運輸委員会

1957-04-16 衆議院 全102発言

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会議録情報#0
昭和三十二年四月十六日(火曜日)
   午前十時四十五分開議
 出席委員
   委員長 淵上房太郎君
   理事 松山 義雄君 理事 山本 友一君
   理事 井岡 大治君 理事 松尾トシ子君
      伊藤 郷一君    生田 宏一君
      永山 忠則君    濱野 清吾君
      原 健三郎君    眞鍋 儀十君
      井谷 正吉君    小山  亮君
      中居英太郎君    正木  清君
      松原喜之次君    山口丈太郎君
 出席国務大臣
        法 務 大 臣 中村 梅吉君
        運 輸 大 臣 宮澤 胤勇君
 出席政府委員
        検     事
        (刑事局長)  井本 臺吉君
        運 輸 技 官
        (船舶局長)  山下 正雄君
 委員外の出席者
        運輸事務官
        (海運局海運調
        整部長)    辻  章男君
        運 輸 技 官
        (船舶局主席船
        舶検査官)   藤野  淳君
        海上保安監
        (海上保安庁警
        備救難部長)  砂本 周一君
        専  門  員 志鎌 一之君
    —————————————
四月十二日
 委員森本靖君辞任につき、その補欠として武藤
 運十郎君が議長の指名で委員に選任された。
同月十六日
 委員武藤運十郎君辞任につき、その補欠として
 井谷正吉君が議長の指名で委員に選任された。
四月十二日
 モーターボート競走法を廃止する法律案(井岡
 大治君外十名提出、衆法第二四号)
の審査を本委員会に付託された。
    —————————————
本日の会議に付した案件
 第五北川丸沈没事件に関する件
    —————————————
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淵上房太郎#1
○淵上委員長 ただいまより運輸委員会を開きます。
 第五北川丸の沈没事件について調査を進めます。本件につきましては去る十三日及び昨十五日の二回にわたって運輸委員打合会を開きまして事故の状況、対策及び保険関係等につきまして政府より実情を聴取し、委員より意見を述べた次第でありますが、報道によりますと、昨日第五北川丸は引き揚げられたとのことでありますので、その後の状況を当局より聴取いたしますとともに、この事件に対する政府当局の意見及びこのような事故を再び起すことのないような十分なる対策等を運輸大臣より聴取いたします。なおこの打合会において委員各位より出されましたこのような船舶の定員の問題、危険な岩礁に対する標識の増設、海上保安庁員の配置及びこのような事故に対する保険制度の問題等につきましても、あわせて大臣のお考えをお述べいただきたいと存じます。救難部長。
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砂本周一#2
○砂本説明員 今まで御報告いたしましたその後の状況並びにその経過につきまして御説明いたしたいと存じます。
 ちょっと今まで申し上げましたことに御訂正申し上げたい点は、船に乗っておりました全部の人員について変更がございます。今まで総計二百二十二名と申し上げておりましたが、現在まで判明した数字によると二百三十七名でございます。その内訳は十六日の午前八時三十分現在で申し上げますと、生存者百二十五名、死体七十三体、行方不明者三十九名でございまして、合計二百三十七名でございます。これはああいった非常な場合でございますから、いろいろダブつたのがございますし、当初こちらで発表いたしました二百二十二名の根拠と申しますのは、切符を販売いたしました数字を根拠にいたしたのでございますが、その後いろいろ調査の結果、関係機関との資料の持ち寄りによって検討いたしました結果が、現在のところ二百三十七名になったのでございます。以上訂正いたします。
 それから現場におけるサルベージ関係でございますが、呉の深田サルベージ会社が起重機船一隻、作業母船一隻、潜水船七隻、潜水夫七名、作業員五十名をもって十四日十一時より作業を開始いたしました。十六時五分寅丸礁の二百八十度九十メートル、水深三十七メートルの地点で船首を南方に向け、右舷に九十度傾斜している第五北川丸の船体を確認するとともに、死体一体を揚収して、十五日は四隻をもって十三時より作業を開始し、一隻は船体引き揚げ作業、三隻は死体揚収作業に当り、二十二時船内から死体十四体を揚収しております。十六日零時に、夜中でございますが、船体を寅丸礁南方九百メートルの地点に引き揚げ、座礁せしめるとともに排水し、本日の午前四時十五分死体二十四体を収容した次第でございます。以上が現地における状況でございます。
