予算委員会

1960-03-08 参議院 全324発言

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会議録情報#0
昭和三十五年三月八日(火曜日)
   午前十時四十一分開会
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  委員の異動
本日委員北畠教真君及び曾祢益君辞任
につき、その補欠として吉江勝保君及
び基政七君を議長において指名した。
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出席者は左の通り。
   委員長     小林 英三君
   理事
           大谷藤之助君
           佐藤 芳男君
           館  哲二君
           西田 信一君
           秋山 長造君
           鈴木  強君
           松浦 清一君
           千田  正君
           大竹平八郎君
   委員
           泉山 三六君
           太田 正孝君
           木暮武太夫君
           小柳 牧衞君
           斎藤  昇君
           重政 庸徳君
           白井  勇君
           杉原 荒太君
           手島  栄君
           苫米地英俊君
           一松 定吉君
           堀木 鎌三君
           武藤 常介君
           村松 久義君
           村山 道雄君
           湯澤三千男君
           吉江 勝保君
           米田 正文君
           荒木正三郎君
           加瀬  完君
           小林 孝平君
           佐多 忠隆君
           羽生 三七君
           平林  剛君
           藤田  進君
           松澤 兼人君
           東   隆君
           基  政七君
           辻  政信君
           原島 宏治君
           森 八三一君
           岩間 正男君
  国務大臣
   内閣総理大臣  岸  信介君
   法 務 大 臣 井野 碩哉君
   外 務 大 臣 藤山愛一郎君
   大 蔵 大 臣 佐藤 栄作君
   文 部 大 臣 松田竹千代君
   厚 生 大 臣 渡邊 良夫君
   農 林 大 臣 福田 赳夫君
   通商産業大臣  池田 勇人君
   運 輸 大 臣 楢橋  渡君
   郵 政 大 臣 植竹 春彦君
   労 働 大 臣 松野 頼三君
   建 設 大 臣 村上  勇君
   国 務 大 臣 赤城 宗徳君
   国 務 大 臣 石原幹市郎君
   国 務 大 臣 菅野和太郎君
   国 務 大 臣 中曽根康弘君
   国 務 大 臣 益谷 秀次君
  政府委員
   法制局長官   林  修三君
   警察庁長官   柏村 信雄君
   調達庁長官   丸山  佶君
   外務省経済局長 牛場 信彦君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
   大蔵省主計局長 石原 周夫君
   運輸省海運局長 朝田 静夫君
   労働省労政局長 亀井  光君
  最高裁判所長官代理者
   事 務 総 長 横田 正俊君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       正木 千冬君
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  本日の会議に付した案件
○昭和三十五年度一般会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十五年度特別会計予算(内閣
 提出、衆議院送付)
○昭和三十五年度政府関係機関予算
 (内閣提出、衆議院送付)
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小林英三#1
○委員長(小林英三君) これより予算委員会を開会いたします。
 先ほど開きました委員長及び理事打合会の経過について御報告を申し上げます。昨日の委員会において、荒木、小林両委員の質疑のうち、台湾の帰属に関する質疑に対し、政府側の答弁について速記録を調べましたところ、社会党側から疑義がある旨の申し出がありましたので、理事会で協議いたしました結果、本日の委員会の冒頭荒木委員から再質問をしていただくことに意見の一致を見ました。
 以上御報告をいたしました通り運営することに御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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小林英三#2
○委員長(小林英三君) 御異議はないものと認めます。
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小林英三#3
