法務委員会

2017-06-13 参議院 全240発言

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会議録情報#0
平成二十九年六月十三日(火曜日)
   午前十時二分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月九日
    辞任         補欠選任
     山添  拓君     仁比 聡平君
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     牧野たかお君    渡辺美知太郎君
     仁比 聡平君     山添  拓君
 六月十三日
    辞任         補欠選任
     小川 敏夫君     福山 哲郎君
     山添  拓君     仁比 聡平君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
               渡辺美知太郎君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                福山 哲郎君
                仁比 聡平君
                山添  拓君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   内閣官房副長官
       内閣官房副長官  野上浩太郎君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
       外務副大臣    薗浦健太郎君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   政府参考人
       警察庁長官官房
       審議官      高木 勇人君
       法務省刑事局長  林  眞琴君
       法務省矯正局長  富山  聡君
       外務大臣官房審
       議官       水嶋 光一君
       外務大臣官房審
       議官       相木 俊宏君
       外務大臣官房参
       事官       飯島 俊郎君
       外務省中南米局
       長        高瀬  寧君
   参考人
       日本大学危機管
       理学部教授    福田  充君
       弁護士      山下 幸夫君
       一橋大学名誉教
       授
       弁護士      村井 敏邦君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○参考人の出席要求に関する件
○組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関
 する法律等の一部を改正する法律案(内閣提出
 、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
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秋野公造#1
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日、牧野たかお君が委員を辞任され、その補欠として渡辺美知太郎君が選任されました。
    ─────────────
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秋野公造#2
○委員長(秋野公造君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に日本大学危機管理学部教授福田充君、弁護士山下幸夫君及び一橋大学名誉教授・弁護士村井敏邦君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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秋野公造#3
○委員長(秋野公造君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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秋野公造#4
○委員長(秋野公造君) 組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案を議題とし、参考人から御意見を伺います。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、福田参考人、山下参考人、村井参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、福田参考人からお願いいたします。福田参考人。
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福田充#5
○参考人(福田充君) 日本大学危機管理学部の福田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
 この度、テロ等準備罪を導入する組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案に対し、賛成を表明いたします。
 現在、ほぼ毎日のように、世界のどこかで貴重な一般市民の命が奪われるテロ事件が発生しています。つい先日も、イギリスのマンチェスターでは、ライブ会場で八歳の女子児童が死亡する爆弾テロが発生しました。シリアやイラク、アフガニスタンといった中東や、ソマリア、ナイジェリアといったアフリカだけでなく、テロリズムは欧米各国でも繰り返し発生し、アジアにも拡大しつつあります。イスラム過激派によるグローバルジハード戦略によりテロリズムは国際化し、国際テロの時代が到来しました。
 一般市民の命を無差別に奪う無差別テロを根絶するためには、世界各国が協調して国際的なテロ対策を実施することが求められています。テロ対策はもはや一国だけでできる時代ではありません。戦争や紛争など安全保障の問題だけでなく、テロリズムに対する危機管理にも国際的な協調路線が求められており、テロ対策のためのグローバルネットワークに参加することが日本にも求められています。国際社会の中で日本がその責任をどう果たすかが、大きな期待とともに注目されています。
 しかしながら、我が国日本がその国際社会における責任を十分果たしているとは言えない状況であります。これまで日本では、テロリズムの研究や教育、テロ対策の実施は様々な制約により十分になされてきませんでした。
 私自身がテロ対策の研究を始めたのは一九九五年のオウム真理教による地下鉄サリン事件がきっかけでありました。その二か月前には阪神・淡路大震災が発生し、日本の災害対策、危機管理体制の不備が指摘され始めたのがこの九五年であります。このとき以来、私自身、災害対策やテロ対策、戦争、紛争などの安全保障を総合してオールハザードアプローチで研究する危機管理学の研究を始めました。それから二十二年がたちます。
 オウム真理教による地下鉄サリン事件は、世界で初めて大都市における公共交通機関が狙われた無差別化学兵器テロでありました。九五年当時の日本ではまだテロリズムという概念が十分に理解されず、メディア報道においても議会の議論においても、テロリズムという枠組みで議論、検討されることは当時ありませんでした。それと同時に、あれだけの事件の兆候がありながら、なぜ地下鉄サリン事件を未然に防止できなかったのか、日本のインテリジェンス活動やテロ対策の限界が露呈いたしました。
 その後、九八年に発足した警察政策学会テロ対策研究部会に参画し、コロンビア大学戦争と平和研究所においてテロリズムとインテリジェンスについて研究するなど、私自身、二十二年間、テロ対策について向き合ってきました。
 今、日本は、テロ対策におけるグローバルスタンダードを理解し、国内に整備するための産みの苦しみの過程にあると思います。第二次安倍政権が整備してきました国家安全保障会議設置法、特定秘密保護法、平和安全法制、そしてこのテロ等準備罪は、世界規模で国際協調しながら世界のテロ対策、安全保障を確立するために日本も協力する姿勢を示す一貫した積極的平和主義の制度化であったと評価できます。テロ等準備罪もグローバルな視点で考えなくてはなりません。
 テロ等準備罪が求められる理由又はその目的には三つの論点があると思います。一つ目は国際組織犯罪防止条約、TOC条約の締結、二つ目は二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたテロ対策の強化、三つ目はテロ事件を未然に防ぐためのリスクマネジメントの確立です。この三つの論点は時間が切迫した喫緊の課題であり、この三つの課題を同時に解決するための方策がこのテロ等準備罪だと考えられます。
 一つ目の論点です。
 百八十七の国と地域が既に締結している国際組織犯罪防止条約は、現在の国際的なテロ対策の取組としても極めて重要な枠組みだと考えます。国際的にも、テロ対策としてテロ組織の資金源を断ち、テロ組織の活動を包括的に防止し、テロ事件の捜査や情報共有を促進するために、テロ対策にとっても重要な国際条約であります。
