法務委員会

2023-06-13 参議院 全219発言

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会議録情報#0
令和五年六月十三日(火曜日)
   午前十時十分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月八日
    辞任         補欠選任
     高橋はるみ君     世耕 弘成君
 六月十二日
    辞任         補欠選任
     世耕 弘成君     堀井  巌君
 六月十三日
    辞任         補欠選任
     堀井  巌君     朝日健太郎君
     山崎 正昭君     友納 理緒君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         杉  久武君
    理 事
                加田 裕之君
                福岡 資麿君
                牧山ひろえ君
                谷合 正明君
                川合 孝典君
    委 員
                朝日健太郎君
                古庄 玄知君
                山東 昭子君
                田中 昌史君
                友納 理緒君
                堀井  巌君
                森 まさこ君
                山崎 正昭君
                和田 政宗君
                石川 大我君
                福島みずほ君
               佐々木さやか君
                清水 貴之君
                鈴木 宗男君
                仁比 聡平君
   衆議院議員
       修正案提出者   宮崎 政久君
   国務大臣
       法務大臣     齋藤  健君
   大臣政務官
       文部科学大臣政
       務官       伊藤 孝江君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        久保田正志君
   政府参考人
       内閣府大臣官房
       審議官      畠山 貴晃君
       警察庁長官官房
       審議官      佐野 裕子君
       警察庁長官官房
       審議官      親家 和仁君
       こども家庭庁長
       官官房審議官   野村 知司君
       法務省大臣官房
       政策立案総括審
       議官       上原  龍君
       法務省刑事局長  松下 裕子君
       国土交通省航空
       局安全部長    平井 一彦君
   参考人
       武蔵野大学副学
       長
       同大学大学院人
       間社会研究科教
       授        小西 聖子君
       大阪大学副学長
       同大学大学院法
       学研究科教授   島岡 まな君
       神戸大学大学院
       法学研究科教授  嶋矢 貴之君
       大船榎本クリニ
       ック精神保健福
       祉部長      斉藤 章佳君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案(
 内閣提出、衆議院送付)
○性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物
 に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記
 録の消去等に関する法律案(内閣提出、衆議院
 送付)
○参考人の出席要求に関する件
○政府参考人の出席要求に関する件
    ─────────────
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杉久武#1
○委員長(杉久武君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨日までに、高橋はるみ君が委員を辞任され、その補欠として堀井巌君が選任されました。
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杉久武#2
○委員長(杉久武君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案、両案を一括して議題といたします。
 まず、政府から順次趣旨説明を聴取いたします。齋藤法務大臣。
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齋藤健#3
○国務大臣(齋藤健君) まず、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 性犯罪は、被害者の尊厳を著しく侵害し、その心身に長年にわたり重大な苦痛を与え続ける悪質、重大な犯罪であり、厳正に対処することが必要です。
 平成二十九年には、刑法の一部を改正する法律により、性犯罪の構成要件を見直すなどの改正が行われましたが、同法の附則において、性犯罪における被害の実情や改正後の規定の施行状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされており、性犯罪について、被害の実情や事案の実態に即した規定とすることが求められています。
 そこで、この法律案は、近年における性犯罪をめぐる状況に鑑み、この種の犯罪に適切に対処できるようにするため、刑法及び刑事訴訟法を改正し、所要の法整備を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、性犯罪の罰則規定が安定的に運用されることに資するため、強制わいせつ罪及び準強制わいせつ罪並びに強制性交等罪及び準強制性交等罪をそれぞれ統合した上で、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態でのわいせつな行為又は性交等であることを中核とする要件に整理し、不同意わいせつ罪及び不同意性交等罪とするものであります。
 第二は、若年者の性被害の実情に鑑み、現行法上十三歳未満とされているいわゆる性交同意年齢について、十六歳未満とした上で、その者が十三歳以上であるときは、行為者が五歳以上年長である場合に処罰することとし、これにより、十三歳未満の者に対してわいせつな行為又は性交等をした者に加えて、十三歳以上十六歳未満の者に対し、わいせつな行為又は性交等をしたその者より五歳以上年長の者についても、不同意わいせつ罪又は不同意性交等罪として処罰することとするものであります。
 第三は、若年者の性被害を未然に防止するため、わいせつの目的で、十六歳未満の者に対し、威迫、偽計、利益供与等の手段を用いて面会を要求する行為等を処罰対象とする罪を新設するものであります。
 第四は、性犯罪の被害申告の困難性等に鑑み、性犯罪についての公訴時効期間を五年延長するとともに、被害者が十八歳未満である場合には、その者が十八歳に達するまでの期間に相当する期間、更に公訴時効期間を延長するものであります。
 第五は、被害状況等を繰り返し供述することによる心理的、精神的負担を軽減するため、いわゆる司法面接的手法を用いて被害者から聴取した結果等を記録した録音・録画記録媒体について、一定の要件の下、反対尋問の機会を保障した上で、主尋問に代えて証拠とすることができることとするものであります。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 なお、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案については、衆議院において一部修正が行われております。
 続いて、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。
 平成二十九年には、刑法の一部を改正する法律により、性犯罪の構成要件を見直すなどの改正が行われましたが、同法の附則において、性犯罪における被害の実情や改正後の規定の施行状況等を勘案し、性犯罪に係る事案の実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加えることとされています。
 近時の性的な姿態の撮影行為等をめぐる実情に鑑みると、性的な姿態を撮影する行為や、こうした撮影行為により生成された記録を提供する行為等は、撮影対象者に重大な権利利益の侵害を生じさせかねないものであり、こうした行為等に厳正に対処し、そうした撮影行為により生成された記録等の的確な剥奪を可能とすることが喫緊の課題となっています。
 そこで、この法律案は、性的な姿態を撮影する行為等の処罰規定を整備するとともに、そうした撮影行為により生成された記録等の剥奪を行うための手続等を整備し、もって性的な姿態を撮影する行為等による被害の発生及び拡大を防止するため、所要の法整備を行おうとするものであります。