○委員長(小林英三君) 昭和三十五年度一般会計予算、同じく特別会計予算、同じく政府関係機関予算、以上三件を一括して議題といたします。
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荒木正三郎#4
○荒木正三郎君 昨日台湾の帰属問題について、私から岸総理にその見解をただしたのであります。これについての答弁は、台湾の帰属は中国に帰属するという旨の答弁がございました。私はその意味において了承をいたしたのであります。ところが、その後この関連質問において、小林委員から、現に中国の中には二つの政権があるじゃないか、そのどちらをとっているのか、こういうふうな質問に対して岸総理は、中国と言うのは中華民国政府をさすのである、こういう答弁をせられたのであります。これはこういうふうに述べておられます。「日本としてはこの中国というものを代表する政府として中華民国政府というものを認めております。これと平和条約を結んだわけでありますから、それに帰属すると言ったのであります。」こういう答弁をしておられます。これは岸内閣の新しい解釈であると、かようにまあ考えるわけです。従来政府がとっておった態度でない、こういうふうに考えますので、その答弁については私は了承ができないので、重ねてまあ質問をする次第であります。
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岸信介#5
○国務大臣(岸信介君) 多少私の言葉が不十分である点もあったとも思いますが、私の申し上げた趣旨は、中国に、カイロ宣言のときには中華民国という言葉が使ってあるから、日本文の翻訳はそうなっておりますが、それは要するに、その当時は政府は一つであったからいわゆる中国という考え方をすべきものであろうと思います。中国に、これを台湾その他のものを引き渡すということがカイロ宣言で明らかにされた、それを、ポツダム宣言を日本が受諾した関係上、これはそういうことを踏襲しておるわけでございまして、サンフランシスコ条約からだけ申し上げますというと、日本としてはこの領土権を放棄しただけであって、こういう関係から見て中国に帰属するということを、帰属するということを日本としては承知せざるを得ない立場にある。そうするというと、中国というものを、それでは政府が事実上二つできたわけでございますから、どちらの政府が正統政府として認めるかということについては、それは大いに議論のあったところであったけれども、平和条約を結んだときの趣旨から見るというと、中華民国政府というものを中国の正統な代表者と見てこの条約を結んだという立場に当時あったわけでありまして、この政府によって代表されておる中国に帰属すると、こういうふうに岡崎国務大臣も申し上げたんであろうし、われわれもそういうふうに考えておると、こういうことを申し上げたわけでございますから、その間に食い違いはないものとわれわれは考えておりますと、こういうことを申し上げたのであります。
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荒木正三郎#6
○荒木正三郎君 重ねて総理の釈明でございますが、やはり私はこれを了解するというわけには参らないのであります。と申しますのは、この日華条約が結ばれるときに、伊達委員からこういう質問がなされております。「台湾を中華民国のものと承認したのであるか、」こういう質問に対しまして、岡崎国務大臣は、日本としては「中国に属するというふうに考えております。」こういう答弁をいたしているのであります。さらにこの日華条約について、中国という言葉と中華民国政府という言葉とが出て参ります。その中で岡崎国務大臣は、「中国全般に関する事項に触れた場合には中国」いわゆる台湾とか、中国大陸とか、そういう区別をして考えないで、これをまとめた全般として考えた場合は中国という言葉を使っている。「それから全般でなくして現在中華民国政府が支配している地域に関する事項については、中華民国という特に区別した名前を付けてこの条約の中で表現しておるというふうに御了承願いたい。」と言っているわけであります。すなわち岡崎外務大臣は、中国という場合は、これは台湾とか大陸とかいう区別なしに、まとめた中国全体をさして総称する言葉である。そうして台湾及び澎湖島に関して特別な区域に限定した場合に中華民国、こういう使い分けをしていることを了承してもらいたいと言っているわけであります。そういう立場に立って、台湾の帰属問題について、これが中華民国に属するのか、こういう質問に対して、「中国に属する」というふうに、帰属すると考えている。こういう答弁をいたしているのであります。そうすると、これは岸総理が言われるように、台湾が中華民国政府に帰属する、こういう見解をとっておらない。これは中国に帰属するものだ。こういう見解をとっていると思われるのであります。そこに今の御答弁と相当に食い違いがあるということが第一点。それから第二点として、この点は中国を代表する政府として中華民国政府というものを認めた。こういうお話ですが、日華条約についてはその点はずいぶん論議されております。結局吉田総理と曾祢益君の質疑において、この中華民国が中国全体を代表する政権というふうに認めていないということが明瞭であります。私はここで速記録を読む煩を避けたいと思うのですが、これは明瞭にするために申し上げたいと思うんですが、曾祢委員が質問の要旨は、「日華条約によって日本政府は、この中華民国政府を全面的な中国の主人として承認したものではない、こういうふうに考えるが、その点は総理はどうか。