法務委員会

2015-06-10 衆議院 全83発言

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会議録情報#0
平成二十七年六月十日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 奥野 信亮君
   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君
   理事 伊藤 忠彦君 理事 柴山 昌彦君
   理事 盛山 正仁君 理事 山尾志桜里君
   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君
      大塚  拓君    門  博文君
      菅家 一郎君    熊田 裕通君
      今野 智博君    辻  清人君
      冨樫 博之君    藤原  崇君
      古田 圭一君    前田 一男君
      三ッ林裕巳君    宮崎 謙介君
      宮澤 博行君    宮路 拓馬君
      簗  和生君    山口  壯君
      山下 貴司君    若狭  勝君
      黒岩 宇洋君    階   猛君
      鈴木 貴子君    柚木 道義君
      重徳 和彦君    大口 善徳君
      國重  徹君    清水 忠史君
      畑野 君枝君    上西小百合君
    …………………………………
   法務大臣政務官      大塚  拓君
   参考人
   (中央大学大学院法務研究科教授)         椎橋 隆幸君
   参考人
   (日本弁護士連合会副会長)            内山 新吾君
   参考人
   (映画監督)       周防 正行君
   参考人
   (布川事件冤罪被害者)  桜井 昌司君
   参考人
   (弁護士)        加藤 健次君
   法務委員会専門員     矢部 明宏君
    —————————————
委員の異動
六月十日
 辞任         補欠選任
  菅家 一郎君     三ッ林裕巳君
  宮川 典子君     前田 一男君
同日
 辞任         補欠選任
  前田 一男君     熊田 裕通君
  三ッ林裕巳君     菅家 一郎君
同日
 辞任         補欠選任
  熊田 裕通君     宮川 典子君
    —————————————
本日の会議に付した案件
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)
     ————◇—————
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奥野信亮#1
○奥野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案審査のため、特に取調べの録音・録画制度の創設について、参考人として、中央大学大学院法務研究科教授椎橋隆幸君、日本弁護士連合会副会長内山新吾君、映画監督周防正行君、布川事件冤罪被害者桜井昌司君及び弁護士加藤健次君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。よろしくお願いいたします。
 次に、議事の順序について申し上げます。
 まず、椎橋参考人、内山参考人、周防参考人、桜井参考人、加藤参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。御発言があれば、手を挙げていただきたいと思います。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず椎橋参考人にお願いいたします。
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椎橋隆幸#2
○椎橋参考人 ただいま御紹介いただきました中央大学の椎橋でございます。本日は、このような場でお話しする機会を賜りまして、大変光栄に存じております。
 私は、刑事訴訟法の研究をしておりまして、今回の法律案につきましては、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会の委員としてかかわりました。本日は、本法律案に賛成の立場から、本法律案に盛り込まれている取り調べの録音、録画制度を中心に意見を申し上げさせていただきたいと思います。
 以下、基本的に、配付させていただきました簡単なレジュメに沿って話を進めさせていただきます。
 御案内のとおり、平成二十三年五月、検察の在り方検討会議の提言を受けて、当時の江田法務大臣から法制審議会に対して諮問九十二号が発せられました。その内容は以下のとおりであります。つまり、「近年の刑事手続をめぐる諸事情に鑑み、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するため、取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方の見直しや、被疑者の取調べ状況を録音・録画の方法により記録する制度の導入など、刑事の実体法及び手続法の整備の在り方について、御意見を承りたい。」こういうものでございました。そして、その審議のために特別部会が設置されたわけであります。
 これは、審議の対象が国民の生活にも影響する刑事司法全体のあり方に及ぶものであったために、特別部会では、刑事司法の専門家だけでなく、一般の有識者もさまざまな立場から委員に加わり、幅広い観点から活発な議論が行われました。
 各委員の立場やその見解も多様でありましたが、三年余りの審議を重ね、最終的には全会一致で答申案をまとめることができました。これは、それぞれの委員が、立場の違いを乗り越えて、我が国の刑事司法を前進させていこうという強い思いを持って、真摯な姿勢で粘り強く審議に臨んだからであり、非常に画期的なことであるというふうに思っております。
 それでは、本題に入りまして、まず、取り調べの録音、録画制度の導入の意義について申し上げます。
 取り調べの録音、録画制度は、本法律案に盛り込まれている制度の中でも最も大きな柱であり、ただいま申し上げました特別部会の審議においても、一番多くの時間を費やして検討が行われたわけであります。
 被疑者の取り調べを録音、録画しておけば、事後に自白の任意性に争いが生じた場合に、取り調べの違法、不当を客観的に判断するということができ、取り調べ状況をめぐる水かけ論というものは解消されます。また、取り調べ時点においても、心理的抑制が働くために、取り調べの適正が確保されるということになります。
 従来、我が国の刑事司法につきましては、事案の細部に至るまで徹底的な解明に努めるということを特徴として、それが精密司法という名で呼ばれてきました。その中で、取り調べは、諸外国に比して他の証拠収集手段が限られているということもありまして、最も中心的な捜査手法として重要な役割を果たしてきたわけであります。
 このような我が国の刑事司法は、事案の真相解明を求める国民の支持を受け、良好な治安の維持に大きく貢献してきた面がある一方で、誤った事件の構図に基づき、裏づけを怠った取り調べがなされた結果、虚偽の自白が採取され、誤判が生じたという事案が生じております。取り調べや、その結果として作成される供述調書に過度に依存している現在の刑事司法が制度疲労を起こしているということは、否定しがたいのではないかというふうに考えられます。
 取り調べの録音、録画の導入は、取り調べや供述調書に焦点を当てた初めての法改正であり、捜査の適正化、公判審理の充実化に資するものであって、取り調べ及び供述調書への過度の依存からの脱却に向け、歴史的な意義を有するものであると考えております。
 次に、本法律案の取り調べの録音、録画制度が構想された経緯について、特別部会における議論に触れつつ御説明いたします。
 特別部会におきましては、録音、録画の有用性を生かすという観点からは、政策的にできる限り広い範囲で録音、録画が実施されるものとすることが望ましいという観点と、それから、録音、録画の実施によって取り調べや捜査の機能等に大きな支障が生ずることのないような制度設計を行う必要がある、こういう二つの観点を踏まえて、二つの案が出されました。
 一つは、一定の例外事由を定めつつ、原則として被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づける案でございます。もう一つは、録音、録画の対象とする範囲は取り調べ官の一定の裁量に委ねるものとする案でございます。
 両案について検討が行われ、それぞれの枠組みを具体化しながらさまざまな議論が行われた結果、例外事由を適切に設定した上で、原則として被疑者取り調べの全過程について録音、録画を義務づけるという枠組みとされたわけでございます。
 その上で、この枠組みによって取り調べの録音、録画を義務づける対象事件については、例えば、裁判員制度対象事件に限定すべきという意見とか、それ以外の全ての身柄事件における検察官の取り調べも対象に含めるべきだという見解など、さまざまな意見が出されまして、幅広い観点から議論が行われた結果、制度の対象とならない事件についても検察等の運用による取り調べの録音、録画が行われることもあわせ考慮した上で、法律上の制度としては、録音、録画の必要性が最も高いと考えられる類型の事件である裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象とする、そして、制度の施行から一定期間経過後に必要な見直しを行う旨の規定を設けるというふうにされたところでございます。
 次に、幾つかの重要な論点について、私見を申し上げます。
 まず、本法律案の取り調べの録音、録画制度に対しては、対象事件の範囲が狭いのではないかという意見がございました。
 取り調べの録音、録画の有用性だけに着目すれば、確かに、広い範囲の事件で義務化をすべきことになろうというふうに思われます。しかし、取り調べの録音、録画には、被疑者の心理に影響を与え、十分な供述が得られなくなる場合があるという問題点もございます。
 犯罪が発生した場合には、犯人と証拠を発見、収集し、裁判の手続を経て、証拠によって認定された事実に刑罰法令を適用して事案を解決し、犯罪によって乱された社会の秩序それから安全を回復しなければなりません。個人の基本的人権を尊重しながらも、事案の真相を解明し、刑事事件を適正に処理、解決することが重要であることは言うまでもありません。
 取り調べの録音、録画制度は、我が国で初めて導入する制度であり、取り調べや捜査に影響を及ぼして真相解明を損なうことも懸念されるところからすると、やはり、早急に過ぎることなく慎重に対応し、必要性が最も高い類型の事件を義務化の対象とするというのは、十分に合理的な考え方であると思われます。現実には、自白の任意性が争われる事件は少なく、幅広い範囲の事件で一律の義務化をすることは、費用対効果の観点からの疑問もございます。
