予算委員会

1959-03-27 衆議院 全289発言

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会議録情報#0
昭和三十四年三月二十七日(金曜日)
    午前十時三十九分開議
 出席委員
   委員長 楢橋  渡君
   理事 植木庚子郎君 理事 小川 半次君
   理事 重政 誠之君 理事 西村 直己君
   理事 野田 卯一君 理事 井手 以誠君
   理事 小平  忠君 理事 田中織之進君
      井出一太郎君    池田正之輔君
      内田 常雄君    小澤佐重喜君
      大平 正芳君    岡部 得三君
      岡本  茂君    川崎 秀二君
      上林山榮吉君    北澤 直吉君
      久野 忠治君    佐々木盛雄君
      坂田 英一君    篠田 弘作君
      周東 英雄君    田中伊三次君
      綱島 正興君    中井 一夫君
      中曽根康弘君    船田  中君
      古井 喜實君    保利  茂君
      水田三喜男君    森   清君
      八木 一郎君    山口六郎次君
      山崎  巖君    淺沼稻次郎君
      淡谷 悠藏君    猪俣 浩三君
      石村 英雄君    今澄  勇君
      大貫 大八君    岡  良一君
      岡田 春夫君    加藤 勘十君
      北山 愛郎君    黒田 寿男君
      河野  密君    小松  幹君
      鈴木  一君    楯 兼次郎君
      成田 知巳君    西村 榮一君
      柳田 秀一君
 出席国務大臣
        内閣総理大臣  岸  信介君
        法 務 大 臣 愛知 揆一君
        外 務 大 臣 藤山愛一郎君
        大 蔵 大 臣 佐藤 榮作君
        文 部 大 臣 橋本 龍伍君
        厚 生 大 臣 坂田 道太君
        農 林 大 臣 三浦 一雄君
        通商産業大臣  高碕達之助君
        運 輸 大 臣 永野  護君
        郵 政 大 臣 寺尾  豊君
        労 働 大 臣 倉石 忠雄君
        建 設 大 臣 遠藤 三郎君
        国 務 大 臣 青木  正君
        国 務 大 臣 伊能繁次郎君
        国 務 大 臣 世耕 弘一君
       国 務 大 臣 山口喜久一郎君
 出席政府委員
        内閣官房長官  赤城 宗徳君
        内閣官房副長官 松本 俊一君
        法制局長官   林  修三君
        公正取引委員会
        委員長     長沼 弘毅君
        大蔵事務官
        (主計局長)  石原 周夫君
        大蔵事務官
        (理財局長) 正示 啓次郎君
        大蔵事務官
        (為替局長)  酒井 俊彦君
        国税庁長官   北島 武雄君
        労働事務官
        (労政局長)  亀井  光君
 委員外の出席者
        通商産業事務官
        (通商局次長) 中野 正一君
        会計検査院長  加藤  進君
        日本輸出入銀行
        総裁      古澤 潤一君
        専  門  員 岡林 清英君
    —————————————
三月二十七日
 委員北村徳太郎君、久野忠治君、小坂善太郎君、
 田村元君、綱島正興君、床次徳二君、早稻田柳
 右ェ門君、阿部五郎君、淺沼稻次郎君、岡田春
 夫君及び島上善五郎君辞任につき、その補欠と
 して森清君、松永東君、坂田英一君、中井一夫
 君、池田正之輔君、佐々木盛雄君、岡部得三君、
 河野密君、小松幹君、大貫大八君、及び柳田秀
 一君が議長の指名で委員に選任された。
同日
 委員池田正之輔君、岡部得三君、佐々木盛雄君、
 坂田英一君、中井一夫君、松永東君及び森清君
 辞任につき、その補欠として綱島正興君、早稻
 田柳右ェ門君、床次徳二君、小坂善太郎君、田
 村元君、久野忠治君及び北村徳太郎君が議長の
 指名で委員に選任された。
同日
 委員河野密君辞任につき、その補欠として鈴木
 一君が議長の指名で委員に選任された。
    —————————————
本日の会議に付した案件
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)
     ————◇—————
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楢橋渡#1
○楢橋委員長 これより会議を開きます。
 昭和三十四年度一般会計予算補正(第1号)を議題といたします。
 質疑を続行いたします。淺沼稻次郎君。
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淺沼稻次郎#2