 この法律案の要点を申し上げます。
 第一は、性的な姿態を撮影する行為、これにより生成された記録を提供する行為等について、罰則を新設するものであります。
 第二は、性的な姿態を撮影する行為等の犯罪行為により生じた物を複写した物等の没収を可能とするものであります。
 第三は、検察官は、その保管している押収物が性的な姿態を撮影する行為等により生じた物又はこれを複写した物等である場合において、当該押収物が電磁的記録を記録したものであるときは、その記録状況等に応じて、当該押収物に記録されている電磁的記録を消去し、又は当該押収物を廃棄する措置を講ずることができるものとし、当該押収物が電磁的記録を記録したものでないときは、これを廃棄することができるものとするなどの仕組みを設けるとともに、これらの措置等について聴聞手続や不服申立て手続等に関する規定の整備を行うものであります。
 このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。
 以上が、この法律案の趣旨であります。
 何とぞ慎重に御審議の上、速やかに可決くださいますようお願いいたします。
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杉久武#4
○委員長(杉久武君) この際、刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分について、修正案提出者衆議院議員宮崎政久君から説明を聴取いたします。宮崎政久君。
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宮崎政久#5
○衆議院議員(宮崎政久君) ただいま議題となりました刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分につきまして、その修正部分の趣旨及び内容について御説明申し上げます。
 第一に、今般の法改正では、同意しない意思の形成等が困難な状態でのわいせつな行為等であることを中核の要件とする、いわゆるノー・ミーンズ・ノーの不同意わいせつ罪等を設けることとしております。これに対し、イエス・ミーンズ・イエスのような要件にまで踏み込むべきではないかとの御指摘があったことも事実です。
 今回はノー・ミーンズ・ノーにとどまったとしても、性被害に係る犯罪規定は社会の受け止め方や意識の変化に対応して定められるものでありますから、この改正法が施行された後一定期間を経過した場合には、その時点における性的同意についての意識なども踏まえた上で、性被害に係る犯罪規定の在り方が改めて検討されなければなりません。
 そこで、この改正法の施行後五年を経過した場合に、政府が、速やかに性犯罪に係る実態に即した対処を行うための施策の在り方について検討を加え、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずる旨の検討条項を附則に設けることとしております。
 この検討に関連して、今般の法改正では、公訴時効期間を延長することとしていますが、性被害を申告できるようになるまでどれくらいの期間を必要とするのか、どれだけの困難さを抱えているのかといった実態を踏まえ、その妥当性を判断する必要がありますし、また、衆議院の委員会質疑においては、今般の法改正に当たって若年者や障害者の性被害の実態についてどれだけ把握しているのかとの御指摘があったところであります。
 そこで、政府は、この検討がより実証的なものとなるよう、性被害を申告することの困難さその他性被害の実態について、必要な調査を行うものとしております。
 第二に、今般の法改正では、性交同意年齢を引き上げる一方で、その処罰範囲を適切に画するため、十三歳以上十六歳未満の者を相手に性的行為をする場合のいわゆる五歳差要件を設けております。
 しかし、衆議院の委員会質疑や与野党の修正協議において、五歳差未満であれば行為者が十八歳以上の成人であっても全部許されることになるのか、中学生が守られないことになるのではないかといった強い御懸念が示されたところです。
 このような御懸念も踏まえ、附則に、政府は、この法律による改正後の刑法等の規定が、性被害の実態及びこれに対する社会の意識の変化に対応して、刑罰を伴う新たな行為規範を定めるものであることに鑑み、今般の法改正は、五歳差未満であれば十八歳以上の成人が何をしても許されるというものでは決してなく、また、中学生をしっかり守るという意図に基づくものであるということを含め、その趣旨及び内容について国民に周知を図るものとする旨の規定を追加することとしております。
 以上であります。
 何とぞ、委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
 ありがとうございます。
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杉久武#6
○委員長(杉久武君) 以上で両案の趣旨説明及び刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案の衆議院における修正部分の説明の聴取は終わりました。
 速記を止めてください。
   〔速記中止〕
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杉久武#7
○委員長(杉久武君) 速記を起こしてください。
    ─────────────
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杉久武#8
○委員長(杉久武君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案外一案の審査のため、本日の委員会に武蔵野大学副学長・同大学大学院人間社会研究科教授小西聖子君、大阪大学副学長・同大学大学院法学研究科教授島岡まな君、神戸大学大学院法学研究科教授嶋矢貴之君及び大船榎本クリニック精神保健福祉部長斉藤章佳君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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杉久武#9
○委員長(杉久武君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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杉久武#10
○委員長(杉久武君) 刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案及び性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案、両案を一括して議題とし、参考人の皆様から御意見を伺います。
 この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙のところ御出席をいただき、誠にありがとうございます。
 皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 次に、議事の進め方について申し上げます。
 まず、小西参考人、島岡参考人、嶋矢参考人、斉藤参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
 また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず小西参考人からお願いいたします。小西参考人。
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小西聖子#11
○参考人(小西聖子君) よろしくお願いいたします。
 皆様、おはようございます。武蔵野大学の副学長を務めております小西聖子と申します。
 精神科医で、専門はPTSDの治療及び研究です。被害者のお話を伺うようになって三十年になります。前回の二〇一七年の改正のときの法制審議会、それから今回の検討会及び法制審議会に委員として参加してまいりました。現在、東京都の性暴力被害者支援ワンストップセンターと連携を持って精神科の外来をしております。また、裁判、特に刑事裁判における被害者の精神状況について鑑定を行うこともございます。
 本日は、私の臨床経験と内外の研究に基づき、改正案について幾つか意見を申し上げたいと思っております。
 性暴力は、もう皆様がおっしゃっているように、被害者の心身に大変深刻な影響を与えます。
 最初の資料一を御覧くださいますか。
 これは、WHOの行った国際的なメンタルヘルスの疫学調査です。七万人近くを対象に行われた調査ですが、トラウマ体験の影響が調べられています。
 例えば、資料の二番目の黒ポツのところ、トラウマ体験の後、最もPTSDになりやすい被害は、全てのトラウマの中で、レイプが一九%、DVが一一・七%、その他の性暴力一〇・五%で、これが最も高い、例えば戦争とか事故とか災害を抑えて一番高い値になっています。それでもこの値は低めであると、有名な疫学者なんですけれど、この論文を書いた人も言っていて、大体これまでの先行研究では、性的な被害を受け、レイプの被害を受け、PTSDになる値というのは大変高くて、二〇%から五〇%辺りにあります。
