農林水産委員会

2002-11-21 参議院 全346発言

⚠️ 発言のコピー・転載時は出典元URL(kokkai.ndl.go.jpおよびkokkai-data.com)を必ず残してください。改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

会議録情報#0
平成十四年十一月二十一日(木曜日)
   午前九時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 十一月十九日
    辞任         補欠選任
     松山 政司君     青木 幹雄君
 十一月二十日
    辞任         補欠選任
     青木 幹雄君     松山 政司君
 十一月二十一日
    辞任         補欠選任
     市田 忠義君     富樫 練三君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         三浦 一水君
    理 事
                国井 正幸君
                田中 直紀君
                常田 享詳君
                和田ひろ子君
                紙  智子君
    委 員
                岩永 浩美君
                太田 豊秋君
                加治屋義人君
                小斉平敏文君
                福島啓史郎君
                松山 政司君
                郡司  彰君
                信田 邦雄君
                羽田雄一郎君
                本田 良一君
                日笠 勝之君
                渡辺 孝男君
                富樫 練三君
                岩本 荘太君
                中村 敦夫君
   衆議院議員
       発議者      金田 英行君
       発議者      江田 康幸君
       発議者      今村 雅弘君
       発議者      宮腰 光寛君
       修正案提出者   金田 英行君
       修正案提出者   江田 康幸君
   国務大臣
       農林水産大臣   大島 理森君
   副大臣
       農林水産副大臣  太田 豊秋君
   大臣政務官
       農林水産大臣政
       務官       渡辺 孝男君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        山田 榮司君
   政府参考人
       農林水産省生産
       局長       須賀田菊仁君
       農林水産省農村
       振興局長     太田 信介君
       食糧庁長官    石原  葵君
       林野庁長官    加藤 鐵夫君
       水産庁長官    木下 寛之君
       国土交通省都市
       ・地域整備局下
       水道部長     曽小川久貴君
       国土交通省河川
       局長       鈴木藤一郎君
       環境大臣官房廃
       棄物・リサイク
       ル対策部長    飯島  孝君
       環境省総合環境
       政策局長     炭谷  茂君
       環境省環境管理
       局水環境部長   石原 一郎君
       環境省自然環境
       局長       岩尾總一郎君
   参考人
       日本大学生物資
       源科学部教授   岡本 雅美君
       有明海漁民・市
       民ネットワーク
       顧問       錦織  淳君
       長崎県森山町長  田中 克史君
       日本海洋学会名
       誉会員      宇野木早苗君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○有明海及び八代海を再生するための特別措置に
 関する法律案(衆議院提出)
○政府参考人の出席要求に関する件
○独立行政法人農畜産業振興機構法案(内閣提出
 、衆議院送付)
○独立行政法人農業者年金基金法案(内閣提出、
 衆議院送付)
○独立行政法人農林漁業信用基金法案(内閣提出
 、衆議院送付)
○独立行政法人農業技術研究機構法の一部を改正
 する法律案(内閣提出、衆議院送付)
○独立行政法人緑資源機構法案(内閣提出、衆議
 院送付)
○独立行政法人水産総合研究センター法の一部を
 改正する法律案(内閣提出、衆議院送付)
    ─────────────
この発言だけを見る →
三浦一水#1
○委員長(三浦一水君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。
 有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案を議題といたします。
 本日は、参考人として日本大学生物資源科学部教授岡本雅美君、有明海漁民・市民ネットワーク顧問錦織淳君、長崎県森山町長田中克史君、日本海洋学会名誉会員宇野木早苗君に御出席をいただいております。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつ申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本参議院農林水産常任委員会に御出席を賜り、誠にありがとうございました。
 ただいま議題となっております法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜りたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。
 本日の議事の進め方について御説明いたします。
 まず、お一人十五分程度で順次御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと存じます。
 それでは、岡本参考人からお願いいたします。岡本参考人。
この発言だけを見る →
岡本雅美#2
○参考人(岡本雅美君) ただいま御紹介にあずかりました日本大学に現在在籍しております岡本でございます。
 冒頭、恐縮でございますが、私事なのですが、後の説明の関係上、私の経歴、専門について一言述べさせていただきたいと思います。
 私は、農業工学科と俗に申しますけれども、土地改良あるいは農業農村基盤整備あるいは農業農村整備といったような事業名で皆さんよく御案内のことと思います。農業土木事業あるいは土地改良事業あるいは農業農村整備事業と呼ばれる事業にかかわります。
 この中身を言いますと、要するに、農業の主要な生産基盤である農地にかかわる一切の土木的な事業を行う分野でございます。そのために、農業土木という世界にない日本だけの名前を使っておるわけでございますが、具体的には、まず農地を開発、今日も出てまいります諫早のような干拓事業、あるいは陸地の開墾事業、続きまして、さらにでき上がった農地を更にレベルアップするための圃場整備事業とかあるいはかんがい排水、水利事業を行います。水利事業に至りましては、中山間にダムを造ることから堰を造ることまで、大変な土木事業を伴うことをやっております。そのほかに防災といったような、大体そんな事業分野を土木的手法で行う、そのような学科を卒業いたしまして、以来、所属としてこの分野での仕事を続けてまいりました。
 私個人は、特に計画部門、ただ、計画と申しますと、河川の水利ということになりますと、これは多部門にわたりますので、私自身は多面、多部門の水資源開発とか、例えば極端なことを言うと、国際河川の水利調整といったようなことも専門にしてまいりました。そういうことで、余り物理的な個々の具体的な事業のいわゆる土木屋らしい設計施工といった面についてはいささか不案内な点がございます。
 ただ、計画を行い、またでき上がった後の維持管理あるいは利用といったところを専門にいたしておりますので、また常々この有明海の再生にかかわるような議論を聞いたときに、土木を素養としております私から見ると、少し技術的に申し上げておいて理解しておいていただいた方がいいんではないかという点が幾つかありましたので、今日はそこを中心に申し上げてみたいと思います。
 まず、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案ということで、衆参両院でこのような法案が議論され、また設置を目指しておられることについては、私はこのこと自身を意義あるものと評価しております。
 その理由は、個々の、例えば水質汚濁であれば水質汚濁防止法とか下水道法とか個々の法はございますけれども、特別に有明海及び八代海という地域を限定したそういうような特別措置法を設立することの意義ということでございますけれども、これが有明再生特措法の場合は大いにあるだろうと考えます。
 それはどういうことかというと、まず緊急性がございます。御存じのように、諫早干拓を中心にして現在国の行う公共土木事業は、あるいは港湾の事業等々が既に終わり、あるいは現在進行中でございまして、また地元の促進要望あるいは中止要望等、社会的な大変なイシューとなっております。また、行政としての対応も迫られるというふうな緊急な社会的、行政的な背景があろうと思います。
