環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別委員会

2016-10-31 衆議院 全301発言

⚠️ 発言のコピー・転載時は出典元URL(kokkai.ndl.go.jpおよびkokkai-data.com)を必ず残してください。改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

会議録情報#0
平成二十八年十月三十一日(月曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 塩谷  立君
   理事 うえの賢一郎君 理事 江藤  拓君
   理事 菅原 一秀君 理事 西村 康稔君
   理事 森山  裕君 理事 今井 雅人君
   理事 篠原  孝君 理事 上田  勇君
      あべ 俊子君    赤澤 亮正君
      池田 道孝君    大西 英男君
      大西 宏幸君    加藤 寛治君
      勝沼 栄明君    黄川田仁志君
      北村 誠吾君    佐々木 紀君
      坂本 哲志君    田所 嘉徳君
      田畑 裕明君    武部  新君
      武村 展英君    寺田  稔君
      中川 郁子君    中村 裕之君
      ふくだ峰之君    福田 達夫君
      福山  守君    古川  康君
      前川  恵君    宮川 典子君
      山下 貴司君   山本ともひろ君
      渡辺 孝一君    岸本 周平君
      近藤 洋介君    佐々木隆博君
      玉木雄一郎君    福島 伸享君
      升田世喜男君    村岡 敏英君
      稲津  久君    岡本 三成君
      中川 康洋君    梅村さえこ君
      笠井  亮君    斉藤 和子君
      畠山 和也君    小沢 鋭仁君
      河野 正美君    松浪 健太君
    …………………………………
   内閣総理大臣       安倍 晋三君
   財務大臣         麻生 太郎君
   法務大臣         金田 勝年君
   外務大臣         岸田 文雄君
   厚生労働大臣       塩崎 恭久君
   農林水産大臣       山本 有二君
   経済産業大臣       世耕 弘成君
   環境大臣         山本 公一君
   国務大臣         松本  純君
   国務大臣         石原 伸晃君
   内閣府副大臣       松本 洋平君
   内閣府大臣政務官     武村 展英君
   国土交通大臣政務官    根本 幸典君
   政府参考人
   (内閣官房内閣審議官)  澁谷 和久君
   政府参考人
   (公正取引委員会事務総局審査局長)        山本佐和子君
   政府参考人
   (厚生労働省健康局長)  福島 靖正君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬・生活衛生局長)         武田 俊彦君
   政府参考人
   (厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部長)           北島 智子君
   政府参考人
   (厚生労働省保険局長)  鈴木 康裕君
   参考人
   (一橋大学名誉教授)   土肥 一史君
   参考人
   (弁護士・日本大学芸術学部客員教授)       福井 健策君
   参考人
   (弁護士)        鈴木五十三君
   参考人
   (弁護士)        岩月 浩二君
   衆議院調査局環太平洋パートナーシップ協定等に関する特別調査室長      辻本 頼昭君
    ―――――――――――――
委員の異動
十月三十一日
 辞任         補欠選任
  武部  新君     山下 貴司君
  古川  康君     大西 英男君
  前川  恵君     田畑 裕明君
  笠井  亮君     梅村さえこ君
  小沢 鋭仁君     河野 正美君
同日
 辞任         補欠選任
  大西 英男君     古川  康君
  田畑 裕明君     佐々木 紀君
  山下 貴司君     田所 嘉徳君
  梅村さえこ君     斉藤 和子君
  河野 正美君     小沢 鋭仁君
同日
 辞任         補欠選任
  佐々木 紀君     前川  恵君
  田所 嘉徳君     武部  新君
  斉藤 和子君     笠井  亮君
    ―――――――――――――
本日の会議に付した案件
 政府参考人出頭要求に関する件
 環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件(第百九十回国会条約第八号)
 環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案(内閣提出、第百九十回国会閣法第四七号)
     ――――◇―――――
この発言だけを見る →
塩谷立#1
○塩谷委員長 これより会議を開きます。
 第百九十回国会、内閣提出、環太平洋パートナーシップ協定の締結について承認を求めるの件及び環太平洋パートナーシップ協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律案の両案件を議題といたします。
 両案件審査のため、本日、参考人として、一橋大学名誉教授土肥一史君、弁護士・日本大学芸術学部客員教授福井健策君、弁護士鈴木五十三君、弁護士岩月浩二君、以上四名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に一言御挨拶申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位には、知財、ISDS等につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査の参考にいたしたいと存じます。よろしくお願いいたします。
 それでは、議事の順序について御説明申し上げます。
 まず最初に、参考人各位からお一人十五分程度で御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。委員の質疑時間は限られておりますので、お答えはできるだけ簡潔明瞭にお願いいたします。
 なお、念のため申し上げますが、御発言の際はその都度委員長の許可を受けることとなっております。また、参考人は委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。
 それでは、まず土肥参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
土肥一史#2
○土肥参考人 ただいま御紹介を頂戴いたしました土肥でございます。
 私は、七月までは日本大学の大学院知財研究科というところに籍を置いておりましたけれども、つい最近定年を迎えまして、こちらには一橋大学名誉教授ということでお届けをさせていただいておる者でございます。
 私は、知的財産法を長年研究しておりましたけれども、環太平洋パートナーシップ協定、いわゆるTPP協定関連の著作権法改正の検討を行いました文化審議会著作権分科会法制・基本問題小委員会において主査を務めさせていただきました経緯から、主として著作権法に関する法律案をどう考えるのかという意見を申し述べさせていただくため、さらには御質問にお答えいたしますためにお呼びいただいたものと承知をしております。本日は、かかる機会を頂戴いたしましたことに厚くお礼を申し上げます。
 まず、最初に結論から申し上げますと、私は、今回の著作権法改正案に賛成の立場でございます。
 TPP協定承認に係る著作権法の見直しは、御案内のように、大きく分けまして五項目に及んでおります。一つが、著作物等の保護期間の延長の問題、二つ目に、著作権等の侵害罪の一部を非親告罪化すること、三つ目に、著作物等の利用を管理する効果的な技術的手段、いわゆるアクセスコントロールを導入する、そういう問題、それから四つ目が、配信音源の二次使用において新たに使用料を認める件、それから最後に、法定の損害賠償に係る制度整備、この五項目でございます。
 いずれも著作権法の根幹にかかわる重要な問題であるわけでございますけれども、ここでは、しばしば巷間取り上げられておりますところの保護期間延長問題についてのみ意見を申し上げ、残る非親告罪化等々の問題につきましては、後ほど御質問にお答えする形で申し上げさせていただきたいと思っております。
