法務委員会

2017-06-16 参議院 全77発言

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会議録情報#0
平成二十九年六月十六日(金曜日)
   午前十時開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月十六日
    辞任         補欠選任
     中泉 松司君     足立 敏之君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         秋野 公造君
    理 事
                西田 昌司君
                山下 雄平君
                真山 勇一君
               佐々木さやか君
    委 員
                足立 敏之君
                猪口 邦子君
                中泉 松司君
                古川 俊治君
                丸山 和也君
                元榮太一郎君
                柳本 卓治君
               渡辺美知太郎君
                有田 芳生君
                小川 敏夫君
                仁比 聡平君
                東   徹君
                糸数 慶子君
                山口 和之君
   国務大臣
       法務大臣     金田 勝年君
   副大臣
       法務副大臣    盛山 正仁君
   大臣政務官
       法務大臣政務官  井野 俊郎君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        青木勢津子君
   参考人
       東京大学大学院
       法学政治学研究
       科教授      橋爪  隆君
       刑法性犯罪を変
       えよう!プロジ
       ェクト      山本  潤君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○刑法の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議
 院送付)
○元々日本国籍を持っている人が日本国籍を自動
 的に喪失しないことを求めることに関する請願
 (第二五四号外四件)
○国籍選択制度の廃止に関する請願(第二五五号
 外四件)
○共謀罪(テロ準備罪)法案の国会提出反対に関
 する請願(第六〇九号外一件)
○共謀罪の創設に反対することに関する請願(第
 八〇六号外二七件)
○複国籍の容認に関する請願(第八七八号)
○外国人住民基本法の制定に関する請願(第八七
 九号)
○共謀罪創設に反対することに関する請願(第九
 四七号外二五件)
○民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求
 めることに関する請願(第九四八号外三件)
○共謀罪の創設反対に関する請願(第一〇五六号
 外七七件)
○民法を改正し、選択的夫婦別氏制度を導入する
 ことに関する請願(第一二三〇号外一件)
○法務局、更生保護官署、入国管理官署及び少年
 院施設の増員に関する請願(第一二五八号外一
 五件)
○民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正に関
 する請願(第一三二八号外一〇件)
○テロ等準備罪(共謀罪)を新設する組織犯罪処
 罰法改正案の廃案に関する請願(第一三七二号
 )
○治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に
 関する請願(第一三七三号外五〇件)
○裁判所の人的・物的充実に関する請願(第一五
 四一号外九件)
○共謀罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の廃案
 を求めることに関する請願(第二〇七八号外四
 件)
○選択的夫婦別姓を実現する民法改正に関する請
 願(第二三二六号外一件)
○継続調査要求に関する件
○委員派遣に関する件
    ─────────────
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秋野公造#1
○委員長(秋野公造君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
 刑法の一部を改正する法律案を議題といたします。
 本日は、本案の審査のため、二名の参考人から御意見を伺います。
 本日御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授橋爪隆君及び刑法性犯罪を変えよう!プロジェクト山本潤君でございます。
 この際、参考人の方々に一言御挨拶を申し上げます。
 本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。
 参考人の皆様方から忌憚のない御意見を賜り、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方について申し上げます。
 まず、橋爪参考人、山本参考人の順に、お一人十五分程度で御意見をお述べいただきまして、その後、各委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
 なお、意見の陳述、質疑及び答弁のいずれも着席のままで結構でございますが、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることとなっております。また、各委員の質疑時間が限られておりますので、御答弁は簡潔にお願いいたします。
 それでは、橋爪参考人からお願いいたします。橋爪参考人。
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橋爪隆#2
○参考人(橋爪隆君) おはようございます。ただいま御紹介いただきました東京大学の橋爪と申します。専門分野は刑法でございます。
 本日は、このように参考人として意見を述べる機会をいただき、大変光栄に存じます。私は、法制審議会の刑事法部会の審議に幹事として参加しておりました。
 本日は、刑事法部会の議論を踏まえながら、刑法の一研究者としての観点から改正法案の内容に関しまして若干の意見を申し上げたいと存じます。A4判で一枚の資料を御用意しております。これに即して、考えるところを申し上げたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 今回の刑法改正案におきまして重要なポイントは、資料第一から第四の四点に集約できようかと存じます。先に結論から申し上げますと、全ての点につきまして正当な方向の改正であるというふうに考え、積極的に評価したいというふうに考えております。
 まず第一点でございます。強姦罪の構成要件及び法定刑の見直しでございます。
 まず、前提問題としまして、現行法における性犯罪の基本的な構造について簡単に申し上げたいと存じます。
 先生方御承知のとおり、現行法は、強制わいせつ罪と強姦罪という二つの性犯罪を設けております。あえて単純に申し上げますと、通常の性犯罪が強制わいせつ罪でありまして、特に被害が重大で悪質な性犯罪のことを強姦罪というふうに別個規定しているわけでございます。