 また、地域を区切るという意味では、差し上げた二枚目を見ていただきたいんですが、このように有明海というのは非常に湾口の狭い、八代もそうですけれども、閉鎖水域になっております。ですから、余り他との影響なく、ここだけで単品で扱えると。また、そのことが非常に有効性を持つという特徴を持っておりますし、したがって、直接の対象としませんけれども、後の汚濁負荷の総量規制というようなことになりますと沿岸への規制が及ぶわけですけれども、その場合にも、流入河川の流域も海域とともに一体的に、つまり汚濁源を特定しやすい、また環境劣化域というものも特定しやすい、特定できると。これは一般的な、例えば仮に太平洋に接した沿岸で特別立法をやるということは大変難しいのに比べて、特別な特措法で対応するにふさわしい川でございます。
 また、今回、総合調査ということを標榜されておりますけれども、現在まで、私どもから見ると、大変単項目的といいますか、余り総合的でない調査というものがあって、環境問題あるいはこのような社会的な影響の大きいものについては、そういう単純な調査では駄目で、それを総合的、有機的なアセスというのをやらなきゃいけないわけですが、そういうものをやるための根拠法としても大変有効であろうと。
 また、情報公開も強くうたわれておりまして、これは住民あるいは日本国民に対するアカウンタビリティーという点と、また多面的検討が当然情報公開には伴うわけですけれども、これは文殊の知恵ということで大いに期待できるだろうと。後ほどいろんな議論が出ると思いますけれども、例えばシミュレーション結果にしましても、専門家によって大いに議論が変わります。そのようなことは、やはり文殊の知恵で情報公開の前提の下で多面的な検討をやる、そのようなことのステージを作るという意味でこの特措法は大変有効であろうと。
 汚濁負荷の総量削減措置が修正案の方に入っておりますけれども、これは行政政策の理念、原則としては私は評価いたします。してはと申し上げるのは、この点若干の疑義がというか懸念があるからでございます。後ほど申し上げます。
 釈迦に説法でございますが、この有明海は、だれもが言うことですけれども、閉鎖性、孤立しておりまして、外海から独立しております。また、干満の差が非常に特大であると。言い方によって五メートルとか十メートル、何とでも言えるわけですけれども、とにかくこのような干満差を持った海湾は日本にはございません。ですから、東京に三番瀬のようなわずかな干潟がありましても、有明海ほどの干潟を持った湾はございませんが、これは大きな干満差のせいでございます。
 干潟は決して干満差だけではできません。つまり、干潟を生産する土砂灰とわざわざ書いたんですけれども、普通は泥と言った方がいいんですが、この泥の根源は両岸からの火山から流れてまいります火山灰でございます。火山灰が非常に細かい。そういうことでございまして、それが豪雨地帯である、台風銀座の地帯でございますので大変な土砂の流出量がある。そういうことが延々つながりまして、そこにありますような古典的な干拓も発達したし、洪水の被害も大変多かったと。そして、干潟の上にだんだんと我々が、人類が開発してまいりましたところは常時排水不良の地区になると。
 そこで、簡単に干拓のことでございますけれども、干拓は、三枚目の一番最後の図面を見ていただきます。これは色分けしてございまして、もう三百年以上前から有明海はこのように干拓してまいりました。この場合、干拓といいましても、これは言うなれば干潟がだんだんだんだん土砂がたまってきて次第に水面上に現れる、それを我々が、御先祖様が水田に開田されていったというように理解されていただきたい。しかも、これは大きく分けてございますけれども、実際にはこれはもう本当にうろこ状にちびちびと開発した結果が現在こうなっておりまして、このようなものは単式干拓と言っておったわけですが、実は戦後、大変な技術革新が起こりまして干拓の事業は変わりました。
 このことをもう一つ申し上げておきたいんですが、それはオランダから輸入されましたオランダのアイゼル海、デルタプランが典型でございます。日本では八郎潟、児島湾、諫早湾、諫早干拓が典型でございますが、複式干拓と申しまして、三枚目の図面を見ていただければ分かりますように、前面に潮受けの堤防を、そして内部に干拓堤防、第二線堤防を造るという二段の複式の堤防を造るというやつでございます。
 これはどういう意味があるかというと、真ん中に調整池というのがございます。ここは内陸から参ります淡水、河川水でだんだんだんだん真水になってまいりますので、これが真水に完全に入れ替わったときには水源として使えると。つまり、干拓地を造るだけではなくて水源も同時に造成するという二つの機能を持った、これがオランダ起源で日本でも戦後大いに活発化した事業でございます。このことを行うためには大変な土木工事量がありますが、そのことは、そこにありますように工事の大規模化による環境影響度は大きくなっております。ですから、従前の三百年以上前から行われていた干拓に比べて技術的に異質の干拓であるということを御承知おきいただきたい。
 またさらに、諫早干拓特有の、日本の、あるいは恐らく海外にもないたった一つの特性は、調整池の水位を下げておいて洪水対策にも使おうという防災効果を持った干拓事業でございます。もちろん、潮受け堤が高潮に対する防災効果を持つことは当然でございますが、それ以外に内陸の洪水対策を兼ねるといったことは、恐らく全世界唯一の干拓事業でございまして、このことが大いに記憶されるべきことであろうと。
 この干拓事業はそのほかに付加価値的な特性を持っておりますが、それについては時間の関係で省かせていただきまして、この問題を取り扱うときに一つだけお考えいただきたいのは、有明海、特に諫早干拓も含めた議論では、他の地区に見られない特徴、つまり二千八百億円の総事業費を想定した、もう恐らくは九〇%ぐらいの予算執行ができていると思うんですが、さらに物理的には潮受け堤防そして中央干拓地の干陸といったものが済んでおると。そして、調整池もマイナス一メートルのコントロールをして実際の防災効果を、施設でいえば供用開始、つまり効果をもう既に発現させちゃったということです。
 つまり、現在既にかなりの施設ができ、実際の効用を発揮しておる。それに対して、一方でいろんな形の被害といいますか、悪影響を指摘した場合に、その間のどちらを取るにしても、どちらに進むにしても、現在既にこれだけのものができており、そして効用を発揮しているということを無視してはこの議論が進められないという点で、簡単に、例えば潮受け堤防を全部つぶしてしまえば元の干潟ができるだろうといったような議論は、真ん中に、じゃ今あるものの処置、今発揮されている効用をどう処置するかということを考えなくては、実際の政治的あるいは行政的な議論にならないだろうということでございます。
 総合調査についてのコメントでございますけれども、そのようなことで、開門度合いにしましても、期間何年間でやるとか、あるいは洪水シーズンといえどもやるんだとか、あるいは時間帯をどうする、淡水湖の水位をマイナス一メートルでコントロールしないでもう外海とつなげてやってしまおうといったようなことは調査条件として重要でございますが、その際に今申し上げたようなことを勘案する必要があると。どう勘案すべきかについては多々議論があろうと思いますが、そのことについて強調しておきたいと思います。
 また、私どもの経験からいたしますと、総合調査は、特定因子と環境変化との因果関係というのは総合調査でも簡明には特定し難いだろうと思います。なかなか、自然界が相手でございますので、原因と結果というのを単純につなげないという懸念が私はあると思っております。したがって、原因調査はもちろんこれは当然やらなきゃいけないことですけれども、もう防止対策というのは効果が自明なものが多々ございます。
 比喩は飛ぶようですけれども、現在、例えばがんはいまだに発生のメカニズムは分かっておりませんが、がんの治療法というものは、ある場合にはいろいろ確立しております。そのような意味で、効果が自明の対策こそ一方で急がれるべきであると。ですから、ただ原因調査ということにこの特措法を特化してほしくないということでございます。
 それから、総量規制についてなんですが、これは理念として単に濃度規制では駄目で総量の負荷の削減が必要であると。これはこのとおりでございますが、実際問題としまして、例えば水質汚濁防止法あるいは土地改良法の中にもこれにかかわるような条文がございますけれども、実際問題として総量規制というのは、実際に効果を発するためには個々の汚濁源に排水規制を掛けていかなきゃいけませんけれども、その特定あるいはその排水規制を行う行政的な手段、またその効果を担保する手段等々がなかなか実現難しい面がございまして、この点で、総量規制を理念としてうたうことに私はもうもろ手を挙げて賛成でございますが、実施技術という点で技術者として若干の不安を残しております。
 以上でございます。
この発言だけを見る →
三浦一水#3
○委員長(三浦一水君) ありがとうございました。
 次に、錦織参考人にお願いいたします。錦織参考人。
この発言だけを見る →
錦織淳#4
○参考人(錦織淳君) この問題についてお話ししたいことは多々あるわけでございますが、最低限の前提として諫早干拓事業が有明海の漁業資源に大変大きな打撃を与えたということ、そしてそのことについての原因究明のこれまでの過程に対する反省なり考察というものを行っていくこと、これがどうしても必要だと思います。しかし、そうしたことを抽象的に議論することは余り意味がありません。そこで、私はタイラギの話を中心にそのことを申し上げたいと存じます。