 また、検察は、運用による取り調べの録音、録画を相当に拡大する方針を明らかにしております。近時の公判実務においては、取り調べ状況の立証のためのベストエビデンス、最良証拠、これは取り調べの録音、録画記録であると考えられるようになってきておりまして、必要な録音、録画がされていない場合には、検察官はそのような最良証拠を公判に提出できず、大きな立証上のリスクを負うことになるため、運用による録音、録画は相当に幅広い範囲で行われることになると思います。
 さらに、裁判員制度対象事件、検察官独自捜査事件は、それぞれ、警察捜査、検察捜査のいわば顔とも言える重要な事件でございます。そのような事件で義務化をする意味は大きく、取り調べの手法や捜査官の意識の変化などを通じ、他の事件への波及効果も小さくないというふうに考えます。
 以上のような事情も含めて考えますと、法律で定める取り調べの録音、録画制度としては、裁判員制度対象事件及び検察官独自捜査事件を対象として導入し、その後、制度の運用をよく検証してみて、必要があれば見直しをするというのが、最も現実的で着実な方法であるというふうに考えます。特別部会においても、このような結論において意見の一致を見たところでございます。
 次に、取り調べの録音、録画の例外事由について、これを設けるべきではないという御意見や、捜査機関が例外事由を恣意的に運用するのではないかという御指摘もございました。
 取り調べによる供述の獲得を重視する余り、違法、不当な取り調べによって虚偽の自白を得るということは、決してあってはならないことです。しかしながら、取り調べ自体が否定されるべきものではなく、適正な手続に基づく取り調べは、引き続き、刑事訴訟法の目的である事案の真相の解明のために必要であるということを改めて確認しておきたいと思います。
 証拠収集における取り調べの比重を下げるとしても、犯罪事実やその背景を含めた事案の全容を客観証拠だけで解明するということは非現実的であり、取り調べはなお一定の重要な役割を担うことから、録音、録画義務の例外事由は、適正な取り調べによって事案の解明ができるようにするため、過不足なく定める必要があります。
 特別部会においては、例外事由についても、真に必要な例外が確保されるものとなっているか、不必要に広い例外を認めるものとなっていないかという両方の観点から詳細な検討が行われました。もとより、初めて導入する制度であり、実際の運用を注視していく必要はありますが、現時点で考えられる範囲で適切な例外事由が定められていると思っております。
 そして、例外事由の運用については、捜査機関が例外事由に当たると判断して録音、録画を実施しなかった場合に、公判で例外事由の存否が問題となったときは、裁判所による審査の対象となり、捜査機関側の責任で例外事由を的確に立証する必要があります。
 また、例外事由に該当する場合であっても、法的効果としては、取り調べの録音、録画義務が解除されるだけであり、検察官が自白の任意性の立証責任を果たさなければならないことに何ら変わりはありませんので、捜査機関としては、必要な録音、録画を実施しないということは、取り調べ状況の立証のための最良証拠をあえて放棄するということにほかなりません。
 したがいまして、この両方の面から見て、例外事由について捜査機関が恣意的に判断することはできない仕組みになっているものと考えております。
 以上、取り調べの録音、録画について私見を述べさせていただきました。
 この録音、録画制度が今回の改正案の大きな柱であることは間違いありませんが、そもそも今回の法案の大きな狙いは、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存しているという状況を改めるものだということでございますので、そういう観点から考えますと、取り調べの録音、録画制度の導入のみならず、捜査、公判のさまざまな点にわたる幅広い改正が必要になると考えられます。
 例えば、組織的な犯罪において背後の首謀者等を適切に処罰するためには、犯罪組織内部におけるやりとりを明らかにしなければなりません。そのためには、取り調べに頼らない捜査手法として、例えば、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度、それから、客観的な証拠収集方法である通信傍受の合理化、効率化というものは、取り調べに頼る場面を減らすという観点から大きな意義を有するものだというふうに思います。
 同時に、捜査段階において無理な取り調べが行われないようにするという観点からは、被疑者国選弁護制度の拡充も重要でございます。さらには、公判審理の充実化を図るという観点からは、証拠開示制度の拡充とか犯罪被害者等、証人を保護するための措置なども同様に重要でございます。
 本法律案は、こうしたさまざまな改正項目が盛り込まれており、いずれもが、取り調べ及び供述調書に過度に依存しているという我が国の刑事司法の現状を改め、時代に即した新たな刑事司法制度を構築するという観点から極めて重要な意義を有するものでありまして、その実現は喫緊の課題であると考えます。
 この点を改めて申し上げまして、私の意見陳述を終わりたいと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。拍手
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奥野信亮#3
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、内山参考人にお願いいたします。
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内山新吾#4
○内山参考人 皆さん、おはようございます。日本弁護士連合会副会長の内山新吾と申します。
 私は、この四月に副会長に就任しまして、日弁連内の可視化実現本部の担当をしております。
 私からは、主に、取り調べ可視化を求める日弁連の見解と取り組みを紹介し、本日のテーマに対する意見の陳述とさせていただきます。
 日弁連は、このたびの刑事訴訟法等の一部を改正する法律案につきましては、国会での充実した審議の上、国会の総意で早期に成立することを強く希望しています。それは、このたびの法改正により、対象事件が限定されているとはいえ、取り調べの全過程の録音、録画、すなわち可視化を法的に義務づけるなど、貴重な前進面が見られるからです。
 法案には、このほか、通信の秘密や個人のプライバシー侵害のおそれのある通信傍受の拡大、それから引き込みの危険性が指摘されている捜査・公判協力型協議・合意制度なども盛り込まれているところで、この点については留意する必要がありますが、日弁連は、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会での議論の経緯なども踏まえて、本法案は全体として日弁連の目指す刑事司法改革を一歩前進させるものと評価し、成立を求めているものです。
 さて、今から三十年ほど前になりますが、著名な刑事法学者である故平野龍一さんがその著書の中で、我が国の刑事裁判はかなり絶望的であるというふうに評されました。これは主に、過度に供述調書に依存した捜査、裁判のことを指しています。
 この絶望的な状況を打破し、刑事司法を改革するため、日弁連は、主に捜査段階に光を当てることにしました。率直なところ、弁護士の活動も、起訴され公判になってからの弁護が中心であって、捜査段階、逮捕、勾留段階での弁護は手薄なところがありました。特別な事件は除いて、広く一般の事件で、捜査弁護の充実というのは必ずしも図られていませんでした。
 そういった反省も込めて、その時点で、日弁連は、全国で当番弁護士を展開しました。この当番弁護士制度は、その後、被疑者国選弁護制度の段階的な法制化ということで結実しました。さらに、法曹三者が協力をして新たに裁判員制度を実現し、その中で、一定の範囲ですが、証拠開示制度を法制化し、調書中心の裁判から、直接主義、口頭主義の実現へとつなげてきたという経緯があります。
 このような刑事司法改革の流れの中で、日弁連は、取り調べの可視化を次の最重点の課題と位置づけました。密室での取り調べ、そこでつくられる供述調書が冤罪を生むんだ、冤罪防止のためにはまずそのブラックボックスをなくすことが不可欠だというのが、現場で刑事弁護を闘う弁護士の共通の認識でした。これは、数多くの冤罪事件の教訓でもあります。日弁連は、身体拘束の有無を問わず、全事件、全過程の可視化の実現を方針として掲げることにしました。
 こうした中、先ほど説明もありましたとおり、二〇一〇年に一連のいわゆる検察不祥事が発生しました。これをきっかけに、同じ年に検察の在り方検討会議が発足し、翌年、提言が出されました。その中で、「取調べ及び供述調書に過度に依存した捜査・公判の在り方を抜本的に見直し、制度としての取調べの可視化を含む新たな刑事司法制度を構築する」との方向性が示されました。
 これを受けて、二〇一一年に、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会が設置されました。この部会には、御承知のとおり、日弁連を含む法曹関係者や研究者、専門家だけではなく、国民を代表する各界の有識者の方々が広く委員として加わりました。
 この特別部会の審議を通して、日弁連は、新たな刑事司法制度においては、捜査機関に対し、取り調べ全過程の録音、録画を義務づける制度を導入すべきだということを主張しました。それはまず、違法、不当な取り調べを防止するとともに、被取り調べ者の権利を確保し、また、取り調べを通じて内容虚偽の供述調書が作成されることを防止する、そして取り調べ状況及び供述の経過を客観的に検証できるようにする必要があるからです。
 さらに、日弁連は、これに関して次のような立場をとりました。
 捜査機関による裁量的な録画、録音は、可視化本来の目的からいうと極めて不十分、問題がある。内容虚偽の供述証拠について、あたかも適正に収集されたかのような外観を作出する、そういう危険性すらある。取り調べの録音、録画は、やはり全過程について義務づけるものでなければならない。また、可視化については、被疑者本人以外の者についても、やはり不適正な取り調べによって被疑者を罪に陥れる内容虚偽の供述調書が作成されてきたこと、これは、例えば厚生労働省元局長事件でも明らかだ。参考人調べの名目による全過程録画、録音の潜脱を防止するためにも、録音、録画の対象を被疑者取り調べに限定するのは相当ではない。
 そして、このような可視化は一部の事件に限られるものではないし、被取り調べ者が身体拘束されている事件に限られるものでもない。捜査機関は、被疑者その他の関係者の取り調べを行うときは、その状況を全て録画、録音しなければいけないのであって、その義務に違反して収集した証拠は、証拠能力が本来否定されるべきものだ。
 そういう見解を日弁連は述べました。
 この特別部会で、可視化をめぐって、主に捜査機関の側からは、当然のことながら消極的な意見が出され、結果的には、残念ながら、日弁連の意見が丸ごと反映されるということにはなりませんでしたが、最終的には、昨年の七月、全会一致の形で刑事司法改革に向けた意見の取りまとめがされるに至りました。