 そして、通常の性犯罪と重大な性犯罪の区別の基準といたしましては、現行法は、姦淫行為、すなわち男性が女性に対して強制的に性交を行うこと、これを区別の基準としているわけでございます。もっとも、性犯罪の被害の実態に鑑みますと、重大な性犯罪として重く罰すべき類型を姦淫行為に限定する必然性は乏しいと思われます。
 こういった問題意識から、改正法案では、以下の一、二の二点に関しまして、重大な性犯罪として罰し得る行為の範囲を拡張しております。
 まず第一に、性別による区別の撤廃でございます。
 すなわち、改正法案におきましては、男女の区別を廃し、男性が性交を強制される行為についても重大な性犯罪として重く罰し得ることになっております。男性も性犯罪の被害者になり得るということについては、従来十分な問題意識がなかったようにも思われます。しかしながら、刑事法部会では、関係各位にヒアリングを実施いたしましたが、お話を伺いまして、男性に対する被害といったものが多数存在していること、また、男性が被害を受ける場合についてもその心身のダメージは深刻であることにつきまして認識を強くいたしました。
 このように、性犯罪の被害につきましては性差を重視すべきではないことから、男性の性的保護を強化する法改正には正当な方向であるというふうに思われます。
 第二に、重大な性犯罪は性交の強制には限られないという点でございます。
 性犯罪の被害が被害者の心身に重大なダメージを与えるのは、他人の性器が自己の身体の中に強引に入ってくるという濃厚な身体的接触、侵襲にあると思われます。
 このように、性器の身体への侵入という事実が重要であると解するのであるならば、現行法の姦淫行為、すなわち膣への男性器の挿入だけを特別に重く罰すべきではなく、性器の身体への挿入一般を重く罰することには十分な合理性がございます。まさに改正案は、こういった問題意識から、重大な性犯罪の行為態様を性交、すなわち膣への男性器の挿入だけではなく、肛門性交、口腔性交にまで拡張しております。これらは、いずれの類型も、男性器が無理やりに身体に入ってくる、あるいは男性が被害者の場合においては自分の男性器を無理やりに意思に反して他人の身体の中に入れさせられるという意味において重大な被害としての実態を有しております。
 さらに、具体的な事例を考えますと、男性間における性的な被害、さらに、性交が困難な幼児、児童に対する性犯罪を考えますと、膣への挿入行為のみを特別に罰するべきではなく、肛門性交、口腔性交を同様に重く罰することについては、性犯罪の被害の多様化に対応するという観点からも重要な意義があるように考えております。
 さらに、二番に移りますが、法定刑の引上げでございます。
 改正法案におきましては、強姦罪の法定刑の下限を懲役三年から懲役五年に引き上げております。このような厳罰化の当否につきましては賛否両論があり得るところでございますし、私自身も、いたずらな厳罰化については若干のちゅうちょを覚えております。もっとも、今回の法改正につきましては、次のような観点から法定刑の引上げに賛成したいというふうに考えております。すなわち、強盗罪との比較という観点でございます。
 強姦罪、強盗罪は、共に暴行、脅迫を手段とする粗暴犯でありますが、強姦罪の方が被害者に対する心身の被害も深刻でありまして、より重く罰すべき犯罪であるということにつきましては恐らく見解の一致があると思われます。実際、刑事裁判の実務においても、強姦罪の方が強盗罪よりも量刑が重い傾向にあり、それには十分な理由があると思われます。
 しかしながら、現行法では、実は強盗罪の方が法定刑が高い犯罪でございます。すなわち、強姦罪の法定刑の下限が三年であるのに対して、強盗罪の刑の下限は五年です。このような法定刑の逆転現象はやはり看過し難いように思われます。現在の裁判実務の量刑傾向、また国民一般の健全な感覚に対応するためには、強姦罪の法定刑につきましても、少なくとも強盗罪と同じ程度までの引上げをすることが重要であるように思われます。こういった観点から、今回の法定刑の引上げについても賛成したいと考えております。
 以上が資料の第一、強姦罪の構成要件及び法定刑の見直しに関する意見でございました。
 続きまして、資料の第二、監護者性交等の罪の新設に移ります。
 改正法案におきましては、十八歳未満の者を現に監護する者がその影響力があることに乗じて性交等をする行為を強制性交等の罪と同様に処罰をするという新たな犯罪類型が提案されてございます。現に監護する者とは、その生活費用、住居、人格形成等の生活全般について十八歳未満の者を継続的に保護する関係にある者を意味しますので、典型的な関係は親権者による犯行と言えようかと存じます。この問題につきましても法制審議会刑事法部会のヒアリングで伺ったところでございますけれども、親子間の虐待といったものは不幸にして多数発生しており、児童の心身に対する極めて深刻な被害をもたらしております。
 また、本来ならば児童を保護し監護すべき者が言わばその地位を濫用し、児童を性的に搾取、虐待するという行為は、被害児童にとっては誰にも助けを求めようがない行為でございまして、極めて悪質かつ卑劣な犯行でございます。そういった意味で、行為者に対する非難可能性も高いというふうに思われます。このような被害の重大性、犯罪の悪質性に鑑みますと、改正法が新たに監護者性交等の罪を新設したことには十分な合理的な理由があったように思います。
 もちろん、家庭内、親子間の虐待については、現行法でも性犯罪としての処罰が可能でございます。すなわち、児童に対する暴行、脅迫があれば強姦罪が成立しますし、また、被害者が抵抗困難な状況にあることに乗じて性交等に至れば準強姦罪等が成立します。しかしながら、家庭内の性的虐待については、密行性が高いことから、暴行、脅迫等の行為を具体的に認定することが困難な場合が多く、それゆえ、現行法では性犯罪として立件することが必ずしも容易ではなかったというふうに理解しております。
 また、児童が親権者に嫌われたくないという一心で性交の求めに応ずるようなケース、あるいは性的虐待が継続化、常態化して、児童としてもこういった関係を続けることについての違和感を失うという認識に至ってしまい、被害を認識できないような場合もあるようです。こういった事例につきましても、児童の性的虐待を防止し、行為者を罰するというためには、やはり新たに監護者性交等の罪の新設が必要であるというふうに考えております。すなわち、監護者がその影響力に乗じて性交等をする場合、児童の意思決定が不当にゆがめられるおそれが類型的に高いと言えます。このように、児童の意思決定に瑕疵が生じ得る点に本罪の処罰の根拠を見出すことができると思われます。
 続きまして、第三でございます。強盗強姦罪の構成要件の見直しにつきまして意見を申し述べます。
 現行法における強盗強姦罪、すなわち刑法二百四十条は、強盗の機会にさらに強姦行為に及ぶという行為が極めて悪質な犯罪であることから、強盗罪と強姦罪の結合犯として刑を加重しております。もっとも、現行法は、強盗が女子を強姦したときと規定しておりますので、強盗が先行し、その後強姦が行われた場合に限って適用が行われており、強姦が先行し、その後強盗が行われた場合については適用がありません。しかしながら、強盗強姦罪を重く罰する根拠は、既に申し上げましたように、強盗罪、強姦罪という重大犯罪を同一機会に重ねて行ったという点にございます。としますと、両者の先後関係は重要ではないと考えるべきです。