 それから、四番目のポツのところですが、レイプとその他の性暴力はいずれもPTSD診断の平均持続期間が百十か月を超えており、長期にわたって存在する。事故や災害の平均が四十一・二か月ということになっています。この百十という数字を考えてみると、平均で十年近いということになります。学校に行けなかったり仕事ができなくなるような期間が十年が平均だとしたら、日常生活、社会生活は崩壊することが容易に想像できます。
 そういう意味では、PTSDは重い疾患です。自殺リスクを増やすことも分かっていますし、貧困や医療費用の増大などとも関わりがあります。さらに、身体的な慢性疾患とも関わりがあることが分かっています。性犯罪の被害を受ける方の四分の一から半分近くがこのような状態にあるというふうに考えてみると、これは大変なことであることが分かります。
 実際に私が自分の臨床で被害の様子を聞いたり患者さんの状態を見ますと、法律がこれまでモデルとしてきた被害者像は余りにも現実と懸け離れているということは、これはもうずっと思ってきました。二〇一九年の名古屋地裁岡崎支部で無罪判決の出た事例などもそうです。
 私は、このケースについて一審後に精神鑑定を行い、実際に被害者の話を聞きました。詳細は避けますけれども、性的虐待の被害者によくある感情や行動がありました。しかし、第一審の司法の関係者にはその特徴は見えていなかったのだと思います。虐待の下での被害者の行動を、普通の人の普通の場の感覚で考えて終わりにしているように見えます。法律家には、この一審判決は抗拒不能の解釈が偏っていることが問題であるというふうに感じられているようですが、私にとっては、虐待される人、性的にトラウマタイズされる人の心理、行動について余りにも無知で、関心がないというふうに感じられました。
 性的虐待を長時間にわたって受ける子供は、深刻な被害を受けているにもかかわらず、表面上は明るかったり何にも気付いていないように、傷ついていないように見えることが多いです。被害を受けた人の心理がどのように被害者の意思形成や行動に結び付いているのか無視されたまま司法の場で評価されるというようなケースもあったことをこの裁判は示していますし、このような状況をほかの被害者の例でも私は繰り返し経験してきました。
 性的虐待の被害者は抵抗できないのが普通です。今回の法案の中にその項目が明示されるようになったということについては安堵しています。
 今ちょうど性的虐待の話をしましたので、公訴時効の延長について簡単に述べたいと思います。
 性的虐待の被害者が自分で被害を被害だと認識できるまでに、三十代ぐらいまで掛かることもあります。子供の時期の被害なのに、医療に受診される方の年代は性暴力被害者の中でも高く、三十歳前後が普通ですし、四十歳過ぎて初診ということもあります。治療は時効はありませんから、二十代の方と変わらず治療ができますが、これまで、臨床の中で複数の患者さんが弁護士等に相談したが、もう時効だったので何もできなかったというふうに言われていました。いずれも性的虐待の被害です。そういう意味では、公訴時効の延長は是非必要なことだったと思います。
 ただ、今回の延長案は、公訴時効については最大で三十三歳ということになるんだと思うんですが、これは平均的な方には何とか間に合っても、更に時間の掛かる人もかなりいらっしゃいますので、もう少し延ばすべきだと私は考えています。
 次に、不同意性交等罪について意見を述べます。
 被害者の同意のない性交は犯罪であるということが基本であるということについては、法制審議会でも確認されました。私も、以前の強姦罪という名称、それから強制性交等罪という名称が不同意性交等罪という名称になったことには賛同します。特に、今回の八項目の例示は、私は今の日本社会においては是非必要だと考えています。明示的に、具体的に書かないと、社会の中に多くの偏見がある状態では様々に異なった解釈が繰り返されるおそれがあります。
 例えば、恐怖に突然さらされるときに人がどんな反応をするかについても、これは近年、生物学的な解明が進んできています。詳細は資料の二を御覧ください。
 いろいろな説明が可能ですけれども、例えば、体が凍り付くように動かなくなったり、フリーズですね、感情が麻痺したりという反応は、生存に役に立つ、動物の段階では生存に役に立つ適応的な反応だったからこそ、進化心理学的に今の人類まで残ってきているものです。このような事実に基づいた法律にするべきです。
 ただし、この八項目は例示列挙であって、網羅的な分類ではなく、同意を示せないこれ以外の状況がないわけではないということも確認しておきたいと思います。医学的に言えば、急性期の解離などもその一つになると思います。この書き方が最善かどうかは将来にわたって検証し、より良い方向に改正していく必要があると思います。
 それから、いわゆる性交同意年齢の引上げに関して意見を述べます。
 法制審議会の議論の中でも、何歳までが同意できないのか、発達科学的にそのことが実証されているのかという御質問を、多分、心理学や医学の専門家に向かっていただきました。しかし、人の発達に関することで、ある誕生日から突然誰でもできるようになるということは当然ながらありません。発達は連続的なものです。さらに、人との関係性の理解の能力や対応能力も人によって実は様々です。
 こういう状態の中でどうやって条文を作るのが一番適切に罰するべきケースを罰し、不適切なケースを罰しないで済むのか、議論がなされたと思います。
 私は、ちょっと、法律家ではないので、表現が正確ではない点は御寛恕いただきたいと思いますが、年齢差要件というのは、外から見て分かりやすく、これで全ての罰すべきケースを拾えるわけではないですが、子供と成人との非対等な関係性を利用した性犯罪のある部分については適切に罰することができると考えます。
 十六歳以上あるいは十七歳以上、この辺りをいわゆる性交同意年齢の下限とすることは、ほかの多くの国でも行われています。生物学的な脳の発達からいっても、思春期の被害者に一定の同意能力の限定があると考えることは妥当だと思います。
 今回、新たな法案が対象としているのはほぼ中学生の年代ですけれども、例えば、SNSを使った、子供に成り済ました成人からの誘いによって中学生が性的被害に遭うというようなことが頻発していると。そういうこと一つから考えても、この年代が、性行為に関する理解はあるとしても、知識、判断力などの不足、制御力の不足、感情の不安定などから、危険な事態に対応する能力に欠けるところがあると言えると思います。それでも個人差があったりすると思います。この事態を解決するために、不適切な刑罰を防ぐという刑法上の観点も含めて、これだけ違えば明らかに対等ではないという年齢差を切り取るということは仕方がないことかなと思っています。
 もちろん、これは決して子供の性被害についての完璧な解決とは言えません。この条文だけではやや年齢差の近い罰すべきケースを見逃す可能性があります。例えば、性的いじめのケースなどでは年齢差がないことも多いですが、実際には不同意なのに周囲の圧力でそれを示せないというケースもあります。年齢差だけが非対等な関係をつくる原因ではないからです。
 ここで、このような切取りにすると対象から漏れてしまう被害がある可能性は残念なことですけれども、それでも、前より適切に罰するという方向に一歩進むと思います。その漏れるケースは、百七十六条、七条の一項の八項目の方で考慮されるというふうに理解しています。
 この分野でも日本の実証研究は十分ではありませんから、運用し、また検討する必要があります。衆議院における附帯決議もこのことに言及しており、賛同するものです。
 また、この法律を有効に活用するためにも社会の啓発や学校での教育が是非とも必要です。もう今の状態をかなり超える教育が必要だと思います。施行後の調査研究、法律の検証も必要だと思います。
 こういう性交同意年齢の問題が大きく取り上げられるのは、思春期も含めた子供の被害が非常にクリティカルであるということを示してもいます。
 次の資料の三ですが、これは内閣府の調査をそのまま持ってきたものですけれども、被害に遭った時期を見ますと、未成年者が大変に多いです。女性で約七〇%が二十代まで、男性はもっと多いですね。男性の被害者の絶対数がまだ少ないので、数字が信頼できるというところまで行っていないかもしれませんが、女性よりも更に若い被害が多い可能性があります。ちなみに、海外では、男性被害は女性被害のほぼ一〇%ぐらいという研究が多いです。
 最後の資料四に関しましては、これはSARC東京の昨年と今年の相談数、SARC東京というのは東京の性暴力被害者支援ワンストップセンターですけれども、そこの相談数を示していますが、これで見ますと、男性被害も内閣府の調査と類似した割合となっています。社会がこのような被害について認めるようにならないと調査にも出てこないということがあるので、男性の被害の数は今後更に伸びてくる可能性もあると思います。
 例えば、性的虐待と非行の関連、性被害と非行の関連は有名です。日本でも矯正施設等における研究で繰り返し示されています。子供や若い年代の人々を性犯罪から守るということが社会の将来にとっても大事なことです。
 ちょっと司法面接についてお話しする時間がなくなったのですが、供述が汚染されやすい子供のケースなどで是非必要だと思います。話を何回も聞くことができない状況の最初の時点で注意深く取られた資料を裁判官が判断の材料にできないのは不合理だと思いますし、大人の性被害などでも元々障害があったりして尋問に対して脆弱な人がいますので、そのような場合にそれを証拠として使用できるということには賛成します。一方で、被告人の権利も当然守られる必要があり、反対尋問の確保は必要だと思います。