 なおたびたび御報告いたしておりますように、海上保安庁の巡視船は総計十八隻、それからヘリコプター一機、現地において沈没地点を中心にいろいろ死体その他の移動も考えまして、適切な調査範囲を決定し、六管本部長みずから現地で指揮をとっておりますので、今後も十分注意いたしまして、なるべく早く死体その他の収容に努めたい、かように考えております。
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宮澤胤勇#3
○宮澤国務大臣 このたびの第五北川丸の事件につきましては、遭難者の方々またその御家族その他に対してまことにお気の毒にたえないところでありまして、この事件が社会的に見ても、また事件そのものから見ましても、かくのごときことが生じまするに至る責任はもとより、その他諸般の事情からいたしましても、今後再びかくのごときことが起らないよう、いろいろな手配をしなければならないと思いますし、また善後処置につきましてもいろいろ間然するところのないような処置をしなければならないと思うのであります。当委員会における打合会たおきましても、すでに定員の問題あるいは保険の問題その他警備の問題等につきましても、それぞれ御意見があったのでありまして、もとよりそれらは重要な問題でありますけれども、このたびのこのできごとに対する実情を見ますと、何としても予想外の非常に多数の定員外の人を乗せたということ、またそれをやむを得ず乗せたといたしましても、そのような場合に対する船主側その他乗組員の注意をもう少し十分にしてもらいたかったというようなことを深く感じておるようなわけでありまして、政府といたしましては、春の旅行シーズンに当っては、それぞれ間然するところのないような注意、手配は一応いたしておったのでありますが、その間においてことにこの航路等につきましては、海上保安庁の巡視船がこれを特に注意して歩いた。追っかけて調べて注意するというようなことまでしておったのですけれども、ちょうど巡視船が行ったときにはこの船が出たあとであったというような事柄から、それも直接に注意ができなかった。この春以来一般的の船主に対する警告、ラジオその他を通じまして、あらゆる方法をもってこういう事件の起らないように処置はいたしておりまするけれども、それが行き届かない。しかもこのように多数乗り込んだときに、たまたま十六才の少年がそのかじをとっておったというようなことで、それから起ったことでありまして、この難にあわれた関係各位に対しても、私ども衷心からお気の毒にたえないのでありまするが、しかし今後再びこのようなことの起らないように万全の処置をとりたいと、それぞれ手配と立案とをいたしておるようなわけでございます。
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淵上房太郎#4
○淵上委員長 小山亮君。
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小山亮#5
○小山(亮)委員 ただいまの大臣のお言葉で、当局の方の相当これに対して今後の万全をはかりたいという御意思はわかります。しかし私どもが非常に残念に思いますのは、毎年の行楽季になりますと、必ず遭難、転覆あるいは墜落等の事故が起る。そうしてそれも相当おびただしい数字に上る人命の殺傷がある。まことにこれは私は遺憾なことに思います。ことに運輸大臣の監督下における海上の遭難は、すでに洞爺丸事件から紫雲丸事件になり、相模湖の事件があり、また今回の事件がある。このように相次いでいろいろな事件が起っている。何とかしてかかる不幸なできごとを根絶させたい、こうわれわれは思うのであります。当局においてもその点についてとくと留意を願いたい。すでに私は昨日海運局長にも意見を申し述べておきましたが、現在の規定である定員制を厳守すると申しましても、定員制を守らなかった場合には、船舶安全法によって船主が処罰される。その処罰が一万円をこえざる罰金であるというようなきわめて微温的なものなのです。それも大正何年かにできた法律でありますので、現状には即してない。こういうような点も考慮されて、急速に定員を順守しなければならぬというような実際に即した定員制を御制定になる必要がありはしないか。またあらゆる学識経験者を寄せ集めた審議会を作って、審議の結果やるというふうななまぬるい、今後何年かかってもかまわぬといういわゆるお役人のおやりになるような仕事でなしに、こういう事件が起きましたときには、急速にそれに対応するような態勢をとって、直ちに臨時の処置によってもある程度まであなた方の方で考慮して、実際におびただしく過剰に積載するケースがありますから、直ちにこれに対して注意を与え、あるいはある程度制限を加えるということが必要だと思う。そうでなく来年はやる、再来年はやるということだと、その間は、今まで通り七十七名の定員に対して、ただいま御報告を伺いますと二百三十七名、実におびただしい過剰人員を乗せておる、こういうことが平然と行われまして、危険この上もないと思う。これに対して何とか臨時の処置を早急に講ずる方法はございませんか。それを伺いたい。
