憲法調査会

2001-02-22 衆議院 全181発言

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会議録情報#0
平成十三年二月二十二日(木曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   会長 中山 太郎君
   幹事 石川 要三君 幹事 新藤 義孝君
   幹事 中川 昭一君 幹事 葉梨 信行君
   幹事 保岡 興治君 幹事 鹿野 道彦君
   幹事 仙谷 由人君 幹事 中川 正春君
   幹事 斉藤 鉄夫君
      伊藤 公介君    伊藤 達也君
      奥野 誠亮君    金子 一義君
      古賀 正浩君    下地 幹郎君
      下村 博文君    菅  義偉君
      田中眞紀子君    谷田 武彦君
      津島 雄二君    中曽根康弘君
      中谷  元君    中山 正暉君
      西田  司君    鳩山 邦夫君
      二田 孝治君    三ッ林隆志君
      三塚  博君    宮澤 洋一君
      森岡 正宏君    森山 眞弓君
      山崎  拓君    山本 明彦君
      渡辺 博道君    生方 幸夫君
      枝野 幸男君    大石 尚子君
      大出  彰君    小林  守君
      島   聡君    筒井 信隆君
      永田 寿康君    細野 豪志君
      前原 誠司君    松沢 成文君
      上田  勇君    太田 昭宏君
      塩田  晋君    藤島 正之君
      赤嶺 政賢君    瀬古由起子君
      春名 直章君    金子 哲夫君
      北川れん子君    原  陽子君
      小池百合子君    野田  毅君
      近藤 基彦君
    …………………………………
   参考人
   (理化学研究所ゲノム科学
   総合研究センター遺伝子構
   造・機能研究グループプロ
   ジェクトディレクター)  林崎 良英君
   参考人
   (日本大学人口研究所次長
   )
   (日本大学経済学部教授) 小川 直宏君
   衆議院憲法調査会事務局長 坂本 一洋君
    —————————————
委員の異動
二月二十二日
 辞任         補欠選任
  伊藤 達也君     谷田 武彦君
  下村 博文君     三ッ林隆志君
  田中眞紀子君     山本 明彦君
  津島 雄二君     古賀 正浩君
  中田  宏君     永田 寿康君
  山口 富男君     赤嶺 政賢君
  土井たか子君     北川れん子君
  野田  毅君     小池百合子君
同日
 辞任         補欠選任
  古賀 正浩君     津島 雄二君
  谷田 武彦君     下地 幹郎君
  三ッ林隆志君     下村 博文君
  山本 明彦君     宮澤 洋一君
  永田 寿康君     中田  宏君
  赤嶺 政賢君     瀬古由起子君
  北川れん子君     原  陽子君
  小池百合子君     野田  毅君
同日          
 辞任         補欠選任
  下地 幹郎君     伊藤 達也君
  宮澤 洋一君     田中眞紀子君
  瀬古由起子君     山口 富男君
  原  陽子君     土井たか子君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 委員派遣承認申請に関する件
 日本国憲法に関する件(二十一世紀の日本のあるべき姿)

     ————◇—————
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中山太郎#1
○中山会長 これより会議を開きます。
 この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。
 日本国憲法に関する調査のため、来る四月十六日、宮城県に委員を派遣いたしたいと存じます。
 つきましては、議長に対し、委員派遣の承認を申請いたしたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
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中山太郎#2
○中山会長 起立多数。よって、そのように決しました。
 なお、派遣委員の人選等につきましては、会長に御一任願いたいと存じますが、これに賛成の諸君の起立を求めます。
    〔賛成者起立〕
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中山太郎#3
○中山会長 起立多数。よって、そのように決しました。
     ————◇—————
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中山太郎#4
○中山会長 日本国憲法に関する件、特に二十一世紀の日本のあるべき姿について調査を行います。
 本日、午前の参考人として理化学研究所ゲノム科学総合研究センター遺伝子構造・機能研究グループプロジェクトディレクター林崎良英君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人のお立場から忌憚のない御意見をいただき、調査の参考にいたしたいと存じます。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 最初に参考人の方から御意見を一時間以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。
 なお、発言する際はその都度会長の許可を得ることになっております。また、参考人は委員に対し質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 御発言は着席のままでお願いいたします。
 それでは、林崎参考人、お願いいたします。
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林崎良英#5
○林崎参考人 おはようございます。理化学研究所から参りました林崎と申します。よろしくお願いします。
 まず、本日私が、お手元に配付いたしました資料を用意しました。ダブルクリップでとめてあります。二つになっていまして、先にある方がきょう使わせていただく資料でございます。後半の方は、最近の我々の研究活動についてのまとめみたいなもので書きましたので、御参考にと思ってつけさせてもらいました。主に前半の方の資料を使わせていただきたいと思います。
 まず、二十一世紀の日本のあるべき姿ということで、我々、特に私個人的には、ゲノム科学というライフサイエンスの領域で働いております。このライフサイエンスで、最近、我々の生活にまで影響を及ぼすような非常に大きな革新がありました。それについて説明をさせていただきまして、それで、今後こういう領域をどのように伸ばしていったらいいかということについて述べたいと思います。
 先日、二月の八日それから十二日ですかに、ライフサイエンスにおける、ゲノム科学における記念すべき二つの喜ばしい事件といいますか、アドバンスがありました。