○淺沼委員 まだ参議院で予算が審議中でありますが、それにもかかわらず衆議院にまた補正予算が出て参ったのでありまして、これは前にも一、二回の前例があるそうでありますが、どうもあまりいい前例ではないと思うのであります。予算を出してその年度内に審議中にまたあとから補正予算を出すようなことは今後改めまして、本予算の中にすべてを入れて出すというような新しい慣例を作るようにしなければならぬと思うのであります。しかしこのことは他の同志からもそれぞれ質問があろうと思いますので、われわれといたしましてはこういう前例を作らないようにしなければならぬということを申し上げ、私はきょうは総理大臣を中心にいたしまして、日中国交回復の問題について政府の考え方を承わりたいと存じます。
 まず第一には、戦争が済んでから日本の外交方針はどういう工合に変ってきているかということをお互いに考えてみる必要があろうかと思うのであります。戦争が済んだ直後におきましては、総理は政治の分野に出ておらなかったのでありますが、しかし日本は非常な変革を遂げておると思うわけであります。どういうような変革をとげておるかといえば、戦争に対する鋭い批判が行われまして、二度と再び戦争の起らないような国家体制を作らなければならない、そういう意味合いよりいたしまして、封建的な専制的な軍事的な国家体制はこれを改めまして、民主的な文化的な平和国家体制たらしめたのであります。従ってその根幹を貫いておるものは何であるかといえば、いわば新しい憲法であろうと思うのであります。そして憲法の第九条の中には、国際紛争を解決する手段としての戦争は永久にこれを放棄する、従って陸海空軍及び一切の戦力はこれを保有しない、国の交戦権は行使しないと決定いたしまして、いわば戦争放棄の規定をしておるわけであります。従いまして、この憲法を中心として展開されまする外交でありますから、日本外交の基本は、戦後日本が変革された後におけるその精神はどこにあったかと申し上げますならば、言うまでもなく戦争には不介入、いずれの陣営にも属しない自主独立、いわば中立堅持、こういう建前が私は原則であったと思うのであります。それからその後発展はしておると思うのでありますが、この原則を総理はいかように考えておるか、一つ承わりたいと存じます。
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岸信介#3
○岸国務大臣 戦争放棄の規定は、これは憲法に明示されておるごとく、日本は将来永久に、国際紛争を解決する手段として武力を行使しないということを宣言しておるのでありまして、これは一貫しておる、日本の平和外交の根幹をなす思想であることは疑いないところであります。しかしながらこの憲法九条が、いわゆる自主権を持っておる独立国として自衛権を持っておるということにつきましては、これまた何人も疑いをいれないところであります。それは、われわれが不当に他から侵略をされない、そういう緊迫不正の侵略があった場合には、それをわれわれは排除するということは、独立国としてすべて持っておるものであって、これを否定するものではないということもまた明らかであります。私どもはこの平和外交を推進すると同時に日本の安全保障を考えていく、これは今お話がありました民主政治、またわれわれが自主独立の国家として繁栄していくために他から不正なる侵略を受けない、こういう安全保障の体制をとることもこれまた当然であると言わなければならぬと思うのであります。しこうしてその場合において、日本みずからの力が十分でない場合におきまして、他と共同してわれわれの安全をはかるということ、これまた当然であります。しこうしてこういうことを決定するのは——国際情勢の現実に即してわれわれのこの平和外交を進め、安全を保持していくということは当然であると思います。今お話がありましたように、これが中立外交主義を根本にきめておるということは、私どもはそう考えないのであります。平和をあくまで推進し、平和外交をしていかなければならない。同時にわれわれが独立の国としてわれわれの安全を主張する、これは当然の主張であると考えておるのであります。
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淺沼稻次郎#4
○淺沼委員 私の聞きましたことに対する総理の答弁は、少し現実の自由民主党の政策並びに内閣の考え方が入っておろうと思うのであります。私の伺っておるのは、いわば終戦当時日本は大きな変革をやって戦争放棄の規定をいたして、二度と再び戦争はやらない、そういう国家体制を作らなければならない。さらに加えてきめたことは、再軍備はしないということをきめておるわけであります。当事におきましては自衛のための再軍備ということも考慮されておらなかったことも事実であります。そうして民間並びに政府のやった態度はどうであるかと言えば、どこの国とも平和を持続するという意味合いよりいたしまして、いわば全面講和の主張をなしたわけであります。すなわちその当事吉田総理にいたしましても、全面講和をやらなければならぬと言っておられました。われわれも全面講和を主張したのであります。ただ結果から見ますならば、多数講和に終ったことは事実であります。しかし全面講和の主張が政府の中にも国民の中にも台頭して参りましたのは、いずれの国とも仲よくして、そうして戦争を排除する体制を作りたい、それを貫くものは何であるかと言えば、自主独立、それは中立堅持であったと思うのであります。それに対して今の自由民主党、岸内閣の考え方は別として、今は総理大臣としてあなたが立っておられて、終戦当時における日本の外交の基本はどこにあったかというその認識を承わりたいと思います。
