水産委員会

1955-01-22 参議院 全82発言

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会議録情報#0
昭和三十年一月二十二日(土曜日)
   午前十時四十九分開会
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  委員の異動
十二月二十日委員森崎隆君辞任につ
き、その補欠として安部キミ子君を議
長において指名した。
十二月二十一日委員安部キミ子君辞任
につき、その補欠として森崎隆君を議
長において指名した。
十二月二十二日委員河井彌八君辞任に
つき、その補欠として野田俊作君を議
長において指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     小林 孝平君
   理事
           青山 正一君
           千田  正君
   委員
           秋山俊一郎君
           島村 軍次君
           野田 俊作君
           森崎  隆君
           東   降君
           有馬 英二君
  政府委員
   内閣総理大臣官
   房統括参事官  田上 辰雄君
   外務政務次官  床次 徳二君
   外務省アジア局
   長       中川  融君
   外務省条約局長 下田 武三君
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  本日の会議に付した事件
○水産政策に関する調査の件
 (ビキニ被爆事件に関する件)
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小林孝平#1
○委員長(小林孝平君) ただいまより水産委員会を開会いたします。
 本日はビキニ水爆被害事件に関する件を議題に供します。ビキニ被爆事件の補償に関しては、事件発生以来日米両国政府が折衝を続けて参りましたが、今月初め慰謝料として二百万ドル出すということで両国政府の間に妥結を見るに至ったと伝えられております。この際この交渉妥結に至った経緯及びその内容、更に国内措置として今後この二百万ドルの配分方法等についての政府の見解を承わりたいと存じます。本日出席の政府側の方々は水産庁岡井次長、増田生産部長、増田海洋第二課長、又内閣審議室田上参事官、外務省床次政務次官、中川アジア局長、下田条約局長、最初に外務当局からこの交渉妥結に至った経緯及びその内容等について御説明願いたいと存じます。
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床次徳二#2
○政府委員(床次徳二君) ビキニ被爆事件の交渉の経過に関しまして簡単に御報告申し上げたいと思います。昨年三月第五福龍丸事件が発生以来直ちに事件の調査概要をアメリカ側に申し送ると共に、四月とりあえず第五福蹄丸関係損害資料を、なお続いて五月アメリカ側ビキニ実験によりわがほうのこうむりました損害の資料、これを一括提示いたしました。本事件の損害に対し、アメリカ側は責任を有することを指摘し、速やかに補償を行うように交渉を行なったのであります。これに対しまして米側は補償を支払うことには原則的に異議がなかったのでありますが、法律上の責任の問題に触れることを欲せず、早く払って問題を一括解決したい希聖を有し、昨年の九月初めアメリカ側は百万ドル支払うことに応ずる用意がある旨提案して参ったのであります。併し政府といたしましては廃棄の漁獲物はその後も続出する傾向であり、魚価の下落に伴うところの損害の一部も考慮されねばならぬと考え、更に多額の支出を得ることを要望いたしました。折衝を続けました結果、ようやく昨年末二百万ドルをもって本件の解決の見通しを得るに至り、本年一月四日発表の通り次の趣旨の書簡を交換いたしまして、もって本件補償問題の円満解決を見た次第であります。即ち第一は、アメリカ合衆国政府は日本国国民の損害の補償のため、法律上の責任の問題とは関係なく、慰謝料として二百万ドル支払う。第二の点は、前記の金額の配分は日本国政府が決定する。第三は、日本国政府は前記の金額を一九五四年のマーシャル群島における原爆実験により生じた日本国及びその国民の一切の損害に対する請求の最終的解決として受諾する。かように決定いたしまして落着を見た次第でありますが、この措置に対して、いかがするかというお尋ねでございますが、この二百万ドルの配分に関しましては、今後の具体的な措置を決定する必要がありますが、これに関しましては特に内閣に関係各省からなりますところの打合会を設けまして、審議の上適正な解決をはかる考えでありますが、打合会の非常に長くなっております、ビキニ被災事件損害補償打合会、かような名前をもちまして各省の関係者を入れました会をもちまして適正な解決をはかりたい、かように今日準備している次第であります。
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小林孝平#3