 なぜタイラギなのか。それは、有明海異変といえば多くの人がノリ問題と誤解をいたしております。甚だしきは、去年もまた今年もノリが取れるから有明海異変は解決した、あるいは諫早干拓とは何の関係もない、こういうことを言う方すらおられるわけでございます。しかし、ノリはよく海の農業と申します。海の体力が弱ってもまだ技術力によってカバーすることが辛うじてできるわけでございます。
 しかし、魚、貝、タコ、クルマエビ、有明海にはたくさんの漁業資源がございますが、そうしたものを対象とする漁船漁業、あるいはタイラギは潜水器漁業と呼ばれておりますけれども、そうした漁業は残念ながら海の力が弱れば立ち所に壊滅をしてしまいます。その象徴こそタイラギ漁なのでございます。
 私はこの点について四つほど申し上げたいと思います。
 まず、諫早干拓事業を始める事業主体、九州農政局やあるいは関係自治体、そうしたものがこのことについてどのような予測を立てていたのか。それは大きく予測を誤ったということでございます。
 諫早湾内の十二漁協に対する漁業補償協定は昭和六十一年から六十二年にかけて行われました。そのときの漁業者に対する説明は、潮受け堤防の内側の八漁協は、これは海がなくなるから致し方ないとしても、潮受け堤防のすぐ外側の小長井町を始めとする四漁協の漁業は十分やっていける、諫早干拓工事によって多少の影響が出ることは避けられないけれども、しかしそれは大したことではない、タイラギも死なない、漁業経営の存続は可能である、このような説明がなされたわけでございます。その結果、漁民はそれを信じて漁業権を放棄し、干拓工事の事業実施に同意し、そしてそのような予測に基づく、算定結果に基づく漁業補償金を受け取ったわけでございます。しかし、現実はどうだったのでしょうか。
 お手元に諫早湾漁場調査委員会の調査結果を、一部を用意いたしました。その中の資料Ⅰの二百八十九ページと記載されたところをごらんください。そこに、泉水海、つまり諫早の湾内でありますけれども、このタイラギ漁が、工事が始まったのは、試験堤の工事が平成元年から始まったわけでありますけれども、間もなく、平成三年にはタイラギの漁獲は激減をいたしました。平成四年はほとんど取れませんでした。そして、平成五年からはゼロになったのでございます。そして、この打撃は今日までも回復されず、平成十四年に至る十年間、タイラギ漁は全滅をしているわけでございます。
 こうしたことをだれが予測し得たのか。このことを抜きに議論はできないというのが最初の問題でございます。
 そして、二つ目に申し上げたいことは、ではこの諫早干拓事業とそうしたタイラギ漁の漁業資源の壊滅ということの因果関係をどのように考えたらよいかということでございます。そして、そのことを踏まえた上で、調査ということについてどのように考えるべきか、これをお話ししたいと思います。
 漁民は、工事が始まると間もなく、タイラギに異変が起きたということを生活の現場で実感をいたしました。特に、サンド・コンパクション・パイルという工法が採用されたために、泉水海の最も豊かな漁場から大量の砂を取り、それを試験堤の工事にサンド・コンパクション・パイル工法ということで利用したわけでありますが、そうした目に見える形での漁場荒らしによってタイラギは死んだのではないかと強く疑ったのでございます。
 因果関係を考える場合に、有明海全体という形で広げるまでもなく、潮受け堤防の直前という極めて物理的に狭い地域、そして工事が始まって間もなく、こうした時間的な近接関係、そうしたことによってもしタイラギが全滅したのであれば、当然だれでもそこに強い因果関係の推定が働くと考えるのではないでしょうか。
 そして、そのことについて漁民はそのように主張し、漁場調査委員会が設置されたわけでございます。そして、このような強い推定が働くときに、通常ならばそうした調査結果が判明するまではこれは工事を進めない、これが鉄則というものでございますが、現実には、平成五年に設置された漁場調査委員会は、何と八年間も掛けながらやっと調査結果を報告する、その間、工事はどんどん進んで海は荒れていったということでございます。
 そして、肝心の漁場調査委員会の議論はどうであったのか。お手元にその一部を出しておりますけれども、いろいろな原因は考えられる、でも結局よく分からないという結論になったわけでございます。そして、その議論の経過を精査してみますと、いろいろな要因が考えられる、そのことについては専門委員会からも強く激しい疑問が出されたにもかかわらず、データがない、そういうデータは古いときに取っていなかったから比較しようがないではないか、そういうような議論に押し返されて、結局そのことを議論することはできないということで、疑うべき要因の中から外されていきます。そして、最後に残ったのが低酸素水、貧酸素水塊の問題と底質の細粒化の問題でありました。しかし、この二つについても、結局そのことがどのようにタイラギの変死と結び付いていくのか、具体的な因果関係が解明できない、そういう理由の下に、結局結論は出せないということになったわけでございます。
 私は、これを読んで非常に残念に思いました。私は、かつてこの有明特措法の対象としているもう一つの不知火海の水俣病問題に関与をいたしました。あの工場廃液から出された水銀がなぜ水俣病という形で発症するのか、そこには多くの疑問がありました。無機水銀がどうして有機化するのか、あるいは海で希釈されるはずの水銀がなぜ濃度が濃くなるのか、そうしたことについて食物連鎖との関連で説明され、そして体内での発症のメカニズムが解明されるまでには随分と長期間を要したわけでございます。しかし、多くの人たちはあのチッソの工場廃液が原因ではないかということを疑ったわけでございます。しかし、その因果関係のメカニズムがとことん解明されない限り何も手を打てない、こうしたことが行われたために、その間多くの貴重な人命や健康が失われたわけでございます。
 私は、因果関係というものはそのように考えるべきものだ、そういうふうに考えておりますので、この有明特措法によってもし調査委員会が作られるとすれば、そうした過去の経歴についてどのようにお考えになるのか、そうしたことを改めてお考えいただきたいと存じます。
 そして、三番目は、この有明特措法に基づく対策によってタイラギが復活するかという問題でございます。残念ながら、そのような期待を持つことはできないと思います。そればかりではありません。覆砂事業あるいは海流の漂流物の除去、あるいは稚貝、稚魚の放流、こういうような対策が取られようとしております。しかし、タイラギの場合は、結局、稚魚は育つんです。しかし、育っても大きくなる過程で皆死んでしまう。幼貝、成貝に至っても死んでしまう、そういうことが分かっているわけでございます。
 そのように考えますと、稚貝や稚魚を有明海に放流したところで弱って死に絶えた海にそういう放流を行うことが果たして漁業資源の復活につながるのか、タイラギについて言えばどうなのか、このように考えてみますと、残念ながら、そこには私は大きな疑問を持たざるを得ないということでございます。
 タイラギだけではありません。湾口部の大浦漁協では、何とか生き延びようと漁民が必死になり、例えばカキの養殖などを始めておりますが、こうしたことも、うまくいくと思ったらまた駄目になってしまったといって、行政以下多くの人が頭を抱えているのが現実でございます。
 そして、最後に申し上げたいことは、このタイラギの教訓、諫早湾内の教訓、これをきちっと踏まえない限り、有明海全体についてどのような対策を取るべきかということについての正確な判断はできないということでございます。
 タイラギについて申し上げれば、泉水海、すなわち諫早湾内は十年間タイラギ漁は全滅、そしてもう一つの有力な漁場である有共一号を中心とする福岡県と佐賀県の潜水器協議会というのがございます。ほんのつい先日、三年目の休漁を決定をいたしました。つまり、漁獲高はゼロということでございます。タイムラグがあるということでございます。一つの海の中で、まず湾内が駄目になり、そして有明海全体が駄目になっていく、こういう予兆としてとらえることはできないのでしょうか。
 このようにして考えていくならば、今私たちは、そうした具体的な事実に基づく教訓に基づいて具体的な対策を立てていく。私たちは、「政治は有明海を救えるか」というシンポジウムを今年の四月に開きました。どうか、この場の先生方におきまして、是非とも政治の力によって有明海を救っていただきたい。
 今、潜水器の業者はおろか、多くの漁船漁業者は泣いております。たくさんの自殺者が出ている、あるいは夜逃げをする、破産宣告をする、そういうことが相次いでおりますし、非常に悲しい事態として、ある潜水器漁業者は七十キロの潜水器、これは重い、海に沈むためのおもしでありますけれども、それを身に付けて入水自殺を図ったという、そういうことも伝え聞いております。
 このように、今漁民は追い詰められております。そうした漁民が倒れるということは海が死ぬということであり、この美しい豊かな海を基に生活をしている有明海沿岸の四県の多くの地域の人々、そうした人々の産業振興、地域振興という観点からも、本当の意味でそうした有明海が復活できる、そういう対策を取っていただきたい。これが私のお願いでございます。
 以上です。
 ありがとうございました。
この発言だけを見る →
三浦一水#5
○委員長(三浦一水君) ありがとうございました。
 次に、田中参考人にお願いいたします。田中参考人。
この発言だけを見る →
田中克史#6
