内閣委員会

2004-06-10 参議院 全333発言

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会議録情報#0
平成十六年六月十日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 六月九日
    辞任         補欠選任
     森下 博之君     福島啓史郎君
 六月十日
    辞任         補欠選任
     松井 孝治君     伊藤 基隆君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         和田ひろ子君
    理 事
                西銘順志郎君
                森田 次夫君
                神本美恵子君
                吉川 春子君
    委 員
                岡田  広君
                関口 昌一君
                竹山  裕君
                中島 眞人君
                福島啓史郎君
                森元 恒雄君
                山崎 正昭君
                伊藤 基隆君
                岡崎トミ子君
                川橋 幸子君
                松井 孝治君
                魚住裕一郎君
                白浜 一良君
                小林美恵子君
                黒岩 宇洋君
       発議者      吉川 春子君
       発議者      岡崎トミ子君
       発議者      神本美恵子君
       発議者      川橋 幸子君
   国務大臣
       国務大臣
       (内閣府特命担
       当大臣(経済財
       政政策))    竹中 平蔵君
   副大臣
       内閣府副大臣   伊藤 達也君
   大臣政務官
       内閣府大臣政務
       官        西川 公也君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        鴫谷  潤君
   政府参考人
       内閣府国民生活
       局長       永谷 安賢君
       警察庁長官官房
       長        吉村 博人君
       総務大臣官房審
       議官       田中 順一君
       総務省自治行政
       局長       畠中誠二郎君
       厚生労働省医薬
       食品局食品安全
       部長       遠藤  明君
       農林水産省生産
       局畜産部長    井出 道雄君
   参考人
       一橋大学大学院
       法学研究科教授  松本 恒雄君
       日本経済団体連
       合会経済法規委
       員会消費者法部
       会長代行
       三菱商事株式会
       社理事      大村 多聞君
       弁護士      浅岡 美恵君
       特定非営利活動
       法人情報公開ク
       リアリングハウ
       ス室長      三木由希子君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
○公益通報者保護法案(内閣提出、衆議院送付)
○政府参考人の出席要求に関する件
○国の行政運営の適正化のための公益通報に関す
 る法律案(櫻井充君外八名発議)
    ─────────────
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和田ひろ子#1
○委員長(和田ひろ子君) ただいまから内閣委員会を開会いたします。
 委員の異動について御報告いたします。
 昨九日、森下博之さんが委員を辞任され、その補欠として福島啓史郎さんが選任されました。
    ─────────────
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和田ひろ子#2
○委員長(和田ひろ子君) 公益通報者保護法案を議題とし、参考人の方々から御意見を聴取いたします。
 参考人を御紹介いたします。
 一橋大学大学院法学研究科教授松本恒雄さん、日本経済団体連合会経済法規委員会消費者法部会長代行・三菱商事株式会社理事大村多聞さん、弁護士浅岡美恵さん及び特定非営利活動法人情報公開クリアリングハウス室長三木由希子さん、以上四名の方々でございます。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、御多忙のところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございます。
 参考人の方々から忌憚のない御意見を承りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、本日の議事の進め方について申し上げます。
 まず、松本参考人、大村参考人、浅岡参考人、三木参考人の順序で、お一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、各委員の質疑にお答え願いたいと思います。
 また、御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきいただきたいと思います。
 なお、御発言は着席のままで結構でございます。
 それでは、まず松本参考人からお願いいたします。松本参考人。
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松本恒雄#3
○参考人(松本恒雄君) 松本でございます。
 このような発言の機会をお与えいただきましたことに対してお礼を申し上げたいと思います。
 まず、今なぜ公益通報者保護の法制化を議論しているのかということでありますが、この議論が行政内部で始まりましたのが二〇〇〇年ぐらいからでありまして、二〇〇一年に内閣府のコンプライアンス研究会の報告書が出ておりまして、その後、国民生活審議会に議論が受け継がれ、現在ほぼ四年間議論をしているということになります。
 では、なぜこのような議論が出てきたかということでありますが、日本の、我が国の消費者政策の歴史を考えてみますと、次のような三つの波でとらえることができるというふうに私は考えております。
 まず、六〇年代に消費者保護基本法が制定されたわけでありますが、これが一つ目の大きな波でありました。ここでの考え方は、行政中心、つまり行政規制で事業者を規制することによって消費者を守っていくというやり方、それと被害等について行政が相談を受けるということであります。それが、九〇年代になりましてから製造物責任法や消費者契約法等、裁判による消費者保護、司法による消費者保護を図っていこうという考え方が出てまいります。それが、今世紀に入りましてから、法律を直接使って消費者保護ではなくて、もう少し市場の力、マーケットの力を使って消費者に有利な状況を生み出していこうという政策が着目されるようになってまいりまして、コンプライアンス研究会の発想あるいは公益通報者保護の発想といいますのもこの第三の波の流れの一つと位置付けることができます。
 それでは、第三の波として考えられている市場を利用した消費者政策の具体的中身でありますが、次の三で述べておりますような、例えば、各企業あるいは事業者団体に自主行動基準を作成してもらってそれを公表し、遵守してもらうとか、あるいは法令を遵守するためのコンプライアンス経営に積極的に取り組んでもらうと、あるいは、そのような事業者がきちんとしているということをしかるべき第三者機関に評価をしてもらう、そしてその評価が消費者に分かるようにマーク等で示すようにしようとか、あるいは、消費者苦情の処理について業界としてきちんと紛争処理のための機関、いわゆるADRと言われているものでありますが、これを作って安価かつ公平な解決を図っていってもらいたい、あるいは、もう少し大きな話になりますが、消費者利益以外の様々な企業を取り巻く利益も考慮した、いわゆる社会的責任に配慮した経営をやっていただきたい、そのような企業を支援する投資を促進していこうというような議論、あるいは、事業者団体と消費者団体が話し合ってしかるべきルールを考えていこうというような流れ、様々なものがここに含まれます。そして、このような考え方が、本委員会の議員の皆様方の御努力で成立いたしました消費者基本法の中に今回取り込まれたということでございます。
 それでは、このような流れが出てくれば、従来の、特に第一の波で行政の中心の、行政規制中心の消費者保護が行われていたわけですが、これが全く不要になるかという点であります。
 不要になるわけではありません。ただ、消費者政策として様々なツールが出てきたことから、行政の規制のやり方が少し変わってきているということがあります。よく言われておりますのが、事前規制から事後規制中心に変えていこうと。ただ、事後規制といいましても、事前の明確なルールが定められているということが大前提になります。その上で、しかるべくルールを守って自由な競争をしていただきたいということです。
 こういうふうな事後規制中心になりますと、事後的にルールが守られているかどうかをきちんとチェックする、モニターする機能が働かないと大変なことになります。かといって、行政がすべての事業者活動を常時監視するというのは不可能でありまして、これは適時にいわゆるピンポイントで監視をしていくということにならざるを得ないだろうと。ほかにも、その事業者がルールを守っているかどうかを監視する主体が考えられて、そのような多様なモニタリングを促進していくような仕組みが必要になってまいります。