○委員長(小林孝平君) ちょっと申上げますが、本件につきましては本日水産委員会でいろいろ御説明を願うにあたりまして、書面をもちまして大体外務当局から御説明を願う点を数項目御連絡申し上げておったのであります。その項目は、二百万ドルは損害額といかなる関係にある金額か、法律上の責任の問題と関係なく慰謝料として受諾した理由いかん。法律上の米国政府の補償責任の問題は今後も依然存続するものと考えられるが、今回の慰謝料受諾によりこの責任は消滅したものと解するのか、もしそうであったならばその理由いかん等、その他数項目を御連絡しておったのであります。ただいま御説明を願ったのは、これらの点に触れておらぬのでありますが、詳細御説明を願います。
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中川融#4
○政府委員(中川融君) ただいま御指摘のありました各項目につきましてこれから外務当局及び政府としての考え方を御説明いたしたいと存じます。
 経緯につきましては、ただいま政務次官の御説明の通りでございます。今回支払われました二百万ドルと日本側の受けました損害額との相関関係いかんという点でございますが、日本側の受けました損害額というものは、そのつど政府におきましてこれを調査いたしまして、その調査を完了次第アメリカ側に昨年四月当時より逐次伝達しているのでございます。その総額はこの委員会でもしばしば政府側から説明のありました通り、大体三十六億円程度になっているのでございます。これは損害の額でございますが、アメリカ政府が支払うという場合には、やはりアメリカとしてはアメリカ政府の支払うべき責任の限度というような問題、その他法律上のいろいろな解釈の問題が出て参るのであります。交渉の当初におきましてその問題が非常に論議されました結果、このアメリカ政府の責任の限度、法律上の責任の限度ということを論議しておりましたのでは、とうていこれは補償問題はらちがあかないという見通しが立ちましたので、法律上の責任の問題と離れまして、むしろこれだけの損害があったことに対してアメリカ側が実際上の問題としてこれくらい日本に金を払って政治的にとにかくこの問題を片づけるという方向によって問題を解決しようということになって参りました。その経過はこの委員会でももうすでに御説明した通りでございます。このような経緯にもとずきましてアメリカ側は先ほど政務次官から御説明のありました通り、最初は百万ドル程度でこの問題を片づけたいというような意向を表明したのでありますが、日本側としては損害額が非常に大きいというような事情から、そのような額では困るということで折衝を続けまして、その結果昨年末二百万ドルという数字が出て参ったのであります。この二百万ドルは日本側で算定いたしました実損害額というものと比べますればもとより少いのでございますが、同時にこのアメリカ政府の法律上の責任というような問題を論議いたしまして正面切っての折衝をいたしまして到達するであろうと考えられる金額よりは相当多いものである。つまりアメリカ政府といたしましても政治的な考慮を加えました結果、この金額までに到達するに至ったと、かように考えられるのでありまして、政府としてはこの程度がアメリカとの交渉によってアメリカから支払いを受け得るおそらく最大限度であろうかと考えまして、ここで妥結をはかったのでございます。これが二百万ドルと実損害額との関係の説明でございます。
 なお、法律上の責任問題とは関係なく慰謝料として受領した理由いかんという点はただいまの説明の中で尽きていると思うのであります。要するに法律問題を論議していたのでは、日本側が一応満足までは行かないにしても、ある程度我慢のできるという金額まで到達するということはとうてい困難であるという見通しの下に、法律の問題は離れまして、政治上の問題、事実上の問題として解決をはかった次第でございます。なおアメリカの補償責任の問題がどうなるか、法律上の問題がどうなるかというお尋ねでございますが、この点につきましては、日本政府といたしましては、法律上の問題を離れて、今回二百万ドルという額で本件の最終解決をはかったのでございます。従って、日本政府は法律上の責任をこれ以上アメリカ側に請求する、つまり昨年度におきますビキニ近辺における原爆実験の結果起きた損害につきまして、法律上の責任をアメリカ側にこれ以上追及するということは今後はしないことになるわけでございます。日本政府としての態度は今回の公文交換でもはっきりいたしておりますように、これを以って最終的解決をはかるということになっておるのでございます。これはこのような、いわば話し合いによる解決ということをいたしました結果として、当然さような結果になるのでありまして、内部的に申しましても、たとえばいろいろの国内問題としての損害賠償という事件がありました際に、裁判で争う法律上の問題としてではなく、話し合いで解決するという方法をとりました際は、話し合いが妥結いたしました場合には、それによって裁判を請求する権利はいわば放棄するのでありまして、日本政府といたしましては、これによって最終的解決をはかったということになっておる次第でございます。
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千田正#5
○千田正君 ただいまの政務次官並びに中川局長の御説明によるというと、日本は独立国としての対外損害補償に対する請求権をこの際放棄したという結論に到達するようでありますが、現内閣としてはアメリカに対しての請求権は、いわゆる国際法上におけるところの請求権は、この際放棄するという方針
