法務委員会

2015-07-29 衆議院 全107発言

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会議録情報#0
平成二十七年七月二十九日(水曜日)
    午前九時開議
 出席委員
   委員長 奥野 信亮君
   理事 安藤  裕君 理事 井野 俊郎君
   理事 伊藤 忠彦君 理事 盛山 正仁君
   理事 山下 貴司君 理事 山尾志桜里君
   理事 井出 庸生君 理事 漆原 良夫君
      大塚  拓君    門  博文君
      門山 宏哲君    菅家 一郎君
      今野 智博君    辻  清人君
      冨樫 博之君    藤原  崇君
      古田 圭一君    宮川 典子君
      宮崎 謙介君    宮澤 博行君
      宮路 拓馬君    村井 英樹君
      簗  和生君    山口  壯君
      若狭  勝君    黒岩 宇洋君
      階   猛君    鈴木 貴子君
      柚木 道義君    重徳 和彦君
      大口 善徳君    國重  徹君
      清水 忠史君    畑野 君枝君
      上西小百合君
    …………………………………
   法務大臣政務官      大塚  拓君
   参考人
   (弁護士)        田中 清隆君
   参考人
   (東京大学大学院法学政治学研究科教授)      川出 敏裕君
   参考人
   (自由法曹団・常任幹事)
   (弁護士)        長澤  彰君
   参考人
   (弁護士)        山下 幸夫君
   参考人
   (電話盗聴事件被害者・国賠訴訟原告)
   (元参議院議員)     緒方 靖夫君
   法務委員会専門員     矢部 明宏君
    —————————————
委員の異動
七月二十九日
 辞任         補欠選任
  宮崎 謙介君     村井 英樹君
同日
 辞任         補欠選任
  村井 英樹君     宮崎 謙介君
    —————————————
七月二十四日
 治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(真島省三君紹介)(第三五七三号)
 選択的夫婦別姓制度導入の民法改正を求めることに関する請願(高木義明君紹介)(第三六六八号)
は本委員会に付託された。
    —————————————
本日の会議に付した案件
 参考人出頭要求に関する件
 刑事訴訟法等の一部を改正する法律案(内閣提出第四二号)
     ————◇—————
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奥野信亮#1
○奥野委員長 これより会議を開きます。
 内閣提出、刑事訴訟法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。
 本案審査のため、本日、参考人として弁護士田中清隆君、東京大学大学院法学政治学研究科教授川出敏裕君、自由法曹団・常任幹事、弁護士長澤彰君、弁護士山下幸夫君及び電話盗聴事件被害者・国賠訴訟原告、元参議院議員緒方靖夫君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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奥野信亮#2
○奥野委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
    —————————————
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奥野信亮#3
○奥野委員長 この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多忙の中、御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れば幸いに存じます。
 本日は、特に犯罪捜査のための通信傍受の対象事件の範囲の拡大等について審査を行います。
 議事の順序について申し上げます。
 まず、田中参考人、次に川出参考人、長澤参考人、山下参考人、緒方参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
 なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
 それでは、まず田中参考人にお願いいたします。
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田中清隆#4
○田中参考人 参考人の弁護士の田中清隆と申します。
 私は、弁護士として、約四十一年余にわたり、暴力団事務所の明け渡しあるいは暴力的取り立ての阻止、強制執行妨害の排除など、そういった暴力団対策を中心に、多くの実際の事件を現場で担当してまいりました。また、同僚の弁護士あるいは被害者の体験なども数多く見聞きしてまいりました。それから、実は、私自身の被害の体験もございます。最近では、私も高齢になりまして、老人クラブに時々出るんですが、そこでいろいろな被害の体験についても聞かせていただいております。
 したがって、私としましては、今回は、統計数字とか理論的な観点を少し離れてといいますか、現場の実感あるいは現場の実態、こうしたものを中心に御意見を申し上げていきたいと思っております。
 実は、私は、平成十一年の参議院の法務委員会におきまして、この法律の制定当時に賛成の御意見を申し上げたことがございまして、それから早くも十六年たってしまいましたが、深い御縁を感じておるところでございます。
 私は、先ほど申し上げた老人クラブの会合の中で、振り込め詐欺とか投資詐欺被害に遭った方のお話、あるいはその周辺の方のお話から、直接非常に深刻なお話を伺ってきております。そこで感じますことは、確かに、老人にとってみて、大金を取られるということが大変な被害であることは間違いありません。
 しかしながら、もっと大きな被害は、やはりこれまで培ってきた家族のきずなとか、そういうものが残酷にも断たれてしまう。つまり、子供たちあるいは孫たちから見れば、おじいちゃん、おばあちゃん、何で俺に一言相談してくれないの、勝手に大きなお金を振り込んでくれては困るじゃないのと。一方、おじいちゃん、おばあちゃんとしては、そんなことを言うなよ、日ごろちっとも連絡もよこさぬくせに、こういうときだけぐずぐず文句を言いやがってと。だって、自分はあんたのことを思ってやったんだよ、何を文句言うんだと。こういう争いが家庭内で延々と続いてしまうわけであります。場合によっては、事件とは直接因果関係がないとはいえ、家族の紛争から自殺にまで発展するようなケースもないとは言えません。
 私自身が、実は、集団窃盗と思われる事件の被害に遭ったことがあるんです。二年ほど前のことですけれども、平日の午後七時半から八時ごろの間に、うちへ帰ってみたら、もう何もないんですよ。近所の人に聞いても、何も知らないよと。現金から大事なものから思い出の品までみんな奪われてしまいまして、大変な被害に遭ったわけであります。これはどう考えても一人や二人の行為ではあり得ないということで、その犯人はいまだに捕まっておりません。
 こうした被害についても、もちろん財産的な被害も大変な被害ですけれども、それ以降、うちに入るときに怖くてしようがないんですね、きょうは大丈夫か、きょうは大丈夫かと。こういった被害というものは、決して単なる財産的な被害にとどまらないということをよく御理解いただきたいと思います。
 それから、さらに私は、集団窃盗グループの被告の一人から、自分はもうこのグループから抜けたいので、実態を全部ばらす、そのかわり、ちゃんと弁護してくれというような依頼を受けたことがあります。それで、私は、それを受けまして、このケースでは、本人がちゃんと、首魁の名前から上位者の名前を全部明らかにして、手口も明らかにしましたので、これは全部真相が明らかになりました。
 これはたまたま運よくそういうことになったわけですけれども、御存じのように、多くの事例では、ほとんど末端の者は、みずから捕まったとしても、やはり怖いですから。私が担当した被告人でも、もとの集団のグループの関係者がしょっちゅう面会を求めてきたんです。私はそれを全部断らせましたけれども、しかし、一遍会ってしまうと、これまた恐怖にさらされるということはもう明らかであります。
 この事例では、二カ月弱の間に三件で約三千三百万ほどの窃盗を働いて、五人のグループだったんですが、一人は実行犯ではありませんので、実際は四人でやっておったんですけれども、私が担当した被告人が得た利益はたったの四百万。首魁の方は半分以上、千五百万以上を何もしないで手にした、こういう実例でございました。
 こういったグループの犯行に関する準備とか指示、連絡というのは、これはみんなが集まって何か準備するというようなことはほとんどありません。やはり、携帯電話あるいはメールでほとんど処理しております。したがって、こういった事件では、事情をどこまで知っていたのかというようなことの知情性といいますか、その立証が非常に困難ですし、犯罪の準備から実行から、証拠隠滅から逃走まで、組織的にカバーされますので、非常に難しい問題があります。しかし、通信傍受がなされれば、かなり容易に捜査ができるということになろうかと思います。
 最近でも、暴力団の極東会あるいは山口組の幹部が振り込め詐欺で逮捕された例がマスコミをにぎわせておりました。山口組幹部の事件では、グループ十一名が逮捕されて、件数は合計二十件で、被害総額は約一億円以上というふうに報道されておりました。