 消費者に様々な、主務大臣に対する申出権を与える法律が多く整理、整備されておりますが、これは、消費者をモニタリングチャンネルとしようとする発想でありますし、社内の従業員をモニタリングのチャンネルとしようとするのが今回の公益通報者保護法案ということになります。
 さらに、取引先にもそのようなチェック、モニタリングの機能を持ってもらおうというのがいわゆるサプライチェーンの発想ということであります。
 さらに、事後的なチェックで違反が判明した場合にはしかるべく制裁を加えないと、結局やり得ということになります。その場合の制裁の内容といたしまして、ふだんから日常的に法令遵守のための取組を様々に行っている事業者の内部でたまたま違反があった場合とふだんから野方図な事業者の場合とで制裁に違いを与えるということが非常に重要になってまいります。
 そういう点では、独禁法改正案、今回は国会には上程されなかったようでありますが、で、課徴金を強化するという反面、違反を通報した事業者に課徴金減額しようという仕組みを導入するというのは、この点で非常に評価に値することだと思います。
 さらに、違法行為によって得た不当な利益を吐き出させるための様々なシステムの導入も考える必要があります。
 続きまして、その様々なモニタリングチャンネルの中から、今回特に従業員に焦点を当てて公益通報者保護法が作られて、法案が作成されたわけであります。
 この公益通報者保護制度をめぐっては様々な意見があります。法案は公益通報という用語を使っておりますが、一般には内部告発という表現がよく使われております。ここに典型的に表れますように、告発という言葉を積極的に使う場合のイメージと、通報という言葉を使う場合のイメージが違うというところがあります。ここがこの法案に対する対立の大きな原因になっているかと思います。
 すなわち、告発イメージといいますのは、内部から外部への告発を主として考えている。その前提には、企業は悪いことをするんだと。特に企業ぐるみのこと、トップが関与した不正が中心イメージとして抱かれている。あるいは悪徳商法の摘発をこの制度を使ってやりたい。あるいは国民には企業の不祥事を含めて知る権利があるんだという考え方。さらに、行政への通報では役に立たないんだという行政不信というのもここに含まれているかと思います。
 他方、通報イメージの背景にありますのは、企業の内部での通報を重視して、その通報を受ければ企業のトップはきちんと対応するはずであるという前提、すなわち誠実な経営を行おうとする企業を主としてイメージしているということになります。そのマネジメントシステムの一環として、企業内部で様々な教育、啓発、あるいはヘルプラインの整備等をやっていただきたい、企業の自主的な取組を促進しようというイメージであります。
 それでは、どちらのイメージで法制化を図るのがいいかというところであります。今回提案されております法案は、後者の通報イメージに立っていると考えられます。法案の性格を考える場合には、三つの性格が重層的に出ているというところを十分に御留意いただきたいと思います。
 すなわち、この内閣府が出しております案は、公益通報者保護法制を企業の自主的取組を通じて、これが私が言いました第三の波でありますが、規制法令の遵守という第一の波的発想を促進するために通報した労働者を保護するという、ここは正に民事ルールでありまして、これは第二の波ということになります。このような幾つかの異なった目的を一つの法規で実現しようとしている。その中でも、自主的取組促進という部分が一番根底にある法案だということであります。
 じゃ、このような法案で所期の成果が達成できるかどうかでありますが、法律が整備、制定されれば当然様々な効果が出てくると思いますが、法案の議論を開始した時点におきまして既にいろいろ効果が出ております。ここにたまたま持ってきておりますが、経営法友会という企業の法務担当者が自主的に組織しております研究会がございまして、そこが「内部通報制度ガイドライン」という、企業内部で通報制度をどういうふうに整備したらいいかということについて非常に優れた指針を既に発表されているところであります。
 そして最後に、それではこのような法案が制定された後で各関係者がどのような努力をすべきかということを述べて、私の発言を終わりたいと思います。
 まず、行政の課題でありますが、この法案自身が企業のコンプライアンス経営の促進ということを一番根底のねらいとしていることでありますから、これに向けての一層の啓発や環境づくりを行っていく必要があります。
 さらに、先ほど述べましたが、きちんとコンプライアンス経営をしないで、かつ違法な行為を行った企業に対しては、めり張りの付いた制裁をきちんと科していく必要があるということであります。
 さらに、既に個別の法律におきまして公益通報者の保護を行っている法律がありますが、必要な分野につきましては個別法の制定を積極的に進めていただきたいと思います。
 さらに、告発イメージの一つの大きな原因でありますところの、行政は企業と癒着していて頼りにならないという部分に対する一般的な不信感を払拭するための積極的な努力をしていただきたいと思います。
 これの一つのやり方といたしましては、従来、行政内部で、企業、業界の振興を担当する部局と業界を規制する部局が、全く同じところが二つの機能を兼ねていたということが多いです。その結果、薬害や食品に関する安全が侵されたという結果が出たわけで、既に幾つかの省庁におきましてこの分離がなされたところでありますが、それ以外の分野におきましても積極的に業育成行政と規制行政を分けるということをやっていただきたいと思います。
 企業につきましては、積極的にコンプライアンスの仕組みを作るということ、それから作るだけじゃなくてそれを動かしていくということをやっていただきたいと。これを支援する取組といたしまして、国際標準化機構、ISOにおきましてコンプライアンスについてのマネジメントシステムを国際的な規格として作ろうという動きが出てきております。
 それから、内部通報が重視をされるということは、企業としては非常に早い段階で是正が可能になるということで大きなダメージを受けないという非常に大きなメリットがあるわけですが、それがうまくいくと結局企業内部の不祥事が外に出ないで済む、済んでしまうということがあります。これにつきましては、通報者に、通報者個人に対してきちんと結果を告げるということ自身は法案の中に既に記載されているわけですけれども、それ以外の他の、社内の他の従業員に対してもしかるべき時期に知らせるとか、あるいは社外、社外一般に対して、我が社においては過去こういうような問題があったけれども、内部の是正メカニズムがきちんと働いてこういうふうに是正されたんだから信頼してくださいという趣旨の情報公開をきちんと行うことがその企業に対する信頼を一層高めるのではないかと思います。
 さらに、経営トップがそれでは不正に関与していた場合には内部通報は全く働かないのかという点でありまして、ここはそうはならないような仕組み、すなわち企業内部におけるチェック・アンド・バランスの仕組みをうまく取り入れるように努力していただきたいと。いわゆるコーポレートガバナンスの問題であります。
 最後に、NPOの役割というのは極めて重要であります。とりわけ相談を受けるという機能であります。
 ただ、相談機能と、それから告発の受皿としての機能はきちっと分けて議論する必要があると思います。相談が弁護士といった守秘義務をきちんと負っている人との間で行われている限りではまだ通報ではない段階でありますが、告発受皿団体に対して持ち込まれますと、そこで通報ということになりますので、ここの機能をきちんと分けて適切な助言、相談が行われるように期待したいと思います。
 以上であります。
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和田ひろ子#4
○委員長(和田ひろ子君) ありがとうございました。
 次に、大村参考人にお願いいたします。大村参考人。
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大村多聞#5
○参考人(大村多聞君) 日本経団連消費者法部会長代行の大村でございます。国民生活審議会消費者政策部会、日本経団連の代表として、委員として参加させていただいております。
 本日はこのような発言の機会をいただきまして、誠に有り難く存じます。
 まず初めに、公益通報者保護制度の導入に対する日本経団連としての基本的な考え方につきまして申し上げます。
 各企業は、あらゆる法令の違反や企業倫理に反する行為を予防するためコンプライアンスに力を入れております。日本経団連も企業行動憲章と、その企業行動憲章の実行の手引も発行し、会員企業のマニュアルとして活用してもらうことなどを通じて未然防止の働き掛けを行っております。それでも企業不祥事が発覚した企業に対しては、会員資格の停止や退会勧告、場合によっては除名もあり得るという厳しい対応を取っております。
 本来、内部告発は、個々人の正義感と責任の下で行うものであり、制度的に奨励すべきではないと考えております。これまでも内部告発者につきましては、一般法理に基づいて保護されるべきものは保護されてまいりました。
 今回の公益通報者保護法案は、一般法理を前提として、公的・私的組織を問わず、公益のために通報する労働者の保護に関するルールをより明確化しようというものであります。そうであれば、企業が自ら進んで不祥事の発生を最小限にとどめるべく、コンプライアンスへの自主的な取組を後押しする観点から、公益通報者保護法案を立法することには一定の意義があるものと考えております。
 公益通報者保護法案は、国民生活審議会消費者政策部会が二〇〇三年五月に発表いたしました報告書をベースに制度設計されておりますが、報告書の取りまとめに当たりましては、経済界、消費者団体、弁護士団体、学者など、関係各界が活発な議論を行いました。その結果、各界の意見を十分に配慮して微妙にバランスの取れた制度設計が取りまとめられたわけでございまして、新しく制度をスタートするという意味では合理的な内容であるものと存じます。
