憲法審査会

2023-05-31 参議院 全106発言

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会議録情報#0
令和五年五月三十一日(水曜日)
   午後一時三分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月十七日
    辞任         補欠選任
     星  北斗君     松川 るい君
 五月十八日
    辞任         補欠選任
     井上 哲士君     仁比 聡平君
 五月三十日
    辞任         補欠選任
     進藤金日子君     生稲 晃子君
     松川 るい君     赤松  健君
     山本 香苗君     宮崎  勝君
     仁比 聡平君     吉良よし子君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    会 長         中曽根弘文君
    幹 事
                浅尾慶一郎君
                片山さつき君
                堀井  巌君
                牧野たかお君
                山本 順三君
                熊谷 裕人君
                杉尾 秀哉君
                西田 実仁君
                音喜多 駿君
                大塚 耕平君
                山添  拓君
    委 員
                青山 繁晴君
                赤池 誠章君
                赤松  健君
                生稲 晃子君
                臼井 正一君
                衛藤 晟一君
                加藤 明良君
                小林 一大君
                古庄 玄知君
                佐藤 正久君
                中西 祐介君
                松下 新平君
                松山 政司君
                丸川 珠代君
                山田  宏君
                山谷えり子君
                石川 大我君
                打越さく良君
                小西 洋之君
                古賀 千景君
                辻元 清美君
                福島みずほ君
               佐々木さやか君
                宮崎  勝君
                矢倉 克夫君
                安江 伸夫君
                浅田  均君
                東   徹君
                猪瀬 直樹君
                礒崎 哲史君
                舟山 康江君
                吉良よし子君
                山本 太郎君
   事務局側
       憲法審査会事務
       局長      加賀谷ちひろ君
   参考人
       防衛大学校教授  松浦 一夫君
       早稲田大学大学
       院法務研究科教
       授        長谷部恭男君
       京都大学法学系
       (大学院法学研
       究科)教授    土井 真一君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基
 本法制に関する調査
 (憲法に対する考え方について(参議院の緊急
 集会について))
    ─────────────
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中曽根弘文#1
○会長(中曽根弘文君) ただいまから憲法審査会を開会いたします。
 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査のため、憲法に対する考え方についてのうち、参議院の緊急集会について、本日の審査会に防衛大学校教授松浦一夫君、早稲田大学大学院法務研究科教授長谷部恭男君及び京都大学法学系(大学院法学研究科)教授土井真一君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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中曽根弘文#2
○会長(中曽根弘文君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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中曽根弘文#3
○会長(中曽根弘文君) 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制に関する調査を議題といたします。
 本日は、憲法に対する考え方についてのうち、参議院の緊急集会について参考人の皆様から御意見を伺います。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本審査会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の調査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 議事の進め方でございますが、松浦参考人、長谷部参考人、土井参考人の順にお一人十五分程度で順次御意見をお述べいただいた後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 全体の所要は二時間を目途といたします。
 なお、御発言は、質疑、答弁とも着席のままで結構でございます。
 それでは、まず松浦参考人にお願いいたします。松浦参考人。
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松浦一夫#4
○参考人(松浦一夫君) 本日は、意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 防衛大学校の松浦と申します。
 参議院緊急集会制度と国家緊急事態の関係につきまして話を進めるに当たり、まず確認すべきことがあります。それは、この制度が、戦後占領期にGHQ総司令部の提示した案に基づく日本国憲法起草時において、ドイツ法をモデルとする緊急命令制度の導入を企図する日本側と、英米法的国家緊急権議会に基づくGHQ民政局次長チャールズ・ケーディスの間の激しい論争の結果生まれた妥協の産物であるということであります。