 改正法案では、このような問題意識から、強盗行為と強姦行為が同一機会に行われていれば十分であり、両者の先後関係を問わないものとなっており、正当な改正であるように思います。更に申しますと、現実の事件におきましては、強盗と強姦が同一機会に行われたが、どちらが先かについて証明困難な事例も存在するようです。改正法案であれば、こういった事件につきましても、先後関係を問わず強盗強姦罪で処罰ができるというメリットがあり、そのメリットは大きいと考えます。
 最後に、第四、強姦罪等の非親告罪化につきまして意見を述べたいと存じます。
 御承知のとおり、現行法では、強姦罪、強制わいせつ罪等の性犯罪は親告罪とされており、被害者の方の告訴がなければ公訴が提起できません。これは、性犯罪の被害者の方の名誉やプライバシーを保護する趣旨の規定であるというふうに解されてきました。もっとも、現実には、被害者の方が告訴をするか否かを御自分で判断しなければいけないという精神的なプレッシャーを強く感じられたり、あるいは告訴をしたことによって犯人から報復を受けるのではなかろうかといった不安を感ずることも多いと伺っております。つまり、被害者を保護するための規定がかえって被害者の方に精神的な負担をお掛けするというふうな事態に至っているわけでございます。これはまさに本末転倒でございます。
 今回の改正法案では性犯罪が非親告罪化されておりますが、これは、被害者の方の精神的な負担の軽減を図る趣旨であり、正当な判断であったと思われます。もちろん、性犯罪の処罰におきましては、被害者の方の名誉やプライバシーを十分に尊重することが重要でございます。もっとも、それは実務的な運用によっても十分に達成できるというふうに考えております。
 現行法におきましても、強姦の機会に被害者が負傷した場合、すなわち強姦致傷罪は親告罪ではありませんが、強姦致傷罪の捜査、公判におきましても被害者の方の意思やプライバシーを十分に尊重した対応が講じられており、特段の問題は生じていないというふうに理解しております。このような対応が今後も継続的に行われることを信じ、また強く期待したいというふうに考えております。
 私の意見は以上でございます。御清聴、誠にありがとうございました。
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秋野公造#3
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 次に、山本参考人にお願いいたします。山本参考人。
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山本潤#4
○参考人(山本潤君) 本日は、参考人としてお呼びいただき、本当にありがとうございます。刑法性犯罪を変えよう!プロジェクトの山本潤と申します。
 私がこのプロジェクトに参加しているのは、自分自身が父親からの性虐待の被害者であり、日本の性暴力を取り巻く現状を変えていきたいと強く願っているからです。私の経験は一人の経験ですが、私たちに声を届けてくれた人たち、声を上げることも難しい人たちの思いを少しでもお伝えできればと思っています。
 刑法性犯罪改正が話し合われる法務委員会に、これまで性被害者が呼ばれたことはあったのでしょうか。私たち性暴力被害者の運命は、この法律によって左右されます。
 私は、二〇一五年から始まった刑法性犯罪改正の議論に少しでも当事者の声を届けたいと、二〇一六年八月に、性暴力と刑法を考える当事者の会を立ち上げました。届けたいと思ったのは、二〇一五年七月に性犯罪の罰則に関する検討会で聞いた法律家たちの意見が非常に衝撃的だったからです。済みません、当事者の会を立ち上げたのは二〇一五年です。失礼しました。
 皆さんも中学生だったことがあると思います。中学生のときの自分を想像してみてください。皆さんにとって身近な大人、生活全般を依存している人、保護者、親が皆さんの布団に入ってきて皆さんの体を性的に触るようになったら、どういう感覚、感情を持つでしょうか。私に起こったのはそういう経験です。
 私の父は、私が十三歳のときに、寝ている私の布団に入ってきて私の体を触るようになりました。初めはおなかや背中だったものが、次第に胸やお尻に移っていきます。なでられ、もまれ、性的な行為を強要されます。話したらひどい目に遭うよ、家族がばらばらになるよと脅す加害者もいますが、私の加害者はそうではありませんでした。私に起こったことは、黙って入ってきて黙って触られ、これから何が始まるのかも何が起こっているのかも理解できない混乱する経験でした。混乱と驚愕、私は、フリーズしてしまって抵抗することはできませんでした。
 そして、そのときの私は、これが性被害だということを理解することもできず、性被害であり相談する必要がある出来事なのだということすら発想もできず、誰にも被害を訴えることはできませんでした。その結果、被害は継続しエスカレートし、結局七年間被害を受け、別件で母が父と別れたので、そこで私の被害は終わりました。
 終わったからといって終わりではなく、むしろ、強迫症状や退行現象、うつや性的行動のコントロールの付かなさなど、様々なトラウマ症状の始まりはそこからでした。結局、被害を受けていた七年間の三倍の日数の二十一年間を、トラウマ症状とそこからの回復に費やしてきました。
 私のように誰にも自分の性被害を相談できない人は、平成二十六年の内閣府の統計で六七・五%であることが明らかになっています。そして、様々な犯罪被害者支援計画が実施されているにもかかわらず、どこにも誰にも相談できなかったという人の数字は、平成十七年から六〇%台と、ほぼ変わりはありません。
 どうして被害者は、自分の被害を友人にでも相談機関にでも相談することすらできないのでしょうか。そこに法律の定義は深く関わっていると思います。私のケースのように、暴行、脅迫がなくても性暴力を振るうことは可能です。しかし、そのような被害の実態を法律家がきちんと聞いてくれたとは思えません。
 性犯罪の罰則に関する検討会では、親子間でも真摯な同意に基づく性行為が全く起こらないとは言えないのではないかという発言がありました。たとえ法律の専門家であったとしても、性暴力の専門家ではないのだということを強く感じました。親子の関係で性行為に同意することはできません。そもそもの前提である、対等性を持ち、自由に意思決定することができないからです。法律と人間の権利の専門家から、二度とこんな性虐待を肯定するような意見を聞きたくないと今でも思っています。
 私のような当事者から見れば、性犯罪の罰則に関する検討会、法制審議会という性犯罪を議論し意思決定するメンバーに被害者がいなかったことを疑問に思います。私たちに非常に大きな影響を与える法律を私たち抜きで決めないでほしいと思っています。
 その後、性暴力と刑法を考える当事者の会は、法制審議会へ二回要望書を提出し、お手元の資料にも、後ろの方にありますが、「ここがヘンだよ日本の刑法(性犯罪)」ブックレットを作成し、日本弁護士連合会意見書への反対の要望書を行うなど、活動を積み重ねてきました。
 その間に、刑法性犯罪改正は、法務省から国会に議論の場が移りました。二〇一六年秋から私たちは、明日少女隊、しあわせなみだ、ちゃぶ台返し女子アクションとともに刑法性犯罪プロジェクトを立ち上げ、ビリーブキャンペーンを展開してきました。
 私たちの資料の表紙をめくった一枚目のパンフレットを御覧ください。こちらにありますように、届ける活動として、国会議員の方々へ私たちの要望を伝えるロビーイングも行ってきました。
 実際に議員の方々と面会してお話しすることで、私たちが求める暴行・脅迫要件撤廃について、性犯罪改正の問題について伝えることができました。成果は実り、先週、ついに附則、附帯決議が付いて、刑法の一部を改正する法律案は衆議院を通過しました。附則は法律となるので非常に難しいと言われていましたが、三年後の見直し規定が取り入れられたことは、私たちの要望を聞いていただけたのだと感じています。
