法務委員会

2003-05-29 参議院 全219発言

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会議録情報#0
平成十五年五月二十九日(木曜日)
   午前十時五分開会
    ─────────────
   委員の異動
 五月二十八日
    辞任         補欠選任
     鈴木  寛君     江本 孟紀君
     角田 義一君     朝日 俊弘君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         魚住裕一郎君
    理 事
                荒井 正吾君
                市川 一朗君
                千葉 景子君
                荒木 清寛君
                井上 哲士君
    委 員
                岩井 國臣君
                柏村 武昭君
                佐々木知子君
                陣内 孝雄君
                野間  赳君
                朝日 俊弘君
                江田 五月君
                江本 孟紀君
                浜四津敏子君
                平野 貞夫君
                福島 瑞穂君
       発議者      朝日 俊弘君
       発議者      江田 五月君
       発議者      千葉 景子君
   衆議院議員
       修正案提出者   塩崎 恭久君
       修正案提出者   漆原 良夫君
   国務大臣
       法務大臣     森山 眞弓君
   副大臣
       法務副大臣    増田 敏男君
       厚生労働副大臣  木村 義雄君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  中野  清君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        加藤 一宇君
   政府参考人
       法務省刑事局長  樋渡 利秋君
       法務省矯正局長  横田 尤孝君
       法務省保護局長  津田 賛平君
       法務省入国管理
       局長       増田 暢也君
       厚生労働省医政
       局長       篠崎 英夫君
       厚生労働省社会
       ・援護局障害保
       健福祉部長    上田  茂君
       厚生労働省保険
       局長       真野  章君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○政府参考人の出席要求に関する件
○心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者
 の医療及び観察等に関する法律案(第百五十四
 回国会内閣提出、第百五十五回国会衆議院送付
 )(継続案件)
○裁判所法の一部を改正する法律案(第百五十五
 回国会朝日俊弘君外三名発議)(継続案件)
○検察庁法の一部を改正する法律案(第百五十五
 回国会朝日俊弘君外三名発議)(継続案件)
○精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一
 部を改正する法律案(第百五十五回国会朝日俊
 弘君外三名発議)(継続案件)

    ─────────────
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魚住裕一郎#1
○委員長(魚住裕一郎君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨二十八日、角田義一君及び鈴木寛君が委員を辞任され、その補欠として朝日俊弘君及び江本孟紀君が選任されました。
    ─────────────
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魚住裕一郎#2
○委員長(魚住裕一郎君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、検察庁法の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に法務省刑事局長樋渡利秋君、法務省矯正局長横田尤孝君、法務省保護局長津田賛平君、厚生労働省医政局長篠崎英夫君、厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部長上田茂君及び厚生労働省保険局長真野章君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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魚住裕一郎#3
○委員長(魚住裕一郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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魚住裕一郎#4
○委員長(魚住裕一郎君) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案、裁判所法の一部を改正する法律案、検察庁法の一部を改正する法律案及び精神保健及び精神障害者福祉に関する法律の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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佐々木知子#5
