運輸委員会

1957-05-14 衆議院 全45発言

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会議録情報#0
昭和三十二年五月十四日(火曜日)
    午前十一時三分開議
 出席委員
   委員長 淵上房太郎君
   理事 今松 治郎君 理事 木村 俊夫君
   理事 畠山 鶴吉君 理事 松山 義雄君
   理事 山本 友一君 理事 井岡 大治君
   理事 松尾トシ子君
      有田 喜一君    生田 宏一君
      永山 忠則君    中嶋 太郎君
      濱野 清吾君    堀内 一雄君
      眞鍋 儀十君  早稻田柳右エ門君
      小山  亮君    中居英太郎君
      山口丈太郎君
 出席政府委員
        運輸政務次官  福永 一臣君
        運輸事務官
        (船員局長)  森  巖夫君
 委員外の出席者
        議     員 五島 虎雄君
        専  門  員 志鎌 一之君
    —————————————
五月十三日
 委員井岡大治君及び山口シヅエ君辞任につき、
 その補欠として中村時雄君及び岡良一君が議長
 の指名で委員に選任された。
同月十四日
 委員中村時雄君及び岡良一君辞任につき、その
 補欠として井岡大治君及び下平正一君が議長の
 指名で委員に選任された。
同 日
 井岡大治君が理事に補欠当選した。
    —————————————
五月十三日
 船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九六号)(参議院送付)
同月十四日
 港湾運送事業法の一部を改正する法律案(山口
 丈太郎君外十四名提出、衆法第三八号)
の審査を本委員会に付託された。
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本日の会議に付した案件
 理事の互選
 船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出
 第九六号)(参議院送付)
 港湾運送事業法の一部を改正する法律案(山口
 丈太郎君外十四名提出、衆法第三八号)
    —————————————
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淵上房太郎#1
○淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開会いたします。
 この際お諮りいたします。理事でありました井岡大治君が昨日委員を辞任されましたので、理事が一名欠員となっております。この際その理事の補欠選任をいたさなければなりませんが、その選任の方法につきましては委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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淵上房太郎#2
○淵上委員長 御異議ないようでございまするから、さようにいたします。それでは井岡大治君を理事に指名いたします。
    —————————————
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淵上房太郎#3
○淵上委員長 船舶職員法の一部を改正する法律案(内閣提出第九六号)(参議院送付)を議題といたします。本案に関しましては、去る三月八日予備審査のため本委員会に付託され、同十一日提案理由の説明を聴取いたしましたが、昨日参議院より送付されて参った次第であります。これより質疑に入ります。小山亮君。
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小山亮#4
○小山(亮)委員 職員法の改正条文の第十四条の二について質問をしたいと思います。第十四条の二は、「運輸大臣は、関係職員のうちから海技試験官を任命し、運輸省令で定めるところにより、試験に関する事務を行わせるものとする。」こういう条文でありますが、これには試験官の資格が、関係職員のうちからということだけになっておる。そうしますと、海技試験官でありますから、試験官の資格ということはどういう程度のものになるのか、関係職員だけとはどの範囲であるか、これを一つ御説明願いたい。
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森巖夫#5
○森(巖)政府委員 実際にやっておりますことは、関係職員のうち、特に船舶運航に関係ある職員から任命いたしております。運輸省にはこれに似たような職員といたしまして、海難審判所その他に同様なものがございますが、一定の年限海上で勤務いたしておりますとか、あるいは一定の免状を持っておるとかいうような基準を設けまして、海技試験官の資格といたしております。新しく法律を改正いたされましても、やはり同様な方針でやっていくつもりでございます。
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小山亮#6
