四十三ラインでした。基準と実際との差は僅か七ライン、全品目の関税撤廃率で見ると九五・一%、上の方でございますが、九五%の基準と〇・一ポイントしか差がありません。日本の参加条件としての九五%の関税撤廃率の存在は明らかではないでしょうか。
最後に、日本の参加条件として除外が禁止されていたことに関する証拠も挙げたいと思います。
第一に、TPP参加国からの輸入実績がないコンニャクイモのような品目を含めて、TPP合意の中で関税割当て品目の枠内か枠外のいずれかで市場開放しているということがあります。これはTPP参加国の実利ではなく、交渉ルールとして除外禁止が設定されていたという証拠だというふうに考えます。また、さきに述べた税率を維持したもの百五十一ラインを日本政府が除外というふうに呼ばないのも、TPPで除外が禁止されているからにほかなりません。つまり、TPP参加と除外を求める国会決議とは最初から相入れなかったということです。
要約いたしますと、私はTPP協定に対する国民の理解はいまだ十分に深まったとは言えず、特に生産者の間ではそれが顕著だというふうに考えております。最近の世論調査でも、今回TPPを批准すべきとの意見は少数派となっています。その理由は、私がこれまで述べたように、TPP協定に関する十分な説明や情報公開をせずに批准を拙速に進めようという政府の態度に対する不信感が高まっているからではないかというふうに考えています。国民が政府に求めているのは、国会決議違反に頬かむりをして拙速に批准をすることではなくて、TPP協定の必要性とその内容について愚直に理解を求め続ける姿勢ではないでしょうか。
最後に、配付資料の九ページ以降にはTPP協定に関する私の研究成果をまとめましたので、適宜御参照ください。
私の意見陳述は以上です。御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →本日は、意見陳述の機会をいただき、光栄に存じます。
私は、現在、大学で貿易交渉や貿易協定を中心とする研究と教育に従事をしておりますけれども、三年前までは農林水産省に在籍をしておりまして、行政官として二十五年間勤務をいたしました。農水省では通算で十年近く貿易交渉を担当いたしまして、例えば世界貿易機関、WTOのドーハ・ラウンド交渉、スイスなどとの経済連携交渉、これはEPAです、それからEUとのEPA交渉に向けた協議などにも従事をいたしました。特に、二〇〇八年から二〇一二年にかけては国際交渉官として、またその一時期は内閣官房に併任となり、日本のTPP参画協議などにも従事をいたしました。
本日は、こうした私の実務経験と研究成果を踏まえまして、TPP協定に関する意見を述べさせていただきます。
私のTPP協定に対する基本的な立場は、必ずしも反対というものではございません。
私もかつて従事をしましたWTOでの交渉が進展しない中で、次善の策はTPPのような有志国間での自由貿易協定、FTAしかないのが現状であります。また、TPPの持つ政治的、戦略的な意義も否定できません。例えば、私は二〇〇九年にチェコでEUとの協議に参加しましたけれども、EU側は日本とのEPA交渉には極めてその当時消極的でした。しかし、日本がTPP交渉に参加すると、一転して積極的な姿勢に転じたのも目の当たりにしております。このように、TPPがほかのメガFTAを推進するてこになるという意味で戦略的な効果を持っていることは事実と考えています。
こうした中で、TPPをめぐる論議で私が残念に感じておりますのは、いわゆる賛成派はTPPのメリットのみを喧伝し、いわゆる反対派はTPPの問題点のみをあげつらっている点であります。私は、TPP協定は日本にとってメリットもデメリットもあると思っておりますから、その両者を冷静に見極めるべきでありまして、研究者はその判断材料を提供をするのが使命だというふうに考えております。
その上で、私が問題視しておりますのは、TPP協定の内容そのものよりも、国民への説明に関する政府の姿勢であります。
私は、政府は実際には政治的、戦略的な理由でTPPを推進しているにもかかわらず、国民に対してはその経済的なメリットを過大に説明しているというふうに考えています。また、合意されたTPP協定に対しては生産者の皆さんを中心に多くの懸念が出されているにもかかわらず、政府の説明や情報公開は依然として不十分だというふうに考えております。
このため、本日は、時間も限られておりますので、この問題に絞って意見を述べさせていただきます。
問題点の第一ですが、政府によるTPPの農林水産業への影響試算が大きくぶれているという点であります。
配付資料を用意してございますので、配付資料の二ページを御覧ください。
農水省は二〇一〇年、全世界に対して関税を全廃すると生産額が四・五兆円減少し、供給熱量ベースの食料自給率が一四%に低下するという試算を発表しました。次に、安倍首相がTPP交渉参加を表明した二〇一三年には、TPP参加国に対して関税を全廃すれば生産額が三兆円減少し、食料自給率は二七%に低下するとの試算を出しました。これに対して、大筋合意後の二〇一五年には、TPP合意を反映した市場開放によって生産減少額は最大でも二千百億円にとどまり、三九%の食料自給率も維持されるという、それまでとは著しく異なる試算を示しております。
ここで試算の細かな想定に立ち入ることは差し控えたいと思います。しかし、生産者にとっては二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の衝撃が非常に強く、TPPによって農林水産業に壊滅的な影響が出るという固定観念が形成されたと考えられます。また、二〇一三年と二〇一五年の試算を比較すると、例えば加工用トマトのように、関税撤廃という想定は同一にもかかわらず、生産量の減少率が一〇〇%からゼロ%に変更された品目も見られます。こうした一貫性を欠いた三つの異なる影響試算を公表した結果、合意を反映した二〇一五年の影響試算がほとんど信用されず、生産者のTPPに対する不安はいまだに解消されていないというふうに考えます。
これら三つの影響試算は、いずれも政府の責任で出されたものです。したがって、二〇一五年の影響試算が正しいということであれば、二〇一〇年や二〇一三年の影響試算の誤りを率直に認め、どの品目でどのような過大評価がなされたのかを生産者に対して詳細に説明することによって政府に対する不信感を解消すべきだというふうに考えます。
問題点の第二は、国会決議との整合性です。
私は、今回のTPP合意は明らかに国会決議に反しており、政府はその事実を明確に認めるべきだというふうに考えています。衆参の農林水産委員会は、二〇一三年四月、米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物などの農林水産物の重要品目について、引き続き再生産可能となるよう除外又は再協議の対象とするということを求める決議を採択いたしました。
配付資料の三ページを御覧ください。
これは、TPP合意における農林水産品の全二千三百二十八タリフライン、これは関税の細目ですけれども、の内訳を整理したもので、重要五品目でも三〇%のタリフラインで関税が撤廃されました。また、関税が撤廃されなかったのは四百四十三ラインございます、この資料には書いてございませんが。そのうち百五十一ラインは税率を維持したものとされ、その割合は重要五品目の二六%にすぎません。
では、この税率を維持したもの、百五十六でも百五十一でもよろしいのですが、これは除外というふうに言えるのでしょうか。
配付資料の四ページを御覧ください。
これは精米の例ですが、関税割当て制度を取っている品目では、あらかじめ定められた輸入量に適用される枠内税率とそれを超えた輸入に適用される枠外税率があるため、タリフラインは二本あります。
私は、本年三月の学会発表で、税率を維持したとされるこの百五十一ラインは、実は全てが関税割当て品目の枠内又は枠外のいずれかである旨を指摘いたしました。つまり、TPP合意では、タリフライン単位で見れば税率を維持したものはありますが、枠内と枠外の二つのタリフラインを合わせた通常の品目単位で見れば税率を維持したものは一つもありません。私のこうした主張については、四月十九日の衆議院TPP特別委員会の質疑において森山農林水産大臣が、枠内税率も枠外税率も変更を加えていないものがあったかと問われれば、それはないと答弁し、結果的に正しかったことを認めています。
従来の日本のEPAでは、除外は、品目を単位として一切の約束から除外するという意味で用いられてきました。つまり、森山大臣の答弁は、国会決議が求めた除外がTPP合意にはないことを認めたものです。それでも政府は依然として、国会決議の趣旨に沿う合意を達成できたと答弁し続けています。これを詭弁と言わずして何なのでしょうか。
TPP合意に除外が皆無な以上、国会決議は一〇〇%守られていないことは明白です。この点は、日本とオーストラリアとの経済連携協定、日豪EPAですが、と比較すればより明確となります。日豪EPAでは、米、小麦、牛肉、乳製品、砂糖などの重要品目は除外又は再協議とする二〇〇六年の衆参の農林水産委員会の決議にもかかわらず、牛肉等で関税削減を約束いたしました。しかし、米のように明示的に除外とされた品目もありますから、決議が守られた面もあるわけです。つまり、今回のTPP合意のように国会決議が一〇〇%守られなかった事例を私は寡聞にして存じ上げません。
問題点の第三は、TPP交渉に関する政府の情報公開の在り方についてであり、私はいまだ不十分であるというふうに考えております。政府は、TPP交渉参加時に締結した秘密保持契約を理由に、交渉経過に関する情報公開を拒んでいます。