 こうしたマスコミの報道とか、あるいは先ほど述べました体験からしましても、最近では、振り込め詐欺あるいは集団窃盗、こういったものが暴力団員や犯罪組織の主要な財源になっておるということは明らかであります。
 また、最近、二〇一五年度の警察白書が公開されましたけれども、ここで、暴力団員が摘発された犯罪は、過去十年間を見ますと、恐喝が八・八%から四・八%に、約半分に減っています。逆に、詐欺が五・八%から一〇・四%に、約倍に増加しております。そして、二〇一四年度に特殊詐欺で摘発された暴力団員は六百九十八名、全体の特殊詐欺の逮捕者の三五・二%にも上っております。こういった特殊詐欺が新たな資金源となり、暴力団あるいは類似の集団を潤しているということが明らかであります。
 国民の多くは、こうした暴力団の活動の阻止と、こういった犯罪の防止による生活の安全を強く願っていることは、私ども本当に、日ごろ、ひしひしと実感をしております。このように、詐欺、窃盗が日常的に行われることが多くなりまして、そしてまた組織的に行われることが多くなりまして、その犯行に至る経過が完全に秘密にされてしまっている以上、これらの犯罪による被害の防止や摘発のために、少なくとも詐欺、窃盗、集団的なもの、そういったものは通信傍受の対象としてあぶり出していく必要があると私は確信しております。
 今回の改正に関しましては、対象犯罪の拡大というものが過去の最高裁の判例に反するものであって、国民の通信の秘密やプライバシーが侵害されるというような反対論、あるいは、通信会社の立ち会いの廃止によって警察の捜査権の濫用が懸念されるというような反対意見があるようでございます。
 しかしながら、対象犯罪の拡大に関しましては、今回の改正については、殺人、傷害、傷害致死等から児童ポルノ事件に至るまで、九種の犯罪が新たに拡大されておりますけれども、これらは、今までの共謀要件に加えて、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体によって行われる」、あらかじめ役割が決まっているような、そういう人の結合体、そういうものによって行われる犯罪というふうに極めて限定的にされておりますので、これは無限定な拡大の危険はないというふうに考えております。
 さらに、もちろん、私も弁護士ですから、多くの刑事事件も担当しました。捜査の問題点とか、あるいは憲法の通信の秘密などの重要性などについても十分理解しているところでございます。しかし、そうした問題に配慮しつつも、実際に組織犯罪による国民の重大な被害を防止して犯罪組織のさらなる勢力拡大を防ぐことは、これは現時点では最大限重視されるべきというふうに考えておるところでございます。
 かつて、覚醒剤の事件について最高裁の判決が出まして、これは平成十一年の判決ですけれども、これはまだ通信傍受法がなかった時代ですが、重大な犯罪に限って通信傍受を認めるというのが出ておりまして、窃盗とか詐欺とかというのは重大な犯罪じゃないだろう、殺人とか強盗傷人とかそういうのはいいかもしらぬけれども、窃盗、詐欺は別に重大犯罪じゃないじゃないかという意見があります。
 しかし、私は、重大な犯罪かどうかは罪名だけで決めるものではないと。確かに、万引きのようなちょろっとした窃盗もあります。しかし、私も被害に遭ったような、そういう集団的な、億に達するような被害を生ずるような、暴力団が背景にいるような、そういう犯罪は、たとえ罪名が窃盗、詐欺であったとしても、やはりこれは重大な犯罪だというふうに言わざるを得ないと思います。私はそのように考えております。
 実は、この件に関しまして、日本弁護士連合会の会長声明というのがことしの五月に出ております。ここでは、会内の意見はもちろんいろいろありましたけれども、会長としては、基本的には、いろいろ慎重に対応しつつも、これはとにかく一日も早く成立させてほしいという声明を出しておるところでございます。
 私どもは、先ほど暴力団対策をやった民事介入暴力対策委員会というのに所属しておりまして、こういった組織暴力対策のために、イタリアとかアメリカとか、幾つかの国を訪問して実情調査をしております。こういった国々を初めとして、先進諸国ではほとんど、通信傍受は広く実施されております。そして、その実効性は高く評価されております。
 例えば、アメリカにおきましては、百以上の対象犯罪となっておりまして、組織的要件は特にありませんし、テロに関するものなどを含んでいたりしまして、対象犯罪も非常に広くなっています。
 こうした点から見ても、通信傍受は、特に犯罪組織によって行われる犯罪については非常に有効である、それが世界的にも認められておるんだというふうに思いますし、現時点では、残念ながらこれにかわる有効な手段が提示されておりません。
 最近の渡米調査によりますと、アメリカでは、電話とかメールじゃなくて、こういうところへマイクを設置して会話を傍受したり、あるいは、先ほど言いましたように、組織要件は特にありません、組織でなくてもいい。それから、傍受件数は、日本は十五年間で九十九件、その中で薬物の関係が七十六件、アメリカは年間三千六百件と、もう全然これは話が違う。
 今、国際的犯罪が増加していることは御存じだと思いますが、やはり捜査についても、ある程度国際基準に従った捜査を行うことが我が国の国際的な信頼を高めることにもなろうかというふうに思っております。
 また、今回の改正によりまして、通信会社の立ち会いをなくすということについて、警察の独壇場になって、警察権の濫用になるんじゃないかという懸念をされる方もございます。
 しかしながら、私といたしましては、この機械化によりまして、手続の適正が機械的システムにより確実に行われる、人間的なミス、管理ミス、そういうものがなくて、機械によってきっちりと確保される、こういうふうに考えております。
 しかも、捜査側、立ち会い側、こういったところのいろいろな負担が軽減される。現状では、何と七、八名の捜査官が、各地の警察署から、多くは東京にある通信会社に出向いて、その一室を借りて、十日間から三十日間、毎日通信を傍受する。立会人は立会人で、中身を聞くことはできませんから、ぼうっとして、じっと形だけ見ている。こういうようなことを、極端なことを言うと三十日やらないかぬわけです。この負担は大き過ぎて、とても大変でありまして……
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奥野信亮#5
○奥野委員長 もう十五分経過していますので、できるだけ簡潔に締めくくってください。
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田中清隆#6
○田中参考人 済みません。では、早くやります。簡単にやります。
 こうした状況を考えますと、今の通信傍受は余りにも負担が大き過ぎて、これが十分に機能していないというふうに言わざるを得ないと思います。
 私どもは、こういった通信傍受を機動的、効果的にやれるように、こういった機械も利用すべきであろうと思っております。現在まで十六年間、幸いにして大きなトラブルは、この法令関係では起きておりません。そういった状況、それから国際的な状況、国民の期待、こういったものから考えまして、こういった不合理を改善するために、今回の改正をぜひ行っていただきたいと思います。
 時間を超過しまして済みません。拍手
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奥野信亮#7
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、川出参考人にお願いいたします。
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川出敏裕#8
○川出参考人 皆さん、おはようございます。
 七月一日の本委員会に引き続きまして、意見陳述の機会を与えていただきましたことに対して感謝申し上げます。
 その際にも申し上げましたが、私は、法制審議会の特別部会に幹事として参加をいたしました。本日も、部会での議論を踏まえまして、法案に賛成の立場から意見を申し上げたいと思います。
 今回の改正の主たる内容は、通信傍受の対象犯罪の拡大と、それから通信傍受の手続の合理化、効率化ということです。
 まず最初の対象犯罪の拡大の点ですが、その当否については、対象犯罪を拡大したことがそもそも憲法に適合するのかという観点と、それから、仮に合憲であるとして、今回の法案の範囲に拡大するということに合理性があるのかという二つの観点から考えてみる必要があると思います。
 まず合憲性の問題ですが、これは、通信傍受というのが通信の秘密あるいはプライバシーを侵害するものであるということから、それが憲法十三条あるいは二十一条二項に反しないと言えるためには、それに見合うだけの重大な犯罪でなければならないという観点から問題とされるものです。
 先ほど田中先生が御紹介されました最高裁判例の中でも、電話傍受が憲法上許されるための要素の一つとして、それが重大な犯罪に係る被疑事件についてのものであるということが挙げられていたわけです。この判例は覚醒剤の営利目的譲渡の事案を対象としたものでしたから、判例上は、覚醒剤の営利目的譲渡は電話傍受の合憲性を認め得る重大な犯罪であるという立場がとられているということになります。
 通信傍受法は、このことを前提に現在の四種類の犯罪を対象としているということですので、そうだとしますと、少なくとも、これらの罪に匹敵するような重大性を持った犯罪に対象を拡大したとしても、憲法に反することはないと言えるということになります。
