法務委員会
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会
会議録情報#0
平成三十年六月十三日(水曜日)
午前九時三十分開議
出席委員
委員長 平口 洋君
理事 大塚 拓君 理事 門 博文君
理事 田所 嘉徳君 理事 藤原 崇君
理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君
理事 源馬謙太郎君 理事 國重 徹君
安藤 裕君 井野 俊郎君
上野 宏史君 鬼木 誠君
門山 宏哲君 神田 裕君
菅家 一郎君 城内 実君
黄川田仁志君 小林 茂樹君
高村 正大君 谷川 とむ君
中曽根康隆君 古川 康君
山下 貴司君 和田 義明君
逢坂 誠二君 松田 功君
松平 浩一君 階 猛君
柚木 道義君 大口 善徳君
黒岩 宇洋君 藤野 保史君
串田 誠一君 重徳 和彦君
…………………………………
法務大臣政務官 山下 貴司君
参考人
(神戸大学大学院法学研究科教授) 窪田 充見君
参考人
(明治大学法学部教授)
(北海道大学名誉教授) 鈴木 賢君
参考人
(早稲田大学大学院法務研究科教授) 吉田 克己君
法務委員会専門員 齋藤 育子君
—————————————
委員の異動
六月十三日
辞任 補欠選任
谷川 とむ君 高村 正大君
同日
辞任 補欠選任
高村 正大君 谷川 とむ君
—————————————
六月十二日
裁判所の人的・物的充実に関する請願(藤野保史君紹介)(第二〇三一号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(今井雅人君紹介)(第二〇三二号)
同(藤野保史君紹介)(第二〇三三号)
同(堀越啓仁君紹介)(第二〇三四号)
同(日吉雄太君紹介)(第二一一二号)
民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇三五号)
同(笠井亮君紹介)(第二〇三六号)
同(穀田恵二君紹介)(第二〇三七号)
同(志位和夫君紹介)(第二〇三八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第二〇三九号)
同(田村貴昭君紹介)(第二〇四〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇四一号)
同(畑野君枝君紹介)(第二〇四二号)
同(藤野保史君紹介)(第二〇四三号)
同(宮本岳志君紹介)(第二〇四四号)
同(宮本徹君紹介)(第二〇四五号)
同(本村伸子君紹介)(第二〇四六号)
共謀罪法の廃止に関する請願(石川香織君紹介)(第二一一一号)
法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(城内実君紹介)(第二一六八号)
同月十三日
裁判所の人的・物的充実に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二一九九号)
同(遠山清彦君紹介)(第二二〇〇号)
同(田嶋要君紹介)(第二四〇八号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二〇一号)
同(金子恵美君紹介)(第二二〇二号)
同(吉川元君紹介)(第二二〇三号)
同(笠井亮君紹介)(第二三〇一号)
同(小宮山泰子君紹介)(第二三〇二号)
同(田村貴昭君紹介)(第二四〇九号)
同(照屋寛徳君紹介)(第二四一〇号)
同(山花郁夫君紹介)(第二四一一号)
民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(泉健太君紹介)(第二二九七号)
国籍選択制度の廃止に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二九八号)
もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二九九号)
外国人住民基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第二三〇〇号)
は本委員会に付託された。
—————————————
本日の会議に付した案件
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)
法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出第五九号)
————◇—————
この発言だけを見る →午前九時三十分開議
出席委員
委員長 平口 洋君
理事 大塚 拓君 理事 門 博文君
理事 田所 嘉徳君 理事 藤原 崇君
理事 古川 禎久君 理事 山尾志桜里君
理事 源馬謙太郎君 理事 國重 徹君
安藤 裕君 井野 俊郎君
上野 宏史君 鬼木 誠君
門山 宏哲君 神田 裕君
菅家 一郎君 城内 実君
黄川田仁志君 小林 茂樹君
高村 正大君 谷川 とむ君
中曽根康隆君 古川 康君
山下 貴司君 和田 義明君
逢坂 誠二君 松田 功君
松平 浩一君 階 猛君
柚木 道義君 大口 善徳君
黒岩 宇洋君 藤野 保史君
串田 誠一君 重徳 和彦君
…………………………………
法務大臣政務官 山下 貴司君
参考人
(神戸大学大学院法学研究科教授) 窪田 充見君
参考人
(明治大学法学部教授)
(北海道大学名誉教授) 鈴木 賢君
参考人
(早稲田大学大学院法務研究科教授) 吉田 克己君
法務委員会専門員 齋藤 育子君
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委員の異動
六月十三日
辞任 補欠選任
谷川 とむ君 高村 正大君
同日
辞任 補欠選任
高村 正大君 谷川 とむ君
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六月十二日
裁判所の人的・物的充実に関する請願(藤野保史君紹介)(第二〇三一号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(今井雅人君紹介)(第二〇三二号)
同(藤野保史君紹介)(第二〇三三号)
同(堀越啓仁君紹介)(第二〇三四号)
同(日吉雄太君紹介)(第二一一二号)
民法・戸籍法の差別的規定の廃止・法改正を求めることに関する請願(赤嶺政賢君紹介)(第二〇三五号)
同(笠井亮君紹介)(第二〇三六号)
同(穀田恵二君紹介)(第二〇三七号)
同(志位和夫君紹介)(第二〇三八号)
同(塩川鉄也君紹介)(第二〇三九号)
同(田村貴昭君紹介)(第二〇四〇号)
同(高橋千鶴子君紹介)(第二〇四一号)
同(畑野君枝君紹介)(第二〇四二号)
同(藤野保史君紹介)(第二〇四三号)
同(宮本岳志君紹介)(第二〇四四号)
同(宮本徹君紹介)(第二〇四五号)
同(本村伸子君紹介)(第二〇四六号)
共謀罪法の廃止に関する請願(石川香織君紹介)(第二一一一号)
法務局・更生保護官署・入国管理官署及び少年院施設の増員に関する請願(城内実君紹介)(第二一六八号)
同月十三日
裁判所の人的・物的充実に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二一九九号)
同(遠山清彦君紹介)(第二二〇〇号)
同(田嶋要君紹介)(第二四〇八号)
治安維持法犠牲者に対する国家賠償法の制定に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二〇一号)
同(金子恵美君紹介)(第二二〇二号)
同(吉川元君紹介)(第二二〇三号)
同(笠井亮君紹介)(第二三〇一号)
同(小宮山泰子君紹介)(第二三〇二号)
同(田村貴昭君紹介)(第二四〇九号)
同(照屋寛徳君紹介)(第二四一〇号)
同(山花郁夫君紹介)(第二四一一号)
民法を改正し、選択的夫婦別氏制度の導入を求めることに関する請願(泉健太君紹介)(第二二九七号)
国籍選択制度の廃止に関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二九八号)
もともと日本国籍を持っている人が日本国籍を自動的に喪失しないよう求めることに関する請願(枝野幸男君紹介)(第二二九九号)
外国人住民基本法の制定に関する請願(阿部知子君紹介)(第二三〇〇号)
は本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案(内閣提出第五八号)
法務局における遺言書の保管等に関する法律案(内閣提出第五九号)
————◇—————
平
平口洋#1
○平口委員長 これより会議を開きます。
内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の両案を議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として、神戸大学大学院法学研究科教授窪田充見君、明治大学法学部教授・北海道大学名誉教授鈴木賢君及び早稲田大学大学院法務研究科教授吉田克己君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙の中、御臨席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、窪田参考人、鈴木参考人、吉田参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず窪田参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →内閣提出、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律案及び法務局における遺言書の保管等に関する法律案の両案を議題といたします。
本日は、両案審査のため、参考人として、神戸大学大学院法学研究科教授窪田充見君、明治大学法学部教授・北海道大学名誉教授鈴木賢君及び早稲田大学大学院法務研究科教授吉田克己君、以上三名の方々に御出席をいただいております。
この際、参考人各位に委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙の中、御臨席を賜りまして、まことにありがとうございます。それぞれのお立場から忌憚のない御意見を賜れれば幸いに存じます。
次に、議事の順序について申し上げます。
まず、窪田参考人、鈴木参考人、吉田参考人の順に、それぞれ十五分程度御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。
なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得て発言していただくようお願いいたします。また、参考人から委員に対して質疑をすることはできないことになっておりますので、御了承願います。
それでは、まず窪田参考人にお願いいたします。
窪
窪田充見#2
○窪田参考人 おはようございます。ただいま御紹介いただきました神戸大学の窪田でございます。
本日は、このような意見陳述の機会をいただき、まことにありがとうございます。
私は、今回の法案について、法制審議会民法(相続関係)部会の委員として、また、それに先立って開催された相続法制検討ワーキングチームのメンバーとして、その検討作業にかかわってまいりましたが、本日は、民法の研究者の一人として、今回の法案に対する意見を述べさせていただきたいと思っております。
まず最初に、今回の法案が、戦後の相続法において最も包括的な改正提案であるということを確認しておきたいと思います。もちろん、これまでも、配偶者相続分の改正、寄与分制度の創設等、幾つかの重要な改正がなされてきております。しかし、そうした中で、今回の法案は、相続法全般に関する見直しという性格を有するという点で特筆すべきものであると思っております。
相続法は、戦後、全面的に改正されましたが、極めて限られた時間の中での改正であったことから、不透明な部分や制度的な課題もかなり多く残されていたと思っております。さらに、判例によって多くのルールが形成されてきたこともあり、専門家以外には容易には理解することができないほど、全体としての見通しが悪い状況になっておりました。そうした中で、今回、相続法の幅広い領域について見直しが図られたことは、それ自体として積極的に評価されるべき意義があるというのが私の基本的な認識でございます。
今回、意見を述べる機会を頂戴いたしましたが、このように今回の法案の内容は非常に多岐にわたるため、特に五つのポイントに絞って、簡単に意見を述べさせていただくことにしたいと思います。
第一に、今回の法案において新たに創設される制度の一つである配偶者居住権の制度について意見を述べさせていただきます。
まず、配偶者居住権ですが、これは、残された配偶者の利益を実現するオプションとして新たに考えられたものでございます。相続という仕組みは、基本的には、被相続人の財産がどのように承継されるのか、誰に権利が帰属するのかを決める仕組みだと言えます。もっとも、残された配偶者については、特に配偶者が比較的御高齢の場合、特定の建物の所有権を帰属させるという形でより、むしろ特定の建物について終身の利用を認めるという形でその保護を図るということは十分に考えられるところですし、また、合理的な解決の一つであろうと思います。
このように、残された配偶者の終身の居住権を認めるということについては、現行法でも遺言を通じてある程度実現することができるのではないかとも考えられます。
そうした方策の一つとしては、後継ぎ遺贈と呼ばれるものがあります。しかし、そもそもそうした後継ぎ遺贈が有効なのかという問題があります。また、負担つき遺贈といった方法もあるんですが、これについても、その建物の所有権を取得した者が建物を処分してしまった場合など、その履行を確保することができるのかという問題が残ります。
その点では、今回、残された配偶者の終身の建物利用を認める制度が相続における明確なオプションの一つとして創設されたということの意義は大変に大きいものであると思っております。
また、配偶者については短期居住権も創設されましたが、これは従来、判例によって形成されてきた使用貸借を使った保護をより明確にした制度ということになります。
なお、配偶者以外については従来の判例のルールによって処理がされることになりますが、今回、配偶者短期居住権として制度的に整備されたものが判例のルールに反映されていくということは十分に考えられるのではないかと思っております。
第二に、今回の法案において、権利と義務の承継について透明度の高い形で整備されていることの意義について触れておきたいと思います。これは、幾つかの観点でその積極的意義を示すことができるものであろうと思っております。
まず、かなり専門的なことになって恐縮ですが、相続に際して承継される財産については、相続のルールによるものとして理解するのか、財産の処分として理解するのかによって、その取扱いが大きく異なってきました。相続による承継だとすると、登記等の対抗要件がなくても取得した権利を第三者に対抗することができる、他方、財産の処分だとされると、対抗要件がなければ第三者に対抗することができないとされてきました。
冒頭でも申し上げたとおり、我が国の相続法では、判例によって形成されてきたルールが重要な位置を占めておりますが、その中でも、とりわけこの点については大変に見通しの悪い状況、整合的な説明が、あるいは理解が困難な状況になっておりました。実際にはほとんど同じ内容の遺言であるのに、ある場面では対抗要件が不要とされ、別の場面では対抗要件が必要とされるといったことについて、適切に説明することはもはや困難となっていたように思われます。
今回の法案においては、法定相続分を前提としつつ、それを超える部分について対抗要件を備えることが必要だという形で、一貫したルールを整備することが提案されております。これによって制度的な見通しは大変によくなるのではないかと考えております。
次に、相続財産に銀行の預貯金が含まれる場合の規律が明確になり、また、実際上の扱いも明確にされるということの意義が大きいものと思っております。
相続財産の中では、不動産だけではなく、預貯金も大きな意味を持っております。不動産は所有していなくても預貯金はあるという場合は決して少なくはないものと思います。
これも専門的なことになって大変に恐縮でございますが、こうした預貯金については、従来は当然に分割承継されるとされておりまして、遺産分割の対象とならないとされてきました。このため、特別受益や寄与分を考慮して決まる具体的相続分を踏まえた遺産分割、これを通じて相続人間の公平を実現するという仕組みは、預貯金については機能してきませんでした。
今回の法制審議会では、そうした問題があることを踏まえて、かなりこれについては検討が重ねられておりました。ただ、法制審議会の審議の途中の段階でしたが、最高裁が、預貯金も遺産分割の対象となる遺産に含まれるという判断を示しました。これによって、ここでの問題は半分は解消されたというふうに思います。
半分と申し上げましたのは、最終的に遺産分割の対象となるということは明らかになったものの、遺産分割までの間、どのように扱うのかという点では、実際上も問題が残っていたからであります。特に、手元に現金がない場合、被相続人の葬儀の費用をどのように支出するのか、被相続人が負担していた債務の弁済をどのようにするのか等が問題となります。