○佐々木知子君 おはようございます。自民党の佐々木知子でございます。
 私は、前に本法案につきましては政府並びに修正案発議者に対しまして全般にわたって約一時間質疑をしたところではございますけれども、今日は、これまでに同僚議員から出された幾つかの疑念、あるいは反対派の方からの意見に基づきまして、質問を絞ってさせていただきたいというふうに思っております。
 まず一点ですけれども、本制度の趣旨、目的について、これは本人の社会復帰のためか、保安のためかということがございます。
 まず、本制度につきましては、精神障害者を危険視し、これを閉じ込めておこうとするものではないかとの懸念が多々提起されております。そのようなものではないということを、その根拠とともに法務大臣、明確に示していただきたいと存じます。
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増田敏男#6
○副大臣(増田敏男君) お答えを申し上げます。
 本制度は、精神障害者を危険視するものでもなければ閉じ込めておこうとするものでももちろんありません。心神喪失等の状態で重大な他害行為が行われるということにつきましては、精神障害を有する者がその病状のために加害者となる点で極めて不幸な事態であります。しかも、そのような者の円滑な社会復帰には多大の困難が伴うと考えられます。
 そこで、このような者については国が後見的立場からその社会復帰を促進する必要がありますが、そのためには、まずもってそのような行為の原因となった精神障害を改善することが最も重要な根本的解決策ですので、本制度を創設することとしたものであります。
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佐々木知子#7
○佐々木知子君 本制度につきましては、ドイツで取り入れられている保安処分ではないかという声もございます。しかし、保安処分と申しますのは、刑罰に代わる制裁を科すことをその本質とするものでありまして、犯罪を犯した者に対しては原則として刑罰を科すけれども、責任能力の関係で刑罰を科せない場合にはその代わりにその者を拘禁するというものでありまして、犯罪を犯した者は刑罰が科されないのであれば必ず保安処分が科されるという、言わば二者択一の関係にあるのではないかというふうに理解しております。
 そこで、本制度でも、心神喪失等の状態で犯罪に当たる行為をした者に対しては常に本制度による処遇が行われることになるのか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
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樋渡利秋#8
○政府参考人(樋渡利秋君) 本制度におきましては、対象者が重大な他害行為を行ったからといいましても、当然に入院や通院の決定がなされるというものではございません。重大な他害行為を行った者のうち、医療の必要が認められ、かつ社会復帰を促進するため特に配慮が必要な者に対し手厚い専門的な医療を確保するものでございます。
 このような点からも、委員御指摘のとおり、本制度と保安処分とは全く異なるものと考えております。
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佐々木知子#9
○佐々木知子君 また、本制度におきましては、裁判官も処遇の要否、内容の決定に加わるということにされておりますが、この点が保安を重視した結果であるという声も聞かれます。
 しかし、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者につきましては、これまでも都道府県知事によって措置入院等の処分が行われてきたものでありまして、それが今後は知事に代わって裁判官と精神科医の合議体がこれを決定するというものであって、知事が決定するのに比べて裁判官と精神科医が決定する方がより保安を重視したものになるとも考えられないのではないかと思います。
 また、我が国では、最近はちょっと、不祥事などがあってちょっと情けないところもあるのですけれども、裁判所は人権保障の最後のとりでとして一般社会からも相当程度の信頼を得ているというふうに考えております。
 そこで、処遇の決定に裁判官が加わる理由、特に保安を重視したためではないという点を明確に説明していただきたいと思います。
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樋渡利秋#10
○政府参考人(樋渡利秋君) 御指摘のとおり、我が国におきましては、裁判官は人権保障という観点で国民から高い評価を受けていると思われまして、都道府県知事ではなく裁判官と精神科医が判断することが保安を重視した結果であるといいますのはいわれのない批判だというふうに考えております。
 本制度におきまして医学的な知見が判断の中核になることは当然でございますが、本制度による処遇は、医療を確保するためとはいいましても、人身の自由の制約は監視を伴うものでございまして、そのような人権の制約が許されるか否かという法的判断でございます。また、本制度におきましては、本人の生活環境に照らし治療継続が確保されるか否かなど、純粋な医療的事項とは異なる事柄をも考慮することが必要でございます。
 そこで、本制度では処遇の決定に裁判官が関与することとしたものでございまして、また、裁判官による判断は対象者の人権保障という観点からも重要だと考えております。
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佐々木知子#11