 そして、この意味での犯罪の重大性というのは、要は、通信の秘密ですとかプライバシーの権利を制約しても、その事実を解明し、犯人を処罰すべき必要性が認められるかどうかということによって決まるわけですから、それは、単に罪名とか法定刑だけで判断されるというものではありませんで、その犯罪が国民の権利利益を侵害する程度が大きいかどうか、そういう観点から決定されるべきものだというふうに思います。
 その観点から見ますと、今回拡大された罪は、いずれもそれに見合ったものであると言うことができると思います。暴力団によって、その意に沿わない一般市民の生命身体に対して危害が加えられる事案というのはもちろんですけれども、多数の一般市民の老後の蓄えを奪うような振り込め詐欺の事案、さらには児童の心身にはかり知れない危害を及ぼす児童ポルノの組織的な製造、提供事案などが、侵害される権利利益の程度、重大性という点から見て、現在、通信傍受法に定められている、例えば組織的な薬物の密売事案と比べた場合に、重大性に劣るということは到底言えないだろうと思います。その意味で、現在定められている犯罪に匹敵する重大性というのは認められるだろうというふうに考えます。
 そして、この意味で、重大な犯罪が対象であるということを明確にするために、法案では、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われるもの」という、いわゆる組織性の要件を付加しております。
 部会の議論では、こういった要件を付加しなくても、数人共謀の要件と補充性の要求を満たす場合というのは、これは組織によって行われるものに限定されるのだという意見もございました。実際のところはそうなのかもしれませんが、しかし、そうであるという保証はありませんので、それを明らかにするためにこの要件を入れたという経緯がございます。
 他方で、この要件だけでは不十分だという意見もありました。もっと組織性、例えば指揮命令系統等も含めて要件を立てるべきだという考え方もありましたが、しかし、今この法案で定められている要件というのは、捜査機関として傍受令状を請求する時点で疎明ができるぎりぎりの線を規定したものですから、これ以上のことを要求しますと傍受制度自体が機能しなくなるということになりますし、また、単発的に行われるような軽微な事案を外すという点からは、今の要件で十分であろうというふうに考えております。
 以上のように、今回の対象犯罪の拡大は憲法に適合したものだと言えると思いますが、その上で、次の問題は、現行法が四種類の罪に限定しているということとの関係で、対象犯罪を拡大することに果たして合理性があるのかということです。
 現行法上、対象犯罪が今の四種類の罪に限定された理由ですが、それは御承知のように、その経緯を見る限り、四種類の罪以外にも通信傍受が有効な犯罪は考えられるものの、通信傍受の導入について反対論が非常に強かったということもありまして、その当時、特に導入の現実的な必要性が高いとされたものに限定された、それが経緯です。それは、今の四種類の中に集団密航が含まれているというような点によくあらわれているわけでして、その当時、現実に必要性が高かったというものに限定したということです。
 そうであるとしますと、その後の犯罪現象の変化を踏まえて、それに匹敵するだけの必要性が認められるものに対象犯罪を拡大するということは十分に合理性が認められるはずですし、実際にもその必要性はあるというふうに考えます。
 以上が第一の点です。
 続いて、通信傍受の手続の合理化、効率化の方に移ります。
 現在の通信傍受は、通信事業者の施設で、事業者の立ち会いのもとにリアルタイムで行う形になっております。このことが捜査機関それから事業者双方にとって大きな負担となっているということが部会でのヒアリング等でも紹介されました。そして、負担が大きいということだけであればまだしも、そのことが通信傍受を実施することに対する事実上の障害になっているんだということも指摘されております。
 例えば、深夜に傍受を行うということを考えてみますと、これは立会人を確保するという観点から困難だということは容易に想像がつくところですし、ましてや二十四時間体制で傍受を行うというのは事実上不可能であろうと思います。また、通信事業者の施設で行うということになりますと、傍受を行う場所の準備ですとか、立会人を確保するというためには、一定の準備期間がどうしても必要になります。そうしますと、緊急に傍受を行う必要が生じたという場合であっても、それには対応できないということになるわけです。
 そうだとしますと、これまでは、本来傍受できたはずの犯罪関連通話が傍受できないままに終わっていた例が少なからずあったものと予想されます。しかしながら、傍受の必要性があり、かつ法律上の要件が備わっているにもかかわらず、事実上の理由から傍受が実施できないというのは適当ではありませんから、それに対しては何らかの対処をする必要があります。また、捜査機関あるいは通信事業者の負っている負担自体についても、これは解消できるものであれば解消するのが合理的ですから、その点から今回の改正案が考えられたということになります。
 そこで、今回の改正案ですが、こういった問題を解決するために、大きくは三つの点で新たな傍受の仕組みを設けております。
 第一に、一時的保存の仕組みをつくりまして、リアルタイムではなく、保存したものを事後的に再生して聞くことができるという形も取り入れました。第二に、通信事業者から通信データを送信し、通信事業者の施設ではなくて、捜査機関の施設で傍受することができるという形を取り入れております。そして第三に、特定電子計算機、特定装置を用いることにより、立会人なしの傍受を可能としております。
 この三つの点が新たな仕組みになるわけですが、こういった新たな傍受の仕組みを導入したことについては、それぞれに問題となり得る点がございます。
 まず、一時的な保存の仕組みですが、これについては、傍受令状で傍受すべき通信を特定しているにもかかわらず、無関係な通信まで含めて全てを傍受することを認めるというものであって、これは憲法三十五条に違反するのではないかという意見があります。
 しかしながら、一時的に保存された通信というのは暗号化されて記録されているわけでして、その段階では、捜査機関はもとより、通信事業者もその内容を知ることはできません。通信の秘密であれプライバシーであれ、その内容が知られるのでなければ、憲法三十五条の規制を及ぼすべき権利侵害があるとは言えませんので、一時的保存の場合における傍受というのは、令状に記載された傍受すべき通信で言うところの傍受には当たらず、したがって、それが憲法三十五条が規定する特定性の要請に反するとは言えないという整理になるだろうと思います。
 これが一つ目です。
 次に、通信データを送信して、捜査機関の施設で傍受ができるようにした点についてですが、このことについては、そのこと自体によって法的な問題は生じません。ただし、その過程で通信が漏えいする可能性があるという事実上の問題がありますが、これは、確実なセキュリティー対策をとることによって解決すべき問題です。
 想定されているものは、多分、専用回線を使うということですから、そこから漏れるおそれというのは少ないということでしょうし、また、今回の改正案では、通信データの送信に際しては暗号化がなされて、それを復号することは、捜査機関にある特定電子計算機でしかできないということになっております。したがって、仮に送信の過程で漏えいがあったとしても、その内容が知られることはありませんので、その点での対応はできているということになります。
 これが二点目です。
 第三の通信事業者による立ち会いをなくすことについてですが、これについては、これによって不適正な傍受がなされるのではないかという懸念が表明されております。
 これについては、そもそも、現行法のもとで立会人にはどのような役割が期待されていて、それが今回の新たな仕組みによって代替し得るかということが問題となります。
 立会人の主たる役割は、通信の外形的な状況についてチェックをするということです。具体的には、一つ目として、傍受のための機器を接続する通信手段が傍受令状により許可されたものに間違いないかどうか。それから二つ目が、傍受令状により許可された傍受ができる期間とか時間等が遵守されているかどうか。三つ目として、傍受すべき通信か否かの該当性判断のための傍受、いわゆるスポット傍受が適正な方法でなされているかどうか。四つ目として、傍受をした通信について全て録音がなされているか。この四つの点ですね。これがチェックの対象になるということです。
 このことが、今回取り入れられることになる新たな仕組みによって代替できるのかということですけれども、まず、一つ目と二つ目の点については、新たな仕組みのもとでは、まず、通信事業者の方で、傍受令状によって許可された通信手段を用いた通信を、許可された期間内において、リアルタイム方式であればそのまま、一時的保存方式の場合であれば一旦保存した上で、捜査機関側にある特定装置に送るということになりますから、通信事業者自身によって、この二つの点の適正は担保されているということになります。
 それから、四つ目についても、特定装置において、傍受した通信は全て自動的に記録されるように設定されておりますので、この点も代替し得るということです。
 それから、三つ目のスポット傍受のチェックについては、直接にこれにかわる機能はありませんけれども、傍受の経過が全て記録されますので、それが適正に行われたかどうかが事後的に検証可能です。この事後的に検証可能であるということがスポット傍受に関する適正担保の中心を占めますから、立会人がいる場合と本質的な部分で違いはないと言うことができます。