 この法律の対象にならないものにつきましても、これまでどおり一般法理で保護されるわけでございますから、全体のレベルを下げることにはなりませんし、ルールが明確化される分、前進しております。また、立法による国民、企業へのアナウンスメント効果も大きいと存じます。
 先ほど申し上げましたとおり、今回の公益通報者保護法案は、公益のために通報する労働者の保護のルールの明確化と、各企業のコンプライアンスへの自主的な取組の促進が元々の趣旨でございますが、私どもとしましても、この二つの観点から法的な枠組みを作っていくことが実務の混乱を回避する観点からも肝要かと存じます。
 まず、ルールの明確化という点についてでございますが、これまでも内部通報者に対する不当な取扱いについては、裁判所で一般法に基づいて是非が判断されており、保護されるべきものは保護されております。
 しかしながら、限られた判例等からでは、保護されるための要件や効果が明確でない面がありました。また、企業にとりましても、事実が不確かなものや個人的な恨みなどから誹謗中傷的な情報がいきなり外部へ通報されてしまっては致命的であります。
 そこで、今回、公益通報者保護制度を導入して、どのような内容の通報をどこへ行えば解雇等の不利益な取扱いから保護されるかをあらかじめ明確にしておこうということでありますから、いかなる通報が保護の対象となるか予測可能性が高く、また乱用されないルールにすることが重要となってまいります。
 その観点からいたしますと、例えば公益通報者保護法案で、公益に貢献するということで保護される通報の範囲につきましては、国民の生命、身体、財産などの保護にかかわる法令違反が生じ、又は生じようとしている場合とし、その範囲を明確化し、予測可能性の高い制度となっていることは評価できるものと存じます。
 また、保護される通報者の範囲につきましても、公益通報者保護法案では、現在雇用されている労働者に加えて、派遣労働者や元労働者、取引事業者の事業に従事する労働者を対象にすることになっておりますが、例えば事業者と直接的な雇用関係にない派遣社員の場合には、派遣先の企業の契約上の要求に見合わない派遣社員であった場合、自らが交代させられないようにするために通報することや、元労働者については、不満を持って退職した者が報復を目的に通報する場合も考えられます。このように、不利益処分を受けて当然の者がそれを免れるための悪用や他人への誹謗中傷、あるいは人事処遇への報復等を目的とした制度の乱用が行われないような対策を併せて講ずる必要が出てまいりますが、今回の法案におきましては、公益通報を理由とした解雇等を禁止するとともに、公益通報をする労働者は他人の正当な利益又は公共の利益を害することがないように努めなければならないことを規定することで、ある程度乱用を防止しつつ、法の目指す公益通報が保護されるものと評価しております。
 一方、企業は自らの問題について他人に頼らず自助努力で解決していくのが基本でございますので、企業も自ら進んで不祥事の発生を抑える努力を行うことが何よりも重要でございます。日本経団連では、冒頭申し上げましたとおり企業行動憲章を策定し、会員企業に対し社内へのヘルプライン、相談窓口の設置を始めコンプライアンス強化の自主的取組を働き掛けているところであります。一昨年十二月に全会員企業約千三百社を対象に企業倫理行動基準に関するアンケート調査を実施いたしましたところ、ほぼ半数の企業がヘルプラインを設置しており、設置予定のところと合わせると八割を超えていることが判明いたしました。そこで、経済界としてはヘルプラインの設置など、企業の自主的な取組を尊重、奨励する観点からも、内部告発者の保護については、まず社内窓口で対応した者を対象とすべきであると主張してまいりました。
 私が所属する三菱商事においても、二〇〇一年より社内で目安箱と言っているヘルプラインを設置しました。目安箱には社内コンプライアンス部局及び監査部のものがあり、更に社外弁護士のものがあります。現在では年間二、三十件の報告、相談を受けております。これらの報告、相談の九割は根拠を欠くものであったり、見解の相違のたぐいのものでありますが、客観性や蓋然性がないものであってもその中に一割の真実があれば企業としては大変貴重な情報でありますから、会社としてはすべての報告、相談に真摯に対応しているわけでございます。
 今回の公益通報者保護制度の立法に当たりましては、英国の公益開示法の考え方がベースになっております。英国では一九九八年に慎重な議論を踏まえて公益開示法が制定されたわけですが、その過程ではメディアなど外部にいきなり通報することに対する警戒感や、内部告発を制度的に奨励するような制度を創設することによって、使用者と労働者の間の信頼関係、忠誠心といった文化、風土の問題が懸念されました。その結果、まず最初に事業者に対して通報がなされることを原則とする制度にすることにより、事件や事故の早期発見のみならず企業内の健全なガバナンス体制や、オープンな組織体質を促す上でも有効であるという認識が広がり、ようやく各界からの支持を得ることができ、法案の成立に至ったという背景があると聞いております。
 企業が幾らまじめにコンプライアンスの取組を行っていても、いきなり外部機関へ通報されてしまってはコンプライアンスへ自主的に取り組むインセンティブが阻害されてしまいます。また、事実かどうか分からないのにあたかも事実かのように扱われ、簡単に企業の信用や評判を損ね、その株主や従業員、取引先にも不利益を生じさせ、ひいては失業者を生む可能性も十分にございます。そのため、今回の法案では企業内部への通報を自主的に促し、企業がきちんと対応しない場合や証拠隠滅を図る場合、あるいは急迫性がある場合には外部通報できる制度になっておりますことは合理的であると存じます。このような枠組みであれば、事業者側といたしましても、労働者が安心して通報してきてくれる環境を整えるなど、コンプライアンスへの自主的な取組を積極的に行うことへのインセンティブも働きます。
 次に、コンプライアンス経営と内部通報の関係について付言させていただきます。
 現在、企業は経営資源を割き、コンプライアンス経営に努めています。経営はシステムでありますので、コンプライアンス施策もシステムとしてとらえる必要があります。お手元のレジュメの二ページに、コンプライアンス施策の七つの段階を記載しています。
 すなわち、第一は、コンプライアンスを最優先とする企業理念、経営トップの方針の明確化です。第二は、コンプライアンスについての組織的コミットメントを明らかにするためのコンプライアンスオフィサーの任命、コンプライアンス委員会の設置及びその運営です。第三は、コンプライアンス企業倫理のための包括的な行動規範や個別規定といった規範定立です。第四は、コンプライアンス関連法令や社内規範の周知徹底活動です。第五は、モニタリング、すなわち監視、チェックの活動です。第六は、コンプライアンス違反についての調査と処罰の実施です。第七は、再発防止策を講じることです。
 第五のモニタリングには三種類あります。第一が、日常業務において上司が部下の活動を管理したり監督したり、法務部が社内予防法務活動の一環として牽制したりする活動で、これが主体的かつ基本的なモニタリングです。第二は、内部監査部門による事後的かつ第三者的なモニタリングです。監査なきコンプライアンスなしとも言われますが、現在、企業は内部監査部門の強化に努めています。第三のモニタリングが内部通報によるものです。内部通報はあくまで補充的、補助的なものでありますので、これですべての企業不祥事問題を解決できるというわけではございません。
 したがいまして、本法につきましては、日本の法制度や判例、企業の自助努力などを含めたシステム全体の中に適切に位置付けることが重要であると存じます。
 先生方におかれましても、是非政府案の方向で立法していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 以上でございます。
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和田ひろ子#6
○委員長(和田ひろ子君) ありがとうございました。
 次に、浅岡参考人にお願いいたします。浅岡参考人。
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浅岡美恵#7
○参考人(浅岡美恵君) 浅岡でございます。
 本日は、このような機会を与えていただきまして、ありがとうございます。
 私は、消費者の立場で被害者救済など実務をやってまいりました弁護士でございますけれども、あわせまして、日本弁護士連合会が製造物責任法や消費者契約法、情報公開法などの消費者に関連いたします制度の制定に当たりまして関与をいたしました。そして、今般の国民生活審議会の審議には一員として参加させていただきましたので、その経験を踏まえまして意見を申し上げたいと思います。
 今般、既に消費者基本法が成立しておりますけれども、この消費者基本法に係ります部分につきまして、消費者部会の報告につきましては、私は、細部で意見はございますけれども、この公益通報者保護に関する部分を除きましては賛成をいたしました。しかし、この部分につきましては異議を留保させていただいております。この国会で、消費者基本法は国民生活審議会の報告を更に前進させて立法していただきましたので、その点については敬意を表したいと存じます。
 なぜ公益通報者保護制度に関します部分について異議を申し上げたかと申しますと、これはそもそも今回の報告が消費者政策の実効性の確保の方策の一つとして位置付けられたものであります。その政策全体は、消費者に、市場にも参加し、積極的に自らの利益を確保する自立した主体としての行動を求める、その前提といたしまして、消費者が必要な情報を得て選択ができる、そうした権利を認めていこう、事業者にも情報公開とコンプライアンス経営を求めようというものであります。