 なぜこのような国際組織犯罪防止条約が国際テロ対策として有用とされているかといいますと、国際社会においても、一般犯罪とテロリズムの線引きは極めて難しく、犯罪組織とテロ組織の線引きは非常に困難な状況にあるからです。
 二〇一四年の国連安保理決議第二千百九十五号においても指摘されているとおり、テロ組織と犯罪組織は部分的に融合し、連携し合っています。マネーロンダリングなどの諸活動において犯罪組織やテロ組織自体が国際的にネットワーク化され、連携している状況があります。二〇一五年の国連事務総長報告書においても、武器の密輸、人身取引、天然資源の不法取引、マネーロンダリングなど、組織犯罪の資金がテロ組織に流れている事例が具体的に指摘されております。
 日本としてこの国際組織犯罪防止条約を締結することで、テロリズムに必要な資金や資源を供給するための周辺的な組織犯罪を防止することが可能となり、テロリズムの根本を絶つことができます。既に百八十七の国と地域が締結している国際組織犯罪防止条約を締結することで、テロ対策においても諸外国と情報共有や捜査共助が促進され、テロリズムの防止のための国際協力が強化されると信じます。
 二点目の論点です。
 テロ等準備罪には、非常に重要なテロ対策の施策が網羅されていると評価できます。
 具体的な事例でいえば、アフガニスタンではタリバンが麻薬を栽培して資金源としています。アフリカではボコ・ハラムが児童を誘拐して少年兵や自爆テロ要員として利用し、人身売買で資金を得ています。多くのテロ組織が様々な活動を通じてマネーロンダリングや武器の密輸、人員のリクルートを行っています。そのような組織に不可欠な資金や資源を供給する行為を処罰し、テロ組織を弱体させることが求められています。こうした不法行為を取り締まる取組は国際的な体制の中でこそ実現するものであります。国際社会の中で日本だけが抜け穴になってはなりません。
 同時に、現代のテロリズムの形態は極めて多様であります。かつての要人暗殺テロから一般市民を標的にした無差別テロへ、ハイジャックから人質テロによる要求型テロ、毒物を混入したりすることで社会を混乱に陥れる社会不安型テロなど、その形を変えています。さらには、電気や水道、ガスなどの社会インフラを標的としたテロ、コンピューターネットワークを標的としたサイバーテロ、航空機、鉄道などの交通機関を標的としたロジスティクステロなど、極めて多様なテロリズムが発生しています。
 こうしたテロリズムの標的となっている、ターゲットである社会インフラを守るための法制度が不可欠であり、一度起こってしまったら社会に絶大な被害をもたらすこうした現代的テロリズムは、未然に防止するための法体系が求められています。そのための電気事業法、有線電気通信法、ガス事業法、水道法の改正であり、そのための道路交通法などの改正であると評価できます。
 また、そのテロリズムの道具、手段も、爆弾や銃だけではなく、核、生物兵器、化学兵器によるNBCテロ、CBRNテロなど、多様化しています。こうしたテロの道具となる武器の製造、保持による使用を未然に防止するため、組織犯罪防止法改正案では、武器等製造法、銃砲刀剣類所持等取締法の改正、火炎瓶や対人地雷、クラスター弾、ダーティーボム、細菌兵器、化学兵器の製造禁止や規制に関する法改正が網羅的になされております。
 テロ等準備罪に挙げられているこの二百七十七の項目は、以上のようなテロリズムの多様化に対応し、テロリズムの周辺行為をカバーしているという点において、テロ対策の研究者の目から見ても非常に抑制的であると同時に、網羅的で合理的な内容を伴っていると評価いたします。
 三点目の論点です。
 危機管理には、危険を未然に防ぐためのリスクマネジメントの側面と危機管理が発生した事後対応のためのクライシスマネジメントの側面が両方あります。現在の危機管理において、危険を未然に防ぐリスクマネジメントが重要視されています。
 同様に、テロ対策において重要なのはテロを未然に防ぐための取組であります。テロを未然に防ぐためのテロ対策を世界各国が整備しています。特に欧米の先進国においては、それぞれの国の文化や伝統に合った形での特徴あるテロ対策が整備されています。長年IRAと戦ってきたイギリスには、二〇〇〇年テロリズム法という基本法を基に、二〇〇六年テロリズム法、二〇〇五年テロリズム防止法などによる補完によってテロ事件を未然に防ぐための制度が構築されています。二〇〇一年に九・一一同時多発テロ事件を経験したアメリカは、パトリオット法においてテロ事件を未然に防ぐための網羅的なテロ対策を構築しました。テロを未然に防ぐためには、計画と準備行為の段階で拘束する、処罰するという枠組みが、これまで先進国におけるグローバルスタンダードと言えます。
 国際化したテロリズムに対して日本が立ち向かうためには、こうした欧米先進国におけるテロ対策の制度と歩調を合わせながら各国のインテリジェンス機関とテロリズムの情報共有を強化するなど、国際協調が不可欠です。しかしながら、日本にはこれまでテロを未然に防ぐための法制度が未発達でありました。日本にある陰謀罪、予備罪、準備罪等は極めて限定的で、テロ対策の分野で有効性があるとは言えない状態だと思います。
 こうした制約をグローバルスタンダードのテロ対策に適合させるためには、組織的犯罪集団に限定し、合意罪の観点から実行準備行為の段階で処罰するという枠組みが、日本のこれまでの法制度の構造になじむものと評価できます。日本の法制度の構造や歴史、文化を考慮した結果としてテロ等準備罪という制度を導入する組織犯罪処罰法改正案には合理性があると判断いたします。
 最後に、アメリカやイギリス、フランスなどの民主主義先進国においても、こうした国際基準にのっとったテロ対策が運営されています。民主主義を守るためには、テロ対策にもシビリアンコントロールが不可欠です。テロ対策における安全、安心と自由、人権の価値対立をどうやって克服するか、その両方の価値のバランスをどう取るか、合意形成が日本においても重要になります。しかしながら、自由、人権と対立するテロ対策は一切まかりならぬという考え方は、日本は国際的責任を果たすことはできません。
 私のコロンビア大学時代の恩師でありますロバート・ジャービス教授は、民主党員でありましたが、論文の中でこう言っております。テロ対策やインテリジェンス活動は民主主義にとって危険であるが、国民の生命や生活を守るためには必要不可欠なものである、民主主義的なアプローチによるテロ対策の構築が求められている。
 これまで二十年にわたって、私自身、このテロ対策における安全、安心と自由、人権の価値対立とバランスについて考え続けてきました。その観点から見ても、このテロ等準備罪は、国民の自由、人権に十分配慮した抑制的なテロ対策であると評価できます。
 以上のような理由で、私はテロ等準備罪を導入する組織犯罪処罰法改正案に賛成いたします。
 御清聴ありがとうございました。
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秋野公造#6
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、山下参考人にお願いいたします。山下参考人。
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山下幸夫#7
○参考人(山下幸夫君) 弁護士の山下です。本日は参考人として意見を述べる機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、二〇〇五年から二〇〇六年当時からかつての共謀罪法案の反対運動に関わってきた立場から、この法案に反対する意見を述べさせていただきます。
 なお、以下に述べる内容は私個人の見解であり、日本弁護士連合会の見解とは異なるということをあらかじめお断りいたしておきます。
 まず、この法案六条の二の見出しは計画罪でありまして、テロ等準備罪という言葉は法案のどこにもありません。本法案の六条の二にテロリズム集団という用語はありますが、あくまでも組織的犯罪集団の例示にすぎないとされていますから、法案の六条の二をテロ等準備罪と呼ぶこと自体がミスリーディングであり、不適切だと考えられます。
 本法案の一条の目的規定には、国連の越境組織犯罪防止条約、以下TOC条約と言いますが、この条約を実施するためという文言は付け加えられようとしていますが、テロ対策という文言の追加はありません。そもそも、TOC条約の二条は、金銭的利益その他の物質的利益を直接又は間接に得ることを目的とする団体を組織的犯罪集団と定義しており、マフィアや暴力団によるマネーロンダリングなどの犯罪を取り締まることを目的とする条約であります。物質的な利益を得ることを間接的に目的とするという意味においてテロリスト集団がTOC条約で全く対象にならないわけではないとしても、その主たる目的が組織犯罪対策であり、テロ対策でないということはTOC条約の審議経過からも明らかであります。
 我が国においては四十五の予備罪、準備罪があり、予備罪についても共謀共同正犯が認められております。また、銃砲刀類の所持が罰せられるなど、実質的に見て、未遂より前の段階で組織的犯罪集団の重大な犯罪を取り締まる法律は既に存在しており、二百七十七もの罪について計画罪を新設しなければTOC条約を締結できないとは考えられません。必要があれば具体的な立法事実を踏まえて一つずつ個別立法で対応すれば足りると考えられますし、それはTOC条約を締結した後に行うこともできると考えられます。