 この特別部会の取りまとめをもとにつくられた本法案では、可視化の対象事件は裁判員対象事件と検察独自捜査事件とされています。これは、私たち日弁連が求めるところと大きな隔たりがあります。しかし、この点は、私たちは、不十分ながら全件可視化に向けての貴重な一歩を踏み出したものというふうに評価しています。
 そういうふうに評価できる事情を幾つか指摘します。
 一つは、これは義務づけというわけではありません、裁量的なものですが、最高検がこの特別部会の動きに呼応する形で、昨年六月十六日に、「取調べの録音・録画の実施等について」という依命通知を発したことです。これにより、それまで試行されてきた四類型の事件、裁判員制度対象事件、知的障害によりコミュニケーション能力に問題がある被疑者等の事件、精神の障害等により責任能力に減退、喪失が疑われる被疑者等、そして検察独自捜査対象事件、この四類型ですが、これについて本格実施されるということになりました。
 あわせて、この本格実施とは別に、公判請求が見込まれる身柄事件であって、事案の内容や証拠関係等に照らし被疑者の供述が立証上重要であるもの、証拠関係や供述状況等に照らし被疑者の取り調べ状況をめぐって争いが生じる可能性があるものなど、被疑者の取り調べを録音、録画することが必要であると考えられる場合、その事件についても可視化の試行の対象になりましたし、被害者、参考人の取り調べについても、その必要性が認められる場合に試行の対象になる、そういう動きがありました。
 これは確かに捜査機関の裁量によるものですけれども、私たち弁護人からの働きかけによって、これを大いに活用できるというものでもあります。
 第二に、この特別部会、法制審の動きの中で、最終的に法制審が取りまとめた調査審議の結果の附帯事項があります。この中では、このたび法制化の対象とならない事件についても、「実務上の運用において、可能な限り、幅広い範囲で録音・録画がなされ、かつ、その記録媒体によって供述の任意性・信用性が明らかにされていくことを強く期待する。」ということが記されています。この点については、警察、検察も承認しているところであります。
 また、特別部会の審議の中では、裁判官出身の委員から貴重な指摘がありました。それは、「任意性立証のために最も適した証拠が取調べの録音・録画の記録媒体である」という指摘です。あわせて、この裁判官委員は、「録音・録画媒体がない場合には、その取調べで得られた供述の証拠能力に関し、証拠調べを請求する側に現在よりも重い立証上の責任が負わされるという運用に恐らくなっていくのだろう」という見解を示しています。そして、「録音・録画義務が課されない事件についても、被疑者の供述が鍵となる事件においては、リスクの意味合いという意味では同様のことが言える」というふうに述べておられます。こうした捉え方に基づく裁判所の今後の運用が期待されるところです。
 さらに、日弁連は、先ほども紹介しましたが、被疑者国選弁護制度の全面的な実施を目標に掲げてきました。これも、最初はごく限られた対象事件にしか実現しませんでしたが、その後、段階的に拡大させてきたというふうな実績があります。
 こうしたことから、私たち日弁連は、このたびの立法の出発点においては、不十分なところ、限定された点があるとしても、さきに紹介した、捜査機関側の運用をてこに拡大していく、または裁判実務を変えていくという取り組みの中で、そうした現場の弁護実践の中で、可視化の運用範囲、その実例を拡大し、将来の対象事件の拡大、次の段階の法制化につなげていくことが可能だというふうに考えています。
 日弁連は、全国の会員に呼びかけて、あらゆる事件での可視化申し入れの取り組みを進めるようにしています。また、可視化に対応できるように、捜査段階、公判段階における弁護活動の質の向上を図ることに努めています。全国から、実際に可視化された事例がどうなったのか、可視化されなかった事例がどうなったのか、そういう事例の集積をし、そこでの成果や問題点をしっかり分析、検討し、その成果を広く会員に発信したいというふうに考えています。こうした弁護実践を積み重ねていくことにより、可視化されていなかった取り調べの供述調書の証拠価値は認めない、証拠として認めないという裁判所の判断を定着させ、録音、録画の対象事件は拡大せざるを得ない、そういう状況を私たちはつくり出していきたいと考えています。
 繰り返しになりますが、日弁連は、身体拘束されていない被疑者や参考人も含めて、全面的な可視化の実現を目指して活動しています。本法案のように始まりは小さな範囲であっても、現場での取り組みによって必然的に可視化を拡大させていくということは可能だと確信しています。取り調べの全過程の可視化を法制度上義務づけるということは、それによって、可視化されない事件との違いがくっきりと明確になってくるという面があります。可視化されない事件の問題点がいわば可視化されてくるという効果があると思います。
 可視化の実現は、密室での取り調べに依存した日本の刑事司法のあり方を根本から変えていく突破口になります。刑事弁護の現場で被疑者、被告人の人権のために苦闘する弁護士の集団である日弁連がこのたびの法案の成立を望む理由は、今述べたところにあります。
 改めて、日弁連として、全事件、全過程の可視化実現の貴重な一歩を踏み出すために本法案の成立を求めるということを申し上げて、私の意見陳述を終わります。
 どうもありがとうございました。拍手
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奥野信亮#5
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、周防参考人にお願いいたします。
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周防正行#6
○周防参考人 おはようございます。
 映画監督をしていて、まさかこういう場所でこういうふうにお話しさせていただくことになるとは想像もしていませんでした。人生おもしろいものです。
 私は、法制審議会新時代の刑事司法制度特別部会で委員を務めさせていただきました映画監督の周防です。改めて、よろしくお願いいたします。
 私が特別部会の委員に選ばれた理由の一つは、刑事裁判についての映画「それでもボクはやってない」というものを制作したことにあると思います。
 しかし、映画監督としてというよりは、一市民として現状の刑事司法に疑問を持ち、それから三年半の取材を通して明らかになった事実をもとに脚本を書き、監督をしました。映画監督として映画をつくったというより、本当に一市民として疑問に思ったことを映画を通して多くの人に知ってもらいたい、そういう形の映画で、そういう映画をつくることになるとも実は考えたこともありませんでした。
 その映画づくりの中で、現状の刑事司法について本当にたくさんの疑問を抱きました。本日の論点は取り調べの録音、録画にあるというふうにお伺いしていますので、そのたくさんの疑問の一つであった密室での取り調べについて、きょうは、私の考えを述べさせていただきます。
 密室での取り調べ官と被疑者のやりとりが、取り調べ官の作文によって被疑者の一人称独白体となる、まず、そういった調書のあり方というものに本当に驚きました。こういうものが裁判で、私は痴漢事件の傍聴というのをよくやったんですが、調書に書かれている一字一句が争いになるんですね。しかし、その一字一句は、既にして取り調べ官が恣意的につくり上げた作文の中の一字一句です。確かに、被疑者、被告人がその調書にサインをしているという外形的な事実はありますが、その言葉自体が本当にその取り調べ室で語られたかどうかは誰にもわかりません。
 長期勾留の中で続けられる糾問的取り調べ、その取り調べで得た被疑者の言葉を取り調べ官の思惑によってまとめた調書が判決の決め手になってしまう。これを調書裁判というんだ、取材の初期の段階でこういう事実を知り、本当に驚きました。この調書裁判が数多くの冤罪を生んできたことは誰も否定できない事実だと思います。
 そもそも、新時代の刑事司法制度特別部会は、郵便不正事件で明らかになった検察官の不祥事がもとで発足した検察の在り方検討会議の提言を受けて設けられたものです。先ほどからの参考人の御発言にもありましたように、繰り返しになりますが、その提言とは、取り調べ及び供述調書に過度に依存した捜査、公判のあり方を抜本的に見直して、制度としての取り調べ可視化を含む新たな刑事司法制度を構築するための検討を直ちに開始せよというものでした。
 しかし、問題があったのは郵便不正事件だけではありません。例えば、冤罪であることが明らかとなった、これは最近のことですが、氷見事件、足利事件、布川事件、東電OL殺人事件。そして、いまだなぜか争いが続く袴田事件、この経緯を見ていると、検察は今までの自分たちのやり方を反省してきたのかどうか、反省しているのかどうか、本当に疑わしいと思いますが、いまだ争いが続いています。さらには、PC遠隔操作事件で誤認逮捕された四人のうち二人が虚偽自白をするということもありました。そして、ことしの五月には、志布志事件の捜査の違法性が裁判で明らかとなっています。
 実は、こういった社会の注目を大きく集める事件だけではなく、痴漢事件などのいわゆる軽微な事件と言われるようなものの中でも、取り調べの違法性は強く指摘されています。例えば、軽微な事件では、取り調べ官が、認めれば出してやる、否認するなら勾留を続ける、そういった利益誘導ともおどしともとれるような、取り調べに名をかりたそういった不適切な行為が行われているといった指摘は多々あります。そういったことを考えると、潜在的な冤罪の数はかなり多いというふうに思います。
 以上のことから、率直に申し上げまして、私は、特別部会のテーマは冤罪を起こさないための司法制度改革にあると思い、会議に参加しておりました。
 その冤罪防止策の一つとして、取り調べの録音、録画はとても有効な手段だと考えています。録音、録画することによって取り調べの適正化は進む、そういうふうに考えております。ですから、基本的に、全事件において取り調べの全過程を録音、録画すべきだ、そういうふうに考え、会議でもそのように意見を述べさせていただきました。
 ところが、警察も検察も、全事件、全過程の録音、録画についてはそもそも物理的に困難である、そういうふうに反対されておりました。直ちに全警察の取り調べ室に録音、録画設備を設けることは難しいし、検察官が全ての録音、録画記録に目を通すことは時間的に無理がある、そういう御意見でした。
 また、録音、録画することで取り調べの真相解明機能が損なわれるというふうにも主張されておりましたが、その意見は全く納得できるものではありません。そもそも密室での取り調べが冤罪を生んでいる事実があるんですから、密室での取り調べに真相解明機能があるなどとはとても言えません。
 結局、最後まで全事件、全過程の録音、録画に賛同を得ることはできず、御存じのように、非常に限られた事件を対象とする可視化法案となってしまいました。そのことは本当に残念に思っています。
 とはいえ、法案で録音、録画が義務化される事件以外の事件についても、検察庁の依命通知によって、運用として参考人も含めた上での広い範囲の録音、録画が検察取り調べで行われることが公に約束され、それが本部会で取りまとめた時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想の趣旨に沿うものであることが部会の席上で確認できましたので、今回の可視化法案は全事件、全過程での取り調べの録音、録画制度への第一歩になると考え、同意いたしました。