○小山(亮)委員 そうしますと海技試験官を任命するに際して、これをおきめになる基準というものはおありなのですか。それは法文化されておるものですか。
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森巖夫#7
○森(巖)政府委員 それは法文化いたしておりません。いたしておりませんけれども、基準といたしまして、たとえば甲種船長であるとか、甲種機関長であるとか、そういう免状を持っておる者の中から任命いたしておるのが事実上のやり方でございます。
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小山亮#8
○小山(亮)委員 そうしますと、場合によればそれと全然関係のない者から選ぶこともできるわけですか。
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森巖夫#9
○森(巖)政府委員 法文からいえばそういうことになるかと思いますけれども、その辺は、実際試験のできないような試験官を任命することは望まれていないわけでございますから、今後も同じような制限でやっていくつもりでございます。
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小山亮#10
○小山(亮)委員 そうしますと、全然関係のない者からは任命をすることは絶対ないのですか、またあった場合には弊害があるのですか、あるいはそういう場合があってもいいとお考えですか、そこをはっきりしてもらいたい。
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森巖夫#11
○森(巖)政府委員 やはり船舶運航に関する検査でございますから、それに関する十分な知識を持っておることを必要といたします。そういうような意味におきまして、今までと同じような制限の範囲内でやっていくつもりでございます。
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小山亮#12
○小山(亮)委員 もし絶対にそうでなければならぬものならば、それを法文化なさるのが適当じゃないかと思います。もしそうでない者も時にはあり得るのだという解釈ならばこれでいいけれども、そういうような者でなければならないというあなたの御説明であるならば、それは当然法文化しなければならぬと思います。これに対しては、今の御答弁だけではばく然としておって、これではいけないじゃないかと私は思うのですが、もう一度御答弁願いたい。
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森巖夫#13
○森(巖)政府委員 先ほど申し上げましたような、審判官なんかと大体同じようなレベルでいきたいという考え方を持っておりまして、この方も法文としては規定しておりませんので、事実上そういうような内規と申しますか、そういうものをきめまして、それでやっていこうという考え方でございます。
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小山亮#14
○小山(亮)委員 私の考え方と政府当局の考え方とが、そこに多少の食い違いがあるかもしれませんけれども、従来は、海技免状に関する試験官でありますから、海技試験をするに適当な資格を持っている人、たとえば甲種船長として何年間海上生活したとか、あるいは甲種機関長として何年間海上の経歴がある者とか、そういう者を御選定になったと思います。しかしこれからの船長の試験は——船長以下の試験でありますと、海技試験という技術試験だけでいいと思いますけれども、船長という職務を執行する場合には、もっと非常に広範な試験の必要があると思うのです。そういう場合に、従来のように、経費の都合があってできなかったかもしれませんけれども、一人の試験官で試験する方がいいのか、あるいは陪審的に、二人の試験官が立ち会って試験する方がいいのかということも、これは相当考えさせられる問題です。その場合に、海技試験官は、海上の技術を修得したところの人のほかに、あるいは商法上の、法律上のいろいろな問題について明るいような人というものが試験官として立ち会うという場合も、私は将来はあり得ると思うのです。そういう場合を考えられて、この場合「関係職員のうちから海技試験官を任命し、」と、あえて海技試験官の資格というものに対して明確に法文化されなかったのじゃないかと私は思うのです。しかしあなたの今の御答弁によりますと、厳格に、これは海技試験であるから、甲種船長とか、甲種機関長をやって相当の経歴を経たものでなければならないと、こう厳重に言われるなら、それをはっきりとここに条文としてお出しになるのが正しいやり方だと思う。そうでないと、あなたの方で勝手に、試験官に適当と見た関係職員のうちからでありさえすれば、だれでもどんどんと選ぶことができるように、この条文からは考えられますが、この点どうも非常にあいまいだと思うのですが、御意見を伺いたい。あるいはこれはこうであるということを別な関係において明確にされるか、どうにかされなければ、これは非常に不明確だと思うが、御意見はどうですか。