 一つは、ヒトゲノムの暗号解読のドラフトといいますか、ほぼ九十数%解読が完了したというような学術論文でございまして、そういうものが発表された。これは国際的な協力体制、ヒトゲノムコンソーシアムと言いますが、そういう体制によってなし遂げられました。
 もう一つは、マウスなんですが、完全長cDNA、これは我々のグループがやった仕事ですが、理化学研究所のゲノム科学総合研究センターと、それが組織する国際コンソーシアムがあります。FANTOMコンソーシアムというコンソーシアムがあります。このコンソーシアムが、後で説明しますが、完全長cDNAというのは遺伝子そのものというふうに考えていただいたらいいんですが、そういうものを幾つか収集したという記事でございます。
 これらのゲノム科学の成果は、他のすべての科学、産業などの基盤になります。それで、国際社会における日本の発言力と競争力がこの領域のアチーブメントによって影響を受けます。自然に、それは我々にとって無関心であるわけにいきません。
 この発言力と競争力ということですが、競争力は、ゲノム科学をベースとしたライフサイエンスの産業とか科学の競争力そのものを言いますが、その力と、それから国際社会において競争する国際ルールを決めるための発言力のためには、国際競争社会の決定力を持つということで、国際的な貢献をしなければいけない。これは非常に相反する二つのことでございますが、こういう力の対比ということでこの領域の国の力が決まってきます。
 昨年、ヒトゲノムの配列が人類共通の財産であるということを、アメリカのクリントン大統領とイギリスのブレア首相が宣言を出しました。この宣言は、そういうものを共有の財産にするというルールを決めたということは、やはり国際発言力がその二国にあったということですが、私個人的には、できれば日本の首相も入ってほしかったわけでございますけれども、そういう力をやはりつけなければいかぬ。
 今、ゲノム科学とかそれをベースとしたライフサイエンスが革命の時期を迎えておりますので、そういう観点から物事を見ておりますけれども、一般に見まして、日本は二十一世紀には、国民生活を質的に非常に高水準に保ったり、それから高学歴の教育、そういうものを生かす生活をするためには、より付加価値の高い仕事、産業、そういう領域を与え続けなければならないというふうに私は考えます。そのためには、ライフサイエンスは高付加価値型産業をつくる膨大な未開拓領域を持っています。ですから、私どもは、こういう領域に日本としまして前向きに取り組んで、ぜひこれを科学と産業に生かしていきたいと思います。
 私の個人的な領域ですが、私はもともと病院で医者をやっておりましたので、そういうモチベーションでゲノム科学の領域に入ってきましたので、ゲノム科学と医学の領域の応用が、将来の日本にあるべき姿といいますか、そういうものを、私なりに個人的に私見を持っております。そういうものを述べさせていただこうと思います。
 では、最初の資料でございますが、実を言いますと、ライフサイエンスの話を一般に私どもがやりますと、非常に難しいと言われます。それはなぜかというと、一番最初にいろいろな用語が出てきます。それがなかなか入ってくるのが難しいようです。
 それでも、ここでそれを詳しくひもとくということはなかなかできませんが、基本的なところだけは少なくとも先にお話しさせていただかないと後がちょっと続いていきませんので、申しわけございませんが、最初の資料の一番最後の三枚カラーで書いてきました、これを用いて、ゲノムとは何か、それからcDNAとは何か、それからたんぱく質とは何かということについて説明させていただきます。それと、ヒトゲノムシークエンスとはどういうものであるかとか、完全長cDNAとはどういうものであるかということについて話をさせてもらいます。
 まず、これは予備知識なんですけれども、ヒトの子の顔が親に似る、その遺伝情報は、DNAという物質によって親から子に伝えられます。もともとそれはどこに入っているかといいますと、三つあるうちの一番目の資料なんですが、人体はもともと細胞が六十兆個ぐらいから成っています。非常に数が多いです。ほとんどの生命活動は、たんぱく質という物質によって担われています。たんぱく質というのは、二十種のユニットのアミノ酸がずっと縦につながったものです。そのつながり方によっていろいろな生命活動がなされます。そのつながり方が、親から子に伝える遺伝暗号で伝えられているわけでございます。
 そのつながり方というのは、今度は親から子に伝えるDNAはどこにあるかということですが、人体は六十兆の細胞から成るといいますが、細胞の中に核という構造体がありまして、そこの中に、学校で習う染色体という構造体があります。その染色体の中にDNAが入っているわけです。そのDNAがA、G、C、Tという四つの文字で書かれておりまして、これが約三十億並んでいる状況がヒトの親から子に伝わる遺伝情報でございます。この並びがほとんど解明されたということが今回の発表であります。
 その次に、では、これがどうしてたんぱく質になるかということですが、この三十億の並びの中から、何万個かの部分から、一たんDNAのA、G、C、Tという文字がRNAに書き写されます。RNAも四つの文字から成っています。この四つの文字から成るA、G、C、Tの三つずつの枠が、おのおの最終的にたんぱく質の二十種のアミノ酸に置きかえられていきます。
 次のページを見てください。
 ゲノムプロジェクトというのは、もともと染色体の中にあるゲノムDNAの配列をずっとA、G、C、Tの四種の文字を調べるところでありますが、それが一たんRNAになりまして、そのRNAがそのままたんぱく質になるのではありません、これは真ん中に要らない部分がありまして、この部分が抜き飛ばされます。これはイントロンという、これも非常に難しい言葉で申しわけございません、抜き飛ばされます。それで、成熟したRNAという物質になります。
 この成熟したRNAという物質が最終的にたんぱく質になるのですが、このRNAの配列がそのまま、生理活性物質であるたんぱく質になります。非常に重要なところです。ですから、これを解読するプロジェクトがcDNAプロジェクトといいます。cDNAというのは、RNAに相補的なDNAを合成していくこと、相補的、コンプリメンタリー、そのcでございます。cDNAといいます。
 ですから、ゲノムプロジェクトは、核の中にある染色体の親から子に伝わるDNAそのものの配列、それからcDNAというのは、たんぱく質になる部分の配列だ、遺伝子そのものだというふうに解釈してください。
 その昔、一九九〇年の初めごろ、アメリカはこのたんぱく質となる部分の情報が産業につながるというふうに考えまして、物すごい勢いでヒトのcDNAをどんどんとって、大工場をつくって解析していきました。
 ただ、そのころ日本はなかなかそういう活動に手つかずの状況でございまして、そういう意味では先を越された感があったのですが、そこでどういうことを考えるかといいますと、こういうcDNAを合成するときに、たんぱく質全長の長さをカバーするだけの完全な形、完全長といいますが、この完全長のcDNAを合成する能力が世の中にございませんでした。そこで、アメリカは、断片でいいから断片のcDNAをどんどん塩基配列を決めていこうというふうな戦略をとったわけです。