○佐々木知子君 さらに、本制度におきましては、特に政府原案で再び対象行為を行うおそれというのが要件とされていたこともありまして、保安のための制度であるとの批判がなされております。
 それにもかかわらず、本制度が保安のためのものではないというのであれば、第一条の「目的等」に「同様の行為の再発の防止を図り、」ということが定められている理由について明確に説明していただきたいと思います。
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樋渡利秋#12
○政府参考人(樋渡利秋君) 心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行った者は、精神障害を有しているということに加えまして、重大な他害行為を犯したという言わば二重のハンディキャップを背負っている方々でございます。仮にこのような精神障害が改善されないまま同様の行為が行われることになれば、そのような事実は本人の社会復帰の大きな障害となることは明らかでございます。
 そこで、このような事態にならないようにすることが対象者の社会復帰という目的を達成するために極めて重要であるということから、第一条の目的中に、精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなくとの言葉を入れたものでございまして、衆議院において修正された要件につきましても同様の趣旨であると理解しております。
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佐々木知子#13
○佐々木知子君 二点目でございますが、本制度の対象者を心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に限定したことが医療的な観点から適切かどうかということについてお伺いしたいと思います。
 本制度の対象者を心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に限定したことについても、このような者が再び重大な他害行為を犯さないようにするためであって、保安のための制度であることを表しているのだという声がございます。対象をこのような者に限定した理由について分かりやすく御説明いただきたいと思います。
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樋渡利秋#14
○政府参考人(樋渡利秋君) 心神喪失等の状態で殺人、放火等の重大な他害行為を行った者は、先ほども申し上げましたとおりに、言わば二重のハンディキャップを背負っている方々でございます。仮に、このような方々が、そのような精神障害が改善されないまま再びそのために同様の行為が行われることとなれば、そのような事実は本人の社会復帰の大きな障害となることからも、このような方々に対しましては手厚い専門的な医療を確保することが必要不可欠だというふうに考えております。
 そこで、このような者につきましては、継続的で適切な医療を行うことによりその精神障害を改善し、不幸な事態を繰り返さないようにしつつその社会復帰を促進することが重要であると考えられますことから本制度の対象としたものでございまして、これらの者が重大な他害行為を犯さないようにするために本制度の対象としたものではございません。
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佐々木知子#15
○佐々木知子君 また、このような者に対象を限定したことに対しては、このような者であっても一般の精神障害者であっても必要な医療の内容に差はなく、特別に分離して処遇することは問題であるとの声も聞かれております。
 そこで、このような者とその他の者とで必要となる治療環境や治療内容にどのような違いがあるのか、また、このような者とその他の者を別に処遇することにどのような医療上のメリットがあるのか、御説明願いたいと思います。
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上田茂#16
○政府参考人(上田茂君) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の処遇につきましては、これまで措置入院などの形で一般の精神病院に入院するケースが多くありましたが、その場合、様々な程度の精神症状を持つ一般の精神障害者と同様のスタッフ、施設の下で処遇することとなるために専門的な治療が困難となっており、また、入院患者同士の人間関係が緊張の高いものになりやすいなど、他の患者の治療にも悪影響を及ぼしているといった問題点が指摘されております。
 そこで、今回の法案では、これらの問題に対応するため、裁判所の合議体による入院決定があった者については指定入院医療機関において医療を提供することとし、医療関係者の配置を手厚くするとともに、十分なスペースを取り設備が十分に整った病棟において高度な技術を持つ多くのスタッフが頻繁な評価や治療を実施することとしております。
 また、精神障害を有していることに加えて重大な他害行為を行ってしまったという二重のハンディキャップを背負っている対象者については、五月十三日の本委員会において浦田参考人が述べられたように、重大な他害行為を行ってしまったことがトラウマとなって病状の改善を妨げることもあるため、精神障害の治療と重大な他害行為を行ってしまったという二つの、両方の問題に配慮して専門的な治療が行われる必要があるものと考えております。
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佐々木知子#17