イエス・オア・ノーではっきり答えてもらいたい。」こういう質問に対して吉田総理は、「これは条約にもはっきり書いてありますが、現に中華民国政府の支配しておる土地の上に行われる事実を認めて、その支配せられておる領土を持つ中華民間との間に条約関係に入る。将来は将来であります。併し目的は終りに一中国全体との条約関係に入ることを希望して止まないのであります。」さらに曾祢委員が「ずばりと言えば、全面的な承認ではないとこういうことでございましょう。」こういう質問に対して、当時の吉田総理は「そういうことです。」こういうふうに答えている。ですから、日華条約が結ばれた当時の政府の責任的な解釈からいえば、中華民国を中国を代表する正当な政府としてこの条約が結ばれていないということは明白であります。そういう点で、今御答弁になりました総理の考えというものが非常に変わってきている。こういうふうに思いますので、私としてはなお了承できないと申しているのであります。
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岸信介#7
○国務大臣(岸信介君) 今申し上げました通り、いわゆる広い意味における中国の一部であるという考え方につきましては、私と当時の何とちっとも違っておらぬと思います。ただ、当時の何から申しまして、その中国を代表、広い意味の中国を代表する政府としてどういうふうに認めるかということは、大いに議論があるところであると私は思います。思いますけれども、日本として、たとえば戦争終結の問題を規定しているというようなことは、われわれは初めから台湾━━当時戦争は台湾においては行なわれておらないのでありまして、われわれの当時は領土であったわけなんですから、その戦争終結というようなことを考えてみるというと、やはりこの中華民国との間に結ばれた条約は、当時日本としては中国を代表する政府としてこれとの間に条約を結んだ、こう解釈すべき問題であると私は思います。事実上当時の中華民国が支配しておるところがどういう地域であるかということは、もちろん当時議論された通りであろうと思います。しかし、条約の内容から見るというと、当然そういう条項を含んでおるわけでありますから、日本としては一応中国を代表する政府として中華民国のことを認めてそうしてそれとの間に平和条約を結ぶ、こういうふうに解釈すべきであろうと思います。
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荒木正三郎#8
○荒木正三郎君 なお私は了承できませんが、この問題であまり時間をとるということは運営上恐縮に存じますので、もう一点だけ申し上げておきたいと思います。
 この問題について、岡崎国務大臣はこういうふうに答弁されておるのであります。「今中共の政府と中華民国の政府と二つあるわけであります。中共の政府はいわゆる中国全部の領域を主張し、中華民国の政府も中国本土全部を含んだ中国全部を代表する政府である、従って領域全部であると主張しておる。」それを第三国がどちらがどういうふうにということは内政に干渉するということになる。いわゆるどちらの政府が正当政府であるかというようなことを第三国がかれこれ言うということは内政干渉である、こう言っております。そうしてこの条約の審議において、最後まで正当政府であるということは、政府は見解を承認していない。だからその意味において、私は今の総理の見解ですね、御答弁はどうしても満足できない。しかし、先ほど委員長、理事の打ち合せ等があって、この問題にあまり多く時間をとるということは恐縮でありますので、この問題は次回において、他の機会において、なお十分これは質疑し、明瞭にしておきたいということを申し上げたいと思います。
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小林孝平#9
○小林孝平君 関連。ただいま荒木委員と総理との質疑応答を聞いておりますと、非常に重大な問題が出てきたわけであります。それは、荒木委員も指摘されましたように、日華条約の締結当時は、この中華民国は全中国を支配する唯一正当の政府ではないという立場でもってやっておいでになります。ほとんど現在までそういう立場をとっておられます。ところが、ただいまの御答弁は、あたかも昨年の暮締結されましたベトナムの賠償問題の際に、政府がとりました……法制局長官、ちょっと総理によく聞いてもらわなければならぬのです。終わってから相談して下さい。私はすぐ答弁していただかなくてもいいのです。よく相談してから答弁してもらってもいいのです。発言中に要らぬことをするな。ベトナムの際には、南ベトナムが全ベトナムを支配する唯一正当の政府であるという見解を、政府はわれわれの反対を押し切って強行されました。今までの中華民国に対する態度は、このベトナムに対する態度とは全然違ったものであったのです。ところが昨日から本日にかけての論議を見ますと、昨日の速記録にも明らかなように、中国というものを代表する政府として、中華民国政府というものを認めております。こういうふうに言われ、さらにこれを敷衍するように、非常に強い言葉で、この唯一正当の政府であるかのごとき発言に漸次答弁を通じて移り変わっておるのであります。これは重大なことであります。おそらく総理は、お考え違いになってそういう御発言をされたのだろうと思いますので、この際明らかにして、その誤りであることを訂正していただきたいと思います。