 一方、日本なんですけれども、その次の最後の三というところ、カラーの紙でございます。完全長cDNAをとっていく戦略に切りかえました。なぜかというと、断片のcDNAというのは、ばらばらですので、最終的にたんぱく質ができないとか、非常に全体の構造がわかりにくいということがあります。一方、我々は、この完全長cDNAというのをどんどんとる技術を開発してやってきた。そういうことで、今回の新聞をにぎわしました二つのニュースが出てきたわけでございます。
 時間がありませんので非常にざっとおさらいをして、わからないところだらけで本当に申しわけございません。ただ、こういうような世の中の活動があったということをちょっと心の中にとめておいていただければよろしいかと思います。
 この活動がなぜ我々の生活に影響していくのか、非常に重要です。また文字で書いたところに戻っていただきたいのですが、2のところです。「加速と統合に向かうゲノム科学をベースとしたライフサイエンスの変貌」というところが、六ページ中二ページのところにあります。
 このゲノム科学というのは非常に重要でございまして、ライフサイエンスのすべての基盤になります。これはなぜ重要か。ちょっと考えただけでいろいろな応用の分野があります。例えば創薬、医療、人の体質を判定したり、新しい種類の薬をつくることができるようになります。それから、新しい種の、例えば食料とかいうものができますし、また、環境に優しい産業、生物をつくることもできます。
 こういう非常に領域の広い基盤であるゲノム科学、すなわち遺伝子の取り合い、遺伝子の取り合いという言い方でちょっとざっくばらんに申し上げたのですが、こういうことで国際的な競争がありました。
 これは、まさにそれまでは生物の中では起きなかった現象であります。なぜならば、世界を見ていただいてもわかりますが、全部でどれだけあるかがわからなかったというときには、結構皆さんは自分の領域だけ守っていろいろやっているのですが、例えば国の領土でも、大航海時代があらわれて、地球上全体が有限の土地しかないということになると、領土争いが起きます。それと同じように、有限の個数の遺伝子しかないと思われますと、やはりそれをとりに行こうというのが、特許的に押さえようというのが普通の考え方であります。自然な考え方です。そこでそういう戦いが始まったわけです。
 次に、こういうような動きが出てきたということで、ライフサイエンスに非常に新たな局面が出てきました。これは、産業的にも新たな局面が出てきました。それが2の2のところでございますが、読みますと、「ゲノム科学をベースとした新しいライフサイエンスがもつ側面」ですが、それは、生物学をやるには生物学、医学をやるには医学だけやっていればいいというものではなくなってきたわけです。
 例えば、いろいろな分野が統合して手を結ばないと、その分野を推進することができません。これは学際的統合といいます。現に我々の研究室でも、私は医者ですし、物理をやっている人間もいますし、化学をやっている人間もいます、計算機科学をやっている人間もいます、みんなが集まってやります。
 また、産業上、統合現象というのが生じます。これはなぜかというと、そういう非常に広い分野をカバーしなければならないところに、試薬とか機械とかいうようなものを売っている企業が情報を得るようになり、最後には例えば製薬産業に変身するというような、産業界がより大きな領域をとらなければいけないということで、アメリカなどは非常に大きな大企業の合併が生じるようになりました。これは、産業の領域の統合だけでなしに、企業自身が大きく変貌していくというふうに、この巨大な情報と巨大なゲノム資源を有効に活用するために企業自体が大きくなってきたわけです。科学的にも、ゲノムセンターができ、一点集中型のそういう学問の遂行体系ができました。
 よく日本で、先ほども、乗りおくれたんではないかというような話がありますが、ある意味でイエスですし、ある意味でそうでもない部分もあります。例えば、今言いましたような、大企業がより大きくなって統合していく、それでゲノム科学全体をカバーしていくような戦略というのは、現在のところ日本ではまだ見られません。また、最終的に、後でまた申しますが、社会経済構造、こういう領土争いをしたのは主にアメリカのベンチャーです。日本でそういうベンチャーが育成されるような社会構造があったかというと、かなりこれは厳しいものがあります。税法上の問題とかいろいろ厳しい問題があります。そういう意味で、非常に日本が不利になったという面がございます。
 あともう一つは人材であります。人材に関して、教育システムがこれもまた問題であるということで、次に三の「教育行政」のところにちょっと移らせていただきたいと思います。
 この新しいライフサイエンスとか新しいこういう産業を乗り切っていくためには、従来の教育システムでは出てこない人材が必要になってきます。これは非常に重要なポイントです。例えば、そこに「ポリシーを持ったデザイナーとリーダー」と一番最初に言っていますが、やはりこういう戦略をつくっていこうと思いますと、ある一貫したポリシーを持って戦略全体を進めていかなきゃいけない。非常に正しいところに着眼してやっていく、決断する人間が必要である。まずそれが最初に必要です。
 それからもう一つは、学際領域の研究者が必要です。例えば、日本ではバイオインフォーマティストというんですが、情報処理の技術を持っているだけではだめで、生物学もわかっていなきゃいけないし、医学もわかっていなきゃいけない。でないと、大規模な情報の山の中から、薬になるところとかそういう正しいデータを掘り起こしていくことはできない。ですから、学際的な研究者とか技術者が必要になってきます。
 それからもう一つは、さらにも増して、これが産業につながるためには、ビジネス教育を受けた優秀な科学者が必要になってきます。これは、自然科学の学部を専門のコースとする人たちが、ただ現在のコースを卒業しただけでは全然だめで、卒業してこういう領域に入ってくると、特許法とか特許の実践とか企業化論とか、もう本当に見たことのないような、これは全然違う領域でございます。それで、両方がわかっていないとやはりこういう領域を戦っていけない。
 それからもう一つは、知的所有権の問題がございますが、これを戦い抜くためには、やはり戦略的な観点を持った弁理士がいないといかぬ。こういうような人材を育てるためには、特許法を勉強して弁理士資格を取っただけでは全然不十分で、例えば医者のバックグラウンドを持っているとか、分子生物学のバックグラウンドを持っているとかいうような人がそういう弁理士になってもいいかなというふうに私は考えます。
 五番目に、それで実際特許を取ったとしても、それから実際の産業を起こしていく上でかなりのバリアがあります。こういう業界を、これは私の造語なんですが、業を起こす産業として起業産業と呼んでいるんですが、この起業産業家、これはベンチャーキャピタルからスタートして、それだけじゃありません、もうずっと最終的に会社の経営に至るまで、こういうようなところの人材がやはり日本では不足しています。
 それから、あともう一つは、こういうライフサイエンスが、ゲノム科学が出現してきましてから、高度な技術者とか特殊な技師が非常に必要になってきます。こういうものが、やはり人材が足りません。
 まして足りないのが精神教育です。アメリカはよくアメリカンドリームとかいいますが、どうしてジャパニーズドリームとは言われないのかとよく思うんですが、やはりこのライフサイエンスの中で成功する人物が必要になってくる。非常に成功するところですね。この中では、新しい分野を本当に切り開くという人材は物すごくよく働きますし、ハングリーな若者が多いです。そういうのを育てるといいますか、時にはそういう人たちは社会の構造の中にちょっと溶け込めないようなところもあるかもしれませんけれども、そういうような方を、非常によく働く、ハングリー精神のある人材を次のクオンタムジャンプを起こすための人材とする、養成するというような風土が必要じゃないかと思います。
