外交防衛委員会
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会
会議録情報#0
平成二十九年五月三十日(火曜日)
午前十時一分開会
─────────────
委員の異動
五月二十五日
辞任 補欠選任
中西 哲君 丸川 珠代君
五月二十六日
辞任 補欠選任
こやり隆史君 滝沢 求君
丸川 珠代君 中西 哲君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 宇都 隆史君
理 事
阿達 雅志君
堀井 巌君
山田 宏君
大野 元裕君
浜田 昌良君
委 員
佐藤 啓君
佐藤 正久君
滝沢 求君
武見 敬三君
中曽根弘文君
中西 哲君
山本 一太君
小西 洋之君
福山 哲郎君
藤田 幸久君
山口那津男君
井上 哲士君
浅田 均君
アントニオ猪木君
伊波 洋一君
国務大臣
外務大臣 岸田 文雄君
副大臣
外務副大臣 岸 信夫君
外務副大臣 薗浦健太郎君
大臣政務官
外務大臣政務官 小田原 潔君
外務大臣政務官 武井 俊輔君
外務大臣政務官 滝沢 求君
事務局側
常任委員会専門
員 宇佐美正行君
参考人
防衛大学校人文
社会科学群国際
関係学科准教授 伊藤 融君
公益財団法人日
本国際問題研究
所軍縮・不拡散
促進センター主
任研究員 戸崎 洋史君
長崎大学核兵器
廃絶研究センタ
ー長・教授 鈴木達治郎君
NGOピースボ
ート共同代表 川崎 哲君
─────────────
本日の会議に付した案件
○原子力の平和的利用における協力のための日本
国政府とインド共和国政府との間の協定の締結
について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
送付)
○参考人の出席要求に関する件
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この発言だけを見る →午前十時一分開会
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委員の異動
五月二十五日
辞任 補欠選任
中西 哲君 丸川 珠代君
五月二十六日
辞任 補欠選任
こやり隆史君 滝沢 求君
丸川 珠代君 中西 哲君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 宇都 隆史君
理 事
阿達 雅志君
堀井 巌君
山田 宏君
大野 元裕君
浜田 昌良君
委 員
佐藤 啓君
佐藤 正久君
滝沢 求君
武見 敬三君
中曽根弘文君
中西 哲君
山本 一太君
小西 洋之君
福山 哲郎君
藤田 幸久君
山口那津男君
井上 哲士君
浅田 均君
アントニオ猪木君
伊波 洋一君
国務大臣
外務大臣 岸田 文雄君
副大臣
外務副大臣 岸 信夫君
外務副大臣 薗浦健太郎君
大臣政務官
外務大臣政務官 小田原 潔君
外務大臣政務官 武井 俊輔君
外務大臣政務官 滝沢 求君
事務局側
常任委員会専門
員 宇佐美正行君
参考人
防衛大学校人文
社会科学群国際
関係学科准教授 伊藤 融君
公益財団法人日
本国際問題研究
所軍縮・不拡散
促進センター主
任研究員 戸崎 洋史君
長崎大学核兵器
廃絶研究センタ
ー長・教授 鈴木達治郎君
NGOピースボ
ート共同代表 川崎 哲君
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本日の会議に付した案件
○原子力の平和的利用における協力のための日本
国政府とインド共和国政府との間の協定の締結
について承認を求めるの件(内閣提出、衆議院
送付)
○参考人の出席要求に関する件
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宇
宇都隆史#1
○委員長(宇都隆史君) ただいまから外交防衛委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、こやり隆史君が委員を辞任され、その補欠として滝沢求君が選任されました。
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昨日までに、こやり隆史君が委員を辞任され、その補欠として滝沢求君が選任されました。
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宇
宇都隆史#2
○委員長(宇都隆史君) 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
政府から趣旨説明を聴取いたします。岸田外務大臣。
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岸
岸田文雄#3
○国務大臣(岸田文雄君) ただいま議題となりました原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件につきまして、提案理由を御説明いたします。
平成二十年、主要先進国を含む原子力供給国グループは、インドが表明した約束と行動と呼ばれる核実験モラトリアム等の政策を前提として、インドへの原子力関連資機材等の移転を例外的に可能とする決定を行いました。これを受け、インドは、核実験モラトリアム等の政策を着実に実施しつつ、各国との原子力協力を進めてきています。このような経緯も踏まえ、平成二十二年六月以来、インド政府との間でこの協定の交渉を行った結果、平成二十八年十一月十一日に署名が行われた次第であります。
この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とインドとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施、インドにおける再処理等につき定めております。
また、万が一インドが核実験を行った場合には、この協定は理由を問わず終了できることから、我が国としてこの協定を終了させることとしています。
この協定は、原子力の平和的利用についてインドが責任ある行動を取ることを法的に確保するものであり、この協定を締結することは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。よって、ここに、この協定の締結につき御承認を求める次第であります。
何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
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この協定は、原子力の平和的利用に関する我が国とインドとの間の協力のための法的枠組みを提供するものであり、核物質等の平和的非爆発目的利用、国際原子力機関による保障措置の適用、核物質防護措置の実施、インドにおける再処理等につき定めております。
また、万が一インドが核実験を行った場合には、この協定は理由を問わず終了できることから、我が国としてこの協定を終了させることとしています。
この協定は、原子力の平和的利用についてインドが責任ある行動を取ることを法的に確保するものであり、この協定を締結することは、インドを国際的な不拡散体制に実質的に参加させることにつながります。よって、ここに、この協定の締結につき御承認を求める次第であります。
何とぞ御審議の上、本件につき速やかに御承認いただきますようお願いいたします。
宇
宇
宇都隆史#5
○委員長(宇都隆史君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件の審査のため、本日の委員会に防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授伊藤融君、公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員戸崎洋史君、長崎大学核兵器廃絶研究センター長・教授鈴木達治郎君及びNGOピースボート共同代表川崎哲君を参考人として出席を求め、その意見を聴取することに御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
宇
宇
宇
宇都隆史#8
○委員長(宇都隆史君) 原子力の平和的利用における協力のための日本国政府とインド共和国政府との間の協定の締結について承認を求めるの件を議題といたします。
この際、参考人の皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。
まず、伊藤参考人、戸崎参考人、鈴木参考人、川崎参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
また、参考人、質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人。
この発言だけを見る →この際、参考人の皆様に対し、本委員会を代表して一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただき、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見をいただき、今後の審査の参考にさせていただきたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
議事の進め方について申し上げます。
まず、伊藤参考人、戸崎参考人、鈴木参考人、川崎参考人の順にお一人十五分以内で順次御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答えいただきたいと存じます。
御発言の際は、その都度、委員長の許可を得ることになっておりますので、御承知おきください。
また、参考人、質疑者とも発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず伊藤参考人にお願いいたします。伊藤参考人。
伊
伊藤融#9
○参考人(伊藤融君) 防衛大学校の伊藤でございます。本日は、お招きいただきありがとうございます。
私、所属機関は防衛省になりますけれども、私たちは一般大学と同様に独立した研究者として認められております。ですので、今日ここで述べますことも一研究者としての個人としての見解であることをまず御了解いただきたいかと思います。
私の専門としておりますのは、インドを中心とした南アジア地域の国際関係でございます。インド、パキスタン、印パ関係であるとか印中関係、また日印関係などを研究しております。
今回、日印間の民生用の原子力協力協定案をめぐります衆議院の議事録を拝見いたしますと、これまで専ら法的な観点、またエネルギー政策、不拡散政策といった観点からの議論はなされてきたかと思います。しかし、そもそも協定の相手国であるインドというのがどういう国であって、どんな外交理念、特性を持っているのか、どんな安全保障環境下に置かれているのかといったような議論はなかったように思います。
しかし、私から見て、それは極めて重要なポイントだと思っております。といいますのも、インドという国は、今でこそ我が国にとって非常に重要なパートナーだというふうに位置付けられていますけれども、それはつい最近の話でして、戦後長い間、我々にとってインドは疎遠な国でありました。戦後、私たちの関心は、同じアジアの中でも中国とか韓国、それからASEAN、それから大野先生がいらっしゃいますけれども、西アジア、中東、こういうところに向けられたというのが事実ではないかと思います。研究者も、政治学や国際関係論の分野では、この分野はもうほとんどおりませんで、その結果、この地域のことを私たちは余りにも知らないということが私の認識であります。
したがいまして、私は地域研究者としての視点から、今日は、インドが何を考えていて、それを取り巻く南アジア地域がどうなっているのかという、恐らくほかの参考人の方とはまた異なる視点に立った話かと思います。
以下、お配りしてあるレジュメに沿ってお話をしたいと思います。
特に、今回の協定案において大きな論点になっているのが、恐らく、インドが今後、万一核実験をした場合に協力を停止することになっているのかどうかというポイントであろうかと思います。もちろん、日本側はインドとの交渉の中でこれを協定に盛り込むように尽力されてきたかと思います。だからこそ、二〇一〇年に民主党の菅政権の下で始まった交渉が六年も歳月が掛かったんだというふうに認識しております。
しかし、私は研究者として、もうその当初から、インドがそういう文言を受け入れるなんてことはあり得ないというふうに認識、考えておりました。
それは、大きく分けて二つの理由によります。
第一は、政治的な理由であります。といいますのも、インドという国は、実は我々が思う以上に極めて大国意識が強くて自尊心の強い国なんです。それは今に始まっての話ではないんです。もう独立当初以来のものというふうに言っていいと思います。
初代の首相が進めたネルーの非同盟外交、非同盟運動、これはまさに米ソの冷戦構造の中でどちらにも入らないというふうに宣言し、そして、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの国々の力を結集し、第三世界のリーダーとして自立的な外交を展開していったわけですね。