 さて、これからの時代はメガFTAの時代とも言われておりますけれども、TPPは我が国が初めて締約国となる重大な協定と位置づけられております。また、TPPルールは、今後一層の交渉進展が期待されておりますRCEPのようなメガFTAルールの先駆けともなり、二十一世紀の国際基準となると予想されております。
 こうしたTPPルールの意味及びその重要性を受けまして、著作権法の改正における審議では、TPPルールを所与のものとしつつ、同時に、我が国の法制度及び法律上の慣行の範囲内で整合性を確保するという観点から検討を進めた結果が今回の著作権法改正案でございます。
 そこで、著作物等の保護期間の延長問題でございますけれども、この問題については、著作物が公有に落ちる期間を二十年先送りいたします。そういう結果になるところから、否定的な御意見とか消極的な評価も承知しているところでございます。
 例えば、著作物の利用に伴う権利処理コストを高める結果となりかねない。あるいは、ボランティア団体がパブリックドメインに落ちた著作物のデジタル化を進めておいでになるわけですけれども、この二十年の延長に伴いまして、そうした作業のインセンティブが失われてしまいかねない。こういったもので、いずれももっともな御心配であると承知をしております。
 権利処理コストの問題、ひいては孤児著作物の問題は確かに深刻な問題でございます。ドイツのさきの司法大臣であったザビーネ・ロイトホイサーシュナレンベルガーは、ベルリンの講演におきまして、二十世紀の文学作品の八〇%は権利者の探知が困難になる、このように指摘をしております。権利処理コスト、取引費用は少ないにこしたことはございません。
 現在、この問題を解決するために想定されておりますことは、権利者の許諾にかわる文化庁長官の裁定制度を一層改善するということでございます。
 この裁定制度を利用するためには、まず、権利者との連絡をとるために相当な努力を払っていただくことが求められております。裁定の前提となるこの相当な努力というのは、インターネット時代を迎えまして、一昔前に比べますと確かに格段に改善されてまいりましたし、現在利用されている制度でございますから、まずここから着手することに異論はございません。
 ですが、この制度は、年間数件という時代にあっては十分機能したと思いますけれども、これからはそうはいかないというふうにも思われるところがございます。何といいましても、文化庁長官の裁定という仕組み自体が重いというふうにも思われるからであります。
 思い切ったライセンススキームへの転換が必要ではないかとも思います。
 例えば、現状では、使用料は最終的に国庫に入ってまいります。しかし、こうした供託金というものは、当該著作物等を創作したクリエーターの属する部門の充実発展のために、特に、その部門の新たな人材育成の資金として考えられてもいいようなものではないかと思っております。世界の状況を見渡してみましても、こうしたことを可能にするようなパラダイムの変換が進められているように認識しております。
 また、著作権消滅後の文学作品のデジタル化を進めておられるボランティア団体の活動への影響でございますけれども、大事なことは、一般読者に文学作品へのアクセスが確保されているかどうかだと思っております。
 延長によりデジタル化ができなくなるということで御心配になっている作品のほとんどは、商業出版によるアクセスが依然として期待できるものが多いように思います。我が国には、よい文学作品でありながら、商業出版会社が振り向かず、現在アクセスできなくなっている作品はたくさんあるように思います。ボランティア団体の方々には、ひとまずこうした作品に注力いただいて、公衆の文学作品への一層のアクセス改善に御貢献いただけないものかと期待しておるところでございます。
 一方、TPP協定は、実質的には、太平洋を取り囲む十二の国から成る市場の形成を目的にした協定と言うことができましょう。市場の形成という目的のために必要なことは、商品やサービスが可及的自由に流通できる制度の枠組みでございます。各締約国の法制度はできるだけハーモナイズしていることが望ましい、このようなことが市場にとっては有益であると思っております。保護期間をできるだけそろえるということは、まさにこうしたことに資するものと考えております。
 多国間の国境を越える単一市場の例で恐縮ですけれども、欧州共同体の経験を申しますと、欧州の単一市場は一九九三年にスタートいたしましたけれども、ベルヌ条約、ローマ条約が著作権及び隣接権の保護期間の下限を定めておりますために、当時、ドイツやフランスでは七十年、残りの十の構成国は多くが五十年、一国だけが六十年だったんですけれども、こういった保護期間のハーモが確保されていないがゆえにコンテンツの自由流通を損なうような事態も生じ、結局、二〇〇六年に、欧州理事会の指令をもって著作権と隣接権の保護期間を七十年に統一しております。
 このとき、ドイツ、フランス以外の国は五十年の保護期間を採用しておったわけでありまして、数からすると五十年とする国の方が圧倒的に多かったのですけれども、現実的な問題といたしますと、保護が承認されている権利を切り捨てることはなかなか難しいということもございまして、七十年で統一されたというのが実情でございます。
 TPPでは、保護期間は著作者の生存期間及び著作者の死後少なくとも七十年としておりまして、保護期間の下限を定めているわけでございますけれども、それであっても、コンテンツの自由流通という市場の観点からいたしますと有益である、このように考えております。
 さらに、今回の著作権法改正によりまして七十年とすることで、OECD加盟全三十四国の保護期間がそろうということも、国際調和という観点から望ましいものと確信しておるところでございます。
 したがいまして、今後取り組むべきは、保護期間の延長に伴う不利益の解消でありましょう。これを解消することを通じて、文学作品を初めさまざまな著作物を、文化的な遺産とするのではなく、文化的な資源として、文化産業の創出に向けた活用がなされることが期待されるわけでございます。
 著作物に関する権利の帰属とその所在を明らかにして市場の透明性を高めるデータベースの充実を初め、拡大集中権利管理制度といった思い切ったライセンススキームの導入に向けた検討に着手すべきときではないかと考えております。
 また、保護期間問題に関して必ず取り上げられます我が国特有の問題であります戦時加算問題も、米国、カナダ、豪州及びニュージーランド政府との間で交換文書が取り交わされ、相当程度、問題の解決に向けた進展が期待されておるところでございます。この問題を解消するために、官民を挙げて関係者の一層の尽力を期待しておるところでございます。
 他の四つの改正事項を含め、いずれもTPP協定の求めるところを踏まえ、審議に当たっては、国内の関係二十六団体の要望も伺いながら今般の改正法案に取りまとめられたものでございまして、この改正法案の内容は、我が国の法制と法律上の慣行に照らし整合性を保つものとなっていることを御理解いただきますようお願い申し上げまして、冒頭の私の意見発表とさせていただきます。
 御清聴いただき、どうもありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →
塩谷立#3
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 次に、福井参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
福井健策#4
○福井参考人 福井でございます。本日は、お招きいただきましてありがとうございます。
 TPP関連知財法案についての私見を述べよという御依頼をいただきまして、幾つかのポイントについてお話をさせていただきたいというふうに思います。
 お手元の資料、ちょっと大き目に印刷されておりますが、一枚目に随分たくさんのメニューが並んでおりますが、一枚進めていただきまして、その前提として、まず、情報革命と知財制度という状況のお話を差し上げたいというふうに思います。
 少子高齢化を迎える我が国にとりまして、今後、情報・コンテンツ立国ということが非常に重要な課題であることは恐らく異論のないところだろうというふうに思います。そして、知財制度というのは、その情報・コンテンツ立国にとっては最も基幹的なルールと言っても過言ではないでしょう。
 翻って、世界を見ますと、現在、世界では、ITネットワーク革命と言えるようなかなり急速な変化が起きている状況にあろうと思います。