 我が国は、二〇〇四年に内閣官房長官が本部長である国際組織犯罪等・国際テロ対策推進本部がテロの未然防止に関する行動計画を定め、関係する省庁によって様々な法改正や省令の改正などが実施されています。また、法務省が所管するいわゆるテロ資金提供処罰法や警察庁が所管するいわゆるテロ資金凍結法というものがございます。我が国は国連の十三のテロ防止関連条約に加盟し、必要な国内法の整備を終えており、テロ対策は十分にされてきております。したがって、テロ対策のために二百七十七もの計画罪を新設する本法案が必要であるとは考えられません。
 そもそもテロ対策という意味においては、いわゆるローンウルフ型のテロや組織的な背景のないテロには全く対処できないのですから、テロ対策というのは後付けの理由としか考えられません。
 次に、法案の六条の二の計画罪の要件について意見を述べます。
 法案が提案する計画罪の中核的な概念は計画であります。この計画については、かつての共謀罪法案の共謀や共謀共同正犯における共謀と基本的には同じであると考えられます。そうであれば、いわゆる順次共謀や黙示の共謀による計画も認められると考えられます。
 ところが、林刑事局長はこの国会において、法務委員会の審議において、この計画と共謀がほぼ同じ意味であるということは認め、順次共謀も認められると答弁していますが、黙示的に成立することは考え難いと答弁しています。しかしながら、この答弁は、二〇〇五年秋の特別国会でなされた大林刑事局長や南野法務大臣による目くばせでも黙示の共謀が成立するとした答弁と矛盾しております。
 この法案が成立した後、裁判所が判断する際には、黙示の共謀による計画の成立を認める可能性が極めて高いと考えられます。しかも、捜査段階における逮捕や捜索差押えなどの強制捜査の際には第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、捜査機関による恣意的な運用のおそれがあります。
 そして、黙示の共謀でも計画が成立するということになりますと、何の言葉も交わさなくても成立し得るということになりますので、理論的には目くばせすらも不要であると考えられます。捜査機関がある団体の構成員の内心を探り、重大な犯罪を実行することを合意したと認定することになりますから、それはまさに憲法が保障する内心の自由の侵害となると考えられます。
 このような極めて曖昧な計画という概念について第一次的に捜査機関による判断で認めるとすれば、何の謀議もしていない人たちについて計画罪が成立するとされて冤罪を生むおそれがあります。
 次に、政府が団体を限定したと言う組織的犯罪集団という概念についてです。
 これは、結合関係の基礎としての共同目的について、継続的な結合体全体の活動実態等から見て社会通念に従って客観的に決めるとされており、対外的に環境保護や人権保護を標榜している団体であっても、それが隠れみのであるとか名目にすぎない、実態として構成員の結合関係の基礎が一定の重大な犯罪を実行することにあると認められる場合には組織的犯罪集団に当たり得ると金田法務大臣や林刑事局長が答弁しております。これも、第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、恣意的な運用のおそれがあり、普通の市民運動団体や労働組合なども組織的な犯罪集団とされるおそれがあります。
 しかも、団体によっては、構成員の主要な者が一定の重大な犯罪を実行することを計画したと捜査機関によって認定されることによって、そこから直ちにその結合の基礎としての共同目的が一変したとして組織的犯罪集団になったと認定される可能性があります。
 法案にはこれを否定する文言がなく、その歯止めがありません。
 政府は、組織的犯罪集団という概念を入れたことによって適用範囲は限定されることになったと説明しています。しかしながら、条文上、計画をする主体は当該行為を実行するための組織のうちの二人以上の者です。これは組織犯罪処罰法三条一項と似た書きぶりになっており、そこでは組織というのは犯罪実行部隊を指すとされ、必ずしも団体の構成員である必要はないと解されていました。
 そして、この国会においても、本法案の六条の二の第一項について林刑事局長は、組織的犯罪集団の構成員に限らずその周辺者が主体となり得るということや、周辺者には本罪の幇助犯が成立し得ると答弁しています。すなわち、周辺者という曖昧な概念によって特定の団体の構成員以外の者が計画罪の主体となることが明らかとなっています。さらに、法案の六条の二の第二項は、そもそも組織的犯罪集団の構成員ではない者が組織的犯罪集団に不正権益を得させる等の目的で行った行為を計画する行為も処罰することになっています。
 したがって、組織的犯罪集団という要件を加えたことにより適用される範囲が限定されることにはなっていないということは明らかであります。
 次に、かつての共謀罪法案にはなかった準備行為という要件について林刑事局長は、計画とは独立した行為で、計画が実行に向けて前進を始めたことを具体的に顕在化させる行為であると説明し、予備罪における予備行為のような客観的に相当な危険性がある必要はないと説明しています。これは、アメリカの各州のコンスピラシーに要求されている顕示行為、オーバートアクトを取り入れようとするものだと理解できますが、そうであるならば、この条文の書きぶりと併せると処罰条件と見るのが自然です。
 ところが、林刑事局長は、準備行為は本罪の成立要件であると説明し、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査は準備行為がなされてからしかできないと説明しています。
 この点についても、この法案が成立した後、裁判所が判断する際には、処罰条件であるとして計画だけで計画罪が成立すると判断され、準備行為を待たずに逮捕できると解釈される可能性があります。そして、この意味における準備行為は予備行為における客観的な危険性がなくてもよいというのですから、ATMでお金を下ろすという行為のような日常的な行為でもよいということになります。第一次的には警察などの捜査機関の判断によることになりますから、計画をした者の日常的な行為を捉えて準備行為だと恣意的に認定されるおそれがあります。
 以上のように、本法案が定める要件はいずれも極めて曖昧かつ不明確であり、それにもかかわらず、現行法上で二十一の罪にしか陰謀罪、共謀罪が規定されていないのに、これを一気に二百七十七も新設しようとするのは、刑事法の体系を根底から覆すものであります。
 これによって、刑事法の構成要件が持っている自由保障機能が失われるとともに刑事法の謙抑主義が否定され、市民運動団体や労働組合を権力が日常的に監視し、その構成員である市民の自由や人権が侵害されることになります。
 計画罪における計画、組織的犯罪集団、準備行為というそれぞれの要件を認定して検挙するためには、捜査機関が特定の団体の構成員やその周辺者の活動を日常的に監視しなければなりません。現在では、犯罪捜査は、犯罪発生の高度の蓋然性がある場合には犯罪が発生するよりも前から任意捜査が可能であると解されており、林刑事局長は、例えばテロの計画が行われ、その実行準備行為がそれに引き続いて行われる蓋然性が高度に認められるような犯罪の嫌疑がある一定の場合に任意捜査を行うことが許されると答弁しています。
 ただ、高度の蓋然性があれば任意捜査ができるというのであれば、計画の後に限らず計画の前からも任意捜査ができると考えられますし、計画があったことを知るために警察などの捜査機関が日常的に特定の団体の構成員やその周辺者を尾行するなどの任意捜査をすることが可能である必要があり、そのための法的根拠を与えることになります。
 これにより、私たち市民は、それぞれの要件が極めて曖昧で不明確であるために、何が許され何が許されないのかの区別が判然とせず、政府に反対する運動をすること自体が萎縮させられてしまいます。最近では、対象犯罪に税法や破産法などがあることから、共謀罪法案に反対するビジネスロイヤーの会が、企業活動が萎縮するという声明を出しているところであります。
 最近、国連のプライバシーに関する特別報告者であるジョセフ・カナタチ氏が指摘しているのは、まさに捜査機関による監視活動が市民のプライバシーを侵害するとの懸念であり、それに対する何らの歯止めがないということの指摘でありました。カナタチ氏は、国民に対する捜査機関の活動に対しては、事前、事後の第三者によるチェック機関を設ける必要があると指摘しています。この指摘に耳を傾け、本法案の審議においても参考にすべき点があると考えられます。
 日本政府は、国連の人権理事会に対して、特別報告者との有意義かつ建設的な役割の実現のため今後もしっかりと協力していくと述べていたにもかかわらず、カナタチ氏の公開書簡について国連の総意ではないなどとして抗議書を送付しただけで、現在に至るまで法案の英文も送付せず、質問にも回答していないということは極めて残念な対応であると言わなければなりません。
 我が国において、任意捜査については令状主義の適用はありませんから、警察などの捜査機関による尾行などの任意捜査については誰もチェックすることができず、そのため、濫用のおそれが強く懸念されます。