今回の法案においては、遺産分割までの間の仮払い制度が創設されるとともに、家事事件手続法における見直しが図られておりますが、これはこうした問題に具体的に対応するもので、制度的にも必要な改正であると思われます。また、一部分割についても、特に預貯金を意識しながら、もちろんそれだけではありませんが、適切に対応できるようにしたものとなっております。
今回の法案においては、こうした預貯金の取扱いが重要なポイントとして、かなり細部まで詰めて規定の整備が提案されております。これは、実際上も必要性が高く、意義は大きいものと思っております。
その他、債務の承継についても、やはり判例によって示されてきたルールを受ける形で、民法上、より明確な規定が設けられるように提案されております。
これらの権利義務の承継に関するルールの整備は、相続法の最も基本的な部分に関する改正で、積極的に評価されるべきものであるというのが私の認識でございます。
第三に、遺言に関する制度整備についても触れさせていただきたいと思います。
遺言の中で圧倒的に利用件数が多いのは自筆証書遺言でございますが、自筆証書遺言は、非常に簡単に作成ができるものの、遺言の存否自体が明らかではないということがあります。もちろん、通常はそうではないのでしょうが、遺言の存在を明らかにすれば利害関係がある者による改ざんや廃棄のリスクにさらされ、他方で、明らかにしなければ遺言が認識されないまま遺産分割がされてしまうというリスクがあるということになります。
今回の法案においては、自筆証書遺言について、方式要件の緩和とともに保管制度の創設が提案されております。とりわけ、公的機関による自筆証書遺言の保管制度の創設については、今述べた問題点との関係で大きな意義を有しているように思われます。
恐らく、この保管制度については、さらに将来的には、死亡届が出された場合の仕組み等をより整備していくことで、実際にも利用されやすいものとなっていくのではないかと思います。今回の自筆証書遺言の保管制度の創設は、そうしたいわば将来の制度の基盤を整備するものとして積極的に評価されるべきものであると考えております。
なお、先ほど申し述べましたとおり、権利義務の承継というルールの中では、法定相続分を前提として法律関係を考えるという基本的なアプローチがとられています。その点では、相続における法定相続分の役割がより明確に位置づけられ、その意義が重視されていると言ってもよいかと思います。今回の法案においては、それとともに、遺言制度を整備し、遺言を通じた被相続人の意思の実現を図るという仕組みが整えられておりますことは、全体として大変にバランスがよいものではないかと思っております。
第四に、遺留分制度の改正は、やはり今回の法案の大きなポイントであると思っております。
遺留分制度は、かなり複雑な仕組みで、その性格についてもさまざまな議論があるところでございます。ただ、遺留分が侵害された場合の従来の遺留分減殺請求権については、その行使によって非常に複雑な法律関係が生じてしまうということ、具体的には、遺贈等の減殺によって、多くの場合に目的物の共有状態が生じてしまい、さらにその後の解決が必要となる、また、この共有状態の解消というのは必ずしも容易ではないといった点については、恐らく現行の遺留分制度の問題点として広く認識が共有されてきたのではないかと思います。
今回の法案においては、遺留分侵害の効果は遺留分侵害額に相当する金銭の支払いの請求権とされ、それによって、この点の解決が単純で明快なものとなり、紛争の一回的解決を実現することが可能となっております。その上で、その支払い猶予を認めることにより請求された側の負担の軽減を図っており、制度を過度に複雑にせず、遺留分の実現を容易にするという意味でも、積極的に評価されてよいものであると思っております。
最後に、相続人以外の者の貢献について、新たに設けられた特別寄与料の仕組みについて意見を述べさせていただきたいと思います。
こうした問題について、従来の判例は、相続人ではない者、寄与分制度の対象とならない者が貢献した場合については、その者の配偶者等、相続人となる者の寄与分に反映させるという解決をとってまいりました。こうした従来の判例については、異なる観点からの評価があったものと思います。
一方で、なぜ実際に貢献した本人ではなく、その配偶者等の寄与分に算入できるのかという問題があります。夫婦とはいっても、それぞれが独立の人格ですから、実際に貢献したのが妻又は夫であるなら、貢献したわけではない夫又は妻の相続における取り分をふやすということが当然に正当化されるわけではないと思います。
ただ、他方で、実際に貢献した者の貢献が全く考慮されず、その分までもが他の共同相続人にも相続分に応じて承継されるということが適当なのかといえば、やはりそれもおかしいだろうという問題があります。
従来の判例は、そうした状況の中で、次善のものではあるのかもしれませんが、より適切な解決を求めてきたものとして理解することができるように思われます。
この問題については、今回の制度の中でも立場が分かれ得るものであるというふうに認識しております。法制審議会の議論の中でも、あくまで財産法上のルールによって処理すべきで、このような制度は不要だという考え方、一定の人的範囲でこうした制度を認めるべきだという考え方、人的範囲を制限せずにこうした制度を認めるべきだという考え方、こうした三つの考え方が対立していたと認識しております。
こうした対立する考え方がある中で、今回の制度整備は、従来も既に判例によって扱われてきたケースについて限定的に対応するものであり、その点では、小さな改正にとどまるのだという見方も可能かもしれません。ただ、従来の判例はあくまで相続人である配偶者等の寄与分として考慮されるというだけで、本人の貢献が本人の利益として反映されるというものではございませんでした。これに対して、今回の法案により本人に利益を帰属させることが可能となるという点の意義は、やはり決して小さいものではないと思っております。
今回の法案については、当然のことですが、全て私自身が研究者として考えていたことと一致するわけではございません。別の制度設計が考えられるのではないかと思う部分もございます。しかし、相続という仕組みは国民の全てにかかわる基本的な制度である以上、単純に理論的に正しいか否かということが決まるようなものではなく、その内容が幅広く共有され、理解されるものであるかが重要であるように思います。その点では、以上述べてきた五つのポイントについては、十分に理解することができ、また積極的に評価されるべきものであるというふうに考えております。
以上が、私の本法案に対する意見でございます。
御清聴いただき、ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →本日は、このような意見陳述の機会をいただき、まことにありがとうございます。
私は、今回の法案について、法制審議会民法(相続関係)部会の委員として、また、それに先立って開催された相続法制検討ワーキングチームのメンバーとして、その検討作業にかかわってまいりましたが、本日は、民法の研究者の一人として、今回の法案に対する意見を述べさせていただきたいと思っております。
まず最初に、今回の法案が、戦後の相続法において最も包括的な改正提案であるということを確認しておきたいと思います。もちろん、これまでも、配偶者相続分の改正、寄与分制度の創設等、幾つかの重要な改正がなされてきております。しかし、そうした中で、今回の法案は、相続法全般に関する見直しという性格を有するという点で特筆すべきものであると思っております。
相続法は、戦後、全面的に改正されましたが、極めて限られた時間の中での改正であったことから、不透明な部分や制度的な課題もかなり多く残されていたと思っております。さらに、判例によって多くのルールが形成されてきたこともあり、専門家以外には容易には理解することができないほど、全体としての見通しが悪い状況になっておりました。そうした中で、今回、相続法の幅広い領域について見直しが図られたことは、それ自体として積極的に評価されるべき意義があるというのが私の基本的な認識でございます。
今回、意見を述べる機会を頂戴いたしましたが、このように今回の法案の内容は非常に多岐にわたるため、特に五つのポイントに絞って、簡単に意見を述べさせていただくことにしたいと思います。
第一に、今回の法案において新たに創設される制度の一つである配偶者居住権の制度について意見を述べさせていただきます。
まず、配偶者居住権ですが、これは、残された配偶者の利益を実現するオプションとして新たに考えられたものでございます。相続という仕組みは、基本的には、被相続人の財産がどのように承継されるのか、誰に権利が帰属するのかを決める仕組みだと言えます。もっとも、残された配偶者については、特に配偶者が比較的御高齢の場合、特定の建物の所有権を帰属させるという形でより、むしろ特定の建物について終身の利用を認めるという形でその保護を図るということは十分に考えられるところですし、また、合理的な解決の一つであろうと思います。
このように、残された配偶者の終身の居住権を認めるということについては、現行法でも遺言を通じてある程度実現することができるのではないかとも考えられます。
そうした方策の一つとしては、後継ぎ遺贈と呼ばれるものがあります。しかし、そもそもそうした後継ぎ遺贈が有効なのかという問題があります。また、負担つき遺贈といった方法もあるんですが、これについても、その建物の所有権を取得した者が建物を処分してしまった場合など、その履行を確保することができるのかという問題が残ります。
その点では、今回、残された配偶者の終身の建物利用を認める制度が相続における明確なオプションの一つとして創設されたということの意義は大変に大きいものであると思っております。
また、配偶者については短期居住権も創設されましたが、これは従来、判例によって形成されてきた使用貸借を使った保護をより明確にした制度ということになります。
なお、配偶者以外については従来の判例のルールによって処理がされることになりますが、今回、配偶者短期居住権として制度的に整備されたものが判例のルールに反映されていくということは十分に考えられるのではないかと思っております。
第二に、今回の法案において、権利と義務の承継について透明度の高い形で整備されていることの意義について触れておきたいと思います。これは、幾つかの観点でその積極的意義を示すことができるものであろうと思っております。
まず、かなり専門的なことになって恐縮ですが、相続に際して承継される財産については、相続のルールによるものとして理解するのか、財産の処分として理解するのかによって、その取扱いが大きく異なってきました。相続による承継だとすると、登記等の対抗要件がなくても取得した権利を第三者に対抗することができる、他方、財産の処分だとされると、対抗要件がなければ第三者に対抗することができないとされてきました。
冒頭でも申し上げたとおり、我が国の相続法では、判例によって形成されてきたルールが重要な位置を占めておりますが、その中でも、とりわけこの点については大変に見通しの悪い状況、整合的な説明が、あるいは理解が困難な状況になっておりました。実際にはほとんど同じ内容の遺言であるのに、ある場面では対抗要件が不要とされ、別の場面では対抗要件が必要とされるといったことについて、適切に説明することはもはや困難となっていたように思われます。
今回の法案においては、法定相続分を前提としつつ、それを超える部分について対抗要件を備えることが必要だという形で、一貫したルールを整備することが提案されております。これによって制度的な見通しは大変によくなるのではないかと考えております。
次に、相続財産に銀行の預貯金が含まれる場合の規律が明確になり、また、実際上の扱いも明確にされるということの意義が大きいものと思っております。
相続財産の中では、不動産だけではなく、預貯金も大きな意味を持っております。不動産は所有していなくても預貯金はあるという場合は決して少なくはないものと思います。
これも専門的なことになって大変に恐縮でございますが、こうした預貯金については、従来は当然に分割承継されるとされておりまして、遺産分割の対象とならないとされてきました。このため、特別受益や寄与分を考慮して決まる具体的相続分を踏まえた遺産分割、これを通じて相続人間の公平を実現するという仕組みは、預貯金については機能してきませんでした。
今回の法制審議会では、そうした問題があることを踏まえて、かなりこれについては検討が重ねられておりました。ただ、法制審議会の審議の途中の段階でしたが、最高裁が、預貯金も遺産分割の対象となる遺産に含まれるという判断を示しました。これによって、ここでの問題は半分は解消されたというふうに思います。
半分と申し上げましたのは、最終的に遺産分割の対象となるということは明らかになったものの、遺産分割までの間、どのように扱うのかという点では、実際上も問題が残っていたからであります。特に、手元に現金がない場合、被相続人の葬儀の費用をどのように支出するのか、被相続人が負担していた債務の弁済をどのようにするのか等が問題となります。
今回の法案においては、遺産分割までの間の仮払い制度が創設されるとともに、家事事件手続法における見直しが図られておりますが、これはこうした問題に具体的に対応するもので、制度的にも必要な改正であると思われます。また、一部分割についても、特に預貯金を意識しながら、もちろんそれだけではありませんが、適切に対応できるようにしたものとなっております。
今回の法案においては、こうした預貯金の取扱いが重要なポイントとして、かなり細部まで詰めて規定の整備が提案されております。これは、実際上も必要性が高く、意義は大きいものと思っております。
その他、債務の承継についても、やはり判例によって示されてきたルールを受ける形で、民法上、より明確な規定が設けられるように提案されております。
これらの権利義務の承継に関するルールの整備は、相続法の最も基本的な部分に関する改正で、積極的に評価されるべきものであるというのが私の認識でございます。
第三に、遺言に関する制度整備についても触れさせていただきたいと思います。
遺言の中で圧倒的に利用件数が多いのは自筆証書遺言でございますが、自筆証書遺言は、非常に簡単に作成ができるものの、遺言の存否自体が明らかではないということがあります。もちろん、通常はそうではないのでしょうが、遺言の存在を明らかにすれば利害関係がある者による改ざんや廃棄のリスクにさらされ、他方で、明らかにしなければ遺言が認識されないまま遺産分割がされてしまうというリスクがあるということになります。
今回の法案においては、自筆証書遺言について、方式要件の緩和とともに保管制度の創設が提案されております。とりわけ、公的機関による自筆証書遺言の保管制度の創設については、今述べた問題点との関係で大きな意義を有しているように思われます。
恐らく、この保管制度については、さらに将来的には、死亡届が出された場合の仕組み等をより整備していくことで、実際にも利用されやすいものとなっていくのではないかと思います。今回の自筆証書遺言の保管制度の創設は、そうしたいわば将来の制度の基盤を整備するものとして積極的に評価されるべきものであると考えております。
なお、先ほど申し述べましたとおり、権利義務の承継というルールの中では、法定相続分を前提として法律関係を考えるという基本的なアプローチがとられています。その点では、相続における法定相続分の役割がより明確に位置づけられ、その意義が重視されていると言ってもよいかと思います。今回の法案においては、それとともに、遺言制度を整備し、遺言を通じた被相続人の意思の実現を図るという仕組みが整えられておりますことは、全体として大変にバランスがよいものではないかと思っております。
第四に、遺留分制度の改正は、やはり今回の法案の大きなポイントであると思っております。
遺留分制度は、かなり複雑な仕組みで、その性格についてもさまざまな議論があるところでございます。ただ、遺留分が侵害された場合の従来の遺留分減殺請求権については、その行使によって非常に複雑な法律関係が生じてしまうということ、具体的には、遺贈等の減殺によって、多くの場合に目的物の共有状態が生じてしまい、さらにその後の解決が必要となる、また、この共有状態の解消というのは必ずしも容易ではないといった点については、恐らく現行の遺留分制度の問題点として広く認識が共有されてきたのではないかと思います。
今回の法案においては、遺留分侵害の効果は遺留分侵害額に相当する金銭の支払いの請求権とされ、それによって、この点の解決が単純で明快なものとなり、紛争の一回的解決を実現することが可能となっております。その上で、その支払い猶予を認めることにより請求された側の負担の軽減を図っており、制度を過度に複雑にせず、遺留分の実現を容易にするという意味でも、積極的に評価されてよいものであると思っております。
最後に、相続人以外の者の貢献について、新たに設けられた特別寄与料の仕組みについて意見を述べさせていただきたいと思います。
こうした問題について、従来の判例は、相続人ではない者、寄与分制度の対象とならない者が貢献した場合については、その者の配偶者等、相続人となる者の寄与分に反映させるという解決をとってまいりました。こうした従来の判例については、異なる観点からの評価があったものと思います。