今や一九九一年に経済自由化して以降、ハードパワーの面でもインドはグローバルな大国として遜色ないレベルに達しつつあるわけです。その結果、非常に自信を深めているわけですね。特にインドという国に対して、巨大市場、民主主義の大国に対して、アメリカや日本、それからヨーロッパ各国だけではなくて、中国やロシアもこぞって接近する。そのほかの新興国も皆接近していくわけです。結果的に、それぞれがそれぞれの思惑から戦略的パートナーシップ関係というのを構築し、維持しております。インドはまさに引っ張りだこ状態でありまして、中にはより深い関係というものを求めてくるような国も、インドに対して求めてくるような国もございました。しかし、現在のナレンドラ・モディ政権も含めまして、そうした同盟というものに対してはインドは絶対にノー、否定的であります。
これは、同盟などというものを結べば、結局インドが大事にしてきた戦略的自律性、自主的外交というのが損なわれると考えているからであります。つまり、分かりやすく申しますと、我々は大国であって、自分たちのことは自分たちで決めるという主権意識、これが非常に強いですね。
このことを踏まえますと、インドにとって、核実験をすれば実験を停止せよというような文言を受け入れるなんていうことはもうあり得ないですね、右派から左派に至るまで。これは右左関係ない話であります。実験停止は、ですから、あくまでも自主的なもの、モラトリアムというのがインドの国内政治事情を考えれば当然の展開であったというふうに思います。
で、第二に、インドを取り巻く安全保障環境というものを指摘しておきたいと思います。この点も我々は余り認識していないかと思うんです。
インドが一九四七年の独立以来、戦火を交えたことのある二つの隣国、これがいずれも核兵器を保有し、依然としてインドに脅威を突き付けているという現実があります。
まず、一九六二年に国境戦争で敗れ、通常戦力でインドを凌駕する中国という存在です。この中国はNPT上の合法的な核兵器国として認められている。インドに比べて弾頭数、運搬能力のいずれにおいても圧倒的な存在であります。
確かに現在の政権の下では、経済面では協力関係が進んでいます。しかし、安全保障というイシューにおきましては、インドとの間で近年長い陸の国境線をめぐって中国人民解放軍からの攻勢が続いております。また、中国は、パキスタンはもちろんのこと、スリランカとかモルジブ、あるいはネパール、バングラデシュ、ミャンマー、こういったインドの周辺国、周辺海域に大規模な港湾を建設したり、軍事支援あるいは軍艦、潜水艦を寄港させたりというような動きを見せておりまして、影響力を拡大させつつあります。これがインドの非常に強い警戒感になるわけです。
で、もう一つのインドにとっての敵対的な隣国がパキスタンということになります。これは、インドにとって分離独立以来の宿命の対立関係というふうに言われております。
パキスタンはインドに比べると国土が小さいわけですね。ですから、戦略的縦深性を欠いているわけです。また、通常戦力の面でもインドに比べると明らかに劣るわけです。ですから、その不足分を補うべく、中国の支援を受けながら、それからカーン博士の核の闇市場、これはまあ北朝鮮の問題ともつながってくるわけですけれども、これを通じて核戦力を増強してまいりました。結果的に、今では核戦力という点ではインドと遜色ない能力を誇っております。
さらに、インドにとって気掛かりなのは、その力の弱い側のパキスタンは核を先に使うかもしれないという核の先行使用オプションを否定しないわけです。つまり、インドから見ると、どういう場合に核戦争までエスカレートするのかということが定かではないわけです。しかも、このパキスタンの情勢というのが最近は混沌としていまして、過激主義も台頭しているということが懸念になるわけです。
つまり、このようにインドは厳しい安全保障環境下にあるわけです。しかも、日本とは違って、いかなる国とも、先ほど申したように、正式な同盟関係を持たない。ですから、有事の際には独力で対処するという必要性があるわけです。
そうした状況を踏まえますと、インドが自らの核政策が拘束されるのを嫌うのは安全保障環境上も当然の論理ということになるかと思います。つまり、中国あるいはパキスタンが今後核実験をやろうが核能力を増強させようが、我々はやりませんということを約束するわけにはなかなかいかないわけです。
以上述べました二点を踏まえますと、今回の日印協定に、協定本文とは別の文書という形とはいえ、モラトリアムを続けることが協力の不可欠の基礎だということ、万一それが変更されれば協力を停止できるという日本側の立場が二国間の文書として盛り込まれているというのは、我々インド研究者の目から見ると、我が国の外務省としてはよく粘ったなという印象であります。インドから見ると、もう政治的にも安全保障の環境から見ても受け入れ可能なぎりぎりのラインだったというふうに思います。
この公文テキストというのが法的拘束力を持つのかどうかということがこの国会の中で議論されていることは承知しております。これについては、私は法学者じゃございませんので全く判断できませんけれども、インドの方から、報道ベースで、これは単なる記録だったんだと、あるいは公文テキストをインド外務省がプレーダウンするような動きを示しているのは、これは今までに述べましたインドの事情というものを踏まえれば理解されるかと思います。
つまり、インドから見ると、国内向けにも、それから中国とかパキスタンといったような外に対しましても、インドの核政策が拘束されているというふうにみなされるわけにはいかないという事情があるわけです。
とはいえ、大事な点は、私自身が現地で何度かインタビューしたり、あるいは現地の有識者の論調を分析したり、あるいはインドの与野党の発言を分析したところから明らかなのは、インドの中でもう広く、今後核実験をするのは我々は困難になっている、事実上非現実的だという認識であります。
これは、既に二〇〇八年のNSGの例外化扱い、それから印米合意のときに既に広がりつつありました。実は、アメリカも、このときライス国務長官が、核実験を再度インドがやった場合には協力に極めて深刻な結果がもたらされるという声明を出しております。これに対して、インド国内では、当時野党だったインド人民党、これ、今のモディ政権を支える与党なんですけれども、これが、実はこのとき、インドは核不拡散体制のわなにはまってしまったと、インドは自ら将来の核実験の権利を放棄したというふうに手厳しく批判していたんですね、これを繰り返し。この事実を指摘しておきたいと思います。
つまり、核実験は法的には不可能ではないとしても現実には難しいということをインドは十分認識しているということであります。特に、今、インドは国際社会の中でそれなりの地位を得ておりますし、利益を得ているわけです。北朝鮮とは置かれている状況が違うわけですね。そうした状況の中で、わざわざ世界から批判を浴び、孤立するような選択は取れないというのが政策担当者の本音であります。それは、核戦争にエスカレートしかねないと国際社会が危惧するような行動についても同じであります。
時間がありませんので、詳細は後でもし御質問があればお話をしますけれども、二〇〇八年以降のインドの行動というのを見ると、インドはパキスタンからの挑発行為に極めて抑制的な対応を取っています。こうした点を踏まえますと、この国会でも議論されてまいりましたもう一つの論点、つまり、インドに対する原子力協力が、核拡散だとか兵器への転用、また南アジアの軍拡競争につながるんではないかという懸念につきましても違った見方ができるんじゃないかと思います。
インドは、これはよく知られていることですけれども、NPTは不平等だと言って入るのを拒否しましたけれども、これまでの履歴を見ると、不拡散にコミットしてきたということは知られていると思います。今、この世界のメジャーパワーになろうとしているインドが、それをわざわざ変えるということは考えにくいわけです。
さて、我が国が今回のこの協定を結ばない、協力しない、インドと協力しないという選択をするとすればどうなるかということを考えてみたいと思います。
なるほど、唯一の被爆国として、また原発事故を起こした国として、世界の他の国が売ろうとも日本は取引しないというのは、一つの道義的な意味はあり得るかもしれません。しかし、そのそういう選択が、インドの核実験モラトリアムの維持だとか再処理プルトニウム、濃縮ウランの軍事転用の防止、南アジアの軍拡抑制に寄与するとは思えません。といいますのも、二〇〇八年にNSGでインド特例扱いが認められているという現実、これを踏まえる必要があります。つまり、現在ではどの国もインド市場に入れるわけですね。しかも、先ほど来申し上げていますように、インドは今や大もてなわけです。たとえ経済的な利益が当面見込めないとしても、原発の今の状況が厳しくて経済的な利益が見込めないとしても、より広い戦略的見地からインドとの関係を重視し、インドに対して売り込みを図るということが考えられるわけです。
確かに日本の技術が入らなければ、日本と提携関係にあるアメリカやフランスのメーカーもインドに出づらくなるということはあるでしょう。でも、インドのパートナーはそれだけじゃないんですね。特にロシア、これは既に南部クダンクラムで稼働させ、増設しております。幾らでもインドから見れば代わりはあるんですね。特にこのロシアとの協定は協定終了の規定さえないわけです。また、先月、オーストラリアがインドに対するウラン供給を早期に開始するということを発表しましたのを受けて、今月初めには、インド政府は国産原発を、アメリカがなかなか造ってくれないんだったら、我々は国産原発を造るということを発表いたしました。
核実験をやれば協力を停止するという立場を明確にしているような国がインドに関与しないでいるということが、南アジア地域の不拡散とか平和という観点から見ていいシナリオとは私には思えません。
この関与という点に関しまして最後に私が強く申し上げておきたいことは、我々はインドを含むこの南アジア地域にもっと積極的に、原子力のみならず、地域の成長と平和に関与すべきだということであります。
我が国は幸いにしてインドだけではなく、パキスタン、アフガニスタン、ミャンマーといったこの地域のやや不安定とされる国々どの国とも友好的な関係を持っております。この強みを生かして地域の安定化にもっと積極的に関わるべきではないかと思います。経済はもちろんですけれども、民主化支援、市民社会の強化、そして安全保障上の懸念を和らげるような貢献が求められるかと思います。
具体的には、インドにつきましては、国力が増強していくとともに自己主張の度合いを強めている中国、さらに、過激主義の高まりの中で混迷の度を深めるパキスタンに対して、我々は関係国とともにどうやって、どう向き合って、どう安定化させるのかということをもっと真剣に議論していくべきではないかというのが私の考えでございます。
以上です。御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →私、所属機関は防衛省になりますけれども、私たちは一般大学と同様に独立した研究者として認められております。ですので、今日ここで述べますことも一研究者としての個人としての見解であることをまず御了解いただきたいかと思います。
私の専門としておりますのは、インドを中心とした南アジア地域の国際関係でございます。インド、パキスタン、印パ関係であるとか印中関係、また日印関係などを研究しております。
今回、日印間の民生用の原子力協力協定案をめぐります衆議院の議事録を拝見いたしますと、これまで専ら法的な観点、またエネルギー政策、不拡散政策といった観点からの議論はなされてきたかと思います。しかし、そもそも協定の相手国であるインドというのがどういう国であって、どんな外交理念、特性を持っているのか、どんな安全保障環境下に置かれているのかといったような議論はなかったように思います。
しかし、私から見て、それは極めて重要なポイントだと思っております。といいますのも、インドという国は、今でこそ我が国にとって非常に重要なパートナーだというふうに位置付けられていますけれども、それはつい最近の話でして、戦後長い間、我々にとってインドは疎遠な国でありました。戦後、私たちの関心は、同じアジアの中でも中国とか韓国、それからASEAN、それから大野先生がいらっしゃいますけれども、西アジア、中東、こういうところに向けられたというのが事実ではないかと思います。研究者も、政治学や国際関係論の分野では、この分野はもうほとんどおりませんで、その結果、この地域のことを私たちは余りにも知らないということが私の認識であります。
したがいまして、私は地域研究者としての視点から、今日は、インドが何を考えていて、それを取り巻く南アジア地域がどうなっているのかという、恐らくほかの参考人の方とはまた異なる視点に立った話かと思います。
以下、お配りしてあるレジュメに沿ってお話をしたいと思います。
特に、今回の協定案において大きな論点になっているのが、恐らく、インドが今後、万一核実験をした場合に協力を停止することになっているのかどうかというポイントであろうかと思います。もちろん、日本側はインドとの交渉の中でこれを協定に盛り込むように尽力されてきたかと思います。だからこそ、二〇一〇年に民主党の菅政権の下で始まった交渉が六年も歳月が掛かったんだというふうに認識しております。
しかし、私は研究者として、もうその当初から、インドがそういう文言を受け入れるなんてことはあり得ないというふうに認識、考えておりました。
それは、大きく分けて二つの理由によります。
第一は、政治的な理由であります。といいますのも、インドという国は、実は我々が思う以上に極めて大国意識が強くて自尊心の強い国なんです。それは今に始まっての話ではないんです。もう独立当初以来のものというふうに言っていいと思います。
初代の首相が進めたネルーの非同盟外交、非同盟運動、これはまさに米ソの冷戦構造の中でどちらにも入らないというふうに宣言し、そして、アジアやアフリカ、ラテンアメリカの国々の力を結集し、第三世界のリーダーとして自立的な外交を展開していったわけですね。