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辻章男#6
○辻説明員 ただいま小山先生の御意見まことにごもっともでございますので、私どもといたしましても定員検討の問題、また定員の違反に対する罰則強化の問題等について、早急に立案することにいたしたいと思います。
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小山亮#7
○小山(亮)委員 もう一つ伺いたいのですが、実はこの事件が起きてから、十五日の新聞でありますが、当時山口市に出張しておられた中村法務大臣が、この事件に関係して意見を発表しておられる。これは内閣を代表しての意見だとは考えません。しかしその中に、「第五北川丸事件の原因は定員超過にあると思うが、客船の定員に関する制限について、将来何らかの処置を政府全体として考えるべきだ、今度の場合は会社が無力だから、補償など政府が責任を負わねばなるまい」ということが書いてある。これはどういう意味でこういう発言をされたか私は知りません。しかしながら担当の大臣でない大臣ですら、これだけの考えをすぐ持たれるのです。しからば直接担当に当っておるところの大臣ならば、さらにそれ以上に深刻にこういう問題をお考えになっておいでになるのだと思いますが、補償等に関するところの大臣の御意見はどうですか伺いたい。
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宮澤胤勇#8
○宮澤国務大臣 ただいま御質問の通り、この事件が起きます当初から会社の実力その他から見まして、なかなか補償の問題は——遭難をせられた方に対して補償をもって足れりとはもちろん考えないのでありますけれども、結局遺族の方に補償でも行き届いたならばよかろうということはむろん私どもも考えまして、その場合にどういう方法でということはいろいろ研究しておりますが、第一段階として保険の問題がありますので、保険の成り行きを見まして、その後における政府としてとり得る処置の範囲については順次研究していきたい、かように考えておる次第であります。
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小山亮#9
○小山(亮)委員 担当の運輸大臣がかような微温的なお話で私は非常に意外に思う。御承知のように乗客に対するところの保険は、本船に関する場合は定員七十七名に対して一人当り二十五万円の保険を四十九名だけつけておるのです。従ってこういう事件に対してたとえば保険会社が無条件でその保険の責任を負って、そしてこれに対するところの補償をしましても、四十九名の人に対して一人当り二十五万円、そうしますと二百三十七名の大ぜいの中で、死んだ人たちその他を入れまして現在百十一名ですか、その百十一名に対してこれではあまり少な過ぎて、私はかようなことで政府がその結果を見てやるというふうなことは、不親切千万じゃないかと思う。ことに事件の性質としまして、これは海難審判の決定を見まして、その責任が船長にあるかどうかというはっきりした最終的な判定がなければ、保険会社は支出しないのです。そうしますとその間少くとも一年ないし一年半というものは、遭難者は何の補償も受けないのです。こういう点に対して、これを見てからというふうなお話であったのでは、私どもは納得するわけにはいかない。もっと具体的なお話を伺いたい。
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宮澤胤勇#10
○宮澤国務大臣 これにつきましては御承知の通り洞爺丸もしくは紫雲丸のような政府もしくは国鉄の所有しておるものの事変、または相模湖の事変等とがありまして政府としては全体に対してどういう処置をとるかということは先例もあり、今後のこともあり、これはやはり慎重に考えさしていただかなければ、速急にお答えを申し上げることは困難だと思います。
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小山亮#11