ここで、配付資料の五ページを御覧ください。
これは、ニュージーランド政府が公表した秘密保持契約の抜粋でありまして、交渉に関係する文書などをTPP協定発効後四年間は秘匿するという旨が明記されています。しかし、なぜ協定発効後四年間なのでしょうか。交渉官を務めた私の経験からしましても、交渉について秘匿する必要があるのは協定の署名までであり、条文が確定した後の国会審議で秘匿し続ける必要性は乏しいというふうに思います。
次に、配付資料の六ページを御覧ください。
これは日本とASEANとのEPAに関する説明資料で、外務省のウエブサイトに掲載されているものです。資料右下の各国の物品貿易自由化の方式において、日本側は、即時関税撤廃と段階的関税撤廃とを合わせて、貿易額を基準に九三%で関税撤廃することが明記されています。
なぜASEANとのEPAではこうした自由化基準に関する情報が公開でき、TPPではできないのでしょうか。もう一度問いたいと思います。なぜTPP協定にのみ秘密保持契約があり、そして、なぜ秘密保持期間は署名後ではなく協定発効後四年間なのでしょうか。それは、TPPでは日本にとって著しく不利な参加条件が存在し、それを署名直後に公開すると何かと都合が悪いことがあるということだからというふうに考えています。
配付資料の七ページを御覧ください。
これは、各種の報道や私の調査結果を踏まえて要約した日本のTPP交渉への参加条件です。具体的には、日本は、二〇一三年の交渉参加時に先行九か国が合意した事項を原則として受け入れ、再協議は認められない。二番目として、交渉を打ち切る権利は先行九か国にあり、遅れて交渉入りした国には認められないという条件を受諾したと見ています。また、前者の合意済みの事項の中には、一つ目は、品目数ベースで関税撤廃率は九五%以上とする、二つ目は、一切の自由化をしない除外は認められないの二点が含まれていたと考えられます。
まず、九五%の関税撤廃率について検証したいと思います。配付資料の八ページを御覧ください。
この資料は、TPP合意における日本の総タリフラインの内訳に関し、九五%の関税撤廃率の基準を前提とした場合と、これが左側ですが、実際の合意内容とを対比したものです。左側の基準の列を見ると、日本の関税撤廃率を九五%とするためには、工業品の全てで関税を撤廃しても農林水産品で千八百七十八ラインの関税撤廃が不可欠です。これは、三ページにお示しをした関税撤廃の前例がある農林水産品、千四百九十四ラインございますが、これよりも多いので、九五%の関税撤廃率の基準を満たすためには、重要五品目の一部でも関税撤廃が避けられないことを意味します。
再び配付資料の八ページ左、右側の列の下段を御覧いただきますと、九五%の関税撤廃率を前提としますと、関税撤廃を回避できる農林水産品は四百五十ラインとなります。他方で、右側の実際の列の下のところを御覧いただきますと、日本が実際に関税撤廃を回避したのは四百四十三ラインでした。基準と実際との差は僅か七ライン、全品目の関税撤廃率で見ると九五・一%、上の方でございますが、九五%の基準と〇・一ポイントしか差がありません。日本の参加条件としての九五%の関税撤廃率の存在は明らかではないでしょうか。
最後に、日本の参加条件として除外が禁止されていたことに関する証拠も挙げたいと思います。
第一に、TPP参加国からの輸入実績がないコンニャクイモのような品目を含めて、TPP合意の中で関税割当て品目の枠内か枠外のいずれかで市場開放しているということがあります。これはTPP参加国の実利ではなく、交渉ルールとして除外禁止が設定されていたという証拠だというふうに考えます。また、さきに述べた税率を維持したもの百五十一ラインを日本政府が除外というふうに呼ばないのも、TPPで除外が禁止されているからにほかなりません。つまり、TPP参加と除外を求める国会決議とは最初から相入れなかったということです。
要約いたしますと、私はTPP協定に対する国民の理解はいまだ十分に深まったとは言えず、特に生産者の間ではそれが顕著だというふうに考えております。最近の世論調査でも、今回TPPを批准すべきとの意見は少数派となっています。その理由は、私がこれまで述べたように、TPP協定に関する十分な説明や情報公開をせずに批准を拙速に進めようという政府の態度に対する不信感が高まっているからではないかというふうに考えています。国民が政府に求めているのは、国会決議違反に頬かむりをして拙速に批准をすることではなくて、TPP協定の必要性とその内容について愚直に理解を求め続ける姿勢ではないでしょうか。
最後に、配付資料の九ページ以降にはTPP協定に関する私の研究成果をまとめましたので、適宜御参照ください。
私の意見陳述は以上です。御清聴ありがとうございました。
林
磯
磯田宏#10
○参考人(磯田宏君) 御紹介いただいた磯田でございます。
事前にお二方の参考人の先生方と打合せをしたわけでは全くございませんが、私のこれから申し述べさせていただく意見陳述は、かなり角度を変えた形になっております。
お二方の先生はそれぞれの視点から、現行の協定としてある意味確定している部分、そして関税率表として確定している部分、これを前提にして御意見を陳述されました。私は、実はそれにとどまらない内容がこの協定には盛り込まれている、組み込まれているということを申し上げたいというふうに思います。
お手元にお配りした表題のように、農林水産業等への影響に関わって承認・協定発効後への不透明要素・リスクが著しく大きい、こういうTPP協定の国会承認には反対するというのが私の結論的意見でございます。
大きく四つの理由から申し上げますけれども、一番目は、農産物等の市場開放は、最終テキストとしてこの場でも審議されている協定及び関税率表だけでは済まない危険性が著しく高いということでございます。
すなわち、農産物等について、協定の現行規定、関税率表以上の市場開放を協議するメカニズムが幾重にも組み込まれており、その協議の主体、範囲、権限、協議結果の取扱いについて不透明要素が著しく多いということでございます。そのために、国会に提出されている承認案だけを審議して承認を決するのはリスクが多過ぎると考えざるを得ないわけでございます。
二番目に、具体的に申しますと、第二章で物品の貿易に関する小委員会というのがございまして、関税撤廃時期繰上げ、その他の貿易促進及び非関税障壁へ対処する、また、農業貿易に関する小委員会が農産品貿易その他の事項を促進しとされ、また、発効後七年以降、五か国いずれかの要請による市場アクセス増大目的での関税、関税割当て及びセーフガード適用に関する協議を義務付けられ、さらに二十七章で関税撤廃時期繰上げによる修正をTPP委員会の任務に挙げているわけでございます。
つまり、農産物等について少なくとも四重の追加的市場アクセス増大協議メカニズムがビルトインされていると。したがって、承認案だけの農産物市場開放では済まされない危険が極めて多いというふうに私は認識しているところでございます。
二番目の理由でございます。農産物・食品の安全性確保、規格、基準、表示、適合性評価手法でも、追加的協議メカニズムによって発効後の規制措置等の確保が著しく不透明化するというふうに認識しております。
第七章、衛生植物検疫措置、いわゆるSPSでございますが、これはそれ自体としても重大な問題を有しておりますが、加えて、そこでも設立されるSPS小委員会の目的が、この章で定める規定の実施促進、相互に関心を有するSPS上の事項検討、SPSに関する連絡・協力促進と著しく抽象的に規定されているため、無限定に広範囲な輸出国側の関心事項等が協議される危険をはらんでいるというふうに考えております。
また、第八章、貿易の技術的障害、略称TBTにつきましても、それ自体が幾つかの無視できない問題をはらんでいるわけでありますけれども、例えば、強制規格・任意規格・適合性評価手続作成に他国の者を参加させ、意見提出させ、それを考慮する義務であったりとか、他国の適合性評価の相互承認促進や国際規格への調和の促進だったりとか、食品規格委員会、FAO、WHOによって設立されている食品規格委員会の基準ですら、効果的でない、適当でないというふうに判断されればラベル記載を要求できないということなどがそれらであります。
それに加えて、ここでも設立されるTBT小委員会が、第八章の実施・運用の監視、規定による義務に関する潜在的な改正・解釈の特定、規定での将来の活動における優先分野の決定と新たな分野別活動の提案検討、附属書、ここには大変我々にとって重要な問題が書かれているわけですけれども、その規定を強化、改善し、それら分野の調和を勧告することまでが任務とされている。これまた著しく広範囲でありまして、国民生活の安全、安心に不可欠な農産物・食品、医薬品等の安全基準、規格、表示、それらへの適合性評価について、日本の規制、基準の緩和や他国のものの承認や調和などが一層進められる危惧を抱かざるを得ないわけでございます。
三点目の理由は、政府調達における国産のあるいは地域産の農林水産物利用が更に妨げられる危険も高まるというふうに考えております。
そもそもが、第十五章、政府調達でもって、外国等の供給者に対して、それが物品、サービスを他の締約国から調達していることに基づいて差別することを禁じておりますし、調達に際しての技術仕様、スペックに関して、特定の産地、生産者、供給者を要件にすることも、さらにそれに言及することさえ禁じられているわけでございます。したがって、市場開放対象の政府調達として附属書で日本国政府が示しているものについては、もう現時点で国産、地域産農林水産物等の利用を課すことは実質的に禁止されているというふうに理解されるわけでございます。