 それから、もう一つなんですが、例えば国研とか大学とかそれから特殊法人とか、そういうところの研究でこういう領域をやるためには、やはりどうしてもトップダウン的に予算が決まっていくようなケースもあります。プロジェクトも決まっていきます。ですから、基本的にこういう価値の自己における評価基準を持つ行政官、事務官なんかは必要になってくるというのがもちろんそうです。
 私、ちょっと、ぱっとこういうことを聞くと思うのは、例えばジョン・F・ケネディ、彼は偉大な発明をしたという話を聞きました。それは、ノーベル賞をとったメセルソンという科学者がいますが、その現役の科学者を即自分の補佐官にしてしまったということで、即決できるような状況を彼らはつくった、これはJFKが初めてだそうです。
 それ以外にも、こういうような人々を養成できる教官、教師自体が現在非常に少ないです、いません。こういうような人材はアメリカには非常に豊富です。また、こういうカリキュラムとか学校、こういうようなものをどんどんつくっていくということも重要なことですが、残念ながら日本にはこういうことを意識した教育システムがありません。本当にこういう学校は、例えば地方大学とか、各県に一校ずつ、かつての医学部のようにあってもいいんじゃないかと僕は思っています。そのような人材を確保した、要するに、こういう問題というのは、行き着くところは人にあり、人材にありというふうに私は考えております。
 さて、次の話題に行かせてもらいますが、最近もう一つ注目しなければいけないところがあります。それは、いかにこの領域、非常にハイテクと呼ばれる領域ですが、この領域はすべて特許によってその企業活動が守られます。その特許というのは、このゲノム科学とか新しいウエーブのライフサイエンスが起きてから、全然異なったタイプの特許が出てきています。
 それは、例えばゲノムの遺伝暗号をそのまま特許に取ろうとする動きが、初期のころ日本もありますが、アメリカにあります。それが特許になるかどうかということで今大問題になっておりますが、そういうものとか、それから、たんぱく質の構造、この構造というのは、さっき言いましたアミノ酸の配列だけでなしに、三次元の形、こういう形をしているからそういうたんぱく質が機能を持っているんだというようなことでございますが、そういう三次元構造の座標の特許、そういうようなものが特許として認められるのかというのが問題視されました。
 こういうDNAの配列の特許がなぜ問題視されるかというと、これをばっと取られてしまいますと、そこから後の創薬とか、全部その中にひっかかってくるわけですね。それで大問題になりました。
 また、特許としての質の違いはどこにあったかといいますと、昔から、特許というのは、例えば物質特許といいますと、新しい化学物質をつくって、それの新規性と有用性と進歩性を認めるというようなところに特許の話があったんです。それで、物質に対して特許を与えるというようなところが特許の基本的な考え方です。当然、用途特許とか方法論特許とかありますが、物質ということが基調になっています。ただ、ゲノムの価値というのは、物質というより、DNAに書き込まれている情報そのものが非常に重要な価値なわけです。ちょっと従来のものとは違った質になってきたわけですね。
 そこで、アメリカの方は当然、先ほど言いましたように、歴史的にcDNAをたくさん見るとかゲノムをたくさん見るとかいうようなことが先行しておりましたので、こういうような特許をベンチャーを中心として取りまくったわけです。私たちは、結局、その後特許庁会議があり、いろいろありまして、DNAの配列とかたんぱくの三次元構造だけでは特許を認めない、ほぼそういう方向で行っています。それは、新規性と有用性と進歩性、三つの特許を満たす条件のうちの有用性が、遺伝子の機能を見ないと、有用性が解かれなければならない、そうでなければ特許として成立しないというふうになったおかげで、日本としてはそれで一つ安心をしたという形になります。というのは、こういう特許出願を先行したのはアメリカが中心だったからです。
 ところが、最近ちょっと私が問題視していますのは、このDNAの配列とかいうことの機能をコンピューターで予測する、それで機能をつけ加えて有用性として特許を認めるというような形がだんだん出てきています。このコンピューター予測というのは、予測は予測でございまして、現実かどうかわからないのでございますが、そういうようなものをベースとして有用性を認めて特許を認めていくということになってきますと、これは従来の特許論争がまた巻き起こるんじゃないかというふうに、現在けんけんごうごうと議論されているところだと思います。非常に重要なポイントです。
 その次、五番目ですが、技術ということについて言います。
 日本だけでなしに、世界のすべての技術が、こういうゲノムもしくはライフサイエンスの将来のポストゲノムの産業とかを支配します。一般に、科学は技術が到達すべき水準を規定します。また、技術は科学が到達できる水準を規定します。お互いに科学と技術は車の両輪でございますが、技術はやはり科学を引っ張っていく上で極めて重要です。DNA解析技術、たんぱく解析技術、このような技術の基本特許が、これまた残念ながらアメリカから出願されているケースが多いわけです。やはりここは、我が国としても非常に力点を置いて頑張らにゃならぬというふうに考えるところでございます。一番重要な点は、研究者のアイデアとか着眼点は重要でございますが、こういう非常に重要な技術が一つ出ますと、分野そのものが、新しい分野が開ける。科学分野もそうですし、産業市場も新しい分野が開けます。ですから、この技術ということについては、非常に重要に力点を置かなきゃいかぬというふうに思います。
 また、最近、アメリカは、実例としまして、二週間ぐらい前ですか、重点的技術のセンターをつくるというふうな記事が出ていました。これはやはり、重点的センター化を一部図らねばならないんではないかというふうに私は考えております。
 さて、こういう一連の話をしまして、次世代の科学行政が、じゃ、こういうバックグラウンドにどういうふうにしたらいいかということについてなんです。
 六番目の話題ですが、ここ最近、ライフサイエンスに対して日本の国の中でも、世界は当然なんですが、非常に大きな投資がなされています。この投資は、成功したのかどうなのか、そういう結果が出るまで結構時間がかかるということで、皆さんの生活が即変わるような産業がすぐ起きるかというと、そう早くは起きないんですが、ただ、私が考えまするに、国としてライフサイエンスの投資を行うことは断じて正しい選択であるというふうに思います。
 各論で、事細かいところで、もしくは局地的、近未来的にはいろいろ方針が揺れたりすることもあるかもしれませんが、この領域は、爆発的な科学的産業的市場をもたらします。それはもう確定的です。ですから、こういうところに投資をするということは断じて正しいというふうに私は考えております。
 その基本となる、力を入れるポイントなんですけれども、二つございます。ちょっとここには細かくは書きませんでしたが、一つは、生体内にあります主要構成分子、特にゲノムそれから遺伝子、遺伝子というのはcDNAですね、それからたんぱくを大まかに解明して、そのほとんどを網羅的、横断的に収集する、まずそういう基盤をつくるというようなアプローチがあります。これはまさにゲノム科学なんですが、こういうやり方というのは、現在のところ非常に大きな勝利をおさめております。