 我が国において、逮捕や捜索差押えなどの強制捜査については、令状主義により裁判官の発する逮捕状や捜索差押許可状が必要ですが、その却下率は極めて少なく、十分なチェックがなされているとは言えません。それは、捜査機関が作成した疎明資料だけで裁判所が判断しているからだと考えられます。韓国では、逮捕する際に被疑者を裁判所へ呼び出して、その言い分を聞いた上で逮捕状を発するかどうかを決めており、我が国の強制処分における令状主義の在り方を見直す必要があると考えられます。
 警察は、GPSの発信装置を被疑者の車両等に取り付けて、そのGPSによる位置情報を取得するというGPS捜査を任意捜査であると解して裁判官の令状を取得することなく実施していたことが判明して、刑事裁判においてその証拠能力が争われ、本年三月十五日の最高裁判所大法廷判決において、その捜査は強制処分であり、令状なしに行われたGPS捜査は強制処分法定主義に反すると判断されました。しかし、警察はその判断がなされるまでGPS捜査のほとんどのケースで無令状で実施していたのですから、警察による監視型捜査が濫用されるおそれがあるというのは単なる杞憂ではなく、大いに予想されることと言わなければなりません。
 政府は、今回の法案は刑事実体法の改正であり、刑事手続法の改正ではないということを強調しています。しかし、新たに市民にも適用される可能性のある組織的威力業務妨害罪や著作権法違反の罪などを含む二百七十七もの罪について計画罪として新たに処罰することができる根拠を作ることになりますから、捜査機関にはそのための捜査をする権限が与えられることになります。警察などの捜査機関の権限を拡大する法律であるということは間違いありません。今回、政府が二百七十七もの計画罪を新たに作ろうとし、これを急いでいる本当の狙いは、まさにこの点にあると考えられます。
 この意味において、これはまさに治安立法なのです。現代の治安維持法だという指摘がありますが、二百七十七もの計画罪が特定秘密保護法や通信傍受法などと併せて運用される中で、同じような、又はそれ以上に政府に反対する国民の活動を弾圧する武器にならないとも限らないと考えられます。
 二百七十七の罪の計画罪のターゲットは、政府がしようとすることに対して反対の運動をする市民運動団体や労働組合などであると考えられます。この法案が成立すれば、すぐにではないにしても、政府の活動に対して反対する団体、例えば沖縄の基地建設に反対する団体や原発の再稼働に反対する団体、そして集団的自衛権の行使として自衛隊の海外派兵に反対する団体や憲法改正に反対する団体について、その構成員や周辺者が警察などの捜査機関によって日常的に監視されることになることが予想されます。
 さらに、将来的には、二百七十七の罪を対象とする通信傍受法の改正や室内盗聴を可能とする立法がなされ、司法取引の対象犯罪とする刑事訴訟法改正もなされると考えられます。既にある町中の多数の監視カメラと顔認証技術の利用を併せて私たちの活動が日常的に監視される監視国家になることが強く懸念されます。
 現在、このような監視によって得られたデータを捜査機関が蓄積、管理して運用することについて何らの法的規制がありません。今回の法案を検討するに当たっては、捜査機関による私たちのプライバシー情報の収集、蓄積、運用することに対する法的規制についても併せて検討しなければならないはずであり、この点に関する議論を全くしないまま今回の法案を成立させるのは、私たち市民が抱いている深刻な懸念を払拭することは到底できません。
 今回の法案審議を見ても、審議をすればするほど法案の抱える欠陥や問題点が明らかとなっています。今回の法案の審議については、今言ったような、監視したことによって得られたプライバシー情報の収集、蓄積、運用についての規制に関することも含めて、その在り方について一から見直すべきであり、一定の時間が経過したからといってこれを可決するというような、そのような法案の審議の在り方に対しては強く反対いたします。
 本法案は、これは廃案にすべきものであると考えるものであります。
 以上であります。
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秋野公造#8
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、村井参考人にお願いいたします。村井参考人。
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村井敏邦#9
○参考人(村井敏邦君) 一橋大学名誉教授の村井です。
 一応、肩書、弁護士というのも付いておりますが、ほとんど弁護士の活動らしいものをしておりませんので、今日の肩書は名誉教授というだけで、刑事法を専門にして研究してきた者の立場から、この法案に対する反対の意見を述べさせていただきます。
 お手元にレジュメを配らせていただきました。
 まず、基本的なところですね。刑法の原則は何か。行為主義原則というのが刑法の原則です。行為者を中心とする行為者主義というのもありますけれども、戦後の体制は行為主義原則を取っております。これはなぜかというと、戦前における反省に基づくものです。戦前、日本及びナチス刑法が、行為者の危険性を処罰するということで、行為がなくとも処罰するという刑法体系あるいは治安法というのを持っておりましたが、これに対して、いかにそれが人民の、人々の自由を侵害し、恐怖に陥れたかということに対する反省から、刑法は行為がなければ処罰しないというのを基本原則とするというように多くの人たちが、刑法学者が考えてきたところです。
 これに対して、最近、先ほど参考人の発言にもありましたけれども、危機管理、あるいは危険が横溢しているというようなところから、危険予防の観点から処罰を早期化すべきであるという議論も起きてきております。その観点から、行為がなくても処罰をするというのが現代に適応しているんだと、刑法も現代に合わせて考えを変えなければいけないという議論が一方であります。
 しかし、基本原則を変えて現代に適応する、まあ現代をどう見るかというのはこれ自体議論が分かれるところではありますが、危険だからということで、その危機管理だけで刑法の基本原則を変えるというのは、これは我々刑法を専門として研究してきた者にとっては言わば学者の良心を捨て去るようなもので、この考え方に基づいた立法に賛成するわけにはいきません。
 そして、いや、この国会の審議の中で政府が主張することには、必ずしも行為を無視しているわけではない、従来の共謀罪と違って単に内心を処罰するのではないんだ、準備行為とか計画というのは一種の行為なんだと、だから、行為を待って処罰するんだから原則を変えるわけではないという発言もされておりますが、この場合の行為主義におけるところの行為とは、犯罪の実行行為を待って処罰するというのが行為主義であって、その前の準備とか計画で処罰するのが行為主義に合致するわけではないので、準備、計画という言葉に変わったところで行為主義原則をないがしろにするという点においては変わりがないというふうに言わざるを得ません。これが第一点ですね。
 それから、提案されているテロ等準備罪は、先ほどの発言にもちょっと出しましたけれども、共謀罪とは異なるんだというように主張されています。法構造も違うんだというように主張されておりますが、これに対しては大きな意味で二つの疑問がある。形式的な点での疑問と実質的な点での疑問です。
 形式的な点での疑問の第一は、山下参考人からも出ましたけれども、条約の要請に合致するのか。
 TOC条約、私はこれを越境的組織犯罪防止条約というので国際的というようには言っておりませんが、トランスナショナルですので、インターナショナルではないから越境的と訳すのが妥当であろうということで言っておりますが、一々そういう言葉を使うのはややこしいのでTOC条約というので省略してお話ししますけれども、TOC条約の要請は、第五条において、共謀罪又は参加罪を設けることと。これが義務的であるかどうかということについてはこの議会における審議においても議論がされてきたところでありますけれども、いずれにしても共謀罪又は参加罪を設けるということが五条で要請されているわけですが。
 テロ等準備罪、これも構成要件としては計画というのが構成要件、計画した者ということになっておりますのでそれが構成要件と考えざるを得ないんですけれども、刑事局長は準備行為も構成要件だと言って主張してきている、主張なんですが、それが通るのかどうか。この条文構成からいってそうは見れないだろうと思うんですが、構成要件としては計画ですね、計画で処罰するということですが、計画罪ということになるとこれは共謀罪と違うのか違わないのかよく分かりません。
 実は、後でもちょっと触れますが、いわゆる東京裁判で、侵略戦争の罪と侵略戦争を共謀したあるいは計画した罪、この両者で処罰されているのが東京裁判です。この点は御存じの議員の方々には御存じだろうと思いますが、共謀罪というのが言わば日本人に適用された数少ないといいますか、唯一、日本で行われた裁判においては唯一と言っていい、東京裁判において侵略戦争の罪という実行した罪と併せて準備罪あるいは計画罪というのが処罰されております。併存して処罰できるんだという形で処罰されておるんですが、そうなると、共謀というのと計画というのと準備というのはどういう関係になるんだ、違うということになるのか、そうすると条約の要請には合致しないということになってしまうという、形式的な議論をしますとそういうことになり得る。