加えて、これらについても、政府調達小委員会が追加的な交渉によって対象機関と範囲の拡大及び基準額の改定、これは当然引下げが旨となるわけですけれども、そのための交渉をすると定められているわけでございます。日本政府は、対象機関として、中央政府の省庁、各種独法、地方機関、地方政府としては都道府県と指定都市を挙げているわけでございまして、また対象範囲の除外としては、地方政府の食料・飲料提供サービス、すなわち学校給食等でございますけれども、その他若干のものを除外としており、基準額についても定めておるわけですが、これらが追加交渉の対象になると。
したがって、対象機関の一般市町村等への拡大、対象範囲として地方自治体の学校給食サービス等の除外の解消、基準額の引下げへ向けた追加的交渉が義務付けられているわけでございます。そうなれば、日本政府と地方自治体が公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律や食育基本法の趣旨に沿って進めてきている国産材、地域産材を利用した公共建築や地産地消型学校給食の促進などは、その存立基盤を縮小、喪失する危険にさらされ、したがって地域の農林水産業と地域経済に一層の打撃を与えることにつながるということが十分に考えられ得るわけでございます。
四点目でございますけれども、これは実はアメリカの側の問題でございます。
御案内のように、アメリカの通商促進権限法が制定されておるわけでございますけれども、その中に、大統領による確認過程というものが定められております。それは、アメリカがそのアメリカ自身の国内法上の手続の一環として、一方的に事実上の追加交渉、再交渉に相当することを可能にする規定があるということでございます。大統領が、他の署名国が協定の義務を遵守する準備を完了したかどうかの確認を行い、それを議会へ報告する義務があるというのがそれでございます。
やや具体的に申しますと、当該協定発効予定日の三十日前までに、大統領が、他の署名国が当該協定諸規定の義務を履行するのに必要な諸手段を取り終えたかどうかを確認し、取り終えたことを議会に書面で通知することを義務付けているわけでございます。この場合、注意を要するのは、当該協定諸規定の義務が何かという解釈は当然アメリカ側による解釈になると、また、それを履行するのに必要な諸手段の解釈も同様と考えるしかないわけでございます。日本側の解釈が入る余地はございません。すると、他の署名国が承認、批准、国内手続を終えた後であっても、アメリカ大統領が、実質的に議会とも密接な連絡を保ちながら、義務の履行に必要な諸手段を取り終えていないというふうに判断すれば、その是正を求めてくる。つまりは、実質的な追加交渉、再交渉がなされ得る法規定になっているというふうに私は判断しております。
アメリカのこのTPA法における大統領確認、議会通知が終わってから初めてアメリカの国内法上の手続が完了するとの解釈に立てば、論理的には、この確認過程はアメリカ側の判断で無限に設定できることにもなりかねません。また、いずれにせよ、当該規定はアメリカが最後に国内法上の手続を終えることを想定しております。後出しじゃんけんでございます。したがって、アメリカに比べて早期に国内法上の手続を終えた国ほどこの確認過程に長期間さらされることになるというふうになろうかと思います。
このような片務的で、アメリカに特権的な事実上の追加交渉、再交渉の実権を与えるメカニズムが存在する限り、TPP協定、実はこのTPA法はTPP協定のためだけに作られた法律じゃございませんからその他も含めてでございますけれども、その承認その他の国内法上の手続を少なくともアメリカに先んじて行うことは得策でないというふうに考えるわけでございます。
以上を踏まえまして、最後に結論でございますけれども、この時点でTPP協定の承認その他の国内法上の手続をすることは著しく不利であるというふうに認識しております。
以上のように、生きている協定ゆえに有する追加的協議・交渉・開放メカニズム、すなわちTPP委員会、各種小委員会、各種作業部会、特定国間協議、そしてアメリカTPA法の大統領確認過程、さらに、今触れることはできませんでしたけれども、投資家国家間紛争解決、いわゆるISDSにおける仲裁廷、こういったものの構成、参加主体とその適格性基準、協議・追加交渉の範囲、権限、判断基準、協議等の結果の法的位置付けなどが明確になって初めて本協定の将来に向けた実質的体系としての全体像が明らかになってくるものと考えられます。
したがって、それらがつまびらかにならない限り承認審議を深めることは極めて困難であり、もし現在の承認案でそれらを明らかにすることが不可能なら、そうした諸点が明確化するようにむしろ協定そのものを改定すべきであると、ですらあるというふうに考えるところであります。
以上をもって、私の冒頭の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →事前にお二方の参考人の先生方と打合せをしたわけでは全くございませんが、私のこれから申し述べさせていただく意見陳述は、かなり角度を変えた形になっております。
お二方の先生はそれぞれの視点から、現行の協定としてある意味確定している部分、そして関税率表として確定している部分、これを前提にして御意見を陳述されました。私は、実はそれにとどまらない内容がこの協定には盛り込まれている、組み込まれているということを申し上げたいというふうに思います。
お手元にお配りした表題のように、農林水産業等への影響に関わって承認・協定発効後への不透明要素・リスクが著しく大きい、こういうTPP協定の国会承認には反対するというのが私の結論的意見でございます。
大きく四つの理由から申し上げますけれども、一番目は、農産物等の市場開放は、最終テキストとしてこの場でも審議されている協定及び関税率表だけでは済まない危険性が著しく高いということでございます。
すなわち、農産物等について、協定の現行規定、関税率表以上の市場開放を協議するメカニズムが幾重にも組み込まれており、その協議の主体、範囲、権限、協議結果の取扱いについて不透明要素が著しく多いということでございます。そのために、国会に提出されている承認案だけを審議して承認を決するのはリスクが多過ぎると考えざるを得ないわけでございます。
二番目に、具体的に申しますと、第二章で物品の貿易に関する小委員会というのがございまして、関税撤廃時期繰上げ、その他の貿易促進及び非関税障壁へ対処する、また、農業貿易に関する小委員会が農産品貿易その他の事項を促進しとされ、また、発効後七年以降、五か国いずれかの要請による市場アクセス増大目的での関税、関税割当て及びセーフガード適用に関する協議を義務付けられ、さらに二十七章で関税撤廃時期繰上げによる修正をTPP委員会の任務に挙げているわけでございます。
つまり、農産物等について少なくとも四重の追加的市場アクセス増大協議メカニズムがビルトインされていると。したがって、承認案だけの農産物市場開放では済まされない危険が極めて多いというふうに私は認識しているところでございます。
二番目の理由でございます。農産物・食品の安全性確保、規格、基準、表示、適合性評価手法でも、追加的協議メカニズムによって発効後の規制措置等の確保が著しく不透明化するというふうに認識しております。
第七章、衛生植物検疫措置、いわゆるSPSでございますが、これはそれ自体としても重大な問題を有しておりますが、加えて、そこでも設立されるSPS小委員会の目的が、この章で定める規定の実施促進、相互に関心を有するSPS上の事項検討、SPSに関する連絡・協力促進と著しく抽象的に規定されているため、無限定に広範囲な輸出国側の関心事項等が協議される危険をはらんでいるというふうに考えております。
また、第八章、貿易の技術的障害、略称TBTにつきましても、それ自体が幾つかの無視できない問題をはらんでいるわけでありますけれども、例えば、強制規格・任意規格・適合性評価手続作成に他国の者を参加させ、意見提出させ、それを考慮する義務であったりとか、他国の適合性評価の相互承認促進や国際規格への調和の促進だったりとか、食品規格委員会、FAO、WHOによって設立されている食品規格委員会の基準ですら、効果的でない、適当でないというふうに判断されればラベル記載を要求できないということなどがそれらであります。
それに加えて、ここでも設立されるTBT小委員会が、第八章の実施・運用の監視、規定による義務に関する潜在的な改正・解釈の特定、規定での将来の活動における優先分野の決定と新たな分野別活動の提案検討、附属書、ここには大変我々にとって重要な問題が書かれているわけですけれども、その規定を強化、改善し、それら分野の調和を勧告することまでが任務とされている。これまた著しく広範囲でありまして、国民生活の安全、安心に不可欠な農産物・食品、医薬品等の安全基準、規格、表示、それらへの適合性評価について、日本の規制、基準の緩和や他国のものの承認や調和などが一層進められる危惧を抱かざるを得ないわけでございます。
三点目の理由は、政府調達における国産のあるいは地域産の農林水産物利用が更に妨げられる危険も高まるというふうに考えております。