○参考人(田中克史君) 長崎県森山町長の田中でございます。
 国会の先生方におかれましては、日ごろから我が国の安寧秩序の保持と国民生活の維持向上のために、そして豊かな緑と青き海、流れ清き日本のふるさとを守るために日夜御尽力をいただいておりますことに心からの敬意をささげるものでございます。
 このたびは、有明海及び八代海を再生するための特別措置に関する法律案の御審議に際し、地元自治体の代表として意見を申し述べる機会を賜りましたことを、地元住民に成り代わりまして有り難く厚く御礼を申し上げます。
 私は、平成十二年のノリ不作の主因として諫早湾干拓事業がいわれなき指弾を浴び始めていた昨年の初めから、ともに海の恵みを分かち合ってきた有明海湾岸の四県の漁民と住民の間で、利害の違い、立場の違いがあらわになりつつある現実を憂い、関係機関の協力によって有効な漁業振興策の発動による一日も早い宝の海の再生を訴えてまいりました。
 この間の経緯は、先生方のお手元に配付してございます。この資料でございますけれども、三十ページでございます。(資料を示す)平成十三年三月一日発行の広報「もりやま」の記事で御確認をいただければ幸いでございます。この記事でございます。
 本日、私は、有明海再生に向けた本格的な対策が講じられるべきこと、同時に、諫早湾干拓事業が有する防災目的の正当性と農地造成の今日的意義についても御理解を賜りたいとの立場から意見を申し述べさせていただきます。
 私は、諫早湾の旧堤防から約二キロメートルの近くに生まれ、そこで少年時代を過ごしてまいりました。幼いころ、父親にはね板と呼ばれる板スキーの上に乗せられて干潟を走ったのが有明海との初めての出会いであり、以来、アゲマキと呼ばれる甘い二枚貝やハゼ、グロテスクな風貌ながらも美味この上ないドウキュウと呼ばれる有明海特有の魚など、おびただしい海の恵みをいただいて育ってまいりました。
 有明の海は、私たち諫早湾岸の住民にとりましては、遊びの場、生活の糧を得る場を超えて、命をはぐくむ母なる豊穣の海であり続けました。私の有明海への愛着は、幼少からの生活体験に深く刻まれ、決して人後に落ちぬいとしさは無限のものがあります。
 それゆえに、このたび本院で御審議賜る有明海等再生特別措置法案は、地球温暖化などの大きな環境の変化や大都市における水需要の増加にこたえる筑後大堰建設、熊本新港、三池海底炭鉱の陥没、また、ノリ養殖に用いられてきた不適切な酸処理剤や肥料の海洋投棄、生活雑排水の流入や漁網、廃船、空き缶、ビニール袋の置き捨て等々、様々な複合的な要因が折り重なってもたらされた有明海の疲弊を救い、豊かな海を再生させようとする画期的な時宜を得た法案であり、心底より歓迎し賛意を表するものであります。
 ただいま申し上げましたとおり、有明の海は私たちに様々な自然の恵みをもたらしましたが、その一方で、毎年五センチメートルのスピードで堆積する干潟が、後背地よりも標高が高くなる有明海の地勢上の特異性や毎年豪雨に見舞われる台風常襲地帯であること、また、河川が急峻で許容流量が少ないため容易にはんらんを招きやすいなどの諸条件が重なり合って、有史以来、この地域に住む住民に高潮や洪水、塩害などの被害をもたらしてきた事実も指摘しなければなりません。
 昭和三十二年七月二十五日、私は小学一年生の夏休みが始まった直後に諫早大水害を経験いたしました。本町を流れる仁反田川のはんらんによって河川の堤防が決壊し、多くの家屋が流失し、肥沃な大地が一面海と化した当時の光景は今もって私のまぶたに焼き付いて離れることはありません。
 また、昭和五十七年七月二十三日の長崎大水害に際しては、その夜長崎にいた私は、一瞬の激しい集中豪雨に家路にたどり着くすべをなくし、翌朝から直ちに災害復旧活動のボランティアに参加した経験を持つものであります。
 自然がもたらす恵みも生命財産を脅かす脅威も、身をもってよく知るのはそこに長年住む住民であります。自然の恵みが様々であるように、自然の脅威もまた様々であります。
 諫早湾沿岸の住民の中にあっても、とりわけ江戸時代以来の数次にわたる干拓によって開かれた広い低平地に住む森山町、諫早市小野地区を中心とする地域住民にとっては、降雨のたびに水の恐怖と背中合わせに眠れぬ夜を過ごさなければならない生活を強いられてまいりました。このことを身をもって知る私は、先人たちの尊い勤労と犠牲によってもたらされた優良農地を守るため、干拓完成の悲願を実現するため、そして子々孫々に地下水の枯渇や水質汚染、地盤沈下のない豊かで安心して暮らすことのできるふるさとを譲り渡すことが私たち世代の使命であると考えてまいりました。
 諫早湾干拓事業は、有明の海によって育てられ、干潟に深い愛惜の気持ちを抱く私たちにとりましても、成就されるべき悲願の事業でありますことを先生方に是非とも御理解を賜りたいと願うものであります。
 諫早湾干拓事業は、昭和六十一年に着工され、平成九年に湾が締め切られました。平成十一年三月に完成した潮受け堤防の防災効果は目覚ましく、台風時の高潮防止や河川からの流水や発生した湛水を潮汐の影響を受けることなくスムーズに調整池に流入させる効果が発揮され、地元では高く評価され、感謝されている事業であります。
 また、私は、干拓事業の防災効果は高潮、洪水対策にとどまるものでなく、現在この地域で起きている地盤沈下の進行を抑止する上からも極めて重要な役割を担うものであることをこの機会に是非とも御理解いただきますようお願いを申し上げます。
 諫早湾奥部は、河川の流域面積が低いために常時水不足に悩まされ、これを補うために地域一帯は水源を地下水に依存しております。しかし、地下水も無尽蔵であるはずもなく、地下水の揚水がもたらす広範な地盤沈下は地域の深刻な問題となっております。そして、地下水位の低下に起因する地盤沈下の次に来る地下水の枯渇、水質悪化は、地下水がやがて飲料水としても農業用水としても使用できなくなることを意味し、これが食料の供給にも致命的な打撃となる悲劇の到来を意味しております。
 森山町では、昭和三十九年に国営干拓事業により二百八十二ヘクタールの農地が造成されましたが、営農のため年間二百万トンの地下水を利用しており、このままの状態が続けば最大三メートルの地盤沈下の可能性があることが専門家の調査により報告されております。農地では、既に一メートルないし一・二メートルの地盤沈下が見られ、近年では住宅地でも最大五十センチ前後の沈下が見られます。このため、地下水のくみ上げをできるだけ制限していくことが町政を推進する上での重要な課題となっております。
 本町では、潮受け堤防締切りに伴う調整池の淡水化に伴い背後の、後背干拓地にある潮遊池も淡水化したことから、それを水源として一部の水田に反復利用するなどして地下水のくみ上げの抑制に努めておりますが、これが一部に主張される中長期の開放が現実のものとなれば更なる淡水化の遅れを招くこととなり、これは私たちの地下水揚水の抑制、地盤沈下問題への真剣な取組に冷水を浴びせ掛けることを意味しており、到底認めることはできません。
 いま一つ、私は、諫早湾干拓事業の目的である農地造成の意義について触れさせていただきたいと存じます。
 新しく造成される農地に対して、必要ない、無駄であると主張される向きもありますが、地球的規模では現在約六十一億の人口は世紀末には約百二十五億に増えると予測され、二十一世紀は人口爆発、食料危機の世紀と言われております。巨大人口を抱える中国も間もなく食料輸入国に転ずるでありましょうし、その一方、我が国の耕地面積約四百七十万ヘクタールを優に超える六百万ヘクタールの耕地が荒廃や砂漠化により毎年失われる中で、果たして、食料自給率が先進国では類を見ない四〇%の低さに甘んじている我が国において、本当に農地は必要ないのでしょうか。よく考えてみる必要があると思うのであります。
 新しい農地は、平たんかつ広大で、農業用水に乏しい諫早湾奥部の低平地にとって貴重な水源が確保された生産性の高い農地であり、事業の早期完成に寄せる期待は高いものがあります。平地が少ない本県にとりましても、先進的な農業が展開できる重要なプロジェクトであります。
 有明海再生法案は、有明海等の環境海域の保全及び改善と水産資源の回復及び漁業振興を図る有明海の再生に向けた画期的な法案であります。
 私は、冒頭、ノリ不作の主因を諫早湾干拓事業に事寄せるのはいわれなき指弾であるとも、また、有明海の異変は複合的な要因によるものであるとの考えを申し述べました。
 昨年のノリの作況は、一昨年の二十三億三千九百万枚から一挙に四十四億六千四百万枚と大幅に増加し、史上最高の生産量となりました。今年のノリについては、十一月七日から行われた初入札では、豊作であった昨年を上回ると聞いております。これが何を意味するものであるかは、先生方におかれましては既にお気付きのとおりであります。ノリの不作の原因を諫早湾干拓事業に結び付けるのは無理があるということでございます。
 また、有明海における貝類の漁獲高の低減は昭和五十四年以来急激に進行しているのであり、その後は大方漸減の傾向にあるわけでございまして、決して私どもは諫早湾干拓事業の水質汚濁によってもたらされたものではないと考えております。なぜならば、手元にそれぞれの県のCOD、いわゆる化学的酸素要求量という指標で比較した汚泥の資料がございますけれども、それは数値が高いほど汚濁が進んでいるということを意味しますけれども、佐賀県がリットル当たり五・一ミリグラム、福岡県四・三ミリグラム、熊本県二・八ミリグラム、長崎県二・四ミリグラムとなっております。調整池が汚濁しているという批判にもかかわらず、この数値は長崎県の海域が最も汚濁が進んでいないことを示しているわけでございます。