 総司令部案が日本側に提示される以前、日本側で新憲法案を検討していた松本委員会に出席した委員の多くは、いわゆる常置委員会の制度の導入を支持していました。
 常置委員会とは、ドイツ・ワイマール共和国憲法と共和国を構成する国の憲法、例えば一九二〇年のプロイセン憲法などが議会閉会中及び任期満了や解散による新議会召集までの議員不在時に議会の権能を維持するため設置したものであります。
 この委員会による政府権力の統制、特に緊急命令の事前審査ですね、これを考えていました。帝国憲法時代の日本におきましても、議会が開会できないとき、緊急の必要を名目に、緊急勅令、緊急財政処分による政府権力の濫用があったことに鑑み、帝政から共和制に移行したドイツの制度をモデルとすることが考えられたわけです。
 政府が設置した松本委員会の案のみならず、民間憲法草案にも常置委員会の設置を提案するものもありました。そして、後に日本国憲法案の帝国議会での審議の説明を、審議において説明を担当する金森徳次郎も、その著書で緊急勅令、緊急処分の常置委員会による統制を提案していました。
 一九四六年二月十三日に総司令部案が日本側に提示され、それまでの松本委員会の検討が白紙に戻った後も、緊急勅令、緊急財政処分に代わる規定を提案する中で、政府単独による緊急命令を修正し、常置委員会によるその民主的統制を提案しましたが、総司令部により拒絶されました。
 その後、衆議院解散の場合に限り、常置委員会又は参議院が国会の権限を臨時に代行する案を提案しました。この提案が、国会の権限を臨時に代行する案を提案したわけですが、後にこれが参議院の緊急集会制度につながるわけです。
 しかし、ケーディスはこのとき、解散後、次の国会が召集されるまでの七十日間に国会の議決を必要とするような場合は想定できないし、災害発生等のために必要になる緊急の立法や財政措置は政府のエマージェンシーパワーで対応すればいいと言いまして、これを却下しています。
 その後、国会が召集不可能な場合に、次の国会で承認を得ることを条件に内閣が臨時に必要な措置をとることができる旨の規定を提案し、内閣主導の緊急事態対応を再度提案しましたが、これも却下されました。
 ここでGHQのケーディスが折れまして、以前提案した参議院による衆議院解散時の国会権限代行案、すなわち参議院緊急集会制度に落ち着いたということであります。その結果が今日の憲法第五十四条二項、三項ということになります。
 つまり、衆議院不在時の緊急の必要に対応するため、特別な憲法規定は不要であると譲らないGHQから譲歩を引き出すために日本側はその出方を探りながら落としどころを見付けたにすぎず、憲法第五十四条の規定が緊急事態対応規定としては甚だ不十分なものにとどまったこと、それが今日の議論の混乱を招いていることを看過すべきではないと考えます。
 さて、五十四条二項、三項の解釈に話を進めます。
 解釈による衆議院不在以外、ごめんなさい、訂正します。解散による衆議院不在以外、任期満了による衆議院の不在の場合にも参議院の緊急集会の開会が可能かについて、憲法明文上、解散の場合のみを規定していることから、これを限定的に解釈し、任期満了の場合には開会できないとする説があります。これは憲法制定時に、短期的な政治的事情から衆議院が急に解散された場合、解散後、特別会まで待てない緊急案件が残される可能性が高いのに対して、任期満了の場合にはその時期があらかじめ定まっており、それまでに案件を処理できるため、緊急案件が生じる可能性が少なく、あえて明記する必要はないと考えたからであるとされます。
 私は、現行日本国憲法が重大かつ長期にわたる緊急事態対応を想定していないと考える立場ですので、衆議院任期満了の場合には参議院緊急集会の開会は制度上想定されていないと考えます。しかし、実際上、任期満了の場合も解散の場合も衆議院が不在になることに変わりはなく、任期満了後にも緊急案件が発生する可能性も皆無とは言えません。緊急事態の発生は時を選びませんから、任期満了の場合にも緊急集会の開会を可能にすべきという意見ももっともだと思います。
 それを可能にするため、五十四条二項の類推解釈で対応すべきとの一部の憲法学者の意見があるようですが、その一方で、国会法の研究者の中には、任期満了による総選挙を選択する場合でも、運用上その直前に衆議院解散の手続を取ることで憲法上の不備に対応すべきとする意見もあるようです。ですので、この争点については意見の対立はそれほど深刻なものではないと考えます。柔軟に対応すればいいと私は思っております。
 緊急集会の開会可能期間の問題ですが、これまでの学説では、総選挙が問題なく実施でき、選挙後の特別会が速やかに開会できる平常時の場合、解散から総選挙実施により新たな議席が確定するまでの上限期間である四十日間が参議院の緊急集会開会可能期間であるのか、実際の特別会召集までの間の三十日を加えた最長七十日かについて説は分かれておりますが、いずれにせよ、選挙が平常どおり行われ、特別会が滞りなく召集されることが想定されていると考えられます。
 しかし、衆議院解散後あるいは任期満了後に重大かつ長期に及ぶ緊急事態が発生し、総選挙の実施が困難となり、長期にわたり衆議院が不在となる場合については現行憲法は想定していません。この欠落を解釈により補填しようと、参議院の緊急集会があるからこれに国会の権能を必要な期間代行させればいい、緊急の必要がある限り七十日という期間に縛られる必要はないという主張が一部にあります。このような主張は、憲法改正をしないこと、新たに緊急事態条項を導入しないことを大前提として、現行憲法の中にあえて緊急事態対応の根拠を読み込むとすればこのような解釈方法があると主張するものにすぎません。緊急時の政府の迅速な対応と、その議会による民主的統制の確保に最も有効な方法は何かという目的、視点を欠いているように思います。
 この目的を達するには、元々制度設計にはない役割を参議院緊急集会に負わせるのではなく、憲法改正により緊急事態宣言の制度を設定し、宣言下での衆議院議員の任期の延長や衆議院解散の禁止などの措置を認め、国会が両院完全な形で政府を統制する方が民主的観点から見てはるかに効果的であると考えます。重大緊急事態対処のためには、個別に処理すべき案件に限らず包括的な案件を提示する必要があるだけに、なおさら衆参両院がそろう完全な国会がこれを審議すべきであると考えます。
 国際比較の観点から見ても、緊急事態宣言下での国会の解散禁止や議員任期の延長を認める国は多く見られます。西修駒澤大学名誉教授がOECD諸国を中心に調査されたところによれば、フランス、イタリア、エストニア、スロベニア、スロバキア、ハンガリー、ポルトガル、スペインといった国々が議員の任期延長又は国会の解散禁止あるいはその両方を憲法に規定しております。ドイツもこの制度を採用していますが、この後、改めて言及をいたします。