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森巖夫#15
○森(巖)政府委員 小山先生のおっしゃる通りでございまして、この点についてはいろいろ問題もございます。意見もある点でございます。たとえば職員の試験のために委員会を作るとか、いうような考え方も考えられますし、さらにまたこれとよく似ております水先人の試験なんかにつきましては、英語その他のものにつきましては、試験官以外の者の協力を得て試験を実施いたしておるような事情もございます。それでこの試験をどういう工合にやっていくかということは、海上航行安全、審議会等の意見も聞きまして、さらに具体的に研究していかなければならないことと考えておりますけれども、大体の考え方といたしましては、船舶運航に最も知識、経験を持っておる者から選ぶということになりますと、内規でやっていくというのが、今の考え方でございます。法律上明確を欠くとのお説でございますが、その点は多少ゆとりを持って書いてあるわけでございますが、事実はさように考えております。
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小山亮#16
○小山(亮)委員 そうすると、これに関しては内規というものがあるのですか。あれば、これは参考のために委員会に御提出にならなければいかぬと思うが、どうですか。
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森巖夫#17
○森(巖)政府委員 内規と申しましたのは言い過ぎであったかもしれませんが、文章にしておるのではないのでありまして、大体こういう基準というものを持っておるわけでございます。
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小山亮#18
○小山(亮)委員 そうすると、ますますこれはあいまいになりますね。あなたのお話をだんだん伺っていけば伺っていくほどあいまいになるので、あなたの手かげんでだれでもきめることができるということになる。そうしてこれを運輸大臣が任命しました以上は、終生試験官として働いていかれるわけなんでしょう。この場合、この試験官の年令の制限というのは一体幾つぐらいまでなのか。そういうような点も、試験官という特殊技術を持った人はほかの一般の職員とは違うと思いますが、そういう点についても内規があれば、この際内規をはっきりさせるということが必要じゃないですか。あるいは内規がなくて基準があれば、基準はやはり文書で明確にさせるのがほんとうじゃないでしょうか。口だけでこうだああだと言われるが、あなたがおいでになるときはいいが、局長のかわられたときは、またそれが違うのだ、おれの内規はこうだ、おれの基準はこうだということになると、これは大へんなことになる。試験官をきめるということは、試験を受ける者から見れば非常に大事なことなんですから、いかがわしい試験官が来た日にはひどい目にあうのです。ですからこの点は非常に慎重なことだと思うのですが、これに対しての内容を明確にしていただきたいと思うが、御答弁願いたい。
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森巖夫#19
○森(巖)政府委員 御趣旨全く同感でございますが、ただこれに関する内規というものはきめておりません。試験官も、これは普通の職員の中から選ぶとは書いてありますけれども、やはり一般公務員でございまして特別なものではございません。従いまして定年とかなんとかいうものにつきまして特別なものは規定されておりません。ただお話のように試験官というものは非常に重要な役目でございますから、これを選びますときは、従いまして普通の一般の職員よりあるいは年令が多少高い人が多いかと思いますけれども、そういう点につきまして特に定年とかなんとかいうものをきめてはございません。
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小山亮#20
○小山(亮)委員 これは現実の問題としまして、現在海技試験官である人が、海上の仕事の方が非常に景気がよくて給料が非常によくなってきた。それがために試験官を辞職しまして海上へどんどん出ていく人が多い。それがためにどっちかというと比較的優秀である、前途のあるような試験官は、むしろ海に行ってしまう。どこへも行かれないような試験官だけが残っているというふうになると、素質の悪い試験官が残るのじゃないかという、私は非常な心配がある。でありますから特にこの場合あなたの方で、そういう試験官に一たん任命したら長くその職にとどまっておる人、そしてまた素質のいい人、それをいかにして求めるか。それにはどれだけの、たとえば経歴が、船長の職をとるか機関長の職をとって十年なら十年の経歴があるということだけが、必ずしもいいのじゃない。それはある人によっては三年でも五年でも十分にやれる人もある。それからたとえば学校は商船大学を出た人がいい場合もあれば、必ずしも商船大学を出なくても実地でたたき上げた人でも試験官になり得る、こういうような条文があってもいいのじゃないかと私は思うのです。これは日本の試験だけが学歴ということを非常に重大視しております。しかし英国においては学歴は一つも問題にしてない。特にイギリスには官立の商船学校というものはございませんから、私立の商船学校だけであります。しかも優秀な船長といわれるような人たちは、何も学校を出ていない人が多いのです。