一方で、なぜ実際に貢献した本人ではなく、その配偶者等の寄与分に算入できるのかという問題があります。夫婦とはいっても、それぞれが独立の人格ですから、実際に貢献したのが妻又は夫であるなら、貢献したわけではない夫又は妻の相続における取り分をふやすということが当然に正当化されるわけではないと思います。
ただ、他方で、実際に貢献した者の貢献が全く考慮されず、その分までもが他の共同相続人にも相続分に応じて承継されるということが適当なのかといえば、やはりそれもおかしいだろうという問題があります。
従来の判例は、そうした状況の中で、次善のものではあるのかもしれませんが、より適切な解決を求めてきたものとして理解することができるように思われます。
この問題については、今回の制度の中でも立場が分かれ得るものであるというふうに認識しております。法制審議会の議論の中でも、あくまで財産法上のルールによって処理すべきで、このような制度は不要だという考え方、一定の人的範囲でこうした制度を認めるべきだという考え方、人的範囲を制限せずにこうした制度を認めるべきだという考え方、こうした三つの考え方が対立していたと認識しております。
こうした対立する考え方がある中で、今回の制度整備は、従来も既に判例によって扱われてきたケースについて限定的に対応するものであり、その点では、小さな改正にとどまるのだという見方も可能かもしれません。ただ、従来の判例はあくまで相続人である配偶者等の寄与分として考慮されるというだけで、本人の貢献が本人の利益として反映されるというものではございませんでした。これに対して、今回の法案により本人に利益を帰属させることが可能となるという点の意義は、やはり決して小さいものではないと思っております。
今回の法案については、当然のことですが、全て私自身が研究者として考えていたことと一致するわけではございません。別の制度設計が考えられるのではないかと思う部分もございます。しかし、相続という仕組みは国民の全てにかかわる基本的な制度である以上、単純に理論的に正しいか否かということが決まるようなものではなく、その内容が幅広く共有され、理解されるものであるかが重要であるように思います。その点では、以上述べてきた五つのポイントについては、十分に理解することができ、また積極的に評価されるべきものであるというふうに考えております。
以上が、私の本法案に対する意見でございます。
御清聴いただき、ありがとうございました。拍手
平
鈴
鈴木賢#4
○鈴木参考人 おはようございます。
本日は、参考人としてこのような場を与えていただきましたこと、まことに感謝申し上げます。
私は、およそ三十年前から、同性愛の当事者として、主に札幌、東京で同性愛者などいわゆるLGBTの人たちの居場所づくり、また人間の尊厳を取り戻すための活動を続けてまいりました。昨年六月には、私たちは、政令指定都市として初めてとなる札幌市パートナーシップ宣誓制度の創設という制度的な成果を獲得いたしました。現在、各自治体におきまして同性パートナー認証制度の導入に向けて働きかける活動を行っているところでございます。
また同時に、私は、北海道大学及び明治大学において中国法、台湾法の研究、教育に従事し、それぞれの家族法の研究などをしております。
本日は、同性愛者の困難解消と尊厳の回復及び台湾法、中国法との対比の視点から、相続法改正、とりわけ法律案の第千五十条に規定されております相続人以外の者の貢献を考慮するための方策に絞って意見を述べさせていただきます。
最初に、今回の相続法改正の背景について確認しておきたいと思います。
法改正の背景としては、急速に高齢化社会が進展したこと、相続を取り巻く社会情勢に大きな変化が生じてきていること、また、家族のあり方に関する国民の意識にも著しい変化が見られること、家族形態に変化が見られることや、要介護高齢者や独居老人が増加するなど、さまざまな社会問題も生じてきております。こうしたことが今回の法改正の背景として指摘されているところでございます。
家族をめぐる変化といたしましては、家族形態やライフスタイルの多様化また多国籍化などを指摘することができます。具体的には、非婚カップル、同性カップル、性愛を前提としない新しい形の親密圏、あるいは国際カップルの増加などがあると思われます。
しかし、現行の相続制度には、こうした新しい家族の形に十分対応し切れていない部分がございます。今回の改正案に含まれます相続人以外の者の貢献を考慮するための方策は、まさにこの改善のための一助になるのではないかと考えております。
この制度は、被相続人に対して無償で療養看護その他労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者に、特別寄与料の支払いを相続人に求めることを認めるものであります。これは、相続人以外の者であっても、財産の維持、増加に無償の貢献があった場合に、これを評価して、事実上、遺産の一部を取得させるものであります。介護などの貢献に報い、関係者間の実質的公平を図ることを狙ったものと説明されております。
しかし、本年三月十三日に提出されました改正案では、遺憾ながら、この特別寄与者の範囲を被相続人の親族に限定しています。平成二十九年七月の法制審議会追加試案までは、請求権者の範囲を限定しないなどとする乙案が併記されておりましたけれども、最終案ではそれは採用されませんでした。
このように請求権者の範囲を親族に限定すると、親族以外の者が貢献を行った場合に請求権が与えられないということになり、それでは家族の多様化に対応して実質的な公平を図るという目的が達成できないケースが出てくることを懸念いたします。特に、事実婚の異性パートナー、同性パートナーは、何年連れ添って、どれだけ貢献をしても、特別寄与料の請求はできません。これでは、約四十年ぶりに二十一世紀に行われる相続法改正としては、新たな時代に即応した改正とは言えなくなると思います。
同性カップルは既に日本社会に数多く存在いたしますが、同性愛者は偏見、無理解にさらされ、相続はもちろん、婚姻、社会保障、税制など、あらゆる法制度において、いかなる法的保護も与えられておりません。私自身、同性パートナーとの共同生活は既に十九年目に入りました。
本年四月二十六日には、大阪地裁に以下のような訴訟が提起されました。資料として配付しておりますけれども、六十九歳の原告は、同性同士の生活を四十年以上も続け、パートナーとともに自営業を営み、ともに財産を築いたにもかかわらず、パートナーの急逝後、相続人である実の妹さんに全ての遺産を、財産を持ち去られ、火葬に立ち会うことも許されませんでした。原告は本訴において財産の引渡し及び慰謝料の請求を行っています。
このように、日本の法律では、同性カップルがたとえ何年連れ添っても、協力して財産を築こうが、相続において評価される仕組みが一切ありません。そのため、本件のような悲劇が繰り返されています。
台湾では、二〇一五年十月に、台湾人の同性パートナーと三十五年同居していたフランス人の元台湾大学教授ジャック・ピック氏が、パートナーの病死後、末期治療の決定にもかかわれず、同居していたマンションの相続もかなわないという状況で、メンタルヘルスに不調を来し、ついには飛びおり自殺をするという悲劇が起きています。台湾では、この事件をきっかけに同性カップルの法的権利の保障の必要性についての社会的関心が高まり、昨年五月二十四日には憲法裁判所に相当する司法院大法官が、同性間の婚姻を認めていない民法を違憲と判断し、二年以内の法改正を命じることにつながりました。台湾では、遅くとも来年の五月までには、恐らくアジアで最初に、同性間の婚姻届が受理されるということが確実となりました。
今回の改正では、特別寄与料の請求権という形で、同性パートナーも保護の対象となることが期待されていましたところ、先述のように、最終案では、親族要件によって排除されてしまいました。
現在、既に世界の二十五カ国で同性間の婚姻を認めておりますが、日本でもようやく同性カップルを家族として扱う動きがあらわれています。二〇一五年に始まる渋谷区、世田谷区の同性パートナーシップ制度が、そのきっかけであります。同様の制度は、これまで伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市に広がり、近く中野区、大阪市、千葉市などでも導入が予定されています。今後も更に全国の自治体へ拡大させるため、この六月四日には、首都圏を中心に二十七の自治体の議会に対しまして、各地の住民から一斉に請願、陳情などが提起され、報道されたところであります。こうして、同性パートナーシップ制度は、全国の自治体へとドミノ現象を起こす前夜にあると感じられます。
これらの自治体のパートナーシップ制度には、直接的な法的効力はありません。しかし、この制度ができたことが、既に社会的な波及効果を発揮し始めております。すなわち、企業の中には、その顧客や社員に対する扱いに同性パートナーを含めるところが出てきております。例えば、資料としてお配りをしました、銀行の住宅ローンにおける同性パートナーに共同ローンを適用する、あるいは生命保険会社が同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定するということができるようになっています。また、NTTなど大企業が、手当支給、休暇、社宅への入居につき、配偶者と同等の扱いを始めております。こうしたことは、同性カップルにも事実上の配偶者と認めるという社会的な傾向が広がっているというふうに考えられます。
このように、日本でもようやく同性カップルに対する法的な保障を実現するための社会通念が広がり始めたのではないかというふうに思います。今回の相続法改正におきましては、ぜひともこの流れに沿って、同性パートナーにも特別寄与料の請求を認めるべきであると考えております。
これに対しては、同性、異性を問わず、事実婚のパートナーには、例えば、準委任契約による報酬請求であるとか、不当利得返還請求であるとか、あるいは遺言によって遺贈をしておくなどの既存の制度による対応で足りるのではないかとの立場があるようであります。しかし、特別寄与料の請求という制度の趣旨は、明確な契約や遺言がないまま被相続人が死亡してしまった場合に、事後的に実質的公平を図る点にございます。現状では婚姻という選択肢が与えられていない同性カップルに対して、この程度の法的保障を与えても何ら弊害はないと考えております。
なお、一部に、憲法二十四条一項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」と規定していることを、憲法を改正しなければ同性間の婚姻を認めることができないと説く向きがありますので、ここで一言しておきたいと思います。
まず、二十四条には同性間の婚姻についての明文での言及はございません。文理上、したがいまして、同性間の婚姻を禁止していると読むことはできません。
問題は、この「両性の合意のみに」の「のみ」がどの文言を受けたものであるかでありますけれども、憲法制定時の経緯、また世界の婚姻法において当時同性間の婚姻を認める例はなかったということからすると、これを合意のみの成立ということを含意するものであると解釈するのが適当であろうというふうに思います。つまり、親や家の合意を要しないで、当事者の合意のみによって婚姻は成立するというのが二十四条の意味であろうというふうに思っております。
一九四六年、憲法制定時に、二〇〇一年に世界では初めてオランダで同性婚が始まりますけれども、四六年の時点で二〇〇一年のことをあらかじめ予見し、前もって同性間の婚姻を禁止していたという解釈は余りにも荒唐無稽だというふうに思います。
実はこのことは、本年五月十一日の内閣答弁書、これは逢坂誠二議員による「日本国憲法下での同性婚に関する質問主意書」への答弁におきましても確認されているところでございます。安倍晋三首相名での答弁書では、同性間の婚姻が受理されない理由は、憲法二十四条ではなく民法、戸籍法に求められておりまして、法改正によって同性婚の実現が可能であることを示唆されております。
また、同性間の婚姻届が出された場合に不受理証明が出されますが、そこに憲法上問題があるというように書く実務は既に行われていないということは、法務省民事局第一課長が論文で認めているところでございます。
親族以外の事実上の貢献者に遺産の一部を取得させる制度は、私の研究対象である中国法では既に行われて久しいものがございます。一九八五年に制定された中国相続法では、生前の扶養、介護と死後の相続の対価的関係を承認する制度を設けております。例えば、同法第十四条では、相続人以外で被相続人からの扶養に依存していた、労働能力を欠き、かつ生活の糧を持たない者又は相続人以外で被相続人を比較的多く扶養した者には、適当な遺産を配分することができると規定しております。
本条は、相続人以外の者でも、被相続人を比較的多く扶養した、この中国法上の扶養は、経済上の援助にとどまらず、生活面での支援や看護、療養を含むものでありますけれども、そうした者については遺産配分請求権を付与するというものであります。これには親族要件は付されておりませんし、また、このことが紛争を複雑化させ長期化させているとの情報もございません。
以上をまとめますと、千五十条の「特別の寄与をした被相続人の親族」という文言を「特別の寄与をした者」に変更し、特別寄与料の請求から親族要件を外すべきであるというふうに考えます。特別の寄与をした者全てを対象とすることで、関係者間の実質的公平を図るという当初の趣旨がより徹底できるというふうに考えます。
同時に、そうすることで、日本でも同性カップルに対する法的保護の第一歩をしるすべきであります。既に同性家族の法律化は世界的潮流になっていますし、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、LGBTに対する日本政府の対応を整えることにもなります。オリンピック憲章では、性的指向による差別を禁止しております。先述の台湾大法官憲法解釈でも言うとおり、同性カップルを婚姻から排除することは、国が法律によって同性愛者を差別することに加担することにほかなりません。せめて相続法における特別寄与料請求からは排除しないという姿勢を示すことで、同性愛者に対する法による差別をやめる方向へ転換すべきことを強く求めたいと存じます。
町で手をつないで歩くことすら勇気が要る同性カップル。今後は何はばかることなく生活できる、そんな世の中を私は若者たちには与えてやりたい。法律の小さい文言ですけれども、それが日本を変える力になります。当委員会の委員におかれましては、御賢察を賜りますようお願い申し上げます。
以上とさせていただきます。ありがとうございます。拍手
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私は、およそ三十年前から、同性愛の当事者として、主に札幌、東京で同性愛者などいわゆるLGBTの人たちの居場所づくり、また人間の尊厳を取り戻すための活動を続けてまいりました。昨年六月には、私たちは、政令指定都市として初めてとなる札幌市パートナーシップ宣誓制度の創設という制度的な成果を獲得いたしました。現在、各自治体におきまして同性パートナー認証制度の導入に向けて働きかける活動を行っているところでございます。
また同時に、私は、北海道大学及び明治大学において中国法、台湾法の研究、教育に従事し、それぞれの家族法の研究などをしております。
本日は、同性愛者の困難解消と尊厳の回復及び台湾法、中国法との対比の視点から、相続法改正、とりわけ法律案の第千五十条に規定されております相続人以外の者の貢献を考慮するための方策に絞って意見を述べさせていただきます。
最初に、今回の相続法改正の背景について確認しておきたいと思います。
法改正の背景としては、急速に高齢化社会が進展したこと、相続を取り巻く社会情勢に大きな変化が生じてきていること、また、家族のあり方に関する国民の意識にも著しい変化が見られること、家族形態に変化が見られることや、要介護高齢者や独居老人が増加するなど、さまざまな社会問題も生じてきております。こうしたことが今回の法改正の背景として指摘されているところでございます。
家族をめぐる変化といたしましては、家族形態やライフスタイルの多様化また多国籍化などを指摘することができます。具体的には、非婚カップル、同性カップル、性愛を前提としない新しい形の親密圏、あるいは国際カップルの増加などがあると思われます。
しかし、現行の相続制度には、こうした新しい家族の形に十分対応し切れていない部分がございます。今回の改正案に含まれます相続人以外の者の貢献を考慮するための方策は、まさにこの改善のための一助になるのではないかと考えております。
この制度は、被相続人に対して無償で療養看護その他労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者に、特別寄与料の支払いを相続人に求めることを認めるものであります。これは、相続人以外の者であっても、財産の維持、増加に無償の貢献があった場合に、これを評価して、事実上、遺産の一部を取得させるものであります。介護などの貢献に報い、関係者間の実質的公平を図ることを狙ったものと説明されております。