 ちなみに、時代に即した新たな刑事司法制度の基本構想の趣旨というのは、「刑事司法における事案の解明が不可欠であるとしても、そのための供述証拠の収集が適正な手続の下で行われるべきことは言うまでもない」とした上で、取り調べの録音、録画については、「公判審理の充実化を図る観点からも、公判廷に顕出される被疑者の捜査段階での供述が、適正な取調べを通じて収集された任意性・信用性のあるものであることが明らかになるような制度とする必要がある。」というものです。
 ちなみに、この録音、録画の三年後の見直し規定、附則の九条だったと思いますが、ここでもこの基本構想を踏まえて行われるということを約束していただきましたので、同意しました。当然、この基本構想を踏まえるならば、対象事件が縮小するなどということはあり得ず、拡大する方向への見直しが行われるものというふうに考えて同意したものです。
 ただ、懸念がないわけではありません。見直しも含め、例えば、依命通知による多くの事件における録音、録画が行われても、本当に心配なことはあります。
 特に、合意制度が導入された場合、共犯者とされる在宅被疑者の取り調べが可視化されなければ、村木さんが起訴された郵便不正事件と同じような構造の冤罪を生んでしまう危険があります。郵便不正事件では、厚生労働省の職員等が共犯者である在宅被疑者として検察官の取り調べを受け、検察官の見立てに沿った、事実に反する内容の供述調書が作成されました。その後、村木さんは起訴される一方で、在宅被疑者らは起訴を逃れました。
 今回導入されようとしている合意制度については、共犯者から、刑事責任の減免と引きかえに、検察官の見立てに沿った、事実に反する内容の供述が獲得され、それによって無実の人が起訴され、有罪とされる危険が増大することが懸念されます。
 したがって、郵便不正事件と同じような冤罪を生まないようにするためには、共犯者の取り調べ全過程の録音等の必要性があると思います。共犯者の初期供述から取り調べの全過程が録音等で記録されるようになれば、検察官の見立てに沿って無理に供述を変更させるような取り調べや取引を防止することができます。公判においては、取引や取り調べの前後の供述を比較することによって、供述の信用性等を適切に判断することができます。逆に言えば、取り調べ全過程の録音等もない共犯者の供述に基づいて裁判が行われるようなことになれば、郵便不正事件と同じような冤罪は防ぐことができないのではないでしょうか。
 検察は、依命通知によって、運用として参考人取り調べを含めた録音、録画をすると約束しましたが、共犯者が在宅被疑者として取り調べられる場合もこれに含まれるのかは明確になっていません。郵便不正事件の反省、合意制度への懸念を踏まえた上で、共犯者は、在宅被疑者として取り調べられる場合も、参考人の場合と同様に、運用による録音等の対象であることを明確にすべきであると考えています。
 そして、共犯者の取り調べは、不当な取引や取り調べを防止し、供述の信用性等を適切に判断するための必要性が高いことから、全過程の録音等を原則とすべきであると考えます。検察の見立てに合わない初期供述は記録せず、あたかも最初から検察の見立てどおりに供述していたかのように装うことは検察のあり方として不当であり、それでは冤罪を防ぐことはできません。検察は、郵便不正事件の反省を踏まえて生まれ変わったというのであれば、共犯者取り調べの全過程の録音等を実施すべきだと考えます。
 今までのような密室での取り調べをこれ以上続けることは許されません。早期に取り調べの録音、録画を実現することが真の刑事司法改革へつながる第一歩であると信じております。
 どうもありがとうございました。拍手
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奥野信亮#7
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、桜井参考人にお願いいたします。
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桜井昌司#8
○桜井参考人 皆さん、おはようございます。
 布川事件という冤罪を体験しました桜井昌司と申します。
 私は法制審議会の方に俺を呼べと何度も言っていたんですけれども、無視されまして、とうとう法律になってしまいましたけれども、きょうここにお招きいただきまして、感謝申し上げます。本当にありがとうございました。
 参考人として呼ばれることが確定して以来、私、冤罪の仲間たちと何度も話しました。こんな法律、どうしよう、誰一人として賛成しないんですね。俺たちが入っていないのにどうするんだよと志布志の仲間は言っていますね。痴漢冤罪が入っていないじゃないかと言うんですよ。冤罪の苦しみは、強盗殺人だけが苦しいわけじゃないですからね。痴漢冤罪も同じように生活が暴かれて、苦しいんですよね。俺たち無視されて、どうするんだと怒っているんですよね。
 それに、最も核心的なことは、私たちは、警察と検察は信用できないものだと体験として知っているから、このような中途半端な法律でいいと思えないんですよ。
 話をした仲間に、大阪地裁所長襲撃事件と呼ばれるものがあります。お定まりのとおりに、不良少年が逮捕されまして、最終的には、三人の少年と二人の成人が起訴されて、裁判になりました。少年の一人が彼女にメールをしていまして、そのメールを彼女がたまたま保存していたらしいんですね。それが調べの中で明らかになって、アリバイが成立して、おかげさまで無罪になりました。
 私、国賠裁判を傍聴に行ったんですよ。捜査責任者の福積さんという方が証言に来ました。そうしたら、この方が、私は今でも犯人と確信していますと言うんですよね。さすがに弁護士があきれまして、この少年たちはアリバイが成立して無罪になったんですよと言ったら、何と言うかと思ったら、私はそんなアリバイを認めませんと言うんですよ。では、あなたはこの少年たちをなぜ犯人と思うんですかと言ったら、裁判所の逮捕状がありますと言うんですね。その裁判所がアリバイを認めたんです。私はそんなのを信じませんという方が今でも現職の大阪の警察官をやっておられるんですね。
 私はこういう警察官について悪党警察と言いますけれども、こんな警察を信用できるんでしょうか。検察も同じですね。残念ながら、検察が反省したなんていう反省会見をした大林さん、断腸の思いとやめましたけれども、多分、自分がおやめになるのが断腸だったんじゃないんでしょうかね、あのときは。何も反省していないじゃないですか。
 私は、死刑、無期事件では、戦後七件目の再審無罪事件になったんですけれども、今でも検察庁そして法務省は、桜井昌司と杉山卓男を犯人だと断言していますね。たまたま、自白という判断が難しい部分が裁判所で左右されたにすぎないんだ、桜井と杉山は犯人だ、何も変わらないと公言しているんですね。
 それはそれで、私は何を言われても構いません、いいですけれども、袴田事件は、昨年三月、裁判所が証拠の捏造を指摘して、しかも、これ以上拘置することは耐えがたいほど正義に反するという決定を出しているのに、いまだに検察庁は新聞記者に、袴田巌を死刑台に連れ戻すと言っているそうですね。腐っていますよね、人間が。こんな人たちのどこを信用できるんでしょうか。
 私たちは、それぞれ違う理由で冤罪で捕らわれて、犯人にされていったんですけれども、最初に冤罪をつくるのは警察なんですよね。私は、長く刑務所にいまして、仲間ですからいろいろな犯罪者と仲よくしてきましたけれども、反省しない人は再犯するんですよ。反省して、自分はこの犯罪をやってしまって悪かったと思う人は再犯しませんけれども、警察も検察も何も反省しないのに、冤罪をつくらないなんてあり得ないじゃないですか。
 例外規定というのがたくさんありますよね。何か、司法関係者は、すごく善意の方がいっぱいいらして、これで大丈夫だとおっしゃっていますけれども、機械の故障というのは何なんですかね。何か、真面目に議論していると思えないんですよ。
 記録したらば十分供述が得られないときというのは、どういう状態なんでしょうか。要するに、やったと言わせられないときじゃないんですか。やったと言わせられないときは録画をとめて何をやるんでしょうか。昔と同じように、殴ったり蹴ったりしたり、おどしたりするんじゃないんですかね。それをやらないという保証はどこにあるんでしょうか。
 こんな中途半端といいますか、信用できない、抜け道を用意しておいて可視化して、それが冤罪を防ぐ手段だなんて、私は到底思えないんですよ。この委員会でも何か、井出先生でしたか、御質問された方がいらっしゃると思うんですけれども。
 そもそも、冤罪をつくっているのは警察と検察ですよね。その警察と検察がなぜ、今まで過度に調書、取り調べに依存したところがあってまずいということで法律を改正する審議会の委員になるんですか。不思議でしようがないんですよ。泥棒に鍵を与えるとまでは言いませんけれども、そもそも冤罪をつくった人たちが審議会に来て、新しい法律なんかできるんですか。できっこないじゃないですか。だから、こんな中途半端な法律になったと私は思うんですよね。
 足利事件の菅家さんはこう言いましたね。俺が自白しちゃったのは逮捕される前だったんだよ、おっかなくてさと言っていましたよね。
 柳原浩は、きのうもちょっと電話で話をしたんですけれども、彼の国賠裁判を傍聴に行きまして、国や県が何を言ったかというと、自白した柳原浩が悪いと言うんですよ。そもそも柳原は自分で進んで自白して刑務所に行ったんじゃないか、俺たちには責任がないと言うんですね。柳原さんは、真犯人が出まして、無実であることがはっきりしました。真犯人が出た事件で、その方が刑務所に行ってまでやったと認めた痛みというのがわからないんですかね、検察官も警察官も。それは三年ぐらいの大した事件じゃないかもしれないんですけれども、彼は本当に刑務所の中にいても怖くて、やっていないと言えなかったんですよ。その人に対して国や県は、やったと言ったおまえが悪いんだ、自分から進んで刑務所に行ったんじゃないかと。この言いぐさは何なんだというんですよね。
 こんな警察や検察をそのまま許しておいて、例外事項をつくって、果たして冤罪が防げるのか、そんな一部可視化で。私は、絶対あり得ないと思いますね。そもそも、こういう柳原さんのような事件も可視化にならない、あるいは菅家さんのケースも可視化にならない。参考人で調べられる状況を警察は可視化しないじゃないですか。これで冤罪なんか防げませんよ。
 どなたが言ったか忘れましたけれども、今、ICレコーダーというのは三千円か四千円であるじゃないですか。本当に真剣に冤罪を反省して、非道な調べをしないという思いがあるんだったら、全警察官に持たせればいいじゃないですか。先ほども、何かリスクが、可視化すると認めなくなるとかあるいは弊害があるとおっしゃった方もいますし、何か警察もそう言っているそうですけれども、弊害というのは何なんでしょうか。私はそれも理解できないんですよ。