 ただ、一つ、私がこれをやるためには条件があると思っていまして、どのような場合でも十分な技術を持った専門家が行うことで、その専門性を担保するべきであると考えています。司法専門家が行う場合でも、その中で更に司法面接の専門家の育成に努める必要があるのではないかと私は思っています。
 衆議院での附帯決議には全面的に私は賛成します。法制審議会の会議中にも、今このように説明があっても実際に施行されたときにどのように運営されるのか、大丈夫かということで不安になることもありました。司法過程で様々な異なる判断が出されていることが現実だからです。五年後の見直しと、そこに至る調査も是非必要だと思っております。
 社会の変化を感じる現在ですが、それでもまだ日本は特に性暴力に関しては根強い偏見が残り、法律的にも更なる検討が必要な国だと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上で終わります。
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杉久武#12
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
 次に、島岡参考人にお願いいたします。島岡参考人。
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島岡まな#13
○参考人(島岡まな君) 大阪大学の島岡でございます。
 本日はこのような場で発言の機会を与えていただき、どうもありがとうございます。
 肩書が大阪大学副学長となっておりますが、本日の私の発言は刑法学者としての研究の知見に基づいた個人的見解ですので、御了承ください。専門は刑法、フランス刑法、ジェンダー刑法でございます。
 この資料のタイトルが性犯罪関係改正法案に対する評価と課題となっておりますが、時間の関係で、不同意性交等罪、性交同意年齢の引上げ、公訴時効の延長を中心にお話しさせていただきたいと思います。
 まず、初めにを御覧ください。
 私は、今回の刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案提案理由を読みまして、もう感無量でございました。と申しますのは、今の現行刑法典が、明治四十年、今から百十六年前の家父長制の下で男性のみによって起草された刑法典ですので、自覚はないかもしれませんが、女性差別的な規定が幾つか残っていると考えておりました。その最たるものが性犯罪規定と思いまして、ここに書きましたような「ジェンダーと現行刑法典」という二〇〇三年の論文でその問題性を指摘してから二十年でございます。それから、その後に「新基本法コンメンタール 刑法」の二〇一二年に出た解説書の中で性犯罪規定の持つ問題性を、刑法学者としては初めてだと思うんですが、主張してから十一年たちました。ですので、感無量ということです。
 そして、性犯罪の本質が、被害者が自由意思に基づき任意に与えられた同意に基づかない性行為が全てであるということが二〇一一年のイスタンブール条約で既に記載されていたんですけれども、そこには、行為が男性器挿入に限定されることはないとか、暴行・脅迫要件もどこにも出てきませんでしたし、配偶者間強姦を明記するように既に言っていたにもかかわらず、御案内のように、百十年ぶりになされた二〇一七年の改正ではこれがどれも取り入れられなかったということで、私は半分絶望しておりました。
 でも、ようやく六年後の二〇二三年、今年に入って、国際水準にかなり近づいた性犯罪改正が行われようとしております。これを絶対に先送りしてはならず、必ず今国会で成立させていただきたいと心から願っております。
 それでは、不同意わいせつ罪、不同意性交等罪の新設についても簡単に御説明します。
 たくさん書いてしまったんですが、評価する点は、括弧一はちょっと読んでいただいて、括弧二が中心ですね、暴行、脅迫のほか、心身の障害やアルコール、薬物の摂取又は影響等八項目の具体例を挙げ、その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成、表明、全うすることが困難な場合に性犯罪が成立したことです。どのような客観的行為が性犯罪となり得る危険があるかを一般人や裁判官にも分かりやすく示し、かつ性犯罪の本質は、不同意の形成、表明、全うが困難な中での性行為であることを明確に示した優れた規定方法であると思っております。
 二ページ目に続きます。
 従来の刑法の構成要件としては少し違和感がある規定方法だと思われるかもしれませんが、やはり罪刑法定主義の要請と一般人や裁判官に解釈の指針を与えるために分かりやすく例示する要請という二つのバランスを考慮した、非常に苦労して、何というか作成された案だと思いますので、私は、性犯罪に関する刑事法検討会や法制審議会委員の先生方の御尽力のたまものと感謝して、評価しております。
 次の米印が実は重要なのですが、単なる不同意を要件にしてしまうと、意思に反したというだけにしてしまうと、性行為の意味が分からず不同意を形成できなかった場合が入らず、ドイツ刑法の他の者の認識可能な意思に反して、ノー・ミーンズ・ノー要件では、不同意を表明できなかった場合をカバーできないと思うんですね。
 でも、それが今回の改正では入る、案では、どちらもカバーするだけでなく、しかも、一旦不同意を表明しても相手の圧力に屈して恐怖の念から諦めてしまった場合、これが非常に多いというふうに聞いておりますが、この場合でも、全うすることが困難な状態での性行為ということで、性犯罪となり得るということで、今まで涙をのんできた多くの被害者を救う可能性があると高く評価して、是非そのように解釈していただきたいと思っております。
 時間の関係で三と四は抜かします。
 課題、懸念なんですけれども、括弧三の例示というところで、八番目の項目で、経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益の憂慮という要件がありますが、これ処罰範囲が不当に限定されないだろうかというふうにちょっと懸念を持っております。と申しますのも、教師と生徒とか、施設職員と入所者、まあ障害者のように、被害者が未熟で不利益を憂慮する能力さえない場合に不処罰となってしまうのではないか、もう少しはっきりとこういうものを規定した新しい立法が必要ではないかと思っています。でも、先ほど小西先生もおっしゃったように、五年後の見直しで検討していただければと思っています。
 それから、括弧四の故意の認定ですが、これも行為者が同意だと誤信したということで無罪になっている判例が、ここに挙げましたように最近でも出ております。それで、かつては強い暴行、脅迫が要件となっていたので、それがない場合に同意の誤信が認定されやすかったと思います。
 しかし、改正法成立後は、犯罪の故意が構成要件該当事実の認識ですので、条文に規定された八類型の事情を認識すれば、被害者が同意の形成、表明、全うが困難な状態にあることを慎重に確認すべきという規範が働き得るのではないかと考えております。ですので、それをしなかった加害者の方が悪いということで、加害者の言い逃れを許さないためには、裁判官は他の犯罪と同様に客観的状況から未必の故意を適切に認定するよう解釈すべきであると私は考えております。
 では次に、性交同意年齢の引上げに入ります。
 評価する点は、もちろん、十三歳から十六歳への引上げが、今まで私が長年論文等で主張してきた内容ですので評価します。そして、十三歳から十五歳について五歳以上の年齢差を要件とすることにつきましては、青少年の対等で自由な性的自己決定権を尊重し、不要な処罰を避けるという意味では一定の評価はしております。
 ただ、課題、懸念としましては、括弧三に書きましたように、成人、十八歳と十四歳の中学生では、たった四歳、まあ五歳差はないんですけれども、経済力等の差は明らかで、権力関係が生じやすいです。十三歳の中学一年生と十六歳の高校生でも同様です。将来的には三歳差にすることも検討の余地があるのではないかと考えております。
 四番のわいせつ目的で若年層を懐柔する行為、いわゆるグルーミングに係る罪の新設については時間の関係上詳細は省略させていただきますが、大人が児童を手懐けて自由恋愛と思わせる性的搾取が横行しており、最近、故ジャニー喜多川氏による未成年者に対する性加害も社会問題化しておりますので、三ページ目です、そのような行為は未成年者保護のためにきちんと処罰すべきで、刑法典の中に新設されることを評価しております。
 五番目の公訴時効についてです。
 これも、評価する点は、成人年齢までの実質的停止と五年の延長、今の時効よりも五年の延長は、現在よりはまだ良いという意味で評価しております。
 ただ、課題、懸念を申し上げますと、しかし、いまだ圧倒的に不十分だと思います。スイスは未成年時の性犯罪の時効を撤廃したと聞いておりますし、私の専門であるフランス刑法は、成人から三十年、四十八歳まで告訴可能でございます。
 その私見と次書いたところですが、時効の理由とされてきた証拠の散逸というのはやはり過去の話で、現在の技術革新により、スマホの映像やデジタルデータ等、半永続的に証拠が残る場合もございます。そのような場合は時効の意味が半減すると思いますので、むしろ被害者の保護や加害者処罰による正義の回復の方を重視すべきではないか、先進国はそのように考えていると思っています。