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岸信介#5
○岸国務大臣 先ほどお話を申し上げました通り、私は、終戦当時において再び戦争に巻き込まれない、この意味において永久に戦争は放棄するということを宣言をし、それを中心として考えられたことは事実であろうと思います。しかしながらそのことは同時に日本の安全を保障するために、自主的な、独立的な立場として当然自衛権を持っておるという考えに立っておることは、私は、これは当然である、いかなる国とも平和に仲よくしていくということはそのときもそうでありましたし、今日もまた依然として同じに考えておるのであります。
    〔「ヒヤヒヤ」「その通り」と呼ぶ者あり〕
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淺沼稻次郎#6
○淺沼委員 そこで私は、やはり全面講和の主張の中には、戦争放棄というばかりでなく、いずれの国とも仲よくして自主独立——自主独立ということになりますならば、一方の陣営との間に何か軍事同盟を結ぶというようなことはなかった考え方であろうと思うのであります。しかも振り返って考えてみますならば、サンフランシスコにおいて講和会議が開かれた際に、いわば対日平和条約に調印をしたその人の中でも安全保障条約に判を押さなかった人があるのであります。ある意味から申し上げますならば、日本とアメリカとの間における安全保障条約というものには国民の相当数の者が反対であり、全権の中にも判を押さなかった者があるのであります。これは何を意味するかと申し上げますならば、やはり日本は軍事同盟は結ぶべきではない、自主独立、厳正なる立場に立ちながら中立堅持という思想が相当あったからと私は思うのであります。さらにそのことが国民並びに政府の側において修正をされておるような傾向になりましたのは、すなわち鳩山内閣におきます当時の対ソ平和宣言であろうと思うのであります。すなわち国の行き方というものが、戦争をやった国とどことも平和を結んでいく、この努力をしなければならぬということが国民の要望であり、政府の方針であって、しかもサンフランシスコ会議においては、ソビエトとの間においてはできないということから、ソビエトとの間においてどうするかということを政府みずから取り上げて、そうしてわれわれもこれは支援をいたしましたが、それでソビエトとの間において平和宣言が成立した、さらにその他の共産国との間にも漸次平和条約ができていく、こういうような状態になったことは、やはりどこの国とも平和な状態を続けようとする政府の考え方と、さらに加えて国民の考え方が一体となってそうなったと私は思うのであります。これに対してはどういうお考えでしょうか。
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岸信介#7
○岸国務大臣 もちろん平和条約が締結され、また先ほども申しましたような考えに基いて日米安保条約ができる場合におきまして、これに賛意を表せなかった国民はあったと思います。しかし、国民の大多数がそれを支持したことも事実である。同時に日ソ共同宣言をいたしました当時、これに反対するところの国民もあったことは事実でございます。しかしながら、多数の国民がこれを支持したことによってこれができておるのでありまして、私は先ほども申し上げているように、もちろん日本が平和外交を推進する見地から、いずれの国とも仲よくしていくという考えについては一貫して変らざるものが日本の外交方針である、こう思います。
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淺沼稻次郎#8
○淺沼委員 そこで、中国の問題に触れてみたいと思うのでありますが、わが社会党といたしましては、社会党が統一をいたしました際に、ソ連並びに中国、残されておりまする国々との間に平和を回復しなければならぬ、これを決定いたしまして、あらゆる場合において政府に要求して参ったのであります。従って、今総理がどこの国とも仲よくする、こういうことを言われたならば、ソ連が解決したならば、次に残っておるのは中国でなかろうかと思うのであります。もちろん、中国と日本の関係を考えてみまするならば、台湾と日本との間に平和条約のあることは事実であります。しかしながら、台湾と日本とにおいて、平和条約という名において、いわゆる中華民国との間において平和条約を結んだときは、われわれは反対をいたしましたが、しかし、そのときの状況と今の中国の状況とは、大なる変化があるということを知らなければならぬと思うのであります。