 しかしながら、今般のこの公益通報者保護制度についての審議会報告の部分、またさらにそれを消費者の立場から見ますと、保護の対象を詳細、厳格にいたしました、小さくいたしました本法案につきましては、こうした消費者の役割あるいは権利をどう実現していくのかという観点が欠落していると、そうした点で異質なものと感じましたからであります。
 この議論の過程で、日弁連や消費者団体は意見を申してまいりました。先ほどの大村委員の御発言ですと、これらが十分配慮され、微妙に調整されたということでございますが、私どもはそう考えておりません。
 例えば、検討委員会の第四回、最後から一回目でありますが、そこでもう消費者側代表の委員の方は、この委員報告案は余りに事業者の保護に偏り過ぎていると苦言を呈しておりますし、そこから更に後退したということでございます。
 こうして見ますと、私の個人的な関心も含めてでございますが、今般、この国会で成立いたしました消費者基本法の本当に真価がここで問われる、ここで目指したものは何かということが、まず同じ国会で問われていると私は考えるところであります。
 まず最初に、私どもは事業者性善説あるいは性悪説、いずれに立つものでもございません。事業者があるいは行政組織が自主的に内部で取組をされるということはこれは必要なことでありますし、それを推奨していくという制度の必要性も考えます。また、こうした内部告発制度について、常に外部への通報が必要だと考えているものでもございません。
 しかし、これらのバランスをどのように取っていくか、これは大変慎重な審議が必要でございます。特に、今般は通報者の保護に関する民事ルールを作ろうということでございますので、決して行政の一部の規定を作ろうというわけではないわけでありますので、そうしたバランスを特に取っていただかなければならないと思います。
 先ほどの松本先生のお話の中でも、告発イメージあるいは通報イメージというお話がございましたが、こうしていずれかに切り分ける、どちらかというようなことは本制度にはなじまないものであると思います。これらをいかにバランス取っていくか、相互に補完し合う関係、これが必要である。
 と申しますのも、事業者の秘密保護という観点、それも重要でございますけれども、通報者の保護や消費者の知る権利、これにバランスを取ることによって事業者との関係が緊張関係が生まれ、事業者の適切な措置が担保されていく、これは今日の法制度の基本の考え方であろうと思います。
 本日、私の方で用意いたしましたものは、A3の用紙で、英国公益開示法と、そして国民生活審議会報告、そしてパブリックコメントに付されました内閣府からの骨子案について、また、本法案につきましての各項目を一覧表にいたしました。そして、オレンジのパンフレットは国民生活審議会の報告を整理したものでございます。
 本日は、先ほどの大村委員のお話にもありましたように、英国でいろいろ議論の末、バランスを取られたと評価されております英国公益開示法と比較いたしまして、本法案の問題点を、大きな二つの点について指摘申し上げたいと思います。
 まず、通報の対象でございますけれども、本法案は犯罪行為あるいはこれにつながる規制違反に限っております。犯罪行為に限られることになりましたのは、国民生活審議会の報告ではございません。この法律案になるところで変わったものであります。これは入口を大変狭くする、そして通報者の最初のステップを大変ハードルを高くするというものであります。一覧表をごらんいただきましたら分かりますように、英国公益開示法はこのような考え方には立っておりません。法令違反と申しますときにも、民事法違反、不法行為を含みますし、そうした法令違反に当たるかどうかを問わず、生命、身体、財産に影響を与えるものをそうした事実について含めております。
 また、それも、起こったこと、起こっていること、また起こるだろうこと、将来のことについても含めまして、それは今法案にありますように、正に生じようとしているというような切迫性を要求しているものではございませんで、イズ・ライクリー・ツーという表現でございます。正にその発生のおそれと表現しておいていただいたことで十分足りたわけであります。
 こうした、この規定ぶりは英国公益開示法の制定に大変貢献いたしましたパブリック・コンサーン・アット・ワークで働いております弁護士のガイ・ディンによりますと、国民にサムシング・ロング、何か悪いことを通報させよう、してもらいたいということを従業員に求めているというものであります。こうした市民の感覚、常識的な感覚を生かすということが今、大村委員がおっしゃられました企業の社会的責任にこたえ、また持続可能な経営に資するものであると考えるところでございます。
 また、本法案は、匿名ではなく、書面によって、あるいは氏名を明らかにしてということが随所にうかがわれる法案になっております。私も、公益通報が匿名ではなく顕名で、名前も姿も示してできるようなことは大変望ましいことだと思いますけれども、このような、そういう仕組みを作ろうというのであれば、正に犯罪行為だけを対象とするというふうにいたしますと、あなたは犯罪をしているということを通告せよということでありまして、これは大変心に負担を感じさせるものではないでしょうか。こんなことでよろしいのでしょうかということを通報させる仕組みということによって、こうした名前や姿も示して通報できるということになっていくのではないかと思います。審議会の意見、検討委員会の議論の中でも、こうした意見は私は決して少数ではなかったと、むしろ多数であったと認識をしております。
 次に、保護される通報の要件につきましてであります。とりわけ、外部通報先の要件について申し上げます。
 審議会で外部通報先の要件を議論した機会は決して十分ではありませんでした。本当に議論もなく、この中身、この法案の意味が、報告の意味がどんなものかということの議論、質問をたくさんしなければいけないと、そこはそういうものでございましたが、その答えも得られないまま最終報告に至っております。学者委員からも、やはりもう少しちゃんとしておかないとこの先どうなるか分からないという不安を持たせるものではないかということが、例えば第四回の議論、最後の段階でも出ていたというものでございました。本法案が、さきも申しましたように、包括的な民事ルールを定めるというものでございますので、とりわけそうした要素が重要である、慎重な議論が必要だと思います。
 国民生活審議会の報告におきましても、また現在は更にそれが制約されておりますけれども、外部への通報のルートというのは大変厳しいものに設定されております。例えば、その第一番目、審議会報告では(a)でございますけれども、不利益処分を受けるおそれというふうなものにつきましては先例があればということでございますが、これは例えば訴訟にでもなっているとか、紛争が公然化して顕在化しておりませんと、あったかどうかを知ることは大変難しいことであります。
 また、コンプライアンス対策のヘルプラインが設けられているということでありますと、それが機能するかどうかを問わないという仕組み、ことになりますので、それではやはり通報者にとっては不安を禁じ得ないというのが現状ではないかと思います。
 証拠隠滅につきましても、衆議院での答弁も伺いますと、例えば代表者や担当役員が関与している場合と、こう答弁がありますけれども、そのようなことを労働者、通報者が知ることはほとんど不能に近いのではないかと思います。こうした要件は事実上機能することは余り期待できない、よほどの場合でなければ機能しないというものであります。
 もう、あと二つの通報ルートがございまして、その一つが内部へ通報し、あるいは行政機関に通報し、それが相当期間内に適切な措置がなされない場合ということでございましたが、この要件が大変本法案では大きく変化をいたしまして、変質、後退をいたしました。
 まず、行政機関への通報につきましてはこの要件から外されております。これは、事業者にとりましては行政機関が適切に措置をするかどうか分からないので、そうした要件に係らしめることが不安であると、こういうことでありまして、行政機関への不信感がその背景にあるのではないかと思います。これは消費者、いや通報者側にとりましても、その後、行政機関への通報がどのようになっていくのかということを不安に思うものでございますし、ただただその後の措置をじっと待っていなければいけないという制度になるのでは、不安を禁じ得ないというものであります。
 事業者に対する通報につきましては、審議会報告では相当の期間内に措置がなされない場合となっておりましたが、本法案につきましては、最終的には二十日を経過して調査するかどうかを報告するというようなところにとどまるものとなりました。
 といたしますと、調査すると報告がありました後、その措置がいつどのようになされるのか、そしてなされなかった場合にそれではどのように通報者ができるのかということについては大変不明確なものになりますし、それは通報者にとっては知り得ないもの、通報者側に立証責任があるものでございますけれども、立証し得ないものということになってしまっているわけであります。
 これに対する、この問題につきましての公益通報者、公益開示法、英国法は、外部に通報する前に、その事業者あるいは行政機関に本質的に同じ問題を通報したことがあることということであります。これは通報者にとっては立証可能なことであります。そうしたことは、いきなり通報するということについての先ほどの大村委員からの御批判にこたえるものであります。しかし、今回の法案は、いきなり通報したことに対する対策ではなくて、内部や行政機関に通報された後、次のステップとして外部へ通報をされるという道筋を事実上封じるということにつながる仕組み、これは立証責任の分配も絡みまして、そうした仕組みになっております。
 そういう意味で、ステップ・バイ・ステップの方式ではなくて、並列的と内閣府もおっしゃっておりますけれども、これは並列的なように見えますけれども、外部通報のルートがほとんどなきに等しいものでありますので、事実上内部及び行政機関への通報ルートだけが残る。これは消費者保護基本法の議論にあります、行政が中心になって今後の消費者政策を行うという従来型のものにまた戻ってしまっていると、こう思うわけであります。もう少し消費者、市民の役割というものをそこに加えていっていただきたい。