 資料でごらんいただいているのは、企業の時価総額の世界ランキングということになります。直近のものです。フィナンシャル・タイムズのデータですけれども、ちょっと驚くべき状況が生まれておりますね。ごらんいただくと、一位から五位までが全て、いわゆる米国西海岸発のITプラットホームと言われるようなネット関連企業で占められるという状況です。
 日本のトップはトヨタ自動車でありますけれども、今や残念ながら三十一位ということで、わずか二年前に抜き去られたフェイスブックの株価総額の半額以下という状況になってしまっております。まさに我々は、ITネットワーク革命と言えるような急速、激烈な変化の中に身を置いているということが言えようかと思います。
 さて、これをコンテンツの面から見ると、流通するコンテンツやデータの量がまさに爆発的に増大しているという現象がこのITネットワーク革命の特徴であります。
 右下の図は、世界最大の動画投稿サイト、ユーチューブでございますけれども、これに今どのぐらいの動画が投稿されているか、皆さん、御存じでしょうか。最新の推計で、少なく見て二十億という、ちょっと常識を超えるような数が上げられています。閲覧数も一日五十億というとんでもない数が上げられるわけでありまして、もうメガコンテンツを超えたギガ、いわゆる十億単位のコンテンツが現実に流通する状況に我々はごく短期間で急速に入ってしまった、そんな状況に今あるんだろうというふうに思います。
 そして、このITネットワーク革命にとって、権利の壁、いわば権利処理の壁というのが大きな課題であります。というのは、権利者を捜し出して許可をもらい、それから利用する、これは、一万というコンテンツならやりもするでしょう。しかし、十億はおろか、百万であっても到底できはしないわけですね。
 よって、この権利処理コスト、払うお金が嫌だというんじゃなくて、権利の処理のためのコストをいかに下げていくか、このことに一国のあるいは企業の競争力というものがかかっている時代に我々は今あります。だから、世界は、例えばEUなどでも著作権リフォームという議論が今盛んであります。日本においても、内閣知財本部で次世代知財システムの議論が活発に行われているところであります。
 さて、TPPに目を転じましょう。
 冒頭で挙げました多くのメニューは、日本にとっても必要性が高く、また、その悪影響をできるだけ抑え込もうとした、そういう工夫がなされたものとして、私は政府の努力は評価できると思います。
 しかしながら、気になる点を何点か申し上げるのがきょうの役割だろうと思いますので、それを申し上げますと、三枚目ということになります。保護期間の延長です。これは、恐らく、最も悪影響の大きいものがほぼセーフガードのない状況で入ってしまった、こんな状況かと思います。
 欧米では、確かに、九〇年代に保護期間を二十年延長し、死後七十年という超長期の時代に突入しました。しかしながら、その段階でも、著名な十七名の経済学者が、これは余りに経済合理性がないということで反対意見を提出するなど、激論になっているわけですね。しかも、これはネット時代の本格到来前、今のような課題がない時代だからできたんだということもその後指摘されているところであります。
 では、日本で今入れるとした場合の懸念点ということになりますが、まず一番目は、ストレートに、対外的なライセンス使用料の支払いが恐らく大幅にふえてしまう。
 というのは、米国はコンテンツの輸出大国であります。ですから、彼らにとって、世界じゅうの国に著作権をどんどん延ばしてもらいたいというのは、ある意味では合理性があるわけですね。しかし、残念ながら日本は真逆です。日本はコンテンツの超輸入超過国です。直近の日銀の数字によれば、その赤字額は年間七千五百億円という巨額に上っています。しかも、増加基調です。
 もちろんソフトウエアなどが多いわけですけれども、米国商務省のデータを見れば、文化的なコンテンツも決して少なくはない。延ばせば、当然、支払い額はふえ、その負担は民間に寄せられます。民間が負担するわけです。
 それだけではない。許可が必要だということは、ライセンス契約を結ぶということであり、契約条項によって拘束されるということです。これは、つまり海外にビジネスをコントロールされるということです。その負担は少なからぬものがあります。
 しかし、恐らくそれ以上に大きいのは、土肥先生もおっしゃった権利処理コストの増大ということであろうというふうに思います。
 著作権というのは、死後、相続されるわけです。相続人全員の共有になります。期間が長くなれば相続関係は複雑化し、権利者を捜し出し、交渉するコストは当然上がっていきます。権利処理コストを下げる時代に、それが死命を決すると言われる時代に、なぜか上げる話をしている。
 しかも、過去の全作品の半数かそれ以上は、捜しても最終的に権利者が見つからない、いわゆる世界的に孤児著作物と言われて大問題とされている作品である。であるならば、著作権の長期化は孤児著作物を当然ふやす方向にしか働かないわけです。
 実を言えば、米国で、著作権局長みずからが保護期間の部分短縮を提案したことがあります。ほんの二年ほど前の話です。それは、著作権を延ばしたら孤児著作物が激増してしまったというのが理由です。現在、もうそういう状況にあるわけですね。
 さて、これらは古い作品ですけれども、その大半は市場では売られていません。書籍でいえば、死後五十年たつ前に九八%以上の作品は市場から姿を消しているというデータが出ています。これらの作品というのは、電子図書館、電子博物館、デジタルアーカイブと言われるような活動によって次世代に語り継がれていく、これによって命脈を保つわけです。
 しかしながら、保護期間をふやし、権利処理コストが増大すれば、死蔵される作品がふえてしまう、こういうことが大変に懸念されます。これは、アーカイブ活動だけではなくて、AIネットワーク社会にとっては重大ないわゆるビッグデータ活用にとっても、当然、古い作品が入ってきてしまいますから、権利処理コストが増大すれば停滞しかねないわけで、何でそんな話をしているんだということも言える。
 国家的な、国際的なハーモナイゼーション。今現在、日本、ヨーロッパ、アメリカ、期間が全部不統一ですね。では、一体どれだけ困っているかというと、この仕事をしていて寡聞にして聞いたことがほとんどありません。
 プラットホームに関しては、ごらんいただいています今のページの右下、これがヨーロッパが総力を挙げているヨーロピアーナ、巨大電子博物館であります。ここでは実に五千三百万点のデジタルコンテンツが無料で公開されています。それは文化を育む活動であると同時に、当然、ITプラットホーム、グーグルなどへの対抗軸として行われている。こういう活動にとって保護期間の延長というのはかなり間違った判断だったのではないか、こんなふうに考えるところです。
 もう一つ参りましょう。非親告罪化です。次のページですね。
 これに関しては、告訴をしないと起訴、処罰できない親告罪だということで、パロディーなどの二次創作ばかりか、さまざまな、経済、教育、あるいは研究の現場で軽微な利用というのはたくさんあるわけです。その全部について事前に許可をとるというのは実際にはとても難しいことで、軽微利用というのは行っています。皆さんの現場でも恐らく行っています。
 それは何でできるかといえば、大した行為じゃないからです。お目こぼしです。大したことじゃないからできてしまう。これで社会は現実に回っています。
 これが第三者の告発でも起訴、処罰されるかもしれないとなれば、それは萎縮しかねません。残念ながら、今、炎上文化というのが大問題になっています。この告発ということとの相性が最悪ですね。
 こんな中で、現在の改正法案は、原作のまま利用するなどのセーフガードが十分に盛り込まれまして、こうした二次創作などへの懸念が減少したことは大いに評価したいと思います。これは人々の声を受けた政府の努力の成果だと思います。
 しかし、あえて申し上げれば、例えば企業や研究機関での資料の複製は、やはり事前の許可がとれない類いの資料も多いのです。ですから、行われています。あるいは、解析用のビッグデータを第三者に提供する。今後非常に重要になる部分ですけれども、実は、現行法では恐らくできません。あるいは、商用のアーカイブ、先ほど申し上げたとおり。商用のオンラインの講義、日本の教育を世界に向かって広げていくためにはとても重要な要素。これらに非親告罪化の影響が及ばないかどうか、今後の運用等についてなお注視が必要かなというふうに思います。
 さて、最後です。そうした中、我々は一体どういうふうにすべきか。
 ここで申し上げたいのは、個々のメニューについて賛成、反対、それぞれあるとしても、それを条約で知財制度が縛られるということはちょっと慎重になった方がいいということです。
 というのは、先ほど申し上げたように、世界は変化が余りに急速なんですね。ITネットワーク革命の状況というのは、もう三年先が到底読めません。ということは、今現在はいいと思えているような制度も、三年先にはこれはまずいねというふうになっている可能性は十分あるんです。