 参議院の緊急集会で臨時に代行できる国会の権能がどこまでに及ぶかについては諸説あるものの、内閣不信任決議など衆議院のみに認められている権能が除外されるほか、憲法改正の発議、条約の承認、内閣総理大臣の指名は認めるべきでない、この点について既に見解の一致があるものと考えます。
 一部には、内閣総理大臣の指名について、大規模災害等により総理大臣ほか多数の国務大臣が欠け、かつ総選挙の実施のめどが立たず延期を余儀なくされた場合に例外を認めざるを得ないとして、緊急集会での総理指名も例外的に認められるとする説もあるようです。ですが、そのように政府が正常な統治能力を喪失する非常事態を想定する必要があると真剣に考えるのであれば、国会についても同じ例外を考えなければならないはずです。つまり、参議院の緊急集会を含め、国会自体が集会不能となる非常事態も想定しておく必要があるはずです。
 非常時に国会が集会不能となったとき、確実に集会できる小規模な委員会に国会の権能を代行させる制度が考えられます。現にこの制度を採用している国はあります。戦時に限ってではありますが、ドイツがその例として挙げられます。
 ここで戦時というのは、ドイツ基本法、ドイツの憲法ですが、この第百十五a条が定める防衛事態のことであり、日本の武力攻撃事態に相当するものです。防衛事態下で連邦議会、連邦参議院が集会不能となった場合、平時から委員が指名されている合同委員会という機関、これは両院の議員四十八名から構成されるものですが、この合同委員会が、一定の条件はあるものの、連邦議会、連邦参議院の機能を代行することが憲法に明記されています。
 なお、防衛事態の下では連邦議会の解散も禁じられ、任期満了となった連邦議会及び衆議院の議員の任期は自動的に延長されることになっており、事態終了から六か月後をもって任期を終えることとなっています。
 議員以外にも、連邦大統領等の任期の特例も認められています。非常時に議員等の任期が延長されたからといって、国民の参政権が侵害されたとか議会が民主的正統性を欠くといった批判があったという話は私は知りません。
 最後に、例え話としていいかどうか分かりませんが、例えば築七十五年の家に幾ら耐震補強工事を施しても、軟弱な地盤、脆弱な基礎の上に建てられた家であればその効果は期待できず、徒労に終わります。国家の基本法である憲法も同じです。その制定過程の特質性ゆえに日本国憲法の基礎は残念ながら脆弱であります。特に、国家の基礎であるべき主権に関わる部分について見解の一致を見ず、いまだに学説の対立があり、問題を生じさせています。
 すなわち、対外的主権を最終的に確保するための防衛関連規定の不存在と、非常時における国家統治能力の維持及びその民主的統制に関わる緊急事態関連規定の欠落であります。この欠落から生じる不都合を憲法解釈により解決するにも限界があることは明らかであると私は考えます。
 以上でございます。
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中曽根弘文#5
○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 次に、長谷部参考人にお願いいたします。長谷部参考人。
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長谷部恭男#6
○参考人(長谷部恭男君) 発言の機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
 レジュメを用意しておりますが、時間も限られておりますので、中で幾つかの項目、かいつまんでお話を申し上げます。
 まずは、緊急集会の実体的要件のうち、衆議院が解散されたときというこの論点です。
 日本国憲法の条文は、衆議院が解散されたときに内閣が緊急集会を求めることができるとしております。このことから、衆議院議員の任期満了により総選挙が実施される場合、緊急集会を求めることができるか、これが論点になります。
 そもそも、解散がされず、衆議院議員が任期満了となることも極めてまれではありますが、さらに、公選法は、議員の任期が終わる日の前三十日以内に総選挙を行う、これを規定しておりますので、任期満了によって衆議院議員が存在しなくなることは一般的には想定しにくいところです。
 もっとも、例外的には、任期満了直前まで国会の会期が続くと、これもあり得ますので、任期満了によって衆議院議員が存在しなくなることもあり得るといえばあり得ることになります。こうした場合、内閣が緊急集会を求めることはできないとする説もありますが、この説は、衆議院議員の任期満了の期日は解散の場合とは異なり事前に明らかですので、内閣は当該期日までに必要と考えられる措置をあらかじめ講じ得るはずである、このことを根拠としているものと思われます。
 もっとも、天災等事前に予測し難い危機が生じまして、そのために総選挙の実施に支障が生じると、こういった場合には、臨時会の召集まで日数を要するということも理論的にはあり得ます。そうした場合、内閣の独断専行を避け、可能な限り憲法の定める制度を活用して権力の抑制、均衡を確保する。そのためには、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合にも、憲法五十四条の規定を類推をして内閣は緊急集会を求めることができると考えることが適切のように思われます。こうした考え方は、現在では多くの学者の支持を得ていると考えられます。
 そして、続きまして、レジュメで申しますと四、大きな四になりますが、緊急集会に代わる対応策、この論点です。
 どのような事態が想定されているのかという話ですが、最近、外国による武力の行使ですとか大規模な自然災害等のために衆議院議員の総選挙を行うことが長期にわたって困難と考えられる事態におきましては、参議院の緊急集会ではなく、既に失職をした、あるいはこれから失職するであろう衆議院議員の任期を延長する、そのことで対処をするべきであるという憲法改正論が浮上をしております。
 こうした提案についてでありますが、第一に、そうした場合というのが、そうした事態が果たしてどれほどの蓋然性で発生し得るのか、また、仮に発生するとしても、長期にわたって総選挙を実施し得ないことを事前に予測し得るという状況がこれもどれほどの蓋然性で発生し得るのか、こういった論点がございます。
 重大な緊急事態が発生したために、広範にわたる地域で総選挙の実施が困難となるということは確かにあり得るでありましょう。ただ、そうした天災その他避けることのできない事故により投票所において投票を行うことができないときにつきましては、衆議院議員の選挙を含めまして、公職選挙法が既に繰延べ投票の制度を設けております。
 もちろん、投票だけではなくて選挙の実施そのものの延期が必要となることもあり得るかもしれませんが、その場合には、参議院の緊急集会が選挙期日を延期する臨時特例等を定める法律、これで対処をするということになるでありましょう。解散の日から四十日という憲法五十四条の定める期限を超える延長となることも考えられますが、これは本日おいでの土井参考人も御指摘のとおり、法が不可能時を要求するものとは考え難いゆえに、後で述べますところの四十日という期限の趣旨からしても、私は憲法はこれを容認するものと考えております。