 さらに、最後の、国民生活審議会の報告の最後の要件は、その問題、生命、身体に対する危険が急迫していると、正に急迫したものであることということを要件にしておりました。これに相当する英国公益開示法は、その問題の性質が重大であることというものであります。
 私は、こういうふうに記載していただく法律を作っていただくのであれば、そして英国公益開示法の中にはすべての事情を考慮してそうした通報が相当、保護するのが相当である場合という規定も加えております。こういうふうに、一般的に社会通念に従いまして、保護すべきものが保護されるということを法律案の中にしっかり担保されております場合は、私どもは賛成をしたいと思います。
 しかし、現状におきましては、そうしたものは一般法理にゆだねるということで従来どおりでよろしいではないかと、こう大村委員もおっしゃるわけでございますけれども、それは通報者にとりましては、こうしたことで明確化されることによりまして保護の範囲は大変狭いもの、そのほかにつきましては大変不明確でリスクの大きいものというふうにかえってなるわけでありますし、一般的なその保護要件がどのように機能するのかということを議論します前にこうした詳細な通報のルールというもの、通報のルートというものを定めてしまいますと、これにそぐわないものにつきまして保護を、裁判所としては大変使いづらい法律として登場するであろうということを懸念をしております。
 最後になりますが、こうした民事ルールを制定いたしますときは、消費者契約法におきましてもそうでありました、製造物責任法の立法でもそうでありました。やはり一般、個別に明確化することの要請は一方でございますけれども、すべてを、すべての場合を羅列することは事実上無理でありますし、どうしてもそうした中から漏れるところが出てまいります。このように、本法案のように極めて限定をいたしますと、大変漏れるところが出てまいります。そうしたものにつきまして、ちゃんと手当てをする一般条項というものを加えることがどの法律の議論でも大変議論になってまいります。
 製造物責任法ではそのような欠陥の概念規定に国会で変えていただきました。そして、消費者契約法では、審議会の中で無効規定につきまして、そうした一般条項を組み入れたものにしていただいて現在の法律になっております。そのことによって今日の役割、法律案が、そうした法律が機能しているのでありまして、もしこうした制度を設けるのでございましたら、法律の中に、通報者にとってステップ・バイ・ステップを基本とするのでもそれはよろしいのですけれども、ちゃんとした例外があり、ステップそのものも通報者にとって踏み出せるものにすること、そしてその擁護につきましても、ちゃんと法律の中で一般条項を組み入れた保護規定としていただくことが民事ルールとしての基本であろうかと思います。
 よろしくお願いいたします。
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和田ひろ子#8
○委員長(和田ひろ子君) ありがとうございました。
 次に、三木参考人にお願いいたします。三木参考人。
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三木由希子#9
○参考人(三木由希子君) 私は、NPO法人情報公開クリアリングハウスで室長を務めております三木でございます。今日は、このように意見を申し述べる機会を与えていただき、大変感謝をしております。
 まず最初に、私どもが何をしているか簡単に紹介をさせていただきます。
 私どもは、主に公的機関の情報公開を推進する活動をしているNPO法人であります。NPO法人としては一九九九年の設立でございますが、その前身は一九八〇年に情報公開法の制定を目指して活動を始めた情報公開法を求める市民運動というものでございます。発足以来、情報公開制度だけではなく、個人情報保護制度にも取り組み、最近では、組織の透明性を向上させる仕組みであり、また市民が危険や不利益を回避するために必要な情報を知る権利を保障する仕組みとして公益通報者保護制度にも関心を持ち、意見表明等を行ってまいりました。こうした立場から、公益通報者保護法案に対して意見を申し述べたいと思います。
 今日は皆様のお手元に、私どもの方で昨年の七月にイギリスで公益開示法の導入に主導的な役割を果たしましたNGOの事務局長をお招きした際のお話の内容をまとめたものをお配りしております。公益開示法につきましては、今般の法案については参照をしたというふうに言われておりますが、公益開示法と今般の法案が似て非なるものであるということはこの資料をお読みいただければよく分かるというふうに思っておりますので、是非後でお読みいただければと思っております。
 まず冒頭に、私たちの事務所にこれまで寄せられた、仕事場で不当、違法な行為が行われていて、それを何とか改善したいという相談をしてきた匿名の電話で繰り返された会話というか、やり取りを紹介したいと思います。これらの人たちは、私たちが報道等で紹介をされるたびに、わらにでもすがる思いで私どもの事務所に相談の電話をしてきていただいた方です。
 まず冒頭に、こうした相談の電話はこういう形で始まります。職場で問題があって何とかしたい、職場で自分が通報したことを知られるのはとても怖いと。もし私が通報した場合どうなるのでしょうかと。何か守ってくれる仕組みはあるのでしょうかということを大抵聞かれます。残念ながら、私はそれに対して、職場で訴えてどうなるかは職場環境次第なので何とも言えませんとお答えするしかありません。また、残念ながら、今のところ、通報したことで不利益を受けても具体的にそれを保護する仕組みというのはありませんということもお答えをします。その上で、公益通報者保護法案というものが今ありますという説明を申し上げます。
 そうすると、大抵、相談をされる方はこういうふうにお聞きになります。その法律ができると私は保護されるのでしょうかと。私はそれに対しても、大変残念なことですが、明確なお答えをすることができません。この法案というのはすべての通報を保護する仕組みではないということをまず説明を申し上げます。法律と政令で定められた、法律に定められた犯罪行為を通報した場合に保護をする仕組みですと。ですから、そちらが通報したい問題がこうした条件に当てはまるかどうかを確認してみないと何とも言えないんですということを申し上げざるを得ません。
 そうすると、大抵、相談をされた方は、そんなに確認しないと保護されるかどうか分からないんですかと。もし犯罪行為に当たるということになると、法律はどのように守ってくれるのですかというふうにお聞きになります。そうすると、私の方では、法案が通報したことで解雇や待遇等に不利益を与えることを禁止しているだけなものですから、もし何かあれば、この制度を根拠に争いやすくなるということにはなりますということをお話しせざるを得ません。
 そうしますと、大抵相談される方は、通報して保護されるかどうかもよく分からないし、具体的に守ってくれるわけではないですねと、法律ができてもとても怖くて通報ができないというふうにおっしゃいます。私は、最終的には、残念ながらやってみないと分からないんですということを申し上げざるを得ないということが何度も繰り返されております。
 こうした電話というのは、自分の利益とは関係なく、また自らの良心の下に事態を何とか改善をしたいということを、その思いで私どもの方に電話をしてくるわけであります。私は、こういう思いにこたえられない社会ということに対しては、非常に情けなくなることがございます。
 それからもう一つ、具体的に、いわゆる内部告発をしたということで不利益を受けたという方からのお話を紹介したいと思います。この方は、裁判で証言をしたために内部告発者として病院で嫌がらせを受け続けている医師であります。この医師は、金沢大学医学部附属病院で患者に無断で卵巣がん治療の比較試験が行われていたことで、ひどい副作用に苦しんだ患者の家族が国を相手取って賠償を求めた裁判で患者側の証人として証言をした方です。今回の参考人で私が意見を申し述べるということをお伝えしたところ、意見を寄せてくださいました。このケースの詳細につきましては、新聞記事をお配りしておりますので、後でごらんいただければと思います。
 このお医者様から寄せられた意見は次のようなものです。患者に無断で比較試験を行ったとしても犯罪行為ではありませんし、それを規制する法律はありません。私がかかわっている裁判では、臨床試験の際の被験者からのその旨の同意が必要かどうかが争われているものですから、法案では、私が患者さんやその家族に無断で被験者にされているという事実を知らせた途端、その行為は内部告発になってしまう、つまり外部通報になってしまうということであります。その結果、通報者はその組織からのけものにされてしまう。私の場合、私の勤務する科の不祥事について、意を決してまずは直接の上司である臨床試験の責任者の教授へ通報し、次いで他の上層部の方々へ通報したにもかかわらず、医局講座制という大きな壁のせいか、それこそ取り合ってもらえずに黙認されたことからしても、一般には、勤務先によほどの公正な機関が設置されない限り、このような勤務先への通報は、通報者にとっては無駄どころか一層つらいものとなります。組織の一員として雇用された者にとっての内部告発は、それこそ自分の一生を懸けても余りあるような非常の行為なのですということをお寄せいただきました。
 この医師の方は、具体的には、大学の勤務医にはアルバイトが認められているそうでございますが、それをするためには直属の上司の許可が必要だそうで、この許可が下りない、他の勤務医に比べて全く下りないという状況にあるそうでございます。また、学生への教育機会を制限されるというような不利益を具体的に受けているというふうに話を聞いております。