今や一九九一年に経済自由化して以降、ハードパワーの面でもインドはグローバルな大国として遜色ないレベルに達しつつあるわけです。その結果、非常に自信を深めているわけですね。特にインドという国に対して、巨大市場、民主主義の大国に対して、アメリカや日本、それからヨーロッパ各国だけではなくて、中国やロシアもこぞって接近する。そのほかの新興国も皆接近していくわけです。結果的に、それぞれがそれぞれの思惑から戦略的パートナーシップ関係というのを構築し、維持しております。インドはまさに引っ張りだこ状態でありまして、中にはより深い関係というものを求めてくるような国も、インドに対して求めてくるような国もございました。しかし、現在のナレンドラ・モディ政権も含めまして、そうした同盟というものに対してはインドは絶対にノー、否定的であります。
これは、同盟などというものを結べば、結局インドが大事にしてきた戦略的自律性、自主的外交というのが損なわれると考えているからであります。つまり、分かりやすく申しますと、我々は大国であって、自分たちのことは自分たちで決めるという主権意識、これが非常に強いですね。
このことを踏まえますと、インドにとって、核実験をすれば実験を停止せよというような文言を受け入れるなんていうことはもうあり得ないですね、右派から左派に至るまで。これは右左関係ない話であります。実験停止は、ですから、あくまでも自主的なもの、モラトリアムというのがインドの国内政治事情を考えれば当然の展開であったというふうに思います。
で、第二に、インドを取り巻く安全保障環境というものを指摘しておきたいと思います。この点も我々は余り認識していないかと思うんです。
インドが一九四七年の独立以来、戦火を交えたことのある二つの隣国、これがいずれも核兵器を保有し、依然としてインドに脅威を突き付けているという現実があります。
まず、一九六二年に国境戦争で敗れ、通常戦力でインドを凌駕する中国という存在です。この中国はNPT上の合法的な核兵器国として認められている。インドに比べて弾頭数、運搬能力のいずれにおいても圧倒的な存在であります。
確かに現在の政権の下では、経済面では協力関係が進んでいます。しかし、安全保障というイシューにおきましては、インドとの間で近年長い陸の国境線をめぐって中国人民解放軍からの攻勢が続いております。また、中国は、パキスタンはもちろんのこと、スリランカとかモルジブ、あるいはネパール、バングラデシュ、ミャンマー、こういったインドの周辺国、周辺海域に大規模な港湾を建設したり、軍事支援あるいは軍艦、潜水艦を寄港させたりというような動きを見せておりまして、影響力を拡大させつつあります。これがインドの非常に強い警戒感になるわけです。
で、もう一つのインドにとっての敵対的な隣国がパキスタンということになります。これは、インドにとって分離独立以来の宿命の対立関係というふうに言われております。
パキスタンはインドに比べると国土が小さいわけですね。ですから、戦略的縦深性を欠いているわけです。また、通常戦力の面でもインドに比べると明らかに劣るわけです。ですから、その不足分を補うべく、中国の支援を受けながら、それからカーン博士の核の闇市場、これはまあ北朝鮮の問題ともつながってくるわけですけれども、これを通じて核戦力を増強してまいりました。結果的に、今では核戦力という点ではインドと遜色ない能力を誇っております。
さらに、インドにとって気掛かりなのは、その力の弱い側のパキスタンは核を先に使うかもしれないという核の先行使用オプションを否定しないわけです。つまり、インドから見ると、どういう場合に核戦争までエスカレートするのかということが定かではないわけです。しかも、このパキスタンの情勢というのが最近は混沌としていまして、過激主義も台頭しているということが懸念になるわけです。
つまり、このようにインドは厳しい安全保障環境下にあるわけです。しかも、日本とは違って、いかなる国とも、先ほど申したように、正式な同盟関係を持たない。ですから、有事の際には独力で対処するという必要性があるわけです。
そうした状況を踏まえますと、インドが自らの核政策が拘束されるのを嫌うのは安全保障環境上も当然の論理ということになるかと思います。つまり、中国あるいはパキスタンが今後核実験をやろうが核能力を増強させようが、我々はやりませんということを約束するわけにはなかなかいかないわけです。
以上述べました二点を踏まえますと、今回の日印協定に、協定本文とは別の文書という形とはいえ、モラトリアムを続けることが協力の不可欠の基礎だということ、万一それが変更されれば協力を停止できるという日本側の立場が二国間の文書として盛り込まれているというのは、我々インド研究者の目から見ると、我が国の外務省としてはよく粘ったなという印象であります。インドから見ると、もう政治的にも安全保障の環境から見ても受け入れ可能なぎりぎりのラインだったというふうに思います。
この公文テキストというのが法的拘束力を持つのかどうかということがこの国会の中で議論されていることは承知しております。これについては、私は法学者じゃございませんので全く判断できませんけれども、インドの方から、報道ベースで、これは単なる記録だったんだと、あるいは公文テキストをインド外務省がプレーダウンするような動きを示しているのは、これは今までに述べましたインドの事情というものを踏まえれば理解されるかと思います。
つまり、インドから見ると、国内向けにも、それから中国とかパキスタンといったような外に対しましても、インドの核政策が拘束されているというふうにみなされるわけにはいかないという事情があるわけです。
とはいえ、大事な点は、私自身が現地で何度かインタビューしたり、あるいは現地の有識者の論調を分析したり、あるいはインドの与野党の発言を分析したところから明らかなのは、インドの中でもう広く、今後核実験をするのは我々は困難になっている、事実上非現実的だという認識であります。
これは、既に二〇〇八年のNSGの例外化扱い、それから印米合意のときに既に広がりつつありました。実は、アメリカも、このときライス国務長官が、核実験を再度インドがやった場合には協力に極めて深刻な結果がもたらされるという声明を出しております。これに対して、インド国内では、当時野党だったインド人民党、これ、今のモディ政権を支える与党なんですけれども、これが、実はこのとき、インドは核不拡散体制のわなにはまってしまったと、インドは自ら将来の核実験の権利を放棄したというふうに手厳しく批判していたんですね、これを繰り返し。この事実を指摘しておきたいと思います。
つまり、核実験は法的には不可能ではないとしても現実には難しいということをインドは十分認識しているということであります。特に、今、インドは国際社会の中でそれなりの地位を得ておりますし、利益を得ているわけです。北朝鮮とは置かれている状況が違うわけですね。そうした状況の中で、わざわざ世界から批判を浴び、孤立するような選択は取れないというのが政策担当者の本音であります。それは、核戦争にエスカレートしかねないと国際社会が危惧するような行動についても同じであります。
時間がありませんので、詳細は後でもし御質問があればお話をしますけれども、二〇〇八年以降のインドの行動というのを見ると、インドはパキスタンからの挑発行為に極めて抑制的な対応を取っています。こうした点を踏まえますと、この国会でも議論されてまいりましたもう一つの論点、つまり、インドに対する原子力協力が、核拡散だとか兵器への転用、また南アジアの軍拡競争につながるんではないかという懸念につきましても違った見方ができるんじゃないかと思います。
インドは、これはよく知られていることですけれども、NPTは不平等だと言って入るのを拒否しましたけれども、これまでの履歴を見ると、不拡散にコミットしてきたということは知られていると思います。今、この世界のメジャーパワーになろうとしているインドが、それをわざわざ変えるということは考えにくいわけです。
さて、我が国が今回のこの協定を結ばない、協力しない、インドと協力しないという選択をするとすればどうなるかということを考えてみたいと思います。
なるほど、唯一の被爆国として、また原発事故を起こした国として、世界の他の国が売ろうとも日本は取引しないというのは、一つの道義的な意味はあり得るかもしれません。しかし、そのそういう選択が、インドの核実験モラトリアムの維持だとか再処理プルトニウム、濃縮ウランの軍事転用の防止、南アジアの軍拡抑制に寄与するとは思えません。といいますのも、二〇〇八年にNSGでインド特例扱いが認められているという現実、これを踏まえる必要があります。つまり、現在ではどの国もインド市場に入れるわけですね。しかも、先ほど来申し上げていますように、インドは今や大もてなわけです。たとえ経済的な利益が当面見込めないとしても、原発の今の状況が厳しくて経済的な利益が見込めないとしても、より広い戦略的見地からインドとの関係を重視し、インドに対して売り込みを図るということが考えられるわけです。
確かに日本の技術が入らなければ、日本と提携関係にあるアメリカやフランスのメーカーもインドに出づらくなるということはあるでしょう。でも、インドのパートナーはそれだけじゃないんですね。特にロシア、これは既に南部クダンクラムで稼働させ、増設しております。幾らでもインドから見れば代わりはあるんですね。特にこのロシアとの協定は協定終了の規定さえないわけです。また、先月、オーストラリアがインドに対するウラン供給を早期に開始するということを発表しましたのを受けて、今月初めには、インド政府は国産原発を、アメリカがなかなか造ってくれないんだったら、我々は国産原発を造るということを発表いたしました。
核実験をやれば協力を停止するという立場を明確にしているような国がインドに関与しないでいるということが、南アジア地域の不拡散とか平和という観点から見ていいシナリオとは私には思えません。
この関与という点に関しまして最後に私が強く申し上げておきたいことは、我々はインドを含むこの南アジア地域にもっと積極的に、原子力のみならず、地域の成長と平和に関与すべきだということであります。
我が国は幸いにしてインドだけではなく、パキスタン、アフガニスタン、ミャンマーといったこの地域のやや不安定とされる国々どの国とも友好的な関係を持っております。この強みを生かして地域の安定化にもっと積極的に関わるべきではないかと思います。経済はもちろんですけれども、民主化支援、市民社会の強化、そして安全保障上の懸念を和らげるような貢献が求められるかと思います。
具体的には、インドにつきましては、国力が増強していくとともに自己主張の度合いを強めている中国、さらに、過激主義の高まりの中で混迷の度を深めるパキスタンに対して、我々は関係国とともにどうやって、どう向き合って、どう安定化させるのかということをもっと真剣に議論していくべきではないかというのが私の考えでございます。
以上です。御清聴ありがとうございました。
宇
戸
戸崎洋史#11
○参考人(戸崎洋史君) 日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの戸崎と申します。
本日は、このような機会を賜りまして誠にありがとうございます。
インドとの原子力協力に関しましては、国際的に、また日本国内でも幾つかの重要な論点から議論がなされてきたわけでございます。その全てを網羅できるわけではございませんけれども、例えばその国際システム、その中でパワーバランスが大きく変動しつつあるという中でのインドとの戦略関係、あるいは地球温暖化対策、大気汚染問題、エネルギー問題などへの原子力発電の役割、また原子力産業の国際展開といったような問題、そして最も重要な論点として、私が専門として勉強してまいりました核軍縮・不拡散問題との関係、より具体的に言えば、NPTの非締約国であるインドとの原子力協力というものが核軍縮・不拡散に持つ含意、インプリケーションという問題でございます。
御案内のように、インドはNPTに加入していない数少ない国の一つでありまして、NPTの普遍性、ユニバーサリティーという文脈の中で、インドなどNPT非締約国に対しましては非核兵器国としてNPTに加入するよう日本などは繰り返し求めてきたところであります。しかしながら、少なくとも当面、まあ予見し得る将来ということでありますけれども、インドによるNPTの加入の可能性というのは低いというのが残念ながら現状であろうかと思います。
また、インドは核兵器の廃絶を提唱する一方で、具体的な核軍縮というものを必ずしも実施してきたわけではなかったという問題がございました。より典型的なのがCTBTでございますけれども、一九九六年にこのCTBTが採択される際にインドは反対ということを明確にしまして、二年後の九八年、核爆発実験を実施したわけでございます。その後、インドは核実験のモラトリアムを宣言しましたけれども、CTBTにつきましては現在に至るまで署名、批准というものを拒否しておるという状況でございます。
そうしたインドと原子力協力を実施していくことの是非、あるいはこの原子力協力、また原子力協力の可能性というものを契機としてこのインドを核不拡散体制に取り込んでいくということ、インドに対して核軍縮・不拡散を実施させていくということの是非あるいはその実現可能性というものが議論されてきたというふうに理解いたしております。
このインドとの原子力協力というものがイシューとして浮上してきた端緒は、二〇〇五年のアメリカとインドによる原子力協力の推進に関する合意であったわけでございます。他方、NSG、原子力供給国グループでは、インドのようにNPTに加入せず、IAEAの包括的保障措置というものを受諾していない国に対しては原子力関連の資機材、技術というものを移転しないということが、まあ法的拘束力のない紳士協定としてのガイドラインでございますけれども、定められていたわけでございます。