を立てられたのでありますか。その点を明確に御答弁願いたいと思います。
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中川融#6
○政府委員(中川融君) 一九五四年度におきますビキニ水域における原爆実験におきまして生じた損害に関しての問題につきましては、アメリカ側がこれをたとえば陳謝をする、この事件は非常に残念であったという陳謝をする問題と、また今後このような問題につきましては、どう措置するかという今後の保証の問題、なお起きました損害につきましての、損害をいわば償う、補てんの問題、この三つの問題があると思うのでありますが、陳謝につきましては、これはすでに昨年四月、五月、このアメリカ大使を通じまして陳謝の意を表されておるのであります。将来の保証の点につきましても、これはすでに現在までの過程におきまして、アメリカ側から今後の実験については十分注意をするという旨の保証があるのであります。なお日本側としてはそれ以外にも、今後の実験については日本に影響を及ぼさない地点でやってもらいたい、そのほかのいろいろ希望を光先方に要請しておるのでありますが、アメリカ側としては少くとも今後十分に注意を払うという意味の、今後の保証を申し出ておるのであります。従って残ります問題は、損害補てんの問題でございますが、その損害補てんにつきましては、先ほどから申し上げました通り、でキるだけ多くの額を補てんしてもらうという方針から、一応法律上の損害賠償という形をとらずに、事実上の解決という形をとったのでありまして、従ってこれによって日本政府といたしましては、ビキニ原爆に関する善後措置問題につキましては、対アメリカ政府の関係におきましては最終的解決が実現したと、かように考えておるのでございます。今後この問題について、アメリカ側にさらに要求をするということはないのでございます。
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千田正#7
○千田正君 その点はっきりしておきたいのは、今後ともアメリカ側は太平洋の地点において原子爆弾の実験をやるということを海外に声明しております。これに対しても将来起きた損害に対してはただいまとった方針の通りやるつもりかどうかということと、これはアメリカに局限されておるようでありますが、かりにソ連において同じような問題が起きたような場合は、現在はソ連との間の国交情勢は整っておらないけれども、将来ともやはりアメリカと同じようなそういう問題が起きた場合には、そういう方針をとるつもりかどうか、これは対外的の問題、もう一つ国内的の問題は、二十数億というものの損害を受けておるということを各損害を受けた団体並びに個人からの要求が出ておりますが、憲法上の問題としての国民の財産を保障するという意味における憲法に対するところの解釈はどういうふうな考えを持っておられますか、その点をお聞きしたい。
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中川融#8
○政府委員(中川融君) 今後の問題の点でございますが、今後アメリカがさらに前年やりましたと同様の実験をやったという場合に、日本の漁船なりその他日本国民に対して被害があったという場合に、どのような解決方法をとるかという点につきましては、今回の解決方法は必ずしもその前例になる、必ず今回の解決方式と同じ方式でやるというようなことはまだ何ら確定していないのでございまして、われわれとしてもとより引続きこの前回のような事件が起らないことを希望するのでありまして、その点につきましてはいろいろの要請をアメリカ側にもしており、アメリカ側としては十分そういうことについては考慮するという態度をとっております。従って損害の起きないことを希望しておるものでありますが、かりに損害が起きた場合にどういうような解決方法をとるかということは、やはりその場合に処しまして最善の処置をとるということになることと思うのでございます。またアメリカ以外の国例えばソ連が原子爆弾の実験をいたしまして、それにより日本が被害を受けた場合に、どのような措置をとるかという点につきましても、今回やりましたようないわば事実上の解決をはかることにするか、あるいは決律問題としての解決をはかることにするか、これはやはりそのときの事情に応じまして最善の方法をとるということになろうと思うのでありまして、今からどちらの方法をとるということをここで申し上げる段階ではないと思うのでございます。なお憲法との関係につきましては私以外の政府委員から答弁いたしたいと思います。
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下田武三#9
○政府委員(下田武三君) 私国内法上の問題を答弁する地位にございませんが、ただ法律関係でございますのでお答え申し上げますが、憲法に財産権に対する侵害に対して補償するという規定がございまするが、この請求権というのはそういう意味の財産権ではございません。これは請求権というからあたかも財産権でもあるかのごとく思われますが、これはクレームと申しますものは請求し得る地位と申しまするか、そういうことでありまして、物的財産権ではまだないわけであります。でございますから直接憲法の問題とは関係しないと思います。