  〔委員長退席、山本(友)委員長代
  理着席〕
そういう点から顧みて、優秀な試験官というものはどれだけの資格でなければならぬかということは、ただ単に運輸省の船員局だけの基準というような、非常に何かベールに包まれた中でいろいろなことが決定されるような感じを持つ。その感じをこの際払拭したい。そこで私はあなたに伺うのです。新しい試験官の任命の方式——私はここで今法案がこの委員会で通るか通らないかというときに、この問題をことさらにいろいろなこまかい質問をして、法案を長引かそうという考えはない。ただ私が今日ここで申し上げましたことを、船員局長として、当局としてお聞きになって、なるほどそれはそうでなければならぬということを考えられたならば、できるだけ早い機会に、これに対して、新しき時代に即応したような新しい試験官の資格というものを早急に御決定になって、少くも文書か何かではっきりとわかるように、明確になさることがいいと思いますが、これに対して私はここではあえて希望だけ申し上げておきます。本来ならばこの法案をもっと十分に審議したかったけれども、これが衆議院に回ってきたのはようやく今ごろになって、これを審議する時間がなかった。この重大なる船舶職員法を、一回の質疑もなく、議会を通過させるというようなことはあり得ない。でありますからあえて私は聞くのでありますが、こういうような問題はまだ疑義の存するところが多々ある。でありますからこの点については、特に当局の方で資格というものを明確になさる御意思があるかどうか伺いたい。
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森巖夫#21
○森(巖)政府委員 お話のように海運界が非常に忙しくなって参りますと、試験官が海の方へ出ていくというようなこともあります。それからあとに優秀な人を補充するということについて、困難を感ずるということも実際上あるのでございます。これはあるいは一般の景気と公務員の待遇という問題等にも関係があるかと思いますけれども、これに関しましては、特に試験官たるにふさわしい人を十分得るように極力努力いたしておる次第でございます。なお試験官の条件と申しますか、資格の基準等につきましても、さらに航行安全審議会等の意見も聞きまして、御心配の点のないようにやっていきたいということを考えている次第であります。
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小山亮#22
○小山(亮)委員 さらに第二十九条の二の問題について伺いたい。「運輸大臣は、第一条の目的を達成するため必要な限度において、船舶所有者に対し、船舶職員の乗組若しくは船舶の運航の状況について報告させ、又はその職員に、船舶に立ち入り、帳簿書類若しくは海技免状を検査し、若しくは関係者に質問させることができる。」「前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証票を携帯し、関係者にこれを提示しなければならない。」「第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。」「運輸大臣は、第一条の目的を達成するため必要があると認めるときは、運輸省令で定めるところにより、海技従事者にその海技免状を提示させることができる。」この条文があります。
  〔山本(友)委員長代理退席、淵上委員長着席〕
これは人の免状を持って働いておる人がある、あるいは免状に偽わりがあるものを持って働いておる者がある、そういうものは往々にして海上においての事故を起す原因となりがちでありますから、運輸省がこの条文をお作りになったということはわかります。しかし私がこの場合に最も注意しなければならないのは、「船舶職員の乗組若しくは船舶の運航の状況について報告させ、又はその職員に、船舶に立ち入り、帳簿書類若しくは海技免状を検査し、若しくは関係者に質問させることができる。」、この条文が乱用されたときには非常に重大なことになる。これは御承知のように、終戦後の新しい憲法におきましては、人間の基本的な人権というのが極度に尊重されております。それがためにたとえば陸上におっても、犯罪の疑いありと考えられた場合でも、当然法務庁あるいは関係検察庁の許可がなければ、あるいは書面がなければ、みだりに人家に立ち入ることができない、家庭の中に立ち入ることができないということになっております。しかるに船の方はどうであるか。船は、船に働いておる者から見れば、船員から見れば、それは一つの仕事場である、工場である、事務所である、同時にまた自分の家庭でもある、自分のすみかだ。そのすみかに海運局の職員の身分を示す証票だけを携帯すれば、いつ何時でも入っていって重要なる帳簿、書類あるいは個々の人たちが保管しているところの海技免状を一々全部出させる、そしてまたその関係者をそこに質問することができるということになっております。