そのNSGで、四十数か国のメンバー国による議論の結果として、二〇〇八年、インドを例外化するという決定がコンセンサスでなされていくわけでありますけれども、ただし、これは条件付だというところは留意しておく必要があろうかと思います。
例えば、インドの核施設に関しまして、民生目的と軍事目的のものをきちんと分離するいわゆる軍民分離、その上で、民生用の施設に対しましてはIAEAの保障措置を適用する、これによって民生から軍事への転用を防止するということ。それから、IAEA保障措置協定追加議定書を締結する、これは二〇一四年にインドとIAEAの間で発効いたしております。それから、インドが国内の輸出管理体制というものをしっかりしたものを確立し、実施していくこと。これによってインドからの拡散というものをきちんと防止する、こうした体制を確立するということ。そして、核実験に関するモラトリアムというものを改めて再確認するといったことなどが条件として出てきたわけでございます。
こうした形で、それまで核不拡散体制の全く外側にいたインドに対して、そうした形で核軍縮・不拡散の網を、まあ一部かもしれませんけれども、かぶせていくということがなされていった。言い換えれば、インドに対して核軍縮・不拡散を推進する一定のステップが取られていったということが言えるのではないかと思います。
現在までに、アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、カナダ、豪州、韓国、カザフスタン、アルゼンチンがそれぞれインドとの間で二国間協定というものを締結してまいりました。日本につきましては、二〇一〇年に協定の交渉が開始されまして、昨年十一月に協定が署名されたというところでございますけれども、ほかの国々とインドとの間ではおおむね一年から二年、まあ長くても数年だろうと思いますけれども、そうした期間で交渉が行われ、協定が成立していったということに対しまして、日印協定に関しましては交渉開始から成立まで六年という時間が費やされていったと。
その中で重要な論点でありましたのが、核実験の問題をこの協定の中でいかに取り扱うか、核実験問題に関するインドからのコミットメントをいかに取り付けていくかという問題でございました。
日印協定の第十四条では、いずれの締約国も書面による一年前の通告というものを経て協定を終了させる権利、それから協定の終了前にこの協力を停止する権利というものを持つことが規定されております。その上で、協定とは別に、見解及び了解に関する公文というものが採択されておりまして、これによれば、インドによる二〇〇八年九月五日の声明、ここでは核実験モラトリアムの再確認ということが言及されておるわけですけれども、これを日印の間の原子力協力の不可欠の基礎とするということ。で、この基礎に何らかの変更がある場合には、日本は協定第十四条に規定する権利、すなわち協定の終了、協力の停止というものを行使して、第十四条に定める手続を開始することができるということ。さらに、インドがこの九月五日の声明を再確認したということが記されておりまして、この公文には日本、それからインドが署名しておるというものでございます。
この協定、公文には核実験という文言は入っておりません。先ほど伊藤参考人からもお話ございましたけれども、インドにとっての核実験という問題の国内的な、まあセンシティブな問題であるということも恐らくあったのだろうと思いますけれども、恐らくインドが核実験という文言をこの協定の中に入れたくないというふうに主張していたのではないかというふうに推察されますけれども、しかしながら、この核実験モラトリアムを再確認した九月五日の声明というものを協力の基礎として公文に記載するということ、これによって核実験のモラトリアムが協力の基礎であるということを明記する。で、その基礎が崩れる、すなわちインドが核実験を実施した場合には協定の終了あるいは協力の停止の権利を日本は行使できるということを、公文という文書の形で改めて明確化することができたのではないかというふうに思います。
インドが核実験問題に関してある意味ここまで踏み込んだ形で二国間協定に合意したというのは、私の知る限りでは日印協定だけではないかというふうに思います。米印協定でも核実験に関して触れられているわけではないということであります。
その点での意義というものは、これまでの核実験禁止の問題に関するインドの姿勢ということから考えると、決して小さくないのではないかと。まさに日本だからこそ勝ち得たもの、あるいは日本が粘り強く交渉を続けた結果として勝ち得たものであって、非常に厳しい交渉の中で、日本として取らなければならないと考えていたポイントというものを何とか勝ち取った部分ではなかったかというふうに評価されるわけであります。
インドは、この原子力協力を受けるためには、核実験のモラトリアムを含むインドが行った核軍縮・不拡散に関するコミットメントというものを実施し続けなければならないわけでありますけれども、その意味で、そうした形でこれまで全くその外側におりました核不拡散体制というものにインドが入ってきたということは、一つ重要なこの日印協定、それからインドとの原子力協力の意義であったのではないかと思われます。
最後に、今後の核軍縮・不拡散に関する取組という観点からお話しさせていただければと思います。
核をめぐる状況というものが非常に流動化しておる、それから不安定性も高まっているという中で、現実的、具体的、それから効果的な核軍縮・不拡散というものを少しでも前に進めていくということが今極めて求められているのではないかと思います。
インドとの関係に引き付けて考えますと、日印協定の締結を始めとするインドとの原子力協力の国際的な枠組みづくりというものを契機としてなされてきましたこのインドの核不拡散体制への取り込みというものは、もちろん賛成、反対、双方の意見の残るところであろうかとは思いますけれども、インドがこれまで全くその核軍縮・不拡散の外側にいるアクターであったということを考えれば、重要な第一歩であったというふうに評価することもできようかと思います。
他方で、日本が掲げております核兵器のない世界という目標から考えれば、あるいはその実現のためにインドが実施すべき核軍縮・不拡散努力ということを考えますと、まだ成すべきことは少なくないということも事実であろうかと思います。そうであるとすれば、日印協定、それからインドとの原子力協力というものを契機としたインドの核不拡散体制、核軍縮・不拡散への取り込みというものを更に前進させるための取組というものが求められているというふうに思われます。
もちろん、これは非常に難しい問題でありまして、妙案があるわけではありませんけれども、インドによるNPTへの非核兵器国としての加入、それからCTBTへの署名、批准というものは、インドに対して引き続き繰り返し求め続けていくということは今後も重要であり必要であろうかと思います。
また、当面の課題として考えますと、インドによる軍民分離という文脈では、日本などが推進しようとしている兵器用核分裂性物質生産禁止条約、FMCTの重要性というものが一層高まってきたのではないかというふうに思われます。民の部分を日印協定などの取組によってIAEA保障措置でカバーしていくと。残る軍の部分もFMCTでカバーしていくということができれば、インドにより大きな核軍縮の網というものをかぶせることができるわけであります。インドは、このFMCTの締結に向けて協力するということを繰り返し約束しているわけでありまして、日本はこのインドを含む賛同国とともにこのFMCTの即時交渉開始、早期締結というものに向けて引き続き積極的に取り組むことが重要だというふうに考えております。
こうしたことを含めまして、日本は引き続き地域レベル、それから世界的なレベルで現実的、具体的、効果的な核軍縮・不拡散を推進するためのより積極的な取組というものを今後もリードしていく、そういう重要な役割を担っていくということがまさに核軍縮・不拡散をめぐる非常に厳しい時代であるからこそ求められているのではないかというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございました。
この発言だけを見る →本日は、このような機会を賜りまして誠にありがとうございます。
インドとの原子力協力に関しましては、国際的に、また日本国内でも幾つかの重要な論点から議論がなされてきたわけでございます。その全てを網羅できるわけではございませんけれども、例えばその国際システム、その中でパワーバランスが大きく変動しつつあるという中でのインドとの戦略関係、あるいは地球温暖化対策、大気汚染問題、エネルギー問題などへの原子力発電の役割、また原子力産業の国際展開といったような問題、そして最も重要な論点として、私が専門として勉強してまいりました核軍縮・不拡散問題との関係、より具体的に言えば、NPTの非締約国であるインドとの原子力協力というものが核軍縮・不拡散に持つ含意、インプリケーションという問題でございます。
御案内のように、インドはNPTに加入していない数少ない国の一つでありまして、NPTの普遍性、ユニバーサリティーという文脈の中で、インドなどNPT非締約国に対しましては非核兵器国としてNPTに加入するよう日本などは繰り返し求めてきたところであります。しかしながら、少なくとも当面、まあ予見し得る将来ということでありますけれども、インドによるNPTの加入の可能性というのは低いというのが残念ながら現状であろうかと思います。
また、インドは核兵器の廃絶を提唱する一方で、具体的な核軍縮というものを必ずしも実施してきたわけではなかったという問題がございました。より典型的なのがCTBTでございますけれども、一九九六年にこのCTBTが採択される際にインドは反対ということを明確にしまして、二年後の九八年、核爆発実験を実施したわけでございます。その後、インドは核実験のモラトリアムを宣言しましたけれども、CTBTにつきましては現在に至るまで署名、批准というものを拒否しておるという状況でございます。
そうしたインドと原子力協力を実施していくことの是非、あるいはこの原子力協力、また原子力協力の可能性というものを契機としてこのインドを核不拡散体制に取り込んでいくということ、インドに対して核軍縮・不拡散を実施させていくということの是非あるいはその実現可能性というものが議論されてきたというふうに理解いたしております。
このインドとの原子力協力というものがイシューとして浮上してきた端緒は、二〇〇五年のアメリカとインドによる原子力協力の推進に関する合意であったわけでございます。他方、NSG、原子力供給国グループでは、インドのようにNPTに加入せず、IAEAの包括的保障措置というものを受諾していない国に対しては原子力関連の資機材、技術というものを移転しないということが、まあ法的拘束力のない紳士協定としてのガイドラインでございますけれども、定められていたわけでございます。
そのNSGで、四十数か国のメンバー国による議論の結果として、二〇〇八年、インドを例外化するという決定がコンセンサスでなされていくわけでありますけれども、ただし、これは条件付だというところは留意しておく必要があろうかと思います。
例えば、インドの核施設に関しまして、民生目的と軍事目的のものをきちんと分離するいわゆる軍民分離、その上で、民生用の施設に対しましてはIAEAの保障措置を適用する、これによって民生から軍事への転用を防止するということ。それから、IAEA保障措置協定追加議定書を締結する、これは二〇一四年にインドとIAEAの間で発効いたしております。それから、インドが国内の輸出管理体制というものをしっかりしたものを確立し、実施していくこと。これによってインドからの拡散というものをきちんと防止する、こうした体制を確立するということ。そして、核実験に関するモラトリアムというものを改めて再確認するといったことなどが条件として出てきたわけでございます。
こうした形で、それまで核不拡散体制の全く外側にいたインドに対して、そうした形で核軍縮・不拡散の網を、まあ一部かもしれませんけれども、かぶせていくということがなされていった。言い換えれば、インドに対して核軍縮・不拡散を推進する一定のステップが取られていったということが言えるのではないかと思います。
現在までに、アメリカ、フランス、ロシア、イギリス、カナダ、豪州、韓国、カザフスタン、アルゼンチンがそれぞれインドとの間で二国間協定というものを締結してまいりました。日本につきましては、二〇一〇年に協定の交渉が開始されまして、昨年十一月に協定が署名されたというところでございますけれども、ほかの国々とインドとの間ではおおむね一年から二年、まあ長くても数年だろうと思いますけれども、そうした期間で交渉が行われ、協定が成立していったということに対しまして、日印協定に関しましては交渉開始から成立まで六年という時間が費やされていったと。
その中で重要な論点でありましたのが、核実験の問題をこの協定の中でいかに取り扱うか、核実験問題に関するインドからのコミットメントをいかに取り付けていくかという問題でございました。
日印協定の第十四条では、いずれの締約国も書面による一年前の通告というものを経て協定を終了させる権利、それから協定の終了前にこの協力を停止する権利というものを持つことが規定されております。その上で、協定とは別に、見解及び了解に関する公文というものが採択されておりまして、これによれば、インドによる二〇〇八年九月五日の声明、ここでは核実験モラトリアムの再確認ということが言及されておるわけですけれども、これを日印の間の原子力協力の不可欠の基礎とするということ。で、この基礎に何らかの変更がある場合には、日本は協定第十四条に規定する権利、すなわち協定の終了、協力の停止というものを行使して、第十四条に定める手続を開始することができるということ。さらに、インドがこの九月五日の声明を再確認したということが記されておりまして、この公文には日本、それからインドが署名しておるというものでございます。