 多くの選挙区で繰延べ投票や選挙の延期が行われることはもちろん好ましい事態ではございませんが、理論的に申しますと、衆議院の定足数に当たる総議員の三分の一の議員の選出がなされれば国会を召集して審議、議決を行うことは可能のはずでございますし、しかも、いずれの地域から選出された国会議員も、憲法四十三条によりますと全国民を代表しております。全ての衆議院議員の選出が終わらないまま、既に選出された議員のみで国会としての審議、議決を行うことに正当性がないとまでは言いにくいように思われます。
 また、郵便投票制度の拡充など、自然災害等の場合に避難先からの投票を可能とするような公選法の改正、こういった法制度の改正を行うことで投票の繰延べですとか選挙そのものの延期の必要な場合を減らす、こういうことも考えられます。
 最高裁の判例は、選挙権の制限は、これは引用になりますが、そのような制限をすることなしには選挙の公正を確保しつつ選挙権の行使を認めることが事実上不能ないし著しく困難である場合、そういった場合にのみ許されるとしております。
 憲法自体を変えてしまう以上は現行憲法の規定を前提とする判例法理は妥当しないのだという、そういう主張もあり得ないではございませんが、緊急の事態におきましても基本権は可能な限り保障されるべきですので、正当な目的の下、必要最小限度においてのみその制約が許されるという比例原則は、これはなお妥当するはずです。
 選挙の実施が部分的とはいえ可能である以上は、緊急の事態におきましても、困難が解消され次第、可及的速やかに順次選挙を粛々と実施することが要請されるはずでございまして、そもそも困難がない選挙区も含めて丸ごと延期をするということはやはり許されないのではないかと思われます。
 さらに、そうした状況、万一発生し得るといたしましても、総選挙の実施を長期にわたって先送りせざるを得ないということを前もって予測するということが果たして可能なのか、そういった問題もございます。
 理論的には確かにそういった状況、発生することはあり得るでしょうが、先のことははっきり申し上げて分からないはずなのに、また繰延べ投票や選挙そのものの延期も可能であるのに、あたかも将来のことが確実に分かっているかのように総選挙の実施を長期に先送りをすると、こういった判断をすることは国民にいぶかしがられるということになりはしないかという、そういう懸念もございます。
 二つ目の緊急事態の恒久化の回避という論点ですが、今申し上げた点に加えまして、こうした対処策を取るべきでない理由は私はもう一つあると考えております。
 これは、ドイツの憲法学者で憲法裁判所の判事も務めましたベッケンフェルデ教授が強調する点ですが、緊急事態に対処するための制度的対応に当たってはあくまで臨時の暫定的な措置にとどめること、これには十分な理由があると考えます。
 現行憲法五十四条の定める参議院の緊急集会による対応は、これは条文にもありますとおり、限られた期間しか通用しない臨時の、しかも措置です。緊急集会の権限にはそもそも限界があると一般的に考えられてきましたことも、緊急集会の行い得るのが暫定的な臨時の措置にとどまるということと対応をしております。
 これに対しまして、衆議院議員の任期を延長するといたしますと、そこには、総選挙を経た正規のものとは異なる異常なものではありますが、国会に付与された全ての権能を行使し得る、まあある種の国会が存在をする、そこでは通常の一般的な法律が成立をするということになります。
 そういたしますと、緊急時の名を借りて、通常時の法制度そのものを大きく揺るがすような法律が次々に制定されるリスクもそこには含まれているということになります。悪くいたしますと、任期の延長された衆議院とそれに支えられた従前の政権党が居座り続けて、緊急事態の恒久化を招くことにもなりかねません。緊急事態の恒久化を防ぐためには、これもベッケンフェルデ教授が指摘していることですが、平常時と非常時とは明確に区分をされるべきです。
 ところが、衆議院議員の任期延長というのは、つまるところ、平常時そのものを非常時に近づけると、憲法制度の全てを永続する緊急事態へと変質させるリスクを含んでいるのではないかと、そういった疑いがあります。他方、参議院の緊急集会による緊急事態への対処、これは平時の状況が回復したときは可及的速やかに通常の制度へと復帰をする、これが予定されていることを意味しています。
 繰り返しになりますが、将来の状況を確実に予測することは極めて困難でして、平常の事態に長期にわたって戻ることはないと予断をしてしまうべきではないと思われます。
 これに対しましては、現行憲法の規定は緊急集会が長期にわたって継続することは想定していないのではないか、そういった疑問もあり得るところで、確かに憲法五十四条の規定を素直に読みますと、緊急集会は、解散後四十日以内に行われる総選挙までの間、あるいは長くとも新たな国会召集までの最大七十日間にしか求めることができないかのように見えます。しかしながら、今議論の対象となっておりますのは、国家の存立に関わるような、そういった事態でございまして、通常時の論理がそのままの形で通用すると考えるべきかどうかという、そういう問題がございます。
 そうした非常の事態では、あらゆる考慮要素がくまなく総合的に勘案されるべきでございまして、特定の論点、特に日数を限った規定の文言にこだわって、それを動かし得ない切り札であるかのように捉えて議論を進めるべきではないのではないかと考えられるところです。
 そもそも、なぜ憲法五十四条が四十日、そして三十日という日数を限っているかと申しますと、解散後も何かと理由を構えていつまでも総選挙を実施しない、あるいは総選挙の後もいつまでも国会を召集しないなど、現在の民意を反映していない従前の政府がそのまま政権の座に居座り続けることのないようにという、そういう考慮からです。同様の規定は各国の憲法にも見られるところです。
 緊急集会の継続期間が限定されているかのように見えるのは、実はその間接的、派生的な効果としてにすぎません。にもかかわらず、緊急集会の期間が限定されているかのように見えると、このことを根拠といたしまして従前の衆議院議員の任期を延長をする、それに伴って政権の居座りを認めると、このことはまさに本末転倒の議論ではないかとの疑いを抱かざるを得ないところがございます。条文のそもそもの趣旨、目的を踏まえた解釈、何が本来の目的で何がその手段にすぎないか、その点を踏まえた解釈が求められるように思われます。
 参議院の緊急集会制度には、平常時と非常時とを明確に区分をするとともに、そこではあくまで暫定的で臨時の措置のみがとられる。選挙を経て正規の国会が召集され次第、その当否は改めて審議、決定されるものであると、このことを国民に広く示す意味があります。衆議院議員の選挙も、災害等による困難が解消した選挙区から順次速やかに実施をすべきものでありまして、困難がそもそもない選挙区の選挙を含めて丸ごと延期をすべきものではないと考えられます。