 第二番目には、今も言いましたように、共謀罪と異なるということになると共謀罪との二重処罰は可能であるというようなことになってしまう。日本では共謀罪は設けない、計画罪だけだということになると日本での二重処罰はないということになりますが、これはあくまでも条約との関係で設けられる罪だということになると国際的には二重処罰ができると。他国において共謀罪で処罰された者が日本においてもなお計画罪で処罰されると、あるいは、他国では共謀罪で無罪になった者が日本で計画罪で有罪になるということもあり得るのか、こういう問題が出てきます。違うのか違わないのか、形式的な議論を前提とするとそういう疑問が出てくるわけです。
 実質的な点では、既に山下参考人の中でも指摘がありましたが、目的規定に条約批准のため、TOC条約批准のためとしかなくて、テロ対策は目的にはないんですね。にもかかわらず、これはテロ対策のための法案であるということが主張されている。どうしてなんだろう。テロ対策が目的ならば、テロ対策というのを第一条、法案の、法律の目的の中に書くべきであります。書いていない。それは書けないわけですね。やはりTOC条約の受けた形での、その批准のための法案であるということであるわけでしょうから、そうするとそこにテロ対策というのを入れるわけにいかない。
 テロ対策というのは、この条約を制定するときに日本も反対して、それを項目として入れるのは、入れなかったと。その入れないことについての理由はあるというのは審議録を見て分かりますけれども、しかし、いずれにしても、日本は入れることに反対したといういきさつからすれば目的の中にテロ対策を入れるわけにいかない。にもかかわらず、テロ対策法案なんだということを主張する。それは一体どういうことなのか、私には理解できません。
 それから、先ほど言ったように、計画という言葉に変えたから共謀とは違うんだと、その根拠は何なんだ。実質的に考えてみると、審議の中でもだんだんやはり具体的、個別的な計画、計画というのは合意なんだと。結局、合意ということに行き着く。とすると、共謀と異ならないということになります。一体そこはどうして計画というのが出てきたのか。計画という言葉についての法案の中での定義は一切ありません。したがって、刑事局長がそれは具体的なんだと言っても分からぬですね。国民には分かりません。私にも分かりません。もし計画が共謀とは異なるんだったら、ちゃんと計画についての定義をすべきです。その定義規定さえない。
 さらに、準備行為を要求する意味ですけれども、この点について、先ほどの山下参考人の発言にもありましたけれども、刑事局長は最後のところでちょっとそこが曖昧になっているんですが、計画と準備、備わって初めて成立するんだ、この罪は成立するんだというので、準備行為は構成要件であるという考え方を示しておりました。ところが、捜査の問題になってくると、計画したことに十分な嫌疑がある場合には捜査が可能であると。そうすると、計画の段階で準備行為がなくても犯罪は成立しているということになるのか。この発言もよく分かりません。計画と準備との関係というのは非常に曖昧であります。
 作成された法案の形式からいいますと、計画が構成要件であって、準備があったときに処罰するという、オーバートアクトですね。英米のコンスピラシーという概念にのっとって、まさに共謀罪におけるところの合意を顕現する、外に出す行為を要求するという意味でオーバートアクトというのを処罰条件として加えた、それが法形式を見てみますと素直な解釈だろうというふうに思います。
 準備行為がなければ成立しないという刑事局長の発言は、そういうように運用される、厳密な形でそこまで構成要件に入れると捜査機関が考えるならば、いや、少なくともこの法案形式よりいいかもしれないとさえ思ってしまいますが、そうはいかないでしょうね。そこが大変に危惧されるところです。
 例えばオーバートアクトで、日本では余りなじみのないオーバートアクトという言葉ですけれども、これはロス疑惑のときに、三浦和義氏が日本で共謀共同正犯、妻を殺害したという殺人罪についての共謀共同正犯が無罪が確定した後にロス地検に、ロス地方裁判所に起訴されたのが、殺人の共謀罪ということで起訴されておりますが、その起訴状によりますと、オーバートアクトがたくさん書いてあります。その中の一つは、保険金を掛けた、妻に保険金を掛けたというのがオーバートアクトということになっております。
 これは日本の場合でも準備的行為に入ってくる可能性はあります、組織的殺人というのが今回の法案の対象犯罪になっておりますけれども、共謀罪の対象犯罪になっているので。組織的殺人の一つの準備的行為として保険を掛けた。保険を掛ける行為というのは全く誰でもできることであって、それを準備的行為とするというのは、これは結局オーバートアクトというのは何のために要求するのかというと、本体である実行行為、殺人罪なら殺人罪を証明する間接証拠の意味しかないんだというふうに言われておりますけれども、まさにそういうようなものだろうと。ただ、間接証拠にしろ、間接証拠というのは本体の実体的行為を推認させるようなものでなければならないので、準備的行為というのが全く関連性のない、推認力もないようなものだと準備的行為には当たらないということになるはずです。もうその辺り、どうも刑事局長の発言を聞いていてもはっきりしない。
 先ほど来、さらに計画と準備との関係はどうなんだということを言ってきましたので。その関係がどういう関係になるのかが不明確である。内容も不明確だと。準備行為についても、例としては挙げられておりますが、花見で顕微鏡を持っていったかどうなのかというばかばかしい議論をするような問題ではないはずなんですが、それは例であって、単なる例でしかない。
 いずれにしても、この辺りの概念が一切定義がなく非常に曖昧で、構成要件なのか処罰条件なのかさえ明確でない法律構成、条文構成になっているという点、これがどうしてなんだという疑問です。
 それから、テロ団体は……
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秋野公造#10
○委員長(秋野公造君) 村井参考人に申し上げます。お時間が過ぎておりますので、御意見をおまとめください。
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村井敏邦#11
○参考人(村井敏邦君) はい。
 テロ集団等の組織犯罪集団に限定されるのかということですが、この点も、テロ集団についての定義はありません。さらに、「その他」によって限定されない。組織的犯罪集団の団体の行為が、一般人とは違うんだと、これを入れたことによって一般の企業を処罰するようなものではないということですが、しかし実際、私が意見書を書いたものの中に、証券会社が業績悪化を知らせずに客を募集した場合、組織的詐欺集団であって、その従業員も共謀共同正犯として処罰されたケースがあります。これは一般の人も組織的犯罪集団として処罰され得る例であります。これも審議の中で御議論があったところです。
 いずれにしましても、こういった法案による最大の問題は、やはり捜査がどのようになるのかという懸念が持たれます。この点について、国連の人権報告者の指摘には謙虚に耳を傾けるべきであろうと思います。プライバシー侵害に対する保障措置を設けるべきであるということについて、これに抗議をするのではなくして、真摯にこれについて検討し、法案成立までにその点についての明確な回答をすべきであろうと思われます。
 いずれにしましても、今回の法案によって刑事法の基本が大きく変わるであろうということが懸念され、私は大変に心配しております。是非慎重な審議を重ねていただきたいと思います。
 ちょっと超過しましたけれども、以上で終わります。
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秋野公造#12
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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元榮太一郎#13
○元榮太一郎君 自由民主党の元榮太一郎です。
 福田先生、山下先生、そして村井先生、本日はお忙しい中、当委員会に御出席いただき、そして大変貴重な御意見をいただきまして、誠にありがとうございます。
 いろいろ参考人の皆さんからお話を伺いました。国際協調という言葉も福田参考人から出てきました。やはり、世界が連携してテロを未然に防止する、そして国際平和をもたらすと、積極的平和主義こそが日本の果たすべき役割だと私も思っております。その意味でこのTOC条約の締結は非常に重要であり、急務だと考えております。
 そこで、まず福田参考人に伺いたいと思います。
 我が国では、一九九五年の地下鉄サリン事件以来、大規模なテロはまだ起こっていないという状況にございます。その中で、テロの脅威はこの日本にも迫っている、又はテロの脅威が増大している、このような話も聞かれます。しかし、まだ、この迫りくる脅威について日本国民の理解というのはさほど高まっていない、深まっていないのではないかなと思っております。
 私はテロの脅威は確実に迫っているという危機感があるのですが、福田参考人、テロ対策の専門家として具体的にこの迫りくる脅威について御教示いただけますでしょうか。
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福田充#14