 米印ですが、その他、性的な姿態を撮影する行為等の処罰及び押収物に記録された性的な姿態の影像に係る電磁的記録の消去等に関する法律案についても、時間の関係で省略をいたしますが、盗撮が社会問題となり、各自治体の条例だけでは適切に処罰できない事案もあるため、特別刑法で処罰し、記録の消去等も速やかに行えるようにする方向性には賛成いたしております。
 最後に、終わりになんですが、性犯罪、性差別的暴力の根絶は刑法改正だけでは決して実現しないと思っております。
 性犯罪、DV、セクハラ等は、性差別、ジェンダー差別に根差した暴力、人権侵害で、決して許されないというのが先進国の常識でございます。性犯罪はまさに人権問題です。性犯罪の遅れは日本のジェンダー不平等の反映であると私は二十年来主張してまいりました。日本のグローバルジェンダーギャップ指数は、御案内のとおり、百四十六か国中百十六位でございます。ちなみに、私の専門のフランスは十六位でございます。日本とフランスの間は百か国も差があるということを考えていただきたいと思っています。
 必要なことはやはり三点あると思っております。
 最初に、ジェンダー平等意識を促す包括的性教育、これは人権教育だと思うのですが、これは犯罪を未然に防止するために絶対に必要だと思っております。ここに書きましたが、妊娠の経過は扱わないとされているということなんですが、それだけでなく、対等なジェンダー平等意識の醸成、セクシュアル・リプロダクティブヘルス・ライツ、SRHRの涵養等、海外では当然学校教育で教育される包括的性教育は、イコール人権教育がなされていないことが日本の大きな問題であり、加害者も被害者も出さない性犯罪根絶のためには最重要課題だと考えております。
 金曜日の本会議の方の質問、答弁をちょっと拝見させていただいたんですが、永岡文部科学大臣の答弁が、性に関しては個人差があるということで、全体に共通の教育はしないけれども、個別に指導することは重要だというふうにお答えになっていたんですが。
 ここで私の個人的エピソードで御紹介したいんですが、恐縮ですが、私は二人の子供をフランスの教育を受けさせまして、下の息子が五歳だった二十年前です、既に二十年前に、学校から帰ってきて、お母さん、今日、赤ちゃんがどうして生まれるか習ったんだよと私にフランス語で説明してくれました、卵子と精子が結合して、こうこうこうなるんだよと。私、もう顔が真っ赤になっちゃうぐらい、当時は二十年前ですから、びっくりしたんですね。
 でも、私考えたのは、そうやって恥ずかしいという観念を生まない早い段階で教えてしまった方が、それで親子ともオープンに性のことを話せる雰囲気をつくり出すということでは大変いいと今は考えております。そして、北欧もそうだと、本当に一桁代のときから教えるというふうに言っています。
 ですから、もう日本の小学校高学年で性に対する個人差が出てきてしまう、思春期になってからでは遅いんですね。むしろ、もっとその前に共通に教えるというのが世界標準だということを御紹介させていただきます。
 そして、二番目の被害の早期発見や被害者支援の充実というのは、弱者保護、人権擁護のために必ず大切ですけれども、これはもう多くの方が、既にワンストップセンターの設置とか支援とかいうことはいろいろなところでもう出ておりますので、省略させていただきます。
 それから、三番目の加害者プログラムの充実というのも、こちらも、やはり被害者に非常に焦点当たっていますが、これから斉藤参考人がお話しすると思うんですが、再犯防止のためには必ず必要ですので、是非そちらの方も充実させていただければと思っております。
 早口で失礼いたしました。御清聴ありがとうございました。
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杉久武#14
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
 次に、嶋矢参考人にお願いいたします。嶋矢参考人。
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嶋矢貴之#15
○参考人(嶋矢貴之君) おはようございます。神戸大学の嶋矢と申します。
 刑法の研究をしておりまして、今回の改正に関しては、法制審議会刑事法部会において幹事を拝命しておりました。
 本日は、このような意見を申し述べさせていただく貴重な機会を設けていただき、誠にありがとうございます。簡単な項目表でございますが、そちらを参照しながらお聞きいただければと思います。
 本日は、専門に関わります実体法について、時間の関係もありますので、特に百七十六条、百七十七条の性犯罪の基本成立要件の改正と、若年者保護の強化に関わる部分について意見を申し述べさせていただきます。
 初めに、今回の改正は、本日お話しいたします実体法のテーマにつきましては大きく分けまして二つのことが目的とされています。
 一つは、処罰範囲の明確化のため、性犯罪の基本部分である強制わいせつ罪、強制性交等罪の成立要件を改めることです。現行法は、百七十六条、百七十七条で暴行、脅迫を手段とし、百七十八条で心神喪失、抗拒不能にさせ、あるいはそれらに乗じて性的行為を行うことを処罰しております。この点の規定ぶりを大きく改め、八つの例示の困難事由を定め、それによって同意しない意思の形成、表明、全うを困難な状態に被害者を置いて性的行為をすることを処罰する規定となっております。
 また、もう一つの目的は、性犯罪の被害にさらされやすい、また、被害に遭った場合には非常に重大な影響を受ける若年者に対する性的保護の強化です。こちらは二つの改正が該当し、一つは、現在十三歳と規定されておりますいわゆる性交同意年齢を十六歳へ引き上げるものです。もう一つは、いわゆるグルーミング、懐柔行為を新たに犯罪として新設することです。
 処罰範囲の変化という観点から申しますと、前者は、基本的に現行法の処罰範囲を維持することとなりますが、後者は処罰範囲を強化、拡張することとなります。そうしますと、新たな処罰範囲を設定するという場合には、そこから誤った処罰や行き過ぎた処罰が生じないように慎重に検討を行うという視点も必要となります。刑事処罰という強い手段で介入し、捜査や裁判の実績のない行為を処罰対象として取り上げることになるからです。
 以上のような理解からしますと、一つ目の性犯罪の基本部分の改正は、これまでの処罰可能であった行為をより明確に処罰の実態を明らかにし、捜査、訴追、裁判でのばらつきがなくなるようにすることが重要となります。それに対して、新たな処罰の設定は、狙いとする処罰目的を達成する明確な規定を説得的な理論的根拠に基づいて設けつつ、誤った処罰や行き過ぎた処罰が生じないように配慮することも重要となります。
 以下では、改正案の具体的部分につき、まず不同意性交等罪からお話ししたいと思います。
 前提として、従来の規定においてなぜ不明確性やばらつきが生じたのかという点を考えますと、三つの要因が考えられます。
 一つは、百七十六条、百七十七条の暴行、脅迫に解釈上、程度が要求され、その程度の理解につき振れ幅が大きかったこと。二つ目は、百七十八条、心神喪失や抗拒不能は、その言葉だけ見ると全く何もできない状態を意味しているようにも思われますが、そうではなく、暴行、脅迫以外により、抗拒が困難となる場合にも積極的に成立を認める裁判例も複数ありました。しかし、その理解が十分に共有されていませんでした。三つ目として、以上のとおり、現行百七十八条による積極的処罰の余地は十分にあったのですが、百七十六条、百七十七条が原則で、百七十八条はやや例外的に適用する場合とのイメージが持たれていたこと。これらが見通しの悪さや、ばらつきをもたらしていたのではないかと個人的には考えております。
 そのような観点から改正案を見ますと、八つの困難事由について、程度を要求することなく、従来の裁判例で認められていた類型や、心理学、精神医学の知見から同等の事態が想定されるような類型、それを取り出し、定めている点が注目されます。その上で、改正案は、それら困難事由により、同意しない意思の形成、表明、全うが困難な状態での性的行為の処罰を定めており、意思決定、実現のプロセスに着目しつつ、性犯罪としての法益侵害の実態である意に反した同意のない性交が処罰されるものとなっております。また、現行の百七十八条に当たる事由も統合して規定することで、いずれかが原則、例外という関係にあるものではないということが明らかにされているのかと思います。
 従来、明確性に欠け、ばらつきをもたらしていた原因が除かれ、より適切な規定となっているものと思います。これにより、社会一般に、こういう場合は性的行為をしては駄目だ、あるいはこういう場合には十分に相手の意思を確認しないとまずいなというようなことが普及し、行為規範として機能することも期待できます。さらに、捜査、訴追、裁判に関わる法律専門家の間でも理解の共有が進み、判断の振れ幅が小さくなるのではないかと思います。
 本改正では、以上の基本部分の改正に関係し、次の三つの指摘すべき事項があります。
 一つ目は、欺罔、誤信による場合の処罰規定です。従来、現行百七十八条、準強制性交等で処罰されていた性的自己決定の前提となる基本的事項の欺罔、誤信について、他の性犯罪と同等の侵害性を有すると考えて規定されたものです。欺罔、誤信がある場合の全てを処罰するのは行き過ぎとも思われますことから、このような規定となっているものと思われます。