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千田正#10
○千田正君 これは内灘の問題のときにも問題があった、憲法の国民に対する財産権の問題だ、そうするとあれと関連した類似の問題でありますが、あなたの説明によると、われわれの観点とはだいぶん違っておる、憲法上はあくまで個人の財産権及びその他の人権を擁護されておりまして、かりに国あるいは社会の福祉のためにそれが行われた場合においては、国が代って国内の補償はすべきであるというわれわれは建前をとっておる。日本国が有利に国際上のいわゆる円満なる解決をはかるために個人の財産を犠牲にした場合においては、国が、政府がかわってその国に対して補償を与えるというのが理論の根本精神だと思う。その観点はあなたの観点とどうも観点を異にしておりますので、その点を明確にしてもらいたい。
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下田武三#11
○政府委員(下田武三君) ただいまの内灘の民有地を使用するために補償するという場合には、その所有権なり、あるいは地上権なりという物的権利があって、それを権利者に対して権利を行使し得ないような状態にするからこれを補償するというような問題でございます。
 ところが、損害が発生する場合、これは国内でもそうですし、国際社会でもそうでございますが、すべて損害が発生した場合にすぐ損害賠償請求権が物的権利として発生しないわけであります。その損害賠償請求が満足されて、そして、明確に物的権利となった上で、政府がその権利を取り上げるとか、妨げるということになりました場合には、憲法上の問題になるわけでありますが、これはまだ損害を請求する地位は有する。クレームを有するにすぎないのでありますから、その地位を国家といたしましてどういうふうに保護するかというのは、これは外交交渉の、憲法七十三条第二号に申します外交關係の処理でございまして、まだ物的権利発生の段階に至らない、その前提としての交渉の問題でございます。
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千田正#12
○千田正君 それでは外務省にお尋ねしますが、今後の処置において、国内のそうしたものがある程度補償されてあるからそれで満足であるという見解を持っておられますか。
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中川融#13
○政府委員(中川融君) 政府として前回と申しますか、一九五四年度のビキニ実験に伴う損害額は調査いたしまして、これはそのような損害があるということは政府としても認めたわけでございまするが、しかし、その損害が果して全部がアメリカ政府が支払うべきものであるかどうか、法律問題として支払うべきものであるかどうかということにつきましては、国際法上いろいろの議論があり得るのでございまして、国際法学者においていろいろの説があるのでございますが、この点につきまして、外交交渉においてアメリカ政府を納得せしめるということは、金額について納得せしめるということは、これはとうてい困難な事情にあるわけでございます。これは先方の法律解釈というものから考えましてとうてい困難であるということでございますので、この損害額は損害額としてその全部をたとえばアメリカ国法廷に訴えてみたところで、全部が補てんされるということはとうてい期待されないのでございます。つまり、法律上の問題としては、その中のある部分が要するに補てんされ得るということになろうかと思うのであります。従って、政府はそのような法律上の解決をはかるよりは、事実上の交渉によって政治上の問題としてこれを取り上げて解決をはかるほうがより多くの補償を得られるであろうということを確信いたしましてそのような措置をとったのでございます。従って、私、外務当局といたしましては、この被害を受けられた方々の利益も考えまして、こういう解決が一番最善の解決であると考えまして、このような措置をとった次第でございます。
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千田正#14
○千田正君 それでは損害の事実については外務省としてはもちろん向うに公式に通知してありますから、国内の損害については確認してあるはずでございますが、その点はいかがでございますか。
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中川融#15
○政府委員(中川融君) 国内の損害につきましてはそれぞれ担当官庁がございますので、担当官庁を通じましてこの実損害額というものを調査してもらいまして、その調査に基きましてアメリカ側に逐一これを通報いたした次第でございます。
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千田正#16
○千田正君 それでもう一、二点だけはっきり伺っておきますが、結局現政府としましては、外交の自主性をわれわれは喪失したものと認めざるを得ないのであります。これは自主性を喪失したということであるというと、まことに言葉を失したようでありまするが、言いかえれば、アメリカの原子爆弾実験に対しては日本は協力するという観点から、今度の政治的解決でやむを得なく満足した、こういう立場をとっておられるのですか。その点をはっきりしてもらいたい。