○佐々木知子君 確かに、これまで本委員会におきまして、精神科のお医者さんあるいは看護師の方が、現場でこういう方の処遇を一緒にやるということは非常に難しい面があるということを述べられておりましたし、私も検事として務めておりました時代に、よく精神鑑定の事件などをやったときに、やはり措置入院になった患者は非常に処遇が難しいということで、ともすると早めに出してしまうということがあるということもよく聞かされました。だから、そういうような問題点というのをやはり考えていかなければ、患者自身にとっても非常に不幸なことになるというふうに思っておりますので、是非対処方よろしくお願いしたいと思います。
 第三点でございますが、処遇の要否、内容を決定するための手続に対する懸念について幾多の疑念が呈されておりますので、これについてお聞きしたいと思います。
 本制度による処遇の要否、内容を決定するための手続につきましては、刑事訴訟手続と同じ手続にするべきであるとの声も聞かれております。つまり、自由を剥奪するものであるからということでございますけれども、しかしそもそも、これまでこのような者につきましては都道府県知事により措置入院とされていた者であって、この手続は刑事訴訟手続でないことはもとより、その対象となる者は診察や入院の対象であるにすぎず、この場合何らの権利も規定されてはおりません。
 そのようなことを考慮いたしますと、本制度の審判手続は適正手続に十分配慮されており、特段問題であるとは思われないと考えております。むしろ、訴訟手続ということとなれば、場合によっては、当事者間でささいな事実関係についてまで熾烈に争われ、相当長期間にわたって裁判が続くこともあり得ることは、これまでの刑事裁判を見れば明らかでございます。仮にそのようなことになれば、その間その者に集中して医療を行うことも困難になるであろうという不都合も想起されます。
 問題の本質は、できる限り適正な事実認定を行われることを確保する一方で、手厚い専門的な医療が手後れになる前に行われるような迅速性をも確保することであり、その両者のバランスをどのように確保するかにあるのではないかと考えております。
 本制度におきましては、このような点についてはいかなる配慮がなされているのか、御説明願いたいと思います。
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樋渡利秋#18
○政府参考人(樋渡利秋君) 本制度の目的は、対象者の社会復帰を促進することにございまして、そのため必要とする者にできる限り速やかに本制度による手厚い専門的な医療を行うことが重要でございます。しかし一方で、処遇の要否、内容の判断手続が不十分なものであってよいということではございませんでして、十分な資料に基づきかつ対象者の適正な利益も十分に保障された手続によることもまた重要でございます。これは御指摘のとおり、迅速にかつ慎重にという相反する二つの要請につきまして適切なバランスを図ることが重要であると考えられます。
 そこで、本制度におきましては、最初の審判については対象者に必ず弁護士である付添人を付することとしました上で、この点は少年審判手続よりも手厚い保障であると考えておりますが、その上で対象者、保護者及び付添人に対し審判における意見陳述権、資料提出権、決定に対する抗告権を認め、また入院の決定を受けた後におきましても入院患者側に退院許可等の申立て権を認めるなど、対象者の適正な利益を保護するための様々な権利を保障した上で十分な資料に基づいて適切な処遇を柔軟に決定することができる審判手続によることとしたものでございます。
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佐々木知子#19
○佐々木知子君 また、本制度の付添人につきましてもよく質問がなされております。つまり、刑事訴訟手続における弁護人と同様の権利を認めるべきだという意見でございまして、具体的には証拠調べ請求権や証拠の同意、不同意の権利を認めるべきであるとの声も聞かれます。しかし、例えば本制度では付添人は少年審判の付添人と同様に、意見陳述権や証人尋問権等が認められており、事実関係を争う上でも特に問題があるとは思われません。
 また、例えばいわゆる伝聞法則にとらわれることなく、自らが必要と考える証拠書類を自由に裁判所に提出して読んでもらうという柔軟な対応もできるということでございまして、刑事訴訟手続に比べ、ある意味ではより一層柔軟であるということが言えるかというふうにも思います。
 私としては、本制度の付添人は、実質的に考えれば刑事訴訟における弁護人と比較しても適切な権利が認められており、対象者にとって不利益とは言えないというふうに考えておりますが、この点についての政府の考え方を御説明願いたいと思います。
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樋渡利秋#20
○政府参考人(樋渡利秋君) 御指摘のとおり、本制度におきましては、刑事訴訟手続と異なりまして、付添人は自らが必要と判断する資料を自由に裁判所に提出して証拠としてもらうことができ、また自由に意見を述べ、更に証人として採用された者に対しましては反対尋問を行うこともできるのでございまして、少年審判の場合と同様に事実関係に争いがある場合でありましても、対象者の利益のため十分な活動が行われるというふうに考えております。
 確かに、証拠調べ請求権や証拠不同意とする権利等、対立する両当事者による訴訟手続を前提とする権利は付添人には認められてはいませんが、例えば証拠調べ請求につきましても裁判所に対し証拠調べの申出を行うことが可能でございまして、実際上の支障は全くないと考えられます。
 なお、本制度の審判手続は、裁判所が対象者の言わば後見人のような立場で職権で事実を探知していくというものでございまして、検察官や付添人もこのような手続の協力者としてその者に最も適切な処遇を明らかにするための資料を提供するというものでありまして、対象者の社会復帰の促進という本制度の目的からしますと、対立する両当事者が手続を進行する訴訟手続に比べよりふさわしい手続であると考えております。