○小山(亮)委員 私は相模湖のような事件がありましたから、政府は直ちに海上における遭難者に対する保険ということを考えなければならぬはずだと思う。今日再びこういう事件が起き上ってきて、今さら論議するということがすでにおかしいくらいだ。あなたは今洞爺丸の事件がある、紫雲丸の事件がある、相模湖の事件があるとおっしゃったが、なるほど洞爺丸、紫雲丸事件は相手が国鉄でありますから、あるいは九十万円あるいは八十五、六万円で話がついております。しかし相模湖の事件はどうですか。二十二名の遭難者に対して総体でたった五万円じゃないですか。一人当り二千円ないし三千円です。そういうものがあるのに、あなた方はごらんになってそれと見合わしてこういうことをやろうとおっしゃるが、それは話がむちゃじゃないですか。私はこういう事件に対しては船主が全力を尽して補償するのが当然だと思うのです。当りまえです。またそういうことができると考えておればこそ、政府はこれに対して認可を与えられたのでしょう。人の品物を預かってなくしただけでも、それに対する損害賠償をするのは当然です。大切な人の命を預かって、そうして料金を取ってそれを商売にしておる。そうすればその遭難者に対してはそういうことをするくらいの覚悟がなければ、用意がなければできないわけじゃないのですか。これに対して責任をとるのは当然ですよ。保険だけにまかせて知らぬ顔をする、その保険も当然にかけなければならぬ定員に対するだけの保険をかけていないじゃないですか。七十七名の、定員に対しては七十七名に対する保険をかけなければならぬでしょう。それを四十九名かけておる。その保険だってそうですよ。一人当り五十万円と二十五万円と二種類がある。そのうちの安い方の二十五万円をかけて、しかも七十七名の定員に対して四十九名かけておる。ほんの言いわけにかけておる。そういうような保険を当てにしてその保険の決定を待ってやるということは、あまりに当局としては誠意がなさ過ぎはしませんか。もう少し何かあなた方のお考えがありはしませんか伺いたい。
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辻章男#12
○辻説明員 先ほど大臣から御答弁がございましたが、私から補足して申し上げます。ちょっと先に御了承願いたいのでございますが、私ども打合会の席上で少し間違ったことを申し上げて、小山先生の誤解を招いたのは私どもの責任でございますが、その点二青弁明させていただきたいと思います。
 ただいまの保険のかけ方の問題でございますが、確かに第五北川丸は四十九名保険をかけておるのでございますが、これは定期船協会と保険会社と団一体的に保険契約を締結しておりまして、実は第五北川丸が三時間以上の航路に就航した場合の定員が四十九名でございまして、三時間以内の場合が七十七名なのでございます。四十九名の保険をかけますと、大体百七十名程度の保険金が、精求する場合にはもらえるということに相なっております。百数十名といいますと実は定員をオーバーするのでございますが、これは臨時定員をとるとか、あるいは学童あたりにつきましては二人で一人分に計算するとかいうような算定のことがございまして、優に定員はカバーするだけの保険契約はいたしておるわけでございます。ただ打合会で申し上げましたように、この第五北川丸事件におきましては、定員オーバーの問題がございますし、また乗組員に重過失があれば、保険金は支払わないというような条項がございますので、今保険金がそっくり第五北川丸の船主に入りますかどうかという点につきましては、私ども自信がないのでございますが、その点一言弁明させていただきます。
 それからただいま小山先生から、保険がどうかわからないうちは、補償の問題がどうなるかわからないというのはけしからぬじゃないかという御質問でございますが、私どももちろん今政府から直接補償するというようなことは考えられぬと思いますが、会社に対しましては、この会社の不行き届きの点から申しまして、行政指導によりましてできるだけ遺族の方々に御満足のいくような補償の道を講ずるように、全力を上げて行政指導をいたしたいと思います。ただ保険金が入るか入らぬかによりまして会社自体の金繰りの問題等につきまして、だいぶ差が出て参りますので、そういう意味におきまして先ほど大臣は保険の問題の様子も見たいとおっしゃったのである、かように考える次第でございます。
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小山亮#13