 このように、現行憲法の定める参議院の緊急集会制度、これは十分な理由に支えられておりまして、これに新たな制度を追加する必要は見出しにくいというのが私の見解でございます。
 以上、御清聴どうもありがとうございました。
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中曽根弘文#7
○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 次に、土井参考人にお願いいたします。土井参考人。
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土井真一#8
○参考人(土井真一君) 本日は、このような意見を述べる機会を賜り、光栄に存じます。
 私から、参議院の緊急集会について、四つの論点を中心に意見を述べさせていただきます。
 まず第一に、衆議院の任期満了による総選挙の場合に緊急集会を開くことができるかという論点です。
 憲法五十四条二項は、「衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。」と定め、そのただし書において参議院の緊急集会を定めていますので、同項に基づく緊急集会については衆議院が解散されていることがその実体的要件の一つであると解されます。
 そこで、この憲法五十四条二項ただし書が、緊急集会の開催を衆議院が解散されている場合に限定したものか、それとも衆議院議員の任期満了による総選挙が実施される場合にも緊急集会を開くことができると解すべきかが問題となります。
 この点、従来の多数説は、衆議院議員の任期満了の場合には内閣が緊急集会を求めることはできないと解してきました。その理由は、第一に、憲法制定時に任期満了の場合の緊急集会が必ずしも想定されていなかったこと、第二に、参議院の緊急集会は例外的な事態であり、憲法による明文の根拠を要すること、第三に、衆議院の任期満了の期日は明らかであり、内閣は当該期日までに必要な措置を講じるべきであることなどが挙げられます。
 しかし、大規模な自然災害や安全保障上の危機の発生を事前に予測し制御することは困難であり、このような事態が現実に生じれば、解散による場合のみならず、任期満了による場合であっても緊急の措置が必要になると考えられます。また、衆議院が存在しない状況で参議院の緊急集会を認めなければ、緊急事態の法理に依拠するなどして内閣が単独で必要な措置を講じる事態を招きかねません。確かに緊急集会は両院制の例外に当たることから、これを安易に認めることは適切ではありませんが、内閣が単独で法律に代わる措置を講じることは、より重大な例外に当たります。本来、緊急の場合であっても、憲法の定める制度をできる限り用いて権力の抑制と均衡を確保することが憲法の趣旨にかなうと考えられます。
 したがって、五十四条二項ただし書の規定は、衆議院が存在しない例として解散の場合について緊急集会を定めたものであると解し、衆議院議員の任期満了による場合にも同条を類推適用して、国に緊急の必要があるときは内閣は緊急集会を求めることができると解すべきであると考えています。
 第二に、緊急集会の期間は最長で七十日間に限定されるかという論点です。
 憲法五十四条一項に基づけば、衆議院が解散された日から最長七十日で特別会が召集されなければなりませんから、参議院の緊急集会が認められるのもこの七十日間に限定されるとする見解が導かれ得るところです。確かに日数は一義的な意味を有していますので、これを解釈で変更することは困難であるとする見解にも一定の理由がございます。
 しかし、五十四条二項に、衆議院の解散の日から七十日以内に限りという文言が直接存在するわけではございません。衆議院が存在しない間における緊急の対応であるという同項の趣旨を踏まえて、まず、緊急集会の開催は衆議院の解散の日から次の国会の召集が可能になるときまでの間に限られるという解釈が導かれます。次に、一項の規定から七十日という数字が導かれるわけですが、これは、二項にとっては、衆議院の解散の日から次の国会の召集が可能になるまでの期間の目安であると位置付けるのが適切ではないかと思います。
 したがって、第一に、五十四条一項は総選挙の日から特別会の召集まで最長三十日の期間を置くことを認めていますが、現に総選挙により衆議院議員が選出され、特別会の召集が可能な状態に至れば、たとえ総選挙の日から三十日以内であっても、緊急の必要がある場合には、内閣は緊急集会ではなく特別会を召集すべきであると解されます。
 他方、第二に、大規模自然災害や安全保障上の危機のために総選挙を実施できない場合には、たとえ解散の日から七十日を経過したとしても、衆議院議員が選出されず特別会の召集ができない状況は現に存在している以上、このような場合においてなお七十日という数字に厳格に拘束されるべき実質的理由があるかを問う必要があります。
 そもそも、解散の日から四十日以内に総選挙が実施できない事態は、文言上、五十四条一項の規定に抵触することになります。しかし、大規模自然災害等で総選挙の実施が事実として不可能である以上、法は不可能を要求しないという法原則に基づけば、総選挙の実施の延期を例外として容認するのが憲法の趣旨であると解すべきであると思います。そうであれば、緊急事態に対応するために、五十四条一項が許容する範囲内で二項により緊急集会の開催を認めることは不合理ではないと思います。
 ただし、そのような例外的場合であっても、憲法上、代表民主主義の基盤である国民の選挙権の行使は強く保障される必要があり、また衆議院が存在しない事態は極力回避すべきだと考えられますので、五十四条一項は、可能な限り速やかに適切な方法で総選挙を実施し、国会を召集できるようにすることを求めていると解されます。
 なお、衆議院議員の任期満了による総選挙の場合には、総選挙の時期及び国会、この場合には臨時会になりますが、国会の召集の時期は憲法ではなく公職選挙法及び国会法で定められています。したがって、五十四条一項については異なる取扱いになりますが、二項については同様の考え方でよいのではないかと思います。
 第三に、緊急集会において参議院議員が発議できる議案に制限があるかという論点です。
 緊急集会において審議される議案について、国会法は九十九条一項において、内閣総理大臣が緊急集会を請求する際に案件を示すことを求め、百一条において、このような案件に関連のあるものに限って参議院議員は議案を発議することができるとしています。このような参議院議員の議案発議権に対する制約が憲法上適切かどうかが問題になります。この点につきましては、緊急集会は国権の最高機関たる国会の権能を代行するものであり、立法の優位を確保しようとする憲法の原則に鑑みれば、一たび集会した以上は、参議院の審議権は集会時に内閣の提示した案件に限定されるべきではないとする見解もございます。