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佐々木知子#21
○佐々木知子君 第四点目でございますが、処遇の要否、内容の決定基準に対する懸念が提起されております。本制度による入通院の決定基準につきましては明確ではなく、精神障害がある限り病院に閉じ込められるのではないかと懸念する声が聞かれます。特に、精神障害の中には現代の精神医学では残念ながら完全には治癒しないものもあるというふうに承知しておりまして、そのような者は常に入院となり、一生退院できないのではないかというふうに心配する声もあるように思われます。
 そこで、政府としては、衆議院における修正後の要件に照らして、どのようなものが本制度による処遇の対象となると考えているのか、具体的な例を示すなどして明確に示されたいと、お願いいたします。
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樋渡利秋#22
○政府参考人(樋渡利秋君) 本制度におきまして、入院や通院の決定がなされるための要件は、まとめますと、この法律による医療が、一つには、対象行為を行った際の精神障害を改善するため必要であるということ、二つ目には、その精神障害の改善に伴って同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するため必要であるということが認められる場合であることでございまして、この両者が認められる場合には入通院の決定が行われることになるものと理解しております。
 したがいまして、具体的には、例えば対象者が有する精神障害が治療可能性のないものである場合やその精神障害が治った場合には、先ほど申し上げました最初の要件を満たさないことになりますので、要するに精神障害の改善をするため必要があるという要件を満たさないことになりますので、入通院の決定は行われず、また入通院中の患者は本制度から外れることということになります。
 また、反対に、その治療を要すると、まだ治療を要するという場合でございましても、例えば身近に適当な看護者がおり、本人を病院に通院させ、あるいは定期的に服薬をさせることが見込まれるような場合には治療の継続が確保されるであろうと考えられ、あるいは常に身近に十分な看護能力を有する家族がおり、仮に本人の病状が悪化して問題行動に及びそうになった場合には、直ちに適切に対処することが見込まれるような場合には同様の行為を行うことなく社会に復帰することができるような状況にあるであろうと考えられますことから、いずれの場合にも第二の要件、すなわち同様の行為を行うことなく社会に復帰することを促進するために治療が必要である、そういう要件を満たさないということになりますので、やはり入通院の決定等は行えないことになります。
 そして、精神障害が治癒していなくても、このような二つ目の要件が認められない場合には直ちに本制度の対象から外れることになるのでございまして、精神障害が治らない限り一生退院できないというものではございません。
 さらに、本制度では、裁判所がいったんこのような要件に該当すると認めて入院の決定をしたとしましても、入院患者側はいつでも裁判所に申し立てて依然としてこのような入院による医療が必要な状態にあるか否かの判断を求めることができる上、そのような申立てがない場合でございましても、原則として六か月ごとに裁判所が必ずこのような状態にあるか否かをチェックすることとしておりまして、不当に長期間入院させられ続けるというような事態は起こらないと確信しております。
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佐々木知子#23
○佐々木知子君 本制度に対しましては、入院期間の上限が定められていないことから、実際には無制限に自由を奪われてしまうかもしれないという懸念が示されていることは政府もよく御承知のことと思います。特に、このような懸念の中には、実際には入院継続の必要があるか否かははっきりとは分からないけれども、入院をさせ続けなければひょっとすると問題行動に及ぶかもしれず、また、そのような事態になれば自分の責任を問われることからこのまま入院させ続けようなどともしかして裁判官や医者が考えるのではないかという懸念も耳にいたします。
 例えば、刑事裁判におきましても、シロかクロか不明である場合にはシロであると判断するルールがございますけれども、入院継続の必要があるか否かどうしても判断が付きかねるという場合に、そのまま入院させることとするのか、あるいは退院をさせて様子を見ることとするのか、そのルールを定めておく必要があるのではないかというふうに思うわけですが、この点についての御所見を伺います。
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樋渡利秋#24
○政府参考人(樋渡利秋君) 本制度におきましては、先ほどお答えしましたような入院の要件に該当すると認められる者に対してのみ入院の決定が行われるものでございます。この入院の要件に該当しないと認められる者はもちろんのこと、御質問にありましたように合議体が慎重に判断してもなおこの要件に該当するか否かがはっきりしないような者に対しましては、入院の決定が行われることはございません。
 これは、御指摘にありましたように裁判の、刑事裁判のルールでは疑わしきは被告人有利ということがございますが、これは刑事裁判じゃございませんからそのルールが適用されるという意味ではございませんけれども、そういうような判断の仕方は裁判官は常に心掛けているといいますか身に付いておるものでございまして、はっきりとした要件がない以上その入院の決定をするようなことはあり得ないというふうに考えております。