 衆議院法務委員会で可決された先週六月七日には、金田法務大臣に刑法改正を求める三万筆の署名を提出することができました。オンライン署名は、その後一週間で二万人以上増え、五万四千人の署名が現在集まっています。これほどに刑法性犯罪改正を求める声は大きいのです。私たちの要望について、また署名について、資料の方に載せていますので御参照ください。
 改正案は成立間近です。それでもまだ残る論点は多いです。性的侵襲罪ではなく強制性交等罪という名称でよいのか、被害を受けているときに子供であったりして親告できない間に時効となってしまう問題はどうなのか、パートナーや配偶者からのレイプはどのように扱われるのか、集団強姦罪が廃止されてしまったのはどうなのか、教師や上司のような目上の立場の人からその地位や権限を利用された性的強要が被害だと認められにくい問題、十三歳以上は暴行・脅迫要件を満たさなければ強制性交等罪にならない問題があると考えています。
 様々な問題が積み残されていますが、私が最も大きな問題と感じているのは、やはり暴行・脅迫要件です。私が父から性被害を受けていたとき、父は私を脅したり殴ったりはしませんでした。暴行、脅迫がないケースで、強姦罪にも強制わいせつ罪にもなりません。
 ずっと私は、この性暴力被害の経験が私の人生を大きく損なったものだと思ってきました。でも、それは違います。私たちの人生には様々なことが起こります。大きな交通事故に巻き込まれる、いきなり通り魔に襲われる、そういう非常に困難で突発的な出来事ではないかもしれないけれども、自分の大切な人が突然失われてしまう、自分自身が大きな病を抱えてしまう、そのような理不尽で困難で、自分の力ではどうにもできない状況というのは、誰の人生にも一度は訪れるのではないでしょうか。そんなときに苦しみを聞いてもらえれば、誰かに助けてもらえれば、法律や支援のシステムが整備されていれば、私たちは、何とか前を向き、もがきながらも立ち上がることができるのではないでしょうか。
 私には何もありませんでした。訴えることもできず、そのような手段があることも知らず、誰にも救ってもらえませんでした。私のような家庭内の性被害者たち、暴行、脅迫がなく、だまされたり、教師や上司という目上の立場の人から性を強制された人たち、人間として最も困難である状況を味わった人たちを日本の刑法は守ってくれません。被害者は苦しみ、加害者は許され、何の処罰も受けない。大きな被害を受けながら何もなかったことにされたことこそ、刑法が暴行、脅迫がなければ強姦罪ではないと言っていることこそ、私にとっての困難でした。法律家たちはケース・バイ・ケースだと言います。適正に裁かれているケースもあると言います。適正に裁かれていないケースがある以上、そんな理屈は通用しないと私は考えています。
 今回、やっと監護者性交等罪が入りました。それはとても評価できるところだと思っています。しかし、十八歳以下で親などの監護者から性交された人は加害者を罪に問えますが、相手が年上の兄弟やおじや祖父、教師やコーチの場合、監護者性交等罪で罪に問うことはできません。
 暴行・脅迫要件は必要だ、外形的に見える指針が大事だという議論がされます。私は、そうは思いません。暴行、脅迫が必要だと考えていること自体、性暴力の本質を理解していないことだと考えています。先進国では、明示的な同意がなければレイプと定義されている国が多いです。どうしてでしょうか。それは、性暴力の加害の定義を見れば分かります。
 お手元にありますパンフレットをめくって、二枚目の性犯罪に暴行脅迫要件は不要という資料の二番目、性暴力加害とはというところを御覧ください。性暴力は、性的欲求のみではなく、加害者が攻撃、支配、優越、男性性の誇示、接触、依存などの様々な欲求を性という手段、行動を通じて自己中心的に充足させるために被害者を物として扱うことです。性暴力の本質は、人を物として扱うことなのです。
 私は子供でしたけれども、意思も夢も希望もありました。それを全て無視されて、物として扱われました。被害者の意思を無視すること、人間として扱わないこと、そうすることで加害者は自分が上だ、おまえには何の権利もないと被害者に知らしめることができます。被害者の力を奪い、無力化したことが加害者の勝利です。加害者の勝利は私の苦しみです。私が人間であるならば、どうして意思が聞かれなかったのでしょう。どうして希望を聞いてくれなかったのでしょう。その選択をしたのは加害者です。その人の意思も希望も踏みにじり、物として扱ったのは加害者なのです。そのとき、私たちは心を、魂を殺されるのです。
 百十年ぶりの改正にもかかわらず、日本の刑法はいまだに明治時代の亡霊を振り払えていません。暴行・脅迫要件ではなく、人を物として扱った加害者の責任を問う必要があると思っています。そのために、そこに相手の明示的な同意があったかということを中心とする構成要件を組み立てる必要があるのではないでしょうか。三年後の検討で暴行・脅迫要件が撤廃されなければ、被害者の意思を無視することが繰り返されることになります。
 これまで、私たち被害者の声を法律は聞いてくれませんでした。私も、自分の声が聞かれるとも状況を変えられるとも思っていませんでした。でも、今、皆さんは聞いてくれています。それは希望です。このことが、加害者が無視した私たちの意思を聞き、私たちが話を聞く価値がある人間であるということを示してくれているからです。
 性被害者がこのような思いをしているということは、皆さんにとっても思い掛けないことかもしれません。意思を聞かれなかったこと、人間として扱われなかったことは私たちの血肉に刻まれています。だからこそ、声を上げるのは怖いのです。また同じようにたたき潰されないかと恐怖におびえているのです。だからこそ、被害者を強力に保護し、支援するシステムが必要なのです。それができてこそ、性被害の実態を把握し、実態を反映した法律の改正、システムの構築ができると思います。
 私たちは、声が聞かれることを、法律にも被害者の声が届くことを示していただきました。共に被害者が性被害を訴えられる社会になるように、今回の法改正がその後押しとなることを心から願っています。
 ありがとうございました。
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秋野公造#5
○委員長(秋野公造君) ありがとうございました。
 以上で参考人の意見陳述は終わりました。
 これより参考人に対する質疑を行います。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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猪口邦子#6
○猪口邦子君 ありがとうございます。私は自民党の猪口邦子でございます。
 本日は、参考人のお二人からそれぞれ重要な御意見をいただき、私たちの考えを深めることができ、本当に感謝申し上げますが、私は、今、山本様のお話を伺って、質問する言葉を失うほどであると思っております。しかしながら、重要な内容をせっかく伺いましたので、質問してまいります。
 私は、昨日の対政府質疑に引き続いての質問となりますが、昨日の質問でも、私は、声を上げること、レイズ・ザ・ボイスという努力、これがどれだけ大切かと、そして、とりわけ被害者によるレイズ・ザ・ボイス運動というものは人間社会の様々な分野の社会的発展の貴重な推進力になってきた、これを伝えたばかりでございます。