 しかし、憲法五十三条が臨時会について各議院に召集要求権を認めているのとは異なり、五十四条二項は緊急集会の要求権を内閣にのみ認めています。これは、衆議院を欠く例外的状況であることから、緊急性を理由に権限の簒奪等が生じることを防止するために、一般的には、衆議院に基礎を置く内閣に緊急集会の開催を要求し案件を提示する権限を委ね、その内閣を統制するための審議、議決権を参議院に認め、さらに事後の同意権を衆議院に認めることで、内閣と両議院により権力の抑制と均衡を図る制度設計にしたものと解するのが適切です。
 そうしますと、参議院の議案発議権に対するこのような制約は、憲法上の要請を国会法において具体化したものと理解されます。しかし他方で、内閣が提出した議案の審議、議決のみを行うと解することは狭過ぎると思われます。参議院は、内閣提出の議案について修正案や対案を提出することができると解すべきでしょう。
 また、大規模な自然災害等の緊急事態においては、広範な措置を逐次講じる必要があることから、内閣が開催要求時に示すべき案件も包括的なものにするほかなく、それに応じて参議院議員の議案発議権や質疑、討論等が及ぶ範囲も広範になることを認めざるを得ません。国会法百一条などが案件に関連のあるものと定めたのは、このような趣旨に基づくものであると解されます。
 第四に、緊急集会の権能に制限があるかという問題に進みます。
 憲法は緊急集会の権限及び行為形式を具体的に定めていませんので、緊急集会は、原則として、内閣が示した案件に関連する範囲内で広く国会の権限を代行することができると解するのが適切であると思います。ただ、衆議院が存在しない例外的状況で緊急集会が暫定的な措置として行使することができない権限が類型的に存在すると解するのが一般的です。
 このような例外として、第一に、憲法改正の発議があります。そもそも、憲法改正のためには十分に審議を尽くす必要があり、その発議を参議院の緊急集会で暫定的な措置として行うことは適切でありません。また、憲法改正が成立するためには国民投票を実施する必要がありますが、憲法改正の国民投票を行うことはできるが、衆議院議員の総選挙を実施し国会を召集することはできないという事態を想定することは困難です。
 第二に、衆議院が存在しない間に内閣総理大臣が欠けた場合に、緊急集会において内閣総理大臣の指名を行うことができるかが問題になります。この点、既に衆議院議員総選挙が実施されることになっており、内閣は総選挙の後に初めて国会の召集があったときは総辞職しなければなりませんから、緊急集会で内閣総理大臣の指名は行わず、内閣総理大臣臨時代理の下、総辞職した内閣に引き続き職務を行わせることが原則であると解されます。
 ただし、大規模な自然災害等により、内閣総理大臣のほか多数の国務大臣を欠くことになり、かつ総選挙の実施も延期せざるを得ないような深刻な緊急事態においては、緊急集会による内閣総理大臣の指名を例外として認めざるを得ない場合が生じるかもしれません。
 そのほかにも、条約の締結の承認や、両議院又は衆議院に付与された権限の行使などの問題がありますが、時間の都合で省略させていただきます。
 最後に、緊急事態への対応に関する検討について一言申し述べさせていただきたいと思います。
 大規模な自然災害等の緊急事態において、国民の生命、健康及び権利等を守るために必要な措置を講じることは、国家、政府の重要な役割です。それと同時に、歴史に照らせば、緊急事態は権力の簒奪や濫用が行われる危険性の高い時期ですから、これを防止するための仕組みについては国会において慎重に御検討いただくべき事項であると考えます。
 その際にお願いしたいのは、緊急事態から通常時へのレジリエンス、復元力の高い仕組みを御検討いただきたいという点と、そして、通常時に復帰した後、緊急事態において講じた措置について、その合憲性、合法性を審査する機会を適切に確保していただきたいという点でございます。
 重要な政治的アクターがこぞって緊急事態の継続に利益を有することになる仕組みは危険であり、例外的に認められた権限の行使には重い責任が伴わなければなりません。この二点は、自由と民主主義を基礎とする立憲主義体制を維持しつつ、緊急事態に対応するために不可欠の要件であると考えます。
 この点について、緊急集会は合理的な設計に基づく制度の一つではあります。
 第一に、衆議院議員の候補者の皆さんはもちろん、内閣を構成する内閣総理大臣及び国務大臣の多くが慣行上衆議院議員から選ばれていますので、自らの正統性を支える衆議院が存在することになるよう、できる限り早期に総選挙が実施されることを強く働きかける復元力になり得ると考えられます。
 そして第二に、次に開かれた国会において十日以内に衆議院の同意が必要とされていますから、緊急事態において講じた措置について、その合憲性、合法性はまずもって衆議院によって網羅的に審査されることになります。
 もし緊急集会に代わる仕組みを検討されるというのであれば、今申し上げたような点について緊急集会よりもより優れた仕組みであると国民が納得するようなものとなるよう慎重に御検討いただく必要があることを申し上げて、私の意見陳述を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。
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中曽根弘文#9
○会長(中曽根弘文君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑を希望される方は、氏名標をお立ていただき、会長の指名を受けた後、御発言を願います。
 なお、質疑が終わった方は、氏名標を横にお戻しください。
 参考人の方々におかれましては、答弁の際、挙手の上、会長の指名を受けた後、御発言を願います。
 それでは、質疑のある方は、二巡目以降の質疑を希望される方も含め、氏名標をお立てください。
 まず、一巡目は各会派一名ずつ指名させていただき、質疑時間は答弁を含め各八分以内といたします。
 浅尾慶一郎君。
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浅尾慶一郎#10
○浅尾慶一郎君 自由民主党の浅尾慶一郎です。
 三名の参考人の皆さんには、大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございました。
 私からは二点、参考人の皆さんに質問をさせていただきたいと思いますが、まず最初は、三名とも御発言をいただきましたけれども、衆議院の任期満了時における緊急集会の在り方について質問をさせていただきたいと思います。
 まず、三名とも、皆さん御発言をいただいておりますけれども、その中で、任期満了のときに類推適用ができるのかどうか、緊急集会の扱いが類推適用ができるのかどうかということであります。実際上は、任期満了の三十日前に総選挙の公示を行わなければいけないということになっております。任期満了の三十日前に総選挙を行わなければいけないという公職選挙法の規定がありまして、なおかつ、その任期があるということでありますから、三十日を超えた中で解散をすることもできるということで、事実上この任期満了時で緊急集会を行うというのはかなり珍しいということでありますけれども、昭和五十一年には一回、任期満了で衆議院の選挙が行われたということがございます。