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岸信介#10
○国務大臣(岸信介君) 日華条約のこの条項によりましては、経済条項等は、現に支配しておるところでなければ実際適用を受けないと思います。また先ほど申しましたように、戦争終結というようなことを規定しておるということは中国大陸において戦争が行なわれたわけでありますから、そういう点において、現に支配しておるところだけの戦争終結ということは本来意味をなさないことでありますから、そういうような条項を含んでいるわけでございます。ただ、この領土権の問題に関しましては、先ほど荒木委員も当時の外務大臣の答弁をお読みになりましたように、両方の政府の主張は、全中国に対してお互いがその何を主張し合っている、こういうことであります。その間の領域がどういうふうになっているのだということを他からかれこれ言うことは、今おっしゃる通り内政干渉だと思います。そういうことを私が言っておるわけではないのでありまして、日本としてはサンフランシスコ条約によって放棄しておる何であるから、これがどこに帰属するかということについて発言の何らの権利をもっておるわけでもないし、またそのことを言おうとしておるわけでもございません。われわれが放棄しておるその帰属は、サンフランシスコ条約に署名したところの連合軍側において決定する。ただこれの領土の、戦争終結後における帰属をカイロ宣言においてきめており、またそれを内容としておるこのポツダム宣言というものを日本が受諾しておる限りにおきまして、いわゆる当時の表現もいろいろありますけれども、結局、広い意味における中国に属するということを連合国との間において話し合ったカイロ宣言というものを、日本としては承知しておるわけでありますから、これに異議を唱えるとかどうするかということは、これはできないことであります。本来これはどこに属するかということは、日本が解釈すべき何らの権利も私は持っておることじゃないと思います。ただ、今言った中国との間に、今申したようなカイロ宣言等がございますから、それを承知しておる。それに対してわれわれがそれを否認する、それに対して異議を言うというような立場にない。結果としてそういうふうな解釈問題について先ほどから申し上げておる。日本がこれはどこに帰属するのだというようなことを言うような何らの権利もない、そういう立場にもないのであります。またそういうことを政府としてしょうというわけでもございません。ただ解釈問題として今言ったような関係から、中国に帰属するということを日本としては承知しておるということでございます。しこうして日華条約を結びましたときにおいて、この日本との間の平和条約、戦争終結をさせる平和条約を結び、将来友好関係を続けていくというこの条約締結にあたりまして、その範囲がどこに及ぶのだということになりますというと、条項によって、今申しましたように戦争終結の問題であるとか、経済関係の問題であるというようなことで、適当に解釈していくよりほかない、かように考えているわけでございます。
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小林孝平#11
○小林孝平君 総理はわれわれが今この貴重なる時間をさいて論じていることの論点をそらして御答弁になっておる。われわれは、台湾の帰属は昨日から申しておるように、日本がどこに帰属するかということをきめることはできないのみならず、これは世界もきめることはできない。これは連合国が合議してきめることでありましょうが、そういうことを言っておるのじゃないのです。この問題に関連して、あなたはこの帰属をきめる際に中国というものの解釈を曲げて解釈をされましたから問題になっておる。そこをわれわれはただしておる。そこで今までは政府の立場というものは中華民国というものは中国の唯一正統の政府であるという立場をとっておらない。少なくとも昨日までとっておらないのに、昨日岸総理はこういう発言をされ、今日に至ってはさらにそれを押し進めて、あたかも南ベトナムの統一政権であるという、昨年のあの論争のとき政府が最後まで主張された態度と同じような態度をとったということに非常に問題があるのであります。岸さんはそういう点をことさらに避けられて、そうして自分の昨日発言された言葉を合法化されようとしておる。合法化のみならず、さらにそれを一そう押し進めようとしておるところに問題があるのであります。そこでこれは理事打合会の際に相当の時間を費やして論議を許されたのでありますけれども、非常に重要な問題でありますので、この問題は後日に譲りまして、岸さんは大いに反省されまして、次の機会には、もう少し明確な態度を持って御答弁をされんことを望みます。
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羽生三七#12