この協定、公文には核実験という文言は入っておりません。先ほど伊藤参考人からもお話ございましたけれども、インドにとっての核実験という問題の国内的な、まあセンシティブな問題であるということも恐らくあったのだろうと思いますけれども、恐らくインドが核実験という文言をこの協定の中に入れたくないというふうに主張していたのではないかというふうに推察されますけれども、しかしながら、この核実験モラトリアムを再確認した九月五日の声明というものを協力の基礎として公文に記載するということ、これによって核実験のモラトリアムが協力の基礎であるということを明記する。で、その基礎が崩れる、すなわちインドが核実験を実施した場合には協定の終了あるいは協力の停止の権利を日本は行使できるということを、公文という文書の形で改めて明確化することができたのではないかというふうに思います。
インドが核実験問題に関してある意味ここまで踏み込んだ形で二国間協定に合意したというのは、私の知る限りでは日印協定だけではないかというふうに思います。米印協定でも核実験に関して触れられているわけではないということであります。
その点での意義というものは、これまでの核実験禁止の問題に関するインドの姿勢ということから考えると、決して小さくないのではないかと。まさに日本だからこそ勝ち得たもの、あるいは日本が粘り強く交渉を続けた結果として勝ち得たものであって、非常に厳しい交渉の中で、日本として取らなければならないと考えていたポイントというものを何とか勝ち取った部分ではなかったかというふうに評価されるわけであります。
インドは、この原子力協力を受けるためには、核実験のモラトリアムを含むインドが行った核軍縮・不拡散に関するコミットメントというものを実施し続けなければならないわけでありますけれども、その意味で、そうした形でこれまで全くその外側におりました核不拡散体制というものにインドが入ってきたということは、一つ重要なこの日印協定、それからインドとの原子力協力の意義であったのではないかと思われます。
最後に、今後の核軍縮・不拡散に関する取組という観点からお話しさせていただければと思います。
核をめぐる状況というものが非常に流動化しておる、それから不安定性も高まっているという中で、現実的、具体的、それから効果的な核軍縮・不拡散というものを少しでも前に進めていくということが今極めて求められているのではないかと思います。
インドとの関係に引き付けて考えますと、日印協定の締結を始めとするインドとの原子力協力の国際的な枠組みづくりというものを契機としてなされてきましたこのインドの核不拡散体制への取り込みというものは、もちろん賛成、反対、双方の意見の残るところであろうかとは思いますけれども、インドがこれまで全くその核軍縮・不拡散の外側にいるアクターであったということを考えれば、重要な第一歩であったというふうに評価することもできようかと思います。
他方で、日本が掲げております核兵器のない世界という目標から考えれば、あるいはその実現のためにインドが実施すべき核軍縮・不拡散努力ということを考えますと、まだ成すべきことは少なくないということも事実であろうかと思います。そうであるとすれば、日印協定、それからインドとの原子力協力というものを契機としたインドの核不拡散体制、核軍縮・不拡散への取り込みというものを更に前進させるための取組というものが求められているというふうに思われます。
もちろん、これは非常に難しい問題でありまして、妙案があるわけではありませんけれども、インドによるNPTへの非核兵器国としての加入、それからCTBTへの署名、批准というものは、インドに対して引き続き繰り返し求め続けていくということは今後も重要であり必要であろうかと思います。
また、当面の課題として考えますと、インドによる軍民分離という文脈では、日本などが推進しようとしている兵器用核分裂性物質生産禁止条約、FMCTの重要性というものが一層高まってきたのではないかというふうに思われます。民の部分を日印協定などの取組によってIAEA保障措置でカバーしていくと。残る軍の部分もFMCTでカバーしていくということができれば、インドにより大きな核軍縮の網というものをかぶせることができるわけであります。インドは、このFMCTの締結に向けて協力するということを繰り返し約束しているわけでありまして、日本はこのインドを含む賛同国とともにこのFMCTの即時交渉開始、早期締結というものに向けて引き続き積極的に取り組むことが重要だというふうに考えております。
こうしたことを含めまして、日本は引き続き地域レベル、それから世界的なレベルで現実的、具体的、効果的な核軍縮・不拡散を推進するためのより積極的な取組というものを今後もリードしていく、そういう重要な役割を担っていくということがまさに核軍縮・不拡散をめぐる非常に厳しい時代であるからこそ求められているのではないかというふうに思います。
以上でございます。ありがとうございました。
宇
鈴
鈴木達治郎#13
○参考人(鈴木達治郎君) ありがとうございます。
長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木と申します。よろしくお願いします。
先日、衆議院でも同じような機会を与えていただきまして、引き続きこの件について参考人として意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
私の方はお手元にパワーポイントの資料がありますので、それに基づいて御説明したいと思います。
最初の、二ページ目になりますが、要旨でありますが、私のポイントは四つであります。
まず、歴史的に考えまして、今回のこの日印原子力協定のそもそもの発端は、アメリカの政策転換、これは原子力供給者グループ、この中でインドを例外化するということをアメリカが申し出して、これが全ての発端なんですが、そのときも私は反対はしたわけですが、核軍縮・不拡散という立場から考えますと、インドを例外化する、国際不拡散体制の柱でありますNPTメンバー外の国に対して原子力協力をするということについて非常に大きな懸念を持っているということをそのときも申しましたが、これが今でもやはり問題ではあると私は考えております。
そのとき、日本政府の対応、二点目ですが、非常にぎりぎりまで考えられて、考慮されて、最終的に合意するということを決定されたわけです。そのときはっきりと、核実験をしたら協力破棄すべきであると決意表明されております。したがって、私は、そのときの日本政府の決意表明が一体どういうふうに今回の原子力協定、日印原子力協定に反映されるかということに注目してまいりました。
残念ながら、今回の日印協定とその附属公文書を読ませていただいた限りでは明文化にはなっていないということで、これははっきり言って玉虫色というふうに呼べるかと思います。両政府の交渉の結果だということですが、これでは先ほどの日本政府の決意表明と比べて残念ながら不十分だというのが私の意見であります。さらに、濃縮、再処理についてこれを認めるという、これは他の原子力協定と比べても大変緩い条件でありまして、結果的に間接的にインドの軍事プログラムを支援する可能性があるという点で私は大変懸念を持っております。
最後に、現在の国際情勢ですが、北朝鮮の問題は非常に問題になっておりますが、北朝鮮に対しても悪いメッセージを与えてしまう。かえって、核開発をした方が結果的に原子力協力を、緩い条件で協定を結ぶことができるというメッセージを送るんではないかと。それから、国際的な原子力市場についても当時とは大きく変わっておりまして、非常に厳しい、リスクが大きい原子力市場になっておりますので、現在の日本の状況を考えましても、被爆国としての日本の責任ということを考えましても、この原子力協定を結ぶことは日本の核不拡散・軍縮政策の信用度を落とすということにもなりますので、大きなマイナスになるのではないかというのが私の意見であります。
では、内容についてお話ししたいと思います。
まず、次のページは、御存じのとおり、既にアメリカとインドの原子力協定が、中身見ますと、大分インドに寄り添った、アメリカとして非常に大きな譲歩をしてしまった協定ではないかと。核実験についても記述はありませんし、濃縮、再処理についても認めるということで、この米印原子力協定よりも厳しいものを私としては是非結んでほしかったというのが正直なところであります。
次のページに行っていただきますと、このNSGのインド例外化に当たりまして、日本政府はかなり最後まで合意しなかったんですが、これは外務省のホームページに載っかっている文章ですが、我が国としては大局的観点からぎりぎりな判断として加わったと。明確にこのときに書かれていますけれども、核実験モラトリアム維持がされない場合は、例外化も失効だし、それから原子力協力を停止すべきであるということを日本政府としてははっきりおっしゃっておられます。
二〇一〇年に、当時の民主党政権だったんですが、私は原子力委員会におりまして、この日印原子力協力協定についての見解文を書かせていただいたわけですが、そのときの文章ですけれども、ちょっと読みにくい文章ではありますが、要は、約束と行動を守るということを、先ほどの文章を守るということは最低条件であって、更により強い条件を結んでほしいということがその二番目の文章であります。これは特に、被爆国日本の交渉ということでありますから、国民の強い願いを十分に踏まえて、核軍縮に向けて一歩でも前へ進むような協力協定にしてほしいということをお願いしたわけであります。
次に、中身に入りますが、先ほど申しましたように、私が注目してきたのは、インドが核実験を実施したら協定を破棄するということが明文化されるかどうかと。先ほど既に戸崎参考人の方からもありましたが、六年も多分交渉掛かった最大の理由はここにあるんではないかと私も思っております。
それで、次のポイントとして、この協力協定によってインドの軍事プログラムが少しでも支援されるような形にならないかということを私は心配しておりまして、最も大きなポイントとして、再処理、濃縮技術の移転、あるいは再処理、濃縮を認めるかどうかと。これは原理原則の問題でありまして、実際にこれがどういうふうに文章に書かれるかということを注目してまいりました。
残念ながら、この二つとも私は期待を裏切られたということであります。核実験の条件は玉虫色でありまして、さらに、機微な技術移転、濃縮、再処理を容認しているということであります。これが、その下に書かれています第二条、第十一条ですね。特に第十一条は、濃縮、再処理を認めるだけではなくて、インド国内で再処理することができるに加えて、高濃縮ウランも可能というふうに、同意が必要になっていますが、認めているというところは大変心配なところであります。
再処理を認めるということは、インドの、これは保障措置下に置かれるというふうに書かれていますが、既にインドが行っている再処理に加えて更に再処理能力を高めることになりますので、それから、平和利用とはいえ、兵器転用可能な核物質であるプルトニウムの生産量を増やすことになりますから、これ自体、私自身は反対でありますので、この点が非常に大きな問題として今後懸念されるわけであります。
次のページは例の公文書の文章なんですが、これは既にもう戸崎参考人の方からお話がありましたとおり、この文章を読んで、両国が確認したというだけでは自動的に協定破棄とはなかなか読めないと。これは、自動的に破棄にならないということは交渉しなきゃいけないということですので、これは米印原子力協定と大差ないというふうに私は読んで解釈しております。
次に、八ページに書かれているのは、日本が本来結ぶべき原子力協定のモデルとして、既に日本が結んで締結しているものの中で最も優れているものと私が解釈しているのがヨルダンとの、あとはUAEもそうですが、明確な濃縮、再処理の禁止と。日本政府は、原則として濃縮、再処理については移転も行わない、それから、できればそれぞれの国で濃縮、再処理はしてほしくないという原点を、政策を持っておられるというふうに解釈しているんですが、残念ながら明記されていないんですね。
アメリカの場合には国内に核不拡散法というのがありまして、濃縮、再処理技術の移転禁止、それから濃縮、再処理加工を認めないということがあるわけですが、日本はそういう技術移転の禁止もありませんし、それから原則として各国で濃縮、再処理を認めないという政策を明記されておりませんので、各国に応じて、状況に応じてこういう条件を付けるということになっております。
私としては、現在、国際的に兵器転用の核物質というのが更に増えている状況を考えますと、濃縮、再処理をできるだけ避けていくと、できるだけ広げていかないという政策が重要ではないかというふうに考えております。したがって、このモデルとなるヨルダンとの二国間協力のような協定を今後も結んでいただきたいというふうに思います。
次のページは、日本パグウォッシュ会議、私、パグウォッシュ会議の日本の代表でもあるのですが、そこでインドとの原子力協定についての意見を述べさせていただいて、ここでも、日本がもしインドと協定を結ぶのであれば、他国の協定より厳しい条件で結んでほしいということを要求いたしました。
ここで、三番目ですね、特に再処理、濃縮の技術移転禁止、あるいはインド国内における再処理、濃縮の原則禁止ということを是非言っていただきたい。それから四番目、これは今、戸崎参考人からもありましたが、やはり協定を結ぶことによってインドが核軍縮により積極的に取り組むように持っていくべきであって、その辺も今回は明確にはされていないということは残念であります。