 三年前に現状を予測できた人はいないですね。アメリカに至っては、当のアメリカの人々自体が将来が全く見通せない状況に今なっている。こんなことも言えるんじゃないかというふうに思います。
 そうすると、これから制度を変えようというときに条約で縛られちゃうと、国会をもってしても、皆さんの力をもってしても変えられなくなるわけです。このことは検討してしかるべきだというふうに思います。
 特に、これからは、知財権で囲い込んでしっかり守っていく部分と、それから、開いてみんなに自由に使わせて広めていく部分、このオープン・クローズ戦略が国家や企業の浮沈を決定します。ITプラットホームは、要するにそれがうまかったわけです。そのときに我々が政策手段としてこうしたオープン・クローズの政策メニューをとれなくなるとしたら、これはなかなか重大な問題です。
 加えて言うと、条約の中には一時代前の相手国内のロビーイングの成果が盛り込まれちゃうということが往々にしてあるんですね。
 実を言うと、今のTPPの知財条項は、多くは米国提案に基づいていますが、五年以上前の米国内のロビーイングの成果です。今、米国内ではITプラットホームのロビー力は非常に強くなっていて、かなり状況が変わっているのはさっきも申し上げたとおりです。本当にこれで大丈夫かということも出てくる。
 海賊版対策のような協調のメリットが大きい部分に条約というのは今後絞り込んでいって、しっかりそこに注力していく、このことが必要ではないかなというふうに思うわけです。
 さて、最後に国内法の課題です。
 他方で、国内では、権利処理コストの低下などのためのさまざまな課題が山積しています。
 一番目としては、権利情報データベースです。権利情報をちゃんと集約しておいて、許可が欲しい人が連絡がとりやすく、ライセンスを受けられる状況をつくってやること、これは今急ピッチで進めようとしています。
 それから、先ほど申し上げた孤児著作物対策、これもどんどん進めていかなければいけません。あるいは、さらに思い切って、イギリスなどが行っていますけれども、特定ジャンルでのコンテンツは、もう委託がなくてもそのジャンルでの権利者団体が権利を管理して許可を与えられるという、いわゆる拡大集中許諾、ECLというものも、これは制度設計上いろいろな課題があるんですけれども、検討は十分価値がある、こんなふうに思います。こんなようにして、ライセンスを受けやすい状況をつくってあげる。
 しかし、それでもなお、到底ライセンス許可などはとれない利用というのは残ります。数が物すごくたくさん、百万、一億なんてあったらそんなことはできないよ、あるいはコスト、活動内容的にできないよ。あり得ます。そのときには、権利者に迷惑がないような利用であれば許可なしで使ってもいいよという、いわゆる柔軟な権利制限規定というものが今各国で議論されて、日本でも議論されている。権利者団体ではなお反対もありますが、もう落としどころを見つけて、しっかりと導入しなければいけない時代であろう。
 言うまでもないが、アメリカのITプラットホームがどう権利の壁を越えてきたかといえば、フェアユースと言われるある種の柔軟な規定で越えたわけであります。アーカイブ利活用もそうであります。
 以上は知財推進計画でも重点目標とされた内容でありますが、現在はなお道半ばであります。
 これを今後どんどん進めていかなきゃいけないというときに、日本からもともと提案したわけでもない保護期間の延長や非親告罪化だけを前倒しで立法する。果たしてバランスがいいのかな、それで三年先の状況に本当に対応できるのかな。この観点から、私は慎重な意見を申し上げたいというふうに思います。
 どうしても入れるのであるならば、先ほどの国内法の課題についてはこれまでの数倍のスピードで進めるぐらいの覚悟を持たなければ、ITネットワーク革命の中での日本の将来は到底見据えることはできないだろうというふうに思います。
 御清聴ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →
塩谷立#5
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 次に、鈴木参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#6
○鈴木参考人 塩谷立特別委員長、それから委員の皆様方、本日、私に参考人としての意見を述べる機会をいただきまして、大変光栄に存じます。ありがとうございます。
 本日、私は、投資章におけるISDSの規定について発言させていただきたいと思います。
 ISDSは、投資家が、投資章の実体規定に違反する紛争について仲裁を申し立てることのできる制度であります。これまで、この制度が政府による正当な規制権限の行使を制約するのではないか、あるいは濫訴を誘発することを含む制度上の不備があるのではないかということで、さまざまな議論がなされてきたと思います。
 しかし、今回のTPPの投資章、ISDSの条項をあけてみますと、これらの懸念に対して多くの回答がなされているというのが私の最終的な意見の結論でございます。
 まず第一の、政府の正当な規制権限の行使に関しましては、少し実体規定を見ながら御説明させていただきたいと思います。
 御承知のように、投資章では、実体規定の各義務において、正当な規制権限による場合は義務違反にならないとの原則を取り入れております。
 実体規定は、大きく分けまして、投資財産設立の時点、言いかえれば、投資開始の時点での投資の自由を保障する自由化規定と、それから、投資が始まった後にその待遇を保護する規定、投資の保護規定の二つの規定があります。
 自由化義務のところでは、内国民待遇、最恵国待遇、そして特定履行要求の禁止、これに加えまして、経営幹部の国籍制限、あるいは移転の自由が定められています。投資開始後の保護義務といたしましては、明確に国際慣習法上の最低待遇及び収用補償を規定しております。
 内国民待遇について申し上げますと、御承知のように、受け入れ国に対して、外国投資家を自国の投資家よりも不利益に扱ってはならないという待遇の保障であります。例えば、投資の条件として、受け入れ国が会社の持ち分の外資保有率を一定の割合以下に制限するなどの措置がこの待遇に照らして問題になります。
 この場合には、外国投資家と自国投資家の利益を比較するということが起きるわけですが、その比較におきまして、外国投資家と内国投資家が同様の状況にあるかどうか、同様の状況テストと言われますが、それを適用することによって判断することになります。ところが、この同様の状況のテストにおきまして、内国投資家と違う措置が外国投資家にとられることが正当な規制権限行使に該当するかどうかを勘案するとされています。TPPではこのことを明示しています。
 また、自由化措置の一つである特定履行要求の禁止原則ですけれども、これも、現地調達、あるいは自国産品の購入要求、ライセンス料の設定、特定技術の移転要求など技術移転での条件を課すことを禁止するものです。この禁止では、やはり同様の状況テストが適用されないために、むしろ正当な規制権限行使保全のための規定が明文化されています。公共の福祉に係る正当な目的を保護するための措置を明示して、禁止から除外しているわけです。
 同じく投資後の保護である最低待遇基準の保障は、国際慣習法の原則に基づくものとされています。この中には、公正衡平待遇義務と言われます国際慣習法上確立された義務が含まれています。
 投資判断の先例によれば、この義務の内容は、恣意的で、大幅に不公正、不正義、差別と偏見、あるいは裁判拒否を含む適正手続の欠如によって行われた場合に該当するというふうにフレーズ化されています。
 そして、この公正衡平待遇義務に関する判断の先例では、ある措置が投資家の経済を害する場合であっても、目的の公共性、措置の合理性、適正手続による実施であれば、正当な規制権限行使として保護が図られています。判例法理ではポリスパワーと言われることで、この正当権限行使が認められています。
 収用ですけれども、これは多く議論のあるところですが、投資財産を収用または国有化するには、公共目的で、差別的でなく、速やかな補償がなされることが条件とされていますが、収用には間接収用ということが含まれています。
 間接収用は、収用と同等の措置と認められるということが条件でありまして、仲裁判断先例では、収用と認められる程度に相当な財産の剥奪がなければならないとされています。その上で、投資章では、正当な権限行使が間接収用に該当しないことの確認をしています。また、最近の判断先例では、明確に、この正当な権限行使は間接収用の適用を除外するということが宣言されています。