そもそもが、第十五章、政府調達でもって、外国等の供給者に対して、それが物品、サービスを他の締約国から調達していることに基づいて差別することを禁じておりますし、調達に際しての技術仕様、スペックに関して、特定の産地、生産者、供給者を要件にすることも、さらにそれに言及することさえ禁じられているわけでございます。したがって、市場開放対象の政府調達として附属書で日本国政府が示しているものについては、もう現時点で国産、地域産農林水産物等の利用を課すことは実質的に禁止されているというふうに理解されるわけでございます。
加えて、これらについても、政府調達小委員会が追加的な交渉によって対象機関と範囲の拡大及び基準額の改定、これは当然引下げが旨となるわけですけれども、そのための交渉をすると定められているわけでございます。日本政府は、対象機関として、中央政府の省庁、各種独法、地方機関、地方政府としては都道府県と指定都市を挙げているわけでございまして、また対象範囲の除外としては、地方政府の食料・飲料提供サービス、すなわち学校給食等でございますけれども、その他若干のものを除外としており、基準額についても定めておるわけですが、これらが追加交渉の対象になると。
したがって、対象機関の一般市町村等への拡大、対象範囲として地方自治体の学校給食サービス等の除外の解消、基準額の引下げへ向けた追加的交渉が義務付けられているわけでございます。そうなれば、日本政府と地方自治体が公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律や食育基本法の趣旨に沿って進めてきている国産材、地域産材を利用した公共建築や地産地消型学校給食の促進などは、その存立基盤を縮小、喪失する危険にさらされ、したがって地域の農林水産業と地域経済に一層の打撃を与えることにつながるということが十分に考えられ得るわけでございます。
四点目でございますけれども、これは実はアメリカの側の問題でございます。
御案内のように、アメリカの通商促進権限法が制定されておるわけでございますけれども、その中に、大統領による確認過程というものが定められております。それは、アメリカがそのアメリカ自身の国内法上の手続の一環として、一方的に事実上の追加交渉、再交渉に相当することを可能にする規定があるということでございます。大統領が、他の署名国が協定の義務を遵守する準備を完了したかどうかの確認を行い、それを議会へ報告する義務があるというのがそれでございます。
やや具体的に申しますと、当該協定発効予定日の三十日前までに、大統領が、他の署名国が当該協定諸規定の義務を履行するのに必要な諸手段を取り終えたかどうかを確認し、取り終えたことを議会に書面で通知することを義務付けているわけでございます。この場合、注意を要するのは、当該協定諸規定の義務が何かという解釈は当然アメリカ側による解釈になると、また、それを履行するのに必要な諸手段の解釈も同様と考えるしかないわけでございます。日本側の解釈が入る余地はございません。すると、他の署名国が承認、批准、国内手続を終えた後であっても、アメリカ大統領が、実質的に議会とも密接な連絡を保ちながら、義務の履行に必要な諸手段を取り終えていないというふうに判断すれば、その是正を求めてくる。つまりは、実質的な追加交渉、再交渉がなされ得る法規定になっているというふうに私は判断しております。
アメリカのこのTPA法における大統領確認、議会通知が終わってから初めてアメリカの国内法上の手続が完了するとの解釈に立てば、論理的には、この確認過程はアメリカ側の判断で無限に設定できることにもなりかねません。また、いずれにせよ、当該規定はアメリカが最後に国内法上の手続を終えることを想定しております。後出しじゃんけんでございます。したがって、アメリカに比べて早期に国内法上の手続を終えた国ほどこの確認過程に長期間さらされることになるというふうになろうかと思います。
このような片務的で、アメリカに特権的な事実上の追加交渉、再交渉の実権を与えるメカニズムが存在する限り、TPP協定、実はこのTPA法はTPP協定のためだけに作られた法律じゃございませんからその他も含めてでございますけれども、その承認その他の国内法上の手続を少なくともアメリカに先んじて行うことは得策でないというふうに考えるわけでございます。
以上を踏まえまして、最後に結論でございますけれども、この時点でTPP協定の承認その他の国内法上の手続をすることは著しく不利であるというふうに認識しております。
以上のように、生きている協定ゆえに有する追加的協議・交渉・開放メカニズム、すなわちTPP委員会、各種小委員会、各種作業部会、特定国間協議、そしてアメリカTPA法の大統領確認過程、さらに、今触れることはできませんでしたけれども、投資家国家間紛争解決、いわゆるISDSにおける仲裁廷、こういったものの構成、参加主体とその適格性基準、協議・追加交渉の範囲、権限、判断基準、協議等の結果の法的位置付けなどが明確になって初めて本協定の将来に向けた実質的体系としての全体像が明らかになってくるものと考えられます。
したがって、それらがつまびらかにならない限り承認審議を深めることは極めて困難であり、もし現在の承認案でそれらを明らかにすることが不可能なら、そうした諸点が明確化するようにむしろ協定そのものを改定すべきであると、ですらあるというふうに考えるところであります。
以上をもって、私の冒頭の意見陳述とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。
林
林芳正#11
○委員長(林芳正君) ありがとうございました。
以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力をお願いいたします。
質疑のある方は順次御発言願います。
この発言だけを見る →以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑の時間が限られておりますので、御答弁は簡潔に行っていただくよう御協力をお願いいたします。
質疑のある方は順次御発言願います。
進
進藤金日子#12
○進藤金日子君 自由民主党の進藤金日子でございます。
本日は、三人の参考人の方々から貴重なお話をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
まずは、TPPに関連する一連の報道、あるいは、全国各地を私自身回って、いろいろな方々の御意見などを通じまして、私なりの感想を申し述べさせていただき、その上で参考人の方々に質問をさせていただきたいと思います。
私は、今回のTPPの議論を通じまして、自由貿易を進めるに当たって、やはり農林水産分野への影響が大きくて、かつその影響が全国一律ではなく、地域ごとに異なり、それが各地域の生活に直結するものであることがより一層浮き彫りになった気がしております。そして、独立国家として食料の安全保障をしっかりと確保する必要があること、我が国の国土や環境を守っていく上で、多面的機能の発揮等を通じて農林水産業が果たす役割が極めて大きく、産業としてのみならず、地域を支え、国土を維持していく観点から、農林水産業を健全に発展できる条件を国が責任を持って整えていくことが不可欠であるということが明確になったものと受け止めております。
こうしたことは、国会審議、特にこの参議院におけます真摯な審議を通じて国民の皆様に理解していただける、いや、是非とも御理解いただき、国民全体の共通認識に高められるように引き続きしっかりと中身の濃い審議を行っていくことが極めて重要であると認識している次第であります。
このような観点から、我が国にとって自由貿易の推進は極めて重要でありますけれども、TPPを始めとする自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興は相反する、いわゆるトレードオフの関係にあるとの見方もあるわけであります。この点につきまして、参考人の方々からそれぞれ御意見を伺いたいと思います。
荒幡先生、作山先生、磯田先生の順にお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
この発言だけを見る →本日は、三人の参考人の方々から貴重なお話をいただきました。感謝を申し上げたいと思います。ありがとうございます。
まずは、TPPに関連する一連の報道、あるいは、全国各地を私自身回って、いろいろな方々の御意見などを通じまして、私なりの感想を申し述べさせていただき、その上で参考人の方々に質問をさせていただきたいと思います。
私は、今回のTPPの議論を通じまして、自由貿易を進めるに当たって、やはり農林水産分野への影響が大きくて、かつその影響が全国一律ではなく、地域ごとに異なり、それが各地域の生活に直結するものであることがより一層浮き彫りになった気がしております。そして、独立国家として食料の安全保障をしっかりと確保する必要があること、我が国の国土や環境を守っていく上で、多面的機能の発揮等を通じて農林水産業が果たす役割が極めて大きく、産業としてのみならず、地域を支え、国土を維持していく観点から、農林水産業を健全に発展できる条件を国が責任を持って整えていくことが不可欠であるということが明確になったものと受け止めております。
こうしたことは、国会審議、特にこの参議院におけます真摯な審議を通じて国民の皆様に理解していただける、いや、是非とも御理解いただき、国民全体の共通認識に高められるように引き続きしっかりと中身の濃い審議を行っていくことが極めて重要であると認識している次第であります。