○参考人(福田充君) 先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、国際テロリズムが世界中で勃興しております。その中で、日本だけがテロリズムの標的にならないという前提は極めて危険であると思います。イスラミックステート、ISILなどのイスラム過激派組織も、日本もテロの標的であるということを表明しております。
 これまで、やはり日本も、これまでの法制度の範囲内で懸命にテロ対策をやってきて、そして出入国管理も徹底してきた、そしてかつ、島国であるというような経緯もあってそういったテロの脅威をはねのけてこられた経緯もございますけれども、これから二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを三年目に控えております。
 これまで、ミュンヘン・オリンピック以降、ほぼほとんどのオリンピックのような、メディアイベントと僕は呼んでおりますけれども、オリンピックはテロの標的となってきました。二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックも、世界中から要人が、アスリートが、メディアが、そして観光客の皆さんが日本に集中して訪れる国際的メディアイベントでありまして、この東京オリンピック・パラリンピックは、テロリスト、テロ組織にとっても格好の標的となるソフトターゲットだと思われます。
 日本人の生命や生活を守るだけではなく、こうしたメディアイベントに際して各国から訪れる訪問者の命を守るということも不可欠であり、そういった意味でも、今、テロの脅威は日本の中ではリスクとして高まっていると認識しております。
 以上です。
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元榮太一郎#15
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 日本もテロの標的だと名指しをされていて、また二〇二〇年のオリンピック・パラリンピックはまさに格好の標的ということで、もう三年後に迫っています。その意味で、テロ等準備罪はTOC条約の国内担保法として成立させるということが非常に重要だと思っておるわけですが、一方で、これまでの議論にもありましたとおり、このテロ等準備罪の構成要件について、内心やプライバシーという自由、人権との関係が指摘されています。
 しかし、私は、客観的に見ますと、TOC条約締結百八十七か国、そしてまたOECD各国の構成要件と比べると、非常に人権、自由に配慮した厳格な構成要件を客観的に採用しているのではないかなというふうに思っているわけです。
 具体的には、そのTOC条約五条一項(a)の(1)の組織的犯罪集団という組織要件と推進行為という行為要件という、この二つのオプションを採用しています。これはOECDの各国の中では唯一でありますし、百八十七か国の中でも僅か二か国しかないということで、やはり日本らしくこの自由、人権というものを配慮した中で、やはり国民の安心、安全、そしてテロを国際協調で未然に防止するというバランスの取れている構成要件と思われるのですが、福田参考人、まずこの点について、各国との比較の関係で御教示いただきたいと思います。
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福田充#16
○参考人(福田充君) 今御指摘にありましたとおり、この国際組織犯罪防止条約を締結しております百八十七か国の中には様々な国がございます。その中でも私自身はアメリカやイギリス、英米のテロ対策が専門でありますのでやはりアメリカやイギリスと比べることが多いわけですけれども、アメリカやイギリスにも当然刑法、刑事訴訟法の基本的な要素がありますが、それと、もう一つの体系としてテロ対策の基本法的な側面がございます。
 先ほどの陳述でも申し上げたとおり、イギリスでは二〇〇〇年テロリズム法という基本法的な法律があります。そこでは、テロリズムの容疑があれば令状なしで四十八時間勾留することができるとか、令状があれば二週間にわたって勾留することができる、極めて厳しい特徴があります。それがイギリスの歴史と国情、文化に即した制度であり、それがそのまま日本に適用することがよいとは私自身も思いません。
 しかしながら、イギリスのテロ対策若しくはアメリカのテロ対策、特にアメリカは、九・一一アメリカ同時多発テロ事件以降構築されてきましたテロ対策の基本法的な役割を果たしますパトリオット法では、通信傍受といった捜査権限も強化されています。諜報機関も強化されています。テロリストの出入国管理も強化されています。例えば四百十二条では、司法長官がテロリストと認定した外国人を七日間まで無条件に拘束できるといった項目もございます。
 そういった、イギリスやアメリカといった非常にテロ対策が強固に構築されている国家もございます。しかしながら、その中でも、イギリスやアメリカで人々の人権、自由が大きく損なわれて問題になったという事例、まあ幾つかございますけれども、非常にたくさん発生したでありましょうか。そこには、やはりイギリス、アメリカのテロ対策の法制度の中で自由や人権を守っていくという、それぞれの国の取組と制度があったわけでございます。
 それと比べましても、日本のこの度のテロ等準備罪、組織的犯罪集団に限定しているということと、そしてかつ合意罪の観点から実行準備行為の段階で処罰するという枠組みは、そういった欧米の先進諸国と比べても非常に抑制的で謙抑的な制度となっていると評価しております。
 以上です。
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元榮太一郎#17
○元榮太一郎君 ありがとうございます。
 アメリカは九・一一がありました。そして、イギリスでも、ここ直近一か月でも複数回のテロが起きています。この構成要件に関しては、やはりテロの脅威の現実の度合い、実際に悲惨なテロが頻発している地域との相関関係がうかがえるかと私は思っています。
 山下参考人と村井参考人にも伺いたいんですが、今、福田参考人からもお話ありましたとおり、構成要件という意味で世界各国との比較で考えますと、行為要件、推進行為とそして組織的犯罪集団という組織要件の二つのオプションで絞った合意罪という観点で客観的に見ますと、日本は非常に抑制的な厳格な構成要件にも思われるんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
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山下幸夫#18
○参考人(山下幸夫君) 先ほど述べましたけれども、言葉だけ見れば一見すると限定するように見えるかもしれませんが、その概念は極めて曖昧、不明確でありまして、しかも、この間の国会における政府側の答弁を見ても非常にその適用範囲が曖昧。先ほど言いましたけど、組織的犯罪集団の構成員に限らない、それ以外の周辺者も含むということを言われたり、それから共同目的が変わったら普通の団体でも組織的犯罪集団になるとか、そういう答弁がずっと続いているわけでございまして、要するに物すごく曖昧で非常に広く適用される可能性のある。
 そういう意味では、先ほど御質問者の方は限定されているとかいろいろ言われていますけど、この文言だけではやはり限定されているとは言えない、解釈の余地を非常に多く残し、解釈によって恣意的な適用、濫用のおそれがあると私は考えております。
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村井敏邦#19
○参考人(村井敏邦君) 先ほども私が言いましたように、英米の場合に共謀罪を設ける場合にはオーバートアクトを要求するというのが一般的になっております。したがって、オーバートアクトとして準備的行為を設けたというのは英米と同様だということになるわけですが、例えば先ほど例として出しましたロス疑惑事件の起訴状の場合に、オーバートアクトとして二十ぐらいの数の行為が挙げられております。これが起訴状の中に記載されて具体的にそれに対する攻防が行われるという点では、日本の場合、それがどうなるのかよく分かりませんけれども、構成要件であれば起訴状の中に出てくるでしょうが、処罰条件の場合には起訴状の中に出てくるのか、それから手続的な点でどうなるのかというのは全く今回の法案では手続的な提案はされておりません。
 GPS捜査を検討しようと、私はこれは大変問題だというふうに思うんですが、その法制化を検討するというのが一つ付け加わっているんですが、新たにいろいろな捜査、新しい捜査手段を要求するということになりますと、果たしてそれで人々の自由が限定されないか、また懸念が増えると思います。
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元榮太一郎#20
○元榮太一郎君 ありがとうございます。いろいろなお考えがあるところだと思います。
 しかし、例えばその組織要件に関して見ると、そもそもないような合意罪を採用している国もたくさんあるといいますか、むしろ大半となっているところだと思います。
 いずれにしましても、国民の安心、安全を守るため、そしてテロ対策を国際協調の中で推進していくという中で、人権とのバランスを各国がそれぞれ心を砕いて工夫を凝らしていて、そういう中においても、このテロ準備罪というのは国際的な比較においては構成要件としては非常に抑制的だということを改めて最後に指摘して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。