 以上が、実体規定においてそれぞれ確保されています政府による正当な権限行使の保護でございます。
 TPPの投資章にはBがありまして、そこにこそ本来のTPPの手続規定が置かれています。投資家は、投資受け入れ国との間に発生した紛争について、その解決のために国際仲裁に付託できるという制度であります。
 仲裁廷は、この違反があったかどうかを判断し、損害の発生を認定した場合には、損害賠償または原状回復を命じることになります。この決定は、ICSID条約またはニューヨーク条約などに基づいて執行することができることになっています。
 これまで、この手続をめぐりまして、その不透明性、非公開性、審理のおくれ、濫訴の誘発、あるいは上訴がないことなどが懸念として挙げられてまいりました。今回のTPPの規定は、これらの懸念に対して応えたものになっております。
 以下、順次羅列していきたいと思います。
 第一に、仲裁廷の審理は公開されます。また、当事者が提出した書面、審理の議事録及び仲裁廷の命令、決定は公に入手可能にするということが規定されました。手続の透明性が確保されたと言えます。
 さらに、TPPの締約国で紛争当事国でない国にも、規定の解釈について意見を述べ、あるいは意見書を提出することができることになりました。
 さらに、当事者でないNGOなどを含む第三者も、アミカスキュリエ、裁判所の友として仲裁廷が意見を聞くことができるということが規定されています。
 また、審理の促進を図るためには、被申し立ての国が提出する、明白に法的根拠を欠くような場合であるとの異議については、まず先決問題として判断をするということが規定されています。これも、仲裁先例においては、バイファケーション、二分化手続として発展してきた法理でございますが、このTPPにおいて明確に規定されることになりました。
 さらに、申立人の申し立て可能期間を三年半に限定したことなど、遅延の防止が図られています。
 また、投資協定の解釈につきましては、TPP委員会が決定した解釈は仲裁廷を拘束するということで、解釈の統一も図っています。
 濫訴の防止では非常に大きな要素になります仲裁手続費用の負担でございますが、今回の規定では、申し立て当事者が敗訴した場合、仲裁手続費用だけでなく、被申し立て国側の代理人報酬も申立人に負担させることができるとして、濫訴防止のための条項を費用負担の面からも手当てしております。
 なお、原状回復措置を命じた命令があった場合にも、国は、その措置として行われたことを撤回するのではなく、その選択によって賠償の支払いにかえることも許されるとされておりまして、金銭の支払いを第一義的な救済手段として位置づけております。ただ、この金銭の支払いも、判例法理で既に発展しておりますが、懲罰的損害賠償を含まないということが明文化されています。
 ISDSは、既に世界で締結されている三千を超える投資協定のほとんどにおいて規定されています。また、日本が加盟している投資協定を含む経済連携協定においてもほとんど規定されております。
 これまで、国家が公共政策の目的で行う権限行使が、仲裁に付託されることによって制限されるのではないか、萎縮されるのではないかという心配が表明されてきました。特に、最近では、オーストラリアのように、同国のたばこ規制が申し立ての対象になったということもありまして、その導入について慎重に検討することを表明する、そういう国々もあります。
 しかし、この間のオーストラリアに対する仲裁廷での判断、あるいは今回のTPPの手続条項の規定は、これらの懸念に対して応えた国際社会の誠実な反応を表明していると私は考えます。
 ISDSは紛争解決制度です。そこは、投資家と受け入れ国に対し論争の場を提供するフォーラムであります。仲裁判断によって紛争を解決するというわけで、これまで武力による解決にまで頼らざるを得なかった投資紛争が、法律論争に移しかえられることになりました。このようにして、世界は一歩一歩、法の支配に向けて進んでいっております。ISDSの仲裁手続は、この道に向けて、いわばジュリスプルーデンス、法理の体系を発展させてきたものと考えます。
 そして、現在、投資受け入れ国と投資家との利害のバランスを公平公正に図ることを目指して仲裁廷の先例は築き上げられてきているというのが私の感想です。そして、その先例を背景に今回のTPPは起草されております。その意味で、これからの投資仲裁の一層の発展に向けてのよき模範ともなり得る規定であると考えます。また、よき模範にしていくのがTPP加盟締約国の責務だというふうに思います。
 御清聴ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →
塩谷立#7
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 次に、岩月参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →
岩月浩二#8
○岩月参考人 弁護士の岩月です。
 このような場で意見を述べさせていただく機会を与えていただいたことに、まずお礼を申し上げます。
 時間もありませんので、早速入らせていただきます。
 一応簡単な資料をつくっております。最初に挙げてあるのが、農林水産委員会での委員会決議、この中の五項がISDに関係しております。
 ただ、今の段階で私が一番心配しているのは、七項にむしろ心配があります。七項、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」このことを政府に求めたわけであります。
 ISD、この条項の問題点については、世界的にも大きな議論になってきています。
 伊勢志摩サミットに先立って、経済政策について意見を聞きたいということで、政府にジョセフ・スティグリッツというノーベル経済学者が招かれて、総理じきじきに意見をお聞きになったことがございます。このスティグリッツ教授、基本的にTPPには反対です。TPPは自由貿易ではない、グローバル企業のための管理貿易だというふうに言っております。その中で、スティグリッツは、TPPで最悪なのはISDだということも言っております。
 さらに、二〇一二年にさかのぼりますと、全米州立法者協議会、要するに全米の州議会の代表者が集まった協議会でも、TPPからISDを除くべきだという公開書簡が米国政府に送られています。そのように、基本的にどの貿易協定をとっても重大な問題として扱われているのがISDです。
 しかし、私の実感からいうと、ISDについて知らない国民が大半ではないか、国民的議論どころではないのではないかというふうに思います。
 食の安全について関心をお持ちになる消費者の方に呼ばれて、学習会でお話しすることがあります。その冒頭で私は、ISDを知っていますか、聞いたことはありますかということを尋ねます。多くて、多くてとは言いません、大抵二、三割です。ISDに関心を持って学習会に来よう、そういう熱意のある方で、せいぜい二、三割ですね。国民全体をとったらどれぐらい知っているでしょう。一%いくかいかないかではないかと、私は非常にその点について懸念しています。
 昨日、NHKの「日曜討論」で、田村憲久元厚生労働大臣が自民党を代表して出演されていました。そこで田村議員は、ISDN条項はどの貿易協定にも入っていると。えっ、電話回線の話……。まさか、鈴木先生がISDNなんて言いません。私も、ISDと言って、ISDSと言うところで間違えることはないんですね。だから、元大臣ですら十分な認識がない。十分な認識がないのに、国民がそれを知るはずがないということを私は改めて確信しました。
 このISD条項、非常に問題があるというふうに思うのは、国家の政策がたった三人の民間人によって事実上覆される、国会で苦労しておつくりになった法律がたった三人の民間人によって否定される、事実上変えていかなければならなくなる、そういう重大な効果がある。
 そういう重大な効果に鑑みた場合に、全く周知がされていない、国民的な議論が全くされていない。これは、先ほどの「国民への十分な情報提供を行い、幅広い国民的議論を行うよう措置すること。」とする委員会決議に反するのではありませんかというふうに強く思います。十分に国民に知らせて、十分に国民が議論した上でこれを選ぶということをぜひ実行していただきたいというふうに思います。
 それから、七項の前段、「交渉により収集した情報については、国会に速やかに報告するとともに、」とあるところですね。
 もう交渉は終わりました。成文ができました。その成文を正確に国会に伝えているのかという問題がこのISD条項についてもございます。というか、調べていって、きのう気がついたんですけれども。