このような観点から、我が国にとって自由貿易の推進は極めて重要でありますけれども、TPPを始めとする自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興は相反する、いわゆるトレードオフの関係にあるとの見方もあるわけであります。この点につきまして、参考人の方々からそれぞれ御意見を伺いたいと思います。
荒幡先生、作山先生、磯田先生の順にお伺いできればと思います。よろしくお願いいたします。
荒
荒幡克己#13
○参考人(荒幡克己君) 自由貿易と農林水産業の関係でございますが、歴史的には、やはり自由貿易が進む、農林水産業が打撃を受けるということは、例えばイギリスの穀物条例の例に見るように、ずっと続いてきたということは事実でございます。特に、気候条件その他自然条件によって、やはり不利な国、有利な国がございますので、どうしてもそういうことは起こるわけでございます。
ただ、先ほど私が冒頭意見陳述で申しましたように、世界の農産物貿易、随分変わってきております。ここを踏まえて、競争力を強化しつつ、輸入にも対抗できる、その一方で輸出もしていくという方向は、これはやはり今後、もう経済全体、農林水産業以外を含めて経済全体で自由貿易によって我が国経済が発展していくということは、これはもうその方向しかあり得ないと思いますので、それを前提とすれば、今回政府が目指しておりますような競争力を強化、これを通じて輸入に対する対抗力と輸出の力両方を高めていく、この方向にやはり向かうべきかなというのが私の非常に長期の、穀物条例以来ということで大分歴史の長い話を申しましたが、現時点での世界貿易と農業観でございます。
以上でございます。
この発言だけを見る →ただ、先ほど私が冒頭意見陳述で申しましたように、世界の農産物貿易、随分変わってきております。ここを踏まえて、競争力を強化しつつ、輸入にも対抗できる、その一方で輸出もしていくという方向は、これはやはり今後、もう経済全体、農林水産業以外を含めて経済全体で自由貿易によって我が国経済が発展していくということは、これはもうその方向しかあり得ないと思いますので、それを前提とすれば、今回政府が目指しておりますような競争力を強化、これを通じて輸入に対する対抗力と輸出の力両方を高めていく、この方向にやはり向かうべきかなというのが私の非常に長期の、穀物条例以来ということで大分歴史の長い話を申しましたが、現時点での世界貿易と農業観でございます。
以上でございます。
作
作山巧#14
○参考人(作山巧君) 進藤先生のお尋ねですけれども、端的に申し上げますと、私も十分可能だというふうに思っております。
その方法もございまして、私も貿易交渉も長くやっておりましたけれども、大きな流れとしては、関税には余り頼らずに農家に対する直接補助金で保護をしていくというのが大きな流れですね。アメリカもそうなっていますし、EUもそうなっています。なので、ある意味、私は、今回のTPP合意というのは関税をかなり削減したわけですから、そういう政策に切り替えていく本来はチャンスにすべきだったというふうに考えているわけですね。
ところが、実際の政策は、輸入した分だけお米を買い上げるとか、これはTPPとは関係ありませんけれども、飼料米で価格を維持するというような、どっちかというと価格維持を強めるような形になっているので、ちょっと方向性としては違うのではないかなというふうに思います。
むしろ、関税を下げていって、所得は直接補助金でちゃんと確保されますよというメッセージを生産者の方に出すことによって、そういう機会にすることによってTPPへの理解も深まったのではないかというふうに考えています。
この発言だけを見る →その方法もございまして、私も貿易交渉も長くやっておりましたけれども、大きな流れとしては、関税には余り頼らずに農家に対する直接補助金で保護をしていくというのが大きな流れですね。アメリカもそうなっていますし、EUもそうなっています。なので、ある意味、私は、今回のTPP合意というのは関税をかなり削減したわけですから、そういう政策に切り替えていく本来はチャンスにすべきだったというふうに考えているわけですね。
ところが、実際の政策は、輸入した分だけお米を買い上げるとか、これはTPPとは関係ありませんけれども、飼料米で価格を維持するというような、どっちかというと価格維持を強めるような形になっているので、ちょっと方向性としては違うのではないかなというふうに思います。
むしろ、関税を下げていって、所得は直接補助金でちゃんと確保されますよというメッセージを生産者の方に出すことによって、そういう機会にすることによってTPPへの理解も深まったのではないかというふうに考えています。
磯
磯田宏#15
○参考人(磯田宏君) 御質問ありがとうございます。
端的に申し上げますと、これは、経済学の手法を、どのような手法を用いるか、あるいは理論に依拠するかにかかわらず、ほとんどの経済学者、農業経済学者が認める貿易に関する原理として比較生産費説というものがございます。
これは、非常に短く申し上げますと、複数の国々で、非常に単純化するために農業と工業というふうに二つに分類しますけれども、相対的に見て生産性が高い分野が国際競争力、貿易では優位に立つと。そうすると、それぞれの国が農業と工業があって、両方の産業が同時に優位に立つことはできないということを、先ほど荒幡参考人がおっしゃられた穀物法論争の一端を成したデービッド・リカードが明らかにして、それはその後もいろんな形でソフィスティケートされているわけでございますけれども。
そういう観点で行きますと、完全に自由貿易をするということと、それから、それぞれの国々にある農業や工業、あるいは広範な産業が同時に繁栄するということは原理的に言って両立不可能であるというふうに考えておりまして、その例は、日本の過去の歴史、戦後の高度成長期以来今日までの歴史を見ても検証できますし、あるいはアメリカ合衆国、あるいは韓国、あるいは中国、アメリカの場合は農業が比較優位にありますが、製造業は比較劣位にありますから、製造業はどんどん全体としては衰退していると。韓国、中国、日本はその逆であるという現象が起きているということからも見て取れるというふうに思っております。
この発言だけを見る →端的に申し上げますと、これは、経済学の手法を、どのような手法を用いるか、あるいは理論に依拠するかにかかわらず、ほとんどの経済学者、農業経済学者が認める貿易に関する原理として比較生産費説というものがございます。
これは、非常に短く申し上げますと、複数の国々で、非常に単純化するために農業と工業というふうに二つに分類しますけれども、相対的に見て生産性が高い分野が国際競争力、貿易では優位に立つと。そうすると、それぞれの国が農業と工業があって、両方の産業が同時に優位に立つことはできないということを、先ほど荒幡参考人がおっしゃられた穀物法論争の一端を成したデービッド・リカードが明らかにして、それはその後もいろんな形でソフィスティケートされているわけでございますけれども。
そういう観点で行きますと、完全に自由貿易をするということと、それから、それぞれの国々にある農業や工業、あるいは広範な産業が同時に繁栄するということは原理的に言って両立不可能であるというふうに考えておりまして、その例は、日本の過去の歴史、戦後の高度成長期以来今日までの歴史を見ても検証できますし、あるいはアメリカ合衆国、あるいは韓国、あるいは中国、アメリカの場合は農業が比較優位にありますが、製造業は比較劣位にありますから、製造業はどんどん全体としては衰退していると。韓国、中国、日本はその逆であるという現象が起きているということからも見て取れるというふうに思っております。
進
進藤金日子#16
○進藤金日子君 どうもありがとうございました。
私は、いろいろな議論がある中で、自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興がトレードオフの関係ではなくて、やっぱりいろいろな努力をしながら双方とも両立するようにしないと我が国の将来はないんじゃないかというような強い覚悟で実効性のある政策を実施しなければならないと考えております。
特に、農業に絞った場合におきまして、自由貿易の推進を見据えた農業政策の在り方、これ、作山先生からも少し触れられましたけれども、これにつきまして改めてまた参考人の方々からそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
この発言だけを見る →私は、いろいろな議論がある中で、自由貿易の推進と国内の農林水産業の振興がトレードオフの関係ではなくて、やっぱりいろいろな努力をしながら双方とも両立するようにしないと我が国の将来はないんじゃないかというような強い覚悟で実効性のある政策を実施しなければならないと考えております。
特に、農業に絞った場合におきまして、自由貿易の推進を見据えた農業政策の在り方、これ、作山先生からも少し触れられましたけれども、これにつきまして改めてまた参考人の方々からそれぞれ御意見をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
荒
荒幡克己#17
○参考人(荒幡克己君) 今お話ありました自由貿易を見据えたということで、先ほど作山さんからもお話ございましたが、世界の農業政策の流れとして、消費者負担型から財政負担型へ、これは大きな流れで、もう二十年以上前からその方向にシフトしております。
つまり、関税によって障壁を巡らせた上で国内でも高価格を維持していくという手法をやりますと、これは、高価格ですから、食品が高価格ということで、消費者がその負担をするわけでございます。これに対して、関税を引き下げて、その分財政負担をしていく、直接支払とか幾つかの類型がございますが、こうすることによって、同じような保護でありながら、消費者負担から財政負担に移していく。