台湾は完全なる地方政権に転落をしております。中国本土はどうであるかと申し上げまするならば、われわれの若い時代には四百余州、四億と言いましたが、今は六億八千万の人口が、また来月になりますと人民代表者会議が開かれますが、その場合における国勢調査によると案外七億をこえるのではなかろうか、こう言っておるわけであります。七億をこえた国民が中華人民共和国として成立をしておるのであります。またこれが主体的にも完全なる独立国家になっておるということは、いなむことのできない事実であります。従って、総理がどの国とも平和を結んでいかなければならぬということになりますならば、六億八千万の人口によって形成されておりまする中華人民共和国に対して、平和の手を伸べることは私は当然ではなかろうかと思うのであります。これについて総理の考え方を承わりたいと思います。
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岸信介#9
○岸国務大臣 私どもは過去におきましてもまた現在におきましても、この中国大陸とのきわめて密接な関係があるのでありまして、この友好的な関係を築き上げていかなければならぬことは、われわれも同じにこれを考えております。今問題は、もちろん国際情勢はいろいろな変化をいたしつつありますけれども、日本と中国との関係において日華条約が結ばれましたことは、当時これをもって中国を正当に代表する政府としてわれわれとの間に平和条約が結ばれたことは、御承知の通りであります。その後いろいろな情勢の変化もありまして、これを調整し、あるいはこの間におけるところのいろいろな矛盾をどういうふうに整理していくことがいいかということは、しょっちゅう考えられておる問題でありまして、私どもは中国大陸との関係においては、いわゆる積み上げ方式によって、これらのあらゆる問題を平和的に解決していく方向に努力を続けるというのが従来の方針であり、また私はそれが現実に即して最も正しい方法である、かように考えております。
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淺沼稻次郎#10
○淺沼委員 どうも私の質問に対する答弁がちょとそれたような形でありますが、それならば中華人民共和国との間においては、一日も早く平和の情勢を作り出したいという一つの考え方を持っておると認識してよろしいですか。
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岸信介#11
○岸国務大臣 もちろん先ほど来私が申し上げましたように、現実に即してこれを解決しなければならないのであります。いろいろな問題がありますから、ただ抽象的にどうするというふうなことを言うことは、私は適当でないと思います。方向として、われわれが中華人民共和国を、向う側が言っておるように適視する政策をとっておるとか、非友好的な態度をとっておるということは、われわれは絶対に考えておらないのであります。この現実に即してこの関係を調整するのには、やはりあくまでも日本が置かれておる立場、及び従来の中国との間の関係を律しておるところの条約その他というものを無視することなく、これらの国との間の平和的な調整を考えていくという意味において、私どもはこれを解決しなければならぬ、こう思っております。
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淺沼稻次郎#12
○淺沼委員 どうも答弁が横へそれて、端的に率直に申されないところがあるのでありますが、そこで私はもっと具体的に聞きたいと思いますことは、今私は日本外交の変遷の姿を申し上げましたが、その変遷の姿が、鳩山内閣によってソ連との間の国交を回復し、さらに加えまして岸内閣になりましてからは、外交三原則などというものを発表しておるわけであります。すなわち、一つは自由主義陣営に乗る。第二は国連主義だ。第三にはアジアの一員として生きる。ここに私は大きな問題と、今答弁の中にもまだ解決ができないような答弁がなされているような気がするのであります。すなわち、自由主義陣営の中に生きる。しかし私は質問の冒頭において申し上げました通りに、やはり日本が変革の後にきた、戦争放棄した日本の姿というものは、このいずれの陣営にも属しない。そこで厳正な立場に立って、自主独立そうして中立堅持、これが私は日本の行き方であったと思うのであります。その行き方を、ここに参りまして大きな訂正をしておると私は思うのであります。さらに加えて、アジアの一員として生きるということになりまするならば、アジアにおいて一番大きな国、なおかつ非常に健全なる発達を最近なしておるものは中華人民共和国であります。それに手を伸べないで、アジアの一員として生きるということは、一体どういうようなことですか。少くとも中国との国交回復をやることが、アジアの一員として生きるという大原則中の大きなものではないかと思うのでありまして、これについて答弁を承わりたいと思うのであります。