しかし、本年三月十三日に提出されました改正案では、遺憾ながら、この特別寄与者の範囲を被相続人の親族に限定しています。平成二十九年七月の法制審議会追加試案までは、請求権者の範囲を限定しないなどとする乙案が併記されておりましたけれども、最終案ではそれは採用されませんでした。
このように請求権者の範囲を親族に限定すると、親族以外の者が貢献を行った場合に請求権が与えられないということになり、それでは家族の多様化に対応して実質的な公平を図るという目的が達成できないケースが出てくることを懸念いたします。特に、事実婚の異性パートナー、同性パートナーは、何年連れ添って、どれだけ貢献をしても、特別寄与料の請求はできません。これでは、約四十年ぶりに二十一世紀に行われる相続法改正としては、新たな時代に即応した改正とは言えなくなると思います。
同性カップルは既に日本社会に数多く存在いたしますが、同性愛者は偏見、無理解にさらされ、相続はもちろん、婚姻、社会保障、税制など、あらゆる法制度において、いかなる法的保護も与えられておりません。私自身、同性パートナーとの共同生活は既に十九年目に入りました。
本年四月二十六日には、大阪地裁に以下のような訴訟が提起されました。資料として配付しておりますけれども、六十九歳の原告は、同性同士の生活を四十年以上も続け、パートナーとともに自営業を営み、ともに財産を築いたにもかかわらず、パートナーの急逝後、相続人である実の妹さんに全ての遺産を、財産を持ち去られ、火葬に立ち会うことも許されませんでした。原告は本訴において財産の引渡し及び慰謝料の請求を行っています。
このように、日本の法律では、同性カップルがたとえ何年連れ添っても、協力して財産を築こうが、相続において評価される仕組みが一切ありません。そのため、本件のような悲劇が繰り返されています。
台湾では、二〇一五年十月に、台湾人の同性パートナーと三十五年同居していたフランス人の元台湾大学教授ジャック・ピック氏が、パートナーの病死後、末期治療の決定にもかかわれず、同居していたマンションの相続もかなわないという状況で、メンタルヘルスに不調を来し、ついには飛びおり自殺をするという悲劇が起きています。台湾では、この事件をきっかけに同性カップルの法的権利の保障の必要性についての社会的関心が高まり、昨年五月二十四日には憲法裁判所に相当する司法院大法官が、同性間の婚姻を認めていない民法を違憲と判断し、二年以内の法改正を命じることにつながりました。台湾では、遅くとも来年の五月までには、恐らくアジアで最初に、同性間の婚姻届が受理されるということが確実となりました。
今回の改正では、特別寄与料の請求権という形で、同性パートナーも保護の対象となることが期待されていましたところ、先述のように、最終案では、親族要件によって排除されてしまいました。
現在、既に世界の二十五カ国で同性間の婚姻を認めておりますが、日本でもようやく同性カップルを家族として扱う動きがあらわれています。二〇一五年に始まる渋谷区、世田谷区の同性パートナーシップ制度が、そのきっかけであります。同様の制度は、これまで伊賀市、宝塚市、那覇市、札幌市、福岡市に広がり、近く中野区、大阪市、千葉市などでも導入が予定されています。今後も更に全国の自治体へ拡大させるため、この六月四日には、首都圏を中心に二十七の自治体の議会に対しまして、各地の住民から一斉に請願、陳情などが提起され、報道されたところであります。こうして、同性パートナーシップ制度は、全国の自治体へとドミノ現象を起こす前夜にあると感じられます。
これらの自治体のパートナーシップ制度には、直接的な法的効力はありません。しかし、この制度ができたことが、既に社会的な波及効果を発揮し始めております。すなわち、企業の中には、その顧客や社員に対する扱いに同性パートナーを含めるところが出てきております。例えば、資料としてお配りをしました、銀行の住宅ローンにおける同性パートナーに共同ローンを適用する、あるいは生命保険会社が同性パートナーを死亡保険金の受取人に指定するということができるようになっています。また、NTTなど大企業が、手当支給、休暇、社宅への入居につき、配偶者と同等の扱いを始めております。こうしたことは、同性カップルにも事実上の配偶者と認めるという社会的な傾向が広がっているというふうに考えられます。
このように、日本でもようやく同性カップルに対する法的な保障を実現するための社会通念が広がり始めたのではないかというふうに思います。今回の相続法改正におきましては、ぜひともこの流れに沿って、同性パートナーにも特別寄与料の請求を認めるべきであると考えております。
これに対しては、同性、異性を問わず、事実婚のパートナーには、例えば、準委任契約による報酬請求であるとか、不当利得返還請求であるとか、あるいは遺言によって遺贈をしておくなどの既存の制度による対応で足りるのではないかとの立場があるようであります。しかし、特別寄与料の請求という制度の趣旨は、明確な契約や遺言がないまま被相続人が死亡してしまった場合に、事後的に実質的公平を図る点にございます。現状では婚姻という選択肢が与えられていない同性カップルに対して、この程度の法的保障を与えても何ら弊害はないと考えております。
なお、一部に、憲法二十四条一項が「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、」と規定していることを、憲法を改正しなければ同性間の婚姻を認めることができないと説く向きがありますので、ここで一言しておきたいと思います。
まず、二十四条には同性間の婚姻についての明文での言及はございません。文理上、したがいまして、同性間の婚姻を禁止していると読むことはできません。
問題は、この「両性の合意のみに」の「のみ」がどの文言を受けたものであるかでありますけれども、憲法制定時の経緯、また世界の婚姻法において当時同性間の婚姻を認める例はなかったということからすると、これを合意のみの成立ということを含意するものであると解釈するのが適当であろうというふうに思います。つまり、親や家の合意を要しないで、当事者の合意のみによって婚姻は成立するというのが二十四条の意味であろうというふうに思っております。
一九四六年、憲法制定時に、二〇〇一年に世界では初めてオランダで同性婚が始まりますけれども、四六年の時点で二〇〇一年のことをあらかじめ予見し、前もって同性間の婚姻を禁止していたという解釈は余りにも荒唐無稽だというふうに思います。
実はこのことは、本年五月十一日の内閣答弁書、これは逢坂誠二議員による「日本国憲法下での同性婚に関する質問主意書」への答弁におきましても確認されているところでございます。安倍晋三首相名での答弁書では、同性間の婚姻が受理されない理由は、憲法二十四条ではなく民法、戸籍法に求められておりまして、法改正によって同性婚の実現が可能であることを示唆されております。
また、同性間の婚姻届が出された場合に不受理証明が出されますが、そこに憲法上問題があるというように書く実務は既に行われていないということは、法務省民事局第一課長が論文で認めているところでございます。
親族以外の事実上の貢献者に遺産の一部を取得させる制度は、私の研究対象である中国法では既に行われて久しいものがございます。一九八五年に制定された中国相続法では、生前の扶養、介護と死後の相続の対価的関係を承認する制度を設けております。例えば、同法第十四条では、相続人以外で被相続人からの扶養に依存していた、労働能力を欠き、かつ生活の糧を持たない者又は相続人以外で被相続人を比較的多く扶養した者には、適当な遺産を配分することができると規定しております。
本条は、相続人以外の者でも、被相続人を比較的多く扶養した、この中国法上の扶養は、経済上の援助にとどまらず、生活面での支援や看護、療養を含むものでありますけれども、そうした者については遺産配分請求権を付与するというものであります。これには親族要件は付されておりませんし、また、このことが紛争を複雑化させ長期化させているとの情報もございません。
以上をまとめますと、千五十条の「特別の寄与をした被相続人の親族」という文言を「特別の寄与をした者」に変更し、特別寄与料の請求から親族要件を外すべきであるというふうに考えます。特別の寄与をした者全てを対象とすることで、関係者間の実質的公平を図るという当初の趣旨がより徹底できるというふうに考えます。
同時に、そうすることで、日本でも同性カップルに対する法的保護の第一歩をしるすべきであります。既に同性家族の法律化は世界的潮流になっていますし、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、LGBTに対する日本政府の対応を整えることにもなります。オリンピック憲章では、性的指向による差別を禁止しております。先述の台湾大法官憲法解釈でも言うとおり、同性カップルを婚姻から排除することは、国が法律によって同性愛者を差別することに加担することにほかなりません。せめて相続法における特別寄与料請求からは排除しないという姿勢を示すことで、同性愛者に対する法による差別をやめる方向へ転換すべきことを強く求めたいと存じます。
町で手をつないで歩くことすら勇気が要る同性カップル。今後は何はばかることなく生活できる、そんな世の中を私は若者たちには与えてやりたい。法律の小さい文言ですけれども、それが日本を変える力になります。当委員会の委員におかれましては、御賢察を賜りますようお願い申し上げます。
以上とさせていただきます。ありがとうございます。拍手
平
吉
吉田克己#6
○吉田参考人 おはようございます。早稲田大学で民法を担当しております吉田克己と申します。
本日は、大変貴重な機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
私は、大きくは二つの内容でお話をさせていただきたいと思っています。最初に、第一点として、やや大きな観点から、相続法改正に関して現在どのような点が課題になっているかを整理してみます。いわば総論的な検討でございます。次に、第二点として、今回の改正法案の内容につきまして、総論的な検討も踏まえながら、若干の意見を申し述べたいと思います。いわば各論的な検討でございます。レジュメを用意いたしましたので、御参照いただければ幸いでございます。
まず、総論的な検討でございますけれども、ここでは、歴史的な視角と比較法的視角という二つの視角から、日本における相続法改正の現代的な課題を整理してみます。
歴史をごく簡単に振り返りますと、相続法が対象とする相続現象は、大きく二つの時代に分かれるのではないかと思います。
第一の時代は近代で、ざっくりとまとめますと、西欧の十九世紀から二十世紀初頭あるいは中葉までの時代でございます。ここでは、相続の対象は、主要には生産、経営の基盤となる大土地所有でございました。それはまた、所有者の社会における政治的活動を支えるものでもありました。そして、そのような財であるがゆえに、世代を超えたその一体的承継が要請されました。大規模な経営財、政治財に関する単独相続の時代でございます。
第二の時代は現代で、この時代は、二十世紀に始まり、とりわけ二十世紀後半期をカバーいたします。その特徴は、相続の対象財産が小規模化するとともに、相続が問題となる家族の数が大幅に増加してくるというところに求められます。その背景にあるのは、一つには、勤労者等を主体とした消費家族が、持家等の資産を形成して相続法の世界に登場してくる、もう一つには、小規模な生産と経営の主体も資産を形成するようになることでございます。後者の典型は、戦後日本の農地改革でございました。
このような経緯を背景としながら、相続法においては、均分相続が主流になってきます。消費家族においては、単独相続への動因が基本的には存在しないからでございます。しかし、小規模生産経営家族においては、経営財の一体的承継への要請が存在いたします。そこで、均分相続を前提としながらも、例えば農家相続に関する特例法などの試みがなされることになります。
現時点での相続法は、この現代という時代に属する相続法です。つまり、消費財と小経営財を対象とする相続法なのでございますけれども、これまでと異なる新しい状況がつけ加わっている点に注意を要すると思います。新たな状況というのは、家族的結合の多様化と少子高齢社会の進行、そして人口減少社会の到来でございます。
まず、前者の家族的結合の多様化です。
家族的な人間の結合は、現実のあり方においては極めて多様です。しかし、近代民法は、多様な家族的結合のうち、法律婚を特に取り上げて、それに特権的な地位を与えてきました。そのような考え方が、近時、西欧諸国において大きく揺らいできております。いわば、法律婚の相対化が進展しているわけでございます。
そのような中で、法律婚以外の家族的結合における財産承継をどのように考えていくのか。狭義の相続法に限定されず、相続代替制度も含めた幅広い検討が要請されているように思われます。
次に、少子高齢化の進行ですが、この現象に伴って、被相続人の死亡年齢の高齢化と相続人の高齢化が生じています。
まず、被相続人の高齢化に伴いまして、被相続人に対する生活支援及び介護問題の重要性が増大してきております。そういたしますと、それらへの貢献を相続に際してどのように考慮するのかという問題の検討が求められるようになるわけです。対価相続あるいは扶養と相続と呼ばれる問題の登場でございまして、日本の相続法に即して言いますと、寄与分制度の再定義が求められております。
次に、相続人の高齢化に伴いまして、相続の意味が変化してきます。配偶者の高齢化に伴う生活支援の必要性が増大している、それがその一つでございます。子供につきましても、相続の意味の変化が見られます。従来は自立への経済的支援という意味が強かったわけでございますけれども、相続時の年齢の上昇に伴って、自立後さらにはリタイア後の経済的支援へと相続の意味が変わってきます。
人口減少社会到来との関係では、相続財産の資産価値の低下が大きな意味を持ってきています。相続財産は、場合によってはマイナスの財産、つまり負財化いたします。それに伴って、遺産の事実的あるいは法的な管理不全問題が顕在化してくるわけでございます。近時、喫緊の政策的課題として議論の対象になっております所有者不明土地問題は、まさにその端的なあらわれでございます。
次に、比較法的視角から日本の相続法を見ますと、そこにはかなりの特殊性が存在していることに気づきます。三点ほど指摘したいと思います。
第一点は、財産承継の基本的考え方でございます。世界の相続法システムは、この点に関して、積極財産承継主義と包括承継主義との二つの対照的なシステムが存在いたします。
積極財産承継主義は、イギリスなどのコモンロー系の国が採用するシステムで、相続処理に当たる専門家が債務を弁済し、その後の積極財産だけを相続人に分割する仕組みでございます。
これに対して、包括承継主義は、ドイツ、フランスなど大陸法系の国が採用する仕組みでございまして、債務を含めた被相続人の全財産が相続人に包括的に承継されます。日本もこの主義を採用しています。
しかし、現実には、ドイツやフランスでは、遺産裁判官や公証人などの専門家が関与して債務をまず弁済するというコモンロー的な処理が行われているようでございます。ところが、日本はかなり純粋の包括承継主義を保持しています。その点で、ひとり取り残されているという印象を受ける次第でございます。
第二点は、日本の相続法においては、包括承継される財産が遺産から流出していく可能性が大きいという点でございます。換言いたしますと、日本では、相続において遺産分割手続の持つ意味が小さいということでございます。
レジュメには三点ほど記載しておきましたが、ここでは、可分債権の当然分割主義だけ触れておきます。
つまり、可分債権は、相続開始とともに、法定相続分の割合で当然に共同相続人間で分割されますので、遺産分割の対象である遺産から流出していくわけでございます。これは、他の大陸法系の相続法とは異なる日本独自の特徴でございます。それによって遺産分割の対象が狭まりますので、遺産分割の柔軟な処理が大いに妨げられます。
最も重要な預貯金債権については、二〇一六年の大法廷決定によって別扱いが認められましたので、大きな変化が生じました。しかし、可分債権一般については、やはり当然分割主義が維持されております。
第三点は、相続のインフラストラクチャーの不十分性という点でございます。
相続は、複雑な法的処理が必要な分野ですので、なかなか素人である相続の当事者だけでは問題を処理することができません。専門家の助力が要請されます。イギリス、ドイツ、フランスとも、この点についてはそれなりの体制が準備されています。しかし、日本の場合には、この点が極めて弱いと言わざるを得ません。家裁の調停制度はこの点で評価される制度ですが、相続全体の中では、ごく一部に対応できているにすぎません。
次に、今回の法案につきまして、若干の所見を申し上げます。
最初に全体的な評価でございますけれども、一つには、家族的結合の多様性への対応が必ずしも十分ではないことを指摘できると思います。
今回の改正作業の契機は、婚外子相続分差別違憲の大法廷決定にありました。この違憲決定に対して、法律婚を強化しよう、配偶者の法的地位を強化しようというのが、改正作業のそもそもの出発点にあった問題意識でした。
配偶者の法的地位の強化は、それ自体は、先ほどの相続法の現代的課題においても指摘した重要な課題でございますけれども、他方で、家族的結合の多様性への対応が置き去りにされていることは否定できないように思います。これは、単に置き去りにされているというだけではなくて、それへの対応が相対的に弱くなってしまうというような危険もあると思います。相続法外の対応も含めて、今後の検討が望まれます。