 立会人のもう一つの役割は、傍受の終了後に、裁判官に提出する記録媒体を封印するということです。この封印の趣旨というのは、記録の改ざんを防いで、傍受が行われたか否かを事後的に検証できるようにするということにあります。
 これについても、先ほど申し上げましたように、新たな仕組みのもとでは、特定装置が、傍受をした通信の全てと傍受の過程を、自動的に、かつ暗号をかける形で改変できないように記録するということになりますから、これは封印にかわる機能を果たし得るということになります。
 もっとも、立会人を廃止することに対しては、今申し上げたこととは別に、立ち会いというのは、人の目があることによって捜査機関が違法行為を行いにくくするという事実上の効果があるんだ、立ち会いをなくしてしまうとそれが失われてしまうではないかという批判があります。
 こういった立ち会いによる事実上の効果というのは、現行の通信傍受法が立ち会いの機能として予定したものではありませんけれども、立ち会いがそうした機能を持つこと自体は、そのとおり、あろうと思います。
 そうしますと、その上で、立ち会いをなくすことによってこういった抑止効果がなくなるということをどう考えるかということが問題になるわけですが、そもそも、ここで立ち会いによって抑止が想定されている違法行為とは一体何なのかということを考えてみる必要があるだろうと思います。
 まず、新たな仕組みのもとでは、そもそも、現在、立ち会いによって抑止されると想定されている違法行為自体が想定できなくなる場合があります。例えば、傍受期間の不遵守というのは、先ほどの仕組みだと、もともと通信事業者の方で限定した形で保存ないしは送るわけですから、そういう方向ではなくなるわけですね、そもそもそれはできなくなる。
 それから、違法行為をしても無意味な場合というのもあります。例えば、二重に通信を傍受する形にするというのは、特定装置の機能によってそれはできなくなりますから、こういう方向はそもそもない、できなくなる、無意味になるということですね。
 それで、問題はそれ以外の部分、例えばスポット傍受を行わないで無関係な通信を傍受する、こういったものが考えられるわけですが、これも、先ほど申し上げましたように、傍受をした通信の全てと傍受の経過が自動的に記録されて事後的に検証可能である以上は、その過程で捜査機関が違法行為をすれば当然に発覚することになりますから、そのことが抑止効果として当然働くだろう、ですから、それは、立会人がいないという場合であっても、抑止効果はこれによって十分に働くであろうと思います。ですから、事実上の抑止効果というのを考えたとしても、それは新たな仕組みのもとで十分それに代替し得るものがあるだろうということです。
 以上のとおり、新たな仕組みのもとでは、先ほど挙げました三つの改正点それぞれの問題はいずれも解決できるというふうに思います。そういった理解のもとに、部会でもこれについて合意が得られたということです。
 もちろん、こういったことは、暗号化ですとか、あるいは特定装置が想定どおりに機能するということを前提としますので、当然そこが担保される必要があるわけですけれども、例えば特定装置については、これはあらかじめ仕様書が公開されるというふうに伺っていますので、その段階で、その装置が正常に機能するかどうかということは検証されることになるでしょうし、さらに、改正法案のもとでは、こういった新たな仕組みを使った傍受を認めるかどうかも裁判官の審査対象になりますから、それを通じて装置等の適正さが担保されるということになるだろうと思います。
 以上で終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。拍手
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奥野信亮#9
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、長澤参考人にお願いいたします。
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長澤彰#10
○長澤参考人 おはようございます。弁護士の長澤です。お招きいただきまして、どうもありがとうございます。
 私は、一九八八年に弁護士登録をしまして、ことしで二十八年目になります。一九九六年に法務省の事務局参考試案が発表されて、それから盗聴法案の動きが始まりました。当時、私は、自由法曹団という弁護士の団体の中で盗聴法を阻止するための対策本部をつくりまして、事務局長として、九九年の八月、法案が制定されるまでかかわってきました。
 きょうは、盗聴法の制定当時どのような議論がなされたのかを振り返って、改正案の問題点について言及したいというふうに思います。
 レジュメを御用意しましたので、見ていただきながらお聞きいただければというふうに思います。
 まず、制定時、大きな問題となったのは、憲法との関係です。憲法違反ではないかということです。
 憲法は、戦前の人権侵害の暗黒社会それから監視社会の反省と教訓に立って、人権保障規定を整備しました。表現の自由を保障して、通信の秘密を明文で保障しています。プライバシーの権利は憲法十三条で保障しています。また、戦前の特高警察のような警察権力による人権侵害を許さない、こういう立場に立って、適正手続の保障を、憲法三十一条以下に詳細な規定を設け、特に、憲法三十五条においては令状主義を規定しております。
 通信の秘密やプライバシーの権利を安易に、捜査の必要性、捜査の有用性ということを根拠に盗聴を法制化するということは、憲法違反の疑いがあります。憲法上の権利が制限されるのは、他人の人権を害さない範囲で自分の人権を行使することができる、まさに人権相互の調整の問題で、人権自体に内在する原理である、こういう考え方が一般的に考えられています。抽象的な、捜査の必要性や有用性ということによって通信の秘密を制限するのであれば、戦前の暗黒社会と同じようなことになってしまうのではないでしょうか。
 自民党の改憲草案が、現在の人権保障規定に対して、公益と公の秩序を理由に人権を制限しようとしています。まさに、捜査の必要性や有用性ということだけを根拠に人権制限を図ろうとするならば、このような自民党の改憲草案と同じことになりはしないでしょうか。
 また、令状主義をどのように適用するのかというのも大きな論点でした。令状主義の精神は、裁判官が捜索、差し押さえの物を特定する。しかし、将来発生する会話をどのように特定するのか。本件犯行に関係する通信ないし会話というような抽象的な内容でしか令状に記載できません。特定性の要求をまさに満たしているとは言えないと私は思います。
 まさに、捜査令状は、被疑者に示して、そして被疑者の立ち会いを認めた上で法律が執行される、こういうことになります。しかし、盗聴の場合、この立ち会いも提示も全く要件を満たさない、こういうことになります。
 そこで、現行法制の中の通信事業者による常時立ち会いということが重要な要素となってきてはいました。しかし、この通信事業者の常時立ち会いは、通信事業者が通信を聞けない、その結果、切断することができない、切断権を認められないということで、必ずしも十分な保障規定とはなり得ませんでした。
 そして、当時の法案は、一般犯罪を対象とするということで、人権侵害性が極めて高いということでありました。
 当時は、今ここに来られております緒方靖夫さん宅への神奈川県警の盗聴事件が発覚し、そして、一九九七年の六月には、国家賠償請求事件の東京高裁判決が既に出されていました。判決では、情報収集活動を末端の警察官が職務と無関係に行うことは通常あり得ない、本件盗聴行為は、公安一課所属の警察官がいずれも県の職務として行ったと推認できる、このように神奈川県警による犯行であることを明確に断じています。しかし、その後に至っても、警察庁長官はこの法務委員会において、警察としては盗聴と言われるようなことは過去においても現在においても行っておらず、今後も行うことはないと、反省も謝罪の一言もありません。
 このような警察に盗聴の権限を与えられないという運動を提起して、多くの国民の共感を得ました。警察による違法行為、不祥事も当時は相当多く、それを隠蔽する体質に対する国民の不信感も相当多くありました。
 一九九九年六月、野党の三党それから三会派の代表が結集した日比谷野外音楽堂には、当時としては非常に多い、八千人の国民が結集しました。民主党菅直人、共産党不破哲三、社民党土井たか子、さきがけ武村正義、二院クラブ佐藤道夫、国民会議中村敦夫という代表が、それぞれ壇上で決意を表明しておりました。
 結局、与党は、このままでは盗聴法案の成立が危ぶまれるということで、対象犯罪を組織犯罪の四類型に絞ること、そして立ち会いも例外を認めない常時立ち会いとすること、それから国会への報告制度を設けること、このような修正案を提示しましたけれども、最終的に強行採決に至った、こういう経過であります。当時、野党は、牛歩戦術ということで、体を張って闘ったという歴史があります。
 今回、国会に提出された改正案の問題点について、二つ述べたいと思います。
 第一は、対象犯罪が拡大され、窃盗、それから詐欺、逮捕監禁など一般犯罪が広く認められているということです。
 これは、法律第一条に規定されております組織犯罪の摘発という立法目的と明らかに矛盾しています。最高裁の判決では、重大な犯罪に係る被疑事実に限定しており、その判断にも違反すると考えられます。改正法の定める組織要件である数人の共謀、それから役割の分担に従って行動する人の結合体、このような要件も濫用防止にはなり得ないと考えています。上川法務大臣は、二人で役割分担が認められれば適用が可能だと答弁しているからです。