 森山町では、調整池の水質改善を図るために集落排水事業を町内全域に整備し、一〇〇%の下水処理を行っております。また、周辺の市町は、窒素や燐を除去するための高度処理に多額の投資を行っております。その一方で、第九回のノリ委員会での報告によると、酸処理として窒素で四十七・七トン、燐で百・一トンが、施肥として窒素で八十二・八トンが投下されております。公共下水道等の設置により汚濁負荷量を軽減させる一方で、ノリ養殖のために有明海の汚濁負荷が許されているのであります。有明海再生のためには、このような矛盾した行為、不公平・不誠実な行為は直ちに抜本的に真剣に取り除かなければなりません。
 私は、有明海湾岸に暮らす人々と同じように、だれよりも有明の海を愛し、心から疲弊した有明の海の再生を願っております。有明海をよみがえらせる力強い第一歩を踏み出す一里塚として、議員立法による有明海再生法案の速やかな成立を心から期待いたしております。
 あわせて、九〇%近くまで進んできた諫早湾干拓事業を一日も早く完成させることが有明海の海域の安定を取り戻し、再生を図る上でも有効な手段であり、早期の完成を地域住民とともに念じておりますことを申し上げまして、私の意見の陳述とさせていただきます。
 御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →
三浦一水#7
○委員長(三浦一水君) ありがとうございました。
 次に、宇野木参考人にお願いいたします。宇野木参考人。
この発言だけを見る →
宇野木早苗#8
○参考人(宇野木早苗君) 私は、五十年余りの間、海のことをやってまいりまして、特に沿岸の物理現象について学んできました。そして、最近では川と海の関係を調べています。最近の私の仕事は、五ページ目に一応文献のリストが若干ありますからごらん願いたいと思います。
 こういう研究の結果、沿岸の開発に関連しては、次に述べる一番目と二番目の項目が極めて重要であるというふうに考えています。初めに、これに関する私の経験を話した後に、そしてこれから有明海と八代海に関する今回の法案に対する私の考えを述べたいと思います。それは三以下になります。
 まず最初に、沿岸開発に際して海は一つであると認識することの重要性についてお話しいたします。
 一九六〇年代後半から瀬戸内海は汚濁の海と化して赤潮が大発生しました。当時、汚染対策は府県ごとにやっていましたし、また開発事業の影響評価も地元の地先の湾、灘ごとに行われていました。そこで、私たちは一九七〇年に図一に示すような計算結果を示しまして、瀬戸内海は一つの海と考えることの重要性を示しました。すなわち、これを見ますと、例えば備讃瀬戸に物質を流しますと瀬戸内海全体に広がって大きな影響を及ぼしているわけですね。だから、瀬戸内海は一つの海と考えるべきだと、そういう重要性を示したわけです。この結果は朝日新聞の第一面に大々的に取り上げられまして、汚染対策に悩んでいた各方面に衝撃を与えたと聞いております。その後、瀬戸内海周辺の十余の府県知事と政令都市市長の洋上会談が開催されまして、それでそれが後に瀬戸内海臨時措置法あるいは現在の恒久法につながっておるわけです。また、通産省によって呉に世界最大級の瀬戸内海の水理模型も建設されて、瀬戸内海を一つの海とする行政の研究と体制が作られてきたということを示しておるわけです。
 こういう点からいいますと、有明海全体と八代海全体を総合的に見ようとする今回の法案は、趣旨としては結構であると私は思います。だが、その内容は科学的に見て不備な点が多々あり、目的の達成は困難であると私は判断いたします。その理由を三以下についてお話しいたします。
 次に、河川事業に際しては川と海を一体として考えねばならないということです。
 かつてその豊かさをうたわれた三河湾は、これは東京湾の次に三河湾が豊かだったわけですが、その三河湾は現在は、図二、これは環境基準の達成率ですが、これを見ますと分かりますように、我が国で最も汚濁した内湾であり、しかも憂慮すべきことは、その汚濁が進行している傾向にあるわけですね。原因として、地形的閉鎖性と埋立てによる広大な干潟、浅瀬の喪失が言われますが、それとともに豊川用水事業、図三を見てください、これ点線で書いてあるのが豊川用水事業ですが、その事業によって多量の取水が行われ、これが湾に注ぐ河川流量が大きく減少したことが極めて重要であるということが私を含む研究グループで明らかにすることができました。
 ところが、驚くべきことに、更にこの瀕死の三河湾、特に渥美湾がひどいんですが、をむち打つような設楽ダムと大島ダムが建設が計画されております。このように多量な取水を行うとしますと、これでは幾ら関係当局が汚濁負荷削減に努力してもそれは無駄であって、環境の回復は不可能とさえ思われるわけであります。海のことを考慮せずに河川事業が行われた典型例でありまして、この例は全国に多く、八代海、有明海にも見られるわけでございます。この危惧は有明海に関してもあるいは八代海についても参考になることかと思うわけです。
 それでは三番目に、この法案は子孫に美しく豊かな有明海と八代海を残すためということでありますが、そのためには何が必要かということをお話ししたいと思います。
 近年、有明海の環境は悪化してきました。その原因として、全般的な汚濁負荷の増加、それから筑後大堰などの堰やダムの建設、埋立てなどの開発工事その他いろいろ挙げられております。だが、その悪化を加速して決定的にしたのは、実は諫早湾干拓事業がその弱った体に強烈なパンチを加えたためであります。これは、干拓事業着手後、水質、底質の悪化、底生生物の顕著な減少、海底と海面の漁獲量の激減などが生じたことから明らかでありまして、こういうデータを示すことは可能です。そのパンチ力がどのように強いかを次の(1)の項目でお話しいたします。
 大事なことは、しかもそのパンチが現在も続いているわけです。それゆえ、環境を再生するためには、日々加えられているこのパンチを止めることが何より必要です。だが、今回の法案は、その強烈なパンチを止めようとはしないで、栄養ドリンク剤などを与えるものにすぎないと私は思います。これでは子孫に誇れる海を残すことは期待し難い。これは、私が今まで東京湾、伊勢・三河湾あるいは瀬戸内海、こういうことを調べてきてこういうふうに思っております。三河湾の二の舞が心配されるのであると。八代海についても同様に思います。
 それでは、(1)潮受け堤防が存続すれば体質の弱った有明海の再生はほぼ絶望的か、こういう印象を述べたいと思います。
 潮受け堤防は、本明川などの川の流れを海から断ち切る長大河口堰と考えられます。これが有明海の環境悪化に果たす役割は、大略、次の三つに分けられます。
 一つは、有明海の潮汐と潮流の大きな減少であります。
 図四に有明海の湾奥の潮汐の減少を示しておきましたが、この減少の影響の中で、この減少の六五%は河口堰の影響であるということを示すことができます。これは潮汐がそうです。それから、図五は、これは当局の資料によりまして、締切り後、潮流がどれぐらい減少したかというのを示したわけです。すると、図五を見てみますと、この堤防締切りの前面では八〇%から九〇%も水が、潮流が弱まっている。水は停滞しているわけですね。中もずっと弱まっていまして、湾口ですら、諫早湾口ですら一〇から三〇%も弱まっています。それから、一番右下のが有明海中央ですが、これも一三%も弱まっています。こういうことです。
 次、二つは、広大な干潟、浅瀬の喪失であります。
 これはもう諫早湾内もそうでありますし、それから潮汐が小さくなったために有明海の外側においてもやっぱり干潟が減少しております。浅瀬、干潟が生物の生存と生活に、また海域の水質浄化にどのように重要であるか、もうこれは皆さんよく御存じだと思うわけです。
 それから三つ目は、諫早長大河口堰は巨大な汚濁負荷生産システムの機能を果たしているということに注目をお願いします。
 堰内部の停滞した淡水は富栄養化して、底にはヘドロが厚くたまっています。そして、水門を開けると下部から強い勢いで排水が噴き出すわけですが、これは、下の方、その巻き上げられたヘドロを含んで非常に汚染度が高いわけです。そこで、図六に諫早湾におけるCODの分布を示してあります。これを見ますと、結局もう非常に諫早湾はCODが高いわけですね。湾口が二ぐらいで、奥の方では一〇ぐらいのものが見られます。国では環境基準は一〇ですが、それは十分満たしておりません。これは、とかく、この一〇という値は、日本の湖沼のワーストスリーの三番目に当たるそういう状態の湖に相当する悪さが一〇であります。これは、この量を日本自然保護協会が汚濁負荷量として勘定いたしますと、六千三百トンになるわけです。これは有明全体の負荷量の実に一三から一七%ということであります。すなわち、これだけこの干拓事業によって汚濁負荷がたくさん有明海に出されているというわけです。
 このように栄養を豊富に含むので、浮上後、光を受けて生物生産が活発に行われ、ところが、そこでは先ほど言いましたように潮流が非常に小さいので、混合は微弱で海水は停滞しています。この結果、沈降した多量の生物遺骸などが分解して、底層が貧酸素化するわけです。
 その状況は、図七の溶存酸素の分布を見てください。そうすると、潮受け堤防の前面がどれだけ貧酸素になっているかが分かると思います。生物が生存するには三以下ぐらい必要だと思うわけですが、その範囲は諫早湾を越えて有明海の方の中央部まで広がっておると、こういうことを見てください。これは、そしてこのことは、諫早湾では予想を超えて、湾内部よりも、堰の外側において厚いヘドロ層があるということからも理解できるわけです。
 以上の結果、潮受け堤防は膨大な汚濁負荷を日常的に有明海に供給し、これに潮汐、潮流の減少と干潟、浅瀬の喪失が重なって、有明海の環境悪化を促進させると考えられるわけです。