 こういう網羅的に実行するというやり方、その次のターゲットは何かといいますと、今度は、その三つの構成成分が一体おのおのどのように関連し合っているかということを見つける。これは遺伝子のネットワークですけれども、こういう領域がその次のターゲットになります。これは明らかにそうだというふうに判断されます。
 それはなぜ重要かといいますと、例えば、薬が何か効くという観点を見ますと、薬の作用点は必ずたんぱく質であります。遺伝子の産物です。ですから、その遺伝子のどの産物に対する薬をつくればいいかというターゲットを絞り込むためには、自分たちが開発したい薬の効かせたい症状とか病態、それに関与するたんぱく質がどれであるかということを明らかにして、そのネットワークを調べて、それのターゲットを決定してから薬の開発をする、ブロッカーの開発をするというようなことがその次のターゲットとなります。
 当然、そういうふうな領域というのは新技術が必要でございます。先ほども言いましたように、技術開発の力点というのが重要になってきます。それが六番目に言うことでございます。
 最後に、これは、私は本日どの程度お話ししていいかちょっと決めかねましたので、ここで決めて話をしようと思ったのが、倫理の問題でございます。
 ゲノム科学もしくは自然科学、それは、遺伝情報を解読して、体の中にどのような主要構成成分があるか、その主要構成成分全体を眺めまして、そのおかげでどのようなメカニズムである病気になるとか、それから、例えばがん一つをとってみましても、がんという非常に重大な病気は、まずがんになるそもそもの遺伝的な体質というのがやはりあります。例えばそういうようなものを判定したり、判定するというのは、個人の利益につながるような使われ方をしないといけないんですが、予防医学的に使ったり、それから、一たんそういう病気が発症したときに、その予後を判定するためにそういうゲノムの情報を利用して個人個人の診断をするということが非常に重要になってきます。
 一般的に、医学を考えますと、こういう個人の利益のために診断をする、情報を得るということは非常に重要なことでございますが、一たんこれが間違った方向にいきますと、やはり個人のプライバシーを侵す大問題になります。
 例えば、実際起きている事象、これは日本じゃありません、アメリカなんかで起きている事象でございますけれども、遺伝病の診断をしますと、お父さんが発症するとかいうようなことがありますと、その子供を非常に正確に、的確に、その本人の発症等を予測、言い当てることができるようなケースがございます。一たんそれが、例えば保険がそのリスクを回避するためにそういうような情報を得ようということになってきたりしますと、非常にこれまた大問題が生じます。
 そういった意味から、こういう科学を進めるということは非常に重要なことで、ぜひ人類がやらなくちゃいけない、それからまた、人類の福祉とか我々の国民生活の質的な向上のためにぜひやらなければいけないことであるということは間違いないんですけれども、それの使用法、そういうところをやはりきっちりと考えてやっていかなければならないということだと思います。
 今ちょうど、ヒトゲノムのドラフトシークエンスが出て、完全長cDNAのシークエンスが出たというような岐路に現時点において我々は立っている。これは今現に、新しいライフサイエンスの産業をつくる、もしくはライフサイエンスの学問を追求するという新しい戦いがもう既に始まっています。こういう時期に来て、まさに、これらの後にどのような科学とか行政、産業が求められるかということをもう一度見直して、皆さんで考える時期が来たのだというふうに考えております。
 ちょっと早いですが、中山先生初め憲法調査会の先生方に、本日お話をさせていただく機会を与えてくださいまして、非常に深く感謝します。ありがとうございました。拍手
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中山太郎#6
○中山会長 以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。
 速記をとめてください。
    〔速記中止〕
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中山太郎#7
○中山会長 速記を起こしてください。
    —————————————
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中山太郎#8
○中山会長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。三ッ林隆志君。
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三ッ林隆志#9
○三ッ林委員 自由民主党の三ッ林隆志でございます。
 きょうは、林崎先生には、二十一世紀の日本のあるべき姿についてということで、ヒトゲノム解析を通して貴重な御所見をお述べいただいたことに、まず感謝申し上げます。
 そして、まず最初お聞きしたいのが、お話の中にもありましたけれども、科学技術の戦略、今まで第一段目が終わってこれから第二段目というふうに言われておりますけれども、そのヒトゲノムの最初の解析に関して、我が国は米国やイギリスとかの欧州には相当の差をつけられて、日本が担当したのが五%とか七%とかというふうに言われております。そして、アメリカのプロジェクトなんかでは、予算の規模とか動員された研究者の層の厚さとか、民間企業の関心の強さ、先生のお話の中にもありましたが、相当なものだったと聞いております。
 これからヒトゲノム解析の意味のある構造とその働きの解析が始まるので、これが日本にとってはまだこれからスタートできるよいところだというふうにも言われていると聞いておりますけれども、そして、現在のところ、日本はそれではまだまだ世界をリードしているところがある、またそこに先生がいらっしゃるというふうに思っております。
 そこで、今までの第一ラウンドのようにならないで第二ラウンドを勝ち抜いていくためには、世界のトップを目指していくためにどのようにやっていくかということと、それからまた、人材のお話もありましたけれども、各県に大学を設置というふうな案もお話の中にありましたけれども、研究者の育成とそれを教育する教員なんかの問題というふうなことについて、その二点についてお話を聞きたいんですけれども、よろしくお願いします。
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林崎良英#10
○林崎参考人 最初の御質問でございますが、日本が今後この領域でどのようにして勝っていくかということですけれども、ライフサイエンスの、このゲノム科学をやっていて非常におもしろかった点というのは、最初はこういうゲノムという有限のものがありまして、それをどこの国が何%とるかというような、そんな話に終始しておったんですけれども、ふと気づいてみますと、これは囲碁ゲームと同じで、囲碁は盤上のどれだけとるかという話ですが、ふと気づくとその盤上は自分が見ていた盤上じゃなくて、それより広い、例えばこの部屋ぐらいの盤があった。シークエンスということだけ見ていると確かにそこだけなんですけれども、まだまだ広いところがあります。それをまた、特にアメリカなんですけれども、非常に速い勢いで新しい領域を食っていっているというところがあります。