○小山(亮)委員 この保険の問題は、ただいまあなたのお話によりますと、今回の場合には百七十名の保険金が取れる、こういうふうにおっしゃいました。これだけ保険金が取れれば、あとの話は非常に楽になると思います。しかしあなたのおっしゃるただし書きが非常に気に食わないのです。保険会社は、契約によれば重大なる過失のあった場合には、この保険金をそのままスムーズに払うか払わないかということはその限りでないということを言われた。それに対してあなたは、船員が重大なる過失のあった場合ということをおっしゃった。しかしそれは違うのです。船員の過失のあった場合には、必ず保険会社がこれをカバーしなければならぬのです。船員、船長の過失はすなわち船主の過失なんです。商法によって船長は明らかに船主の代理人なんですから、その船長の過失の場合には、必ず保険会社が保険金をカバーしなければならないのです。ただしこれは重大なる過失という場合は、意味はまた違う。ある場合には、保険金を取ろうという目的のために故意に船を危険の状態に持っていくという場合があり得るのです。事実としてそういう場合があるのです。そういう場合には、この保険金に対する賠償の責に任じないということはあります。しかしほんとうに善意をもって船長が船の操縦をやっておった場合に起きた遭難事件、過失に対して、当然保険会社がその損害を填補すべきことは当りまえのことなんです。これは少しも疑う余地がない。この本件の場合を考えてみまして、北川丸の船長はたまたま切符を切るために六分間かじを離れたということを私は聞いておる。六分間十六才の若い船員にかじをとらしたということは聞いております。しかしながらそれは故意に船を危険なる状態に導くために、かじを離れたものだとは私は考えない。必ずそれはやはり船の安全ということを考えながら、大丈夫だと思ったその油断が、ついにこういう事件を引き起したのであって、これは過失ではあるけれども、決して故意に船を危険に導こうとする行為ではない。従って保険会社がこれに対して理由をつけて保険金を支払わないという態度に出ることは、許しがたいことであると私は思うのです。この点に対して見解を明らかにしていただきたい。
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辻章男#14
○辻説明員 私先ほど申し上げた点につきまして言葉が足りなかったと思うのでありますが、第五北川丸のかけております保険には、故意または重大なる過失の場合には、填補の責に任じないという約款があるのでございます。これは法律上過失につきまして、業務上の問題といたしまして軽過失と重過失というふうに分けております。一体この本事件の船長その他の措置が過失があったかなかったか、かりに過失のあった場合に、それが軽過失に相当するものであるか、重過失に相当するものであるかという点によりまして、その約款の運用が違ってくると思います。でありますから、私ども小山先生のお言葉を返すようでございますが、故意でなければ必ず保険会社が填補の責に任ずるというふうには解釈できないのではないかというふうに考えておる次第でございます。
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小山亮#15
○小山(亮)委員 これは実に重大な問題だと私は思います。いわゆるあなた方の言われる重過失と軽過失という問題、海上における船員の重過失とは一体どういう場合をいうのですか。また軽過失とはどういう場合ですか。またそういうことに対する前例がありますか。あったらそれを説明していただきたい。
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辻章男#16
○辻説明員 ただいま例を思い浮べてはおりませんのですが、よく調べまして御報告申し上げたいと思います。
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小山亮#17
○小山(亮)委員 これは監督すべき責任の立場にあるところのあなた方が、この契約をする場合に重過失とは何であるか、軽過失とはどういう範囲であるかということを、大体御承知になっておるからお許しになったでしょう。そうでなくて、ただ何でもなしに、そういう契約をしたからそれでおれの方は見て見ぬ振りをしているということでは私はないと思う。定期船の問題はやはり海運局の監督下の問題なんですから、そういう問題はことに重大な問題なんですから、ことにこれは議会でもすでに問題になったことがあるのですから、この問題の重大なる過失とは何ですか。どういう場合をさして言うのですか。それを説明していただきたい。
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辻章男#18
○辻説明員 重大なる過失がこの場合にどういう場合であるかということにつきましては、私今ここで申し上げる自信がないのでございます。保険の契約につきましては、私ども定期船の方は一般に監督いたしておりますが、保険の業に関しましては、私どもの監督ではないのでございまして、そういう契約を保険会社と定期船会社が結ぶという点につきましては、非常に望ましいことだとは考えておりますが、実はそこまで検討が及ばなかった点はあるいは不行き届きであったかもしれませんが、そういう事情であります。
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小山亮#19