 私は、このようなことに触れるにつけて、問題を知って改善をしなければと思う人々の思いが達成される社会であってほしいというふうに思っておりますし、そうした法制度は社会インフラとして必要だと考えております。公益通報者保護法案は、本来であればそうした社会インフラとして必要な制度のはずだと思っております。しかし、残念ながら、次に述べるような理由から、現在の法案というものはそういう仕組みになっていないと考えております。
 まず一つは、この法案というのは入口が狭くて複雑で、私の目からすると迷路のようだというふうに感じておるからであります。法案は、別表、政令でした法律で定められている犯罪行為を通報対象事実としております。しかし、目の前にある問題行為が法案、政令で指定した法律で規定される犯罪行為に該当するか否かの判断を通報に当たって通報者に求める仕組みが、果たして現実的な制度なのでしょうか。人の生命や身体に直接的に被害を与えるような緊急事態が目の前にあったとしても、まず通報者はそれが指定された犯罪行為に該当するか否かを調べなければこの法案によって保護される通報か否かが分からないような仕組みが、社会が求めるような仕組みなのでしょうかということを思うわけでございます。
 公益通報者保護制度は、通報された事実が改善を要するものであればそれを改善することによって組織の自浄能力を高める、また、未然に問題や被害、損害を予防し、だれの利益でもない社会の利益を守るものであるべきだと考えております。指定された犯罪行為に限定した仕組みを導入することは、保護すべき通報は犯罪行為に関するものでよいという誤った認識を生み出す可能性があります。また、通報すること自体が何か特別であるかのような誤った印象を生み出す原因になりかねないと考えております。
 先ほどからも御紹介がございましたが、多くの企業ではヘルプラインなどが設けられております。このヘルプラインでは、犯罪行為だけではなくて、もっと幅広く問題について通報を受け付けているところが少なくないはずであります。しかし、通報対象を限定した法律ができることで、今後、企業で内部通報した場合、ヘルプラインでは幅広く受け付けている、そうすると、入口では、通報する点においては同じでございますが、出口においては、一方では現在の法案で特別の民事ルールによって保護をされる、別のものについてはそうした特別な保護がないというような形になります。これでは、入口は同じでも出口が異なるという状況を生み出すだけだというふうに考えております。
 したがって、そもそも法案の目的規定自体が法令遵守を目的とするのではなくて、法令の遵守のほか、国民の生命、身体、財産その他の利益の保護のため公益通報者を保護するということで、法令遵守ではなくて公益を保護するということをより明確に打ち出すべきであったというふうに考えております。そして、通報対象として、別表、政令で指定する法律にかかわる犯罪行為に限定をするのではなく、国民の生命、身体、財産その他の利益に関するものなど不正行為全般について広く通報対象とし、通報対象に該当するか否かで不要な混乱を招くような制約は取り除くべきだというふうに考えております。
 二つ目の問題点として、通報先の要件について意見を申し述べたいと思います。法案では内部、行政機関、外部と三つの通報先が定められております。それぞれに条件が付されております。私は、事業者が独自に取り組んでいる内部通報の受付と、それに対する対応を否定する気は全くございません。むしろ、内部での取組をしっかりしていただくというのは非常に重要だというふうに思っております。しかし、内部の取組が確実かつ実効性のあるものにするためには、内部で適切な対応ができない場合は外部へ通報されるという仕組みが不可欠であるというふうに考えております。法案は、一定の条件の下で外部へ通報することができるとしておりますが、外部へ通報する場合は非常に条件が厳しく、これは内部での通報又は行政機関への通報を適切に対処をするということのインセンティブを与えることにはならないと考えております。
 特に問題だと思う点は、法案の三条三号ニの規定であるというふうに考えております。内部に書面による通報を行ってから二十日を経過しても調査を行う旨の通知がない場合又は正当な理由がなく調査が行われない場合は外部に通報できることとされております。しかし、通報に対しては調査が行われるか否かが重要ではなく、問題が是正されるかどうかが問題であります。ですから、調査をしたか否かをそもそもの要件としていること自体が、私は本末転倒であるというふうに考えております。
 この規定につきましては、別の観点からも問題を指摘したいと思います。行政機関へ通報した場合は二十日以内に調査を行う旨の通知がなくとも、調査を行っていなくとも外部へ通報する道が閉ざされる仕組みになっております。確かに法案の十条で、行政機関は通報に対して法令に基づく措置その他適切な措置を取らなければならないという義務が課されております。しかし、この規定をもって行政機関の対応については何ら担保されていないというふうに考えております。これは、私自身の経験則上申し上げることができる点でございます。
 私どもは、情報公開制度の経験が大変長くございます。情報公開法の例を挙げて説明をしたいと思います。行政機関は情報公開請求を受けてから原則三十日以内に開示、不開示等の決定をしなければならないとなっております。また、三十日の延長、決定期間の延長というものも認められておりますし、それでもできない場合は特例というものの適用も可能でございます。この特例につきましては、期限の限定がございません。行政機関が必要と思えば裁量の範囲で延長ができるということになっております。その結果、二年近くたっても請求から決定までの、請求したものに対する決定が出ないという事態が起こっております。これは、法律で明確に期限が定められた情報公開法又は期限に関する定めがある情報公開法でもこのような事態が起こっております。
 また、情報公開法では、非公開となった場合につきましては行政不服審査法に基づく不服申立てを行うことができるとなっております。不服申立てにつきましては、第三者機関である情報公開審査会に諮問され、審査をされるという仕組みが取られてございます。請求者に対しては、不開示決定を知ってから六十日以内に申立てをしなければならないという時間の制約がございます。しかし、行政機関には、その不服申立てをいつどのように扱うかということについての時間的な制約は一切ございません。その結果、不服申立てを行ってから二年以上、何ら対応しなかったというケースが起こってございます。行政機関には、法律上何ら時間の制約がなく、それを処理する義務だけが課されているというのが行政不服審査法でございます。
 こうしたことを勘案しますと、行政機関に対して、通報に対して適切に対処をするという義務を課したとしましても、時間の制約がない以上は、そこをどのように対応するかについては裁量の範囲になってしまうというふうに考えております。こうした規定は、何ら迅速かつ適切な通報の処理を担保することにならないと考えております。
 ほかにも細かく申し上げれば様々な問題がございます。しかし、以上のことから、総じて法案は通報者にとって分かりにくくかつ使いにくい制度であり、また通報の適切な処理が必ずしも担保をされていないという、このような根本的な問題を抱えたままの法案には反対をせざるを得ないというところでございます。
 私は、公益通報者保護法案は通報者が通報しやすい仕組みであると、つまり通報したことによって初めて問題が是正をされるという仕組みでございますので、通報者の立場に立った御検討を本委員会でしていただければというふうに思っております。
 以上でございます。
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和田ひろ子#10
○委員長(和田ひろ子君) ありがとうございました。
 以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。
    ─────────────
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和田ひろ子#11
○委員長(和田ひろ子君) この際、委員の異動について御報告いたします。
 本日、松井孝治さんが委員を辞任され、その補欠として伊藤基隆さんが選任されました。
    ─────────────
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和田ひろ子#12
○委員長(和田ひろ子君) これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑のある方は順次御発言願います。
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森田次夫#13
○森田次夫君 自由民主党の森田次夫でございます。
 参考人の皆様、ただいま大変貴重な御意見をお聞かせいただきましてありがとうございました。私からは、ごく基本的な事項につきまして二、三お伺いをさせていただきたいと思います。したがいまして、ただいまの陳述いただきましたそうしたことと重複するところもあろうかと思うわけでございますけれども、私としてはもう少し詳しくお聞かせ願いたい、こういう思いからお尋ねするわけでございますので、その点よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 そこで、最初に松本参考人と、それから大村参考人、お二方にお願いを申し上げます。
 三菱自動車のリコール隠しのような正に人命にかかわるような事案は、これは論外といたしましても、我が国には昔から内部告発というのは裏切り行為だとか裏切り者だと、こういうような企業風土というのはあるわけでございまして、現在でも私は根強く存在しているんじゃないかなと、こんなにも思うわけでございます。そうした中で、最近こうした考え方も大分変わってきた、こういうことも事実でございますけれども、まだまだあるんではないかなと、こんなに思うわけでございます。そこで、この法律では保護されたといたしましても、企業内でいわゆる村八分的といいますか、そういうようなことも十分考えられるんじゃないか、こんなにも思うわけでございます。