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岸信介#13
○岸国務大臣 いわゆる中国との関係におきまして、先ほど来お話があるように、すでに過去において、われわれは不幸にして中国との間にいわゆる戦争関係があって、これをわれわれは平和な状態を作るという考えのもとに日華平和条約ができ、これに調印をされたのであります。しかしながら、その後における中国の政治情勢なりいろいろな変遷がございます。私どもは、常にこの中国全体に対して友好的な関係を作り上げる方向に行かなければならぬことは、これは言うを待たないのであります。しかしながら、そういう従来の関係を全然一挙に無視して、そうして国交を正常化する、そのために日華平和条約を廃棄するというような態度に直ちに出るということは、国際信義の上から決して私どものとるべきことではないのであります。従って、私どもが従来言っているような積み上げ方式によって、これを解決すべきものであるというのが、私どもの信念であります。
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淺沼稻次郎#14
○淺沼委員 そこで、国際情勢というものは動くものであります。また外交も動いていかなければならぬと私は思うのであります。いわばサンフランシスコ会議が開かれたあと結ばれた、あの時代における日華条約というものがあることは現実でありますが、それから世界は動く、中国の建設は進んでおるのであります。だれが考えてみたって、中国にありますところの主人公はだれであるかといえば、これは言うまでもなく中華人民共和国であることには間違いありません。従って、台湾との関係というものは、中国側においても台湾は中国の一部であると言っておる。場合によれば内政問題として解決するという努力もしておるようであります。そこで、日本の考え方というものも、もっと積極性があって私はしかるべきではなかろうかと思うのであります。もちろん中国と日本との間に平和条約が結ばれて参りますならば、必然的な結果といたしまして、台湾とのああいう関係が切られていくということは、必然であろうと思うのであります。従いましてその必然を作るために努力ということを、政府自体がアジアの一員として生きるためには、やって参らなければならぬと思うのでありますが、この点についてもう一ぺん御答弁を願いたいと思うのであります。
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岸信介#15
○岸国務大臣 あなたの御質問のような趣旨において、われわれは従来積み上げ方式によって、あらゆる方向から両国の理解と、そうして両国の友好関係を築き上げることが、この問題を解決する具体的の有効なる道であると私どもは考えてきておるのであります。
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淺沼稻次郎#16
○淺沼委員 そこでその積み上げ方式、積み上げ方式と今三回ほど私は聞いたのでありますが、政府は一体何をやったか、私は具体的に承わりたいと思います。
    〔発言する者あり〕
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楢橋渡#17
○楢橋委員長 静粛に願います。
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岸信介#18
○岸国務大臣 私どもが、従来経済の関係において貿易を増進していこうという努力をして参ったことが、昨年の五月に中国側の一方的な廃棄によって中断したことは、よく御承知の通りであります。
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淺沼稻次郎#19
○淺沼委員 積み上げ方式は貿易のことで、いわばどっちかといえば、岸内閣は不承認の態度をとってこわしておいて、それで中国に責任を負わせるというのは、どうも私には納得がいかないし、これだけが積み上げ方式だということになりますと、私は積み上げ方式というものを非常に誤解して考えておられると思うのであります。
    〔発言する者多し〕
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楢橋渡#20
○楢橋委員長 静粛に願います。
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淺沼稻次郎#21