もう一点指摘したいのは、日本相続法の特殊な構造の克服へ向けての端緒的な対応も見出されるということでございます。これは確かに端緒的な対応にすぎないのでございますけれども、今後、この方向を大事にして、今回の改正が今後のさらなる改正への第一歩となることを期待しております。
次に、法案の個別的提案に対する所見でございます。時間の関係もあり、全面的に検討することはできません。何点かポイントを絞って、重要な点を申し上げるにとどめざるを得ません。
第一に、配偶者居住権を保護するための方策を見てみますと、これは、今回の改正法案のいわば目玉ともいうべき構想でございます。生存配偶者の生活保障という観点から、積極的に評価すべき提案だと思われます。
この制度の基本的考え方は、一定の場合に、生存配偶者に長期の配偶者居住権を付与するとともに、居住権を取得した配偶者はその財産的価値を相続したものと扱うというものでございます。この考え方にかかわって、なお何点かの検討事項があるように思います。
最初に、居住権の財産的価値の評価をどのようにして行うのか、これが重要な問題となります。一応、事務局から示された評価に関する考え方もあるわけでございますけれども、これにつきましては、共同相続人の納得を得られませんと、制度はうまく動かないと思われます。この点に関して、制度を動かしながら、一層の検討を期待したいと思います。
次に、この居住権には、財産的価値があるはずですのに、譲渡性が認められません。そこで、居住権の付与を受けた配偶者が転居したい場合にどうするかが問題になります。確かに、譲渡性が認められても、終身の場合にはその配偶者の死亡までに限定される居住権が、容易に譲渡できるとは思われません。しかし、建物所有者との関係で、残存価値の償還等を考える余地はあるのではないかとも思えます。この点については、さらなる検討を期待したいと思います。
さらに、レジュメには、この居住権の法的性質に関する所見も述べておきましたけれども、これは省略したいと思います。
第二に、特別の寄与の制度の新設について触れます。
この制度は、相続人以外の者の被相続人への療養看護等の提供に対して金銭的に報いる制度でございます。先に整理しました相続法の現代的課題にかかわる改正で、基本的には、積極的に評価してよろしいと考えます。ただし、多少の点を指摘する必要はあるでしょう。
まず、法案は、現行の寄与分制度と同様に、財産の維持又は増加についての特別の寄与を要求しています。しかし、この制度において重要なのは、実質的に無償で療養看護等を提供しているかどうかということでありましょう。財産の維持又は増加が、それに加えた独自の要件になっていると解するとしますと、制度の硬直的な運用につながらないかが危惧される次第です。
さらに、改正法案は、無償性を要件としています。寄与分制度については無償が明示的には規定されていませんので、少し気になるところでございます。この要件につきましても、それを厳格に形式的に解すべきではないと思われます。つまり、多少のお礼があっても、実質的に無償であることを妨げられないことを明確にすべきだと思われます。それは、不動産等の利用関係について、多少のお礼があっても使用貸借と法性決定することを妨げないのと同じでございます。
第三に、共同相続における権利承継の対抗要件に関する改正案を取り上げます。
改正案は、相続承継について対抗要件が必要である場面を拡大しようとするものでございます。現在の判例法理のもとで、相続登記の対抗要件としての機能が大きく減殺されています。とりわけ問題が大きいのは、相続させる旨の遺言による権利承継を登記なくして第三者に対抗し得るとした判例理論でございます。改正法案は、この状況を改善しようとしているわけで、支持し得るものでございます。更に指摘しますと、この改正は、相続未登記問題という現下の喫緊の課題への対応としても意味があることと思われます。
しかし、多少の検討事項もなお残されているように思います。改正法案は、相続分指定についても、この扱いを貫徹することにしています。その結果、相続人は、指定相続分による承継についてまず登記を要求され、その後、遺産分割による承継についても登記を要求される。つまり、二重の登記を要求されるということになります。これは、過重な負担になる危険もあります。この措置を導入するのであれば、登録免許税を始めとする相続登記のための金銭的負担に関する軽減措置をリンクさせる必要があると考えます。
第四に、改正法案は、遺産分割前の遺産に属する財産の処分があった場合について、遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができるとする規定の新設を提案しています。遺産から財産が簡単に流出するという日本相続法の特殊な構造への対応を行うもので、支持し得る提案でございます。
私といたしましては、この制度改正をそのような性格を有するものと捉えて、他の問題の検討にもつなげることが望ましいと考えています。これは、根本的には、遺留分制度とか持ち戻し制度の再定義にもつながる問題です。しかし、現実には、これらの制度に手をつけることまで行くのは難しいだろうとは考えております。
最後、第五に、法務局における遺言書の保管制度の新設について触れたいと思います。
これは、日本の相続法システムの弱点である相続インフラストラクチャーの不十分性に対する一定の対応という点で、注目すべき制度改革であると考えます。公的支援ということでは、相続未登記問題との関連で、法定相続情報証明制度が既に動いております。このような方向を更に追求することが望ましいと思われます。
しかし、相続インフラストラクチャーの不十分性への対応の中心は、相続の処理を援助する専門家をどこにどのように求めるのか、公証人や司法書士、弁護士などをどのように位置づけるかでございます。これらの問題につきましては、なお今後の検討に委ねられる部分が大きいように思われます。
以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →本日は、大変貴重な機会を与えていただきまして、どうもありがとうございます。
私は、大きくは二つの内容でお話をさせていただきたいと思っています。最初に、第一点として、やや大きな観点から、相続法改正に関して現在どのような点が課題になっているかを整理してみます。いわば総論的な検討でございます。次に、第二点として、今回の改正法案の内容につきまして、総論的な検討も踏まえながら、若干の意見を申し述べたいと思います。いわば各論的な検討でございます。レジュメを用意いたしましたので、御参照いただければ幸いでございます。
まず、総論的な検討でございますけれども、ここでは、歴史的な視角と比較法的視角という二つの視角から、日本における相続法改正の現代的な課題を整理してみます。
歴史をごく簡単に振り返りますと、相続法が対象とする相続現象は、大きく二つの時代に分かれるのではないかと思います。
第一の時代は近代で、ざっくりとまとめますと、西欧の十九世紀から二十世紀初頭あるいは中葉までの時代でございます。ここでは、相続の対象は、主要には生産、経営の基盤となる大土地所有でございました。それはまた、所有者の社会における政治的活動を支えるものでもありました。そして、そのような財であるがゆえに、世代を超えたその一体的承継が要請されました。大規模な経営財、政治財に関する単独相続の時代でございます。
第二の時代は現代で、この時代は、二十世紀に始まり、とりわけ二十世紀後半期をカバーいたします。その特徴は、相続の対象財産が小規模化するとともに、相続が問題となる家族の数が大幅に増加してくるというところに求められます。その背景にあるのは、一つには、勤労者等を主体とした消費家族が、持家等の資産を形成して相続法の世界に登場してくる、もう一つには、小規模な生産と経営の主体も資産を形成するようになることでございます。後者の典型は、戦後日本の農地改革でございました。
このような経緯を背景としながら、相続法においては、均分相続が主流になってきます。消費家族においては、単独相続への動因が基本的には存在しないからでございます。しかし、小規模生産経営家族においては、経営財の一体的承継への要請が存在いたします。そこで、均分相続を前提としながらも、例えば農家相続に関する特例法などの試みがなされることになります。
現時点での相続法は、この現代という時代に属する相続法です。つまり、消費財と小経営財を対象とする相続法なのでございますけれども、これまでと異なる新しい状況がつけ加わっている点に注意を要すると思います。新たな状況というのは、家族的結合の多様化と少子高齢社会の進行、そして人口減少社会の到来でございます。
まず、前者の家族的結合の多様化です。
家族的な人間の結合は、現実のあり方においては極めて多様です。しかし、近代民法は、多様な家族的結合のうち、法律婚を特に取り上げて、それに特権的な地位を与えてきました。そのような考え方が、近時、西欧諸国において大きく揺らいできております。いわば、法律婚の相対化が進展しているわけでございます。
そのような中で、法律婚以外の家族的結合における財産承継をどのように考えていくのか。狭義の相続法に限定されず、相続代替制度も含めた幅広い検討が要請されているように思われます。
次に、少子高齢化の進行ですが、この現象に伴って、被相続人の死亡年齢の高齢化と相続人の高齢化が生じています。
まず、被相続人の高齢化に伴いまして、被相続人に対する生活支援及び介護問題の重要性が増大してきております。そういたしますと、それらへの貢献を相続に際してどのように考慮するのかという問題の検討が求められるようになるわけです。対価相続あるいは扶養と相続と呼ばれる問題の登場でございまして、日本の相続法に即して言いますと、寄与分制度の再定義が求められております。
次に、相続人の高齢化に伴いまして、相続の意味が変化してきます。配偶者の高齢化に伴う生活支援の必要性が増大している、それがその一つでございます。子供につきましても、相続の意味の変化が見られます。従来は自立への経済的支援という意味が強かったわけでございますけれども、相続時の年齢の上昇に伴って、自立後さらにはリタイア後の経済的支援へと相続の意味が変わってきます。
人口減少社会到来との関係では、相続財産の資産価値の低下が大きな意味を持ってきています。相続財産は、場合によってはマイナスの財産、つまり負財化いたします。それに伴って、遺産の事実的あるいは法的な管理不全問題が顕在化してくるわけでございます。近時、喫緊の政策的課題として議論の対象になっております所有者不明土地問題は、まさにその端的なあらわれでございます。
次に、比較法的視角から日本の相続法を見ますと、そこにはかなりの特殊性が存在していることに気づきます。三点ほど指摘したいと思います。
第一点は、財産承継の基本的考え方でございます。世界の相続法システムは、この点に関して、積極財産承継主義と包括承継主義との二つの対照的なシステムが存在いたします。
積極財産承継主義は、イギリスなどのコモンロー系の国が採用するシステムで、相続処理に当たる専門家が債務を弁済し、その後の積極財産だけを相続人に分割する仕組みでございます。
これに対して、包括承継主義は、ドイツ、フランスなど大陸法系の国が採用する仕組みでございまして、債務を含めた被相続人の全財産が相続人に包括的に承継されます。日本もこの主義を採用しています。
しかし、現実には、ドイツやフランスでは、遺産裁判官や公証人などの専門家が関与して債務をまず弁済するというコモンロー的な処理が行われているようでございます。ところが、日本はかなり純粋の包括承継主義を保持しています。その点で、ひとり取り残されているという印象を受ける次第でございます。
第二点は、日本の相続法においては、包括承継される財産が遺産から流出していく可能性が大きいという点でございます。換言いたしますと、日本では、相続において遺産分割手続の持つ意味が小さいということでございます。
レジュメには三点ほど記載しておきましたが、ここでは、可分債権の当然分割主義だけ触れておきます。
つまり、可分債権は、相続開始とともに、法定相続分の割合で当然に共同相続人間で分割されますので、遺産分割の対象である遺産から流出していくわけでございます。これは、他の大陸法系の相続法とは異なる日本独自の特徴でございます。それによって遺産分割の対象が狭まりますので、遺産分割の柔軟な処理が大いに妨げられます。
最も重要な預貯金債権については、二〇一六年の大法廷決定によって別扱いが認められましたので、大きな変化が生じました。しかし、可分債権一般については、やはり当然分割主義が維持されております。
第三点は、相続のインフラストラクチャーの不十分性という点でございます。
相続は、複雑な法的処理が必要な分野ですので、なかなか素人である相続の当事者だけでは問題を処理することができません。専門家の助力が要請されます。イギリス、ドイツ、フランスとも、この点についてはそれなりの体制が準備されています。しかし、日本の場合には、この点が極めて弱いと言わざるを得ません。家裁の調停制度はこの点で評価される制度ですが、相続全体の中では、ごく一部に対応できているにすぎません。
次に、今回の法案につきまして、若干の所見を申し上げます。
最初に全体的な評価でございますけれども、一つには、家族的結合の多様性への対応が必ずしも十分ではないことを指摘できると思います。
今回の改正作業の契機は、婚外子相続分差別違憲の大法廷決定にありました。この違憲決定に対して、法律婚を強化しよう、配偶者の法的地位を強化しようというのが、改正作業のそもそもの出発点にあった問題意識でした。
配偶者の法的地位の強化は、それ自体は、先ほどの相続法の現代的課題においても指摘した重要な課題でございますけれども、他方で、家族的結合の多様性への対応が置き去りにされていることは否定できないように思います。これは、単に置き去りにされているというだけではなくて、それへの対応が相対的に弱くなってしまうというような危険もあると思います。相続法外の対応も含めて、今後の検討が望まれます。
もう一点指摘したいのは、日本相続法の特殊な構造の克服へ向けての端緒的な対応も見出されるということでございます。これは確かに端緒的な対応にすぎないのでございますけれども、今後、この方向を大事にして、今回の改正が今後のさらなる改正への第一歩となることを期待しております。
次に、法案の個別的提案に対する所見でございます。時間の関係もあり、全面的に検討することはできません。何点かポイントを絞って、重要な点を申し上げるにとどめざるを得ません。
第一に、配偶者居住権を保護するための方策を見てみますと、これは、今回の改正法案のいわば目玉ともいうべき構想でございます。生存配偶者の生活保障という観点から、積極的に評価すべき提案だと思われます。
この制度の基本的考え方は、一定の場合に、生存配偶者に長期の配偶者居住権を付与するとともに、居住権を取得した配偶者はその財産的価値を相続したものと扱うというものでございます。この考え方にかかわって、なお何点かの検討事項があるように思います。
最初に、居住権の財産的価値の評価をどのようにして行うのか、これが重要な問題となります。一応、事務局から示された評価に関する考え方もあるわけでございますけれども、これにつきましては、共同相続人の納得を得られませんと、制度はうまく動かないと思われます。この点に関して、制度を動かしながら、一層の検討を期待したいと思います。
次に、この居住権には、財産的価値があるはずですのに、譲渡性が認められません。そこで、居住権の付与を受けた配偶者が転居したい場合にどうするかが問題になります。確かに、譲渡性が認められても、終身の場合にはその配偶者の死亡までに限定される居住権が、容易に譲渡できるとは思われません。しかし、建物所有者との関係で、残存価値の償還等を考える余地はあるのではないかとも思えます。この点については、さらなる検討を期待したいと思います。
さらに、レジュメには、この居住権の法的性質に関する所見も述べておきましたけれども、これは省略したいと思います。
第二に、特別の寄与の制度の新設について触れます。
この制度は、相続人以外の者の被相続人への療養看護等の提供に対して金銭的に報いる制度でございます。先に整理しました相続法の現代的課題にかかわる改正で、基本的には、積極的に評価してよろしいと考えます。ただし、多少の点を指摘する必要はあるでしょう。
まず、法案は、現行の寄与分制度と同様に、財産の維持又は増加についての特別の寄与を要求しています。しかし、この制度において重要なのは、実質的に無償で療養看護等を提供しているかどうかということでありましょう。財産の維持又は増加が、それに加えた独自の要件になっていると解するとしますと、制度の硬直的な運用につながらないかが危惧される次第です。
さらに、改正法案は、無償性を要件としています。寄与分制度については無償が明示的には規定されていませんので、少し気になるところでございます。この要件につきましても、それを厳格に形式的に解すべきではないと思われます。つまり、多少のお礼があっても、実質的に無償であることを妨げられないことを明確にすべきだと思われます。それは、不動産等の利用関係について、多少のお礼があっても使用貸借と法性決定することを妨げないのと同じでございます。
第三に、共同相続における権利承継の対抗要件に関する改正案を取り上げます。