 ここで考えていただきたいのは、いろんな要因が挙げられますが、環境悪化の要因が挙げられますが、これほど大きな要因を与えるものは別にありません。このことを十分認識する必要があるわけです。
 それから、(2)、川辺川ダムの建設は八代海の環境と漁業に重大な影響を与える。
 河川内のダムや河口堰の建設後、海域の環境や漁業が大きな影響を受けることは、八代海や有明海の漁民が痛切に体験して訴えているところです。だが、残念ながら、決定的な証拠を明確に示すことは非常に難しいわけです。これが実は難点なわけです。
 というのは、一つは、沿岸開発が進んだ内湾では、それによる影響と河川事業のみの影響を分離することが非常に難しい。もう一つは、一般に、河川内と違って、海域では河川事業の影響が長い時間を掛けて緩やかに現れ、気が付いたときは取り返しの付かない状態になっていることが多いからであります。だから、その点、十分あらかじめ注意しなきゃいけない。
 図八は、八代海を三つの海区に分けて、これは不知火海区、鹿児島海区、天草東海区に分けておりますが、海面漁獲量の相対的変化を示したものです。そうしますと、明らかに不知火海区が一番減少が大きくて、だんだん減少しております。これは、塩分やそれから流れの状況から見て、これは球磨川の河川水の広がっていく順序に一致しております。ということは、球磨川に何らかの影響が出れば、それがこの順序で広がっていく。球磨川は、結局、変化というのは、結局相続くダムの建設が考えられまして、そういう影響がこういうふうに現れているということを示唆していると思うわけであります。
 それから、川辺川ダムは八十年に一回の洪水を対象にする巨大ダムであって、それが海域に与える影響は無視できると当局は言っております。これは、八十年の間、ダムに砂が堆積し、それだけ海の砂が削られて、そして海に来なくなっても、海には影響はないということを意味するわけです。
 そこで、当局の資料を用いて、八十年間のダムの堆砂量を求めると表一になります。そうすると、川辺川ダムだけで二千百六十万立米、既存ダムを合わせると三千五十万立米になります。この量は、六十一平方キロメートルもの広大な海底が厚さ五十センチずつ削られることに相当するわけです。これが海に出てこなくても影響がないということが果たして信じられるでしょうか。また、無視できるという根拠も示されていません。さらに、ダム湖には多量の汚濁したヘドロがたまっております。これは、黒部川出し平ダムのあれでも分かりますが、これが海に影響を与えると。球磨川もそういうことがあるということを示すことが、高いことが示すことができるわけです。
 それゆえ、現状の八代海の環境と漁業の環境を止めて更に再生を図るためには、まず、そういう川辺川ダム建設によるインパクトをまず抑えることが必要であって、そして、その右下にあるこういう漁業環境の悪化、抑えておいて、これをどう回復するかということがまず一番必要だと思うわけです。
 そういう順序がこの法案の中には見受けられないということでもって、私は非常に残念に思っております。
 以上です。
この発言だけを見る →
三浦一水#9
○委員長(三浦一水君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの御意見の聴取は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
この発言だけを見る →
田中直紀#10
○田中直紀君 自由民主党の田中直紀でございます。
 今日は、岡本先生、錦織先生、田中先生、宇野木先生、大変お忙しいところ、参考人としてお出掛けをいただきまして大変感謝を申し上げたいと思います。
 ちょっと座って質問をさせていただきます。
 二十分ほどの時間をいただいておりますので、先生方にそれぞれ一、二問、まず質問をさせていただきたいと思います。
 十二年のノリ不作という事態を受けまして、いわゆるノリの第三者委員会が設立をされました。二年間の調査ということで、いろいろな各方面からの意見を集約して、現在、進行しておるところでございます。幸いにも十三年度は、そういう面では、心配された二年続きの不作ということではなくて、御存じのとおり、ノリの生産も、順調に収穫をしたと、こういうことでありますが、しかし、最終的に二年は不作が続かなかったからといって油断をしてはいけないというのが現状の第三者委員会の見解でございますし、地元の皆さん方が争点にされました水門開放につきましても、まず調査を二か月ほどやっていく。それで、いろいろ地元の方々は、大変、今、その後の調査、水門開放の調査についての御議論があるやに私も聞いておるところでありますが、私が見たところでは、このノリ不作に対する第三者委員会、地元の漁業者の代表も入って、そしてまた水産関係の学識経験者の皆さん方が、それも、特にその議論が一般に公開されながら、九回ほどでしょうか、真剣に、そしてまた現実的な形で展開されたというのは、大変そういう面では、対応としては評価が高いんじゃないかと。
 私も参加したことはございますが、ほかの検討会もこのように行われれば、後でいわゆる関係者が、非常に不利益を被ってしまったのは不作為の故意ではないかとかいういろいろな事件がございましたけれども、まず、第一段階として情報公開をまず審議の中でやっていく。そしてまた、その提案は時宜を得たものではないかと、そういうふうに思っておりますし、あくまでも、今回の法案は、第三者委員会で議論になった内容をこの法案によってそれぞれの関係者が理解が得られるような地域の対策をしていくんだ、そしてまた調査も引き続きやっていくんだという法案だと私は理解をいたしておるところでございます。
 三人の先生方からも、強弱はありますが、法案に対しての意義は認めておられるというふうに理解をいたしておりますが、だからといって、これが再生になるかどうかという御批判の御意見も耳にしたところでございます。
 まず、岡本先生にお伺いをいたしたいと思いますが、農業土木の分野として、大変、現地にもお出掛けになって非常に熱心にこの問題に取り組んでこられたことには敬意を表するところでございますが、今の第三者委員会で提示をしておる内容の調査が計画どおり行われてきているかどうか、そしてまた、二年間という区切りがありますけれども、今後、水門の開放等、中長期の問題も含めて、御心配な点がありましたら御示唆をいただきたいと思います。
この発言だけを見る →
岡本雅美#11
○参考人(岡本雅美君) まず、私は、現在の諫早干拓事業の当否について申し上げる立場じゃございませんので、まず、第三者委員会が提案いたしまして二年間の、本年度ですね、短期、二か月余り、足らずですか、やられた調査の問題について田中先生にお答え申し上げたいと思います。
 まず、このことで何が分かったか。現在までのところ最終的な報告が出ておりませんので、門外漢の私として、結果がこうであったということを紹介する立場じゃございません。ただ、清水委員会、第三者委員会の本来の要望は、もう少し長期に、また開門条件ももう少し緩めてということがあったろうと思います。ただ、そのことは、先ほど私の陳述の中で申し上げましたように、現在発揮しておる防災機能をいったん停止すると、つまり元に戻すということを一部意味します。また同時に、私自身は、もっと荒っぽいことを言いますと、一体、七キロの堤防の両側にあるわずか二百五十メートルの開門を仮に全面開放いたして海と通貫いたしましても、そのことでどれだけのことが本当に分かるのかなという疑問は、私はそういう意味では素人でございますが、ございます。
 ですから、先ほど宇野木先生の証言にもありましたように、恐らく漁業サイドの方、また環境保護の方から見れば、もうとにかくもう一度七キロの堤防をぶっ壊せと言わざるを得ないだろうと思いますし、また、森山町長おっしゃったように、現在その効用を既に享受している住民から見れば、何としてもそれは困るとおっしゃる。正にトレードオフといいますか、全く相反する見解のところでございます。
 ですから、多分、とにかく現在の堤防等々を前提条件として極力何か被害を減少する方向を目指すといったような、恐らく行政当局が現在目指されているのはその方向だと思いますが、つまり、諫早干拓そのものが、決して定性的に申し上げてこれが環境にいいわけはない。これはもうすべての干拓事業全部そうです。もっと言えば、公共土木事業で環境に被害を与えないものはございません。ただ、問題は、それから得られる利益との比較考量の問題、また被害が出たときの措置の問題という、そういう総合的な判断での、正に政治的あるいは行政的な総合判断というのが必要になりますので、個々の、環境に対する影響だけというようなことに限りませんし、また仮に限ったとして、それが定量的に実証できるものかということに関しては、疑問なきを得ません。
 以上です。
この発言だけを見る →
田中直紀#12
○田中直紀君 あともう一点、諫早湾干拓事業が当初の目的よりも縮小されたわけでありますが、当初の目的と比べて防災等含めて支障がないかどうかということについて若干、もう余り時間がございませんので、コメントをお願いします。
この発言だけを見る →
岡本雅美#13
○参考人(岡本雅美君) 防災効果については何がしか、既に過去の、近年の洪水の際に発現しておりますから、これはあったとみなしていいと思います。農地の問題については森山町長のおっしゃるようなことであろうかと。
 以上にとどめます。
この発言だけを見る →
田中直紀#14
○田中直紀君 錦織先生にお伺いいたします。