○淺沼委員 そこで積み上げ方式の内容から申し上げますならば、われわれは今からまる二年前に中国に参りました。その際に淺沼・張奚若コミュニケというものを出して参りました。そのときから現在に及んで参りまするならば、もちろん貿易の関係におきましては、それは議員連盟がありまして、相当あっせんをしておったことの事実も私は認めます。しかしこれはあくまでも民間のものであります。さらに加えて私どもが参りました際に、お互いにいろいろな協定を結びまして、私どもがこの前参りましてからあと、約四十団体との間に協定が結ばれました。その際にも私は帰って参りましてから岸総理にお目にかかりまして、われわれのやって参りましたことについて、われわれの要求すべきことを要求したのであります。その際中国側の意見を私はこう伝えた。いわばわれわれの行く前の漁業協定については、中国側の方から要請がありまして、政府間の協定をやろうということになっておったのであります。これを政府の方ではお断わりした。その前には両方の漁民関係の団体における協定があったわけであります。さらに私どもが向うで話しておる間に、場合によっては気象協定もやってもよろしい、さらに加えて郵便物業務協定もやってもよろしい、また漁業協定は、われわれの方からいっておるような状態であるから、これもよろしい。場合によれば政府と政府の間において貿易協定もいいのだ。さらに加えまして文化協定もいいのだ、これらのものはすべて政府間においてやってもいいという態度を示したのであります。その上に一つ全面的な講和ということを考えたらどうか、これを私どもが要請をいたしましたときに、政府側ではこれをメモしておる人がありました。石田君がたしかメモしておったのでありますが、それについては何にもやらない。それでそのあと岸内閣のとった態度ははなはだ——私はここで申し上げてもいかがかと思うのでありますが、相当深刻な非友好的な政策をとっておると思うのであります。たとえば岸さんが台湾に参りまして蒋介石を激励したあの言葉も、相当向うには深刻に響いております。これは私は当然だと思うのであります。さらに加えましてそのあとはどうであったかといえば、今池田君が大きな声を出しておりましたが、池田君なんかが非常に奮闘をいたしましてせっかくできた第四次貿易協定を、もう協定ができ上って、あれに政府の方ではよろしいと言えばそれでいいのであります。(「よろしいと言ったじゃないか」と呼ぶ者あり)それをいわば愛知官房長官の声明書によってこれをこわしたことは誤まりであったと私は思うのであります。
 さらに加えまして長崎に国旗事件が起きた際に、議会でだいぶ問題になったのでありますが……。
    〔発言する者あり〕
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楢橋渡#22
○楢橋委員長 静粛に願います。
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淺沼稻次郎#23
○淺沼委員 それに対しても政府は、国交のない国だからやむを得ないといったような態度でありまして、国交があろうがなかろうが、国旗に対する愛着というものを否定するような言動をなしたことは、非常に向うに響いているわけであります。つまり積み上げ方式でやってきたということは、案外積み上げ方式で政府はこわしてきたといっても私は過言ではないと思うのであります。そういう意味合いにおいて、それならばこれから積み上げ方式をやる。——一体具体的に何をやろうとしておるか、お伺いしたいと思うのであります。
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岸信介#24
○岸国務大臣 すでにこの国会を通じて、われわれはこの積み上げ方式の考えについてはしばしば明瞭にいたしております。あるいは今お話が出ております気象の問題であるとか、郵便の問題であるとかいうようなものについては、すでに政府間で話をして、政府間の協定もよろしいという方針をわれわれはすでに明らかにしております。また貿易の再開についても、できるならば大使会談によってこれが打開をわれわれはやっていきたいということも述べております。しかしながら、私は今日の現状から言うならば、私どもは決してこの敵視政策とか、あるいはわれわれが二つの中国を作る陰謀に加担しているとかというようなことが、われわれに対する非難として与えられておりますが、そういう事実は全然ないのであります。従って、もしもそういう意図でもって日本政府のやっていることを中国側が考えておるとするならば、それは誤解であるか他に何かの意図があるものであって、これはぜひ両国の友好親善の方向からいって、これが解けることを望むという意味において、私どもが従来静観の態度をとってきたことも事実でございます。しこうしてわれわれが、すでに国会を通じてわれわれの方針を、友好的な、また積み上げ方式についての具体的な考え等について述べておることに対して、むしろこういう今度のあなた方の行かれた訪中団等が、政府のこの意向を十分正当に向うに伝えられて、向う側のこれに対する好意のある回答を私どもは期待した。しかし結果はそのことが正しく理解を得ることができなかったということは、私どもとしてははなはだ遺憾に考えておるのであります。
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淺沼稻次郎#25
○淺沼委員 どうも積み上げ方式と静観というものが一体のようでありまして、私は論理的の合致がないと思うのであります。一面においては静観と言いながら、一面においては積み上げだ、積み上げでやるのは何であるかといえば、議会でわれわれが質問したこと等に対して答弁をしたことが積み上げだ、これがどうも私は、われわれに対する一つの外交辞令なら別でありますが、国と国との関係を考える場合においては、あまり私ははっきりした答弁ではないと思うのであります。