 被害者が声を上げるということ、今まさに山本様がやってくれたこと、そしてずっとやり続けてきてくれたこと、これはどれほどまた大変で、そのプロセス自体もつらかったことかというふうに感じますし、余りにもその被害のさなかにある人が声を上げられないときに、時には周りの支える人たちが声を代弁してくれることもあり、そういうことも非常に貴重であると思っております。山本様の自らの苦悩、山本様がそれを公の場で訴える決意をした、そこからついに、おっしゃいましたけれども、百十年変わらなかった日本国刑法におけます性犯罪処罰規定の構成要件、また関連内容、これを変える流れをつくってこられたのだと思います。
 本日は、二〇一七年通常国会の終盤でございます。山本様も言ってくれましたとおり、参議院法務委員会にて山本潤様の訴えを伺い、御意見を伺い、そしてまた、こうして質問をすることができ、改正法案の審議を深めていく、山本様は話を聞いてくれたので希望があるとおっしゃってくれましたけれども、まさに、遅きに失しているんですけれども、人間社会の発展の可能性、これを感じますし、そういうところにつなげていかなければならないと思っております。訴えの中でもおっしゃいましたけれども、公の場で早くから訴えながら、国政としての受け止め方、これに問題があったのではないかと、もしそうであればおっしゃっていただきたいと思います。
 一般に、国は、法律を変えるときとか重要政策を変えるときに審議会、これを立ち上げて、諮問、答申というプロセスを経て、審議会を通じて国民、社会の意見を集約しようと努力するんですね。その審議会のメンバーの人選、これは、専門家、有識者、関係団体。しかし、被害者の場合は、団体をつくる、そのことも十分にする余力がないかもしれない。多分、そういうところの問題、そういうことが考慮されなかった、配慮されなかったことも、今、山本様が訴えた分野及びその他の分野でもある可能性があると思って、本当に心配なんです。
 山本様が被害者の意見が十分に届いたと感じていたのか、あるいは感じたのはいつ頃なのか。そして、まさに最初に検討会がありましたよね、そして審議会となっていくわけですけれども、被害者の発言の機会が、どこかではヒアリングとかあったかもしれませんけれども、十分であったか。これをちょっと伺いたいと思います。
 それから、発言の中で、監護者の範囲、監護者性交等の罪が新設されますので、この範囲についての御意見、これは、私は昨日も対政府で質問したんですけれども、その意見をさらに伺えればと思っております。また、暴行、脅迫、十八歳以上についてもという、今重要な御指摘をされました。
 そして、続いて橋爪先生の方に御質問申し上げたいと思っております。
 橋爪先生は、この非常に重要な分野、ここで先駆的な研究を行ってこられました。また、法制審議会刑事法部会において非常に貴重な貢献をされて、この流れをつくることに寄与してこられましたことに敬意を表します。
 私はいつも思うんですけれども、社会が変わるとき、必ず思想の先導というのがある、被害者の声があり、それを受け止める思想の先導がある、ようやくそれを受けて社会が変わっていく、それは立法府であり行政庁であり、いろいろ努力して。
 先生は、まだこの分野を主流化できていないときから社会に先んじて認識形成し、研究して、その認識形成を社会の側において促す、そういう学術の役割、これをやってこられた、そのとき、そういう学術の立場としては広く世界を見るという責任があると思うんですね。諸外国はどうか、流れはこうである、世界の潮流はこうだ、こういう研究をして、例えば性犯罪の非親告罪化、そういうことでもあったかと思いますが、各国の比較法研究などの観点から、更にこの分野について私たちに教えることがあるんではないかと思いますけれども、是非伝えてください。
 それから、今回の我々のこの刑法改正案、これは、世界のそういう思想の流れ、傾向、方向性などとの関係で十分か、あるいは不足しているんだったらどこなのか、そういうことを伝えていただければと思います。
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山本潤#7
○参考人(山本潤君) 御質問をいただき、ありがとうございます。
 御質問にありました委員会、検討会、法制審議会に被害者のヒアリングがあったかということなんですけれども、検討会でも被害者の方が何人か呼ばれていますし、私自身も、昨年五月の法制審議会に呼んでいただきました。ただ、ヒアリングの時間はとても短いものですし、声は聞いていただけたとは思うんですけれども、十分に被害者の価値観、置かれている状況、どうしてそういうふうになるのかということが理解していただくには難しい時間なのではないかなというふうに考えています。
 性暴力について、法律家の方は法律、刑法についてはもう非常に専門家ですし詳しいと思いますが、性暴力については余りよく御存じではないのかなということを議事録を読んで感じました。司法の実務面においては被害者、加害者共に関わることがあるかと思うんですけれども、なぜそのことが起こるのか、加害者は一体何を本当の欲求にしているのか、被害者は一体どのような状況に置かれるのか、そういうことはやっぱり深く思いを致す必要があることではないかなと思っています。
 監護者性交罪の範囲につきましては、監護者の範囲がやはり民法に規定されていることもありますし、その範囲をどれだけ広げるのかということはまたその専門家の議論にはなるかと思いますけれども、そうではなく、おじとか祖父とかその親族、そして教師、上司、そういう目上の立場の人から性を強要されるということが実際に子供の性被害の現場で起こっているわけです。それをどういうふうに類型化するか、どのように救済していくのかという議論はすごく必要なことなのではないかなというふうに思っています。
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橋爪隆#8
○参考人(橋爪隆君) お答え申し上げます。
 先生からの御質問、多岐にわたっておりますけれども、時間の関係がございますので、外国の状況という観点から、強姦罪の態様と申しますか、暴行・脅迫要件の観点で若干お答え申し上げます。
 日本は、先ほどからございますように、不同意性交一般ではなくて、暴行、脅迫による姦淫行為のみを罰しております。それにつきましては、海外におきましては専ら不同意の性交全てを罰する規定もございます。そういった意味では、暴行、脅迫が常に必要なわけではございませんけれども、その問題につきましては、各国の刑事裁判におきまして、どうやって意思に反することを証明するかという問題がございます。つまり、日本のように厳格な裁判をやっていますと、そう簡単になかなか意思に反することが証明できませんので、意思に反することの徴憑としまして暴行、脅迫を要求するというふうな理解もあり得るわけです。
 そういう観点からは、刑法の問題だけではなくて、刑事裁判の構造も含めて、この問題については更に検討が必要というふうに考えております。
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猪口邦子#9
○猪口邦子君 ありがとうございます。
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有田芳生#10
○有田芳生君 民進党・新緑風会の有田芳生です。
 非常に限られた時間ですので、山本参考人にお話を伺います。