 それから、暗号技術に基づく新しい傍受方法の問題です。
 この傍受方法では、通信事業者による常時立ち会いを排除しています。通信事業者による常時立ち会いは、第三者による監視の目が入ることによって、捜査機関による傍受記録の改ざん、それから通信傍受の濫用的実施を客観的に防止する、そして捜査機関に対してこのような行為を行わないという自制を促す機能を果たしてきました。しかし、新しい方法では、捜査機関に対する自制の効果を求めることはできません。
 この方法は、全ての会話が何日にもわたり録音されるというものです。犯罪に無関係な会話が膨大に録音され、犯罪と無関係な人の会話が盗聴されます。個人のプライバシーが丸ごと裸にされます。
 統計資料によると、盗聴の件数は、当初は年間十数件、最近は数十件であり、犯罪と無関係な通話の割合は八五%と言われています。しかし、一般犯罪まで盗聴が実施されるようになれば、おびただしい件数の盗聴が実施され、高い比率の無関係通話に対する盗聴が行われ、プライバシー侵害の危険性が格段と高まると言わざるを得ません。
 特に、盗聴の対象がマスコミ関係者に向けられた場合は極めて重大な問題をはらんでいます。
 犯罪報道に携わる社会部記者などが犯罪グループの関係者と連絡をとって、電話やそれから電子メールで取材を行う、この行為が軒並み盗聴の対象となります。正当な取材活動に致命的な打撃を与えるということになりかねません。
 現在の規則では、マスコミ関係者との通話であることがわかった時点で切断するということになっていますが、新しい傍受方法では全て録音されます。マスコミ関係者との会話を立会人がいない状態で警察が全て聞いてしまう、こういうことに対するチェックが事実上できなくなってしまう。
 秘匿性の高い通話というのは、マスコミ関係者ばかりではありません。弁護士との通話も全て録音されます。弁護士の秘密交通権が全く保障できないというような実態になり、弁護活動が丸ごと捜査機関に盗聴されてしまいます。弁護士としては許すわけにはいきません。
 警察による盗聴が私たちの市民生活に及んでくることはないでしょうか。
 例えば、労働組合の要求闘争で、次の団体交渉では何が何でも要求をかち取る、かち取るまで交渉はやめない、そのように執行部で意思統一をして、役割分担をして、一定時間、会社の役員を部屋に閉じ込めたというようなことになれば、通常の逮捕監禁の要件を満たし、盗聴ができることになります。
 労働組合だけではなく、原発に反対する運動や、それから環境問題を改善しようとする運動体の自治体との交渉などにこのようなことが悪用されないとは限りません。
 また、少年犯罪で一番多いのは、オートバイの窃盗です。少年グループが役割分担をしてオートバイ窃盗を実行したとすれば、窃盗罪を盗聴の対象としておりますので、盗聴ができるということになります。被疑者少年の携帯が盗聴対象とされると、犯罪グループだけにとどまらない、広範な人物との会話が盗聴の対象となります。家族、友人、知人、広範な会話が盗聴されます。少年たちのLINEとかSNS、このような通信は多数の人とのネットワークを形成しており、人権侵害の危険が広範に及ぶことが予想されます。
 最後に、弁護士会の状況について述べたいと思います。
 日弁連は、九九年の盗聴法の制定当時には、憲法違反の疑いを理由に反対の立場を貫き通しました。マスコミや市民と一緒に反対運動を展開し、与党を修正せざるを得ないところまで追い詰めたという実績があります。
 しかし、今回の法改正に当たっては、日弁連執行部は、一部の可視化を認めた法制審議会の答申案に賛成の立場をとったため、盗聴法について問題があるが、改正法案が速やかに成立することを強く希望するとして、法案に反対しないことを表明しています。この日弁連執行部の対応は、警察が盗聴法、検察が司法取引、日弁連執行部が一部可視化、三者がそれぞれとりたいものをとる、このような三者による談合と言わざるを得ません。
 しかし、十八の弁護士会会長が反対の共同声明を出して、その後、四つの弁護士会の反対の声明が出されています。東京の弁護士を中心に、盗聴法、司法取引を許さない弁護士、市民のデモを五月に三百人程度で大成功させたということもあります。
 日弁連執行部は、法務委員を訪ね、早期成立を働きかけていると言われています。これらの動きは、反対運動を展開している冤罪被害者や冤罪撲滅を求める市民に対する重大な背信行為と言わざるを得ません。
 日弁連執行部は、集団的自衛権行使を認める戦争法案に反対し、全国展開を行っています。憲法違反の疑いがあるという点では盗聴法も全く同じであり、今からでも、反対の立場に立って反対運動を展開することを強く求めたいと思います。
 さきの本委員会に出席した日弁連副会長の内山弁護士は、日弁連は、現時点でも、通信傍受、盗聴について基本的な考え方は変えていません、通信の秘密を侵害し、個人のプライバシーを侵害する、そういう危険性を持った捜査方法だという考え方は一貫していますと述べています。それであるならば、今からでも反対運動に立ち上がるべきではないでしょうか。
 この通信傍受法の拡大が行われた後に、警察が誰の会話を一番聞いてみたいと思うでしょうか。ここにおられる政治家の皆さんの会話を聞いてみたいと一番思うんだと思います。警察が収集した政治家の皆さんの会話は権力中枢に上がり、それがどのように使われるのかは皆さんが一番御存じのことだと思います。
 私たちは、これに反対する人たちとともに最後まで闘って、この法案を廃案にしたいと考えております。
 以上です。拍手
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奥野信亮#11
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、山下参考人にお願いいたします。
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山下幸夫#12
○山下参考人 おはようございます。本日は、意見を述べる機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、平成元年、一九八九年四月に弁護士登録をした者でございまして、現在、二十七年目でございます。
 私は、これまで日弁連の関係でよく参考人に来させていただいているんですが、きょうは、あくまで個人の立場で、現在審議中のこの法案について意見を述べたいと思います。
 私が弁護士になってちょうど十年目のころ、平成十一年、通常国会において通信傍受法の政府案が国会で審議をされておりました。当時から、私は、この法案は問題があるということで反対しておりました。
 国民世論や野党からも強い反対があり、結局、特に当時の与党の中の公明党が中心になりまして、大幅に修正された上、現行法が成立したということでございます。そして、翌平成十二年から施行されております。
 通信傍受の実施状況の推移という資料を見ても、ほぼ年間十件程度しか実施されていないということがわかります。すなわち、この通信傍受法というのは、当初の政府案に大きな縛りをかけ、捜査機関にとっては非常に使いづらい法律になっているということが言えます。
 今回の法案のもとになりました法制審議会の新時代の刑事司法制度特別部会は、もともと、大阪地方検察庁特別捜査部が立件した厚生労働省元局長無罪事件などを受けて設けられました検察の在り方検討会議を経て、検察官が過度に取り調べや供述調書に依存する風潮があるということを改めるべく検討され、それを受けて法制審議会の特別部会が設けられたという経緯がございます。
 また、当時、警察においてもいわゆる志布志事件などの冤罪事件が明らかになっている中で、捜査機関全体の問題として、冤罪防止のために、いかに捜査機関による権限を抑制し、自白獲得型の捜査を根本的に見直すかがこの特別部会には求められていたと考えられます。
 ところが、特別部会においては、通信傍受法をいかに使い勝手のよいものにするかという方向での議論がなされました。作業分科会の議論では、通信傍受という捜査手法が有用か必要かという観点から、対象犯罪の拡大が議論されました。
 その結果、捜査機関の捜査権限を大幅に拡大するものとなり、特別部会の当初の目的とは正反対の方向の取りまとめになってしまったということがございます。
 今回の法案は、当初の政府案に戻ろうとしていると考えられます。すなわち、現行法が成立する際にこれにかけていた縛りを完全に外そうとするものでございます。その意味で、本改正案は現行法を質的に転換するものであり、これを一旦認めますと、今後も通信傍受を拡大していくことがとめられなくなると考えられます。
 以下、本法案に即して具体的に指摘させていただきます。
 まず、対象犯罪の拡大についてです。
 現行法は、薬物犯罪、銃器犯罪、集団密航、組織的殺人の四類型だけを対象犯罪としています。これらは、性質上、組織犯罪と言えるものです。
 本改正案は、財産犯である窃盗、強盗、詐欺、恐喝を加えるとともに、殺人、傷害、傷害致死、現住建造物等放火、爆発物使用などの殺傷犯、逮捕監禁、略取誘拐、児童ポルノの提供罪等のそれ自体は本来組織犯罪ではない一般犯罪を対象としようとしています。そして、これを別表第二の罪として、いわゆる組織性の要件を傍受令状の要件として要求しようとしています。
 しかし、その要件は、組織犯罪処罰法の組織性の要件と比較すると、緩和されています。これは、特別部会での議論の中での妥協の産物として認められた経緯からしても、要件として極めて不十分なものとなっており、十分な歯どめにならないと考えられます。
 対象犯罪がこれだけ広く拡大されますと、これまで年間十件程度であった通信傍受は、年間数百件にふえるおそれがあると考えられます。