 そもそも公務員ですよね、警察官の方も。公務員が自分の仕事を録画されるというのになぜ反対するんでしょうか。我々一般人は、通行していても、常に監視されているじゃないですか。今、何か事件があるときに、警察の取り調べというのは街頭カメラがなかったら成り立たない状況じゃないですか。我々を丸裸にしておいて、自分たちは可視化されるのは嫌だなんて、こんなのはあり得ませんよ、大体。もしもそれで嫌だったら、そういう方は警察官をおやめになればいいだけだと思うんですね。それでもいいという方に警察官になっていただけばいいじゃないですか。
 日本の治安は警察が守っているなんとおっしゃっているけれども、私はそう思っていません。今、犯罪検挙率というのは何%なんでしょうか。百件犯罪があったら、三十数%ですね。それは野球だったら非常に優秀な選手でしょうけれども、犯罪でたかだか三十何%しか逮捕できない警察が、我々が治安を守っているとどこから言えるんでしょうかね。
 日本の治安なんというのは、日本人の規範性、規律性が守っているんですよ。もしあした全国各県で警察を廃止してALSOKやセコムにしたって、治安は変わらないと思いますね。確信しています。
 本当に真面目な警察官、司法試験に合格して正義の検察官になろうという人たちはきっと同じ思いだと私は思うんですよ。本当に小さな冤罪事件も全て含めて、冤罪がなくなるような可視化にしていただきたいと思います。可視化についての議論はそういう思いです。
 あと、証拠開示の問題ですけれども、なぜ証拠物が検察の独占物なんでしょうか。信じられません。法曹界の常識が信じられません。国民の税金で集めた、我々の税金で集めた証拠が検察官の独占物で、開示する法的根拠がないなんておっしゃいますよね。開示しなくていいという根拠はあるんでしょうか、法律が。ないはずなんですよ。運用として検察官の独占物だとやっているだけじゃないですか。
 氷見事件では真っ黒な証拠しか出てこないんですよね、真面目に対応しません。今、私は国賠裁判をやっていますけれども、私の国賠でも同じですね。
 やはり、冤罪を防ぐには、検察官が見られた証拠というのは、当然、法曹三者である弁護人も見られるべきだと私は確信を持っています。ですから、証拠開示については、リストなんかでは不十分ですね。何が書いてあるかもわからないリストで果たして正しい運用ができるか、私たちは疑問に思っています。これは反対します。
 もう一つ、盗聴法なんて論外ですね。
 共産党の国際部長だった緒方さん宅盗聴で、神奈川県警は個人的な犯罪なんて言いましたけれども、そんなはずないじゃないですか、誰が考えたって。そんな子供だましを言っていたらだめですよ、うそを言っちゃ。共産党だからいいんでしょうか。何か、公明党のどなたかが、秘密のことをささやかれたとありましたよね、先生。たしかあったはずなんですよ。
 私、刑務所の中で、面会はのぞかれ、手紙は見られという本当に嫌な思いを味わったんですよ。真面目に警察がやってくれるのならいいですけれども、本当に不届きな人がいて、自由に盗聴できるようになったら怖いですね。しかも、可視化はたかだか数%なのに、窃盗を含めて膨大な量の盗聴を立会人なしでやるなんて気持ち悪いですね。こんな気持ち悪い社会を、皆さん、許せるんでしょうか。
 あと、最後にもう一つは、司法取引。私は密告取引法と言っていますけれども。
 今までも冤罪事件はたくさんありました。他人の犯罪を申し立てて自分が助かるということがたくさんありましたね。
 西松建設事件というのはどうなったんでしょうか。あれは小沢さんを狙い撃ちした冤罪じゃないんですかね。つい先日の美濃加茂市の市長事件はどうだったんでしょうか。
 もし検察あるいは警察がどなたかを狙い撃ちして、こいつの足を引っ張るよとやったら、誰でもできるんですよ。これは、先生方は恐怖を感じないんですかね。若狭先生あたりは大丈夫かもしれません、自分が検察官だったし、もしくは問題ないかもしれないですけれども。誰だってやられるじゃないですか。これは本当に、こういうものを何の怖さも感じずに平然と皆さんが立法を許すとしたら、本当に、私、信じられないような思いでいっぱいです。
 余り時間がないので、最後にちょっと一つ申し上げますけれども、一九八〇年代に死刑四事件が再審で無罪になりました。検察官合同と称する首脳会議で、検察官は反省したそうですね。死刑四事件がなぜ無罪になったんだ、証拠を出し過ぎちゃったという議論をしたんだそうです。信じられませんよね。そういう議論をした人はもう全部退官していますけれども、何か、一遍死刑囚にしてやりたいですね、どんな痛みを感じるか。
 カナダでは、あのマーシャル事件という冤罪をきっかけに、マーシャル法というのができました。なぜ冤罪が起きたんだということで、できましたよね。日本では、死刑四事件があっても、足利事件があっても、布川事件があっても、そして東電OL殺人事件があっても、何で何の究明委員会もできないんでしょうか。それが不思議でしようがないんですよ。これは本当に、私、国会議員の皆さんの責任じゃないかと思うんですよね。
 ぜひ本当に冤罪の痛みを御自身の痛みと感じて、それは公共の福祉も大事かもしれないですけれども、やはり本当に一人の痛みに同調して、冤罪のない社会、そして冤罪の苦しみに悩む人がいない法律にしていただくために、ぜひ真剣に考えていただきたいと本当に冤罪者一同は思っています。
 そして、このような中途半端な可視化や証拠リスト開示を含む法案は絶対通していただきたくないと思いますので、ぜひぜひ深く検討していただいた上で決議していただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 きょうはありがとうございました。拍手
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奥野信亮#9
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、加藤参考人にお願いいたします。
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加藤健次#10
○加藤参考人 ただいま紹介されました、弁護士の加藤と申します。
 私は弁護士ですから、もちろん日本弁護士連合会の一員ではありますが、きょうは、今回の一括法案に反対する立場から意見を述べさせていただきます。
 私は、弁護士をして二十七年になるんですが、特に刑事事件を専門としているわけではありません。ただ、いわゆる痴漢冤罪事件を何件か担当し、幸い、うち二件については、最終的には無罪をとることができました。また、例えば、国家公務員が休日に共産党の機関紙をまいたというだけで犯罪にされる、そういう国家公務員法事件を約十年間担当して、やっと最高裁で無罪を確定することができました。どちらかというと、裁判員裁判とはちょっと違うところでの刑事裁判で苦闘してきた、そういう経歴がございます。
 また、私は、自由法曹団という全国約二千名の弁護士で構成している団体の常任幹事も務めておりまして、委員の皆さんのお手元には、今回の法制審答申や法案について批判する意見書を配付させていただいているところであります。
 このような経験を踏まえまして、今回の法案についての意見を述べさせていただきます。
 最初に申し上げたいのは、まず、今回の刑事司法改革の原点といいますか、目的であります。参考人がるる申し上げているとおり、今回の刑事司法改革の出発点は、相次ぐ冤罪に対する反省に立って冤罪を防止する、そういう刑事司法に改めていく、そういうことにあったことは明らかです。
 先ほど来引用されております検察の在り方検討会議の提言では、「不当な誘導等を防止し、取調べ及び供述調書に過度に依存した現在の捜査・公判実務を根本から改める」、あるいは「虚偽の自白によるえん罪を防止し、被疑者の人権を保障する観点から見ると、被疑者の取調べの録音・録画が有効であり、その範囲を積極的に拡大していくべきである」ということが明瞭に書かれております。
 しかしながら、今回の法案の提案理由説明あるいは衆議院本会議での趣旨説明を見ましても、この検討会議の提言で明記されている、冤罪の防止ですとか、あるいは違法、不当な取り調べの抑止、そういった目的が明瞭に述べられておりません。この点は非常に残念です。特にこの点は、法案全体の骨格、それから位置づけにかかわる重要な問題ですので、決して曖昧にすることなく、この委員会、そして国会で議論をいただきたいというふうに思っております。
 それから、冤罪の防止という観点ですけれども、冤罪というのは、いろいろな事件の中でたまたま起こったというものではないと考えております。やはり、冤罪を生み出す構造がある。その点からすれば、この捜査構造というのは、代用監獄という警察の管理下にある留置場で長期間の身柄拘束がされる、そして、その密室の中で取り調べがされるという中で虚偽の自白が生まれる、これが構造的な問題です。この構造が、憲法三十八条が保障する黙秘権を侵害し、虚偽の自白を生み出してきた、これは明らかだと思います。
 今議論されている取り調べ過程の全面可視化は、誘導やおどしによる捜査機関の違法な取り調べを抑止し、被疑者の黙秘権を保障するための最低限の措置です。したがって、さらに進んで、捜査段階における身柄拘束自体のあり方の問題、あるいは弁護人の立ち会い権、取り調べに対する拒否権など、この捜査構造全体の抜本的改革に議論が進むべき問題でした。
 しかし、この間の法制審議会の議論では、このような本質的な議論については、議論をする前に封殺されてしまったと言わざるを得ないところが非常に残念であります。
 ここで強調しておきたいのは、身柄拘束というものが被疑者や被告人に対して深刻な影響を与えるということです。これは、事件の大小を問いません。
 先ほど申しました痴漢冤罪の例でいいましても、一人は、保釈されるまで百六日間身柄を拘束され続けました。もう一人は、二十八日間身柄を拘束されました。普通の社会人にとって、二、三日でも、あるいは十日間身柄を拘束されてしまえば、裁判で有罪、無罪が出る、その結論に関係なく、社会的な存在を抹殺されるに等しいような不利益を受けます。何年もかけて最終的に無罪を得たとしても、その間に失った多くのものを取り戻すことはできません。私が担当した痴漢冤罪の被害者も、最終的に無罪をとりましたが、さまざまな不利益をこうむり、その傷はまだ癒えておりません。
 そして、そのような身柄拘束の不利益をわかっていればこそ、心ならずも、早く釈放されたいがために、やってもいない事件を認めて早く出してもらう、こういうこともよく見られるところであります。まず議論の出発点として、この点をぜひ御認識いただきたいというふうに思います。
 こうした構造の中で、弁護人の立ち会いもなく、また長時間の取り調べがされれば、誘導やおどしによって虚偽の自白が生まれてしまう、これが構造的な危険です。この構造的な危険を改革しなければ実効性のある冤罪の防止にはつながらないというふうに思います。
 もう一言つけ加えさせていただければ、特に痴漢冤罪事件では、被疑者に対する取り調べもそうですけれども、被害者の供述が大きく変遷したり、あるいは変わっていくということがあります。これは取り調べの中で思い込みがさらに固められるとか、あるいは捜査官の誘導によって実際には体験していない事実が詳細に語られるということは、私が担当した事件の調書でも見られるところです。そういう意味では、やはりこの供述調書自体がそういう危険を含んでいるということもぜひ御認識をいただきたいというふうに思います。