○羽生三七君 関連して。今の小林委員の発言と大体同じなのですが、前の日華条約を審議するときの委員会の大勢は、私はそのときは関係しておりませんが、その大勢は、台湾が全中国本土に対して主権を持つという意味でなしに、現に事実的に成立をしておる台湾という現実の事態を承認する意味で、その主権が本土に及ぶとか及ばないとかいうことを別にして、事実関係として交渉に入る、こういうことだったのです。これは今の速記録を読まれたことから見ても間違いのない事実であります。だから台湾政府の主権が中国本土に及ぶとか及ばないとかということは、全然吉田前総理も言ってないし、岡崎前外務大臣も言っていない。また今の政府の言われたことは、抽象的には非常に立場が苦しいのでよくわかります。わかりますが、それからいくと非常に発展している。単に現実の問題として存在している台湾を無視するわけにいかないので、私どもと立場は違うけれども、それを無視するわけにいかないので、一応台湾というものの事実関係に入る、こういうことだったのです。それを今の台湾政府の主権が中国本土に及ぶという解釈は、これは非常に私は大きな発展だろうと思う。ですから、これは昨日荒木委員が、この前岸総理が台湾に行かれて蒋介石総統と会ったときに、台湾本土反抗云々のことを質問されましたが、そんなことを言ったことはないと岸総理はおっしゃった。実は台湾からお帰りになった直後、私は外務委員会で、岸総理の発言は後日必ず中国が日本の敵視政策として問題にするに違いないから、この発言は取り消したらどうか、私は数回、回を重ねて申し上げた際に、岸総理大臣は、いや、それは武力を意味することでない、精神的な意味で言ったのだというふうに訂正されましたが、そのときから考えてみて、また昨日来の御発言が将来私は何らかの問題を起こさなければいいがということを杞憂する一人であります。従って今私はここでどうこうということは申しませんけれども、小林委員の発言の通り、あとでゆっくり御相談の上、私はしかるべき明白な回答を出されることが適当だろうと思います。私は意見だけ申し上げておきます。
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岸信介#13
○国務大臣(岸信介君) 先ほど来申し上げておりまするように、私は領土権がどこに及ぶとか、領土がどういうふうになっているとかというようなことを申したつもりは毛頭ないのでありまして、その意味において、私自身が先ほど来申し上げている考え方は、決して日本としてこの領土権がどこにあるとか、この二つの政府の間の関係をどういうふうに領土権の上において考えるかというふうなことは全然考えておらないのであります。問題は、先ほど来から申しますように、中国に属するということを、帰属するということを、日本として承知しているということでございまして、しこうして中華民国政府と日華条約を結びましたことは、その条項によりまして、いろいろな条項を含んでおりますから、それがどこに対して効果があるかというような解釈の上から申しますと、経済条項等は現に支配しているところの地域に限ることは当然でありますが、戦争終結というようなことを意味していることは、これはやはり中国を代表する政府として、これとの間に一切の戦争関係を終結するということでなければ実は意味をなさないことでございますから、そういうような意味で申し上げたことでございまして、決してこの両方の領土権をどういうふうにするとか、支配権が、主権がどういうふうに及んでいるというようなことを申し上げたのではないのでございますから、御了承願います。
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荒木正三郎#14
○荒木正三郎君 これで質問を終わります。この問題はまだ明白になっておらないので、後日さらに政府との間に明らかにしたい、かように考えますから、この問題は留保いたします。
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小林英三#15
○委員長(小林英三君) 松澤兼人君。
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松澤兼人#16
○松澤兼人君 昨日の質問の冒頭におきまして新しい安保条約が、いわゆるわが国の自主権をどの程度に回復したかという問題から、米軍基地の問題に発展してきまして、いろいろと審議が中断されたのであります。本日は基地の問題につきましては、資料が提供されております。しかし、四件、七件、八件あるいは九件くらい、十件以内の施設要求拒否の概要という書類では、私どもとしては納得いかないのであります。また同時に、昨日も質問の通告を追加しておいたのでありますが、一九五七年の岸・アイク共同声明によりまして、米軍のすみやかなる撤退、あるいは漸減の方針、これを時期といたしまして、前と後における在日米軍の基地の件数、あるいはその広さ等の資料も質問通告として出しておいたのでありまするが、それが出ておらない。一応昨日の質問なり、あるいは質問の通告をいたしましたこれらの一九五七年共同声明前後の基地使用の状況等につきまして、防衛庁長官から御答弁を願いたいと思います。
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赤城宗徳#17
○国務大臣(赤城宗徳君) 提供施設区域の推移の状況を申し上げます。
 講和発効時、すなわち二十七年の四月二十八日には、件数から申しますと、二千八百二十四件あるわけであります。三十年の六月一日に岸・アイク共同声明のときには四百五十一件になっております。現在は、三十四年一月二十一日現在でありますが、二百五十五件になっています。土地につきましては、講和発効時、二十七年には四億九百十七万坪、それが三十年の岸・アイク共同声明のときには二億九千百七十二万二千坪、現在は一億百四十六万七千坪になっています。建物につきましては、講和発効時におきましては四百十万三千坪であります。岸・アイク共同声明当時は二百八十一万六千坪、現在すなわち三十四年一月十一日には百六十四万九千坪、こういう状況でございます。