改正案は、相続承継について対抗要件が必要である場面を拡大しようとするものでございます。現在の判例法理のもとで、相続登記の対抗要件としての機能が大きく減殺されています。とりわけ問題が大きいのは、相続させる旨の遺言による権利承継を登記なくして第三者に対抗し得るとした判例理論でございます。改正法案は、この状況を改善しようとしているわけで、支持し得るものでございます。更に指摘しますと、この改正は、相続未登記問題という現下の喫緊の課題への対応としても意味があることと思われます。
しかし、多少の検討事項もなお残されているように思います。改正法案は、相続分指定についても、この扱いを貫徹することにしています。その結果、相続人は、指定相続分による承継についてまず登記を要求され、その後、遺産分割による承継についても登記を要求される。つまり、二重の登記を要求されるということになります。これは、過重な負担になる危険もあります。この措置を導入するのであれば、登録免許税を始めとする相続登記のための金銭的負担に関する軽減措置をリンクさせる必要があると考えます。
第四に、改正法案は、遺産分割前の遺産に属する財産の処分があった場合について、遺産分割時に遺産として存在するものとみなすことができるとする規定の新設を提案しています。遺産から財産が簡単に流出するという日本相続法の特殊な構造への対応を行うもので、支持し得る提案でございます。
私といたしましては、この制度改正をそのような性格を有するものと捉えて、他の問題の検討にもつなげることが望ましいと考えています。これは、根本的には、遺留分制度とか持ち戻し制度の再定義にもつながる問題です。しかし、現実には、これらの制度に手をつけることまで行くのは難しいだろうとは考えております。
最後、第五に、法務局における遺言書の保管制度の新設について触れたいと思います。
これは、日本の相続法システムの弱点である相続インフラストラクチャーの不十分性に対する一定の対応という点で、注目すべき制度改革であると考えます。公的支援ということでは、相続未登記問題との関連で、法定相続情報証明制度が既に動いております。このような方向を更に追求することが望ましいと思われます。
しかし、相続インフラストラクチャーの不十分性への対応の中心は、相続の処理を援助する専門家をどこにどのように求めるのか、公証人や司法書士、弁護士などをどのように位置づけるかでございます。これらの問題につきましては、なお今後の検討に委ねられる部分が大きいように思われます。
以上でございます。御清聴どうもありがとうございました。拍手
平
平
神
神田裕#9
○神田(裕)委員 おはようございます。自由民主党の神田裕でございます。
本日は、質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。
ただいま参考人の皆様より、貴重な民法改正等に対する御意見をお聞かせいただきました。早速、私から質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、御承知のとおり、我が国における被相続人の高齢化が急速に進んでおります。平成元年で八十歳以上の被相続人が三八・九%、これが平成二十五年には六八・三%となりまして、そのうち九十歳以上の被相続人が二三・七%となっております。相続人も被相続人の配偶者の方々も本当に高齢化になっておるわけでございますが、このような急速な高齢化という社会的な変化の中で、今回、約四十年ぶりに相続法の抜本的改正が実施されるものと理解をいたしております。
さて、今回の改正法案におきましては、これまでになかった新たな権利や制度、すなわち、短期及び長期の配偶者居住権や預貯金の仮払い制度、自筆証書遺言の保管制度の創設など、見直しの内容は多岐にわたっておりますが、まず、この法案全体の内容につきましてどのように評価されているのでしょうか。改めまして、全参考人にお伺いいたします。
この発言だけを見る →本日は、質問の機会をいただきまして、感謝申し上げます。
ただいま参考人の皆様より、貴重な民法改正等に対する御意見をお聞かせいただきました。早速、私から質問をさせていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、御承知のとおり、我が国における被相続人の高齢化が急速に進んでおります。平成元年で八十歳以上の被相続人が三八・九%、これが平成二十五年には六八・三%となりまして、そのうち九十歳以上の被相続人が二三・七%となっております。相続人も被相続人の配偶者の方々も本当に高齢化になっておるわけでございますが、このような急速な高齢化という社会的な変化の中で、今回、約四十年ぶりに相続法の抜本的改正が実施されるものと理解をいたしております。
さて、今回の改正法案におきましては、これまでになかった新たな権利や制度、すなわち、短期及び長期の配偶者居住権や預貯金の仮払い制度、自筆証書遺言の保管制度の創設など、見直しの内容は多岐にわたっておりますが、まず、この法案全体の内容につきましてどのように評価されているのでしょうか。改めまして、全参考人にお伺いいたします。
窪
窪田充見#10
○窪田参考人 それでは、ただいま御質問を受けた点について、私の意見を申し上げさせていただきたいと思います。
冒頭の意見陳述でも申し上げたところで、かなり明確になっているかとは思いますが、基本的には、相続法全体の見直しということを、特に二つの点で積極的に評価したいというふうに考えております。
第一の点は、今、御質問の中でも触れられたところですが、特に高齢化社会といった形での社会の変化を受けとめるものであるという部分は、非常に重要な意味を持っているんだろうというふうに思います。
もう一つの側面としては、これはむしろ個人的な認識ということになるのかもしれませんが、これも意見陳述の中で申し上げたとおり、現在の判例法は、判例によって形成されたルールが非常にたくさんあるわけですが、それらのルールというのがどうも相互に整合的なものとなっておらず、非常に見通しが悪いという状況になっているように思います。
今回の改正法の中では、権利義務の承継の部分は、どちらかといえば余り目立つ部分ではないのかもしれませんが、そうした点を含めまして見直しが図られているという点は非常に意味があることだというふうに認識しております。
以上でございます。
この発言だけを見る →冒頭の意見陳述でも申し上げたところで、かなり明確になっているかとは思いますが、基本的には、相続法全体の見直しということを、特に二つの点で積極的に評価したいというふうに考えております。
第一の点は、今、御質問の中でも触れられたところですが、特に高齢化社会といった形での社会の変化を受けとめるものであるという部分は、非常に重要な意味を持っているんだろうというふうに思います。
もう一つの側面としては、これはむしろ個人的な認識ということになるのかもしれませんが、これも意見陳述の中で申し上げたとおり、現在の判例法は、判例によって形成されたルールが非常にたくさんあるわけですが、それらのルールというのがどうも相互に整合的なものとなっておらず、非常に見通しが悪いという状況になっているように思います。
今回の改正法の中では、権利義務の承継の部分は、どちらかといえば余り目立つ部分ではないのかもしれませんが、そうした点を含めまして見直しが図られているという点は非常に意味があることだというふうに認識しております。
以上でございます。
鈴
鈴木賢#11
○鈴木参考人 お答えいたします。
私の立場としては、同性カップルに法的保護を与える方策としては二つあるわけですけれども、一つは、正面から同性間の婚姻を認めてしまう。今回はそれは改正事項に入っておりませんので、今回それを実現するということは困難であるというふうに理解しております。
他方で、もう一つは、婚姻以外の多様な家族に対する遺産継承ないしは相続代替的な措置による実質的な遺産の取得を認める制度を設けるという方向でございます。それは、今回新設されようとしています特別寄与者に対する新たな制度の創設ということがございますけれども、ここにおきましても親族要件によって同性カップルは排除されているということでございますので、いずれにしても、この問題は今回の、現在のところの改正案では解決できないということになりますので、ぜひ、この審議の中でその辺のところを改善するようお願い申し上げたいというふうに思っております。
全体といたしましては、私の観点からするならば、婚姻以外の多様な家族への配慮というものがやや足りないのではないかというふうに思っております。
この発言だけを見る →私の立場としては、同性カップルに法的保護を与える方策としては二つあるわけですけれども、一つは、正面から同性間の婚姻を認めてしまう。今回はそれは改正事項に入っておりませんので、今回それを実現するということは困難であるというふうに理解しております。
他方で、もう一つは、婚姻以外の多様な家族に対する遺産継承ないしは相続代替的な措置による実質的な遺産の取得を認める制度を設けるという方向でございます。それは、今回新設されようとしています特別寄与者に対する新たな制度の創設ということがございますけれども、ここにおきましても親族要件によって同性カップルは排除されているということでございますので、いずれにしても、この問題は今回の、現在のところの改正案では解決できないということになりますので、ぜひ、この審議の中でその辺のところを改善するようお願い申し上げたいというふうに思っております。
全体といたしましては、私の観点からするならば、婚姻以外の多様な家族への配慮というものがやや足りないのではないかというふうに思っております。
吉
吉田克己#12
○吉田参考人 私の意見は、先ほど申し上げましたが、今回の改正法案は、特に家族の多様化に対する配慮という点で不十分であるというのが基本的な評価になります。ただ、提案されているさまざまな制度自体は基本的に評価できるところが多いとは思っております。
ただ、その上で、ちょっと先ほど申し上げなかった点を一点補足させていただきたいんですけれども、それは、鈴木参考人の方からも非常に強調されました、特別の寄与分について親族要件が入った点に関してでございます。
私も、これはちょっと家族の多様化への対応として問題があるとは思っていますけれども、ただ、現在の寄与分ができたときに、二つの位置づけがありまして、一方では財産法的な論理で解決する、他方ではあくまで相続の枠内で解決するという議論があったわけですが、基本的にやはり相続の枠内で解決するということで現行の寄与分制度ができた、それが制度にも非常に反映しております。
今回の特別の寄与分制度についても、その辺のいきさつを引きずって、やはり相続に引きつけられた形で制度化されているわけですね。そうなりますと、相続人以外の者の寄与を評価するのに非常に難しい枠組みになっちゃっているということで、私は、家族の多様化を踏まえた制度としては、もっと財産法的な論理を前面に出した、そういうような相続代替制度が望ましいのではないかとも思っております。
以上です。
この発言だけを見る →ただ、その上で、ちょっと先ほど申し上げなかった点を一点補足させていただきたいんですけれども、それは、鈴木参考人の方からも非常に強調されました、特別の寄与分について親族要件が入った点に関してでございます。
私も、これはちょっと家族の多様化への対応として問題があるとは思っていますけれども、ただ、現在の寄与分ができたときに、二つの位置づけがありまして、一方では財産法的な論理で解決する、他方ではあくまで相続の枠内で解決するという議論があったわけですが、基本的にやはり相続の枠内で解決するということで現行の寄与分制度ができた、それが制度にも非常に反映しております。
今回の特別の寄与分制度についても、その辺のいきさつを引きずって、やはり相続に引きつけられた形で制度化されているわけですね。そうなりますと、相続人以外の者の寄与を評価するのに非常に難しい枠組みになっちゃっているということで、私は、家族の多様化を踏まえた制度としては、もっと財産法的な論理を前面に出した、そういうような相続代替制度が望ましいのではないかとも思っております。
以上です。
神
神田裕#13
○神田(裕)委員 ありがとうございました。
ただいまの参考人よりのお話等にもございましたが、先日の当委員会における質疑におきまして、相続人以外の者が被相続人に対して介護などの貢献を行った場合に相続人に対する金銭請求を認める制度について、その請求権者の範囲を被相続人の親族に限定するという点について質問がございました。これは、被相続人の親族に限定すると、事実婚の配偶者や同性のパートナーが介護などを行っても、この制度による保護の対象にならないことを指摘するものでございますが、この点について窪田参考人はどのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。
この発言だけを見る →ただいまの参考人よりのお話等にもございましたが、先日の当委員会における質疑におきまして、相続人以外の者が被相続人に対して介護などの貢献を行った場合に相続人に対する金銭請求を認める制度について、その請求権者の範囲を被相続人の親族に限定するという点について質問がございました。これは、被相続人の親族に限定すると、事実婚の配偶者や同性のパートナーが介護などを行っても、この制度による保護の対象にならないことを指摘するものでございますが、この点について窪田参考人はどのようにお考えでしょうか、お伺いいたします。
窪
窪田充見#14
○窪田参考人 それでは、ただいま御質問を受けた点について、私の見解を述べさせていただきたいと思います。
もう既に出てきておりますとおり、今回の法案は親族という形を前提としておりますので、事実婚のパートナーであるとかいわゆる親族要件に該当しない者については、直接の適用対象にはならないということになろうかと思います。
そのことを確認した上で、二点述べさせていただきたいんですが、まず第一点として、一つは、この制度の対象にならないとしても、パートナー間での遺言等によって相手方の保護を図るということはもちろん可能ですし、恐らく、今、参考人の吉田教授から出た御意見にも触れられた点なんですが、財産法上での保護を図るという仕組みはあり得るんだろうと思います。
法制審議会の議論の中では、事実婚をめぐってそれを保護するかどうかという論点もございましたが、それ以上に非常に明確に対立していたのが、制限せずに、清算ということを貫いてこういう制度を適用するという考え方と、こういうのを相続の枠組みに持ち込むべきではない、むしろ財産法によって明確に規律するべきであるという基本的な考え方であったということではないかと思います。
その意味では、相続という枠組みの中で紛争が複雑化、長期化することを避けるという意味もあって人的範囲は限定されたということだろうと思いますが、そうはいいつつ、財産法上の解決というのは十分に残されているものだというふうに認識しております。
それから、第二点として、少し長くなって恐縮なんですが、事実婚をめぐる問題が非常に重要だということは私自身も強く認識しております。ただ、事実婚のパートナーもこの請求権者に含まれるとした場合、適用対象となる事実婚の範囲をどこまでにするのかといった問題が多分非常に難しい問題として出てくるんだろうと思います。いわゆる事実婚と呼ばれるものについても、法律婚ではないという意味では共通するものの、その中に非常にタイプの異なるものが含まれているのではないかと思います。
恐らく、これらの問題というのは基本的には親族法をめぐる問題なのではないかと思いますが、そこの部分を必ずしも十分に検討しないまま、相続法における問題という形で財産の帰属に関する問題として解決するということは、論理的に不可能だというふうに申し上げるつもりはないですが、やはり非常に困難なのではないかというふうに考えております。
わかりにくいお答えだったかと思いますが、以上でございます。
この発言だけを見る →もう既に出てきておりますとおり、今回の法案は親族という形を前提としておりますので、事実婚のパートナーであるとかいわゆる親族要件に該当しない者については、直接の適用対象にはならないということになろうかと思います。
そのことを確認した上で、二点述べさせていただきたいんですが、まず第一点として、一つは、この制度の対象にならないとしても、パートナー間での遺言等によって相手方の保護を図るということはもちろん可能ですし、恐らく、今、参考人の吉田教授から出た御意見にも触れられた点なんですが、財産法上での保護を図るという仕組みはあり得るんだろうと思います。
法制審議会の議論の中では、事実婚をめぐってそれを保護するかどうかという論点もございましたが、それ以上に非常に明確に対立していたのが、制限せずに、清算ということを貫いてこういう制度を適用するという考え方と、こういうのを相続の枠組みに持ち込むべきではない、むしろ財産法によって明確に規律するべきであるという基本的な考え方であったということではないかと思います。
その意味では、相続という枠組みの中で紛争が複雑化、長期化することを避けるという意味もあって人的範囲は限定されたということだろうと思いますが、そうはいいつつ、財産法上の解決というのは十分に残されているものだというふうに認識しております。