次のページですね、これが私が今申しましたプルトニウムの生産量の推移なんですが、世界的には五百トンもあるプルトニウムで、ここで見る限りはインド、イスラエル、パキスタンは現在も生産しているところなんですけれども、ほかの核保有国は全て軍事用のプルトニウムはもう生産を禁止しております。
このインド、パキスタン、イスラエルだけが生産をしているわけですが、インドのプルトニウム在庫量を見ますと、このグラフでは〇・五トンぐらいになっておりますが、これは実はインドが、インド自身は民生用と呼んでいるんですが、保障措置に掛かっていないプルトニウムが約二・一から八・一トンの間、したがって五トン近く持っていると。これはいつでも核兵器に転用できると。これを戦略的備蓄というふうに彼らは呼んでいまして、これを我々の核兵器廃絶研究センターの方では民生用とは呼べないということで軍事用の方に入れています。そうしますと五・七トンという量になるわけですが、このようにインドは、平和利用とはいえども、いつでも軍事利用に転用できるような形でプルトニウムを生産しているわけですから、これがますます今後増えていくということについて私は大変懸念を持っているということであります。
最後、結論ですが、現在の国際環境下におかれますと、今北朝鮮の核開発に対して日本は厳しい対応をしているわけですが、その一方で、既に核開発をしてしまったインドに原子力協力を進め、さらに濃縮、再処理を容認するという条件で結んでしまいますと、北朝鮮に対しても悪いメッセージを送ると。
それから、韓国、実は韓国は日本が再処理を進めていることに対して、韓国も再処理を進めたいと、で、米国にそれを要求しているわけですが、これが、日本が自分は再処理を持っていると。それによってほかの国に、例えばヨルダンには認めないけどインドには認めると。結局、持っている国に対してはいいよと言って、持っていない国に対しては駄目よと言って、そういうふうな不公平感がこの協定後やはり拡大していく可能性があると。こういう再処理についての不公平感というのは今後大きな問題になると私は懸念しておりまして、今後、是非世界中で再処理を抑えていく方向で日本国内でも考えていただきたいと。
それから最後は、原子力輸出に対するニーズは減少しているということですね。リスクが非常に大きくなっていると。それから、原子力でなくても、エネルギー問題、ほかの技術もあるわけですから、温暖化対策として、日本とインドの関係を進めていく上で、別に原子力以外の分野ででも拡大をしていくことはできるんではないかということで、現時点で日印原子力協定を批准するリスクはメリットよりも大きいというのが私の意見であります。
以上でございます。清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木と申します。よろしくお願いします。
先日、衆議院でも同じような機会を与えていただきまして、引き続きこの件について参考人として意見を述べさせていただく機会をいただきまして、ありがとうございます。
私の方はお手元にパワーポイントの資料がありますので、それに基づいて御説明したいと思います。
最初の、二ページ目になりますが、要旨でありますが、私のポイントは四つであります。
まず、歴史的に考えまして、今回のこの日印原子力協定のそもそもの発端は、アメリカの政策転換、これは原子力供給者グループ、この中でインドを例外化するということをアメリカが申し出して、これが全ての発端なんですが、そのときも私は反対はしたわけですが、核軍縮・不拡散という立場から考えますと、インドを例外化する、国際不拡散体制の柱でありますNPTメンバー外の国に対して原子力協力をするということについて非常に大きな懸念を持っているということをそのときも申しましたが、これが今でもやはり問題ではあると私は考えております。
そのとき、日本政府の対応、二点目ですが、非常にぎりぎりまで考えられて、考慮されて、最終的に合意するということを決定されたわけです。そのときはっきりと、核実験をしたら協力破棄すべきであると決意表明されております。したがって、私は、そのときの日本政府の決意表明が一体どういうふうに今回の原子力協定、日印原子力協定に反映されるかということに注目してまいりました。
残念ながら、今回の日印協定とその附属公文書を読ませていただいた限りでは明文化にはなっていないということで、これははっきり言って玉虫色というふうに呼べるかと思います。両政府の交渉の結果だということですが、これでは先ほどの日本政府の決意表明と比べて残念ながら不十分だというのが私の意見であります。さらに、濃縮、再処理についてこれを認めるという、これは他の原子力協定と比べても大変緩い条件でありまして、結果的に間接的にインドの軍事プログラムを支援する可能性があるという点で私は大変懸念を持っております。
最後に、現在の国際情勢ですが、北朝鮮の問題は非常に問題になっておりますが、北朝鮮に対しても悪いメッセージを与えてしまう。かえって、核開発をした方が結果的に原子力協力を、緩い条件で協定を結ぶことができるというメッセージを送るんではないかと。それから、国際的な原子力市場についても当時とは大きく変わっておりまして、非常に厳しい、リスクが大きい原子力市場になっておりますので、現在の日本の状況を考えましても、被爆国としての日本の責任ということを考えましても、この原子力協定を結ぶことは日本の核不拡散・軍縮政策の信用度を落とすということにもなりますので、大きなマイナスになるのではないかというのが私の意見であります。
では、内容についてお話ししたいと思います。
まず、次のページは、御存じのとおり、既にアメリカとインドの原子力協定が、中身見ますと、大分インドに寄り添った、アメリカとして非常に大きな譲歩をしてしまった協定ではないかと。核実験についても記述はありませんし、濃縮、再処理についても認めるということで、この米印原子力協定よりも厳しいものを私としては是非結んでほしかったというのが正直なところであります。
次のページに行っていただきますと、このNSGのインド例外化に当たりまして、日本政府はかなり最後まで合意しなかったんですが、これは外務省のホームページに載っかっている文章ですが、我が国としては大局的観点からぎりぎりな判断として加わったと。明確にこのときに書かれていますけれども、核実験モラトリアム維持がされない場合は、例外化も失効だし、それから原子力協力を停止すべきであるということを日本政府としてははっきりおっしゃっておられます。
二〇一〇年に、当時の民主党政権だったんですが、私は原子力委員会におりまして、この日印原子力協力協定についての見解文を書かせていただいたわけですが、そのときの文章ですけれども、ちょっと読みにくい文章ではありますが、要は、約束と行動を守るということを、先ほどの文章を守るということは最低条件であって、更により強い条件を結んでほしいということがその二番目の文章であります。これは特に、被爆国日本の交渉ということでありますから、国民の強い願いを十分に踏まえて、核軍縮に向けて一歩でも前へ進むような協力協定にしてほしいということをお願いしたわけであります。
次に、中身に入りますが、先ほど申しましたように、私が注目してきたのは、インドが核実験を実施したら協定を破棄するということが明文化されるかどうかと。先ほど既に戸崎参考人の方からもありましたが、六年も多分交渉掛かった最大の理由はここにあるんではないかと私も思っております。
それで、次のポイントとして、この協力協定によってインドの軍事プログラムが少しでも支援されるような形にならないかということを私は心配しておりまして、最も大きなポイントとして、再処理、濃縮技術の移転、あるいは再処理、濃縮を認めるかどうかと。これは原理原則の問題でありまして、実際にこれがどういうふうに文章に書かれるかということを注目してまいりました。
残念ながら、この二つとも私は期待を裏切られたということであります。核実験の条件は玉虫色でありまして、さらに、機微な技術移転、濃縮、再処理を容認しているということであります。これが、その下に書かれています第二条、第十一条ですね。特に第十一条は、濃縮、再処理を認めるだけではなくて、インド国内で再処理することができるに加えて、高濃縮ウランも可能というふうに、同意が必要になっていますが、認めているというところは大変心配なところであります。
再処理を認めるということは、インドの、これは保障措置下に置かれるというふうに書かれていますが、既にインドが行っている再処理に加えて更に再処理能力を高めることになりますので、それから、平和利用とはいえ、兵器転用可能な核物質であるプルトニウムの生産量を増やすことになりますから、これ自体、私自身は反対でありますので、この点が非常に大きな問題として今後懸念されるわけであります。
次のページは例の公文書の文章なんですが、これは既にもう戸崎参考人の方からお話がありましたとおり、この文章を読んで、両国が確認したというだけでは自動的に協定破棄とはなかなか読めないと。これは、自動的に破棄にならないということは交渉しなきゃいけないということですので、これは米印原子力協定と大差ないというふうに私は読んで解釈しております。
次に、八ページに書かれているのは、日本が本来結ぶべき原子力協定のモデルとして、既に日本が結んで締結しているものの中で最も優れているものと私が解釈しているのがヨルダンとの、あとはUAEもそうですが、明確な濃縮、再処理の禁止と。日本政府は、原則として濃縮、再処理については移転も行わない、それから、できればそれぞれの国で濃縮、再処理はしてほしくないという原点を、政策を持っておられるというふうに解釈しているんですが、残念ながら明記されていないんですね。
アメリカの場合には国内に核不拡散法というのがありまして、濃縮、再処理技術の移転禁止、それから濃縮、再処理加工を認めないということがあるわけですが、日本はそういう技術移転の禁止もありませんし、それから原則として各国で濃縮、再処理を認めないという政策を明記されておりませんので、各国に応じて、状況に応じてこういう条件を付けるということになっております。
私としては、現在、国際的に兵器転用の核物質というのが更に増えている状況を考えますと、濃縮、再処理をできるだけ避けていくと、できるだけ広げていかないという政策が重要ではないかというふうに考えております。したがって、このモデルとなるヨルダンとの二国間協力のような協定を今後も結んでいただきたいというふうに思います。
次のページは、日本パグウォッシュ会議、私、パグウォッシュ会議の日本の代表でもあるのですが、そこでインドとの原子力協定についての意見を述べさせていただいて、ここでも、日本がもしインドと協定を結ぶのであれば、他国の協定より厳しい条件で結んでほしいということを要求いたしました。
ここで、三番目ですね、特に再処理、濃縮の技術移転禁止、あるいはインド国内における再処理、濃縮の原則禁止ということを是非言っていただきたい。それから四番目、これは今、戸崎参考人からもありましたが、やはり協定を結ぶことによってインドが核軍縮により積極的に取り組むように持っていくべきであって、その辺も今回は明確にはされていないということは残念であります。
次のページですね、これが私が今申しましたプルトニウムの生産量の推移なんですが、世界的には五百トンもあるプルトニウムで、ここで見る限りはインド、イスラエル、パキスタンは現在も生産しているところなんですけれども、ほかの核保有国は全て軍事用のプルトニウムはもう生産を禁止しております。
このインド、パキスタン、イスラエルだけが生産をしているわけですが、インドのプルトニウム在庫量を見ますと、このグラフでは〇・五トンぐらいになっておりますが、これは実はインドが、インド自身は民生用と呼んでいるんですが、保障措置に掛かっていないプルトニウムが約二・一から八・一トンの間、したがって五トン近く持っていると。これはいつでも核兵器に転用できると。これを戦略的備蓄というふうに彼らは呼んでいまして、これを我々の核兵器廃絶研究センターの方では民生用とは呼べないということで軍事用の方に入れています。そうしますと五・七トンという量になるわけですが、このようにインドは、平和利用とはいえども、いつでも軍事利用に転用できるような形でプルトニウムを生産しているわけですから、これがますます今後増えていくということについて私は大変懸念を持っているということであります。
最後、結論ですが、現在の国際環境下におかれますと、今北朝鮮の核開発に対して日本は厳しい対応をしているわけですが、その一方で、既に核開発をしてしまったインドに原子力協力を進め、さらに濃縮、再処理を容認するという条件で結んでしまいますと、北朝鮮に対しても悪いメッセージを送ると。
それから、韓国、実は韓国は日本が再処理を進めていることに対して、韓国も再処理を進めたいと、で、米国にそれを要求しているわけですが、これが、日本が自分は再処理を持っていると。それによってほかの国に、例えばヨルダンには認めないけどインドには認めると。結局、持っている国に対してはいいよと言って、持っていない国に対しては駄目よと言って、そういうふうな不公平感がこの協定後やはり拡大していく可能性があると。こういう再処理についての不公平感というのは今後大きな問題になると私は懸念しておりまして、今後、是非世界中で再処理を抑えていく方向で日本国内でも考えていただきたいと。
それから最後は、原子力輸出に対するニーズは減少しているということですね。リスクが非常に大きくなっていると。それから、原子力でなくても、エネルギー問題、ほかの技術もあるわけですから、温暖化対策として、日本とインドの関係を進めていく上で、別に原子力以外の分野ででも拡大をしていくことはできるんではないかということで、現時点で日印原子力協定を批准するリスクはメリットよりも大きいというのが私の意見であります。
以上でございます。清聴ありがとうございました。