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中川融#17
○政府委員(中川融君) アメリカあるいはその他の原子爆弾の実験というものに対して、政府がどういう態度をとるかということと、すでに起きました実験についての損害の補てんをどのような方法ではかるかという問題とは、必らずしも同じでないと思うのでありまして、起きました実験についての補償は、ただいまのような方法で解決したのでございますが、原子爆弾実験というもの自体につきましての現政府の態度というものは、いまだ何ら公けにされていないのでございまして、協力、非協力というようなことはまだ態度として表明せられていないと、かように考えております。
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千田正#18
○千田正君 外務政務次官が幸い政府を代表してここにおられまするが、政府のいわゆる立場から、今の中川局長のお答えによるというと、協力するかしないかという問題は別のようなお答えでありますが、現内閣としてはアメリカのこの太平洋周辺における原子爆弾の実験、これによって起る被害等に対しては、ただいま政治的解決によったという段階でありまするが、あなたがたの政府としましては、いわゆるわれわれの政府でありますが、あなたが政府を代表してこの問題については将来とも起るであろう同じ実験に対しても、自主的な立場から考えても、いままでの外交関係から言って、日本のいわゆる請求権というものは法律的に放棄して、そうしてある程度協力する、こういう考えを持っておられるかどうか、この点を明確にして頂きたいと思います。
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床次徳二#19
○政府委員(床次徳二君) 今回の事件におきましては、いわゆる法律上の交渉によらずして、ただいま申し上げましたような外交的な折衝によりまして解決することが、事件の最善なる解決方法と存じまして、それでそういう措置をとったのでありまして、今後の問題に関しましては、先ほどもちょっと申し上げましたが、今後日本国民に対してかかる損害を与えないように、厳重な注意を申し込んでありまして、この点は双方の意見の一致を見ておるのでありまして、今後不当なる損害が日本国民に発生しないことと私ども考えておる次第であります。
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千田正#20
○千田正君 そういう実質的には今の政府は二百万ドルで話し合いがついた、それはまあ政治的解決だという御説明でありますが、しからば外交的折衝としての、かりに損害があれだけ大きいのでありますが、二百万ドル程度で話し合いがついた。しからば、外交的に日本の権益の、たとえば漁場の拡張であるとか、あるいは日米カナダ条約におけるところのある程度の条約、いわゆる日本の操業すべきラインに対するところの拡張であるとか、アメリカの国内におけるところの関税、日本の海産物の輸出、輸入に関する関税の緩和であるとか、そういう問題についての外交折衝をやっておりますかどうか。たとえば外交問題というものは、単に法律上の請求ばかりではなく、そういう損害を受けた場合において、片方においてはバランスをとるような日本の国力の伸張という面についての外交折衝、これ又政府代表の機関である外務省としてやるべきところのものである。こういう問題に関しては、単なる法律的な要求のみならず、要求が十分に達成し得なかった場合において、他の一方においては外交的な立場において何らかの日本の権益を拡張するような方策をとっているかどうか、あるいはとられたかどうか、この点についてお伺いしたいと思います。
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床次徳二#21
○政府委員(床次徳二君) ただいま御趣旨にありましたごとく、われわれといたしましても、日本の水産業がきわめて重要な産業であり、国民の生活に不可分なものでありますので、この点を確保し、伸張することにつきましては、従来からも仰せのごとく努力して参っておる次第でございます。これは各国に対しましてもそういうつもりでもって現に努力しております。
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千田正#22
○千田正君 実質的効果としてはどういうものが上っておりますか。われわれは二百万ドルでがまんするが、そのかわり日本の水産物の輸出に対する関税障壁の撤廃であるとか、あるいは漁場の拡張であるとか、そういう実質的な問題についてはどれだけ伸張しておりますか。
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中川融#23