 そうした場合に、繰り返しになりますけれども、現行の憲法の中で緊急集会を行うことが類推適用によってできるかどうか、その点についてまず三名の参考人の皆さんにお答えいただきたいと思います。
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松浦一夫#11
○参考人(松浦一夫君) 先ほど私の意見の中にも申しておりましたんですが、これ、類推解釈なり類推適用でこれを行うのか、あるいは、運用上ですね、もう全て、これ、任期満了によってそのまま総選挙というのは非常にレアなケースでもありますので、類推適用という形でなくても、その運用上ですね、解散をしてしまうということもできないわけではないので、これは建前論としてどちらを取るかという話だと思います。
 ですので、先ほどの私の意見の中でも、それほど深刻な対立ではないということであります。だから、柔軟に考えて類推適用でそれを納得できるのであれば、国会の議員の先生方がコンセンサスがあれば、それでも構わないと思います。
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長谷部恭男#12
○参考人(長谷部恭男君) 類推適用は可能だと思います。
 以上です。
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土井真一#13
○参考人(土井真一君) 私も類推適用可能だと思います。
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浅尾慶一郎#14
○浅尾慶一郎君 それでは、次の質問は、この緊急集会をその七十日という期日を超えて開くことができるかどうかということでありますけれども、基本的には、衆議院が解散をされてから四十日以内に選挙を行うということが公職選挙法で定められております。選挙の運動期間は、累次の改正によって現在、衆議院の選挙は十二日というふうに短縮をされておりますので、総選挙の期日はその十二日前に公示しなければいけないというのが公職選挙法において決められているわけでありますけれども、そうすると、仮に一番短い場合で解散の日から十七日とかそんな形で選挙が決まったとしますけれども、その後、非常事態が起きて、その際に、そこから四十日、解散の日から四十日以内では選挙ができないといった場合にどのように取り扱っていくことが可能かということについての御意見を伺っていきたいと思います。
 ちなみに、一地域における自然災害等においては繰延べ投票ということがありますので、その際には、全員の議員がそろわないけれども、先ほどもちょっと参考人の皆さんからも御意見ありましたけれども、繰延べ投票という規定がありますが、全国において投票ができなくなった場合に、この四十日を超えて緊急集会、四十日ないしはプラス特別国会の、特別会の三十日を足した七十日を超えて緊急集会を開くことができるかどうか、その点について三人の参考人の方の御意見を伺いたいと思います。
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松浦一夫#15
○参考人(松浦一夫君) 私自身の考えとしては、七十日を超えて開会はできないと考えます。それは、その七十日を超えて、じゃ、いつまでこれが続くのかという問題があります。先ほどもほかの参考人からもありましたように、将来のことを見通してあることをすると、これも、参議院の緊急集会があるから、緊急の必要があるから続けていいのかという問題がありますが、もし仮にその間に非常に重要な案件があり、その後、衆議院で同意が得られなかったとかいうようなことになった場合、非常に国政は混乱すると思うんですね。
 そうであるならば、参議院のみならず衆議院も両方、両翼そろった形でその審議を行う体制を整えるべきだというように考えます。先ほども申しましたように、諸外国ではそうした国会、特に下院の議員の任期の延長というのはそれほど珍しい制度ではございませんので、そちらでその制度設計をされた方が私は賢明だと思います。
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長谷部恭男#16
○参考人(長谷部恭男君) 私は、七十日を超えて緊急集会を継続するということは、まあ好ましいことではございません、あり得る話であるというふうに考えております。
 先ほども申しましたが、最長七十日で限られているかのように見えるのは、現在の民意を反映しない政権の居座りを防ぐ、それを阻止するということが、これが本来の目的でございますので、その目的を没却するような形の制度をつくるのは考え物ではないかというふうに私は考えているところでございます。
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土井真一#17
○参考人(土井真一君) 緊急事態に対応するために憲法を改正するということは理論上はあり得るというふうに思いますが、現行憲法を前提にしてどうあるべきかというふうに考えたときには、大規模自然災害が生じた場合に、現に総選挙が実施できず、衆議院解散から七十日が過ぎた段階で、例えば参議院の皆さん方が国民にとって必要な法案や予算案の審議を打ち切れるかというと、それは非常に困難であって、憲法も、立憲主義の基本的な考え方からすれば、権力の抑制と均衡の機会はできる限り認めるべきだというふうに解するのであれば、七十日を超えて緊急集会を認めることはできると、そう考えております。
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浅尾慶一郎#18
○浅尾慶一郎君 ありがとうございました。大変参考になりました。
 時間になりましたので、終わります。
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中曽根弘文#19
○会長(中曽根弘文君) 杉尾秀哉君。
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杉尾秀哉#20
○杉尾秀哉君 立憲民主・社民の杉尾秀哉でございます。
 三人の参考人の先生方、本日は分かりやすい、そして傾聴すべき御意見を賜りまして、大変ありがとうございます。
 早速質問の方に入りたいんですけれども、何分にも時間が限られておりますので、できる限り端的にお答えいただければ幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
 まず、長谷部参考人に伺います。