○小山(亮)委員 これはなるほど保険の問題は大蔵省の監督ではありましょうけれども、技術的に重大なる過失というのは何をさすのか、あるいは軽過失というのは何をさすのかということを、技術的に判断をなさるのはあなた方以外にはないのです。つまり運輸省以外にはない。そうしますと運輸省の技術関係の方がおいでになるでしょうからどなたでもよいのです。特に海上における船員の重過失と軽過失というのはどういう場合を言うのか説明していただきたい。
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辻章男#20
○辻説明員 お言葉を返すようでございますが、もしある保険の問題に関しまして、軽過失であるか、重過失であるかということが問題になれば、やはり裁判の問題になるのではないかと思うのでございます。
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小山亮#21
○小山(亮)委員 裁判というのは何ですか。海事技術審判のことを言われるのですか。普通の裁判のことを言われるのですか。
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辻章男#22
○辻説明員 民事裁判の意味でございます。
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小山亮#23
○小山(亮)委員 船員の重大なる過失とか、重過失とか軽過失ということは、これは海上におけるところの審判、海技審判でこれをきめるのではないですか。そうしなければわからぬでしょう。私はそう思うがどうですか。
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辻章男#24
○辻説明員 私どもは船員法の関係につきまして、海難審判所というところが判定いたしますが、これは裁判を受ける権利を奪うものではないのでございまして、これが民事上の重大な権利関係になりまして、裁判上の問題になりますればやはり裁判所でそういう認定があるものと考えております。
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小山亮#25
○小山(亮)委員 普通の裁判は罪が重いか軽いかということをきめるのでしょうけれども、技術上の重大なる過失であったかなかったかということは、海技裁判でなければわからないでしょう。だから海技裁判を先行しなければならぬ、普通裁判に先行して海技審判を先にやらなければならぬ、それがためにそういう問題が起っておる。もし普通裁判で一切が決せられるものなら、技術審判を先行する必要はないのです。技術審判を先行しなければ、ここに重大なる判断の誤まりがあるからいけないということで、技術審判を先にするということになっているのですよ。従って私は船員としての重大なる過失である、あるいは軽微なる過失であるということを決定するのは、これは海技裁判以外にはないと私は思うのです。私の言うことが違わないと思うのですが、どうですか。
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辻章男#26
○辻説明員 私は小山先生のおっしゃるようには考えておりません。船舶職員の過失があったかどうかにつきましては、慣例といたしまして海難審判が先行しております。しかしそのことが非常に刑法上あるいは民事上の重大問題になりまして、個人の権利義務なり、あるいは一般の権利義務に重大なる作用を及ぼす場合には、裁判所が海難審判と違った判定をすることがあり得るという制度のように考えております。
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小山亮#27
○小山(亮)委員 これは重大なる問題で、もしあなたがそういうことをおっしゃれば、今までの海員組合から、あるいは全海員団体から主張していることが全部くつがえされるわけなんです。もうすでに御承知のように大正十二年からこういうことが大きな問題になっております。昭和十二年三月十五日に時の司法大臣塩野さんに全海員団体から陳情した事件があります。これは法の改正に対して船員が二重の刑罰を受けなければならないという問題に対して全海員が奮起しましてそして大臣に要請しまして、大臣の処置によって海事技術審判を先行して、それの判定によって司法裁判をやるということを大臣が保証されたのです。これはもうあなた方御承知の事件でありますが、一応読んでみます。