○政府委員(中川融君) これは従来からいろいろその方面で努力しておるのでございます。実質的な結果として表われて参ったということにつきまして、私の知っておりますところではまだこれといって申し上げる程度になっておりませんけれども、しかし今回のビキニの実験という問題に直接関連いたします問題として、たとえば旧南洋群島において、いろいろ日本の水産業界に対しまして、あすこにベースを提供してもらいたい、あすこによっていろいろ薪炭の補給をし、その他あすこをベースとして使わしてもらいたいというようなことにつきましても、数次にわたり交渉を継続しております。必ずしも見込みがないというわけでもないというふうに考えております。相手のありますことで、急速に御報告できる程度の結果を見ておらないのははなはだ遺憾でございます。これは一例でございますが、このような方法で今後も努力を継続したい。なお日本のアメリカに輸出いたしますカン詰類の関税につきましても、たとえばアメリカ議会におきましては関税を非常に引き上げるという動きが前からあるわけでございますが、これもいろいろ外交交渉をいたしまして、今のところ引き上げということは阻止するに成功しておるのでございまして、このようなことを今後もさらに強力に推進したいと考えております。
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千田正#24
○千田正君 私はこの問題についてはこれ以上質問したくないのですが、決して政府のやったことに対して私は正しい解決の方法であるということは認められない。ということは、何も単に水産問題についてこれは言っておるのではありません。不幸にしてわが水産問題にこうした被害を受けたのでありますが、水産の業者なり漁民なりあるいは多くの基地の人たちが、日本の国力伸張のためにこれもやむを得ざる犠牲としてこれを甘んじて受けるとするならば、それもやむを得ないとしましても、そのかわり日本の権利が主張される、そこなわれず日本の外交の自主権というものを堂々と貫かれるということならば、あえてわれわれは何も言わない。しかしながら今の解決は、単にアメリカのお手盛りにおいてこれでがまんしろ、こういうことであって、日本の国際法上の当然要求すべき権利を放棄してがまんしろというわけには、単なる水産委員会のわれわれのみならず、全日本の国民はそれで了承はできないと思う。これに対してはいずれもう少しはっきりした立場、今後の政府のはっきりした方針を聞きたいと思いますが、時間もきょうはありませんから私の質問はこれで終りますけれども、そのかわりに私はお聞きしたいのは、先ほどから言っておるが、輸出のカン詰の障壁のいわゆる撤廃であるとか、日本の漁場の拡張であるとか、あるいは日本の水産物の買い入れに対してもっと買ってもらうとか、何らか外交折衝においてマイナスの点を補充して行くのでなかったならば、単なる犠牲に私は終ると思う。本当に日本のいわゆる独立の外交自主権を持っておるならば、もう少しその面において働いていただきたい、これを注文いたしまして、ビキニ問題については一応私の質胴を終ります。
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床次徳二#25
○政府委員(床次徳二君) ただいまのいろいろ将来に対する御希望につきましてはよく考究いたしたいと思いますが、ただ今回の折衝は外交の自主性を失っておるではないかという点につきましては、私は見解の相違だと思いますが、私どもは過去の折衝の経過にかんがみまして、今回の結果につきましては、これは最善を尽し得たのではないかと、過去のいろいろ経過を見て参りまして、確かに努力した結果であると考えておるのでありまして、この点は国民に誤解を与えたくないと思っております。十分外交の自主性につきましては、御意見もありますので、われわれその立場に立って努力して参ったのでありますが、今後におきましても御意見の点等に対しまして十分考えながらさらに一そう水産業の発達のために努力いたしたいと思っております。
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青山正一#26
○青山正一君 議事進行について……、根本さんを呼んで下さい。
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小林孝平#27
○委員長(小林孝平君) 根本官房長官は、請求しましたけれども、本日はこういう情勢で非常に忙しいからというので、内閣審議室の田上参事官が出席しております。それからこの配分の問題につきましては、一応外務省当局とのいろいろの質疑応答の後行いたいと思います。
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森崎隆#28
○森崎隆君 今千田委員が質問されたのを要約すると、結局この問題では、損害賠償請求権というものはいろいろとやかく言われましたが、結果的には放棄したことになるのですね、その点はっきりしてもらいたい。
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中川融#29
○政府委員(中川融君) 放棄したと申しますか、損害賠償請求権が含まったものを要するに政治的に要求いたしまして、向うも損害賠償請求権で支払うべきものをもさらに含めました金額を政治上の話合の結果としてこちらへよこしたということになるのであります。放棄したと申しますか、要するに含まれて解決したと、かように言うほうがより適切ではないかと思いますが、要するに損害賠償請求を今後日本はする考えはないわけでございます。
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