 ですから、私が思うに、産業をつくるにしても、科学分野を開拓するにしても、新しい領域といいますか、領域丸ごと初めて着手できるような分野をつくるというのが、これは非常に重要なポイントです。それが一つ。
 もう一つは、例えばある限られたものを日本がやったりアメリカがやったりする。cDNAをとってみたり、ゲノムをとってみたり、たんぱくをとってみたりするようなケースなんですけれども、そういうようなケースは、全部とろうと欲張るとだめだと思います。ある一部、自分たちが非常にフォーカスする領域をつくって、担当を分けると言うのもおかしいですが、全部をとるというのはやはり非現実的である、フォーカスするべきであるというふうに考えます。
 それからもう一つは、そういうことを実際ある領域で勝とうと思いますと、やはりベースになるのは技術でございます。そういった意味で、技術というのは、具体的に科学を追求するよりも一世代前の段階で先に技術を開発してから、それがその後での応用というところで利用されるわけでございますから、一世代先、二世代先の技術開発をやはり早急に着手すべきである、ポストゲノムではなくて、ポストポストゲノムぐらいのものを考えるべきであるというふうに思います。それが何かというのは、おのおのの領域によって違うと思います。
 それからもう一つは、人材の確保ということを御質問されたと思いますけれども、やはり人材の層の厚さの差がこういう領域の差に反映しているのは明白でございます。
 残念ながら、いかに一気に投資しても、人だけは、研究者を育てようと思ってやるには、大学院を卒業していただくために修士は二年かかりますし、ドクターコースは三年か四年かかります。そればかりはさすがに早くならない。それは仕方がございませんので、その場合は、ちょっと長期的な感覚で、先ほど大学のカリキュラムの話もしましたけれども、中期的にそういうものを手当てしていく方法と、それから日本の国の中にそういう領域で働く若い人たちを教育するといいますか、トレーニングするようなシステムは、やはり十年先以上を見据えてスタートしなきゃいかぬというふうに考えます。
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三ッ林隆志#11
○三ッ林委員 またちょっと引き続き、先ほどの質問とつながるのですが、これからのポストゲノムの第二段階ということで、二月の発表などでは、今までたんぱく質十万種というふうに言われていたのが、コンソーシアムの発表などでは三万一千種とか、民間企業の方でも似たような数字ということで、今まで思われていたものの三分の一とか二分の一くらいというふうなことになっていると思うのですけれども、ポストゲノムの戦略的推進に関する懇談会というところで提言をしておりまして、五年間で日本は三千種のたんぱく質を目標としているというふうなのをちょっと読んだのです。もともと十万種あるもののうち主なもの一万種の中の三千というふうな考え方で決められたと思うのです。
 今回、その三万ちょっとというふうな実際の数字が決まると、それによって、どれだけの種類を日本として扱おうかというふうな戦略も変えていかざるを得なくなるのじゃないかという気がしたのですが、その辺に関しての先生のお考えをお聞きしたいのです。
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林崎良英#12
○林崎参考人 まず、遺伝子の総数の問題ですけれども、遺伝子の総数とたんぱく質の総数は異なります。それはどうしてかといいますと、遺伝子の定義の問題にかかわってきます。
 遺伝子の定義というのは、先ほどゲノムの配列というのがありましたが、そのゲノムの配列の一カ所から出てくるわけですが、一カ所から出てきたたんぱく質の形が異なるケースというのが非常にたくさんあります。そういうものをまず考えますと、たんぱくの種類は必ずしも三万ではないということが一点。
 それからもう一点は、では遺伝子の総数そのものは本当に三万何千ですかというと、それも、現在その数を推定しているのは、今までとられてきたcDNAのかけらの数と、かけらのデータベースがあります、それと、あともう一つはコンピューターで予測するという二つがございますが、ある定義をしたときにそういう数字が出てくるということだけでございまして、実際問題はそれよりもまだ未知のものが必ずあります。それがまた学術論文で出てきております。
 ですから、遺伝子の総数の問題は、余り短絡的に考えられないというのと、それがたんぱくの数を直接反映しませんので、それが一万だからどうという、そこのつながりは僕はないと思います。
 あと、もう一つは、なぜ三千かということなんですけれども、アメリカが一万やると日本が三千かというと、まあ三〇%ぐらいだろう、そういう感覚で決めたことなのかもしれませんけれども、三千の中身が僕は一番大切だと思います。
 数を決めればいいというのではなくて、それが創薬に結びつくたんぱくを決めるとか、本当に一個一個の価値といいますか、遺伝子とたんぱくの情報の価値は学問的産業的価値が遺伝子によっては全く異なります。非常にピンキリなんですね。ですから、この三千というのは、別に私としては少ないというふうには思いません。
 それよりもむしろ、三千の中身を、より価値の高い三千をいかに選ぶかということの方がはるかに重要なポイントではないかというふうに思います。
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三ッ林隆志#13
○三ッ林委員 では次に、ヒトゲノム解析の進行と並行して、特定のゲノムの配列の中に、ただいまお話の中にもありましたけれども、創薬にかかわる情報等や、疾病の原因となるいろいろな要因というものがあるわけですけれども、それらを最初に特定できた者が知的所有権を持つ、またそれが保護されるというふうなことになれば、膨大な権利がその後に出てくるわけで、遺伝子情報を権利として保護するかどうかというような問題は当然あると思います。
 これが本来、自然の営みを明らかにする中で、研究成果の権利保護が余り強くなってしまうと、基礎研究の方などにかなり影響してくるのではないかということがちょっと心配されているのじゃないかと思うので、基礎と応用あるいは実用の研究が並行していってしまった、線引きをわざわざするということはほとんどできない環境になっているのだと思います。
 従来の研究の歴史の中で経験しない新たなそのような研究成果の権利の保護と、それから基礎研究推進との調和、これに対する先生の御意見をお聞きしたいと思います。
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林崎良英#14
○林崎参考人 まず、産業的な知的所有権を出すための、そういうタイプの研究と、それから基礎研究の二つのことを、バランスの問題をおっしゃいましたが、まさにそれは重要なポイントであると思います。
 必ずしもこのゲノム科学とかいうような領域が、現在においてこれだけ、世の中を騒がせているといったらあれなんですけれども、いろいろ言われるのは、当然科学的に非常に重要です。それは間違いないのですけれども、絶対に産業的なインパクトがあるということは間違いありません。