 先生の論文をちょっと拝見させていただきましたら、御発言より相当過激な文章がちょっと見受けられたんでありますが、今日の御発言で大変タイラギの問題を中心にお話がありました。大変御心配の点があると思いますし、御自身の地元の経験からも発想されておるというふうに思っております。
 今の時点で、この有明海あるいは八代海の再生ということで広範囲に事業が展開できるような議員立法になっておるわけでありますが、当然、二枚貝の再生という問題についても、それも地域のいろいろな、諫早湾の中の問題あるいは有明海の全体の問題ということがあろうかと思います。その辺もう少し、象徴的にお話をされておりますが、具体的にもう少しどういうふうに考えたらいいかということを付け加えていただきたいと思います。
この発言だけを見る →
錦織淳#15
○参考人(錦織淳君) この問題を考える上で、いろんな角度から考えることができると思います。先ほどは申しませんでしたけれども、基本的にはやはり大きなグランドデザインといいますか、そうしたことが必要だと思います。
 そこで、考えるべきは二つあると思います。
 一つは、二十一世紀型の国土戦略ということでございます。
 この高度成長下において日本の自然が荒らされてきたのは事実であって、それに対する抜本的な見直しが今議論されているわけですけれども、では二十一世紀型の国土づくりというのはどのように考えるべきか、そしてそのための公共投資をどうしたらよいのかと。まずここをしっかりと押さえていく必要があると思います。そこで、やはり基本的には、これからは自然の摂理に反しない、あるいはむしろ逆に自然の摂理をいただく、利用した、そうした新しい技術体系というものが求められていると、このように考えるわけでございます。
 先ほど宇野木先生の御指摘にもありましたように、例えば水というものを考えた場合にも、天から降った水が山の森にたまり、そして小川となり野を抜けて、そして川や湖を通って最終的に外海に流れていく。その中で、農業用水や生活用水にあるいは工業用水に取水され、また排水されていくわけでありますけれども、そうした全体を設計をして、そして新しいIT技術などを駆使しながら、そうしたものをどう利用していくか、そして傷んだ自然をどうやって回復するのか、こういう観点から国土戦略を考えるべきだと思います。
 もう一つは、産業振興ということでございます。
 私は中海干拓のときにも申し上げたんですが、干拓事業をやめさせるだけだったら簡単なことだと。でも、問題は、その干拓事業に込められた地元の思いの中には地域振興、衰退していく地域に対する焦燥感、そういう中で何とか地元にも産業を興したい、こういう気持ちがございます。そうしたものを受け止めていくならば、二十一世紀型の産業振興、そのためのインフラ整備というものはどのようにあるべきなのか、こういうふうに考えていくべきだと、こう考えているわけでございます。
 そういう意味での、大きな設計に立った上での施策というものが今こそ必要であり、誠に申し上げにくいことではありますが、この有明特措法はそういう目から考えますと、余りにも小さな小さなそういう対策だけが取られているのではないかという懸念を持ちますし、また最近、長崎県で、壱岐諸島で砂を取ったということで大きな問題になっております。同じ長崎県では、しかし湾内で砂を取って工事に使っているわけでございます。
 このように、ばらばらなことが行われているのが日本の行政でございますので、そうしたことを総合的に今こそ考えていただくということがこの場で私が申し上げたいことでございます。
この発言だけを見る →
田中直紀#16
○田中直紀君 どうもありがとうございました。
 田中町長さんにお伺いをいたします。
 先ほど、地盤沈下の問題あるいは背後地の問題、そしてまた農業の重要性な問題の御指摘がございました。特に、最大の災害対策というものが生活の中で当然、ここ十数年の間あったわけでありまして、やっと解消はしたという時点で今回の問題があるわけでございますので、大変地域の皆さん方は御心配があろうかと思いますが、この法案が成立をいたしましたら、既に、成立をするだろうということで、熊本県では具体的な計画を、案を作られておるわけでありますので、長崎県でも諸般にわたって今進めておられると思いますが、追加をさせていただいて、どういう点、重点的に取り組んでいったらいいかということを御示唆をいただきたいと思います。
この発言だけを見る →
田中克史#17
○参考人(田中克史君) 本県でのこの対応の中身については、私は承知をいたしておりません。
 それから、本法案が有明海の再生にどの程度寄与するかということでございますけれども、これは、有明海の疲弊に対して及ぼしている要因としては、恐らく人為的なものと様々な複雑な自然現象のメカニズムが起因しているものと二つあると思うんですけれども、私たちができるところは、この人為的な要因による疲弊であると思いますので、どの程度寄与できるのかということについてはなかなか難しいのではないかなというふうに思っております。
 ただ、言えることは、私どもは今まで余りにも自然に対して、あるいは有明海に対してむとんちゃくな乱暴な付き合い方をしてきたのではないかなというふうに思っておりまして、それは公共事業の問題、あるいは生活雑排水の問題、あるいは海洋投棄の問題、いろいろあろうかと思います。ただ、やっぱりこういったものも、この法律ができることによりまして、有明海に対する付き合い方といいますか、接し方をみんなが考えると、そういうのが私は非常に大きないい影響をもたらすんじゃないかというふうに思っておりまして、いわゆる環境教育というんでしょうか、余り具体的なことを申し上げられなくて申し訳ないんですけれども、住民の方々への啓発活動というのに非常に力を入れていけば、かなりやっぱり期待できるのではないかなというふうに思っております。
 おいおい具体的な施策については、ここにいろんな網羅的なものが挙げられておりますので、新しい有効な施策が分かり次第、順次追加的にやっていくと。今のところは、取りあえずできるところからみんなで手を付けていくと、こういったことでよろしいのではないかと、そういうように思っておりますけれども。
この発言だけを見る →
田中直紀#18
○田中直紀君 ありがとうございました。
 余り時間がございませんので簡単に御質問を申し上げますが、宇野木先生には、これから川辺川ダムの建設につきまして、地域の皆さん方も活性化のために、そしてまた今までの対策のためにも建設が必要であるというような方々も多くいらっしゃるわけでありまして、一つのこれからの方向性を出していかなきゃいけない時期じゃないかと私は伝え聞いておりますけれども、第三者委員会等が設立されて、有明海全体の問題を教訓にして、川辺川ダムも地域の皆さん方の理解の下に取り組めるのかどうか、その辺、先生の御見識も参考にされればいいんではないかと、私、委員の一人として思っておりますが、今後ともいろいろ御示唆をいただきたいと。回答は結構でございます。今日のお話を大変耳を傾けて聞かさせていただいた次第でございます。
 私はこれで終わらせていただきます。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#19
○和田ひろ子君 民主党の和田ひろ子でございます。
 四人の参考人の先生方、今日は本当にありがとうございます。座って質問をさせていただきます。
 まず、私は、この今回の法律案、よく何回も何回も読ませていただいております。この法律は、有明海及び八代海が、国民にとって貴重な自然環境及び水質資源の宝庫として、その恵沢を国民がひとしく享受し、後代の国民に継承すべきものであることにかんがみ、有明海及び八代海の再生に関する基本方針を定めるとともに、有明海及び八代海の海域の特性に応じた当該海域の環境の保全及び改善並びに当該海域における水質資源の回復等による漁業の振興に関し実施すべき施策に関する計画を策定し、その実施を促進する特別の措置を講ずることにより、国民的資産である有明海及び八代海を豊かな海として再生することを目的とするという法案であります。
 この法案、私は本当に私たちの世代が次代の、次代に住む日本の若者たちのために残すべき大きな役割を果たさなければいけないという思いで、参考人にお聞きをしたいと思います。
 まず、宇野木参考人、海に命を与えるために、有明海の再生には干潟、潮流、潮汐の大切さを言っておられますが、是非そのことをお聞かせいただきたいと思います。
この発言だけを見る →
宇野木早苗#20
○参考人(宇野木早苗君) 今、和田ひろ子先生がおっしゃったことを漁民の奥さんが言っております。というのは、結局海は天からの預かり物なのよと、子供たちに残すときにはきれいにしてから返そうねと、子供たちに返すときにはきれいにしてから返そうねと、そんなふうに漁師の主婦の方が言っておられます。今、先ほどおっしゃったこともそうだと思うんです。
 そういう観点から私は、有明海をきれいにして、そして回復してそれを後世に残すという観点からこの法案を考えるべきだと思うわけです。それにふさわしいものかどうか、それをやっぱり議員さんによく見ていただきたいと思うわけです。
 今お話しした潮汐、潮流のことですが、これは海の流動を支配する基本的なものです。例えば、三ページの図の五を見てください。結局、先ほど説明しましたように、この堰を造ったために、潮受け堤防を造ってもう中が、諫早湾の中がこれだけ潮流が弱くなっておりますね。それからまた、有明全体にしても潮汐が小さくなっております。こういうことは、もう結局海水の交換、流れ、それから海水の交換、それから、それはひいては物質の循環、生物生産全部にくっ付いてくるわけです。例えば、流れがないところはもうよどんじゃって、そして本当に汚れる、これは湖なんかも閉鎖的だからそうですよね。