宇
川
川崎哲#15
○参考人(川崎哲君) ありがとうございます。ピースボートの川崎哲と申します。
この度は、意見を述べる機会をいただきまして誠にありがとうございます。
日印原子力協力協定をこのまま承認することは、核兵器廃絶を掲げる日本外交の基本姿勢を著しく傷つけるものであるという観点から意見を申し述べたいと思います。主に、世界的な核軍縮・不拡散との関係でお話をさせていただきます。と同時に、これは日本が福島の原発事故から何を学ぶのかということが問われる問題でもあります。
私からは、第一に、インド、パキスタンの核軍拡競争の現状について、第二に、そうした中で、今回の日印協定の内容について、第三に、インドの核保有を容認することがアジア、そして日本の安全保障に与える影響について、第四に、核不拡散条約NPT、また核兵器禁止条約といった国際的な枠組みとの関係についてお話をしたいと思います。そして最後に、インドへの原発輸出そのものがはらむ問題についても触れたいと思っております。
第一に、インド、パキスタンの核軍拡競争についてです。
インドは、NPTに締約をしていない核兵器保有国であります。一九九八年五月の核実験以来、五百キログラム以上の兵器級プルトニウムを生産し、百発から百二十発の核弾頭を保有していると見られております。これらの運搬手段として弾道ミサイルや原子力潜水艦の開発を続けています。対するパキスタンも、百十発から百三十発の核弾頭を有し、やはり弾道ミサイルを開発しております。国境紛争を抱える両国は、共に核戦力の増強を図っております。
安倍総理は先日、G7サミット後の記者会見で、北朝鮮の核兵器について、世界全体の脅威であるとの認識を示されました。まさにそのとおりでありますが、それは北朝鮮に限ったことではありません。インドの核兵器もしかりです。南アジアの核軍拡競争は世界全体を危険にさらします。
一九八五年にノーベル平和賞を受賞した国際組織、核戦争防止国際医師会議、IPPNWは、二〇一三年に「核の飢饉」と題する報告書を発表しております。報告書は、仮にインドとパキスタンの間で今日核戦争が勃発した場合、両国でおびただしい数の死傷者が出て、深刻な放射能汚染がもたらされるのは当然のこと、核爆発の影響は地球規模で気候変動をもたらすとしております。いわゆる核の冬により、食料の生産が打撃を受け、世界で二十億人もの人々が飢餓に苦しむだろうと、科学的調査結果として警告をしております。
そのような核戦争は両国間の抑止バランスによって防げるだろうという楽観的な見方がありますが、これには確証がありません。インドとパキスタンの核兵器の指揮系統が十分に理性的に制御されると誰が言い切れるでしょうか。統治の不安定性、テロリズム、サイバー攻撃への脆弱性の問題もあります。
福島の原発事故が起きたとき、安全神話ということが言われましたが、これは核兵器にも当てはめて考えなければなりません。核兵器をつかさどる施設やシステムに安全性や統治上の欠陥があれば、偶発的なあるいは事故による核兵器の発射の危険性さえあるのです。
今日、世界にある九つの核兵器保有国の中でも、インドとパキスタンは武力紛争とテロリズムの広がる中東地域に隣接していることもあり、極めて現実的な核戦争の脅威を抱えている国々だと言えます。仮にインド自身が危険な道を歩まなかったとしても、パキスタンへの波及効果ということを考えなければなりません。インドに対する原子力協力の是非に関する議論は、そのような危機意識を踏まえてなされなければなりません。
そこで、第二に、今回の日印協定の内容上の問題についてお話をいたします。
これまでの日本国内の議論では、インドが核実験を行った場合に協定を停止できるのかどうかに焦点が当てられてきました。現在の協定では、附属文書にその趣旨が日本側の見解として書かれているのみで、極めて弱いと言わざるを得ません。これに対して政府は、核実験が行われれば協定を終了すると主張しておられます。しかし、核実験をしたら止めればいいといって済まされる問題ではありません。
一九九八年にインドとパキスタンが核実験をした際、日本は直ちに両国に対して経済制裁を発動しました。日本が共同提案国となった国連安保理決議一一七二は、両国の核・ミサイル計画に何らかの形で資することとなる設備、物質及び関連技術の輸出を防止することを全ての国に呼びかけました。仮にインドがまた核実験を行ったならば、同様の措置がとられるべきであります。原子力協力が停止されるのは、言わば当然のことであります。
それゆえ、核実験による協力の終了というのは、交渉して勝ち取ったと主張するには余りにも弱い条件であると言わなければなりません。交渉をして実質を取るというのであれば、インドの核兵器開発に実質的な歯止めを掛ける、あるいはインドの核軍縮を実質的に前進させるような条件でなければならないはずです。
そのためには、最低限、包括的核実験禁止条約、CTBTへの早期署名、批准の約束をインドから得るべきでした。しかし、今回の協定妥結に当たって、インドは何らCTBTに対して約束をしておりません。そもそも、国連総会で日本が共同提案している核兵器廃絶決議案やCTBT署名、批准を促す決議案に対しても、インドは賛成票を投じておりません。
協定妥結に当たり日本政府は、インドによる二〇〇八年九月五日の声明が不可欠の基礎だとしています。そこには核実験のモラトリアムこそ書かれていますけれども、今日、核兵器の開発は必ずしも核爆発実験を行わなくても進めることができます。未臨界核実験やコンピューターシミュレーションによる開発にどう対応するのか。同声明でインドは、核軍拡競争を含むいかなる軍備競争にも参加しないと述べています。インドが核軍拡を行っていないと主張するのなら、それを示す透明性措置が必要です。日本は、NPT再検討会議で核兵器国に透明性措置を求めておりますけれども、インドの場合だけは、自分たちは軍拡していないという主張を証拠もなく信じるということでしょうか。
インドはまた、兵器用核分裂性物質の生産禁止条約、FMCTの交渉に向けて他国と協力すると言っています。しかし、これは、FMCT交渉にパキスタンが反対していることを見越した上での表明の可能性があります。本来、インド自身から兵器用核分裂性物質の生産の停止の約束を取るべきですが、それもなされておりません。
反対に、日本政府は、今回の日印協定の中でインドに対して使用済核燃料の再処理の事前同意を与えております。再処理を認めるということは、核兵器の材料物質となり得るプルトニウムの生産を認めるということです。
インドは、国際原子力機関、IAEAの保障措置を一定程度受け入れたとはいえ、高速増殖炉並びに濃縮、再処理に関わる核燃料施設などが保障措置の対象外になっております。つまり、インドの核活動に対する国際的な監視体制はいまだ不十分です。インドが民生用の再処理として生産したプルトニウムが軍事転用されないことを完全に検証することはできません。
仮に日本の協力によって得られた核物質が平和目的に限定されていたとしても、それによってインドは自国産の原料を兵器目的に使いやすくなります。核実験を行ったら停止すると言いますけれども、核物質の生産を手助けし、その核物質によって核実験が行われてしまったら、そこで停止してももはや手遅れであります。その後の施設や物質の返還要求というのも現実味がありません。すなわち、現状におけるインドに対する再処理の容認は、同国による核兵器開発を間接支援することになる危険性をはらんでおります。
日本政府は、今回の協定がインドを国際的核不拡散体制に実質的に取り込む手段であると弁明されております。しかし、ここまで見たように、実質的にインドの核兵器開発に歯止めを掛ける、あるいは核軍縮に向かわせたりする措置というものは何ら担保されておりません。
インドは他国に核兵器を移転しないと言っている、すなわち核不拡散の約束をしているではないかという指摘があります。しかし、NPTに入らず核兵器を保有した国がその後他国に移転しなければそれで許される、核不拡散のルールというのはそんなに緩いものでよいのでしょうか。
そこで、第三に、このようなインドに対する特例的な協力が、広くアジア、ひいては日本の安全保障に対する影響というものを考えてみたいと思います。
インドが認められるのであれば、パキスタンも同等の扱いを国際的に受けることを求めてくるでしょう。インド、パキスタンが互いを刺激し合って核兵器物質の増産や核戦力増強に走りかねません。さらに、インドが開発している弾道ミサイルには北京や上海を射程に入れるものがあります。つまり、インドの核軍拡は中国の核軍拡を刺激する可能性を十分に含みます。インドを支援することが対中国の牽制として役に立つのだといった単純な議論では済まされません。アジア全体の軍拡競争となれば、それは日本の平和と安全にとって重大な意味を持ちます。
北朝鮮への影響も考えなければなりません。最初は厳しい制裁を受けても、結局は国際社会は認めてくれるのだ、他国に核兵器を移転さえしなければそれで許されるのだ、そのような誤ったメッセージを北朝鮮に送ることになるのではないでしょうか。今、北朝鮮に対して国際社会が彼らの核を容認することは決してないということを分からせなければいけないこのときに、日本はインドの核武装を容認するような行動を取ろうとしています。これは日本の安全保障にとって妥当な行為とは思えません。
第四に、こうした日本の政策を国際的な核軍縮・不拡散の枠組みの中で検証してみたいと思います。
今月初め、岸田外務大臣は、ウィーンで開かれた二〇二〇年NPT再検討会議第一回準備委員会に参加され、NPTは核軍縮・不拡散の礎石であるとの立場を改めて表明されました。しかし、この立場とは裏腹に、日本はインドの核武装を認め、核軍拡競争の助長に手を貸すことによって、NPT体制を根底から傷つけようとしております。
一方で、今、NPT体制を更に強化しつつ、核兵器そのものを全面的に禁止するという新たな国際枠組みが論じられています。それが、三月に交渉が開始された核兵器禁止条約であります。これは、二〇一五年のNPT再検討会議、二〇一六年の国連作業部会での議論を踏まえ、国連総会で加盟国の三分の二近い賛同を得て始まったプロセスです。コスタリカが議長を務める交渉会議の第一会期には百三十を超える国々が参加しました。しかし、日本政府はこの条約交渉への参加をボイコットしています。
核兵器禁止条約は、いかなる者によるいかなる核兵器の使用をも国際人道法違反と認定し、いかなる状況においてもいかなる国によっても核兵器が開発、保有、使用されてはならないと定める条約であります。
先週発表された議長の条約草案には、ヒバクシャという日本語を用いて、彼らの苦難や努力に対する言及が盛り込まれました。草案の発表に当たり、議長は、かつて南アフリカが保持していた核兵器を廃棄したことに触れ、そのようなモデルを今後の核軍縮にも適用するべきであると提案しております。NPT上の五核兵器国だけでなく、全ての核保有国にどのように核を廃棄させていくかという具体的な議論が始まっているのです。
日本政府は、NPT体制が重要だと言いながら、これに穴を空ける日印協定を進め、これを強化する核兵器禁止条約の議論には背を向けております。多国間の非差別的で強力な規範を形成する核兵器禁止条約の交渉には積極的に参加すべきです。そのような国際枠組みをつくることは、NPTの弱点を補強し、日本自身の安全を高めることにもなります。
広島、長崎両市長は、インドに対する原子力協力はNPT体制の空洞化を招き、核兵器廃絶の障害となりかねないとして、政府に対して協定交渉の中止を繰り返し要請してきました。核兵器の惨害を身をもって体験した被爆者らを代弁するこのような声にしっかりと耳を傾けていただきたいと思います。
最後に、改めて六年前の福島の原発事故を想起したいと思います。
メルトダウンした原子炉の収束の道筋すら見通せない中で、国内での原発の新増設ができないから海外に原発を輸出しようというのはおよそ身勝手な話です。国内の原発の安全基準強化がいまだ道半ばであり、避難者を含む被災者の多くが生活再建を阻む様々な壁に苦しみ続けている状況がある中で、原発輸出を推し進めようという国の姿勢は深刻な倫理上の問題をはらんでおります。インドでは、原発建設に反対する漁民など地元住民の運動に対して、政府が強圧的な対応に出て多数の死傷者が出る事態になっております。日本の市民として、我が政府がそのようなことに間接的だとしても加担するようなことは容認することができません。
さらに、海外の原発事業で巨大な損失を出した東芝が経営危機に陥っている現状を見れば、原発輸出は産業の観点からも経済合理性があるとは言えなくなってきております。
日本は、自らの非核外交の信頼性を失い、アジアにおける核の脅威を高めるこのような合意を凍結すべきであります。そして、日本政府はインド政府に対して具体的に核軍縮をさせるための外交交渉をすべきであり、国会はそのことを政府に対して強く求めるべきであると考えます。
御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →この度は、意見を述べる機会をいただきまして誠にありがとうございます。
日印原子力協力協定をこのまま承認することは、核兵器廃絶を掲げる日本外交の基本姿勢を著しく傷つけるものであるという観点から意見を申し述べたいと思います。主に、世界的な核軍縮・不拡散との関係でお話をさせていただきます。と同時に、これは日本が福島の原発事故から何を学ぶのかということが問われる問題でもあります。
私からは、第一に、インド、パキスタンの核軍拡競争の現状について、第二に、そうした中で、今回の日印協定の内容について、第三に、インドの核保有を容認することがアジア、そして日本の安全保障に与える影響について、第四に、核不拡散条約NPT、また核兵器禁止条約といった国際的な枠組みとの関係についてお話をしたいと思います。そして最後に、インドへの原発輸出そのものがはらむ問題についても触れたいと思っております。