 そこで、そこまでに至る前に通報者を保護するための工夫であるとか知恵であるとか、こういったことが極めて重要になってくる、こういうことでいろいろと今先生方からもお話しいただいたわけでございますけれども、こうした点についてもう少しお聞かせをいただければと、このように思います。よろしくどうぞお願いします。
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松本恒雄#14
○参考人(松本恒雄君) 正に今議員おっしゃったとおり、従来の日本企業内における内部告発イコール悪というイメージ、仲間に対する裏切りであるというイメージ、その単純なイメージを打破するというのが今回の法案のメッセージの一つだと思います。保護される内部告発というのも十分あるんだということを明確にしたという点、したがって企業サイドとしてはそれに対して内部で努力しなきゃならないというふうに企業経営者の意識を変えるというところが一番大きいと思います。
 ただ、それでも、法案ができても実際村八分が起こるかもしれないではないかという部分につきましては、企業内部の努力ということになるんですが、その最大の努力はやっぱり企業のトップがきちんとこの法律の精神を理解をして社内に対してトップとしてメッセージをきちんと出すということ、そしてそれを裏打ちするような社内の仕組みを作って、実際に動かしていくことによって透明な社風を作っていくというふうに努力されることだと思います。
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大村多聞#15
○参考人(大村多聞君) 実は、三菱商事は、先ほど申し上げましたように二〇〇一年に内部通報と申しますか目安箱という制度を設けたんですが、もう一九九〇年代からこういうのを設けるかどうかということを社内で検討している、そのメンバーが私でございましたが、実は私は一九九〇年代は反対していたんですね。
 というのは、私は会社の社員に対して大変信頼していて、一方、現実はいろんな問題が起こると。そういう場合にはきちんとその上司、それから法務部その他関係部局に相談すればいいだけのことで、何でこんなものが必要かと。正々堂々とするという我が社の社風に反するんじゃないかと個人的には思っていました。こんな制度を設けるというのは、よほどコンプライアンス経営が劣化した会社が考えるんであって、弊社では要らないなんという意見も内部で言ったんですね。
 ところが、それからそういう考えというのがだんだんだんだん、一つの基本ではあるけれども、一方では人間というのは弱いものであると。必ずしもそういうふうに正々堂々と問題点を指摘することができない人がいると。これもまた事実であり、これを積極的にくみ上げることが結局、経営全体、それから役員、最終的には株主代表訴訟等のリスクを背負っている役員を守るためにもなるんだと、こういうことに議論が行って、大変長い準備した結果、二〇〇一年にもう既に導入して先ほど申し上げましたように運用しているわけでございます。
 当然その導入に当たっては、内部で本来の職制を外してコンプライアンスの通報ラインに通報したことをもっていかなる差別的扱いもしないし、それから秘密は必ず守ると、通報者の名前を漏らさないとか、こういうようなことは当然守って、ルールとして決めて、そしてそれを実行しているんですけれども、その結果、それなりの相談が来まして、私も、それは全部私が受けていますけれども、先ほど申し上げましたように、九割は見解の相違だとか、やっぱり弱い人間が事実を、全体を把握しないでやっていくこととか、いろいろ競争が厳しいために上司の逆に管理が強過ぎると、そういうことに対する反発とか、そういうのがほとんどでございますが、ただし、そういう通報をきちんと聞いていると、やはりその部門の管理の在り方とか問題点が浮き彫りにされるということもあって、それが逆に経営者に対して大変有効なアドバイスにもなるというような体験をしていまして、今現時点で社内ではこういうような物の考え方というのは、私の知る限りは大手の大企業はほとんど共有されております。
 すなわち経営者に上がってくるということが、結局、経営者自身のためであり、そして企業のためであると、こういう前提がありますので、この辺のところ、内部でこういう形で吸い上げるという形になっていることは、もう先ほど申し上げましたようにこれを更にエンカレッジしてほしいなということが背景にあります。ただ、これが内部でもそういうことをしないでいきなり外部へ行くということになると、それは今御指摘のように、何で内部でもこれだけ努力しているのにいきなり行くんだと、きっと動機不純じゃないかと。こんな話にはなろうかと思います。
 以上です。
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森田次夫#16
○森田次夫君 ありがとうございます。
 それでは、もう一度大村参考人とそれから三木参考人にお願いを申し上げます。
 本法では、公益通報対象者を労働者とそれからその退職者ということでなっておるわけでございますけれども、これ労働者だけではなく役員も含めるべきだと、こういう意見もあるわけでございますけれども、この点についてどのような御見解をお持ちか、お聞かせをいただきたいと思います。
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大村多聞#17
○参考人(大村多聞君) この法律がすべての問題を解決するということではなくて、例えば役員に関しては大変重い責任が商法上ありまして、株主代表訴訟問題もあり得ると、こういうことで立場が違うということで、労働者を保護するという法制としてでき上がっていると理解していますので、それはそれで合理的だろうと。ただし、小さい企業なんかについて、役員がいわゆる労働者を兼ねていると申しますか、労働者の立場と兼務と、役員兼務しているというような立場は、これは労働者としての立場で法律が適用されるというふうに理解していますので、現法案で特に問題はないんじゃないかなという認識をしております。
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三木由希子#18
○参考人(三木由希子君) 私は、役員しか知り得ない問題というものも多くあるというふうに思っております。ですから、私は、この法案の中では、確かに労働者の保護というものを前提に法律はできているという御指摘はそのとおりであるというふうには思いますが、役員も含めた保護というものをしていかないと、本来保護すべき又は通報されるべき情報が通報されないという事態が発生するのではないかと大変危惧をしております。
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森田次夫#19
○森田次夫君 ありがとうございました。
 それでは、最後の質問になりますけれども、松本、大村、浅岡の三人の参考人の方にお願いを申し上げます。
 通報対象の事実についてでございますけれども、当初の骨子案では、生ずるおそれがある、こうしていたのを、そのおそれの有無については当事者間の事実認識の相違を招く可能性がある、そういったことを踏まえまして、正に生じようとしていると思料する場合、こういうふうにしたと聞いておるわけでございますけれども、このことに対しまして、元に戻して、生ずるおそれがあるとすべきだと、こういう意見もあるわけでございますけれども、このことにつきましてどのように考えておられるか、お聞かせをいただければと思います。
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松本恒雄#20
○参考人(松本恒雄君) 基本的には日本語の表現をどこまで広げて解釈するかというところの話に尽きると思います。
 その生ずるおそれであると、通報者が主観的に勝手に思っていることだけでもいいんではないかと、それじゃおかしいんじゃないかということで絞られたんだと思いますが、生ずるおそれがあるだけではなくて、あると信じるにつき相当の理由があるという絞りを掛けてあれば、そんな極端なケースには多分ならないというのが普通の法律家としては判断になると思います。ただ、おそれという言葉を広げていけば、非常に広くなってあいまいになるというのは確かに事実であります。
 逆に、正に生じようとしているということも、例えば先ほどの三菱自動車のケースなんかですと、ある事故があって、これであれば他の同型の車でもまた事故が起こるかもしれない、起こる可能性があるということを技術員が、その会社の技術者が判断をしたにもかかわらず、上が、トップが黙っていようというようなことで決断をして隠したとしますね。そうしますと、また起こるかもしれないわけですが、そこで正に生じようとしているというのを事故が起こる直前であるというふうに極端な解釈をすればこれは何の意味もないということになりますが、そこまで極端な、つまり事故が起こる一秒前をカメラで撮ってとか、こんな極端な解釈をされれば何の意味もないわけですが、恐らくそうはされないだろうと。したがって、どちらの表現を取っても、極端な解釈をすれば極端な非常識な結論になるという点では同じことだろうと思います。
 将来、一定の期間内に起こる蓋然性がかなり高い決断をある時点で行ったということで正に生じようとしているということを解釈されれば、当初の生ずるおそれがあるということとそんなに変わった結論にはならないというふうに考えます。
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大村多聞#21
○参考人(大村多聞君) その生じるおそれが正に客観的な事実に基づいた蓋然性の高いものということであれば結局同じことになるんですけれども、単に生じるおそれがあるということになったらもう何とでも、誹謗中傷から人をおとしめることから全部生じるおそれがあるでなってしまって、先ほど申しました我々の実感からいっても、やはり通報がなされるときには一部の真実、九割の誤認というのが現実でございます。そのときに、この生じるおそれというような表現のままでは、現場で真剣にコンプライアンス対応をしようとしている部局、経営に対しては大変問題が多いというふうに認識していますので、現在の法案は妥当かと思っています。