 今の質問にもありましたけれども、この四十日、三十日というこの期限が定められている、憲法五十四条一項に。この趣旨はどういうことなのか。今、政権の居座りを阻止するという、そういう例示がありましたけれども、それ以外の理由もあるかどうかということも含めてお答えいただけますでしょうか。
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長谷部恭男#21
○参考人(長谷部恭男君) こういった日数を限るというのは世界各国の憲法にある規定ですけれども、これは元々は、立憲体制以前のいわゆる絶対主義的な体制の下で、議会を解散したままなかなか選挙を行わないと、選挙は行ったけれども新たな議会を召集しないということが間々ございましたので、そういうことが起こらないようにということでこういう日数を限っていると、それが主な趣旨であるというふうに考えております。
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杉尾秀哉#22
○杉尾秀哉君 ありがとうございます。
 そうしますと、その五十四条一項の規定から、緊急集会を七十日間に限定して考えるのは根拠がないと、こういう趣旨であるというふうに理解しておりますけれども、それでは、五十四条二項に書かれた国に緊急の必要があるとき、これが終わるまでは緊急集会の開催は可能というふうに考えてよろしいんでしょうか、どうでしょうか。
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長谷部恭男#23
○参考人(長谷部恭男君) これは先ほどの報告の中でも申し上げたことなんですけれども、やはり選挙が実施が困難な部分があるといたしましても、困難でないところから可能な限り速やかに選挙を実施すべきものでございまして、その結果、新たな国会の召集が可能になった時点では、これは新しい国会を召集すべきものであるというふうに考えております。
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杉尾秀哉#24
○杉尾秀哉君 それでは次に、土井参考人に伺いたいと思います。
 五十四条二項の緊急の必要があるときについて、土井参考人は、これ事前に配っていただきました「注釈日本国憲法(3)」の中で、他国からの武力行使、それから内乱又は大規模自然災害等による国家緊急事態、こうしたのを例示として挙げておられます。
 これについて、憲法の立法経緯を踏まえて趣旨を具体的に御説明いただけますでしょうか。
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土井真一#25
○参考人(土井真一君) ここの部分につきましては、私の論文の中にも書かれていますし、それから、松浦参考人の論文の百三十五ページにもありますように、英訳はイン・タイム・オブ・ナショナル・エマージェンシーという表現になっております。
 このナショナルエマージェンシーというのが広いか狭いかということについて、日本側とGHQの側でやり取りがございます。日本側は、主張していますのは、このナショナルエマージェンシーというのが今御指摘のありましたような他国からの武力の行使、内乱、大規模自然災害等の場合に限定されると解しますと日本側としては狭過ぎると、そういう理解で、もう少し広く理解したいというふうに主張しておりますので、前提としては今申し上げたような点は含まれるものと理解されていたと解されます。
 以上です。
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杉尾秀哉#26
○杉尾秀哉君 もう一問、土井参考人に伺います。
 土井参考人は、同書におきまして、大規模自然災害などで総理大臣や多数の国務大臣が欠ける場合について言及をされておられます。これは先ほどの意見の中にも出てまいりましたけれども。
 そこで、三点伺いたいんですが、まず一つ目は、緊急集会で対処できる国家緊急事態の内容や規模には基本的に制限はないという、こういう考え方でよろしいのか、二つ目は、憲法制定時に、緊急集会は憲法七十三条六項の政令委任とともに制定されました。こうした経緯から考えますと、日本国憲法は全体として想定し難い大規模災害のような国家緊急事態への備えができていると、こういうふうに理解してよろしいかどうか、そして三つ目ですが、緊急集会、七十日間に限定せず、先ほどから焦点になっておりますけれども、緊急集会の立法趣旨等を考えますと、必要な間は緊急集会を開催できると考えていいのか、これは先ほどの長谷部参考人の質問にも共通しますけれども、以上三点、お答えいただけますでしょうか。
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土井真一#27
○参考人(土井真一君) 基本的には、先ほども申し上げましたように、内閣が示した案件に関連する範囲内で広く国会の権限を代行することができると解すべきだと思います。ただ、先ほども申し上げましたように、では憲法の改正の発議までできるかというと、それは私はできないと思いますので、限界はあろうかと思います。
 それから、全ての緊急事態について憲法は備えているかという問題ですが、およそ緊急事態への備えというのは一長一短ございまして、完璧かと言われた場合に、完璧な備えというのはできないというのが緊急事態の難しい点でございます。ただ、そのような点を想定して作られているかと言われれば、参議院の緊急集会がそのような一例であると考えられると思います。
 七十日につきましては、長谷部参考人がおっしゃられたように、選挙が行われて、それから特別会が召集できるという事態になりましたら、それはそちらの道を選ばなければいけないというような限界はあろうかと思います。
 以上です。
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杉尾秀哉#28
○杉尾秀哉君 ありがとうございます。
 それでは最後に、三人の参考人の先生方に同じ質問をしますので、お答えいただけると有り難いです。
 一つ目は、憲法に国会の立法機能を代行する参議院の緊急集会制度があります。にもかかわらず、国会議員の議員任期の延長のための憲法改正というのは政策的に本当に必要なのかということ。また、民主主義の在り方として、選挙された国民代表であります我々参議院議員が一旦その役割を担って、その後に選挙された衆議院議員の同意を要件とするいわゆる緊急集会と、選挙を経ずに内閣と国会の判断で任期を延長された国会の、どちらに憲法の基本原理であります国民主権や議会制民主主義における正統性があるとお考えか、それぞれの先生方のお考え、端的にお示しいただきたいと思います。
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松浦一夫#29
○参考人(松浦一夫君) 今の質問の御趣旨がちょっとよく分からなかったんですが、参議院の緊急集会の方が民主的正統性を担い得るということなんでしょうか。
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