それから、第二点として、少し長くなって恐縮なんですが、事実婚をめぐる問題が非常に重要だということは私自身も強く認識しております。ただ、事実婚のパートナーもこの請求権者に含まれるとした場合、適用対象となる事実婚の範囲をどこまでにするのかといった問題が多分非常に難しい問題として出てくるんだろうと思います。いわゆる事実婚と呼ばれるものについても、法律婚ではないという意味では共通するものの、その中に非常にタイプの異なるものが含まれているのではないかと思います。
恐らく、これらの問題というのは基本的には親族法をめぐる問題なのではないかと思いますが、そこの部分を必ずしも十分に検討しないまま、相続法における問題という形で財産の帰属に関する問題として解決するということは、論理的に不可能だというふうに申し上げるつもりはないですが、やはり非常に困難なのではないかというふうに考えております。
わかりにくいお答えだったかと思いますが、以上でございます。
神
神田裕#15
○神田(裕)委員 ありがとうございました。
前回の当委員会における質疑におきまして、法制審議会における審議の手続につきまして、多数の委員の意見ではなく、特定の委員の意見によって結論が決められてしまったのではないかとの議論がございました。
窪田参考人は、法制審議会民法(相続関係)部会の委員として議論に加わっておられたわけですが、この指摘についてはどのようにお考えでしょうか。窪田参考人にお伺いいたします。
この発言だけを見る →前回の当委員会における質疑におきまして、法制審議会における審議の手続につきまして、多数の委員の意見ではなく、特定の委員の意見によって結論が決められてしまったのではないかとの議論がございました。
窪田参考人は、法制審議会民法(相続関係)部会の委員として議論に加わっておられたわけですが、この指摘についてはどのようにお考えでしょうか。窪田参考人にお伺いいたします。
窪
窪田充見#16
○窪田参考人 御質問にお答えさせていただきます。
私自身は、そのような認識は持っておりません。議事録をごらんになっていただければわかると思うんですが、非常に自由な形で議論がされていたのではないかと思います。実際に、研究者、実務家、それぞれの委員の間でもかなり激しく意見が対立することがありましたが、それらは法律上の議論として非常に誠実になされたのではないかというふうに理解しております。
以上です。
この発言だけを見る →私自身は、そのような認識は持っておりません。議事録をごらんになっていただければわかると思うんですが、非常に自由な形で議論がされていたのではないかと思います。実際に、研究者、実務家、それぞれの委員の間でもかなり激しく意見が対立することがありましたが、それらは法律上の議論として非常に誠実になされたのではないかというふうに理解しております。
以上です。
神
神田裕#17
○神田(裕)委員 ありがとうございました。
御案内のとおり、本法律案では、社会の高齢化に対応するために、民法に、これまでにない新しい権利として配偶者居住権を創設し、遺産分割又は遺贈によりこれを取得することができる制度が設けられるわけでございますが、ここで、この制度の創設の意義について、窪田参考人に改めてお伺いいたします。
この発言だけを見る →御案内のとおり、本法律案では、社会の高齢化に対応するために、民法に、これまでにない新しい権利として配偶者居住権を創設し、遺産分割又は遺贈によりこれを取得することができる制度が設けられるわけでございますが、ここで、この制度の創設の意義について、窪田参考人に改めてお伺いいたします。
窪
窪田充見#18
○窪田参考人 先ほどの意見陳述の中でも申し上げさせていただきましたが、残された配偶者について終身の建物の利用を認めるということについては、従来からも強いニーズがあったのではないかと考えております。
特に、比較的高齢の配偶者の場合、所有権の帰属という形で建物を取得させますと、結局、それによって取得する財産が非常に高額になるため、ほかの財産を一切承継することができないということになります。それに対して、終身ということですから、一定の期待値で計算するしかないわけですが、それを前提とした利用を認めるという形であれば、そこの部分の金額というのはもう少し抑えることができる。そうすれば、その他の財産、例えば金銭であるとか預金であるというのも取得して、そして最終的には、よりきちんとした生活の保護が図られるのではないかということがあるんだろうと思います。
先ほど申し上げたとおり、従来からも後継ぎ遺贈であるとか負担つき遺贈であるという解決が提案され、それについて議論がされてきたというのは、こうしたニーズがずっとあったということを示しているんだろうと思います。
その意味では、そうしたニーズに端的に対応するものというふうな評価をすることができると思いますし、そうしたものとして意義があるというふうに言っていいのではないかと思います。
以上でございます。
この発言だけを見る →特に、比較的高齢の配偶者の場合、所有権の帰属という形で建物を取得させますと、結局、それによって取得する財産が非常に高額になるため、ほかの財産を一切承継することができないということになります。それに対して、終身ということですから、一定の期待値で計算するしかないわけですが、それを前提とした利用を認めるという形であれば、そこの部分の金額というのはもう少し抑えることができる。そうすれば、その他の財産、例えば金銭であるとか預金であるというのも取得して、そして最終的には、よりきちんとした生活の保護が図られるのではないかということがあるんだろうと思います。
先ほど申し上げたとおり、従来からも後継ぎ遺贈であるとか負担つき遺贈であるという解決が提案され、それについて議論がされてきたというのは、こうしたニーズがずっとあったということを示しているんだろうと思います。
その意味では、そうしたニーズに端的に対応するものというふうな評価をすることができると思いますし、そうしたものとして意義があるというふうに言っていいのではないかと思います。
以上でございます。
神
神田裕#19
○神田(裕)委員 貴重な御見解をいただき、ありがとうございました。
近年、遺産分割をめぐる家裁の調停や審判手続が増加傾向にございまして、相続紛争の増加が本当に大変懸念をされております。今後、我が国の人口減少は、二〇三〇年代には毎年八十万人台に達し、二〇四〇年代には九十万人台に達すると推計されておりまして、それに伴いまして相続の件数も確実に増加するものと思っております。
本法案が成立、施行後は、親族間のトラブルが減少して、そして長期化しないようになって、平成最後の相続法大改正があってよかった、そういうふうに言われるのではないかと期待をいたしております。
時間でございますので、質問を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。
この発言だけを見る →近年、遺産分割をめぐる家裁の調停や審判手続が増加傾向にございまして、相続紛争の増加が本当に大変懸念をされております。今後、我が国の人口減少は、二〇三〇年代には毎年八十万人台に達し、二〇四〇年代には九十万人台に達すると推計されておりまして、それに伴いまして相続の件数も確実に増加するものと思っております。
本法案が成立、施行後は、親族間のトラブルが減少して、そして長期化しないようになって、平成最後の相続法大改正があってよかった、そういうふうに言われるのではないかと期待をいたしております。
時間でございますので、質問を終わらせていただきます。本日はありがとうございました。
平
國
國重徹#21
○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹でございます。
本日は、三名の参考人に当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。
まず、窪田参考人にお伺いいたします。
私は窪田先生の論文を読ませていただきました。
その中に、相続という制度について、その不条理な性格、それが言い過ぎだとすれば、合理的に説明することが困難な性格があるんだというような記述がございます。
その上で、このような記述もございました。
実際の相続法は、単純な一つの根拠によって基礎づけられているわけではなく、多くの原理が複合したものである。したがって、相続制度を単一の原理で説明しようとすることは不可能だし、また期待されていないだろう。しかし、複数の異なる機能を実現する制度であるということは、その制度の複合的な性格の分析を拒むことを意味するわけではない。もっとも、法制審議会における議論等においても、複数の目的、機能として何があるのか、それらは相互にどのような関係に立つのかといった視点とは別の次元で、すなわち、被相続人の意思か、清算か、扶養かといった複数の要請の対立とは別に、そもそもそうした分析を受け入れるのかという基本的な姿勢での対立図式があったように思われるというようなことを述べられております。
私も、相続、法定相続分、配偶者が二分の一で、子供も総体で二分の一だとか、相続人の範囲はこの範囲なんだというようなものを何か所与のものとして考えていましたけれども、確かに、先生の論文を読ませていただいて、なるほど相続の根拠というのもなかなか難しいものがあるなというものを感じさせていただきました。
その上で、今回の法制審において要綱を取りまとめるに当たって最も苦労した点、これはどのような点だったのか、ちょっと雑駁な質問になりますけれども、ぜひお伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →本日は、三名の参考人に当委員会までお越しいただきまして、貴重な御意見を賜りましたこと、まずもって心より感謝と御礼を申し上げます。
まず、窪田参考人にお伺いいたします。
私は窪田先生の論文を読ませていただきました。
その中に、相続という制度について、その不条理な性格、それが言い過ぎだとすれば、合理的に説明することが困難な性格があるんだというような記述がございます。
その上で、このような記述もございました。
実際の相続法は、単純な一つの根拠によって基礎づけられているわけではなく、多くの原理が複合したものである。したがって、相続制度を単一の原理で説明しようとすることは不可能だし、また期待されていないだろう。しかし、複数の異なる機能を実現する制度であるということは、その制度の複合的な性格の分析を拒むことを意味するわけではない。もっとも、法制審議会における議論等においても、複数の目的、機能として何があるのか、それらは相互にどのような関係に立つのかといった視点とは別の次元で、すなわち、被相続人の意思か、清算か、扶養かといった複数の要請の対立とは別に、そもそもそうした分析を受け入れるのかという基本的な姿勢での対立図式があったように思われるというようなことを述べられております。
私も、相続、法定相続分、配偶者が二分の一で、子供も総体で二分の一だとか、相続人の範囲はこの範囲なんだというようなものを何か所与のものとして考えていましたけれども、確かに、先生の論文を読ませていただいて、なるほど相続の根拠というのもなかなか難しいものがあるなというものを感じさせていただきました。
その上で、今回の法制審において要綱を取りまとめるに当たって最も苦労した点、これはどのような点だったのか、ちょっと雑駁な質問になりますけれども、ぜひお伺いしたいと思います。
窪
窪田充見#22
○窪田参考人 要綱を取りまとめる担当者ではございませんでしたので、あくまで私の立場からということで述べさせていただきたいと思いますが。
委員から今御指摘のありました点というのは、相続について基本的な性格をどう考えるのかというレベルで、恐らく契約法とか不法行為法についていろんな考え方があるというのとはかなり違うレベルで議論が対立している、あるいはそもそもはっきりしていないということがあるのではないかと思います。
私自身はもう、言及してくださった論文の中にありますとおり、かなり複雑な性格であるけれども、その複雑な性格というのをある程度までは分析して、そして制度をつくっていくことができるのではないか、先ほどちょっと触れましたが、清算といった側面をもう少し表に出して考えていくことができるのではないかというふうに思っておりましたし、そういうものの具体例としては、最終的には見送られましたが、相続分をめぐる問題、それから寄与分をめぐる問題、そして今回残った特別寄与の問題というのがあったというふうに思っております。
ただ、恐らくそうではなくて、そういうふうな分析の観点とは別に、やはり紛争を長期化、複雑化させるということを避けるべきだという御意見も大変に強かったと思いますし、それは幾つかの分析とは全く性格の違うものだということは私も思うんですが、ただ、じゃ、全く理解できないかというと、よくわかるような気もいたします。
つまり、人生にとって、一生に一度あるかないかではなくて、誰でも必ず被相続人にはなるわけですから、必ず誰にとっても身近なものである相続というのが非常に複雑な制度になっているというのは、それ自体避けるべきだろうということがありますし、ひょっとすると、相続というのは、余り細かい分析をせずに、割り切りをすることによって初めてその仕組みとして機能しているといったような見方もあるのかなというふうに思います。その見方に賛成だというわけではないんですけれども、理解はできるということになります。
そうしますと、全体としてこういった制度をどうやってつくっていくのか、何と何が対立しているのかという話が大変にわかりにくい形で議論がなされていくということになりますし、法制審議会の議論の中でも、AとBが対立しているというような単純な構造ではなくて、AとBの、それとは別のところで甲と乙が対立しているというような、そういった議論構造になっていたのが、最終的な法案にまでまとまるまでの間の、特に担当の方が苦労された点ではないかと思います。
ただ、それを踏まえましても、最終的にでき上がったものというのは、それなりに参加していたメンバーの相互の理解が得られるようなものになっていたというふうに認識しております。
御質問をいただいた点について適切にお答えできているかどうかわからないんですが、御容赦いただければと思います。
この発言だけを見る →委員から今御指摘のありました点というのは、相続について基本的な性格をどう考えるのかというレベルで、恐らく契約法とか不法行為法についていろんな考え方があるというのとはかなり違うレベルで議論が対立している、あるいはそもそもはっきりしていないということがあるのではないかと思います。
私自身はもう、言及してくださった論文の中にありますとおり、かなり複雑な性格であるけれども、その複雑な性格というのをある程度までは分析して、そして制度をつくっていくことができるのではないか、先ほどちょっと触れましたが、清算といった側面をもう少し表に出して考えていくことができるのではないかというふうに思っておりましたし、そういうものの具体例としては、最終的には見送られましたが、相続分をめぐる問題、それから寄与分をめぐる問題、そして今回残った特別寄与の問題というのがあったというふうに思っております。
ただ、恐らくそうではなくて、そういうふうな分析の観点とは別に、やはり紛争を長期化、複雑化させるということを避けるべきだという御意見も大変に強かったと思いますし、それは幾つかの分析とは全く性格の違うものだということは私も思うんですが、ただ、じゃ、全く理解できないかというと、よくわかるような気もいたします。
つまり、人生にとって、一生に一度あるかないかではなくて、誰でも必ず被相続人にはなるわけですから、必ず誰にとっても身近なものである相続というのが非常に複雑な制度になっているというのは、それ自体避けるべきだろうということがありますし、ひょっとすると、相続というのは、余り細かい分析をせずに、割り切りをすることによって初めてその仕組みとして機能しているといったような見方もあるのかなというふうに思います。その見方に賛成だというわけではないんですけれども、理解はできるということになります。
そうしますと、全体としてこういった制度をどうやってつくっていくのか、何と何が対立しているのかという話が大変にわかりにくい形で議論がなされていくということになりますし、法制審議会の議論の中でも、AとBが対立しているというような単純な構造ではなくて、AとBの、それとは別のところで甲と乙が対立しているというような、そういった議論構造になっていたのが、最終的な法案にまでまとまるまでの間の、特に担当の方が苦労された点ではないかと思います。
ただ、それを踏まえましても、最終的にでき上がったものというのは、それなりに参加していたメンバーの相互の理解が得られるようなものになっていたというふうに認識しております。
御質問をいただいた点について適切にお答えできているかどうかわからないんですが、御容赦いただければと思います。
國
國重徹#23
○國重委員 ありがとうございました。
続きまして、吉田参考人にお伺いいたします。
吉田先生の先ほど配付いただいた論文も読ませていただきました。その中にこのような記述がございました。「法律婚の価値だけでなく他の家族的結合の価値も同様に重視して、相続法が多元的な価値の調整の上に成り立つ法制度になるよう努めることである。」というような記述がございました。
確かに、家族のあり方も多様化していっておりまして、こういうものは私も認めていくべきだと思っております。