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松澤兼人#18
○松澤兼人君 この問題につきましては、さらに一般質問あるいに分科会等において質問申し上げたいと思います。
 そこで問題は、すでに衆議院の予算委員会なり、あるいは他の委員会などにおいて論議せられたことでございますけれども、新しい条約と憲法の関係の問題であります。これは、第三条の能力の維持発展の問題、あるいは武力攻撃に対する行動に関する問題等の問題に関連してくるのでありますけれども、たとえば、五条の、共通の危険に対処して自国の憲法の規定と手続によって、わが国においては自衛隊が行動を起こすということであります。この自国の憲法の規定、手続という意味はどういう意味でございますか。
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赤城宗徳#19
○国務大臣(赤城宗徳君) 自国の憲法手続に従うということがありますが、アメリカ憲法には、憲法上その手続等があります。日本の憲法については、第九条によって規定されたことがありますが、どういう出動手続をするかというようなことは、自衛隊法に規定されておりますので、その自衛隊法の手続に従って出動する。こういうことに相なっております。
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松澤兼人#20
○松澤兼人君 条約によりますというと、明らかに憲法上の規定及び手続ということになっているのでありまして、今お話になりました、自衛隊の出動については自衛隊法があるということでありますならば、条約のうたい方としては、憲法及び国内法の規定及び手続というふうにならなければならないのであります。九条の問題は、これは意見の分かれるところでございますけれども、自衛力がある、あるいは自衛隊があるということを単にあなた方が解釈しているだけであってわれわれは、そういう解釈がいけないということを言っている。あるということ、その憲法の九条は自衛力を否定しているものでないから自衛隊というものはあるのである、あり得るのだということはあなた方のお考えであります。しかし、この自衛隊が行動をするという場合の規定は、第九条によっては解釈できないのであります。この点は、岸総理に……。
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岸信介#21
○国務大臣(岸信介君) 自衛隊、自衛権の問題は、憲法の九条の解釈として、当然不在な、不当な侵略があった場合に、これを実力をもって排除するというのが自衛権の内容でございますから、われわれとしては、この憲法の規定に従って、そういうような不当な武力攻撃が加えられた場合に、これを排除するために実力を用いるということは、これは私は、憲法の私どもの解釈から当然あり得ることであります。日本には、たしかに憲法上にその場合の手続を規定した手続はございません。しかしこの条約は、日米両方何しているわけでありまして、アメリカの方には、憲法上にも何かそういう手続に関する規定があるように伺っております。しかし、日本において、憲法の上において、自衛権によって、武力攻撃が加えられた場合に、これを実力を行使しして排除するということができるというふうに解釈をいたしましても、それが現実にどういうふうに行動し、どういうふうにやっていくかということについては、憲法に基いて考えられているところのこの自衛隊法でございますから、先ほど防衛庁長官がお答え申し上げましたように、自衛隊法の規定、手続によって自衛権を発動し行動するということになってくると思います。
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松澤兼人#22
○松澤兼人君 アメリカ側においては、憲法上の規定及び手続によって行動する、日本側は自衛隊法によって行動するのだ、こういうことは、条約の対等性ということから考えてみて、これは全く問題にならない。アメリカにおきましては、憲法上の手続、規定が国内にあるから、条約として憲法上の規定及び手続といううたい方をしている。日本にはそれがないから、あるいは国内法としては自衛隊法がある。それでは対等の条約というふうにはならない。この点はいかがですか。
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岸信介#23
○国務大臣(岸信介君) 先ほどお答え申し上げました通りでありますが、今、日本には憲法上に手続をきめているものはございません。しかし、自衛隊法というものは憲法に基いて作られている法律でございますから、これに日本が従うことは当然でありまして、従って私は、別にそういう解釈から対等性がないというふうな問題ではなくして、それはその国の法律、制度の建前からくるわけでございますから、別に差しつかえないと、こう思うのでございます。
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松澤兼人#24