 私は、今回の百十年ぶりの刑法改正案、これが成立すれば非常に大きな前進だというふうに思っております。問題点、課題を抱えながらも、ようやく、皆さんおっしゃっているように、百十年間待っていたんだ、多くの人たちの思いが前進するんだろうというふうに思っているんだけれども、しかし、この日本においてやっぱり決定的に遅れているのはカウンセリングだというふうに思っております。多くの悩みを抱えた方々、トラウマも含めて、それを心の内側から突破していくというのは非常に大変な課題だというふうに思うんですよね。
 そこで、まずお聞きをしたいのは、山本さんは性暴力被害者支援者看護師の研修を修了されているんですけれども、どういう仕組みで、どういう中身で、本当に効果的な研修になっていたのか、課題は何かというところからまずお聞きをしたいというふうに思います。
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山本潤#11
○参考人(山本潤君) 性暴力被害者支援看護師、SANEは、元々、一九七〇年代にアメリカ、カナダの看護師たちが始めた研修です。そのときは、性被害者が救急外来で長時間待たされてしまったりとか、あるいはこの人レイプされたので診てくださいみたいに衆人環視の前で言われるなど、すごく配慮のない対応がされていたんですね。被害を受けた人がこれ以上傷つくことはあってはならないというふうに看護師たちが立ち上がって、研修を始めたのが最初です。
 性暴力被害者は、産婦人科医療の現場で被害者診察というのがとても重要になってきます。そのことによって、体に受けた被害の傷、あるいは無理やり性交をされたダメージ、影響、性感染症、望まない妊娠、そういうものを、体に対するダメージというものを、大きな傷つきに対する配慮をしつつケアしていくということがとても求められてくるわけです。
 そして、SANEの重要な仕事として法的証拠採取というものがあります。それは、被害者の方から、被害者の頭の先から足の先までといいますけれども、診察させていただいて、そこにどのような傷が残っているのか、どのような相手の体液などの証拠が残っているのかということを観察しつつ、本人の同意を得ながら一つ一つ取っていって、それを記録に残し、そして裁判で証言していくというのがSANEの仕事の中核となる役割でもあります。ただ、もちろん警察官でもありませんし単なる検査官でもありませんので、やはり大きなダメージを受けたことに対する配慮というのがとても重要になってくる、そういう分野です。
 アメリカは、このSANEのシステムが進んだ結果、加害者を捕まえる率が上がり、起訴率が上がったというふうに聞いています。
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有田芳生#12
○有田芳生君 日本でのそうした体制というのは十分なんでしょうか、まだまだ不十分なんでしょうか。
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山本潤#13
○参考人(山本潤君) 日本の体制は、まだ法律などのシステムが整えられていないので、今、二〇〇〇年からNPO法人女性の安全と健康のための支援教育センターというところがSANE研修を始め、今、四百五十人ぐらいのSANEの看護師がいます。あと、名古屋の看護師たちもSANE研修を始めていますので、そちらは三年ぐらい前からです。そちらの方でもSANEが養成されていますが、このSANEがどこで今働けるかといったら、話題のワンストップセンターのところに提携している病院、あるいはワンストップセンターになっている病院の看護師たちが、今、私たち支援教育センターのSANE研修を受けに来たりすることが多いです。
 そのような看護師たち、産婦人科の方半分いるのと、研修受講生、研修生のうち半分は、でも、精神科の方なんですね。なぜ精神科といったら、有田議員がおっしゃりますように、やはりすごく長期に影響が残りますので、性暴力被害者の支援の方の精神科看護というのがとても重要な分野になっているからだと思います。
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有田芳生#14
○有田芳生君 山本さんは、つらい体験を経てこられて、その後も抑うつ状況やトラウマに悩まされて、今もセラピーに通っているというふうに話しておられますけれども、自分の中で自分の経験を乗り越えていく、それから、更にそれを社会に訴えていく、様々な葛藤があったというふうに思うんですが、御自身がそういう乗り越えのプロセスというものを、何が一番大きな励ましになってきたんでしょうか。
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山本潤#15
○参考人(山本潤君) 私自身、まだ乗り越えられたかどうかも分からない部分があります。また別のダメージが来れば、それでまたこじれてしまう可能性もあるかなと感じています。
 それでもやはり前を向いて少しずつ伝えることもできるようになってきたのは、多くの人の支えがあったから、私にいろいろ示してくれた先を行く被害者の仲間たち、既に公に発言されていた方たち。あと、私の場合、父からの性被害なので母もとても苦しみました、自分のパートナーが自分の娘にそんなことをしたということにおいて。その母と、イコールにはならないけれども、苦しみを分かち合い支え合って共に歩んできたこと、私の親友の支え、あと私の夫の支え、いろいろな人に支えられて、そして、今やっぱり多くの人が苦しんでいて、ほとんど本当に誰にも言えていない、司法にも訴えられていない、何の手助けも受けていない、ようよう自分で手探りで探して探して、カウンセリングとか医療につながれる人はつながっているという、そういう状況をどうしても変えていきたいと思っています。
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有田芳生#16
○有田芳生君 元TBSの記者からレイプをされたということを名前も、それから顔も出して記者会見をされた詩織さんという女性いらっしゃいます。彼女は、それだけ勇気を持って行動したんだけれども、セカンドレイプ、警察、病院は助けてくれなかったということを強調されております。
 性犯罪の被害者が病院や警察で更に傷つけられ、事実を話すこともできない、そんな社会の状況を変えていかなければならないと思ったと。そういう行動に出たことに対してひどい中傷も続いている、もちろん励まされてもいる、それでも、会見したことは後悔していない、レイプは内側から殺される魂の殺人だから声を上げないと何も変わらないと、こう主張されておりますが、山本さんはこの詩織さんにもお会いになったと思いますけれども、御自身と重なること、あるいは重ならなくても、これからそういう事態を変えていく、何が一番大きな問題、課題、そしてもう一つは、やはりセカンドレイプというものを御経験なさったのかどうか、そうすると、そういうことに対して何を批判していかなければいけないのかということを最後にお話しください。
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山本潤#17
○参考人(山本潤君) 詩織さんの現状というのは、やはり日本の被害者支援システムが被害者の幸福と利益のために全く機能していないということを表しているというふうに思っています。
 被害者には、司法による権利の救済、医療による心、体の健康回復の救済、そして、あとは二次被害を受けない、あるいは経済的な損失、働けないとか学校に行けないとかいろいろありますので、そのような経済的損失の補償による社会的な救済というのがあるかというふうに思うんですけれども、それが、被害者である人が、そこに行くことすら難しい人たちをどのようにピックアップできるのかということが全く考えられていない現状で起こっていることかなというふうに思っています。