先ほど同性婚のお話もされました。私の地元の大阪事務所がある行政区というのは大阪市淀川区といいまして、LGBT支援宣言を全国で一番最初に出したところが私の地元でございます。そういうことで、当事者の方からも数多くお話も聞いてまいりました。
私は、選択的夫婦別氏制度とかも将来的には我が国へ導入せざるを得ないんじゃないかと思っていますし、また、同性婚ないしそれに準じるような制度についても、やはり将来こういったものも視野に入ってくるというように思っております。
ただ、どういうふうな順序を追ってやっていくのか、やはりLGBTの方々への理解を促進していくような、いろいろ漸進的なやり方を考えていかないといけないんじゃないかと個人的には思っておりますけれども、そういう方向も大事だと思っております。
また、内縁の一方の配偶者が亡くなった場合に、支え合って生きてきた一方の配偶者に対して何らかの配慮というのもあっていいんじゃないかというふうにも思います。ただそれが、生前贈与なのか、遺言制度なのか、それともこの相続法の中に何か入れてくるのかということについてはまたいろいろと、私も個人的に研さんをまた積んでいかないといけないなと思っているところであります。
他方で、民法には法律婚というのが決められていまして、法律婚があるからには、やはり一定のインセンティブというのがそこになければいけないというか、法律婚だからこそ何か保護されるというものもあってしかるべきなのではないかというふうにも思うところでありまして、吉田先生がここでおっしゃられている、「同様に重視して、相続法が多元的な価値の調整の上に成り立つ法制度になるよう努めることである。」これは将来的にどのようなものを視野に入れて考えられているのか、お伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →続きまして、吉田参考人にお伺いいたします。
吉田先生の先ほど配付いただいた論文も読ませていただきました。その中にこのような記述がございました。「法律婚の価値だけでなく他の家族的結合の価値も同様に重視して、相続法が多元的な価値の調整の上に成り立つ法制度になるよう努めることである。」というような記述がございました。
確かに、家族のあり方も多様化していっておりまして、こういうものは私も認めていくべきだと思っております。
先ほど同性婚のお話もされました。私の地元の大阪事務所がある行政区というのは大阪市淀川区といいまして、LGBT支援宣言を全国で一番最初に出したところが私の地元でございます。そういうことで、当事者の方からも数多くお話も聞いてまいりました。
私は、選択的夫婦別氏制度とかも将来的には我が国へ導入せざるを得ないんじゃないかと思っていますし、また、同性婚ないしそれに準じるような制度についても、やはり将来こういったものも視野に入ってくるというように思っております。
ただ、どういうふうな順序を追ってやっていくのか、やはりLGBTの方々への理解を促進していくような、いろいろ漸進的なやり方を考えていかないといけないんじゃないかと個人的には思っておりますけれども、そういう方向も大事だと思っております。
また、内縁の一方の配偶者が亡くなった場合に、支え合って生きてきた一方の配偶者に対して何らかの配慮というのもあっていいんじゃないかというふうにも思います。ただそれが、生前贈与なのか、遺言制度なのか、それともこの相続法の中に何か入れてくるのかということについてはまたいろいろと、私も個人的に研さんをまた積んでいかないといけないなと思っているところであります。
他方で、民法には法律婚というのが決められていまして、法律婚があるからには、やはり一定のインセンティブというのがそこになければいけないというか、法律婚だからこそ何か保護されるというものもあってしかるべきなのではないかというふうにも思うところでありまして、吉田先生がここでおっしゃられている、「同様に重視して、相続法が多元的な価値の調整の上に成り立つ法制度になるよう努めることである。」これは将来的にどのようなものを視野に入れて考えられているのか、お伺いしたいと思います。
吉
吉田克己#24
○吉田参考人 御質問どうもありがとうございました。
私は、家族的結合の多様化を踏まえて、それぞれの結合について個人の尊厳を大事にしながら法的にも一定の保護を与えていく、これがやはりあるべき姿と思っていますけれども、他方で、保護のあり方もまた多様であり得ると思うんですね。
例えば法律婚、これが一つの核心的な制度になっていますけれども、法律婚という制度がある以上、それを選んだ人に対して法律婚に与えられる保護を与える、選ばなかった場合、それは別である、これは制度がある以上は当然だと思います。ただし、法律婚に余り特権的な地位を与えることはほかの家族的結合に対する配慮という点でどうなんだろうか、こういうことを思いますので、だから法律婚と同じ保護を等し並みに与えるということにはならないと思いますけれども、やはりそれぞれの特性に見合った法的保護を与えていく、これがあるべき姿だろうと思っております。
その際、相続法がどういう意味を持つかということですけれども、これも今申し上げたこととリンクしまして、つまり、全ての家族的結合の場合に相続権を与える、そういうことにはならないと思うんですよね。ただ、その際に、相続権でない場合も、相続代替制度という言葉が時々使われますけれども、それ以外のいろいろな法的制度を使った保護、適切な保護というのはどういうものがあり得るのか、これを詰めていく、また、もちろん場合によっては相続法の制度を使いながら保護を与えていく、こういうことをきめ細かに検討していくことが将来のあるべき姿ではないかと思っている次第でございます。
以上です。
この発言だけを見る →私は、家族的結合の多様化を踏まえて、それぞれの結合について個人の尊厳を大事にしながら法的にも一定の保護を与えていく、これがやはりあるべき姿と思っていますけれども、他方で、保護のあり方もまた多様であり得ると思うんですね。
例えば法律婚、これが一つの核心的な制度になっていますけれども、法律婚という制度がある以上、それを選んだ人に対して法律婚に与えられる保護を与える、選ばなかった場合、それは別である、これは制度がある以上は当然だと思います。ただし、法律婚に余り特権的な地位を与えることはほかの家族的結合に対する配慮という点でどうなんだろうか、こういうことを思いますので、だから法律婚と同じ保護を等し並みに与えるということにはならないと思いますけれども、やはりそれぞれの特性に見合った法的保護を与えていく、これがあるべき姿だろうと思っております。
その際、相続法がどういう意味を持つかということですけれども、これも今申し上げたこととリンクしまして、つまり、全ての家族的結合の場合に相続権を与える、そういうことにはならないと思うんですよね。ただ、その際に、相続権でない場合も、相続代替制度という言葉が時々使われますけれども、それ以外のいろいろな法的制度を使った保護、適切な保護というのはどういうものがあり得るのか、これを詰めていく、また、もちろん場合によっては相続法の制度を使いながら保護を与えていく、こういうことをきめ細かに検討していくことが将来のあるべき姿ではないかと思っている次第でございます。
以上です。
國
國重徹#25
○國重委員 ありがとうございました。
続きまして、鈴木参考人にお伺いいたします。
鈴木参考人にも同じように、今の社会の中で、家族の多様なあり方がある中で、どのような方向性に今後相続法制を持っていくことが適切だと思われるのか。
それと、この大きな視点と、先ほど、特別の寄与の範囲、寄与者の範囲について、被相続人の親族に限定するのではなくて、より広く考えていくべきだというようなお話がございました。中国にもそのような法制があるんだということでした。
ただ、一方で、複雑化、長期化しないのかなという懸念も生じて、これもある意味当然だとも思います。中国ではなぜそういうようなことが複雑化、長期化しないのか。例えば私もちょっと面倒を見たよというようなことをいろいろな人が言い出したら、いつまでたっても紛争が、相続が決着しないということにもなりかねません。
この辺のことについて、複雑化、長期化しないためにどのような方策が必要だとお考えなのか、このあたりについてもお伺いしたいと思います。
この発言だけを見る →続きまして、鈴木参考人にお伺いいたします。
鈴木参考人にも同じように、今の社会の中で、家族の多様なあり方がある中で、どのような方向性に今後相続法制を持っていくことが適切だと思われるのか。
それと、この大きな視点と、先ほど、特別の寄与の範囲、寄与者の範囲について、被相続人の親族に限定するのではなくて、より広く考えていくべきだというようなお話がございました。中国にもそのような法制があるんだということでした。
ただ、一方で、複雑化、長期化しないのかなという懸念も生じて、これもある意味当然だとも思います。中国ではなぜそういうようなことが複雑化、長期化しないのか。例えば私もちょっと面倒を見たよというようなことをいろいろな人が言い出したら、いつまでたっても紛争が、相続が決着しないということにもなりかねません。
この辺のことについて、複雑化、長期化しないためにどのような方策が必要だとお考えなのか、このあたりについてもお伺いしたいと思います。
鈴
鈴木賢#26
○鈴木参考人 お答え申し上げます。
私としては、先ほども申し上げたとおりですけれども、過度に法律婚を特権化しない方がよい、多様な家族を営む人に対してニュートラルな制度設計をすべきであるというふうに思っております。そういう意味では、今回の改正草案はややその点の配慮が足りないのではないかというふうに思います。
法律婚をどう考えるかというのは非常に難しいですけれども、いずれにしろ、何を選ぶかについて、何かを選んだからといって不利益になるような制度設計にはすべきではないというふうに思っておりまして、いかなる人生を歩むかを個々の国民が選択する、どれを選択しても損にならないような仕組みを整えるのが法的な立場としては望ましいのではないかというふうに思っています。
それから、特別寄与につきましては、先ほども申し上げたとおり、親族要件を外すべきである、そうしないと、今の段階では同性カップルは全く排除されてしまいますので、そのように思っております。
財産法的処理についての御指摘もございましたけれども、同性カップルがそういうものを実際に使えるか、例えば契約を結んだりあるいは遺言を残すということができるのかということは、私は実際としては非常に難しいというふうに思っています。ですから、それで解決しろというのは無理を強いることではないのか。
いずれにしても、被相続人の相続人との間で争いが起きることになります。そのときに同性パートナーが闘わなきゃいけないんですね。その武器を与えていただきたいと私は思います。いずれにしても、弱い立場にあって、表立って主張することがすごくはばかられるような、そういう状況にある同性パートナーが、ちゃんとした法的な権利を主張できるような手だてを与えていただきたいというふうに思います。
将来的には、当然、同性婚を認めるという方向に行くんだろうと思いますけれども、理解が先か法が先かという議論はよくありますけれども、先日、フランスの方々とシンポジウムをしました。フランスでは、やはり法律が先行しているんですね。今でも反対論は渦巻いています。しかし、法律ができることによって、とにかく語ることができるようになる。アジェンダが設定される。これは非常に重要でして、そのことが理解を促進していくわけで、理解があるから法律ができるのではない、私は順番が逆だろうというふうに思っております。
この発言だけを見る →私としては、先ほども申し上げたとおりですけれども、過度に法律婚を特権化しない方がよい、多様な家族を営む人に対してニュートラルな制度設計をすべきであるというふうに思っております。そういう意味では、今回の改正草案はややその点の配慮が足りないのではないかというふうに思います。
法律婚をどう考えるかというのは非常に難しいですけれども、いずれにしろ、何を選ぶかについて、何かを選んだからといって不利益になるような制度設計にはすべきではないというふうに思っておりまして、いかなる人生を歩むかを個々の国民が選択する、どれを選択しても損にならないような仕組みを整えるのが法的な立場としては望ましいのではないかというふうに思っています。
それから、特別寄与につきましては、先ほども申し上げたとおり、親族要件を外すべきである、そうしないと、今の段階では同性カップルは全く排除されてしまいますので、そのように思っております。
財産法的処理についての御指摘もございましたけれども、同性カップルがそういうものを実際に使えるか、例えば契約を結んだりあるいは遺言を残すということができるのかということは、私は実際としては非常に難しいというふうに思っています。ですから、それで解決しろというのは無理を強いることではないのか。
いずれにしても、被相続人の相続人との間で争いが起きることになります。そのときに同性パートナーが闘わなきゃいけないんですね。その武器を与えていただきたいと私は思います。いずれにしても、弱い立場にあって、表立って主張することがすごくはばかられるような、そういう状況にある同性パートナーが、ちゃんとした法的な権利を主張できるような手だてを与えていただきたいというふうに思います。
将来的には、当然、同性婚を認めるという方向に行くんだろうと思いますけれども、理解が先か法が先かという議論はよくありますけれども、先日、フランスの方々とシンポジウムをしました。フランスでは、やはり法律が先行しているんですね。今でも反対論は渦巻いています。しかし、法律ができることによって、とにかく語ることができるようになる。アジェンダが設定される。これは非常に重要でして、そのことが理解を促進していくわけで、理解があるから法律ができるのではない、私は順番が逆だろうというふうに思っております。
國
國重徹#27
○國重委員 ありがとうございました。しっかりと今の御意見も踏まえて、私も検討してまいりたいと思います。
ちょっともう時間がなくなったので、最後、私が話して終わりにしますけれども。
私は、そういった同性パートナーの方たちも、いろいろと今後配慮できるような世の中にしていかないといけないと思っております。また、これは同性パートナーとか法律婚の配偶者とか親族とか関係なく、やはり相続というのは、私も弁護士出身ですけれども、争う族の争族になりかねない。遺言を残した場合には比較的そういうことにはならない、スムーズに処理していける場合が多いかと思っております。もちろん、それぞれの事情に応じてですけれども、この遺言制度をより活用できるような世の中にしていくことが必要なんじゃないかな、残された人への愛情とか思いやりというのもそういう中に一端があらわれるのではないかなというふうに思います。
もちろん、しかるべき年齢にならないとなかなかつくらないとかいうようなことはあるかもしれませんけれども、引き続き、遺言制度についても研究しながら、また、きょう三名の参考人からいただきました貴重な御意見をもとに、更に研さんを深めてまいりたいと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
この発言だけを見る →ちょっともう時間がなくなったので、最後、私が話して終わりにしますけれども。
私は、そういった同性パートナーの方たちも、いろいろと今後配慮できるような世の中にしていかないといけないと思っております。また、これは同性パートナーとか法律婚の配偶者とか親族とか関係なく、やはり相続というのは、私も弁護士出身ですけれども、争う族の争族になりかねない。遺言を残した場合には比較的そういうことにはならない、スムーズに処理していける場合が多いかと思っております。もちろん、それぞれの事情に応じてですけれども、この遺言制度をより活用できるような世の中にしていくことが必要なんじゃないかな、残された人への愛情とか思いやりというのもそういう中に一端があらわれるのではないかなというふうに思います。
もちろん、しかるべき年齢にならないとなかなかつくらないとかいうようなことはあるかもしれませんけれども、引き続き、遺言制度についても研究しながら、また、きょう三名の参考人からいただきました貴重な御意見をもとに、更に研さんを深めてまいりたいと思います。
以上で質問を終わります。ありがとうございました。
平
山
山尾志桜里#29
○山尾委員 立憲民主党の山尾志桜里です。
参考人お三方、本当にありがとうございました。
まず、窪田参考人にお伺いをしたいと思います。
窪田参考人は、途中からこの相続部会の部会長代理になられて、ある意味取りまとめる立場にあった、あるいはなったという面があるんだと思うんですけれども、その部会長代理という立場を離れて、一専門家、民法の専門家として、この今問題となっている特別寄与制度における親族要件、これがあるものとないもの、どちらがよりよい、望ましいというふうにお考えですか。
この発言だけを見る →参考人お三方、本当にありがとうございました。
まず、窪田参考人にお伺いをしたいと思います。
窪田参考人は、途中からこの相続部会の部会長代理になられて、ある意味取りまとめる立場にあった、あるいはなったという面があるんだと思うんですけれども、その部会長代理という立場を離れて、一専門家、民法の専門家として、この今問題となっている特別寄与制度における親族要件、これがあるものとないもの、どちらがよりよい、望ましいというふうにお考えですか。