 法制審の特別部会の議論をやっているさなかの昨年三月二十七日に、静岡地裁で袴田事件第二次再審についての再審開始決定が出されました。
 詳しくは申しませんが、この決定は、長期間の身柄拘束下での取り調べによる自白の強要、そういう捜査の仕方、あるいは捜査機関が証拠を隠蔽、捏造したことを厳しく指摘しています。この決定の指摘した中身を真摯に受けとめれば、取り調べ過程の全面可視化と、そして検察官の手持ち証拠の全面開示、これは待ったなしに実現すべき課題であることは明らかではないでしょうか。
 しかしながら、法制審議会では、この袴田再審開始決定についてまともに議論された形跡すらありません。そればかりか、検察官は、この再審開始決定に対して即時抗告を行いました。いまだに袴田さんの再審公判すら開始されておりません。このような捜査機関の無反省な態度をそのままにして刑事司法改革を論じること自体、果たして許されることかどうか、お考えいただきたいというふうに思います。
 次に、今回の法案の中身の一つである取り調べ過程の可視化の問題について意見を申し上げます。
 今まで申し上げました冤罪の防止、特に違法、不当な取り調べの抑止、そして被疑者、被告人の黙秘権の実質的保障、そういう目的、観点からすれば、取り調べ過程の録音、録画を一部の事件に限定する理由はありません。当然、全ての事件に適用されるべきです。
 しかしながら、今回の法案では、るる指摘されているとおり、その対象事件は裁判員対象事件と検察官の独自捜査事件という、全体の二%あるいは三%と言われる、ごく一部に限定をされました。
 そもそも、法案では、捜査段階の自白調書を証拠として使うということが前提とされています。そして、この取り調べ過程の録音、録画というのは、専ら、裁判における供述調書の任意性立証の簡便化あるいは効率化、そういう観点から構成されています。つまり、これは、立証する側あるいは裁く側、その視点から専ら位置づけられているとしか言いようのない規定になっています。
 つまり、被疑者、被告人の人権保障という観点からすれば、当然、規定自体が、自白調書の任意性の取り扱いではなくて、端的に捜査機関に取り調べの全過程の録音、録画を義務づける、そういう規定になるべきものが、なぜこの供述調書を使うことを前提にした任意性の問題にすりかわっているのか。私は、この点は非常に原理的な問題として看過してはならないというふうに考えます。
 ところで、法律が定める対象事件以外で検察官が取り調べの録音、録画を試行する、そういう議論もあります。ここで強調したいのは、警察の取り調べ段階での録音、録画なしに、検察官の取り調べだけを録音、録画しても、違法な取り調べを抑止する効果はありませんし、かえって、警察段階で自白した後の検察の取り調べの過程を録音、録画したものが法廷に提出されると、仮に虚偽の自白を警察段階で余儀なくされた場合に、それを覆すことはより一層困難になると言えますので、やはり取り調べ過程の録音、録画、全過程を録画、録音しなければ意味がないということを改めて強調したいというふうに思います。
 それから、今回の法案では、対象事件が一部に限られた上に、広範な例外規定が設けられています。
 詳しくは申しませんが、これらの例外規定のうち、例えば被疑者が十分な供述をできないと認められるとき、畏怖させもしくは困惑させる行為がなされるおそれがあるとき、この要件自体は極めて抽象的ですけれども、本質的な問題は、この判断を一次的に捜査機関が行うことになっているということです。これでは例外規定の濫用を防ぐことはできません。
 捜査機関が仮にこの規定に違反した場合でも、そのペナルティーは、録音、録画をしなかったその取り調べで作成された調書が証拠として採用されない、こういう限度にとどまります。ですから、ほかの録音、録画した取り調べで獲得した自白調書は証拠能力が認められる可能性が高い、そういう問題もあるということです。
 さらに言えば、録音、録画をしないで、その過程で違法、不当な取り調べがあったとしても、被疑者、被告人が争わないでそのまま審理が終結してしまえば、その過程が検証されることはありません。そういう危険性にも注目していただきたいと思います。
 今回の可視化のみならず全体の法案に関連することですけれども、刑事司法にかかわる手続というのは、ともすれば真相究明という大義名分のもとに、あるいは職務熱心と言ってもいいでしょうが、被疑者、被告人の人権が侵害される、それを正当化される危険が常に伴っています。したがって、刑事訴訟法等の規定には、その規定自身に、捜査機関による濫用を許さない、そういう歯どめがかかっているという厳密性が必要です。
 前述した録音、録画の例外について、衆議院本会議において法務大臣は、「例外事由が恣意的に運用される余地はないものと考えております。」というふうに答弁されましたが、それは考えているだけで、規定を読む限り、そういう結論はとても出ないというふうに私は考えます。
 また、いわゆる盗聴法、通信傍受法についても、法務大臣は衆議院本会議において、いわゆる組織性の要件についてですが、「確かに、通信傍受法の要件の上からは、二人の共犯事件が傍受の対象となることもあり得ます。」しかしながら、「実際に通信傍受の厳格な要件を満たす事案は組織的な犯罪に限定されることとなると考えております。」と答弁されています。しかし、法律上は適用拡大が可能だけれども実際にはそのようなことはしませんというこの答弁が一番危ないんです。これは今審議されているいわゆる安保法制、戦争法制でも同じような議論がされていますけれども、そういう濫用のおそれのある規定は絶対に許してはいけない、そういう立場からの吟味もお願いしたいというふうに思います。
 それから、捜査機関の権限濫用のことで申し上げたいのは、捜査機関というのは、一つ権限を与えると、やはり可能な限り拡大して使おうとするということです。
 先ほど申し上げた堀越さんの国家公務員法違反事件では、たかが休日にビラをまいた、これを犯罪として立件するために、約一カ月間にわたって、警視庁公安部が延べ百七十一名の警察官、六台のビデオカメラ、四台の車両をフル投入して、文字どおり二十四時間堀越さんを尾行し、盗撮を行いました。この事件は最終的に無罪になりましたけれども、これによって堀越さんがこうむったプライバシー侵害、あるいはそのつき合いのある人がこうむったプライバシー侵害の傷跡は消えることはありません。もちろん、この事件について警察は、緒方宅盗聴事件同様、いまだに謝罪もしておりません。
 こう言いますと、お聞きの方は、これは共産党だとか、あるいは政府に反対する人が対象になるんじゃないかと思われるかもしれませんが、捜査権力というのは、一旦そういう武器を手にすると、限りなく肥大化していきます。これは与党、野党を問いません。
 この点に関して、少し前ですが、一九八〇年に、元警察幹部の江間さんという方が、警察がいろいろな形で収集した情報をどう使っているかということについて、このように言っています。毎日報告書、こんなに分厚い報告書が内閣に出てね、何々大臣、何々代議士まで報告されていると。ここからが大事なんですね。代議士だって警察OB以外には行きませんよ、それから特別な人以外には行かない、だから、元警察庁長官というあいつらが大きな顔のできる理由は何かというと、その情報でしょう、こういう証言をされております。
 皆さんの中で、この中の特別な人に当たるかどうかはちょっとわかりませんけれども、そういう意味でいうと、全ての方がそういう情報等の監視の対象にされている。法律が成立して、濫用の危険がわかってからでは遅いんです。今ここで、濫用のおそれのある規定はやはり直ちにやめさせる、成立させないということが大事です。
 最後に、この一括法案全体の審議の問題について意見を申し上げます。ここが私が日弁連と意見を異にする最大の理由です。
 今回の法案は、刑事訴訟法関連でも九つの大きな内容、それから五つの法律の改正案が一括法案として出されています。そのため、全く性格の異なる法律案が一括で議論されます。ですから、可視化がどうなのか、冤罪防止のために可視化がどうなのかの議論をしたいのに、盗聴法だ、司法取引だ、その他のことも全部一括しなければ法案にならないという非常に異常な形で法案が提出されていると言わなければいけません。
 刑事訴訟法等改正案の中の等に、盗聴法、いわゆる通信傍受法の拡大が含まれているように見る人はいるでしょうか。誰もわからないです。
 残念ながら、私が所属する日弁連は、取り調べ過程の可視化が法制化されるというその一点で、全体の一括採択に賛成をし、法案の早期成立を望むという見解を示しておりますけれども、これはやはり、国民から見れば理解のできない誤った方針だと言わざるを得ません。
 実際、今回の法案提出に際しても、十八の単位会で反対あるいは慎重審議の意見が表明されております。はっきり申し上げますが、今回の一括法案に賛成する弁護士は決して多数派ではないというふうに私は自信を持って言い切れます。うそだと思ったら、弁護士に聞いてください。
 法制審では、いろいろな思惑から答申が一括採択をされました。しかし、国会審議はそれに拘束される理由は全くないと思います。あくまで憲法や刑事訴訟法の原則、これを守るという立場で、国民の目線から、あるいは先ほど陳述された桜井さんのような当事者の立場から、内容について徹底的に審議を尽くしていただきたいと思います。
 冤罪が起こった原因はどこにあるのか。その原因を克服するために何をすべきなのか。そして、取り調べ過程の全面可視化に反対しているのは誰で、どういう理由で反対しているのか。それが正しいのかどうか。盗聴法を拡大し要件を緩和することは本当に許されるのか。他人の犯罪立証に協力する見返りとして自分の罪を免れたり軽くしてもらう、そういう取引を制度化することが果たして許されるのか。一つ一つについて議論を尽くしていただければ、今回の一括法案が、極めて不十分であるというだけではなく、とても危険な内容を含んでいることが明らかになると私は確信をいたします。
 国会において審議を尽くさないで多数による強行が許されないことは当然ですが、とりわけ刑事訴訟の分野、刑事司法の分野ではこのことが言えます。
 ぜひ、今回の一括法案について、徹底審議の上、今国会では廃案にするということを訴えまして、私の意見陳述といたします。
 ありがとうございました。拍手
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奥野信亮#11
○奥野委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    —————————————
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奥野信亮#12
○奥野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。
 先ほどちょっと申し上げたとおり、発言をされたい方は、ぜひ挙手をしていただいて、あるいはこちらから指名する場合もあると思いますが、ルールを守っていただきたいと思います。
 宮路拓馬君。
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宮路拓馬#13