○松澤兼人君 別に差しつかえがないという問題じゃない。これは、日本において正当に条約上それをなし得る体制があってから、あるいは法体系があってから初めてそういうことが言える問題であります。たとえば、韓国におきましても、やはり戦争に参加するとか、あるいはまたは宣戦の布告をするとかいう権限は大統領にある。しかし、それには立法院の議決が必要であるとかいうことがある。あるいは中華民国におきましても、総統が条約を締結し、あるいは宣戦を布告し、講和をなす権限がある。それには立法院の同意を必要とするということがある。フィリピンにおきましては、議会が各院の総議員の三分の二以上の多数の賛成をもって戦いを宣する権限を有するということになっている、アメリカは、連邦議会において戦争を宣言する権限というものを持っている。こういう手続があるから、条約としては、憲法上の規定及び手続によってということが規定されるのであります。日本には、これに相当するいかなる憲法上の規定もないにもかかわらず、対等の立場においてこういう規定をするということは、総理は、それはあたりまえである、差しつかえないと言われても、国際法上あるいは外交上の通念からしまして、これは無理であるということははっきりわかる。無理でないとお考えでございますか。
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岸信介#25
○国務大臣(岸信介君) これは、日本の憲法の規定がよその憲法と違っておるわけでございまして、普通には、憲法上の手続に従ってというふうに書けば、それで済むわけであろうと思いますが、日本におきましては、特に憲法の規定及び手続に従ってという、この規定を入れませんと、手続が何も憲法上に直接に書いてございませんので、そういう意味において、従来のほかの条約等に使っている字句とは違った字句を使って、日本に適用するように規定をいたしたわけでございます。ちっとも無理ではないと考えます。
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松澤兼人#26
○松澤兼人君 総理は無理でないというふうに言われるのでありますが、無理でなければ、言葉を変えたらいい。「自国の憲法及び国内法の規定及び手続に従って」、こうするのが当然であります。なぜそれに対してあなたの方は、総理としては、これに対する特殊の立場を表明して、日本に対してはこういう規定ということをなさらなかったのですか。
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岸信介#27
○国務大臣(岸信介君) 今申しましたように、日本憲法の特殊の事態を考えまして、特に「憲法上の規定及び手続」と、こうやったわけでございまして、憲法上の規定ということを特に明示したのは、日本の独特の立場を憲法の立場を、意味して書いたわけでございます。ほかの条約等から見まするというと、特にその点が違っておるのも、日本憲法の立場を考えたわけでございまして、それ以上ほかにつけ加えることはないと思います。
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松澤兼人#28
○松澤兼人君 ほかの条約と比較してこういう規定をおいたということが、日本の特殊性を表明するものであると、こういうお話であります。しかし、それは全く話が違うのであります。たとえば、米華の相互防衛条約におきましても、自国の憲法上の手続に従ってというふうに書いてある。米韓相互防衛条約におきましても、自国の憲法上の手続に従ってと書いてある。さらに、米比の場合におきましても、自国の憲法上の手続に従ってと書いてある。その他各種の条約におきましては、みな同じような表現の仕方をしている。これはそれぞれ━━あるいは中華民国であるとか、あるいは韓国であるとか、あるいはフィリピンであるとかいうものは、憲法上の自国の中における戦争に関するところの規定及び手続を持っているからこういうことをいっている。日本の特殊性があるからといううたい方ではないのであります。そこで、日本の特殊性ということを考えるならば、今申しましたように、憲法上の規定及び国内法の規定に従ってと、こう書かなければならない。これをやらないで、他の条約と同じようにしている。特殊性というものは少しも認められてない。これはどうですか。
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岸信介#29
○国務大臣(岸信介君) もちろん、ほかの国におきましても、これに関する国内法もそれぞれあると思いますが、今お話のように、よその条約におきましては、憲法上の手続に従ってと、こう書いてありますから、特に憲法上の規定ということを入れましたのは、憲法九条の規定、これに従うべきことを特に明示したわけでございますが、御承知の通り、他の国と違って、日本の場合において、武力攻撃を排除するということについて、日本が交戦権を持たないというふうに憲法でも明示されております。こういうことは、ほかの国の憲法にはないわけでございまして、そういうような点を特に考えて、憲法上の規定と、九条を特に考えたわけでございます。そして今も申しましたように、よその条約におきましては、そう書いてあっても、国内法に従うことは当然でございまして、また日本におきましても、その意味におきまして、憲法に基づいて作られたところの法律である自衛隊法の規定に従ってやることは当然でございまして、これを排除するような意味は一つも持っておらない。かように考えております。
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