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真山勇一#21
○真山勇一君 民進党・新緑風会の真山勇一です。
 今日は、三人の参考人の方、本当にありがとうございます。
 お三方の話を伺っていて、この法案がまだまだ不明確な点が物すごくたくさんある、分からないことがたくさんある。今日もたくさんの傍聴の方いらっしゃっていますけれども、みんな、こんなにあるんだと、まだまだやはり審議をしなければこの法案どういうものなのかよく分からない、こうした思いをすごく感じられたんじゃないかというふうに思います。私も感じています。やっぱり大事な法案を作るならば徹底的に審議をして、問題点、分からない点、これをはっきりさせて、本当に法案が必要なのかどうか、これをやるのがこうした委員会の場ではないかというふうに私は思っています。そういう意味で、今日、お三方、参考人でお招きをして意見を伺ったということは、私たち議員がやる議論とはまた違った視点でお話を聞けたということをまずお礼申し上げます。
 たくさんあるので、時間足りなくなるとちょっとあれなので要領よく聞いていきたいというふうに思うんですけれども、まず福田参考人にお伺いしたいと思います。
 福田参考人がおっしゃったテロを未然に防ぐ、大事なことです。それを国際協調でやる必要がある、大事なことです。そして、危機管理上、やはりテロを防ぐということは本当に今まさに喫緊の課題であるということも分かります。そのためにTOC条約を締結しなければならない、そこまでは私も分かるんですが、例えばこのTOC条約、まずテロ対策のためでないということが言われてきております。
 パッサス教授が、立法ガイドを作った、この法案の意味を作った方が、これはテロ対策ではないよと、経済的な犯罪、マネーロンダリングとかあるいは組織的な暴力犯罪に対する、麻薬取引、そうしたものだよと言っているにもかかわらず、テロ対策だと言っているわけですね、日本ではそう言っているわけですけれども。テロ対策でないと言っていること、これについて、村井参考人も指摘されておりましたけれども、これについてどういうふうにまず思われるかということが一点と。
 それから、確かに今テロ対策もグローバルスタンダードが求められているといいますけれども、この国連のTOC条約を締結しなければならないならば、逆に、今申し上げたような立法ガイド、パッサス教授のテロ対策でないということとか、それからカンナタチ国連特別報告者が指摘しておりますプライバシーの問題、この条約を受け入れるのと同じくらい、この条約の問題点を同じ国連の方が指摘しているわけですから、こちらをやっぱり無視するのはおかしいと思うんですね。
 この辺の、テロ対策ではないとかカンナタチ氏がプライバシーに大変懸念を表明している、こちらの方については福田参考人はどういうふうに思われるでしょうか。
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福田充#22
○参考人(福田充君) まず一点目でございますが、国際組織犯罪防止条約自体がテロ対策とどう関係があるかということだと思います。
 これにつきましては、国際安全保障の研究者若しくはその実務に携わっている方、様々たくさんの方がおられますけれども、実は様々な解釈が存在していて、いろいろな方がいろいろなことをおっしゃっています。御指摘にあったような指摘も新聞報道等で私自身も拝見いたしましたけれども、しかしながら、実際、現在、犯罪組織とテロ組織の線引きというのは非常に困難な状況であるというのも一つの国際的な常識になりつつあるということであります。一般犯罪とテロリズムの線引きも極めて難しいというのが国際的な現状でございます。
 陳述でも申し上げましたけれども、二〇一四年の国連安保理決議第二千百九十五号の中でも、テロ組織と犯罪組織はかなり部分的に重なっている、一部分異なっている部分もありますけれども。そしてかつ、融合し、連携し合っている。そして、組織犯罪、犯罪組織がマネーロンダリングしたお金がテロ組織の方に流入しているという実態がある。テロ対策のためにも、こういったテロ組織に対して資金や資源を横流ししているような犯罪組織を取り締まるということは、間接的にテロ対策に非常に有効に効いてくると研究者等の立場から判断いたします。
 二点目のカンナタチ教授の公開書簡についてでございますが、私自身も十分拝読いたしました。
 しかしながら、カンナタチ教授がおっしゃっていることはテロ対策や組織犯罪対策という文脈からは非常に懸け離れていて、教授の専門であるところのプライバシー保護の観点から、そこから非常に重要な指摘、批判はなされておりますけれども、しかしながら、やはりプライバシー保護の観点からのみの御指摘であり、それがテロ対策や組織犯罪対策とどういうふうにバランスを取っていくべきか、どういうふうにかみ合わせた議論にしていくべきかというところでは、ややバランスの欠けた意見だと感じております。
 しかしながら、私自身も、テロ対策というのは、テロ等準備罪始め、これからまだまだ検討していかないといけないテロ対策の問題というのはまだ実は残されていると思います。そのテロ対策を更に有効なものにしていく過程の第一歩だと思っております。そのテロ対策を実施していくためには、今回のテロ等準備罪とは全く関係ありませんけれども、インテリジェンス活動の強化とか、若しくはそれのシビリアンコントロールというものも非常に重要になってくるだろうと思います。それは今後の課題として検討されるべきであろうと個人的には思っております。
 以上でございます。
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真山勇一#23
○真山勇一君 私は、締結を大事にするならば、国連のそういう一連のこの法案に対する反応というのをやっぱり大事に尊重していかなくちゃいけないんじゃないかなということをちょっと申し上げたかったんですけれども。
 次に、テロ等準備罪、福田参考人は、テロを防ぐために有効であり合理性があるというふうにおっしゃってきました。その一方で、テロって、今、非常に多様化しているともおっしゃいましたね。イギリス、フランスあるいは各地で起きているテロ、本当にこれを防ぐためには難しいというふうに思うんですね。
 確かに、このテロ等準備罪で防げるかどうかというと、これまでのこの委員会での審議の中で政府側答弁としては、やっぱりローンウルフ、つまり大きな団体で多数でやるんならば明らかに分かるけれども、ローンウルフ型、一人とか二人、それも本当に継続じゃなくて突然、今多いわけですね、本当にヨーロッパでそういう突発的に起きるようなテロが多いわけですけれども、こういうのを本当に防げるんだろうかという疑問。
 それからもう一つ、もう一点。先ほどのお話で、令状なしですとか無条件で勾留できるくらい厳しくやっぱりやっていかなくちゃ駄目だというお話がありましたけれども、そういうことによって、逆に日本の場合、ここまで本当に大胆にやっていくと、人権を守る、あるいはプライバシーを守るということは本当に大丈夫なのかどうか。今のこのテロ等準備罪と呼ばれている法案の中で本当に人権、プライバシー、守れるんでしょうか、守れるという保証が条文のどこかにあるでしょうか、お伺いしたいと思います。
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福田充#24
○参考人(福田充君) まず一点目でございますが、御指摘のとおり、現代のテロリズムの特徴は無差別テロであり、ソフトターゲットを標的としたローンウルフ型のテロ、そしてかつホームグローン型のテロが多くなっております。テロ等準備罪は組織的な犯罪集団を対象にしておりますので、こういったローンウルフ型のテロに対して直接的な効果があるかということに対する御指摘は、部分的に適合しているというか、合っている側面があると思います。
 しかしながら、現在世界中で起きておりますローンウルフ型の無差別テロも、そのローンウルフとされているテロの実行者は大なり小なり、例えばイスラミックステートであるとかアルカイダであるとか様々な国際的なテロ組織のプロパガンダや宣伝行為に影響を受けて実行しているという容疑者も多数おります。つまり、ローンウルフ型テロであっても、こういったテロ組織の元を絶つ対策、国際的なテロ組織の資金源とか資源を断つことによってそういった国際的テロ組織が弱体化することにより、世界中でそれに呼応する形で発生しているローンウルフ型のテロは間接的に減らす効果があると個人的には認識しております。
 二点目でございますが、私自身は、イギリスの二〇〇〇年テロリズム法、二〇〇六年テロリズム法がイギリスの文化の中で有効性を持っていると申し上げただけで、日本でこれをやるべきだとは申し上げておりません。アメリカ型のパトリオット法も、これが日本に適合するとも申し上げておりません。それをそのまま日本に持ってくれば、もう非常に厳しい、やり過ぎな、人権、自由を侵害するおそれのあるものになるであろうと思われます。
 それと比べると、むしろ日本のこのテロ等準備罪は、組織的な犯罪集団が関与するという要件と合意の内容を推進するための準備行為を伴うというこの二つの構成要件、これはそういった英米のテロ対策よりは人権、自由に十分配慮していると個人的に研究者として考えているということであります。