 だから、結局そういう潮汐、潮流というのは海の環境を考える場合に基本的に重要なことであって、それを小さくしておいて、ゼロに近くしておいてそれで回復しますなんて言っても、僕はそれはできないと思います。だから、本質的にそういうことをやっぱりきちんと見て、そして考えないといけない、こんなふうに思っています。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#21
○和田ひろ子君 はい。ありがとうございます。
 そして、この一番の法律の原点は、瀬戸内海をきれいにするという瀬戸内海保全というものの法律がモデルになったと言われておりますが、瀬戸内海保全法の有効性を宇野木先生はどういうふうにお考えですか。
この発言だけを見る →
宇野木早苗#22
○参考人(宇野木早苗君) 私は、最初に言いましたように、瀬戸内海の法律が結成される前のことでやはり一つにして考えねばならないということで、全体としてやるべきだと思っております。
 ただし、法的なことに関しましては錦織さんが適当と思いますから答えていただきたいと思いますが、私の考え方で言いますと、やはりそれなりの効果はあったけれども、結局規制が、特に埋立ての規制が緩いためにそれができなかったということがあります。というのは、結局今の環境アセスメント、それにしてもすべて一つ狭い海域の一つの事業だけのアセスメントなわけです。だから、一つのアセスメントで、瀬戸内海に一つの事業をやったアセスメントであって、それで影響は小さかったのだといって認める、次のことも認める、結局小さいと認める。そういうことをやれば、もう湾あるいは瀬戸内海全体を埋め立てることだって可能なわけです。だから、そういうことを許すようなアセスメントあるいは規制法というのはいけないわけでありまして、同様に有明海もきちんとした規制しないと、同じようなことが起こってまいります。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#23
○和田ひろ子君 今、宇野木先生が、錦織先生の方が法律とか振られましたので、錦織先生にお尋ねをいたしますが、総量規制という、瀬戸内法にもありました、瀬戸内の保全法にもありましたが、総量規制にはどんな意味があるというふうにお思いですか。
この発言だけを見る →
錦織淳#24
○参考人(錦織淳君) その前に、瀬戸内保全法をどう評価すべきかということをごく簡単に申し上げたいと思いますが、この有明特措法案は、至るところで瀬戸内保全法のスキームといいますか規定ぶりを参考にしておられるわけでありますが、では、その瀬戸内保全法はどうであったかと申しますと、結論からはっきり申し上げて、そちらの方が私は優れていると思います。というのは、明確に規制権限を与えているということでございます。
 それから、お尋ねの総量規制についても、非常に具体的な規定を置いております。したがって、抽象的な規制権限を付与するだけではなく、もっと踏み込んだ内容になっているということでございます。それから、自然海浜の保護、そうしたことについてもうたっております。
 そういう意味ではかなり良い面も持っていたはずなんですが、実際には、先ほど宇野木先生も御指摘されたように、大量の廃棄物処理のための埋立てにこの瀬戸内の浅瀬がつぶされてしまったために瀬戸内は大きな打撃を受けた。そのことを阻止できなかったというのが一つの教訓として残っていると思います。
 お尋ねの総量規制について申し上げますと、私は基本的に、今私たちが有明の再生というふうに考えるべきときに、総量規制をメーンとして考えるべきなのかと。はっきり言えば、やはり私は、諫早干拓事業をやめる、こここそポイントであって、その海を駄目にした基本的な原因に手を付けずに総量規制をしたとしても、問題が少しずれていることになりはしないかということでございます。
 それからもう一つは、そのような総量規制は海全体に対する汚濁負荷が絶対量としてどうなのかという観点でありますけれども、今、漁民たちが問題にしているのは、潮受け堤防の内側の調整池から排出される排水に大きな問題がある、それが大きな汚濁負荷になっているということを言っているわけでありまして、そういう観点から考えますと、海全体に希釈をさせるという考え方は、既に水俣の例によっても明らかなように、必ずしも有効ではありません。具体的な汚濁負荷がどの水域にどのような形で出され、それがどのように漁業資源に影響を与えるのか、それをずばりとらえる対策こそ必要だと思います。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#25
○和田ひろ子君 私は、この有明の問題、いろいろ新聞や何かで見ていまして、本当に残念でたまらないのは、昔はみんなでこの海を利用して漁をしておられたんですけれども、今考えると、半分の皆さんは土木に関する仕事をされておられる、そして仲間の皆さんが漁業を守っておられる。本当に話を聞くたびにとても残念な思いがいたします。例えばごみ掃除などに従事しておられる皆さんとか、いろんな思いがあられるんではないかなという思いでお聞きをします。
 覆砂の事業とか種苗の放流とかごみの掃除なんというふうになっていますが、これは果たして有効なことなんでしょうかね。錦織先生にお尋ねします。
この発言だけを見る →
錦織淳#26
○参考人(錦織淳君) 先ほど、最初の意見陳述のときにも申し上げましたけれども、私はこれは有効ではないと思います。
 まず、稚貝、稚魚の放流というようなものについては冒頭でも申し上げましたし、更に覆砂について申し上げますと、その砂をどこから持ってくるのかという問題でございます。そうしますと、当然海から砂を取ってくるわけでありますが、他方でその海を荒らしてしまうという問題がございます。それからまた、外から砂を持ってまいりますと、その砂がその地域特有の、水域特有の生態系を壊すのではないかという問題も出てまいります。さらには、そもそも覆砂そのものが有効なのかということでございます。それは、単に下のヘドロを覆い隠すだけではないのか、文字どおり臭い物にふたということになりはしないかということでございます。
 そして、もう一つは、冒頭で申し上げたように、稚貝をそこに放流しても、あのタイラギの例のように、結局生育をしない、育たないということになってしまうのではないかという意味で、そのような有効性を期待することはできない、むしろ新たな害が生ずる危険性すらあるということを御指摘申し上げたいと思います。
 なお、漁民の心情をおもんぱかれば、今漁民は、本来海で生活をしたい、海のタイラギで生計を立てたい、そう思っております。でも、そう思ってもそれでは食べていけない、背に腹は代えられない、仕方なく泣く泣くマリン工事に従事をし、そしてそれに予算が付けばそれにすがらざるを得ないという、ある意味では悲劇的な状況にあると。しかし、それではおかに上がったかっぱだということになり、将来に夢も持てない、後継者も作れない、そういうことになってしまうおそれがございます。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#27
○和田ひろ子君 錦織先生に続けてお尋ねをしますが、御地元の中海の例なんかを参考にして、これ、諫早とか有明に代替的なものがありますかね。ちょっとお尋ねします。
この発言だけを見る →
錦織淳#28
○参考人(錦織淳君) 私はやはり、単に批判をし反対するだけでは問題の解決にならないと思います。推進をしたい人たちの思いと、反対、批判をする人たちの思いの共通点はないのか、これがいつも考えてきたことでございます。
 先ほど田中先生の御質問にもちょっとお答えしましたけれども、中海干拓の場合でも、既に造られた堤防や水門を利用して新たな水質の改善、こういうことが可能であるし、新しい産業振興が可能であるという提案をいたしました。私は、この諫早においても同じようなことが可能であると思っています。しかし、諫早湾の方がいささか問題が深刻なような気がいたしております。
 しかし、オランダの例を見ますと、干拓の先進国です。オランダから随分土木的にも干拓技術を学んだわけでありますけれども、そのオランダは今どんどんと造った堤防を開放しております。そして、いったん造った堤防にすごい勢いで外の海流が流れている、そういうビデオ放映もテレビなどで流されております。
 そうした例に見られるように、結局は、そうした新しい国土戦略といいますか、地域振興のためのそういう公共投資をどこにどのようにやったらいいのかと、これこそ正に政治の問題だと思います。そのために、いったん造ったものを壊すことも恐れてはなりません。あるいは、それをうまく利用する方法もあるかもしれませんが、しかし、造ったからただ前に進めていけばいいという考え方は既に国際的にはもう取られていない考え方だということを申し上げたいと思います。
この発言だけを見る →
和田ひろ子#29
○和田ひろ子君 最後の質問になりますけれども、錦織先生にまたお尋ねをします。
 先ほど、田中委員のところで、公共事業の在り方、今も少しお答えになっていると思いますが、私も午後からこの質問をさせていただくつもりでおりますが、今まで掛けたお金が大切じゃないか、もったいないじゃないかという話もたくさんあります。でも、私は戻る勇気も絶対に必要だというふうに思っています。宇野木先生に先ほど申し上げたように、後世にすばらしい海を残すとすれば戻る勇気も絶対に必要だというふうに思っていますので、公共事業の在り方についてもう一度お尋ねをしまして、私の質問は終わります。
この発言だけを見る →
← 戻る