 二つ目は、婚姻関係の有無にかかわらずと規定したところで現在の一般的な理解を確認し、性犯罪の法解釈としては、婚姻関係によりそれを左右する余地は全くないということを明確化しております。
 三つ目は、この点のみ処罰の強化に当たるものですが、性交等の中に陰茎以外のいわゆる異物挿入を加え、現行百七十六条の強制わいせつに当たる行為をより重い百七十七条に当たる行為であると規定しております。この点は、性犯罪被害実態という面で、膣、肛門の場合には挿入されるものによって被害は変わらないという理解から変更したものと理解しております。
 次に、若年者保護の強化についてお話ししたいと思います。
 若年者の性的保護を強化すべきであり、そのための処罰規定を強化、拡張すべきであるという点については大方の一致があり、異論はないところです。被害が重大で、長期に人生を及ぼすこと、加害に対して特に脆弱であること、それが理由となります。そのような共通理解から、性交同意年齢の引上げによる処罰の強化、懐柔行為の処罰規定の新設が改正案に含まれております。
 まず、性交同意年齢の引上げについて、従来は十三歳が基準で、その年齢未満の者は性的行為の意味を理解できないと解されることから性的行為から絶対的保護をされておりました。しかし、この点は若年者の能力を十分に理解しないもので、年齢的に低過ぎるのではないかとの批判もあったところです。そこで、性的行為に関する能力をより立ち入って分析をし、従来言われていた性的意味の理解能力だけではなく、性的行為が将来にわたって自己に及ぼす影響を理解する能力、性的行為に直面した際それに的確に対処する能力なども重要であり、それがある程度備わり発揮できるのは十六歳程度であろうということで、今回の改正案となっております。
 ただ、他方で、十六歳未満であるとはいえ、近い年齢の者同士の性的行為を全て処罰してしまってよいのかという懸念も共有されていたところです。そこで、先ほどの能力の分析から、年齢が大きく離れていなければ直ちに対処不能となるものではなく、性的行為に関するイエス、ノー、希望を表明し対応することも可能な場合があるのではないか、それが含まれるような年齢差の場合には処罰から除外すべきではないかと考えられたところです。
 その検討の際には、改正案と異なり、対処能力が足りないことに乗じたなどの実質要件を加えるべきではないかという議論、五歳差は年齢差として大き過ぎるので三歳差とすべきではないかという議論もあったところです。難しい問題ですが、本規定は、困難事由や同意しない意思の形成等の困難化の認定を要することなく、一律に処罰をする規定と理解されます。そうしますと、実質的判断を入れるのは規定の趣旨に反するということから、実質要件は入っておりません。
 他方で、三歳差では、例外なく年齢差により同意しない意思の形成等が困難になる性的自己決定の侵害があると言えないのではないか、それも規定の趣旨に沿わないのではないかということから、五歳差の案となりました。この点は、年齢という形式判断のみによる処罰強化を及ぼす範囲を理論的に問題がない範囲に限定し、若年者同士の性的行為に配慮をしたものと理解しているところです。
 もちろん、この点は、五歳差がなければ対等であるという趣旨ではなく、一歳差、同年齢であったとしても、百七十六条や百七十七条の困難事由である社会的地位利用などによって、若年者の脆弱性を十分に踏まえつつ、個別に判断されるべきこととなります。
 最後に、懐柔行為についてお話し申し上げます。
 この規定は、これまで全く存在しなかったもので、若年者の性的自由が侵害された後に処罰することと同等かそれ以上に未然に防ぐことが重要であるという理解に基づくものです。特に、いわゆるグルーミングと呼ばれ、大人が若年者と信頼関係を築き、あるいは恋愛関係にあると信じ込ませる等して関係性をコントロールして、望ましくない性的行為に至るような事態を防ぐことが重要と考えられました。
 もっとも、それをそのまま条文化することが難しいことも課題でした。大人と若年者が日常的にコミュニケーションを取ること自体、あるいは信頼関係を築くこと自体は禁ずべきことではありません。性的目的でそれらが行われた場合に処罰をする考え方もあり得ますが、そうしますと、処罰の可否が専ら行為者の内心に依存することとなり、明確性と安定性に問題が生じ得ます。
 そのような考慮から、改正案百八十二条は、一号で威迫、偽計等による、二号で拒まれたにもかかわらず反復して、三号で利益供与等によるという手段を定め、面会要求をすることを処罰しております。不当な手段を用いて意思決定を左右することを定め、かつ、会うことで性的被害の危険が飛躍的に拡大することから、それを要求する行為を処罰する形になっております。これにより、外形的、客観的に処罰すべき行為が明確となり、誤った処罰や行き過ぎた処罰となることを慎重に防ぎつつ、若年者が性的被害に遭わない性的保護状態という法益を守ろうとする規定になっております。
 以上のとおり、処罰の明確化や処罰の強化、拡張が必要であるという大筋の共通の理解を共有しつつ、その範囲につき誤った処罰や行き過ぎた処罰に至らないように慎重に考える意見も踏まえた法制審議会の要綱及びそれに基づく改正案であるというふうに考えます。刑法研究者として、性犯罪の処罰範囲の明確化、若年者の性的保護を大きく前進させるものと積極的に評価をしております。
 私からの意見は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
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杉久武#16
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
 次に、斉藤参考人にお願いいたします。斉藤参考人。
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斉藤章佳#17
○参考人(斉藤章佳君) おはようございます。大船榎本クリニックの斉藤といいます。
 私は、榎本クリニックという依存症の専門医療機関で現場のソーシャルワーカーとして働いております。
 現在、榎本クリニックは都内に六か所、あと鎌倉市に一か所、計七か所あります。規模としては、アジア最大規模の依存症の専門医療機関と言われています。私自身は、そこに約二十年間勤める中で、様々なアディクション問題、いわゆる依存症の問題に関わりながら、約十六年前から性加害を繰り返す方の再犯防止プログラムを日本で初めて社会内処遇の枠組みでクリニック内でスタートし、現在、昨年の三月末までに二千五百名を超える性犯罪加害者の再犯防止プログラムに関わってまいりました。恐らく、人数でいうと、一番日本で性犯罪加害者に会っている専門家というふうに言えるんではないかと思います。
 そういうバックグラウンドを持ち、今日私ここに座っているわけですが、最初、被害者支援団体の方から今日このような会があるということで是非出てほしいと打診を受けたときに、私は捕まった側の再犯防止プログラムをやっておりますので、果たして私がここで話す意義があるんだろうかというふうに思ったんですが、その方から、是非今日参加される方々に子供への性加害者の実態をしっかりと知ってもらうということと、是非加害者目線で見た刑法改正の意義ということを話してもらいたいという非常に大きなテーマをいただきました。
 果たして十五分でそのテーマにしっかりと応えられるか、少し自信はないんですけれども、私は現場の人間ですので、現場の中で見てきた、つまり二千五百名の加害者を見てきた中で積み重ねた知見を通して、今日少しお話しできればと思います。
 大きく分けると、今日のお話のテーマは三つになります。
 一つは、子供に対する性加害者の実態についてです。日本ではまだまだこの分野に関する研究がほとんどありません。なぜなら、彼らはなかなか臨床の現場に出てこないからです。ですから、データも非常に少ないというのが現状です。その中で見えてきた実態についてお話しできればと思います。二つ目は、加害者視点から見た公訴時効の延長についての視点になります。三つ目は、先ほど島岡先生おっしゃりました加害者のプログラムについてのお話をしたいと思います。
 では、青いパワーポイントのスライドの資料と、二〇二二年八月三十一日付け朝刊の朝日新聞の記事を参考に進めていきたいと思います。朝日新聞の記事は最後のページに恐らくあるかと思います。
 まず、二枚目のスライドです。
 私自身は社会内で性犯罪の再犯防止プログラムにも携わっておりますが、実は刑事施設でも、つまり受刑中の方へのプログラムの提供やスーパーバイズなんかも行っています。
 これは、某、ある累犯の刑務所での性犯罪のプログラム参加者の実際の生の声です。実は、このような類いの声を私たくさん聞いてまいりました。先生、俺このまま刑務所から出たくないよ、また絶対に小さい子をやってしまうの分かってるから。つまり、刑務所から出ずにずっと刑務所内で過ごしたいと。その理由としては、また再犯するのは分かっているという切実なメッセージでした。
 実は、私、このメッセージは日本の刑事司法の問題が凝縮されたメッセージだというふうに感じています。性犯罪の問題は、どうしても、逮捕、起訴、勾留、そして判決が出るまでは非常にメディアも盛り上がりますが、実は、その後の受刑、そして出所、そして出所後のコミュニティーへの再統合、そして就労、そして再犯せずにどう生きていくかというのが、実はこの加害者臨床と言われる中で非常に重要なポイントになります。