出帆が妨げられる場合がある。それからその人たちが安全な航海をはかるために、船員というものは十分に静養しなければならない時間が必要なのであります。それがこういうようなことで呼び上げられたときに、十分睡眠をとることができない、冷静なる判断ができないような神経をかき乱される、これが事故を起す大きな原因になる。こういうことを考えるときに、みだりに船の中に立ち入って、ただ一片の自分の身分を示す証票だけを持っていって何でもできる、船内を検査できる、船の出帆もとめることができるというような重大な権限を簡単にきめるということは、私は慎重に考えなければならない問題だと思うのです。海においては水上警察の警察職員が、犯罪の疑いありというならば船内に乗り込んでいって捜査することもできれば、海上保安官がまたその意味において、中に入っていくこともできるのでしょう。そしてまた海運局の職員が乗り込んでいって検査をする。陸の方はどうだ。陸の方は警察官でも、あるいは防衛庁の役人でも、だれでも入っていくことはできはしない。普通の人の家庭に踏み込んで家宅捜索をするとか、うちの中に入って尋問する場合には、これは必ず裁判所の許可がなければ判事の令状を持たなければできない。にもかかわらず海の方はなぜ簡単に軽々しく、勝手に追い回しほうだいに船の中を捜索できるようにしておくか。むしろ海運局としてはこういうふうなことを保護しなければならない立場にあられるのに、その船員の権利であるとか、あるいは船舶の中の、船の航行を妨げるようなことがどんどんできるような法律を乱発されるような傾向にあるのは、私は非常に遺憾に思うのですが、これに対する御意見を伺いたい。
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森巖夫#23
○森(巖)政府委員 お話の通りでございまして、船舶が単なる仕事場ばかりではなく、船員の居住の設備といたしまして非常に特別な意義があるということについて、われわれは特に注意しなければならないと思うのでございます。ただ今までの船舶職員法につきましてはこういういろいろな基準をきめておりますけれども、これを実行するための規定を全然欠いておったわけでございます。それでいろいろな規定を考え、これを実行していくためには、どうしてもある程度の権限が必要になって参ります。そのために第二十九条の二というものをはっきりいたしたような次第でございますが、この第二十九条の二は、第一項にはっきり書いてありますように「第一条の目的を達成するため必要な限度において、」ということでしぼっておるのでございまして、むやみにそういう権限を乱発するということがございませんように、この絶対必要な範囲にしぼっていきたいというように考えております。それからなお出帆まぎわにうるさい検査をやるとか、あるいは夜間にこういうことをやるとかいうようなことがございませんように、これらにつきましては最も慎重に運用をやっていくように、十分末端まで徹底させていきたい、こういうように考えております。
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小山亮#24
○小山(亮)委員 これは本法の第一条の条文に示してあるところだけの目的と言いますが、この第一条は「船舶職員として船舶に乗り組ますべき者の資格を定め、もって船舶の航行の安全を図ることを目的とする。」というのでありますから、これは非常に広範な問題なのです。何でもひっかかるのです。この広範な目的によって、船内に立ち入って検査をどんどん勝手にできるということならば、適時あなた方の方でやろうと思うときはいつ何時でもできる。船の方が迷惑をし、船主が迷惑しても、官庁の方で見ようと思えばいつ何時でもできる。またそういうことをするのでなかったら、おそらくあなた方は所期の目的を達成することができないとおっしゃる。そうしますと、あなたのおっしゃるのは大へん違っているので、これは海上保安官であるとか水上警察の署員であるとかいうもののほかに、もう一つ船の中に捜査権や尋問権を持たす者を作るということにしかならないと思うのです。これは私は非常に重大なことだと思うのですが、あなたの今の御答弁では目的の範囲が広過ぎてこれではだめです。もしもそれだけであなたがおっしゃるなら、私はこれは反対です。こういう場合にあなた方が心してやっていただかなければならぬことは、まず第一に、船内の捜査をする場合には了解を求めなければならないところがあるでしょう。たとえば他人の免状を持って身がわりの人間が船に乗り込んで航行するような場合には、それによって大きな事故が起れば、一番大きな損害をこうむるのは船主です。船主が非常な迷惑をこうむる。船長がそれがために責任をとらなければならないから非常な迷惑をこうむるでしょう。それは役人がこうむるより以上に大きな迷惑をこうむるわけなんです。その場合に、そういう身がわりの人が乗ってくることは船主は喜びはしないのですから、もし身がわりの人間が乗っておるという疑いがあった場合、また捜査をしなければならぬとお考えになったときには、直ちに船主あるいは船主の代理であるところの船長の十分なる了解を得て、その了解のもとに、その承諾のあった場合に中を探すという条文が抜けていはしないですか。これはずいぶん乱暴な一方的なことですよ。これでは国民の権利も自由もありはしない。この点、あなたの方が考え違いだと思うのですが、これをお直しになる気はありませんか。伺いたい。