 また、今回、対象犯罪を決めるに当たりましては、捜査にとって通信傍受が有用か必要かという基準によったことから、今回の法案が成立いたしますと、今後は、捜査当局から事あるごとに、通信傍受が有用、必要という理由で、通信傍受の対象犯罪が拡大されていくことが強く懸念されます。
 特別部会においては、いわゆる振り込め詐欺や窃盗団を対象とすることが議論されていましたが、それならば、組織犯罪処罰法にある組織的詐欺罪を対象にするとか、新たに組織的窃盗罪を新設するなどしてそれを対象犯罪とすることも考えられたのにもかかわらず、詐欺罪や窃盗罪、さらには恐喝罪、強盗罪というものを全て対象とするという形で、一般犯罪の共犯事件についても通信傍受が可能となるおそれがあります。
 次に、通信傍受手続の合理化、効率化についてです。
 これはまさに捜査機関にとって使い勝手のよい制度にするためのものであり、捜査機関がやりたかった捜査手法であると考えられます。
 本改正案は、現行法が認める方式に加えて、通信事業者の施設で行う一時的保存方式、特定電子計算機を用いて捜査機関の施設で行うリアルタイム方式と一時的保存方式の三つの方式を可能にしようとしています。
 このうち特に問題が多いのは、捜査機関の施設で行う方法です。この場合には、暗号化等を行う機能を有する特定電子計算機を利用して、通信事業者の施設から捜査機関の施設に対象となる通信を暗号化して伝送し、これを捜査機関の施設で復号化してスポット傍受を行うというものですが、立会人による立ち会いや原記録の封印は不要となります。
 現行法上の通信傍受は、全国で一カ所とされる通信事業者の施設に捜査官が出向き、立会人をあらかじめ全て準備しなければ実施できないという点で極めてハードルが高い捜査方法でありました。それゆえに実施件数も少なかったと考えられますが、この方式によりますと、先ほどの対象犯罪の拡大と相まって、通信傍受の実施は飛躍的にふえ、無関係な市民の通話が聞かれる頻度が高くなると考えられます。
 現行法の立会人は、通信内容を聞くことができず、切断権も認められていないために、外形的チェックを行うものとされてきました。これは、もともと現行法自体が立会人の権限を限定したことに問題があったと考えられます。現行法ができる前に検証許可状を使って電話傍受した事案について、先ほどから何度か言及がありますが、最高裁平成十一年十二月十六日第三小法廷決定は、立会人に電話を聴取して切断する権限を認めていた事案であるということに留意する必要があります。
 ただ、現行法によっても、立会人がいることによって、捜査機関が無関係通信を傍受するなどの濫用を抑制する効果があったと考えられます。そして、これは、通信傍受が憲法違反にならないための要件の一つをなしていると考えられます。そうであるとしましたら、本改正案が、捜査機関の内部で第三者の立会人がいない状態で通信傍受を実施することについては、その公正さに疑問を持たざるを得ません。
 政府は、暗号化する機能を有する特定電子計算機を用いることを立会人不要の理由として説明していますが、暗号化というのは伝送の際に情報が漏えいしないための措置であり、傍受手続の現場での外形的チェックにかわるものではありません。
 ちなみに、伝送による漏えいの危険は、暗号が絶対に破れないわけではないことから、専用回線によることが望ましいとしても、莫大な予算が必要となります。
 したがって、少なくとも、特定電子計算機の技術的措置の適正性等を第三者が随時に抜き打ち的に監査を実施することというのは最低限必要であると考えられますし、現行法上認められた傍受記録に記録された通信の当事者に与えられた不服申し立てがほとんど利用されていないという現状において、捜査機関の施設において立会人のいない状態で通信傍受が行われるようになるのであれば、第三者機関が裁判所に保管された原記録の全てまたはアトランダムに選んで聴取して事後的チェックを行う制度は不可欠であると言うべきであります。
 その他、本改正案には極めて問題が多くありますが、時間の関係で省略させていただきます。
 しかし、私は、このままの内容で成立させるべきではないと考えております。国会による良識ある審議を期待しまして、私の意見を終わります。
 ありがとうございました。拍手
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奥野信亮#13
○奥野委員長 ありがとうございました。
 次に、緒方参考人にお願いいたします。
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緒方靖夫#14
○緒方参考人 おはようございます。緒方靖夫と申します。こうした機会を与えていただきましたことに感謝申し上げます。
 私は、警察による電話盗聴事件の被害者の立場からの話をさせていただきます。
 二十九年前に発覚したかなり以前の事件でありますので、資料を配付させていただきました。通信傍受法の改正を考える上で参考にしていただければ幸いであります。
 私の事件ですけれども、東京・町田市にある自宅の電話に雑音が入ることから、NTTに調査をしてもらった結果、百メートル離れたアパートに我が家の電話線を切断し引き込み、親子電話のようにして有線で盗聴していたという事件が一九八六年に発覚いたしました。東京地検特捜部の捜査の結果、アパートに残された生活の痕跡、指紋、足紋、衣服、布団、録音機器、カセットテープなど多数の証拠が押収されました。実行犯は県境を越えてやってきた神奈川県警の五名の現職公安警察官と特定され、その盗聴チームの構成、手口、指揮系統など、事件の全容がほぼ解明されました。
 検察は、資料三にありますけれども、下線の部分ですけれども、四つの理由を挙げて、特に、警察が相応の懲戒処分を約束し、警察庁警備局長、神奈川県警本部長の辞職など、直接の上司や責任者を更迭したことを理由に不起訴処分といたしました。資料四に挙げておきましたけれども、処分を決定した当時の伊藤検事総長が、退任後、不起訴にした理由をおとぎ話にかこつけて語ったものであります。
 その翌年、八八年九月、私と家族三人は国家賠償裁判を提起いたしました。六年後の九四年の東京地裁の判決は、資料の七のAにありますけれども、少なくとも警察庁警備局長、公安一課長ないし神奈川県警本部長、警備部長において具体的内容を知り得る立場にあったと、国が関与した計画的な日本共産党に対する情報収集であると断じました。
 九七年の確定した東京高裁の判決は、これは七のBですね、電話盗聴が警察の組織的犯行であることを認定した上で、少なくとも九カ月間盗聴された既遂であるとして、国、神奈川県、警察官個人に賠償金の支払いを命じました。さらに、判決は、法を遵守すべき立場にある現職警察官が犯罪にも該当すべき違法行為を行ったという点だけを見ても、本件盗聴事件の違法性は極めて重大だと指摘いたしました。
 警察庁関与の組織的、計画的な犯行という点は、資料五の公務員の職権濫用についての付審判請求への東京地裁、東京高裁の決定でも、また資料六の東京第一検察審査会の不起訴不当の議決でも、資料八の盗聴のために使った公金の神奈川県への返還要求の住民訴訟での横浜地裁の判決でもそれぞれ指摘されているところであります。
 九七年の国賠訴訟東京高裁判決に、被告国は、上告する理由がないと判決を受け入れました。しかし、警察庁と法務省は国会で、この事案についてそれぞれ別の説明を行っております。
 警察庁は、事件当時の山田長官が、警察におきましては、過去においても現在においても電話盗聴は行っていませんと答弁し、今日もこの答弁を踏襲しております。
 他方、下稲葉法務大臣は、平成十年三月十一日の当院法務委員会で、この事件の認識を問われ、神奈川県警の警備部の警察官による共産党の方に対する盗聴事件だと答弁しております。
 このように、警察と検察、法務との間で、私の事件に対する認識が異なっております。警察から、一度も被害者である私と家族に対する謝罪はありません。法を遵守すべき警察が、違法性は極めて重大という判決を受け入れながら、警察庁トップを先頭に、知らぬ存ぜぬを通してきたわけです。警察の中に、法を軽視するという、公権力の行使者として絶対にあってはならない体質を感じさせます。
 通信傍受を実行するのは警察官です。したがって、十数年前の通信傍受の法案審議の際に、私の事件がクローズアップされ、その懸念が払拭されるかどうかが大きな論点となりました。しかし、今日まで、この盗聴事件に警察は関与していないという警察庁の態度は変わっておりません。
 前回の審議では、警察への懸念が強く指摘されたもとで、原案が修正され、一定の制約が設けられました。今度の改正案は、この制約を取り払うだけでなく、対象も拡大されるというものです。事業者から暗号化して警察署、警察本部などの警察施設のコンピューターに伝送させ、警察署、警察本部でさらに暗号化することで、立会人なしの通信傍受を可能にするというものであります。憲法三十五条の令状主義をかなぐり捨てるもので、その点でも憲法違反の法律と私は考えます。
 私の自宅への盗聴は、立会人なしの盗み聞きと言えるだろうと思っております。しかも、この十年余り、通信傍受について国民に十分な情報が開示されてきたわけではありません。私は、当時の懸念が払拭されていないばかりか、強まっていると考えます。
 警察は、みずから行った犯罪を公権力の検察には認め、わびて、不起訴に持っていく一方で、裁判の場で被疑者警察官は出頭拒否を繰り返し、出頭せよとの裁判官の指揮命令にも従わない、法廷を侮辱する態度に終始しました。さらに、国会の場でも、盗聴していないと平然と虚偽を繰り返してきました。こうした組織に通信傍受を委ねていいのかどうか、これは本当に大きな問題だと私は考えます。