 ややもすると後者の方が非常に先走り過ぎて、基礎科学としての重要性というのを落としてしまう。それは一体何に影響するかというと、基礎科学として非常に重要なポイントというのは、特許になって、直接産業にならないかもしれないけれども、その基盤というのが、その次のまた基礎科学もしくはその次のまた産業を生むということがよくあります。
 ですから、目の前のそういう産業化のみに走る、それも重要ですけれども、やはりこれはバランスの問題だと私は考えております。
 それから、権利の保護のことをおっしゃいましたけれども、この権利の保護というのは、保護されるべき権利と、それから、これはちょっと権利としては認めるべきではないのではないかという権利とがその中身によって変わってきまして、そこの判定方法に関してはかなり明確な基準を僕は出すべきではないか。これは多分特許庁の問題であると思いますけれども、そういう保護をする方法とともに、何を保護して何を認めて何を認めないかというようなことを、やはりその基準を、私ちょっとさっき陳述しましたように、そこのところを明確にすべきじゃないかというふうに考えます。
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三ッ林隆志#15
○三ッ林委員 では次に、このヒトゲノムの解析が進むということは、非常に大きな社会的な変化というのも引き起こしてくるのではないかというふうに言われておりますけれども、現在の日本が科学技術の恩恵にかなり浴しているというふうに言われておりますけれども、また一方、環境問題のように、科学技術の発達が、最初は考えていなかったいろいろな問題も引き起こしている。環境ホルモンとかもありますけれども、そのようなことも事実であります。
 ヒトゲノム研究の推進というのが、今後、創薬や個々人の遺伝情報、それらに基づく医療の実現等、それから遺伝子治療などが考えられておりますけれども、その反面、当初予想できなかった問題が発生するというふうなことも可能性としてはあるんじゃないかと思いますが、こうした問題に対する研究のあり方ということもあわせてお聞きしたいと思います。
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林崎良英#16
○林崎参考人 予想しなかったということでございますが、まず、ゲノムのシークエンスが出てきたということで、世の中が非常に変わるのは間違いないのですけれども、その変わるという意味合いがよく誤解される点がございます。変わるとおっしゃったので、ちょっとその辺を先に指摘したいと思うのです。
 一九九五年に、インフルエンザ菌という菌の全長の配列が出ました。それはゲノムDNAの全長の配列がわかった最初の生物だと思うのですけれども、その配列が出たからといって、そのインフルエンザ菌の生命現象が全部わかったかというと、今と一九九五年との理解がどう変わったかというと、余り変わっていないような気がするのですね。それはなぜかというと、暗号が全部わかっても、それらが一体どういう機能をしているかということの研究は、そこから先の話なんです。ですから、社会的変化は、そういうのを一個一個解明していった末にやがてわかってきます。
 ですから、やってみて予想しなかったことが起こるケースというようなことをちょっと御指摘されましたけれども、それは各論をこれからやってみないとわからないんじゃないかというふうに思います。
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三ッ林隆志#17
○三ッ林委員 続きまして、ヒトゲノムの研究はこれから、今のお話もありましたように、生命のなぞや人間が人間たらしめられている仕組みを解明していくということになると思います。ただ、人の遺伝子は生まれたときからずっと変わらないわけで、それが解明されて、人それぞれの将来が場合によってはその疾患などによって予測されるというふうな事態も想定されています。
 このため、昨年の六月に、科学技術会議の生命倫理委員会では「ヒトゲノム研究に関する基本原則について」というのを決定して、ヒトゲノム研究が疾病の治療というものに大きく貢献する一方で、人の尊厳と人権が損なわれる危険性を持つものであることを指摘するとともに、ヒトゲノムは、人類の遺産であり、人としての存在の生物学的基礎であるが、人はゲノムによって存在が決定されているものではないとしております。
 しかし、このヒトゲノム研究の推進は、今は、神の領域に踏み込むものであるとの懸念の意見もありますし、憲法が定めている基本的人権の尊重が侵害されるおそれも否定できないというふうにも言われておりまして、これらに関して、先生の御意見をお聞きしたいと思います。
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林崎良英#18
○林崎参考人 ヒトゲノムの標準的な配列の暗号解読、これは非常に慎重でなければいけないのですけれども、比較的問題になるケースが少ないと思います。一番問題になるのは、個人個人の配列情報です。個人個人というのは、患者個人とか、そういう診断を行う対象となるその人の配列が非常に問題になります。
 生命倫理の基本原則に記してありますように、尊厳を守らなければいかぬ、おっしゃるとおりでございまして、その個人個人の遺伝暗号、DNAの配列を個人の利益につながるために利用し、それ以外には一切使われてはならぬということはやはり基本原則でございまして、そこはもう周知徹底すべきだと思います。
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三ッ林隆志#19
○三ッ林委員 そこで、私も今小児科医をやっておりまして、中には遺伝子異常の患者さんもかなりいらっしゃるし、診断はついても治療もできない、対症療法しかないというふうな患者さんもかなりいらっしゃって、遺伝子診断というものがだんだんと行われるようになっております。
 そのような中で、中山会長なんかが昨年いらっしゃったスイスの憲法の中には、人間の遺伝的形質の検査とか、それの公開とかに関しての規制というものが憲法として載っているということですが、日本において、このような個人の遺伝的なもしくは疾患にかかわる情報、先ほど先生も保険の問題とかもおっしゃられましたけれども、そのようなものは法律もしくは憲法というふうな形で制限をされるだけ重要な問題であるのではないかと思いますけれども、それに関して先生の御意見はいかがでしょうか。
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林崎良英#20
○林崎参考人 重要な問題であると思います。重要な問題であるかというお尋ねですので、重要な問題であると思います。
 それの規制ということなんですけれども、個人の尊厳を脅かすようであってはいかぬ、そういうのは当然法律的に明確になっていればよいことであるというふうに思いますが、今度は逆の立場で、不必要に、全然問題が生じるはずがないようなレベルでそれが規制になって科学技術の発展を阻害しますと、逆に、これはまた人類の福祉に対して反対の方向に働きます。
 ですから、そこの問題をやはり私はバランスの問題であるというふうに解釈します。あるレベルで法律的に何か記述があるということであれば非常に明確でございますので、そこは慎重に明文化していただくということはよいことではないかと思います。
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三ッ林隆志#21