 しかしながら、どうやってこの人権や自由を損なわれないようにするための活動を行っていくかということは、こういった法律の条文の中ではない運用の側面で、まさにこれ執行するのは警察機関でありますから、その警察等の執行機関を監視するのがむしろ議会の役割であり、それがシビリアンコントロールだと思っておりますので、その中でどうやって運用し、監視していくかという制度、仕組みは検討されていってしかるべきかと思います。
 以上でございます。
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真山勇一#25
○真山勇一君 ありがとうございました。やっぱりそうなんですね。シビリアンコントロールが健全に機能していないとやっぱりとても危険な法律であるということは私よく分かりました。福田参考人、ありがとうございました。
 あとお二方にお伺いしたいんですが、時間があと三分か四分しかないので、ちょっと端的にお伺いします。一般人が巻き込まれるおそれ、一般人が対象になるおそれがあるかどうかということです。
 山下参考人にお伺いしたいと思います。
 山下参考人の言葉の中に目くばせとか、あるいは団体の概念が曖昧だというふうにおっしゃいました。私はとても気になっているのは、金田法務大臣が、参議院の趣旨説明の中だと思うんですが、隠れみのという言葉を使いました。つまり、違法な団体が、悪いことをする団体が普通の市民団体の名前をかたる、つまり環境保護活動をしているとか、あるいは市民グループがある目的を持ってみんなで集まっているとか、それからもちろん労働運動とか、それから宗教活動も入るかもしれません、そうしたもの、看板は普通の団体、でも実態は全く別な、犯罪をやろうとしている、場合によってはテロをやろうとしているということを調べるために、隠れみのを使う可能性があるからこれも対象になると金田法務大臣は言っています。
 この辺の危険性、恣意的な運用があるのかないのか。警察はふだんでも捜査活動と称してそういうこともあるし、それ以前に情報調査ということで日常的にやっているという、監視をされているということもありました。この辺の危険性について改めて伺いたいと思います。
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山下幸夫#26
○参考人(山下幸夫君) 御指摘のとおり、隠れみのという話がありましたが、隠れみの又は名目にしているということは、結局それは誰が判断するかって、第一次的には警察などの捜査機関が判断するわけであります。
 そして、今回の法案は、先ほど私が言ったように、恐らく計画よりも前の段階から日常的に特定の団体の構成員やその周辺者を監視しなければ、そういう計画とか準備行為とか、又は組織的犯罪集団かどうかということを判断できませんので、そういうことができる権限を警察や検察などの捜査機関に与える法律であるということからすると、結局そういうあらゆる団体、普通の団体も含めてあらゆる団体が一応その捜査の対象になり得るわけであります。そういうところに所属している私たち一般人、当然その捜査の対象になり得るということなので、この法律はやはりどこまで行っても、もう一般人も含めた全てのそういう団体に所属している構成員や周辺者が捜査の対象になり得るということが前提になっていると考えられますので、一般人は関係ないとか、そういうことは言えないと考えています。
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真山勇一#27
○真山勇一君 質問時間が終了というのが来てしまったので、村井参考人、本当に申し訳ありません。是非お伺いしたいことが一つ、犯罪が共謀罪のときは重くて、更に先行くと軽くなってしまうという非常におかしな点があるんで、そんな点を是非参考人に伺いたかったんですが、時間なくなりましたんで、申し訳ありません。
 やっぱり、これくらい、要するに時間もっと欲しいんです、聞きたいんです。でも、その時間、これからもたっぷり、やっぱり審議をちゃんとしていきたいということを皆様にお誓いして、私の質問を終わりたいと思います。
 ありがとうございました。
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佐々木さやか#28
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、参考人の皆様、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございます。
 私の方からは、まず福田参考人に質問をさせていただきたいと思います。
 今日、意見陳述をテロ対策の専門家としてのお立場からいただきました。恐らく、この委員会室にいる誰よりも福田参考人がテロ対策について知識をお持ちでいらっしゃいますし、いろいろなことを御存じだと思います。
 やはり、一般的に、国民の皆さんもテロに対する危機感だったりとかテロ対策の必要性があるということを抽象的には感じていらっしゃると思うんですけれども、じゃ、具体的にどういうことが今、日本として必要であって、国際社会からも求められているのか、そういう具体的なことを余りイメージできないと思うんです、やはり日常的にテロを経験しているわけではありませんので、日本の場合。ですので、そういった意味で、専門家である福田参考人から、テロ対策としてどういうことが求められているのか、そしてTOC条約、またテロ等準備罪の創設を含む今回の改正案でどういう対策が講じることができるようになるのか、こういったことをできるだけ具体的に教えていただくということは非常に重要なことであるというふうに思っております。
 その観点から、既に陳述の中でも教えてはいただいているんですけれども、やはり今日も質問の中でもありましたように、このTOC条約自体がテロ対策としてのものなのかどうかとか、テロ対策に有効なのかどうかというところからまだ意見の対立がございますので、非常に重要なところなので、重なるところはありますけれども、このTOC条約の締結、またテロ等準備罪の創設によってテロ対策にどのように有効なのか。今日、陳述の中で、その周辺行為を処罰をすることができることによってテロ組織を弱体化させる、そういった効果もあるとお話がありましたけれども、もう少し具体的にというか詳しく教えていただければと思います。
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福田充#29
○参考人(福田充君) ありがとうございます。
 非常に広範囲にわたる御質問をいただきましたので、ちょっとまとまったお答えができるかどうか難しく思いますけれども。
 具体的に申し上げますと、先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、テロの手法とか道具というものは極めて多様化しているということがあります。これまでは爆弾テロやナイフといった、若しくは銃ですね、そういったものによって行われたテロリズムが多くございましたけれども、しかしながら、現代では、地下鉄サリン事件を経験した日本だからこそ言えるように、化学兵器、生物兵器若しくはダーティーボムといった、そういったものがテロに利用される可能性が指摘されております。そして、そういうものが保管されている機関から流出したり、若しくは盗まれたりすることによってテロ組織に流れ込んでいるという指摘もあります。
 それ以外にも、先ほどの陳述でも申し上げましたとおり、電気や水道、ガス、通信といったライフラインがテロの標的になった場合には、現在の私たちの生活の根本となる社会基盤が破壊されることになります。若しくは、例えば水道に生物兵器が混入された場合、毒素が混入されたような場合にどれだけの犠牲者が発生するか。
 そのようなことは起きるはずがないというふうに信じられているかもしれませんが、一九九五年の段階で、あれだけの規模でサリンを東京の地下鉄にまくということを一体どれぐらいの人が想像できたでしょうか。常にテロリズムというのは、私たち一般市民の想像を超えたところから想定外のテロリズムが発生するということを歴史的に経験してまいりました。だからこそ、想定外をなくすという意味で、電気や水道やガスも、そういったライフラインもテロのターゲットになる、航空機も鉄道も新幹線も、そういった交通機関もロジスティクステロというテロの対象となる。当然サイバーテロも、それによって原発等が狙われる可能性もあります。若しくは、都市の信号等が狙われることによって都市機能が麻痺するということも考えられます。こういった多様化しているテロリズムは、起こってしまったらもう後の祭りでございまして、未然に防止するということが極めて重要である。
 どうやって未然に防止することができるかというと、それはやはり実行した後ではなく計画と実行準備行為、それが発見されたときに初めて未然に防止することが可能になるわけでありますから、このテロ等準備罪が挙げておりますこうした二百七十七の項目は、こういった多様化したテロの形に対応する一つのアプローチ。もう一つは周辺行為ですね。テロ組織が行っている人身売買や若しくは麻薬の取引、若しくはマネーロンダリングといったそういった資金、資源がテロ組織に流入しないことを、流入することを防ぐための有効な手段としてこのテロ等準備罪は評価に値すると思っております。
 以上です。
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