 警察においては、通信傍受法が九九年にできる以前から、非合法の電話、室内盗聴が行われてきました。発覚しただけでも約四十件ありますが、私の事件を除いて、被疑者不詳のままでした。そこで押収された盗聴器の幾つかは警察庁が自前でつくったものであり、警察庁には四係という非合法の活動を進める部署があり、そこも含めて一定数の通信専門の職員が働いていることも、私の事件の法廷で明らかになっております。
 次に、盗聴されるということは一体どういう被害なのかについて述べたいと思います。
 私の場合、盗聴は少なくとも九カ月間の既遂とされています。これは、政治活動の自由への侵害であり、同時に、私たち家族の会話が全て聞かれ、家族が丸裸にされたという感があります。盗聴では、電話で話した相手が全て被害者となります。損害の回復というものはあり得ません。
 警察の盗聴には決まりがあります。一、全部聞く、全部聞かなければわからないから。二、全部記録に起こす。三、その日のうちに報告する。どんなたわいのない会話にも注意を集中して聞き逃さない。ここに盗聴工作の本質があります。
 東京高裁の判決は、資料の七のBの下線を引いた部分ですけれども、プライバシー権のじゅうりんによる被害について、こう書いてあります。「憲法上保障されている重要な人権である通信の秘密を始め、プライバシーの権利、政治的活動の自由等が、警察官による電話の盗聴という違法行為によって侵害されたものである点で極めて重大」と指摘して、盗聴の性格を以下のように強調しています。さらに下線の部分ですけれども、「電話回線の傍受による盗聴は、その性質上、盗聴されている側においては、盗聴されていることが認識できず、したがって、盗聴された通話の内容や、盗聴されたことによる被害を具体的に把握し、特定することが極めて困難であるから、それ故に、誰との、何時、いかなる内容の通話が盗聴されたかを知ることもできない被害者にとって、その精神的苦痛は甚大」であると。
 私の場合は、非合法の盗聴です。警察が通信傍受法に基づいて行う場合にも、こうした被害をもたらす可能性が大いにあります。
 私の実感ですけれども、九九年以前には、通信傍受は憲法二十一条により許されないという考え方が支配的だったと思います。その時期でさえも、警察においては盗聴が行われてきたことは事実であります。通信傍受法が成立した後には、非合法の盗聴の可能性も広がったと思います。その法の拡大は、盗聴の裾野をさらに広げていくことになると思います。
 警察の非合法の盗聴などを行う四係の創設にかかわった元警察官は、盗聴の対象は共産党など左翼が多いと言えるが、与党を含めて、国会議員でいえば、可能性として全ての議員が対象になると指摘しています。警察の方が、本人がとっくに忘れている自分の動静を本人以上に把握していることは幾らでもあり、それをおどしに使うことはよくあると述べている、こういうことがあります。
 警察出身者がこうした情報を手にして力を持つということは、これまでも幾らでもありました。一匹オオカミと言われた警察出身者が異常な権力を掌握する力の源は、まさにこうした情報にあります。
 私は、決して反警察ではありません。市民の警察をつくるべきだということを考えてきました。どの社会にも、市民の権利の保障のために公的な力が必要であります。そして、そのために警察は不可欠です。
 二百年以上前のフランス人権宣言には、公的な力は、全ての市民の利益に合致して設けられるべきで、その行使を委託される権力者の特殊な利益のために設けられてはならないとあります。これこそ私は警察の姿であってほしいと強く願っております。
 最後ですが、みずからの犯罪行為をやっていないと歴代警察庁長官が国会で虚偽を繰り返し、法令を軽視し、組織防衛という特殊な利益を優先する警察に通信傍受の実務を一層広範に担当させることは、国民のプライバシー権にとって極めて危険だと考えます。私は、現行の通信傍受法に反対でしたし、実際に多くの問題があったと見ております。したがって、その拡大には強く反対するものであります。
 以上です。ありがとうございました。拍手
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奥野信亮#15
○奥野委員長 ありがとうございました。
 以上で参考人の方々の御意見の開陳は終わりました。
    —————————————
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奥野信亮#16
○奥野委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山下貴司君。
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山下貴司#17
○山下委員 自由民主党の山下貴司でございます。
 私、十数年間、検事をやっておりました。その中で、オウム事件を初めとするテロなどの組織犯罪、暴力犯罪、あるいは爆窃団類似の組織的窃盗団の事件をやらせていただいたこともございます。他方で、今、弁護士として被害者支援などもやっておりますし、一方で、捜査機関の権限の濫用といったことにも対峙している、そういった立場でもございます。
 そういった観点から、やはり、新しい時代の刑事司法、これは必要なんだろうというふうに痛切に感じておりまして、今回、特別部会におきまして、川出先生を初めとする刑事司法の学者の専門家に加えて、例えば日弁連の元会長であるとか、あるいは連合の事務局長であるとか、村木次官であるとか、多様な方々が本当に衆知を集めて結論を出された特別部会の議論に基づいた今回の政府案、これについては非常に周到な議論をされていたものであろうというふうに考えております。
 そして、今回、通信傍受につきまして、まず対象犯罪の拡大について参考人の皆様にお伺いしたいわけでございます。
 今回、通信傍受法の改正に関する政府案、これは、まず私なりに整理いたしますと、社会問題化している特殊詐欺事件を初めとする深刻な組織的財産犯罪に対処するため、通信傍受の対象犯罪に詐欺、電子計算機使用詐欺、そして恐喝あるいは強窃盗などを加えるということ、二つ目に、暴力団やテロ組織による犯罪を防止するために、人の生命身体に重大な危険を及ぼす組織犯罪にも対応するために、殺傷犯、あるいは拉致監禁、誘拐関連事犯、そして放火や爆発物使用事犯、そういったものについても対象犯罪に加えるというもの、そして三つ目、通信技術の発達により、通信を手段として被害が深刻かつ回復しがたいほど拡大しつつある児童ポルノ犯罪、これは欧州評議会のサイバー犯罪条約においても通信傍受の対象とすることが義務化されているわけでございますけれども、そういったものを対象犯罪として加えることとしておると聞いております。
 そこで、まず田中先生に、田中先生は日弁連副会長あるいは名古屋弁護士会会長などとして弁護士の実務経験が豊富であり、特に民事介入暴力から市民を守ってきた経験も豊富だと聞いております。そういった実務の肌感覚に照らして、今回の通信傍受の対象となる、先ほど申し上げた対象犯罪の拡大について、実務家としての御感想を伺いたいと思います。
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田中清隆#18
○田中参考人 田中でございます。
 今の御質問に対してお答えをさせていただきたいと思います。
 私どもとしましては、要は、国民の不安とか懸念をどうやっておさめてあげるか、被害を防止することによってそれを実現していくかということをとにかく考えたいと思っております。
 そうしますと、今現在ある四つの犯罪だけに限定したのではそういった不安を取り除くことはできない。では、振り込め詐欺と窃盗、これらが今、集団的に行われておるので、それに限定したらどうだという意見も、それは出る可能性はあると思います。
 しかしながら、先ほども私申し上げたように、犯罪というものは、もちろん、刑法的にいえば、これは財産犯、これは身体に対する傷害というふうにきちんと分けることは可能なんですけれども、しかし、財産犯に襲われた場合であっても、精神的に非常にダメージをこうむるということは幾らでもある。被害をこうむる側からすると、刑法で決めるように、これは財産犯、これは身体的被害、これは精神的被害なんというふうに分けられないんですね。例えば略取誘拐とか傷害だって、やはり継続的、反復的、組織的にやられたら、もちろん財産的被害の方にもつながっていきますし、不可分なケースが多いわけです。
 したがって、私は、現在掲げられておるものについては拡大をしていただきたい、それが国民の安心につながるというふうに考えております。
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山下貴司#19
○山下委員 ありがとうございました。
 先ほど、田中先生そして川出先生からは、平成十一年の最高裁判決も踏まえて、今回の対象犯罪につきましては通信傍受が正当化される重大犯罪に当たるのであろうというふうな趣旨の御発言がございました。
 それを前提として、他方で、罪種について限定しよう、もともと拡大すること自体認めないという方もおられるわけですけれども、拡大する中でも対象犯罪を限定しようというふうな見解もあるやに聞いております。
 そこで、川出先生そして田中先生に伺いたいんですが、例えば、まず第一として、拡大する対象犯罪を組織的財産犯罪に限定しよう、すなわち、詐欺、電子計算機使用詐欺、恐喝、強盗、強盗致死傷、窃盗に限定するという考えについて、逆に言えば、より重大な保護法益である生命身体に対するテロ、組織犯罪は今回は除外しよう、対象犯罪としない、そういう考えについてどのようにお考えでしょうか。川出先生そして田中先生からお願いします。
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川出敏裕#20