その方が、これ経済学的なテキストの問題になるんですけれども、価格を高くすると、消費者の行動もちょっと変な方向に歪曲されてロスが生じる、生産者も本来の姿から少し歪曲されるということなんですが、財政負担であれば、生産者は確かに保護されたところを作るようにしますから、少しその部分は同じなんですけれども、消費者については全く経済的なロスが生じないということが理論的に明らかでありまして、その方向に今動いておりますので、今回、TPPということで関税その他の国境措置が、当面はかなり防げると思うんですけれども、長い目で見れば少し低めの国境措置になっていくわけですが、それに対して財政負担をする、こういった方向がやはり日本も妥当な方向だと思っております。
以上でございます。
この発言だけを見る →つまり、関税によって障壁を巡らせた上で国内でも高価格を維持していくという手法をやりますと、これは、高価格ですから、食品が高価格ということで、消費者がその負担をするわけでございます。これに対して、関税を引き下げて、その分財政負担をしていく、直接支払とか幾つかの類型がございますが、こうすることによって、同じような保護でありながら、消費者負担から財政負担に移していく。
その方が、これ経済学的なテキストの問題になるんですけれども、価格を高くすると、消費者の行動もちょっと変な方向に歪曲されてロスが生じる、生産者も本来の姿から少し歪曲されるということなんですが、財政負担であれば、生産者は確かに保護されたところを作るようにしますから、少しその部分は同じなんですけれども、消費者については全く経済的なロスが生じないということが理論的に明らかでありまして、その方向に今動いておりますので、今回、TPPということで関税その他の国境措置が、当面はかなり防げると思うんですけれども、長い目で見れば少し低めの国境措置になっていくわけですが、それに対して財政負担をする、こういった方向がやはり日本も妥当な方向だと思っております。
以上でございます。
作
作山巧#18
○参考人(作山巧君) 進藤先生の御質問、私なりに、貿易自由化の流れの中で農業政策どうあるべきかという御質問だというふうに認識しましたけれども。
対応方法としては二つありまして、一つは政府が守るというやり方ですね。それは、今話が出ていますように、直接補助金、関税から直接補助金というシフトが進んでいるという話も先ほど申し上げました。
ただ、もう一つは、何が何でも政府ということではなくて、消費者の理解を得るということもあると思っていまして、そういう意味では、私、何でもTPP反対、何でも賛成という立場ではありませんので、TPP対策で非常に評価をしておりますのは、原料原産地表示を拡大するということが決まりましたですね、原則として全加工食品に適用すると。あれは非常にいいことだというふうに思っております。
私は貿易が専門なんですけれども、日本では、消費者の方は生鮮食品は非常に国産選好が強くて、例えばリンゴですね、生鮮リンゴはほとんど国産です。ただ、リンゴジュース、原料はほとんど中国産です。これ野菜でも同じようなことが起きていますね。
ということですので、加工食品にも消費者の選択権を与える、消費者に情報を与えるということをすれば非常に強力な国産品を選んでいただけるというツールになると思いますので、そういう環境整備というのもあり得ますので、何でも政府がということではなくて、そういう仕組みもうまくつくっていく、使っていくということも重要かと思っております。
この発言だけを見る →対応方法としては二つありまして、一つは政府が守るというやり方ですね。それは、今話が出ていますように、直接補助金、関税から直接補助金というシフトが進んでいるという話も先ほど申し上げました。
ただ、もう一つは、何が何でも政府ということではなくて、消費者の理解を得るということもあると思っていまして、そういう意味では、私、何でもTPP反対、何でも賛成という立場ではありませんので、TPP対策で非常に評価をしておりますのは、原料原産地表示を拡大するということが決まりましたですね、原則として全加工食品に適用すると。あれは非常にいいことだというふうに思っております。
私は貿易が専門なんですけれども、日本では、消費者の方は生鮮食品は非常に国産選好が強くて、例えばリンゴですね、生鮮リンゴはほとんど国産です。ただ、リンゴジュース、原料はほとんど中国産です。これ野菜でも同じようなことが起きていますね。
ということですので、加工食品にも消費者の選択権を与える、消費者に情報を与えるということをすれば非常に強力な国産品を選んでいただけるというツールになると思いますので、そういう環境整備というのもあり得ますので、何でも政府がということではなくて、そういう仕組みもうまくつくっていく、使っていくということも重要かと思っております。
磯
磯田宏#19
○参考人(磯田宏君) 私も、仮に関税という形での国境措置が長期的にであれ、あるいは、私が申し上げたような危惧が当たって、もっと前倒しにどんどん撤廃されていくということになるようなことになったとすれば、その下で、じゃ、国内農業をどうするかということを考える場合には、既に御指摘ありましたように、直接支払型の、特に、単なる直接支払でなくて不足払い的な要素、すなわち一定のコストなりというものを基準にして、先ほど荒幡参考人も言っておられたような、担い手の経営体がきちっと経営が存立できるような一定の基準というものに対して不足部分を補填していくようなそういうタイプの直接支払、アメリカの二〇一四年農業法も実はそういう内容になっているわけですけれども、そういうものが必要であるというふうに考えます。
それからもう一点、国内の消費者を味方に付けるためのいろいろな施策あるいは輸出を進める施策、これも私は重要性を否定するものでは全くありません。ただ、その場合に、一つは先ほど申し上げた国際貿易上の原理から、もう一つは消費者の側の二極分化ということが国内でも国際的にも起きております。
端的に言うと、格差社会化の進行に歯止めが止まらずに、比較的高い、安全、安心、そして栄養価も高い、出どころもはっきりしている、こういうものを消費できる購買力を持った消費者とそうでない消費者に残念ながら二極化していく流れに歯止めが掛かっていないと。
そういう国内外の消費市場の状況を見ますと、国内農業で伸ばしていけるものは、やはりどうしてもそういうプレミアム的な部分に限定されてくるのではないかと。その部分については当然後押しをするということはやっていくべきだと思うんですが、そうならない部分については、冒頭に申し上げたように、しっかり、仮に国境措置ができなくなるんだとすれば、不足払い的な要素を込めた直接支払ということをかなり強力にやっていく必要があるというふうに考えております。
この発言だけを見る →それからもう一点、国内の消費者を味方に付けるためのいろいろな施策あるいは輸出を進める施策、これも私は重要性を否定するものでは全くありません。ただ、その場合に、一つは先ほど申し上げた国際貿易上の原理から、もう一つは消費者の側の二極分化ということが国内でも国際的にも起きております。
端的に言うと、格差社会化の進行に歯止めが止まらずに、比較的高い、安全、安心、そして栄養価も高い、出どころもはっきりしている、こういうものを消費できる購買力を持った消費者とそうでない消費者に残念ながら二極化していく流れに歯止めが掛かっていないと。
そういう国内外の消費市場の状況を見ますと、国内農業で伸ばしていけるものは、やはりどうしてもそういうプレミアム的な部分に限定されてくるのではないかと。その部分については当然後押しをするということはやっていくべきだと思うんですが、そうならない部分については、冒頭に申し上げたように、しっかり、仮に国境措置ができなくなるんだとすれば、不足払い的な要素を込めた直接支払ということをかなり強力にやっていく必要があるというふうに考えております。
進
進藤金日子#20
○進藤金日子君 先ほど作山先生からTPPに関する政府の説明が不十分だという御指摘もいただいたわけでありますが、私自身全国を回って感じることは、やはり農家の皆様方の理解が進んでいないんじゃないか、あるいは農家の不安が払拭されていないということが感じられるわけであります。
私は、TPPがあってもなくても農業、農村をめぐる状況は厳しいものでありまして、むしろTPPを契機として農業、農村の厳しさを国民の皆様に御理解いただき、国全体で農業、農村を支援できる体制を築いていく、こういったことが大切ではなかろうかなと思っているわけであります。このためには、まずは、私は、政府が定めた、先ほど作山先生からも原料原産地の話でありましたけれども、総合的なTPP関連政策大綱に基づく各種政策をしっかりと実行に移して、その上でフォローアップしていくことが必要なんじゃないかと。
そのためのモニタリングシステムを整備して、責任を持って継続的にTPPの影響を排除していく、あるいはTPPの枠組みを積極的に活用して前に出ていくといったことをやっていくのも一つの考え方ではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、この点について、荒幡先生の御意見、いかがでしょうか。