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浅岡美恵#22
○参考人(浅岡美恵君) 先ほど松本先生がおっしゃいましたように、元々、審議会報告におきましても、骨子におきましても、生ずるおそれがあると信じるに足る相当の理由があることという制限が付いていたわけであります。単なる思い込みがここで対象となっていたわけではございません。それをなおかつ、正に生じようとしているというふうに変えていかれましたのは、時間的切迫性ということを強調しようとされたことであります。また、言葉といたしましても、それが常識的に取られるところではないかと思います。
 そのような解釈がされる余地のあるところをわざわざなさる必要も全くないわけでございますし、そうしておいた上で適切に解釈される余地もあるのではないかと。このようなことから法律を作っていただくということは、民事ルールとしては不適切であろうと思います。
 元々、英国公益開示法におきましては、生じる可能性があることでありまして、そういう可能性が高いこととまで言えるかどうかというようなものでありまして、それで十分判断ができているものでありまして、これは是非とも元へ戻していただきたいと思います。
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森田次夫#23
○森田次夫君 終わります。
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川橋幸子#24
○川橋幸子君 民主党・新緑風会の川橋幸子と申します。本日は四人の参考人の方々、貴重な御意見をありがとうございます。
 まず初めに、もう少し補足して伺わないと分かりにくかった点を浅岡参考人にお伺いしたいと思います。
 大変盛りだくさんに豊かな御意見ちょうだいしまして、ちょっと私、消化不足のところもあるのでございます。自分の能力不足をおわびして、まず伺いたいと思いますのは、最後のところで、一定条項とおっしゃいましたでしょうか、個別具体的にきめ細かく規定するのではなくて、包括的に一定の法理条項、(「一般条項」と呼ぶ者あり)一般条項ですか、一般条項というものが本法に置かれることを非常に強く希望しておられたように感じまして、その一般条項というのはこれまでの製造物責任法やら過去の二つの法律の中ではあったはずなのに、どうしてここの法律ではそれが入らないのだろうかと、そういう御疑問を投げ掛けたように伺いましたので、その点をもう少し補足してお述べいただきたいと思います。
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浅岡美恵#25
○参考人(浅岡美恵君) 衆議院の参考人で出席されました落合参考人が、製造物責任法のときとか消費者契約法のときもこうした法律で判例水準を切り下げるという批判があったけれども、実際はそうはなっていないではないかという御指摘がありました。
 これは、私どもは、製造物責任法の最終的な立法におきましては、日本弁護士連合会も基本的に賛成の参考人意見陳述をいたしております。しかしながら、国民生活審議会で議論されておりましたときは日本弁護士連合会としてもこれでは反対であるということを言ってまいりました。と申しますのは、本法案につきましてと同じように、欠陥概念、何を欠陥とするかという考え方につきまして、予見可能性を高めるために明確な判断基準を盛り込むべきであるという基本になりまして、幾つかの判断要素を盛り込むことを主張していたわけであります。
 これに対しまして、アメリカ、ヨーロッパの法律、とりわけヨーロッパのEC指令として出されておりましたものは、その製造物が安全でないことということが欠陥なのだと、こういう基本的な理解に基づく法律を作っていくということでございました。これが正に一般条項でありまして、国民生活審議会の報告の後、与党、野党間の協議の中で、当該製造物の特性、流通に置かれた時期、通常予見される使用形態、流通に置かれた時期その他の事情を考慮して、様々な事情を考慮して、「当該製造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいう。」と、こういう規定にしたわけであります。これを私どもから見ますと、一般条項としてといいますか、広く欠陥を包摂する規定として民事ルールを作っていただいたということでございました。
 今般の法律につきましても同じ考え方を盛り込むことが必要で、単に労働基準法十八条の二の適用を妨げないというようなことでは不十分であるということであります。
 消費者契約法につきましても、契約条項の無効につきまして、事業者の責任を免責する条項、あるいは損害賠償額を一定のところを超えるものにつきましては無効とするという規定を入れることには当初から議論が固まってまいりましたけれども、そのほかに、ある無効とすべき事情というものにつきましての規定を入れるかどうかで大変議論になったわけであります。そこで、消費者に一方的に不利益な条項というもので信義則に反するものというようなものを無効とするという規定を第十条で入れていただいております。このことが今現在、裁判所で大変役に立っているというものであります。他方、勧誘行為につきましてこうした措置がなされなかったために、第四条の取消し権に関しましてはそうした措置が十分できておりませんので、契約法の今活用が限定的になっているというところでございます。
 そうした事情から、特にこの法律につきましては、通報すべき内容、通報に至った事情その他の様々な経緯を考慮して、保護されるものは保護するんだということをきちっと盛り込んでいただきたい、これは裁判所での基本的な考え方であろうかと思います。
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川橋幸子#26
○川橋幸子君 衆議院の段階からの法律的な御議論があったように私、今伺いましたけれども、こういう問題につきまして、どうも素人の私には判断付きかねることも多うございます。
 そこで、松本参考人の方にお伺いしたいと思うのでございますけれども、過去二法でそうした一般条項が設けられたことに対して、今回の法案についても、当然、審議会の中で御議論されたりあるいは答申の中で盛り込まれたりという、そういうことがあったのではないかと推測、あるのが普通ではないかと思うのでございますが、今回の法律の中に、今、浅岡参考人がおっしゃられるような一般条項が入らないということは、むしろ過去二法の実績を踏まえると不自然な感じがいたすのでございますが、私の理解は間違っておりましたでしょうか。
 今までの御議論で、この点はどのように有識者の間では御検討なさったのでしょうか。
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松本恒雄#27
○参考人(松本恒雄君) この法律の性格をどのように見るかということにも少し戻るわけですけれども、労働者の保護を、従来保護されていなかった部分に新たな保護を作るという、労働者の権利を拡張するという新規立法というふうに見るのか、そうでないのかということになります。
 私あるいは労働法学者の見解はそうではないということでありまして、元々、労働基準法において労働者の権利は、一般条項の形ではありますが、相当保護されているというのが日本であります、特に解雇に関しましては。他方で、公益通報者を保護するための特別の法律をいち早く制定しております幾つかの国、イギリス、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アメリカといった国は、いずれも英米法の国でありまして、英米法の国の労働法の原則は解雇自由という大原則に立っております。
 したがって、公益通報を理由にして解雇できないぞという法律を作るということは、今まで保護されていなかった部分に新たな保護を作るという非常に積極的な、労働者保護という意味で積極的な意義があります。それに加えて企業経営をきちんとさせるという効果もあるわけですが、日本の場合は、労働法上、解雇不自由が大原則で、最近少しそこが変わってきたというところはございますけれども、英米法に比べて解雇自由ではございません。したがって、一般条項的な労働者の保護は既に日本においては存在をしているということがあります。
 しかし、一般条項ではどちらになるか分かりにくいところがあるから、はっきりとさせられる部分ははっきりとさせよう、それによって企業経営者に対するメッセージをより明確にしようというのがこの法律の基本的な発想でありますから、一般条項がないから保護が切り下げられたとか、特定の条項に当たらない場合は保護をしないとかという性格ではなくて、当然、労働基準法の解釈上従来からされていたし、されるべきであった部分という部分は全然変わらないというふうに理解しておりますし、それを念のために明らかにする規定が加えられたということであります。そのことは審議会でも議論になりまして、答申の中にも入れられているところです。
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川橋幸子#28
○川橋幸子君 済みません、確認的に短く。
 ということは、審議会の中ではそのような議論でよいという、多数意見だったのかも分かりませんけれども、結論的にはそうなったと。審議会意見に反映して、それを反映して正確にこの法案は閣法として作られていると、このように考えるということでございますか。
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松本恒雄#29
○参考人(松本恒雄君) はい、そのとおりでございます。
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