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佐々木知子#25
○佐々木知子君 これとも関連いたしますけれども、刑事裁判において裁判所が執行猶予とした者がその期間中に再び罪を犯すということも実際は残念ながら間々あることでありまして、そのような場合に執行猶予とした裁判官の責任が問われたということは、実は全く聞いたことはございません。裁判官が責任を問われるのを恐れて実刑にしているという現状も聞いたことがございませんが、本制度における裁判官や精神保健審判員につきましても、責任を問われることを恐れて不必要に入院させ続けるという心配は、それから考えて無用なのではないかというふうに思われるのですけれども、この点についての御所見をお伺いいたします。
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樋渡利秋#26
○政府参考人(樋渡利秋君) 全く御指摘のとおりでございまして、本制度におきまして、裁判官と精神保健審判員はその有する専門的知見を十分に生かし、かつ十分に協議することにより、収集された資料と自らの知見に照らし、個々の対象者に応じた最も適切な処遇を両者の意見の合致するところに従って決定することとしておりまして、裁判官や精神保健審判員個人が法的な責任を問われるような事態は考え難く、裁判官や精神保健審判員がこのような事態を恐れて不必要に対象者を入院させ続けるというようなことを心配する必要は全くないと考えております。
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佐々木知子#27
○佐々木知子君 明確な御答弁をいただきました。
 第五点でございますが、これは指定入院医療機関における医療に対する懸念についての質問でございます。
 対象者の円滑な社会復帰という観点から最も重要な事柄は、対象者に適切な医療が行われ、その精神障害が少しでも早くかつ確実に改善することにあります。つまり、どのような手続によって処遇の要否、内容が決定されるのかということももちろん非常に重要なことではありますが、更に重要なことは、対象者の円滑な社会復帰という目的のために国は何をするのか。すなわち、どのような医療を行うのかにあると考えられると思っております。
 しかし、本制度の中でも特に重要な指定入院医療機関における医療につきましては、法案には具体的な内容は規定されておりません。どのような医療が行われるのかが必ずしも明らかとは言えません。その結果、今までるる申し述べましたように単に閉じ込めておくだけではないのかとか、一生出られないのではないのかといった懸念を生じているのではないかと考えております。
 そこで、この指定入院医療機関における医療につきまして、具体的にどのような患者に対してどのような専門的で先進的な医療が行われることとなるのか、具体例を挙げた分かりやすい説明をお願いいたします。
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上田茂#28
○政府参考人(上田茂君) 心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者は、一般の精神障害者よりも過敏かつ衝動的で被害者意識が高まりやすく、攻撃的な行動によって問題解決を図ろうとする人も少なくございません。こうした患者への医療を例にして説明申し上げますと、まず治療環境としまして、このような患者を適切に治療するためには一般の精神障害者以上にストレスの少ない環境が必要でありまして、このため指定入院医療機関の病棟は原則として全室個室とし、十分なスペースを取った明るく開放的な療養環境とすることが求められることとなります。
 次に、医療スタッフにつきましては、患者の病状悪化に伴う攻撃的な行動が生じた際に迅速かつ適切に介入できるよう、一般の精神科病棟よりも医療スタッフを手厚く配置し、個々のスタッフにはその前兆となる行動を事前に察知し、適切に評価する技術を身に付けさせたり、患者の興奮を鎮める説得の技術を身に付けさせ、治療環境を維持するために、身体拘束を用いずに人手だけで興奮した患者を抑える技術を身に付けさせておく必要があります。
 さらに、退院後も視野に入れた長期的な専門治療プログラムとしまして、他害行為の問題を認識させ、自分でそれを防止できる力を高めたり、様々な問題を前向きに解決することを促し、被害者に対する共感性を養うといったようなことを精神療法で行うとともに、各種の作業療法あるいは社会復帰訓練とも併せて実施することとなります。
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佐々木知子#29
○佐々木知子君 第六点でございますが、地域社会における処遇を保護観察所が担うことの懸念についてお伺いしたいと思います。
 新たな処遇制度の地域社会における処遇につきましては保護観察所が一定の役割を持って関与することとされておりまして、この点につきまして種々の懸念が示されているところでございます。
 最大の懸念は、これまで保護観察所は犯罪者の改善更生を図ってきたところであり、本制度の対象者を犯罪者として扱うことにならないか、また、刑事司法の機関である保護観察所が精神障害者の社会復帰の促進を図ろうとするのは不適切ではないかというものであります。この制度の地域社会での処遇において、なぜ保護観察所が関与することとしたのかを改めてお尋ねしたいと思います。
 刑事司法の機関が関与することは適当ではないという批判につきましてはどのようにお答えになるのでしょうか、併せてお聞きしたいと思います。
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