○宮路委員 改めまして、おはようございます。自由民主党の宮路拓馬でございます。
 本日は、法務委員会において初めて質問をさせていただく機会を頂戴いたしまして、まことにありがとうございます。
 また、椎橋参考人、内山参考人、周防参考人、周防監督は、初めまして、すばらしい映画監督でいらっしゃると思っております、桜井参考人、そして加藤参考人、貴重な御意見を開陳いただきまして、まことにありがとうございます。胸打たれるものがございました。
 今回の刑事訴訟法等の一部を改正する法律案でございますけれども、私は、法曹の専門家でもございません、そしてまた、昨年末初当選をさせていただいた国会議員として、どちらかというと一般人に近い立場で御質問させていただけるのではないかな、このように考えております。
 今回は、取り調べ及び供述調書への過度の依存からの脱却ということがメーンテーマということで、それにより、証拠収集手段の適正化、多様化、そして充実した公判審理の実現、これが具体的なあり方として提案されているもの、このように考えております。
 特に、私は鹿児島の選出でございますので、志布志事件が記憶に新しいところでございます。したがいまして、今回の可視化につきましては、やはり、まずは志布志事件が頭に思い浮かんだところではございますが、今、参考人の皆様からそれぞれございましたとおり、志布志事件については対象事件には含まれないということでございます。
 今回、対象事件につきましては、裁判員制度対象事件と検察官独自捜査事件であるということで、私も、ふだん報道に触れる限りでは、冤罪というのはそれなりにあるという意識があったんですけれども、政府側の説明を聞く限りでは、私が認識していないところでたくさんの事件があって、その供述の任意性が争われるのは、千分の一といったような数を聞いたこともございますが、そうした非常に限られた事件であると。
 また一方で、先般、警察署あるいは検察庁におきまして可視化の現場を視察させていただきました。確かに、特に警察ですね、全ての署において可視化の機器を整備するのは物理的になかなか時間のかかる問題であると。あるいは、今後、当法案が成立いたしまして、可視化されたものが裁判所に提出されるに当たっては、当然、捜査機関側もその内容を確かめないといけない。それに膨大な時間がかかるというのは実際あることかなと思ったところでございます。
 したがいまして、今回、まずは、裁判員制度対象事件そして検察官の独自捜査事件に対象を限定するというところは、一定の合理性があるのかなと考えているところではございます。
 一方で、実務上の運用として、検察の方が、罪名を問わず、身柄事件であって被疑者の供述が立証上重要である事件などの被疑者の取り調べ、あるいは被害者、参考人の供述が立証の中核となる事件などの被害者、参考人取り調べにおいても取り調べの録音、録画を積極的に実施することとしているという運用がなされていること、そしてまた、先ほど椎橋参考人あるいは内山参考人のお話にもございましたとおり、こうした運用を積み重ねることによって、裁判所の方が、可視化されていない、つまり録音、録画されていない取り調べ、供述調書については証拠としての判断を抑制するようになる。そうした運用によって、より適切な取り扱いになるのではないか。そしてそれが、施行後三年経過後の検討において再度見直しが行われるということで、現実に即した、そしてこれからも改善の余地があるものと考えております。
 改めて、各参考人に、今回の対象事件の範囲についての考え方についてお伺いできればと思います。椎橋参考人、お願いいたします。
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椎橋隆幸#14
○椎橋参考人 宮路委員御指摘のように、私は、現在の法案が出しております裁判員裁判対象事件、検察独自捜査事件、これをまず対象とするということが賢明であり、また現実的だというふうに思っております。
 これは、両事件とも、やはり任意性に争いのある率の高い事件でございますし、それから、やはり社会的に見ても関心の高い事件ということでございます。それから、裁判員対象事件については、国民が参加する裁判において、やはりそれをわかりやすいものにするという必要がありますので、何か紛糾があった、任意性に争いがあるという場合には、確実にそれが録音、録画されているという裏づけがあるということが必要だというふうに思います。
 それから、任意性を争う事件が実際には数の上では多くないということで、宮路議員御指摘のように、三年前ぐらいですと〇・三%、千件に三件ぐらい、最近の統計によりますと〇・一%、千件に一件ぐらいということでございます。そういうことから考えますと、これから検察も警察も幅広く試行的に運用を行うということになっておりますので、問題になりそうな事件はその運用によって賄われるということになる場合がほとんどだろうというふうに思われますので、運用を見て検証して、その上で、必要があれば見直すということが一番大事だろうというふうに考えております。
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宮路拓馬#15
○宮路委員 申しわけございませんが、同趣旨の質問について、内山参考人の御見解をいただければと思います。
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内山新吾#16
○内山参考人 内山です。
 日弁連の立場としては、犯罪のいわゆる重大性がどれぐらいあるかどうかによって、その大小によって冤罪の危険性というのは変わらないというふうに考えています。したがって、あらゆる事件について全過程の可視化が必要だというのが基本的な立場です。
 したがって、今回の立法についても、本来、対象事件を限定する十分な理由はないというふうに考えていますので、今回の立法については成立を求めるという立場ですけれども、これはなるべく早く拡大されていかなければいけないし、いくべきものだというふうに考えています。
 その間の手当てとして、弁護士としては、なるべく早く逮捕、勾留された被疑者のもとに駆けつけて面会をして、場合によっては、しゃべるなと。そして同時に、捜査機関に対して、速やかに可視化をしろという要求を突きつけていくという実践で対応するということになろうかと考えています。
 以上です。
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宮路拓馬#17
○宮路委員 今、弁護士のお立場としての内山参考人の心意気をお聞きしました。私も、国会議員として、その運用実態あるいは成立後の実態を見きわめて、見直しの機会に、あるべき姿により近づけるようにしっかりやっていきたい、このように考えております。
 先ほど申し上げたとおり、私は、どちらかというと一般人の感覚が色濃いと思います。昨年までは役所勤めをしておりまして、いわゆるサラリーマンとして通勤電車に乗って通っておりました。やはり痴漢の冤罪というのは、マスメディアの報道で見たりして、人ごとではないな、怖いなという思いで、なるべくそういう嫌疑がかけられないように注意をしていたところでございます。
 今回は、痴漢の事件も、制度上は対象にはならない。しかしながら、検察官の運用のところで、任意性が争われそうなところについては録音、録画をやっていくというところで、それを積み重ねて三年後の話があるのかなというふうに思っておりますが、そうした考えも含めまして、周防参考人のお考えを聞かせていただければと思います。
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周防正行#18
○周防参考人 録音、録画の対象事件がこれほど少ないこの法案に同意というか合意した理由は、一つしかありません。これは、ちなみに、あの会議での有識者五人の意見を代表するものではありません。
 私個人が一番強く考えたのは、このまま法制化をしない、要するに、取り調べの録音、録画の対象事件も決めず、それも、全過程であるかどうかも決めず、このまま放置しておくと、警察や検察は、それぞれ自分たちに都合のよい形での録音、録画をどんどん広げていく。要するに、法律がない中で、警察、検察にとって都合のいい録音、録画をすることによって、取り調べ室をちゃんと密室から開放しますよという形をとりながら、多分、いつでもそういうことができるような状況になるわけです。これは、一年でも二年でも法律がおくれていけば、録音、録画というものがどういうものかというのを、警察、検察それぞれが自分たちの組織にとって都合のいい形で広げていく。
 それで、怖いのは、これを裁判所がどんどんどんどん追認していく。調書裁判につきましても、裁判所は、自分たちとは関係のないような顔をして、警察、検察のおかげで自分たちもだまされたというような顔をしてあの会議でもいらっしゃいましたけれども、実は、裁判所が曖昧な調書を認めてこなければ、調書裁判なんという現実は生まれなかったんです。皆さんなかなか裁判所批判はされませんが、僕は、現状の刑事司法について最も責任があるのは実は裁判所だと思っています。
 それを考えますと、警察、検察が、自分たちの意思でこれほど、こんなふうに録音、録画をしていますという実績を積み上げて、それを裁判所が追認し、知らぬ間に、法律でない間に、いや、もう運用でどんどんやっているから法律は要らないでしょう、そういう状況になると、ますます冤罪を生む温床が拡大されていく。その危険を考えて、取り調べを録音、録画するとはどういうことかというのをきちんと法律で決めておくこと、対象事件が狭くても、今回、全過程での録音、録画が決められました。
 ここで、例外事由というとんでもないものができていますが、これについては、裁判所に本当に厳しく、ここでまたいいかげんな例外事由を認めるようなことになって、録音、録画の実施がどんどん少なくなっていく、そういう状態をもし裁判所が生むようなことがあれば、ますます裁判所の責任は重くなると思います。
 私は、裁判所を信じて、録音、録画を法律としてここで決めること、これは非常に大きなことだと思っています。私が合意したのは、実はそこです。今法律で決めなかったら、ますます録音、録画は間違った方向へ進んでしまうのではないか、それを大きく心配しました。
 以上です。
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宮路拓馬#19
○宮路委員 桜井参考人におかれましては、先ほど、大反対だといったようなお言葉をいただきました。その中にあっても、今、周防参考人のお話にもございました、全て可視化すべきだという中にあっても今回の改正案は意義があるという御意見をお聞かせいただきましたけれども、桜井参考人におかれましても、もし今回評価するべき点があればお聞かせいただきたいと思います。
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桜井昌司#20
○桜井参考人 私たちも、ただ怒っているわけじゃないんですよね。たとえ一部とはいえ、全てが録画されれば、それは大変大きな力になると思います。それは我々冤罪仲間でも評価しているんですよ。なぜやったと言ってしまうのか、言わされてしまうのか、その経過が明らかになれば、それは大きな力になりますけれども、とにかく、警察と検察庁というのはずるいんですよ。抜け穴を使うんですよ。