 先ほど鈴木先生の方からもお話がありました、間接収用という概念があります。経済活動に対する規制措置が収用と同等程度に及ぶ場合、それに対しては正当な補償をしなければならない。この補償の中には、逸失利益と言われて、将来に向かって失われる利益も含まれるんですが、この間接収用という概念について、今回のTPPでは、公共目的の規制は十分に守られるようになったというのが政府の立場です。
 この間接収用の定義の中に、公衆衛生とか環境を守る公共目的のための無差別な規制措置は間接収用には該当しませんと一応書いてあります。ただし、政府の訳では、公共目的の無差別な規制措置は、「極めて限られた場合」を除いては間接収用に該当しないと書いてあります。
 「極めて限られた場合」というのは一体何なのかなと思って、原文を当たってみました。日本文にも解説がありません。原文にも当たってみましたが、原文にも解説がないんです。
 解説がないから、やはり相変わらずこの「極めて限られた場合」はわからないなと思いながら、原文を見たところ、「イン・レア・サーカムスタンシーズ」、和製英語で済みませんけれども、「エクセプト」、除いては、「イン・レア・サーカムスタンシーズ」、まれな環境、まれな状況を除いてはというのが、私の語学力の程度だとスムーズにいくんですね。これを、政府の仮訳、正文ではない仮訳では、「極めて限られた場合」と、すごく狭いように翻訳しているんですよ。
 でも、イン・レア・サーカムスタンシーズ、普通に言えば、まれな環境では、まれな状況ではという程度が普通じゃないですか。極めて限られた場合というなら、私の語学力は大したことないけれども、ハードリー・エバー・ケースとか、イン・ハードリー・エバー・ケース、極めてハードリーとあるべきではないかというふうに思います。
 これは意図的ではないか、意図的な誤訳ではないか、議論を起こさせないための意図的な誤訳ではないか。公共の福祉を守るための規制措置がどれぐらい限定されているのか、それは非常に重要な問題であるのに、そうした誤訳で議論を誤った方向に導こうとしているというふうに私は思います。
 論点を変えます。
 それから、ISDは使う立場だということをよく言われます。これは多分、途上国を頭に入れている。私自身はISD条項を全面的に否定する立場ですが、戦略的に考えた場合、途上国を頭に入れていると思います。
 これは、もともと途上国の司法制度が不備だということで、相手国の司法を飛び越えて海外の仲裁に出す、そういう制度です。日本のような法制度が整備された国でこれを受け入れることは、私には屈辱的です。だけれども、TPPで新たにISD条項が活用できるという議論もされます。
 さて、では、これまでの投資協定を踏まえて、十一カ国でISD条項がない国はどこか。シンガポールもISD条項は既にあります。ベトナムは社会主義国だったけれども、ISD条項は日本との間であります。マレーシア、ブルネイ、あります。チリ、ペルー、メキシコについても、ISD条項は既にあります。ないのは、ニュージーランド、オーストラリア、カナダ、そしてアメリカ。
 御存じのとおり、アメリカは非常な訴訟社会です。NAFTAで、政府の統計ですが、ISDの係争件数、十月現在で六十九件というふうに外務省はまとめています。この六十九件のうち、アメリカ企業が起こしたのが五十件です。そして、勝訴した結果が出ているのはアメリカ企業だけです、八件。四件は、アメリカ企業は和解しています。アメリカ政府が負けた例はありません。三カ国、アメリカ、カナダ、メキシコの中でも、圧倒的にアメリカ企業が使っている。
 これを、カナダ以上に大きな市場である日本に対してアメリカ企業が使わないわけがない。そういう観点からこの問題を戦略的に考えるべきではないか。
 では、英米法と言われる国、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、この英米法と言われる国の中で、ISD条項を使って日本企業が互角に戦っていけるのか、そういうことについての戦略的な観点はぜひ持って考えていただきたい。
 カナダは当初、米国と同じぐらいたくさんISDを使いました。だけれども、米国に対して勝てない。勝てないから、数年間、もうほとんど起こさないという状態になりました。圧倒的に今、アメリカ企業だけが使っている。つい最近、一兆五千億円規模の大きな賠償請求をカナダ企業が起こしていますけれども、実態としては、そんなアメリカ勝ちみたいな状態がNAFTAの中ですらあるということです。
 資料の三ページを簡単に見ておきます。
 投資仲裁の最も基本的な義務とされるのが、公正かつ衡平な待遇及び十分な保護及び保障を与える義務です。これは言葉そのままです。言葉そのままで、意味がよくわからないけれども、極めて標準的な国際経済法の教科書で、これがどういう意味があるかということが書いてありました。「外国投資家の投資財産保護に関する慎重な注意、適正手続、裁判拒否の禁止、恣意的な措置の禁止、投資家の正当な期待の保護」、これが公正衡平待遇義務。これが国際慣習法だというのが一般的な国際経済法における理解です。
 TPPの条文はこれを詳しく書いたと言われていますが、下を眺めても、この意味がわからないです。これを民間の三人の仲裁人がその都度判断しては解散するということを繰り返すのがISDです。
 厳密に考えると、条約上、国内法的にもこの条項は意味を持つわけです。意味を持つと何が起きるかというと、この最低待遇義務を実現するための立法をしなければならない。最低待遇義務を実現するための裁判をしなければならない。国内でもですよ、国内法的効力があるんですから。というような問題。これは全く議論されていませんが、そういう問題が起きる。これにどうやって対処していくのか、私にはよくわかりません。
 最後、主権侵害はないか。
 五ページですが、上に、韓国大法院、韓国の最高裁判所ですね、これが、米韓FTAを締結するときに、主権侵害ではないかという議論をしています。内部資料が公開されているんですね。
 その検討のときに、「このような紛争に関して国内の司法府が関与する余地がなくなり、国家の主権または司法権が侵害される素地があるという指摘がある。」しかし、「条約の批准等の手続を経て、国家が自発的に同意することに従うもので、国家はそのような選択をする主権を行使するものだと言えるという見解もある。」両論併記です。
 両論併記ですが、後を見ていただくと、主権の放棄も主権の行使であると言っているわけです。人ごとだからそう言っているわけで、自分のことになると、最後、どうなっているか。
 アンダーラインを引いてあります。最高裁としては、「司法府の裁判が無差別的に仲裁請求の対象になる場合には、いろいろな副作用を招くことがあるので、裁判を仲裁請求の対象から除外する方案や対象を制限して明確に規定する方案を検討する必要」がある。だから、ほかはいいよ、せめて裁判所は除いてくれよと。虫がいいと私は思いますけれども、自分のことになるとこんなことを言っている。
 最後、労働契約法なんかが書いてありますが、これは、労働者の保護を図るために、長年の判例を積み重ねてつくられてきた法律です。苦労しておつくりいただいたわけです。だけれども、こういう労働者保護法制が仮に外国企業に対する公正衡平待遇義務に反すると判断されると、賠償の対象になる。賠償の対象になるということを繰り返されないためには、これを改正しなければならない。
 国内の事情で議論して改正するならいいんです。だけれども、国際仲裁で三人の民間人に賠償させられるから変えなければならない、こんなことがあってはならないというふうに私は考えています。
 以上で私の方の意見を終わらせていただきます。ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →
塩谷立#9
○塩谷委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の意見の開陳は終わりました。
    ―――――――――――――
この発言だけを見る →
塩谷立#10
○塩谷委員長 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。
この発言だけを見る →
山下貴司#11
○山下委員 自由民主党の山下貴司です。
 冒頭、三笠宮殿下の薨去について、心から哀悼の意を表したいと思います。
 さて、本日、私は、自由民主党を代表して、TPP協定の中で最も大きな論点の一つであるISDS条項や、あるいは知的財産権の章について、参考人の先生方に質問させていただきます。
 まず、ISDS条項について鈴木先生に。
 鈴木先生は、アジア太平洋法律家協会、いわゆるLAWASIAの会長であり、特に国際仲裁の第一人者として国際的にも御高名であります。国際法務に携わった経験を持つ私も、法曹の後輩として、先生に質問の機会をいただくことを大変光栄に思っております。