 その中で、詩織さんが御自分の名前を出して、そしてお顔を見せて声を上げたということ自体が非常に大きな勇気と覚悟を必要とすることだったというふうに思っています。そして、それに対していろいろな批判の声も耳にしますし、そのこと自体が二次被害であり、被害者を黙らせるものになってしまう。こういうふうに言うということが被害者であるその人をおとしめて、そんなことはうそだというふうに名指しをして、そしてその人自身の価値を下げるという、そういうような動きがあるわけですね。
 だから、私たちとしては、その動きを止めるということが一番大事だと思います。そのようなセカンドレイプ、被害者をおとしめるような発言に対して、そんなことはないんだ、被害者に責任はないのだと、事実を明らかにするためにどのようにすることがということを一緒に考えていくことが大事だと思っています。
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有田芳生#18
○有田芳生君 ありがとうございました。
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佐々木さやか#19
○佐々木さやか君 公明党の佐々木さやかです。
 今日は、お二人の参考人の皆様、大変貴重なお声をいただきまして、ありがとうございます。
 特に山本参考人には、先ほどの陳述の中でも、性暴力、性犯罪被害というものの本質というところについて、加害者が何を目的にしているのか、また、それによって被害者の方がどういう傷を負うのかというところについて、非常に大事なお話を伺いました。
 そのことについて、捜査機関とか裁判所、また関係機関を始め私たち一人一人がしっかりと、そこをきちんと理解をするというか認識を持つということが非常に重要だなというふうに改めて思いました。本当に、そこが何というか本質で、そこからいろんなことが起こってしまっているのかなということを、ちょっとうまく言えませんけれども、感じました。
 質問としては、この暴行・脅迫要件については、今回の改正では削除ということにはなりませんでしたけれども、しかし、そこの、例えば裁判になったときにきちんと適切に認定をするということが大事なんじゃないかなというふうに思っています。
 もちろん、そのケース、ケースにはよると思うんですけれども、私が感じているのは、やっぱり一般的に、例えば凶器をちらつかせていたかどうかとか、加害者である男性が体格がすごく良かったかどうかとか、そして、被害者の方としては抵抗を何かしら見せるということが通常じゃないかとか、そういうふうに考えられていると思うんですね。
 そこの部分がやはりずれがあって、実際にそういうことが起こった場合に、例えば思考が停止する、またフリーズ現象が起こるということについても先ほど少し教えていただきましたけれども、そこの認識がまだまだ捜査機関や裁判所なんかにはきちんと理解されていないのではないか、逆に、きちんとした科学的な根拠に基づいて認定されていないんじゃないかという思いが私にはあります。そこについてどのように考えていらっしゃるか。
 また、そういう突然のことが起こった場合に被害者というのは一体どういう形になるのか。そういった点について、医学的にも認められているというふうに聞いておりますけれども、その辺りのことについても少し詳しく教えていただければと思います。
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山本潤#20
○参考人(山本潤君) 性被害を受けたときにどのようなことが起こるのかということは、現在、トラウマ治療の視点から解明が進んでいまして、神経生理学的な反応が非常に大きいというふうに考えられています。
 裁判とか法律の話の中では、抵抗できたのではないかとか助けを求められたはずだというふうに、こう言われることが多いんですけれども、とっさのときにすごく体が固まってしまう、フリーズしてしまうという、そういう状況が起こります。
 例えば、今、ここの会議場で地震が起こったとします。それでぐらっと揺れますよね。そうしたら、皆さん一瞬固まるというふうに思うんです。すぐにてきぱき行動できる人は結構難しいんじゃないかなと思います。
 そのように、人間には、危機的な状況を受けたときに固まって周囲を見るみたいな、そういう反応が起こります。その固まった状況のときにそれを利用して襲撃を受けた場合、私たちは、そのショックとか恐怖を通常のように、体の感覚を中脳、そして大脳というふうに、大脳皮質に上げて考えたり感じたりして処理することができなくなります。
 性暴力被害を受けるような状況というのは、普通にゆっくりと落ち着いて考えられるという状況とは違うわけです。突然、自分自身と自分の未来が予測できない状況に放り込まれてしまうという恐怖の体験です。そのときには、感情などとかあるいは考えるということをできる暇もないというのがフリーズという経験であり、自動的な反射というのもよく起こります。自動的に従ってしまったりとか、あるいは本当に体が勝手に動くので、もう足が震えて、もうどうにも手足が震えて動きが取れないとか、そういうこともあります。現実感がなくなり、自分に起こっていることとも思えない、すごく意識が遠のいてしまうみたいな、そういう解離という状況も起こります。
 そのように、意識も心も非常に体と切り離されてしまう、そういう状態である、そういうふうなフリーズという状況が起こっているということ、人間の神経生理学的な反応、その後に起こるトラウマ症状について本当は少し、もっと理解を深めていただけると分かるんじゃないかなと考えています。
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佐々木さやか#21
○佐々木さやか君 ありがとうございます。
 捜査機関も含め、性犯罪被害者、性暴力被害者の方にどのように適切に対応させていただくかについては、研修とかいろんなことが行われているとは言われておりますけれども、やはりまだまだ不十分であるというふうに思っております。
 それから、先ほどのお話の中でも、やはり性暴力、性犯罪被害に遭って誰にも言えない、どこにも相談することができない、そういう現状があるというお話がありました。その原因の大きな一つがこの暴行・脅迫要件の存在だというお話だったかなとは思うんですけれども、今回は、法改正はちょっとそこが残ってしまったので、その上で、ワンストップセンターもこれからもどんどんもっと充実させていかなきゃいけないと思っておりますし、いろんな相談体制もまだ不十分だと思っていますが、そういうことを進めていく中で、例えば、本当にまだ成人にもなっていない未成年の子供たちだったりとか、本当に相談すること自体困難な中で何か支援をさせていただくとしたら何が大切かと、何が一番重要というふうに思われるか、御意見をお聞かせいただければと思います。
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山本潤#22
○参考人(山本潤君) 相談されたらどのように応えることが大切か……。
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佐々木さやか#23
○佐々木さやか君 それもそうですし、どういう相談支援体制というのが必要かというところについてお願いします。
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山本潤#24
○参考人(山本潤君) 御質問ありがとうございます。