この発言だけを見る →私は、TPPがあってもなくても農業、農村をめぐる状況は厳しいものでありまして、むしろTPPを契機として農業、農村の厳しさを国民の皆様に御理解いただき、国全体で農業、農村を支援できる体制を築いていく、こういったことが大切ではなかろうかなと思っているわけであります。このためには、まずは、私は、政府が定めた、先ほど作山先生からも原料原産地の話でありましたけれども、総合的なTPP関連政策大綱に基づく各種政策をしっかりと実行に移して、その上でフォローアップしていくことが必要なんじゃないかと。
そのためのモニタリングシステムを整備して、責任を持って継続的にTPPの影響を排除していく、あるいはTPPの枠組みを積極的に活用して前に出ていくといったことをやっていくのも一つの考え方ではないかなというふうに考えるわけでありますけれども、この点について、荒幡先生の御意見、いかがでしょうか。
荒
荒幡克己#21
○参考人(荒幡克己君) モニタリング、おっしゃるとおり大変大事かと思います。
この点に関しても、先ほどもちょっと話しましたが、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときは、やはりそういう観点から見ると、いつの間にか何か忘れてしまったといいますか、危機感が薄れてしまった。これは、政府がどうこうというよりも、現場も含めて日本全体であったような気がしております。
ですから、私、息の長い対策をということを先ほど申し上げましたが、それは、政府、それからあと生産現場の生産者の方々、またそれを指導する方、あるいはメディア等も含めて、是非長く危機感を持って、ずっとモニタリングと相まって対策を続けていくべきだなと考えております。
この発言だけを見る →この点に関しても、先ほどもちょっと話しましたが、ガット・ウルグアイ・ラウンドのときは、やはりそういう観点から見ると、いつの間にか何か忘れてしまったといいますか、危機感が薄れてしまった。これは、政府がどうこうというよりも、現場も含めて日本全体であったような気がしております。
ですから、私、息の長い対策をということを先ほど申し上げましたが、それは、政府、それからあと生産現場の生産者の方々、またそれを指導する方、あるいはメディア等も含めて、是非長く危機感を持って、ずっとモニタリングと相まって対策を続けていくべきだなと考えております。
進
進藤金日子#22
○進藤金日子君 どうもありがとうございます。
先ほど来、所得補償政策の話が出ております。消費者負担から財政負担ということでございますが、私は、この所得補償政策については、政策論としては一つの有効な手法ではないかというふうに考えているわけであります。
しかしながら、その適用に当たりましては、いつのタイミングでやるのか、あるいは財政規模も含めてその財源どうしていくのか、これ、十分かつ慎重な検討が不可欠であるというふうに考えております。我が国のように農業経営の形態が多様であって、かつ専業、兼業が入り組んでおり、特に水田ではいまだに小規模な経営が多数存在する中におきまして一律的な所得補償を行うと、改善途上の農業構造の固定化につながる懸念もあるというふうに思うわけであります。
私は、小規模兼業農家の方が財務体質が強いといった荒幡先生の御指摘もあったわけでございますけれども、土地利用型農業においては、農業構造の安定化、つまり農地の集積が相当程度進展した段階で、大規模農家には産業政策としての所得補償、あるいは小規模農家には地域政策とか環境政策としての所得補償というケース、これも考えられると思うんですが、これ、作山先生の御意見はいかがでしょうか。
この発言だけを見る →先ほど来、所得補償政策の話が出ております。消費者負担から財政負担ということでございますが、私は、この所得補償政策については、政策論としては一つの有効な手法ではないかというふうに考えているわけであります。
しかしながら、その適用に当たりましては、いつのタイミングでやるのか、あるいは財政規模も含めてその財源どうしていくのか、これ、十分かつ慎重な検討が不可欠であるというふうに考えております。我が国のように農業経営の形態が多様であって、かつ専業、兼業が入り組んでおり、特に水田ではいまだに小規模な経営が多数存在する中におきまして一律的な所得補償を行うと、改善途上の農業構造の固定化につながる懸念もあるというふうに思うわけであります。
私は、小規模兼業農家の方が財務体質が強いといった荒幡先生の御指摘もあったわけでございますけれども、土地利用型農業においては、農業構造の安定化、つまり農地の集積が相当程度進展した段階で、大規模農家には産業政策としての所得補償、あるいは小規模農家には地域政策とか環境政策としての所得補償というケース、これも考えられると思うんですが、これ、作山先生の御意見はいかがでしょうか。
作
作山巧#23
○参考人(作山巧君) 今の御質問の件ですけれども、進藤先生の今のお話を伺っていると、まず、農家の規模拡大が進むのを待つというような印象を受けましたけれども、そういう指摘は随分何十年も前から言われていると思うんですよね。
実際なかなかそれが、私の思っていますのは、なかなかそれが進まない中でもう担い手がどんどんいなくなってしまっているというのが現状だと思いますので、ある意味、TPPが契機になると私は思っていますけれども、こういう大きな政策変更を契機にある程度規模の大きい方に絞って本格的な直接支払を導入する、思い切って導入するというのがまず重要だというふうに思っています。
小規模でそれの対象にならないよという方は集落営農をやっていただくとか生産組織をつくっていただくとか、いろいろな形ですくい上げる方法はあると思いますので、ヨーロッパと同じような水準まで規模が拡大されていないからまだですというのは、どちらかというと、私も役人生活長いんですけれども、財政当局がよく使うせりふでありまして、必ずしも日本農業の実態には合っていないんじゃないかなというふうに考えております。
この発言だけを見る →実際なかなかそれが、私の思っていますのは、なかなかそれが進まない中でもう担い手がどんどんいなくなってしまっているというのが現状だと思いますので、ある意味、TPPが契機になると私は思っていますけれども、こういう大きな政策変更を契機にある程度規模の大きい方に絞って本格的な直接支払を導入する、思い切って導入するというのがまず重要だというふうに思っています。
小規模でそれの対象にならないよという方は集落営農をやっていただくとか生産組織をつくっていただくとか、いろいろな形ですくい上げる方法はあると思いますので、ヨーロッパと同じような水準まで規模が拡大されていないからまだですというのは、どちらかというと、私も役人生活長いんですけれども、財政当局がよく使うせりふでありまして、必ずしも日本農業の実態には合っていないんじゃないかなというふうに考えております。
進
進藤金日子#24
○進藤金日子君 どうもありがとうございました。
荒幡先生の著作も随分見させていただいたんですが、食料の安全保障上、我が国の農地を農地としてこれしっかりと維持していくことが極めて重要だというふうに私も思っております。
我が国の農地の機能を最大限に発揮して、先ほども御指摘ありましたけれども、生産技術を更に高めていく、環境を整えていくことは、国産農産物の消費拡大による食料自給率の向上はもちろんですけれども、これに加えて、やっぱり海外の市場を視野に入れて積極展開していくということもこれ重要なんだろうと思います。
これはもう先生も先ほど来お話ありますけれども、この点について改めて荒幡先生の御意見、お伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →荒幡先生の著作も随分見させていただいたんですが、食料の安全保障上、我が国の農地を農地としてこれしっかりと維持していくことが極めて重要だというふうに私も思っております。
我が国の農地の機能を最大限に発揮して、先ほども御指摘ありましたけれども、生産技術を更に高めていく、環境を整えていくことは、国産農産物の消費拡大による食料自給率の向上はもちろんですけれども、これに加えて、やっぱり海外の市場を視野に入れて積極展開していくということもこれ重要なんだろうと思います。
これはもう先生も先ほど来お話ありますけれども、この点について改めて荒幡先生の御意見、お伺いしたいと思います。
荒
荒幡克己#25
○参考人(荒幡克己君) 海外への市場展開、これをまさに今政府がその方向で進んでいるというふうに私認識しておりますが、大いにやっていただきたい。
先ほど申し上げましたが、量的に余り大きなものを直ちに期待するのはちょっと禁物じゃないかとは思っているんですが、少しずつ少量であっても、やはり現地を回ってみますと、非常に輸出するということだけで元気が出ると申しますか、ちょっといい例えかどうか分かりませんが、スポーツなんかでも、海外遠征に行ったりしてくるとすごくそのスポーツ団体が活力が出てくるとかいうようなことがございますね。これと同じような雰囲気が出てきているやに感じておりますので、是非この方向でと思っております。
この発言だけを見る →先ほど申し上げましたが、量的に余り大きなものを直ちに期待するのはちょっと禁物じゃないかとは思っているんですが、少しずつ少量であっても、やはり現地を回ってみますと、非常に輸出するということだけで元気が出ると申しますか、ちょっといい例えかどうか分かりませんが、スポーツなんかでも、海外遠征に行ったりしてくるとすごくそのスポーツ団体が活力が出てくるとかいうようなことがございますね。これと同じような雰囲気が出てきているやに感じておりますので、是非この方向でと思っております。
進
野
野田国義#27
○野田国義君 どうも、こんにちは。民進党の野田国義でございます。