 まず、ISDSについて、そもそも論なんですが、なぜ国際投資協定においてISDS条項が置かれるのか。ISDS条項がなければ、投資をめぐる紛争が起きたとき、例えば日本側が投資をしたとき、権利救済のため、投資家はどうすることを迫られるのでしょうか。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#12
○鈴木参考人 御質問ありがとうございます。
 もしISDSがない場合に投資家がどのような手続をとればいいのかということでございますが、投資家自身が直接とれる手続といたしましては、相手国において、相手の国を被告とした裁判を提起するということになります。
 それ以外の国では、現在、国際法上、免責特権が多くの国で認められておりますので、外国において提訴できない。そうすると、当該国でしか裁判を受けられないということになります。
 これは、各裁判所についての独立性、公平性を直接疑うわけではありませんが、恐らく、各地域における各裁判所の持っている当該地域との利害関係につきまして、これから離れた形で裁判手続を行うというのは、これまでの司法制度の発展の中でほぼ認められてきた制度であります。少なくともアメリカでも、ある州で事件が起きた場合、州外人は連邦裁判所に行きまして、州裁判所に行かなかったわけですね。
 同じように、投資受け入れ国だけの裁判になりますと、必ずしも投資家の利益が保護されないという危惧がある。そのことは、逆に言うと投資をちゅうちょさせる要因になるということで、今回の第三機関による投資仲裁制度というものが根拠を持っておるというふうに考えます。
この発言だけを見る →
山下貴司#13
○山下委員 ありがとうございました。
 ISDS条項がないと、結局、投資家側は権利救済を求めるために現地の裁判所に行かなきゃいけないわけです。その現地の裁判所の裁判官が必ずしも国際法の知識があるかどうかはわからない、地裁、高裁が全員が持っているかどうかわからないわけですね。そして、国によっては、例えば陪審とかそういうこともある。公正な判断がされるかどうかというのは、外国の投資家からすれば非常に不安がある。そういったことでISDS条項が置かれているわけでございます。
 先ほど先生がおっしゃったように、このISDS条項が置かれているのは、三千を超える国際投資協定が世界じゅうにありますけれども、ほとんどに置かれている。日本においても、これまでISDS条項については、二十三の国際投資協定、そして十の経済連携協定に含まれているということでございます。
 含まれていないのはフィリピンとオーストラリアだけということですが、このフィリピン、オーストラリアについては、日本側が嫌がったんでしょうか、それとも相手側が嫌がったんでしょうか。鈴木先生、端的にお答えください。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#14
○鈴木参考人 相手国が嫌がったというふうに理解しております。
この発言だけを見る →
山下貴司#15
○山下委員 ありがとうございます。
 そうなると、結局、我が国としては、ISDS条項を含めることをこれまで基本方針としてきた。そして、そのISDS条項を含んだ条約を何本も皆さんは批准しているんですよ。同意しているんですよ、皆さんが。そういうことでございます。
 そして、ISDS条項については、手続については、ICSID、投資紛争解決国際センター、あるいはUNCITRAL、国連国際商取引法委員会であるとか、その規則に従うということになっていますけれども、これらの条約、ICSID条約であるとか、あるいは外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約というのは、ICSID条約が締約国百四十四カ国によって、そしてニューヨーク条約は百五十カ国によって批准されているんですよ。いわば国際スタンダードなわけですね。日本は、これらの条約をもう半世紀以上にわたり批准して使っているわけでございます。
 先ほどお話にもありましたけれども、アメリカが特異だというふうに言われておりますが、実は、チェコとの国際仲裁において、日系企業がこの仲裁判断をやって勝っております。日本もそれなりのエクスパティーズがあるということでございます。
 そうだとすると、鈴木先生、ISDS条項は、国際投資協定については、多国間であろうと、あるいは先進国が相手であろうが発展途上国が相手であろうが、通常置かれる当たり前の条項と考えてよろしいんでしょうか。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#16
○鈴木参考人 通常置かれる当たり前の条項でございますけれども、通常置かれていましたBIT条項をめぐって解釈的に蓄積されてまいりました仲裁先例、いわゆるジュリスプルーデンスの発展を取り入れて最新のものにしております。
この発言だけを見る →
山下貴司#17
○山下委員 ありがとうございました。
 ISDS条項に従えば、例えば、国際仲裁手続は三人の仲裁人によって行われるということでございます。そして、投資家と投資先国が各一名ずつ選び、残り一名は、両者が合意する者か、合意できない場合はICSIDの手続によるということでございますかね。
 先生は、日本政府が指名するICSIDの仲裁人の候補もされておられて、実情をよく御存じだと思うんですよ。そういった実情を御存じのところからして、こういった仲裁人による判断がアメリカに有利なんだ、あるいは大企業に有利なんだということはお考えでしょうか。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#18
○鈴木参考人 仲裁人につきましては、私、まだICSID自体の仲裁廷に関与したことはございません。まだ候補の段階にとどまっておりますが、ほかの事件で仲裁をした経験、あるいはICSID仲裁人のそれぞれの方々の書いておられる意見などを拝見しますと、やはり仲裁人は制度としての仲裁手続の正当性を求めて活動しておられると思います。
 したがいまして、決して自分を選定した一当事者あるいは自分の思い込みによって判断をするのではなくて、何らかの形で、先ほど申しましたジュリスプルーデンスと申しましょうか、普遍的な法的なものを求めて解決に当たっておられるというふうに思います。
 その意味では、裁判官が判断される裁判と、仲裁廷に選ばれました仲裁人がされる判断について、違いはないと思います。
この発言だけを見る →
山下貴司#19
○山下委員 ありがとうございました。
 ところで、先日陳述された鈴木宣弘参考人は、陳述で、アメリカの企業が水銀を垂れ流すような設備で日本で操業しようとしたら、当然日本は規制をする、それに対してアメリカの企業は、それによって生じるアメリカの企業の損害を賠償しろと国際法廷に訴えて、損害賠償させられ、そのルールも取り壊されてしまうという、起こるはずもないようなことが起こるのがISDSだと述べられております。
 鈴木先生に改めて伺いたいんですが、本当にこんなことが起きるんでしょうか。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#20
○鈴木参考人 事実関係がかなり抽象化されておりますので、正しい答えになるかわかりませんが、ISDSが使える事態というのは限られております。先ほど申しましたように、内国民待遇、あるいは最恵国待遇、あるいは最低保障原則違反、あるいは収用、そのような場合に限られます。
 水銀の垂れ流しが規制されるとした場合には、恐らく、公衆衛生という正当な目的のために、日本の場合ですと、それにふさわしい形での手続を必ず経て行われるはずです。ですので、そのような事態が、仮に訴えられたとしても、問題はないと思います。
この発言だけを見る →
山下貴司#21
○山下委員 鈴木参考人がおっしゃるとおり、そもそもTPP協定では、環境、健康等の正当な目的のために必要かつ合理的な規制を行うことは妨げられないと、投資章のA節でございますが、されています。
 水銀を垂れ流すような設備に対する規制は、日本の法人であっても当然規制されるわけです。だから、それは当然規制すると鈴木宣弘参考人は言っているわけですから、ということは、内国法人に適用される環境規制を適用しても、ISDS条項について損害賠償させられることはないというわけであります。
 そして、鈴木参考人がおっしゃったように、ISDS条項は損害賠償を求めるものであって、ルールの変更を直接求めるものではないということでございました。