 残念ながら、日本には韓国のような腰のある裁判官は少ないですよね。韓国が可視化されましたのは、ある裁判所で、全面可視化しない証拠は認めないという判決が出て全面可視化が始まったと伺っていますけれども、日本でそんな裁判官はいますかね。
 それを考えますと、やはり私たちは、検察の言いなりに唯々諾々と有罪を重ねる裁判所を信頼できないという思いが非常に強いんですね。ただ、全面可視化されれば、それはそれなりに非常に有効だということは認識していますので、それだけは知っていただきたいと思います。
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宮路拓馬#21
○宮路委員 桜井参考人からも、今後の運用をしっかりと見きわめて、見直すべきはしっかり見直せというお言葉をいただいたものと感じました。
 加藤参考人におかれましても、同じく、今回の可視化につきまして、対象事件の範囲、もし御意見があれば再度お聞かせいただければと思います。
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加藤健次#22
○加藤参考人 私も、取り調べの全体を可視化するということが一部であれ通ったこと自体は、この間の弁護士の努力も知っておりますので、別にそれ自体を否定するつもりはありません。
 ただ、先ほども申しましたように、段階的にやるにしても何にしても、やはり取り調べの過程は録音、録画して検証可能にしなきゃいけないという原則を確認してほしいんです。これは国会でできることだというふうに思います。今の規定はそうではなくて、たまたま争いになりそうな裁判について、裁判での立証を簡便にする、効率化するというこの設計自体が僕は間違っていると思うので、そこはやはり大いに議論していただきたいと思います。
 もう一点、痴漢冤罪事件などでいいますと、一番大きな問題は、全く不要な身柄の拘束がされているということなんです。サラリーマンの方がたまたま痴漢の容疑をかけられて、やっていないと否認したときに、では、家族を置いて逃げますかということなんですね。ところが、ほとんど逮捕されて勾留がついちゃう。ですから、私たちの一番大きな弁護活動は、最初の三日目に勾留裁判官と会って、とにかく何でもいいから釈放しろ、勾留するな、ここに精力を注がざるを得ない。
 ですから、裁判所が安易に身柄の勾留の令状を出しているところにも大きな問題があるので、身柄拘束を前提にした議論なんですね、今の議論は。そうじゃなくて、本当に必要でない身柄拘束も含めて、今の令状のあり方も含めた議論が本来必要ではないか。痴漢事件では特にそのことを感じます。
 また、痴漢事件では、逆に、被害者と称する方の思い違いや勘違いが正される機会がないままどんどん供述がつくられていく、そういうことを先ほど申し上げましたが、その点もあわせて御議論いただきたいというふうに思います。
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宮路拓馬#23
○宮路委員 二十分というのは本当にあっという間だなという感じがいたしました。残り一分、二分しかございませんので、最後、済みません、加藤参考人に一つお伺いしたいことがございます。
 今回、もちろん弁護側から録音、録画を求める意見が強まっている一方で、その録音、録画のもと、被疑者が黙秘するケースがふえているという声も一方で聞いております。その心として、弁護戦略としての黙秘の活用ということもあるというふうに伺っているところでございます。
 今回、録音、録画をすれば、少なくとも対象事件に関しては、全て記録されて無理な取り調べはされなくなるのかなと。それにもかかわらず、あえて黙秘をする必要はないとも思うんですけれども、実際、こうしたケースがふえているという実感をお持ちか、そして、もしそうであるとすれば、どうした理由によるものか、お聞かせいただければと思います。
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加藤健次#24
○加藤参考人 ちょっと、統計的なことについて私は申し上げる立場には全くございませんが、黙秘というのは、当然これは憲法上保障された権利ですから、権利を行使するかどうかというのは個々それぞれですから、私たち弁護人も、黙秘権があるのを前提に黙秘を勧める場合もあれば、逆に、積極的に真実を話すということを勧める場合もございます。
 ただ、しゃべらなくなったから弊害があるということは全く承服できません。それは本来、しゃべらなくなったから弊害だということ自体、間違っているというふうに言わざるを得ないということを申し上げておきたいと思います。
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宮路拓馬#25
○宮路委員 まだまだお聞きしたいことはたくさんあったんですが、今回、参考人の皆様方から、これは一里塚であるといったような話だったと私は受けとめております。宿題をいただいたという意識で、これからも取り組んでまいりたいと思います。
 本日は、まことにありがとうございました。
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奥野信亮#26
○奥野委員長 次に、漆原良夫君。
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漆原良夫#27
○漆原委員 おはようございます。公明党の漆原でございます。
 きょうは、五人の参考人の皆様、本当に貴重な御意見を賜りまして、心から感謝申し上げたいと思います。
 早速質問に入らせてもらいますが、まず、この法案の全般、概括的評価について、椎橋参考人と内山参考人にお尋ねしたいと思うんです。
 我が国の刑事手続が、捜査、公判が取り調べ及び供述調書に過度に依存している、ここから脱却しなければならないという命題、これはもう当委員会でも、随分前から、長い間指摘され、議論されてきたところであります。有罪の者を無罪にしちゃならないし、逃がしちゃならないし、無罪の人を処罰してはならないし、この二つの命題をどういうふうに両立させていくのか、非常に難しい問題、難しい作業が我々に課せられておるんだというふうに思っております。
 そんな観点から今回の法案を見てみますと、一方で、冤罪防止に有用な取り調べの録音、録画制度の導入、他方では、証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度の創設、あるいは通信傍受対象事件の拡大など、捜査機関に、新たな捜査手法の導入だとか従来の捜査手法の拡大が認められている内容になっております。
 全体として、最初に申し上げた命題の一歩前進と言えるのではないのかなと思っておりますが、この点についてのお二方の参考人の御意見を聞きたいというふうに思います。
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椎橋隆幸#28
○椎橋参考人 御質問ありがとうございました。
 私は、全体としては、一歩、二歩、むしろ三歩、かなりの前進をするというふうに考えております。
 御指摘のように、今までいろいろ問題もございました。その原因は、やはり取り調べとか供述調書に過度に依存した捜査にあった。それを、それに依存しないで、充実した公判を実現する、そういう形に直していこうではないかということがあって、これが検察の在り方検討会議から法制審議会に引き継がれている問題だと。
 それについて我々は検討したわけでありますけれども、全体として、録音、録画の義務化、国選弁護の充実、それから証拠開示の拡大といったような、非常に被疑者の人権に資するような、しかもそれが公判審理の充実に資する、そういうようなことが、取り調べを適正にし、そして公判を充実させるという、そのためのものであります。
 他方で、取り調べに過度に依存しないという点については、捜査自体が大きな支障をこうむるということになると、犯罪が多発して、しかもそれが検挙できないということになると、国民全体の自由、財産、生命、身体、こういったものが侵されるということになりますので、これは防がなければいけない。そのために、より客観的な証拠収集の方法として通信傍受がある。それから、供述証拠についても、取り調べには依存しない、しかし、協議・合意制度とか、あるいは刑事免責というような手法を導入して、それを補っていこうと。
 これはちょっと誤解があると困るんですけれども、協議・合意制度といいますのは、これは、それに応じるかどうかは全く被疑者の自由意思によります。そしてそれは、必ず弁護人がつくということになっております。そして、被疑者は、真実のことを言って、それに対する見返りとして恩典を受けるということで、真実でない供述というものはだめなんですね。ですから、うそを言って他人を巻き込むというおそれを指摘された方もおられましたけれども、これはそうではなくて、真実を言って初めて、その見返りの恩典がある。それを担保するために、真実の供述をしない場合には刑罰が科せられるということになっております。
 それから、言ったことが、合意の内容が真実かどうかということは、これは、合意書面というのは証拠開示として出されて検討できますし、さらには、公判においても中身について反対尋問ができる、こういうようなことになっておりますので、それを今、余り全てにわたって言うと時間がないかもしれませんが、そういうような形で、およそ、取引をして、虚偽の供述をして、そして無実の人を巻き込む、そういうような仕組みのものではございませんので、全体として、一言で言うと、より捜査過程の適正化の徹底と、それから公判審理の充実のための法案だというふうに私は考えております。
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内山新吾#29
○内山参考人 内山です。
 今回の法案については、先ほど私が話をしましたように、日弁連がかねてから求めてきた取り調べの可視化については対象事件が限られるという内容であり、また、必ずしも日弁連が求めてきたものではない新しい捜査手法の導入というのも含まれているということで、全体としてどういうふうに評価するのかということで、会内で相当な議論をしました。
 その中で、やはり、一部の対象事件とはいえ、取り調べの全過程の可視化が法的に義務づけられるということの意味は非常に大きいだろう、それを突破口にして、取り調べだけではなくて、公判も含めて刑事司法全体のあり方を変えていく、そういうてこになり得るという評価をし、また、新たな捜査手法等についても、できる限り一定の歯どめをかけていく、あるいは、今後の運用面、さらに改善していくというところでの取り組みを強めていくという姿勢で、全体として、今の刑事司法のあり方を一歩前進させるものになるだろう、弁護士全体の議論の中でそういう評価をして、今回の法案に対する姿勢を決めたという次第です。
 以上です。
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