○川出参考人 今おっしゃった生命身体に対する犯罪と組織的な財産犯を比較したときに、犯罪の重大性ということからすれば、それは当然、組織的な生命身体犯の方が重要だということになるでしょうから、それを除外するという立場は、犯罪の重大性ということではなくて、恐らく、現実的な通信傍受という手法を導入する必要性がない、そういうお立場なんだろうと思います。
 ここは評価が分かれるところだと思うんですが、例えば北九州で起きているような事件ですね、暴力団が自分たちに従わないような一般市民の人について生命身体を侵害するような犯罪を行っている可能性がある、ああいう事案について、数は確かに少ないかもしれませんけれども、通信傍受を導入することであの事案が解明できるということであるとすれば、やはりそれを入れる必要性というのはあるのではないかと私は思います。
 ですから、重大性というか必要性を考えるときに、数として多いというところに着目する部分もあれば、そうではなくて、質の問題として入れる必要があるという場合もあると思いますので、私の意見としては、除外するというのは妥当ではないのではないかというふうに思います。
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田中清隆#21
○田中参考人 先ほどちょっと先回りしてお話ししてしまったと思うんですが、私も、結論から申しますと、限定は反対でございます。
 先ほど申し上げましたように、財産犯とそうでない犯罪とが、被害者の側から見たときに必ずしもきちっと分離できるものではないということもあります。そういったことも含めて、国民の安心、安全という立場からすれば、これはやはり狭めるべきではないというふうに考えております。
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山下貴司#22
○山下委員 ありがとうございました。
 それでは、引き続いてお二人に、今回の対象犯罪について、さらに絞って、今、特殊詐欺事案が問題なんだということで、特殊詐欺関連罪種に限定しよう、つまり、詐欺、電子計算機使用詐欺、恐喝だけに限定しよう、強盗や窃盗、強盗致死傷は対象犯罪としないという見解もあるやに聞いておるんですが、そういったことについて、川出先生そして田中先生の御見解を承りたいと思います。
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田中清隆#23
○田中参考人 何度も申し上げておりますが、被害者の側の立場に立って考えますと、全く同じような被害をこうむっているにもかかわらず、こっちは救われた、こっちは救われなかった、詐欺は救われたけれども恐喝はだめですよ、これはやはり、国民あるいは被害者の側からして全く合理性を欠く。同じような、暴力団あるいはそういった犯罪組織による被害をこうむったときに、あなたの方はだめですよ、こっちだけいいですよ、これはだめじゃないかと私は思っております。
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川出敏裕#24
○川出参考人 組織的な強盗とか強盗致傷を外す理由というのは、先ほどとも同じで、事案としてそっちは少ないということなんだろうと思いますが、これも、現にそういう事案があるというときに、通信傍受を使ってその事案が解明できるということであれば、やはりそれを外す理由はないだろうというふうに思います。
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山下貴司#25
○山下委員 私も、過去、検事の時代に、連続宝石店窃盗団、爆窃団類似の犯罪ですが、これは連続で合計十億を超える貴金属の窃盗を解明したことがございます。他方で、やはり組織的窃盗団というのは、必ず売り先であるとかそういったものがございます。しかし、恐らく暴力団が関与していたことがうかがわれたんですが、そういった背後にいる者、これについては十分迫れずに終わったという思いがございます。そうした中で、やはり先生方の御意見、非常に共鳴するものがございます。
 では、これは川出先生に伺いたいんですが、例えば児童ポルノ犯罪、これは対象犯罪から外してはどうだという見解もあるやに聞いておりますが、これはいかがでしょうか。川出先生に伺います。
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川出敏裕#26
○川出参考人 児童ポルノについては、恐らく法定刑が低いということが一つの理由なのかと思いますけれども、先ほど申し上げましたように、法定刑だけの問題ではないので、国民の権利利益がどの程度侵害されるかということを考えたときに、児童に対する心身への影響ということは非常に重大なものがありますので、それは入れる方向で考えた方がいいと思います。
 それから、先ほど山下先生おっしゃったように、これは国際的な要請ということもありますので、そういうことも含めて考えたときには、やはり児童ポルノについても、まさに通信傍受によって解明できる部分があるということであれば、それは入れておくべきだろうと思います。
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山下貴司#27
○山下委員 ありがとうございます。
 私自身、欧州評議会サイバー犯罪条約の交渉担当をやっておりまして、児童ポルノ犯罪に対する通信傍受については留保条項が入っております。この留保条項の対象に児童ポルノ犯罪を入れることに大変苦労いたしまして、日本は児童ポルノ天国か、そういった罵声を浴びせられながら私は交渉して、何とか留保条項を入れた記憶がございます。今、留保しているわけでございますけれども、我が国の取り組みを示すためにも、やはりここはしっかりとやるべきであろうと考えております。
 次に、手続の合理化、効率化問題でございます。
 今般、手続の合理化、効率化において、暗号技術を活用することによって、傍受の実施の適正を確保しつつ、通信事業者等の立ち会いを要件とすることなく、捜査機関の施設においても傍受が可能になるということになっております。
 ここで川出先生に伺いたいんですが、そもそも現行通信傍受法のもとで通信事業者が常時立ち会うこととした趣旨について伺いたいと思います。と申しますのは、通信事業者が常時立ち会うことになっておるんですけれども、通信事業者は傍受の中身は聞けないわけですよね。何が聞かれているかわからない部分について、ずっと横にいて座っているだけというのがこの前の視察の結果でもありました。
 他方で、現行法において立ち会うということであれば、捜査官に対して、人に見られているということで心理的抑制が働いて、違法、不適正な通信を傍受することに対する抑止効果があるんじゃないか、逆に、立会人がなくなってしまえば、捜査官がそんな心理的抑制から外されて、意のままに不適正な通信傍受を行うのではないか、そういうふうな不安もささやかれているところでございます。
 これに関しまして、川出先生から御見解を承りたいと思います。
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川出敏裕#28
○川出参考人 先ほど申し上げたことの、ある部分繰り返しになりますが、立会人の役割は、外形的な事項のチェックということ、それから封印をするということでして、その上で、委員もおっしゃったように、人に見られているということによって違法行為をしなくなる、そういう効果も期待されているんだという意見もあります。法律上の役割としてそれが期待されているということではないと私は思いますけれども、実際にはそういう効果があるということは、そうかもしれません。
 ただ、先ほど申し上げたように、立ち会いをなくしたということによって抑止され、なくなる違法行為というのは一体何なんだろうかということを考えたときに、そもそも、そういう違法行為というのは新たな仕組みのもとではなし得ないという場合もありますし、また、可能性としてあるとしても、やはり核心の部分というのは、見られていることによる抑止効果というよりは、例えば、違法なことをやったとすればそれは事後的に発覚するということで抑止されることの方が実際には大きいだろうと思いますので、そういう意味では、立会人をなくすことによる抑止効果の消滅という点は、問題としては解消できるのではないかというふうに思います。
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山下貴司#29
○山下委員 ありがとうございました。
 引き続いて川出先生に、例えば、今、常時立会人を必要とするんだ、実務上、結局、通信傍受を実施するためには、場合によっては一カ月前から、通信事業者、誰が立ち会うんだ、どういうふうにやるんだということで、実施に一カ月以上の時間を要してしまう場合も珍しくないと聞いております。一部の見解では、いや、こういったことで運用上通信傍受の実施を抑制しているんだ、それで実務的に補充性の要件を担保してきたんだというふうな見解もあるやに聞いておりますが、こういった見解ですね。
 通信傍受については、既に補充性の要件、あるいは、今回新しく、対象犯罪については組織性の要件とか、さまざまな要件がございます。そして、一時保存につきましても暗号化の要件がある、そして裁判官がしっかり見るという要件があるわけですけれども、そういったことプラス、常時立会人を必要とすることで運用上抑制するんだという見解について、いかがお考えでしょうか。
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