 ですから、彼のメッセージというのは、つまり、出所後、野放しで、どこにもつながれる場所がなく、最終的に再犯するという選択で再びまた刑務所に戻るしかないと、このような満期出所者の非常に厳しい現状を表したメッセージだというふうに感じています。
 実は、子供性加害者の当クリニックでのヒアリング調査、百十七名の調査によると、初めての加害行為から専門治療につながるまでの平均の年数は十四年というふうに出ています。つまり、十四年の間にかなりの数の被害者を出しているということになります。
 なぜ十四年掛かるのか。例えば痴漢の場合は八年、盗撮の場合は七・二年というデータが出ています。それよりも、この子供性加害者の場合は十四年掛かっているわけです。もちろん痴漢や盗撮に比べて母数のデータはちょっと少ないんですけれども、約倍ぐらいの期間が掛かっています。これは、彼らが泣き寝入りしそうな、そして訴え出なさそうな、特に小学校一年生から三年生を主に狙っている加害行為を繰り返している人たちだからです。つまり、子供は性被害を受けているとき何をされているか分からないから。
 彼らの中には、実は男児を狙う者が非常に多いです。これ、理由は、同性愛者ではなくて、女児よりも男児の方が声を上げにくいと知っているからです。昨今、某芸能事務所の男児への性加害の問題がメディアで出ておりますが、実は加害者というのは、自分が逮捕されないために、この問題行動を続けるために何が一番選択として正しいのかを知っているわけです。そのために男児を狙うという加害者が実は結構多いという事実が余り知られていないなというふうに感じます。
 次のスライド行きたいと思います。
 子供性加害の実態ですが、一つ目は、これは実際のプログラムを受けている当事者の言葉です。その常習性と衝動性は他の性倒錯の群を抜いている、好みの子供を見ると、まるでそれに吸い込まれるように近づいてしまうんだ、このような発言はよくプログラムの中で見られます。
 有名な研究で、少し古いんですが、アメリカのジョナサン・エイブルの研究では、未治療の性犯罪者が生涯に出す被害者は平均三百八十人であり、延べ五百十八回の加害行為に及ぶと言われています。これは子供性加害だけではなくて、あらゆる性暴力を含むアメリカの研究です。
 私、刑務所等のプログラムで必ずこのデータを出すんですが、先ほどの刑務所から出たくないと言った方のグループでこの話をしたときに、たまたまそのグループは五人参加していて、三人が子供性加害の受刑者だったんです。累犯です。皆さん刑務所に五、六回は入っている方々です。このデータを見て彼らの一人が、私はその三倍はやってきましたと言いました。私はやっぱりびっくりしまして、ほかの方の顔を見たら、ほかの方もうなずいていました。実は、この子供性加害の問題、これだけの現象を見て確定的なことは言えませんが、非常に暗数が多く、そしてその背景には何十人、何百人という被害者がいるんだなというふうに現場で実感いたしました。
 法務総合研究所の調査、これも少し古いですが、子供への性犯罪前科二回以上の者の再犯率は八四・六%と言われています。これ、ちょっと母数が少ないのでもう少し母数取った方がいいと思うんですが、現場でこれは私自身が感じている実感と非常にシンクロします。
 次のスライド行きたいと思います。
 これは、実際に子供性加害を繰り返した方が当院の再犯防止プログラムにつながる際に、診断名として小児性愛障害という診断が付くケースが多いです。実際に子供に性的な関心を持つ人は、男性では人口の五%、女性では大体一%から三%と言われています。その対象は同性、異性どちらもあります。
 実際に、私は今女性のペドフィリアの加害者の治療に当たっています。初めて私も女性のペドフィリアの加害者に出会ったんですけど、現場で。ただ、多くは加害者は男性です。そして、被害者は女児もいれば男児もいるということは言えると思います。
 小児性愛障害のタイプとしては、純粋型と混合型二つに分かれます。純粋型は十三歳未満の児童のみが対象です。混合型は十三歳未満も、それ以上、成人も対象としています。当院の百十七名のデータでは、約一割が純粋型、そして残りの九割は混合型でした。
 あと、小児性愛障害を診る上での留意点として、これ臨床的なところで重要なポイントとして挙げておきました。児童への性的嗜好は、必ずしも直接的な加害行為を含むわけではありません。実際に児童への性交を想起しながらも、生涯加害行為を実行に移さない人も一定数存在します。
 また、セクシュアリティーの複雑さというのも実は余り知られていません。小児性愛障害の方のセクシュアリティーの複雑さということで、今回、キッズライン事件と言われる事件の朝日新聞の記事を持ってきました。私、この方の担当を今もずっとしているんですが、この方に関しては、成人の男性、女性も性対象ではなく、児童に関しても、女児は対象ではなく男児のみ性対象という方です。ほかにもこういう方がいらっしゃいました。成人の場合は男女とも性対象だが、児童の場合は男児のみ性対象で女児は性対象ではないと。
 このように非常に複雑なセクシュアリティーを持った加害当事者がいますので、初診のときには必ずその方のセクシュアリティーを確認するようにしています。
 次のスライド行きたいと思います。
 実際に彼らが見ている世界というのはどういう世界なんだろうかというのを少しまとめてみました。
 今回、刑法改正の中で、不同意性交等罪ということで、同意という言葉が入ったのは私も非常に画期的だなと思います。
 彼らの考える同意の概念、どういうものでしょうか。彼らの考える同意というのは、自分の行為は、これ、行為というのは加害行為です、受け入れられて当然であるという認知のゆがみに支えられています。つまり、子供は無条件に自分を受け入れてくれているという中で、加害者自身は承認欲求を満たしています。実際に、純愛幻想、飼育欲、支配感情という三つの特徴がありますので、そちらは目を通していただければと思います。
 よく彼らはかわいいという言葉を使います。このかわいいは、我々の子供に感じるかわいいとは質的に異なります。その背景にある言葉は、相手を絶対に脅かさないという保証がそこに含まれています。だから、彼らは子供をかわいいというふうに感じるわけです。
 彼らの同意というのは、支配、被支配の中で成立するものです。ですから、この法律の中に不同意性交罪、この同意という概念が入ったことによって、彼ら自身も治療の中でこの同意の概念をアップデートしていく大きなきっかけになりますので、是非この名前で法律ができるということを私は強く望んでいます。
 最後のまとめです。性犯罪の再犯防止に重要な視点として幾つか挙げました。
 一つは、やはり刑罰や監視によるアプローチというのはもう限界が来ています。先ほども申し上げたとおり、過去に二回以上子供に性犯罪で逮捕されている人の再犯率は八六%でした。刑罰だけでは防げないというのがもう目に見えております。ですから、やはり医療モデル、教育モデル、社会福祉モデルを統合的に加えたアプローチを普遍化していくことが重要だと思います。
 そして、一つ気を付けないといけないのは、これは我々自戒を込めてですが、医療機関でこういうプログラムをやっている以上、診断名が付きます。そのことによって過剰に病理化してしまうことは、本人の行為責任を隠蔽してしまう機能があります。彼らは交番の前ではやりません。ですから、非常に選択的な行動と言えます。ですから、この辺の行為責任と疾病の部分、しっかり分けて考える必要があります。
 そして三番目は、関わる支援者が子供への性暴力に対する正しい知識と認識を持つことも大事だと思います。昨今から出ています男児も性被害の対象になることや、カミングアウトにはやはりそれ相応の時間が掛かります。ですから、この辺りもしっかりともう世間一般の常識として知ってもらいたいですし、グルーミングという言葉に関しても是非多くの人が知ってもらいたい言葉だなと思います。
 最後になりますが、性犯罪に関しての一次予防、二次予防、三次予防というふうにまとめました。
 一次予防は、先ほどから出ています啓発、そしてやはり性教育です。
 包括的な性教育の重要性というのは、私もこのプログラムを通して感じています。実は、昨年の九月から、我々の加害者のプログラムで性教育のプログラムを始めました。実際に助産師の櫻井裕子先生に来ていただいて、月一回ではあるんですが、性教育、学校で受けるような性教育のプログラムを行っています。これ非常に参加者に好評で、こういうことをもっと早く知っていたかったと加害当事者が言っています。ですから、この包括的性教育を幼少期からしっかり学ぶということの重要性は当事者も声を上げているということを知っていただきたいと思います。
 あと、二次予防に関しては、早期発見、早期治療。先ほど、初めての加害行為から専門治療につながるまでかなりの期間を要しています。この辺りは刑事手続も含めて早い段階で治療につながっていくようなシステムの構築が重要だと思います。
 最後は、再発防止です。これは今我々が取り組んでいるプログラムになります。まだまだ少ないので、もう少し増えていくといいなと思います。
 最後ですが、今回の資料から引用したデータ等は、こちらの「「小児性愛」という病―それは、愛ではない」という本の中に書いてあります。もう少し詳しくデータとかまとめたものがこの本の中には集積されていますし、実は加害者自身も過去に小児期の逆境体験を多く経験しています。つまり、彼らも過去被害者だった経験があるわけです。このような被害と加害の負のサイクルを断ち切るためにも、我々がやっている加害者臨床の意義というのは非常に大きいなというふうに感じています。