今日は本当に、三人の先生方、お忙しい中に参考人として御出席をいただきまして、私からも心から感謝の意を表したいと思います。ありがとうございます。
もう皆さんも御承知のとおり、今日、朝の七時から、トランプ・タワーでトランプ次期大統領と安倍総理との会談があったということでございます。トランプさんは、グローバリゼーションあるいは新自由主義を否定し、大統領に当選をしたと。ですから、公約からすれば、当然これは保護主義に行くだろうということが予想されるわけでありますけれども、どういう会談の内容になったか非常に興味深いところでありますけれども、帰ってみえて、総理にいろいろなことをお聞きもしたいと、そういうことを思いながら質問をさせていただきたいと思います。
このTPP、私もいろいろな思い出がありまして、我々が与党のときなど、反対と言えば、離党してそういう話はしてくれと、そんな話、随分と自民党の議員さんからされたことを今でも根深く思っているところでございますけれども、しかし現実として、批准ということを目標に今、現政権がやられているということであります。私、基本的には、日本の農業をどうしていくかということ、このことが非常にまたこのTPPを機に問われているのではないかなと思っているところでございまして。
私、地元、JA八女というところがあるんですけれども、振り返ってみますと、ブドウとかお茶とか梨とかイチゴ、イグサ、大豆、花卉ですか、全部天皇杯もらっているんですよ。そういうことで、非常に農業が模範的に展開をしておった。基幹産業は農業だと自慢して市長時代言わせていただいておりましたけれども、しかし反面、非常にこの農業という経営が厳しくなっているのも事実であろうと思っております。
ですから、付加価値農業とかあるいは高収益型の農業、ここに果敢に挑戦しているところはある程度のところが保たれている。しかしながら、片方では、土地利用型の農業をせざるを得ないというか、そういうところもたくさんあるわけでありますので、ここをどうこれから強い農業にしていくかということが日本の農業の課題かなと思っているところでございます。
そこで、私、幾つか福岡県内の施設も視察をさせていただいておったわけでありますが、地震、津波でやられました宮城県の山元町ですか、あそこ、イチゴが盛んに今復活をしているところでありますけれども、やっぱりああいった挑戦、リーダー、組合長が率先してやられたという話でございましたけれども、そういう農業を取り組んでいけば本当に農業というのは未来があるんだなということもある面思っているところであります。
そこで、地方創生にも欠かせないわけでありますけれども、荒幡先生の方に、今発言の中に自民党の対策をパッケージとして捉えれば賛成であるという話があったわけでありますけれども、私は、ガット・ウルグアイ・ラウンド、先ほどから話出ておりましたが、あれも経験いたしまして、六兆百億ですか、結局ばらまきに終わっちゃったということでありますが、ここに対策、補正予算あるいは来年度予算も対策が講じられると思うんですけれども、この対策について荒幡先生はどのように評価をされているのか、お聞きしたいと思っております。
この発言だけを見る →今日は本当に、三人の先生方、お忙しい中に参考人として御出席をいただきまして、私からも心から感謝の意を表したいと思います。ありがとうございます。
もう皆さんも御承知のとおり、今日、朝の七時から、トランプ・タワーでトランプ次期大統領と安倍総理との会談があったということでございます。トランプさんは、グローバリゼーションあるいは新自由主義を否定し、大統領に当選をしたと。ですから、公約からすれば、当然これは保護主義に行くだろうということが予想されるわけでありますけれども、どういう会談の内容になったか非常に興味深いところでありますけれども、帰ってみえて、総理にいろいろなことをお聞きもしたいと、そういうことを思いながら質問をさせていただきたいと思います。
このTPP、私もいろいろな思い出がありまして、我々が与党のときなど、反対と言えば、離党してそういう話はしてくれと、そんな話、随分と自民党の議員さんからされたことを今でも根深く思っているところでございますけれども、しかし現実として、批准ということを目標に今、現政権がやられているということであります。私、基本的には、日本の農業をどうしていくかということ、このことが非常にまたこのTPPを機に問われているのではないかなと思っているところでございまして。
私、地元、JA八女というところがあるんですけれども、振り返ってみますと、ブドウとかお茶とか梨とかイチゴ、イグサ、大豆、花卉ですか、全部天皇杯もらっているんですよ。そういうことで、非常に農業が模範的に展開をしておった。基幹産業は農業だと自慢して市長時代言わせていただいておりましたけれども、しかし反面、非常にこの農業という経営が厳しくなっているのも事実であろうと思っております。
ですから、付加価値農業とかあるいは高収益型の農業、ここに果敢に挑戦しているところはある程度のところが保たれている。しかしながら、片方では、土地利用型の農業をせざるを得ないというか、そういうところもたくさんあるわけでありますので、ここをどうこれから強い農業にしていくかということが日本の農業の課題かなと思っているところでございます。
そこで、私、幾つか福岡県内の施設も視察をさせていただいておったわけでありますが、地震、津波でやられました宮城県の山元町ですか、あそこ、イチゴが盛んに今復活をしているところでありますけれども、やっぱりああいった挑戦、リーダー、組合長が率先してやられたという話でございましたけれども、そういう農業を取り組んでいけば本当に農業というのは未来があるんだなということもある面思っているところであります。
そこで、地方創生にも欠かせないわけでありますけれども、荒幡先生の方に、今発言の中に自民党の対策をパッケージとして捉えれば賛成であるという話があったわけでありますけれども、私は、ガット・ウルグアイ・ラウンド、先ほどから話出ておりましたが、あれも経験いたしまして、六兆百億ですか、結局ばらまきに終わっちゃったということでありますが、ここに対策、補正予算あるいは来年度予算も対策が講じられると思うんですけれども、この対策について荒幡先生はどのように評価をされているのか、お聞きしたいと思っております。
荒
荒幡克己#28
○参考人(荒幡克己君) 六兆のときは、異常にこう、何といいますか、金額で目立ったといいますか、ということでございますが、それと比較しまして、今回は比較的地道にいいところを補強しつつ進めているなという印象は持っております。
細かいところはまだ詳細に精査したわけではございませんが、一つ言えますのは、私、攻めの農業という言葉でちょっと誤解しておりまして、あれは本当に攻めるので輸出の方だけかと思っておりましたら、そうではなくて、競争力を強化して、入ってくるものに対する抵抗力といいますか、対抗力といいますか、を増すのも含むということでございますので、そういう観点ならば悪くはないなと思っております。
余り攻め攻めと言うのは、先ほど私が説明の中でも申しましたけれども、世界の農産物貿易の潮流として、双方向、つまり食料輸入大国の日本が輸出もするということは何らおかしくない、ごく自然なことなわけでありますので、私は最初、攻めの農業と聞いたとき、何かちょっと力み過ぎではないかというぐらいに思ったわけなんですが、輸出もいいと。しかも、今回、その攻めという言葉の中に、入ってくるものに対する対抗する力を付けるということも入っているというふうにお聞きしましたので、それは結構なことじゃないかというふうに評価しております。
以上でございます。
この発言だけを見る →細かいところはまだ詳細に精査したわけではございませんが、一つ言えますのは、私、攻めの農業という言葉でちょっと誤解しておりまして、あれは本当に攻めるので輸出の方だけかと思っておりましたら、そうではなくて、競争力を強化して、入ってくるものに対する抵抗力といいますか、対抗力といいますか、を増すのも含むということでございますので、そういう観点ならば悪くはないなと思っております。
余り攻め攻めと言うのは、先ほど私が説明の中でも申しましたけれども、世界の農産物貿易の潮流として、双方向、つまり食料輸入大国の日本が輸出もするということは何らおかしくない、ごく自然なことなわけでありますので、私は最初、攻めの農業と聞いたとき、何かちょっと力み過ぎではないかというぐらいに思ったわけなんですが、輸出もいいと。しかも、今回、その攻めという言葉の中に、入ってくるものに対する対抗する力を付けるということも入っているというふうにお聞きしましたので、それは結構なことじゃないかというふうに評価しております。
以上でございます。
野
野田国義#29
○野田国義君 ちょっとまだよく分かりませんでしたけれども。
今、輸出ということを触れられましたけれども、輸出を増やすだけで本当に日本の農業が強くなっていくのかなと。一兆円を目指してということで政府も頑張っておられるようでありますけれども、それはほんの一部なんですよね、ある意味では。ですから、このところは先生どう思われますかね、なかなかそれだけで、じゃ日本の農業が強くなるかというと。
この発言だけを見る →今、輸出ということを触れられましたけれども、輸出を増やすだけで本当に日本の農業が強くなっていくのかなと。一兆円を目指してということで政府も頑張っておられるようでありますけれども、それはほんの一部なんですよね、ある意味では。ですから、このところは先生どう思われますかね、なかなかそれだけで、じゃ日本の農業が強くなるかというと。