 そこで私がさらにお聞きをしたいと思いますることは、中国側においては政治と経済とは分離できない。少くとも経済と……。
    〔発言する者多し〕
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楢橋渡#26
○楢橋委員長 静粛に願います。
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淺沼稻次郎#27
○淺沼委員 文化あるいはその他人的交流を考える場合においても、大前提において何をするかということになりまするならば、それは政治的問題から話し合いをしなければならない。私はこれは当然だと思うのであります。国と国の間における正常なる交際は何であるかといえば、国交が回復されなければならぬと思うのであります。国交が回復をされて、そのもとで行われるのがほんとうの外交でありまして、国民外交というのはそういうことにならない前に行うのが国民外交であろうと思うのであります。従いまして中国側においては、いわば一切の政活的問題をまず解決しようじゃないか、こう言われておるのであります。これはこの前、私ども二年前に参りまして帰りました際も、中国側においては政府と政府の交渉を考えておるようでありまして、政府も一つ前に乗り出したらどうか、こういう私は要請をしておるわけであります。それをしないでほうっておいて、今総理は、向う側と経済の問題でやるならば大使会談などと言っておりますが、向うではやはり政治を中心としてやりたい、これは私は当然だと思うのであります。国と国の交際のないところにおいて、そうして相手方が言うのは、やはり国と国との間において話し合いをしようではありませんか、こう出てくるのが私は当然だと思うのであります。従って、そういうときに政府はどういう考えを持つか。依然として経済の問題だけで、貿易だけやる。片方においては、中国のやっておることに対して相当因縁をつけておいて、もうける方だけは一緒にやりましょうというのでは、少し無理があるのではないかと思うのでありまして、こういう点に対する考え方を承わりたいと思います。
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岸信介#28
○岸国務大臣 経済、貿易の関係は、淺沼君は何か日本がもうけるためにやっておるというふうな考えでありますが、私どもは、これは現実に反していることであって、貿易、経済の交通をすることは、両国民の利益であり、福祉を増し、繁栄を増すゆえんである。同時に、それを続けていくことが両国の理解を深め、両国の、われわれが望んでおるところの国交の正常化へ向う道であるという意味において、この経済、貿易の問題をわれわれは考えておるわけであります。しこうして今政治と経済との関係においてのお話であります。また中国側が最近強くそのことを言っております。そうして今淺沼さんのお話では、政治の話をせずに経済の話というものはあり得ないじゃないかというふうなお話でありますが、過去においてその問題を離れて日本との間に貿易の行われておった事実は、昨年の五月以前はそうであった。なおまた現に中国と経済、貿易の交通をしておる西ドイツ、フランスその他の国におきまして、やはり政治という問題の、いわゆる国交正常化というような問題を先に解決せずして、まだ国交が正常化されておらないにかかわらず、経済、貿易の関係において相当な関係ができておることはこれまた事実でありまして、これを分けることは絶対に不可能であるというふうな議論は、何かほかに意図があるとしか私には思われないのであります。
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淺沼稻次郎#29
○淺沼委員 この問題につきましては、こういう工合に理解をしなければならぬと思うのであります。すなわち岸内閣が初めから、今岸さんの答弁をしておるようなものをとり、さらに加えては郵政大臣が郵便協定を結ぼうと、こういうようなことをやっておるのを、われわれが第一次協定を結んできたあとやっておりますれば、それは問題はない。大体よくやったやつを昨年の五月以来これが中断をされるような結果になったのでありまして、これには政府の責任が相当あると私は思うのであります。これが問題であります。従いまして相手方といたしましては、この中断をするような状態になったことに対して、政府側において深刻な考えをしてもらいたい、そこでまあ話し合いということになるであろう。私どもはこう思うのでありまして、やはり問題は、中断するに至った日本の政治行為というものが相手方に悪く響いておるのでありますから、これを改めるという態度が出てこなければ私はならぬと思うのであります。その点は、やはり日本の政府が真剣に考えなければならぬと思うのであります。
    〔発言する者多し〕
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