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森巖夫#25
○森(巖)政府委員 実際やりますときには船長に話をして了解を得て、こういう臨検を実施することになると思いますけれども、しかし権限といたしましては、やはりこういう規定をしていただいた方がいいと考えております。
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小山亮#26
○小山(亮)委員 実際にやるときはとおっしゃるが、まだやってないでしょう。今度あらためてやろうとする。応々にして今の日本の役所の行政管理によってこうむるところの国民の迷惑というものは、その官庁の指揮者あるいは監督するところの人の考え方と、下で実際の事務に当るところの者との考え方が非常に違っておる。事務に当っておる者は非常にしゃくし定木に物事を考えますから、それがために実際に生活するものは非常に迷惑をこうむる。役人に対するところの民衆の反感というものは、みなそこに出発しておるのであります、やはり役所の相当の地位におる方、すべて広くいろいろなことを考えておられる方は、決してそういう非常識なことはやろうとはなさらない。しかるに下級官吏あるいは実際にその職務に当る者は、ややもすれば判断の誤まりをする、判断の誤まりでなくて、最も遺憾なことは常に感情によって左右される。たとえば船の中に入っていった場合、ちょっとしたことを船長に聞こうと思う、船長の了解を得ようとして船長に聞こうとする場合に、船長が話の非常に下手なやつだったとか、人づきの悪いやつだったとか、大体船に働いておるようなやつは人づき合いの悪いやつがたくさんおるから、それがために役人に対して礼儀を失した、おせじを言わなかった、おじぎしなかったとか、そういうようなことですぐに感情的にこれをいじめてやろうという気持から、船内の捜査をやらぬでもいいやつをやる。そうしてしまいには、こう船が迷惑するのでは、仕方がない、うるさいから——そういう税関の役人だとか、あるいは警察官だとかいうようなものに大したことでないことをごてごて言われたら、出帆もとまるし、迷惑するから、酒を飲ましたり、飯を食わしたりしてごきげんをとって帰したりするようなことはざらにやっておる。それは日本中至るところざらですよ。これはほとんど常識になっておるくらいだ。だから、船に来る警察官でも、税務署の役人でも、飯を食わせろ、酒を出せ、普通の酒じゃいかぬからウイスキーはこういうものを出せと、金も出さないで注文までするのです。それは当りまえです。みなやっておる。それがだれも縛られた人間はありはしない。当りまえになっている。私は、そういうような国民に迷惑をかけるような役人をまたあなた方がもう一つお作りになることは、実に重大な問題だと考えます。私はそういうのをなるべく減らしたい、しかしあなた方はふやしたい。私とあなた方との考え方がだいぶ違うのです。私はこれは特に船主あるいは船長の了解を得たときに限る、その許可なくしては入れないというような原則を作らなければ間違いだと思うのですが、御答弁を伺いたい。こんな重大なことは簡単に通さなくて、もっと十分にあなた方と議を練らなければいけなかった問題です。
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森巖夫#27
○森(巖)政府委員 小山先生の海運界における先輩としてのそういう実情につきましては、十分私どもも戒心いたしまして、この法律が通りました際におきましては、実施上そういう非難の起ることのないように十分徹底いたしたいと考えます。また第一条の目的達成のためというのは、あるいは読み方によっては非常に広く読めるわけでございますけれども、そう非常識なことはいたしませんで、ほんとうにこの法律が目的としておる範囲内にとどめるよう厳重にこれを戒めて、実施上間違いないようにいたしたい、かように考える次第であります。
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小山亮#28
○小山(亮)委員 こういう条文が今までなかったのをあなた方の方で初めて新しくお作りになったのですが、これは著しく人権じゅうりんする疑いのある条文でありますから、二十九条の二というものをお取りになって、撤回になったらどうですか。伺いたい。
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森巖夫#29
○森(巖)政府委員 この条文を作りますにつきましては、航行安全審議会等におきましてもいろいろ意見があったところでございます。しかしいろいろ慎重審議せられた結果、この程度ならよかろうということに相なったわけでございまして、私どももそういう気持でおります。このままやっていきたいという考え方でございます。
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