 まず、お話を、自分の性被害の経験を人に打ち明けるということ自体がとても怖いと感じる人がほとんどだと思います。信じてもらえないんじゃないか、うそつき呼ばわりされるんじゃないか、あるいはあなたにも隙があったと言われるんじゃないか、あの人はそんなことしない、勘違いしているんじゃないのというふうに言われるんじゃないかと、非常に大きな葛藤と恐怖を乗り越えて、この人なら私の苦しみを理解してくれるかもしれない、そういう願いを掛けて被害者の人はお話をすると思います。なので、そのお話を聞いたときは、あなたの話を信じるよ、よく話してくれてありがとうというふうに伝えていただけるのが話を聞いた人が一番していただきたいことだなというふうに思っています。
 相談体制ですけれども、性暴力被害者支援センターが各地で立ち上がっていたり、元々犯罪被害者支援センターがあったり、警察でも性犯罪被害者専用ダイヤルがあったり、いろいろな相談機関があるというふうには言われていますけれども、実際に性被害を受けた人が掛けやすいかといったら、なかなかそうではないということは耳にしています。
 二十四時間でないということも、警察は、ダイヤルもちょっと幅があると思いますけど、二十四時間でないということもそうですし、まず、研修を受けて、配慮をして聞くということは学んでいるはずなんだけれども、いまいち理解が得られるような反応が返ってこないというふうに感じてしまったりとか、あと発信、どのように私たちが被害者のお話を聞いて、こういうことができますというような、そういう発信であるとか。
 あるいは、私は韓国に研修に行ったりしましたけれども、やはり韓国では、ひまわり児童センターとかが学校とかに講習に行って、こういうふうなことをされたら、こういうふうに支援があるので私たちに電話してくださいというふうに学校教育の中で伝えたりしています。そのような人々に周知するシステムがなければ、ありますというふうに個々の組織が言っていても結構難しいのかなというふうに思いますし、韓国では、バスとか電車の広告の中に大きく被害者支援ダイヤルというのを周知できるように走らせているというふうなこともありますので、そのようなアピールも重要かと思っています。
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佐々木さやか#25
○佐々木さやか君 終わります。
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秋野公造#26
○委員長(秋野公造君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、中泉松司君が委員を辞任され、その補欠として足立敏之君が選任されました。
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仁比聡平#27
○仁比聡平君 日本共産党の仁比聡平でございます。今日は本当にありがとうございます。
 山本参考人のお話で、法律家は性暴力の専門家ではないんだと感じたときの大きな衝撃という言葉に、私も、強くこの国会の責任ということを感じさせられたんです。
 この議場にも法曹資格を持った議員も幾人もいるわけですけれども、私なりの受け止めでいいますと、被害の現実をそのまま受け止めて考えるのではなくて、構成要件や立証の可能性という枠組みが頭の中に先にあって、そこに当てはまるのかどうかというふうに考えてしまう。ですから、目の前に相談やあるいは訴えてきておられる被害者、当事者の皆さんの被害そのものをまず受け止めることができないでいるのではないか。法ということで考えると、明治以来ずっとそうやって法律家が積み重ねてきて、今の実務だとか構成要件の解釈だとか、そういうものをつくっているんじゃないのかという根源的な指摘ではないかと思うんです。
 お配りいただいている資料にも、イヤよイヤよは嫌なんですという、何というか、メッセージがありますけど、命懸けで抵抗していなければ同意したことになるのか、そんなことおかしいじゃないかと、認めてなんかいない、同意なんかしていないと。その声を阻んでいるのが暴行・脅迫要件、抗拒不能要件とその法律解釈、例えば判例などにも出てくる、それに、それに基づく警察や検察の実務であり、大方、弁護士もその実務の上でしか活動ができていないんじゃないのかと、そうした提起かなと私は受け止めるんですが、山本参考人、いかがでしょうか。
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山本潤#28
○参考人(山本潤君) まさしく仁比議員のおっしゃるとおりだというふうに思っています。
 法律は、やはり枠組みがありますし、できること、できないことというのはやはりあるかなというふうに思います。
 私は看護師なので、医療の現場あるいはケアの視点からいったら、やはりどんな相談も受けて、どのような被害であったとしても、それはその被害を受けた人の傷つきをケアする、その被害を受けた人を中心に考えていくということをします。
 法律において非常に重大なことだなというふうに私が感じて、まあ勝手に感じているんですけれども、勝手に感じているのは、やはり先ほど言われたように、要件を絞って、そして排除してしまうということですね。だからこそ、大きな性暴力被害を受けた人たちがいて、そのうちで警察に届けられる人が、四・三から性的事件は一八・五%、そのうちで、更に捜査が始まって検察に送検される人がまた少なくなり、そして、更に起訴される人というのはもっと少なくなっていくわけですよね。
 やはり勝てない事例というのははじかれていきますので、被害届も受け取ってもらえない。捜査はしたかもしれないけれども、したかしていないかも分からないけど、もう終わりですというふうに言われてしまう。そういう中で、だから、罪ではないから認められなかったのか、それとも、罪はあるんだけれども捜査能力がないから、できないから、あるいは法律が構成要件と何か違うふうに、裁判ではきっと有罪にすることができないからはじかれたのかということが今は全く分からないという状況が発生しているというふうに思っています。
 だからこそ、何が性犯罪なのかという議論を丁寧にしていただければというふうに願っています。
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仁比聡平#29
○仁比聡平君 先ほど佐々木議員が確認をされたフリーズとは何かということも、同意とは何かということにも関わる、私はこの刑法の規範の問題だと思うんですよ。
 そこで、橋爪参考人にお尋ねしたいんです、厳しい質問だと思うんですけれども。
 つまり、先ほどお話にあったように、不同意性交がこの性犯罪の本質だということは、これは大方世界でそうなっている。暴行・脅迫要件、抗拒不能要件はその言わばメルクマール、基準の問題なんだという御理解を示されたと思うんですよね。けれども、その暴行・脅迫要件が、私が今申し上げたような明治以来の積み重ねというのがあって、そうすると、同意なんかしていない、認めてなんかいないという現実の被害を切り捨ててしまうというふうに働いているのではないか。であれば、これは刑事訴訟の捜査実務や裁判の立証の問題ではなくて、規範がそういう実務をつくっているということになるのではないか。だから、今度の衆議院の全会一致の三年後の見直しも、この刑法改正案の修正として行われました。
 ですから、カウンセリングやワンストップ支援などのこうしたあらゆる性暴力に対する施策を充実させるとともに、刑法の見直しそのものが提起されているということについて参考人の御意見はいかがでしょう。
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