 御清聴ありがとうございました。
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杉久武#18
○委員長(杉久武君) ありがとうございました。
 以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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加田裕之#19
○加田裕之君 自由民主党の加田裕之でございます。
 本日は、四名の参考人の先生方から本当に現場に即した中での御意見いただきましたことに感謝、御礼申し上げたいと思います。
 まず、小西参考人にお伺いしたいと思います。
 私も兵庫県ですので、先生が県立こころのケアセンターの外部評価委員していただいておりますことに感謝申し上げます。
 実際、今回ちょっと私がお伺いしたいのは、障害の特性を踏まえた性犯罪の創設の必要性についてなんですけれども、小西参考人は、様々な研究、そしてまた先ほど言いましたいろいろな機関の委員もされておりましたり、いろいろな方の研究も長年されているんですが、被害者の方に障害がある場合なんですけれども、健常者とやはり異なる困難を抱えることになると思います。その点について、どのような形の困難さというものがあるのかということについて、現場の経験からお伺いできればと思います。よろしくお願いします。
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小西聖子#20
○参考人(小西聖子君) お答えします。
 ちょっとまとまったお答えできるかどうか分かりませんが、障害といった場合に、多岐にわたるわけですね。例えば、身体障害もあれば、精神障害もあれば、それから知的障害ということもこの性犯罪の被害ということについては結構関わってくると思います。それぞれが、今回の法案に沿って言えば、意思のその形成、まあ認識のところですね、そこで、例えば年齢が成人に達していてもこれが被害だと分からないというようなこともあれば、あるいは、全うのところで、同意しないことは思っていても何も表出ができなかったというようなこともあるわけで、法に述べてある三段階の中の様々なところで引っかかってくると思います。
 今日、私が述べたその性的虐待の被害者の場合も、これまあPTSDだけではなく、障害名として言うのであれば解離だとか、あるいは、中にはこういう被害を受けていることでもう精神障害が出ているような方もいらっしゃいますので、そういうときには、更に、その同意の意思の形成、表明、全うですかね、その三つの様々なところでできなくなる。だから、全体的な言葉で言えば脆弱であると言えますけど、済みません、個別で本当にケースによって違いますので、そこを評価することが必要だというふうに思います。
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加田裕之#21
○加田裕之君 ありがとうございます。
 続いて、次、斉藤参考人にお伺いしたいと思います。
 本当に、加害者視点という形でということで、私も事前に資料を読ませてもらいまして、本当になかなか聞くケースがない中でのお話だったので、大変参考になりました。
 そうした中におきまして、先ほど言いました複雑なセクシュアリティーの中でいろいろなケースが想定ということで、組合せみたいにお話があったんですけど、その中で、また障害のある性犯罪被害ということについて、その要素が入りましたときにまたより一層複雑化すると思うんです。
 実際、斉藤参考人から見て、加害者側ですね、被害者の障害を知り得る立場にある性被害という部分についての特徴とか事例について、ありましたら教えていただきたいと思います。
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斉藤章佳#22
○参考人(斉藤章佳君) ありがとうございます。
 加害者が被害者に障害があるということを知っている場合の加害者の特性ということでよろしいでしょうか。
 私も様々な加害者を見てきましたが、基本的に彼らがターゲットとするのは加害行為を達成しやすいかどうかが基準になりますので、そういう意味では、例えば軽度知的障害や発達障害を持つような児童はターゲットとされやすいというふうに言えると思います。
 そういう場合は、やはり教職員の加害者の方なんかは、そういうケースで加害行為を行って我々のところに来る方もいらっしゃいますし、非常に子供に関わる職業を選択している方の中にも小児性愛障害の当事者の方いらっしゃるので、そこの辺りというのは少し何か配慮が必要なのかなと思います。
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加田裕之#23
○加田裕之君 ありがとうございます。
 やはりそういう部分で、実際、声を上げにくいところを巧妙に狙ってやってくるということがあります。先ほど斉藤参考人がおっしゃいましたように、教職員の方とか、本来であれば一番守る立場である保育される方とか、キャンプの指導員とか、そういう方の立場がそういう形になるということで、これをどういう形で、もちろんですけど、ぱっと見る、一見すれば分かりにくいんですが、どうすればこれはちょっと分かるようになるのか。特徴的とかそういう部分についての見解がありましたら、ちょっと再度教えていただきたいと思います。
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斉藤章佳#24
○参考人(斉藤章佳君) 当院のデータでは、初診時、教職関係、子供に関わる仕事に就いていた方の全体のパーセンテージで一五%でした。ただ、事件によって職をなくしている方も来ているので、そういう方も含めると約三割、全体の三割が子供に何かしらの教育的な立場で関わっていた方々でした。
 ですから、今おっしゃったように、どこの辺りまで、例えば加害者のことをデータベース化するにしても、今回のキッズラインで起きた事件に関して見ても、実はマッチングアプリで起きた事件の件数よりも圧倒的に多いのは、キャンプ場とか親が夏休みに子供に自主的に参加させたいというような、そういう中で起きているケースが結構多いので、どこまでを規制していくか、データベース化していくかというのは非常に範囲が難しいなというふうに感じています。
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加田裕之#25
○加田裕之君 ありがとうございます。実際、この範囲というものと、またデータベース化の部分についても、またこれも我々も考えていきたいと思います。
 次に、嶋矢参考人にお伺いしたいと思うんですけれども、現行刑法が、被害者に障害のある場合、心神喪失として扱っていることの限界についてなんですけれども、その点について嶋矢参考人に御見解をお伺いしたいと思います。
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嶋矢貴之#26
○参考人(嶋矢貴之君) ありがとうございます。
 現行刑法の心神喪失についてということですね。
 行為者が心神喪失である場合には、責任能力を欠き、処罰されないということになります。心神喪失につきましては、精神の障害により、是非弁別の能力あるいは行動制御能力いずれかについて著しい障害があるという場合に責任能力がないというふうに考えられて処罰をされないということになり、先ほど申し述べました二つの能力が減弱している場合には、心神耗弱ということで処罰が減軽されるという取扱いになっております。
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加田裕之#27
○加田裕之君 ありがとうございます。
 次に、島岡参考人にお伺いしたいんですけれども、フランスの事例の方が最後に言われていたんですけれども、フランス刑法におけます被害者に障害がある場合の取扱いということについての今の現状というものについて教えていただけたらと思います。
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島岡まな#28
○参考人(島岡まな君) 御質問ありがとうございます。
 フランス刑法は、暴行、脅迫、強制、不意打ちが行為要件になっておりまして、そこで実質的に性犯罪の成立を検討します。そして、障害がある場合とか、脆弱性ですね、障害だけじゃなくて妊娠なども入るんですが、身体障害、精神障害、あるいは性別とか様々な要件が入っていまして、そちらの脆弱性が認められた場合は行為者に刑罰が加重されるという方向で規定になっていますので、今回の日本の規定とは少し違っております。
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加田裕之#29
○加田裕之君 それで、再度お伺いしたいんですけど、やはりこの部分について、日本という、今回もちろん改正、我々もやっていくんですが、今後のその課題点ということについて、フランスとの比較という部分について、もちろん今はこの部分についての改正案の議論ではあるんですけど、今後のこれからの課題ということについては、先生の御見解をお伺いできたらと思います。
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