 恐らく、先般陳述された鈴木宣弘参考人は、NAFTAで廃棄物処理施設が問題になったメタルクラッド対メキシコ事件というのを参考にされたのかなとちょっと素人ながら思いますけれども、その事案は、有害廃棄物処理施設について、国と州、連邦が、これは建てられますよ、市の許可は関係ないですよと太鼓判を押しておきながら、市の反対があったということで、結局、住民運動があって、それでだめになってしまった。そして、自然保護区域に指定して、結局、間接収用のようなことになってしまった。そういうことで賠償が認められた事案だというふうに私は理解しております。やはり事案について正確に検討する必要があるんですよ。そのことを申し上げたいと思います。
 この件に関しては、京大の浜本教授が日経新聞におきまして、現実の投資仲裁事例で、投資受け入れ国による公益措置が正当な目的で適正な手続に従ってなされたにもかかわらず損害賠償が命じられたことは皆無である、これまで、公益措置であるのに損害賠償が命じられた事例はことごとく、表向きは公益措置でありながら実際の意図は外国企業差別など別のところにあったことが証明された事例か、措置決定プロセスに不透明、不適切な点があった事例だというふうに述べておられるんですが、鈴木参考人はどのようにお考えでしょうか。
この発言だけを見る →
鈴木五十三#22
○鈴木参考人 浜本教授は、投資協定におきましては最高に勉強しておられる方でありまして、その御説のとおりだと思いますが、一つ補足させていただきますと、先ほど私述べましたように、恐らく問題になりましたのはFETの義務ではないか、公正衡平待遇義務違反という問題が考えられます。
 そのときに定式化されております言葉では、非常に重要なのは、やはりその行為が恣意的であるかどうか、あるいは大幅な不公正、あるいは不正義、あるいは差別的、偏見であるかどうか、あとは裁判拒否の問題ですけれども、そのような場合に限られております。
 そのとおりだと思います。
この発言だけを見る →
山下貴司#23
○山下委員 ありがとうございました。
 ISDS条項については、今お話があったように、国際投資協定ではもう国際スタンダードだということがわかりました。特に、TPP協定においては、濫訴防止にも配慮されている。だからこそ、これまで消極的だったオーストラリアも受け入れているというふうに私は理解しております。
 それでは次に、知的財産権の章について、土肥参考人に伺いたいと思います。
 土肥参考人は保護期間の延長についてお話がありましたが、今度は、著作権の非親告罪化について伺いたいと思います。
 TPP協定に定める著作権の非親告罪化について、日本の漫画文化を支えておりましたいわゆるコミケ文化について、二次利用が処罰されるのではないかと不安視する声がございました。この点について、土肥先生のお立場をお願いいたします。
この発言だけを見る →
土肥一史#24
○土肥参考人 御質問ありがとうございました。
 御指摘の点は、いろいろなメディアを通じてつとに御心配いただいておるところでございますけれども、今回の著作権法の改正におきましては、この点を極めて慎重に検討してまいりました。
 特に、コミケ、コミックマーケットというんでしょうか、こういう分野における若い方々の創作、こういう点には十分配慮すべく、法案の中におきましては、有償著作物で原作のまま、そういう規定を設けておりますけれども、コミックマーケットにおける創作者の方々は、ベースになる原著作物に新たな創作を加えて、いわゆる二次創作をなさっておられます。
 したがいまして、コミックマーケットの分野の方々が有償著作物を原作のままで公開されるというようなことはないものというふうに考えておりますので、この原作のままでという部分によりまして、若い方々のコミックマーケットにおける創作活動には影響はないものというふうに考えております。
 また、あわせて、今回の改正では、著作権者の利益を不当に害さないというようなことも入れておりますので、したがいまして、権利者の方々は、この分野についてはいわゆる暗黙の了解をされているんだろうと思いますけれども、そういう権利者の利益を不当に害さないというところで、必ず権利者には問い合わせが入ってくるもの、このように考えております。
 以上でございます。
この発言だけを見る →
山下貴司#25
○山下委員 ありがとうございます。
 コミケファンの皆様、御安心いただきたいと思います。原作のまま要件というのが入っております。ということで、今の御答弁を聞いて非常に安心されたと思います。
 次に、福井参考人の御指摘、本当に福井先生にはいろいろと御指導いただいているところでございますけれども、権利処理の円滑化の問題、あるいはビッグデータ時代にどうするかの問題、これは、TPPに加盟するかどうかにかかわらず、やはり、我が国の著作権法をどうするかについて、大変これから取り組まざるを得ないところだと思います。
 そういったことで、本来ちょっと質問したかったんですけれども、ぜひ、この点についても、私、知的財産権の調査会の事務局長をやっておりますので、しっかりやらせていただくということでお約束させていただきたいと思います。
 そして、岩月参考人にちょっとお伺いしたいんです。
 ISDS条項について憲法上の問題があるようなお話をされておりましたけれども、既に日本が締結したISDS条項を含む投資協定は二十三本あります。そして、経済連携協定は十本あります。さらに、半世紀ほど前に締結したICSID条約やニューヨーク条約がございます。これらについても、岩月参考人の立場では、やはり憲法上の疑義があるというお立場でしょうか。
この発言だけを見る →
岩月浩二#26
○岩月参考人 御指摘の協定等は、大半が途上国との間のものであって、今まで憲法違反の問題が顕在化しなかったというふうに理解しています。したがって、潜在的違憲状態にあるというのが私の考え方です。
この発言だけを見る →
山下貴司#27
○山下委員 潜在的違憲状態かということについては、私も法律家の端くれでございますが、ちょっと見解を異にするということで、これまで日本がやってきた二十三本の投資協定、EPAが潜在的違憲状態だというのは、若干私は同意しかねる部分がございます。実は、それらの協定、EPAには野党の皆様の賛成も得ておるわけでございますから、そういったことを考えると、やはりちょっとどうかということは申し上げたいと思います。
 ただ、先生の見解は、やはり法曹の先輩として非常に私も尊重しておりますので、今後とも御指導いただきたいと思っております。
 なお、私、このTPPに関して、最後に日本の農業につきまして申し上げますと、二〇一三年、これはFAOの統計でございますが、日本の農業生産額は第九位なんです。日本は、農業生産額については世界の農業大国なんです。TPP参加国中では二位なんです。米国に次ぐ立場にあります。ところが、日本の農産物や食品の輸出額は、何と七十一位なんです。TPP参加国中、農産物、食品の輸出額は、何と十一位、ブルネイの上なんです。
 この状況をどうすべきかというのが私はTPPの審議についても問われておると思いますし、また、それに関して、ISDS手続、あるいは著作権や知的財産権についてもしっかり担保されているということを今回の参考人の御質疑の中で確認できたということを申し上げて、私の質疑を終わらせていただきたいと思います。
 ありがとうございました。
この発言だけを見る →
塩谷立#28
○塩谷委員長 次に、篠原孝君。
この発言だけを見る →
篠原孝#29
○篠原(孝)委員 時間が限られておりますので、早速質問させていただきたいと思います。
 まず、著作権問題についてですけれども、土肥参考人は、文化的資源として不利益を解消していくんだと。ですけれども、福井参考人の話を伺っておりますと、著作権の保護期間を延ばしたけれども、遺族のメリットはそんなにないし、ほとんどが孤児著作物、あるいは、わからなくなっちゃう迷い子著作物というのがあるんだそうですね、そうなっていると。
 それから、アメリカは非常に訴訟社会だということで、それを反映して、みんな大体アメリカの言うとおりになっている部分が多いわけですけれども、非親告罪化しているわけですね。著作権者がそんなの大したことないやと思っているのを、第三者、ほかの人たちが罪だといって訴える。これはやはり日本の社会には圧倒的に合わない仕組みだと思うんですが、この点についていかがでしょうかということです。
 次に、福井参考人ですけれども、ちょっと触れられなかったんですが、アメリカの訴訟社会化、これはISDと関係するのでお伺いしたいんですけれども、あちらには、著作権をもとにもうけようということで、やたらそれを自分の権利として集めまくって、そして訴訟を起こしてもうけるという、コピーライトトロール、根こそぎ持っていく、こういう商売も成立している、みんな知らないで使っているので著作権を侵している、こういうことがあると聞いているんですが、その点について御紹介いただけたらと思います。
この発言だけを見る →
← 戻る