「船員ハ其職務二関スル取締二就テハ総テ其特別法タル船員法ニヨリテ規律セラレ、従テ其ノ業務上ノ過失行為二関シテモ同第七十三条ニヨリ船員が著シク其職務ヲ怠リテ一定結果ヲ惹起シタル場合、即チ其過失タルコト明確一点ノ疑無キトキニ限リ刑事訴追ヲ行フコトト相成居候処、明治四十一年刑法改正以来其業務上過失ヲ処罰スル新規定ニヨリ、過失ノ軽重ヲ問ハズ訴追セラルルコトト相成、船員ハ別ニ海員審判ノ制度ニヨリテ行政上ノ懲罰ヲ受クルモノナルヲ以テ、結局二重処罰ヲ受クルコトトナリ、船員一般二著シキ衝激ト恐慌ヲ来シ候、元来船員ハ海難ニヨリ自ラ生命ノ危険二曝ラサルルモノナルヲ以テ、日夜最善ヲ場シテ事故ノナカラムコトヲ祈願シツツアルモノニシテ、如斯生命ニ対スル脅威ヲ以テ最高絶対ノ取締ヲ受ケツツアルモノニ対シ、刑罰ヲ以テ臨ムモ何等注意ヲ深カラシムル効果無キモノニシテ、一面如斯ハ船員ニ対シ幾多不当苛重ノ結果ヲ齋ラシ、海運ノ能率維持上二於テモ憂慮スベキ影響少ナカラズト信ゼラレ、即チ百弊アリテ一益ナキモノナルヲ以テ、適当ノ方法ニヨリ速カニ船員ニ対シテハ其特別法タル船員法第七十三条ヲ刑法業務上過失処罰規定二優先シテ適用スルノ根本方針ヲ確立セラレムコトヲ切望シテ、当協会ハ既ニ大正三年以来屡々帝国議会並ニ政府当局ニ請願乃至陳情ヲ重ネ来り、就中昭和十年五月二十八日日本船主協会二於テハ本問題が独り船員ノ問題タルニ止マラズ、船舶所有者、海運業者ニ於テモ均シク利害ヲ共ニスル重要案件タリトシ、当協会ト連名ヲ以テ当局二陳情スルニ至リタル次第二候し」まだあとがたくさんありますが、これは省略しますけれども、これが要するに海上における技術上の過失であるか、あるいは過失でなかったかということは、陸上の司法裁判においては判定することができない。従ってどうしても技術審判を先行しなければならぬということになっている。従って保険会社が重大なる過失であるか、あるいは軽微なる過失であるかということを判定するには、やはり海上の審判を待たなければわからないのです。それを待たないで、司法裁判だけであなたがわかるとおっしゃるのは、これは重大な問題だ。従来までのわれわれの主張を全部くつがえすものであってしかもそれが運輸省における海運局の、所管しておられる最高首脳の方がそういう認識をもってこれから海運行政をおやりになるということになれば、これは非常に重大な問題だと思う。私は重ねて御所見を伺いたいと思います。
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宮澤胤勇#28
○宮澤国務大臣 私参議院に参りますから今の問題についてちょっとお答えをいたします。今の法律上の相違点については私はよくわかりませんが、ただ今般の保険の問題については、この程度のことで保険は払わないでいいということになれば、保険の価値はないようにわれわれも思いますので、今小山委員の言われるような趣旨において私はこの問題を取り扱われるべきものだ、こう考えておりますので、その御趣旨によって十分行政的の指導、またその他のことをやっていきたいと考えております。
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永山忠則#29
○永山委員 ちょっと関連して申し上げたいのでありますが、現地の方の声は、どうも当局が定員過剰だというような、いかにも当局には何らその責任がないということをカバーするような宣伝が強過ぎる。実際上この定員という問題は、普通こういうような定員でやっておるのであって、ことに保険定員も百七十六名になっておるような状態であるから、ほんとうのこの原因はどこにあるかといえば、暗礁の保安装置ができてなかった、ここが重大なる原因であるということを、現地はもうほんとうに強く言うてきておるのであります。当局がただ警告をしたというようなことで、万全の措置をしたというふうに逃げているけれども、そうではないのである。やるべき一番大切な暗礁の保安装置ができてなかったというところにあるのだというふうに言っておるのでありますからして、これらの点から見ましても、私はどうしても重過失というようには考えられないのでありますから、ただいま大臣のおっしゃいましたように、保険会社に向ってぜひ一つ善処するように、強く要望を当局の方からでもやっていたかきたいということを、この場合に、大臣あちらへ行かれるとすれば申し上げておきたいのであります。
 これとやはり関連しまして、自動車の損害賠償保険はもう運輸省はおやりになっておるのであります。これは無過失損害賠償保険をかけておるのであります。これをなぜ船にやらないかということを、強くわれわれ委員会は要望いたしたのであります。でございますから、この場合に共済組合制度を確立して、そうして強制加入による無過失損害賠償、しかもそれは社会保障性を持っておるものでございますから、政府がその事務費を出して補助して強制加入の無過失損害賠償の線に、自動車さえもおやりになっておるのでありますから、勇敢にお取り組みになるというその決意を承わりたいのであります。
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