○三ッ林委員 それから、またこれからのということで、一万種、日本としては三千種のたんぱくというものの構造と機能を調べていくというふうなお話がありました。最初のヒトゲノムの解析なんかでは、戦略的に日本は欠けたところがあって、かなり欧米に出おくれたというふうなことがありまして、今回はそんなことがないようにということで、ポストゲノムの戦略的な推進に関する提言というのが出ていると思いますけれども、先生としては、その提言にもう少しこうしてほしいとか、政府もしくは私たち政治家がもう少しこうするべきだというふうな御意見がありましたら。
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林崎良英#22
○林崎参考人 それは、その三千種のたんぱくということをお尋ねされているのでしょうか。
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三ッ林隆志#23
○三ッ林委員 いえ、そうじゃないです。これからの戦略的な考え方ですね。技術的なものとか、もしくは政府とか、サポートの問題であるとか、それに関して、今提言されているもののほかに、もし先生がもう少しこのようなというふうな御希望とか御意見があれば、お聞きしたいというふうに思います。
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林崎良英#24
○林崎参考人 今たんぱくの話が出ましたけれども、たんぱくまで、この三千種というようなところまでやりますと、それで一体何がわかるかというと、やっと生体の三つの主要構成成分がそろうという形になります。
 先ほど言いましたように、インフルエンザ菌の話をしましたが、それが全部そろって一体何がわかったかというと、それだけでは結局、機能研究になっていかないわけです。あともう一息です。
 要するに、何が言いたいかといいますと、産業とかそれから学問的に目に見える何かを、何かというのは成果ですね、出すためには、そういう機能というものを追求しなきゃいけない。生物の機能を追求するためには、構成要素が全部そろっただけでは、必要条件であるんですが十分条件ではありません。ぜひ、十分条件にまで持っていくための機能研究のために、網羅的にやるためには遺伝子のネットワークしか次はないんですけれども、そういう方向というのは当然力を入れなきゃいかぬというふうに思います。それから、先ほど言いましたように、そういうのを推進していくためには技術が絶対重要です。ですから、やはり技術とそういうネットワークや機能的解析、そういうところに重点的に力を入れていかなきゃいかぬというふうに私は考えます。
    〔会長退席、鹿野会長代理着席〕
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三ッ林隆志#25
○三ッ林委員 ちょっと質問の残り時間も少なくなってきましたので、一つ、きょうのお話の中にはなかったんですが、私が読んだ資料の中にジャンクDNAというふうな記述がありまして、コンピューターなんかいじっていれば、ジャンク屋さんに行って、その人にとっては非常に価値のあるものが見つかったりというふうなこともあるので、ジャンクDNAというふうな言われ方をしているのだと思うんですが、ジャンクDNAに関して、現在それに対していろいろ研究がなされているのか、もしくはそれに対する先生の考え等がありましたら、ひとつお聞かせください。
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林崎良英#26
○林崎参考人 ジャンクDNAというのは、いろいろなところでそういう研究者の方々がお使いになられて定義がはっきりしておりません。その定義によっていろいろ変わると思うんですけれども、ある使われ方の一つには、ゲノムDNAの中でたんぱく質やRNAにならないところをジャンクと呼ばれている方がおられます。
 もしその定義だとしましたら、その研究というのは、先ほども言いましたが、直接例えば即産業とかそういうものにはひょっとしたらつながらないかもしれないけれども、非常におもしろい生命原子を持っている、先ほど基礎研究という話がありましたが、まさにその対象になるような領域だと思います。そういった意味から、そこの領域というのは未知で、何をやっているかわからないところがありますので、今後の研究対象としては非常におもしろいと思います。
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三ッ林隆志#27
○三ッ林委員 では、本日はありがとうございました。時間になりました。以上で私の質問を終わります。
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鹿
鹿野道彦#28
○鹿野会長代理 中川君。
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中川正春#29
○中川(正)委員 民主党の中川正春でございます。
 きょうはありがとうございました。非常に刺激的に聞かせていただきましたのと同時に、正直、私自身も自分がどこまでわかっているのかわからないという分野でございまして、そういうことを前提にしながら、私自身の頭の中を整理するためにも少々質問させていただきたいというふうに思います。
 私がお話の中で理解をさせていただいたのは、どうもゲノムというのは三つのステージがあるんじゃないか。一つは、ゲノム自体の配列をいわゆる単純な情報として明らかにするというプロセスが一つ。それからもう一つは、それが何を意味しているかという、先ほどお話が出ましたが、それぞれのゲノム配列が持っている意味、これを解析していくという作業がもう一つ。それから、それを解析していくと同時に、今度は、その中身を活用して、新しい私たち人類のもう一つ次のステージといいますか、病気ということだけじゃなくて、恐らくもっと広い分野にそれが応用できるんだろうと思うんですが、それをコントロールしていく、また新しいものをつくり出していくものに使っていくという、その三つのステージがあるんだろうというふうに私なりに理解をさせていただきました。
 その上に立って、まず最初にお聞きをしたいのは、最初の、情報そのままを理解するというのが九九%開いてきたということでありますが、ここで二つの問題を教えていただきたいんです。
 一つは、その過程の中で日本がおくれたということが指摘をされました。これは、具体的にどこまでおくれていて、何をもっておくれたというのか。このおくれというのは、もう一つ、次の質問にかかわっていくわけですが、これは国家戦略としてアメリカが、最初プロパテントでパテントを非常に積極的に展開していきながら国家戦略を立てたわけですが、それに対して途中で変わって、この分野についてはパテントを与えません、これは人類共通の情報でありますということになりましたね。
 そういう意味からいって、ここはもうイーブンになったのか。日本はちょっと解析することはおくれたけれども、今度は同じ踏み台に立って次のレベルへ行けるのか、それとももうそこでおくれを取り戻すのは難しいのか。その中身がもう少し私も理解しがたいところがあるんですが、わかりやすく教えていただけませんでしょうか。
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