第一に、インド、パキスタンの核軍拡競争についてです。
インドは、NPTに締約をしていない核兵器保有国であります。一九九八年五月の核実験以来、五百キログラム以上の兵器級プルトニウムを生産し、百発から百二十発の核弾頭を保有していると見られております。これらの運搬手段として弾道ミサイルや原子力潜水艦の開発を続けています。対するパキスタンも、百十発から百三十発の核弾頭を有し、やはり弾道ミサイルを開発しております。国境紛争を抱える両国は、共に核戦力の増強を図っております。
安倍総理は先日、G7サミット後の記者会見で、北朝鮮の核兵器について、世界全体の脅威であるとの認識を示されました。まさにそのとおりでありますが、それは北朝鮮に限ったことではありません。インドの核兵器もしかりです。南アジアの核軍拡競争は世界全体を危険にさらします。
一九八五年にノーベル平和賞を受賞した国際組織、核戦争防止国際医師会議、IPPNWは、二〇一三年に「核の飢饉」と題する報告書を発表しております。報告書は、仮にインドとパキスタンの間で今日核戦争が勃発した場合、両国でおびただしい数の死傷者が出て、深刻な放射能汚染がもたらされるのは当然のこと、核爆発の影響は地球規模で気候変動をもたらすとしております。いわゆる核の冬により、食料の生産が打撃を受け、世界で二十億人もの人々が飢餓に苦しむだろうと、科学的調査結果として警告をしております。
そのような核戦争は両国間の抑止バランスによって防げるだろうという楽観的な見方がありますが、これには確証がありません。インドとパキスタンの核兵器の指揮系統が十分に理性的に制御されると誰が言い切れるでしょうか。統治の不安定性、テロリズム、サイバー攻撃への脆弱性の問題もあります。
福島の原発事故が起きたとき、安全神話ということが言われましたが、これは核兵器にも当てはめて考えなければなりません。核兵器をつかさどる施設やシステムに安全性や統治上の欠陥があれば、偶発的なあるいは事故による核兵器の発射の危険性さえあるのです。
今日、世界にある九つの核兵器保有国の中でも、インドとパキスタンは武力紛争とテロリズムの広がる中東地域に隣接していることもあり、極めて現実的な核戦争の脅威を抱えている国々だと言えます。仮にインド自身が危険な道を歩まなかったとしても、パキスタンへの波及効果ということを考えなければなりません。インドに対する原子力協力の是非に関する議論は、そのような危機意識を踏まえてなされなければなりません。
そこで、第二に、今回の日印協定の内容上の問題についてお話をいたします。
これまでの日本国内の議論では、インドが核実験を行った場合に協定を停止できるのかどうかに焦点が当てられてきました。現在の協定では、附属文書にその趣旨が日本側の見解として書かれているのみで、極めて弱いと言わざるを得ません。これに対して政府は、核実験が行われれば協定を終了すると主張しておられます。しかし、核実験をしたら止めればいいといって済まされる問題ではありません。
一九九八年にインドとパキスタンが核実験をした際、日本は直ちに両国に対して経済制裁を発動しました。日本が共同提案国となった国連安保理決議一一七二は、両国の核・ミサイル計画に何らかの形で資することとなる設備、物質及び関連技術の輸出を防止することを全ての国に呼びかけました。仮にインドがまた核実験を行ったならば、同様の措置がとられるべきであります。原子力協力が停止されるのは、言わば当然のことであります。
それゆえ、核実験による協力の終了というのは、交渉して勝ち取ったと主張するには余りにも弱い条件であると言わなければなりません。交渉をして実質を取るというのであれば、インドの核兵器開発に実質的な歯止めを掛ける、あるいはインドの核軍縮を実質的に前進させるような条件でなければならないはずです。
そのためには、最低限、包括的核実験禁止条約、CTBTへの早期署名、批准の約束をインドから得るべきでした。しかし、今回の協定妥結に当たって、インドは何らCTBTに対して約束をしておりません。そもそも、国連総会で日本が共同提案している核兵器廃絶決議案やCTBT署名、批准を促す決議案に対しても、インドは賛成票を投じておりません。
協定妥結に当たり日本政府は、インドによる二〇〇八年九月五日の声明が不可欠の基礎だとしています。そこには核実験のモラトリアムこそ書かれていますけれども、今日、核兵器の開発は必ずしも核爆発実験を行わなくても進めることができます。未臨界核実験やコンピューターシミュレーションによる開発にどう対応するのか。同声明でインドは、核軍拡競争を含むいかなる軍備競争にも参加しないと述べています。インドが核軍拡を行っていないと主張するのなら、それを示す透明性措置が必要です。日本は、NPT再検討会議で核兵器国に透明性措置を求めておりますけれども、インドの場合だけは、自分たちは軍拡していないという主張を証拠もなく信じるということでしょうか。
インドはまた、兵器用核分裂性物質の生産禁止条約、FMCTの交渉に向けて他国と協力すると言っています。しかし、これは、FMCT交渉にパキスタンが反対していることを見越した上での表明の可能性があります。本来、インド自身から兵器用核分裂性物質の生産の停止の約束を取るべきですが、それもなされておりません。
反対に、日本政府は、今回の日印協定の中でインドに対して使用済核燃料の再処理の事前同意を与えております。再処理を認めるということは、核兵器の材料物質となり得るプルトニウムの生産を認めるということです。
インドは、国際原子力機関、IAEAの保障措置を一定程度受け入れたとはいえ、高速増殖炉並びに濃縮、再処理に関わる核燃料施設などが保障措置の対象外になっております。つまり、インドの核活動に対する国際的な監視体制はいまだ不十分です。インドが民生用の再処理として生産したプルトニウムが軍事転用されないことを完全に検証することはできません。
仮に日本の協力によって得られた核物質が平和目的に限定されていたとしても、それによってインドは自国産の原料を兵器目的に使いやすくなります。核実験を行ったら停止すると言いますけれども、核物質の生産を手助けし、その核物質によって核実験が行われてしまったら、そこで停止してももはや手遅れであります。その後の施設や物質の返還要求というのも現実味がありません。すなわち、現状におけるインドに対する再処理の容認は、同国による核兵器開発を間接支援することになる危険性をはらんでおります。
日本政府は、今回の協定がインドを国際的核不拡散体制に実質的に取り込む手段であると弁明されております。しかし、ここまで見たように、実質的にインドの核兵器開発に歯止めを掛ける、あるいは核軍縮に向かわせたりする措置というものは何ら担保されておりません。
インドは他国に核兵器を移転しないと言っている、すなわち核不拡散の約束をしているではないかという指摘があります。しかし、NPTに入らず核兵器を保有した国がその後他国に移転しなければそれで許される、核不拡散のルールというのはそんなに緩いものでよいのでしょうか。
そこで、第三に、このようなインドに対する特例的な協力が、広くアジア、ひいては日本の安全保障に対する影響というものを考えてみたいと思います。
インドが認められるのであれば、パキスタンも同等の扱いを国際的に受けることを求めてくるでしょう。インド、パキスタンが互いを刺激し合って核兵器物質の増産や核戦力増強に走りかねません。さらに、インドが開発している弾道ミサイルには北京や上海を射程に入れるものがあります。つまり、インドの核軍拡は中国の核軍拡を刺激する可能性を十分に含みます。インドを支援することが対中国の牽制として役に立つのだといった単純な議論では済まされません。アジア全体の軍拡競争となれば、それは日本の平和と安全にとって重大な意味を持ちます。
北朝鮮への影響も考えなければなりません。最初は厳しい制裁を受けても、結局は国際社会は認めてくれるのだ、他国に核兵器を移転さえしなければそれで許されるのだ、そのような誤ったメッセージを北朝鮮に送ることになるのではないでしょうか。今、北朝鮮に対して国際社会が彼らの核を容認することは決してないということを分からせなければいけないこのときに、日本はインドの核武装を容認するような行動を取ろうとしています。これは日本の安全保障にとって妥当な行為とは思えません。
第四に、こうした日本の政策を国際的な核軍縮・不拡散の枠組みの中で検証してみたいと思います。
今月初め、岸田外務大臣は、ウィーンで開かれた二〇二〇年NPT再検討会議第一回準備委員会に参加され、NPTは核軍縮・不拡散の礎石であるとの立場を改めて表明されました。しかし、この立場とは裏腹に、日本はインドの核武装を認め、核軍拡競争の助長に手を貸すことによって、NPT体制を根底から傷つけようとしております。
一方で、今、NPT体制を更に強化しつつ、核兵器そのものを全面的に禁止するという新たな国際枠組みが論じられています。それが、三月に交渉が開始された核兵器禁止条約であります。これは、二〇一五年のNPT再検討会議、二〇一六年の国連作業部会での議論を踏まえ、国連総会で加盟国の三分の二近い賛同を得て始まったプロセスです。コスタリカが議長を務める交渉会議の第一会期には百三十を超える国々が参加しました。しかし、日本政府はこの条約交渉への参加をボイコットしています。
核兵器禁止条約は、いかなる者によるいかなる核兵器の使用をも国際人道法違反と認定し、いかなる状況においてもいかなる国によっても核兵器が開発、保有、使用されてはならないと定める条約であります。
先週発表された議長の条約草案には、ヒバクシャという日本語を用いて、彼らの苦難や努力に対する言及が盛り込まれました。草案の発表に当たり、議長は、かつて南アフリカが保持していた核兵器を廃棄したことに触れ、そのようなモデルを今後の核軍縮にも適用するべきであると提案しております。NPT上の五核兵器国だけでなく、全ての核保有国にどのように核を廃棄させていくかという具体的な議論が始まっているのです。
日本政府は、NPT体制が重要だと言いながら、これに穴を空ける日印協定を進め、これを強化する核兵器禁止条約の議論には背を向けております。多国間の非差別的で強力な規範を形成する核兵器禁止条約の交渉には積極的に参加すべきです。そのような国際枠組みをつくることは、NPTの弱点を補強し、日本自身の安全を高めることにもなります。
広島、長崎両市長は、インドに対する原子力協力はNPT体制の空洞化を招き、核兵器廃絶の障害となりかねないとして、政府に対して協定交渉の中止を繰り返し要請してきました。核兵器の惨害を身をもって体験した被爆者らを代弁するこのような声にしっかりと耳を傾けていただきたいと思います。
最後に、改めて六年前の福島の原発事故を想起したいと思います。
メルトダウンした原子炉の収束の道筋すら見通せない中で、国内での原発の新増設ができないから海外に原発を輸出しようというのはおよそ身勝手な話です。国内の原発の安全基準強化がいまだ道半ばであり、避難者を含む被災者の多くが生活再建を阻む様々な壁に苦しみ続けている状況がある中で、原発輸出を推し進めようという国の姿勢は深刻な倫理上の問題をはらんでおります。インドでは、原発建設に反対する漁民など地元住民の運動に対して、政府が強圧的な対応に出て多数の死傷者が出る事態になっております。日本の市民として、我が政府がそのようなことに間接的だとしても加担するようなことは容認することができません。
さらに、海外の原発事業で巨大な損失を出した東芝が経営危機に陥っている現状を見れば、原発輸出は産業の観点からも経済合理性があるとは言えなくなってきております。
日本は、自らの非核外交の信頼性を失い、アジアにおける核の脅威を高めるこのような合意を凍結すべきであります。そして、日本政府はインド政府に対して具体的に核軍縮をさせるための外交交渉をすべきであり、国会はそのことを政府に対して強く求めるべきであると考えます。
御清聴ありがとうございました。
宇
宇都隆史#16
○委員長(宇都隆史君) ありがとうございました。
以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
この発言だけを見る →以上で参考人の意見陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
中
中西哲#17
○中西哲君 参考人の皆様、どうもありがとうございました。
私は、初めに伊藤参考人にお伺いしたいんですが、この日本とインドの原子力協定の背景には、政府は、NPTの外側にとどまっていたインドを国際的な核不拡散体制に加入させて、IAEA保障措置の適用や核実験モラトリアムを含む制約の下にインドを置くことによって、この枠組みに取り込んでいくことが大変意義があるという説明でございます。
そしてまた、インド側から見れば、今後の経済成長を支えるための高い電力需要、二〇一三年のデータでこれ原子力発電は発電電源割合の三%くらいだそうですが、アメリカなど海外からの大型軽水炉の導入に向けてアメリカ、フランス、ロシアなど九か国と今原子力協定を締結しておりますが、ただ、一九五七年にIAEAに加盟しておりますが、包括的保障措置協定は締結していないと。
この背景に、伊藤参考人の御説明があったように、インドは中国、そしてパキスタンとこれまでも軍事衝突を何度かやっておりまして、中国とは、私、数年前にスリランカに行ったときに、大きな港を中国資本で造っておりまして、非常に水深の深い、大型船が接岸できる港を造っている。これはインドにとっては、中国海軍がここを基地にしたらということで大変な緊張感が生まれるんだろうという思いでおりました。
ただ、両方とも大国ですから、ここはそれほど一挙にということはないと思うんですが、パキスタンというのが非常に今政情不安で、御説明にもありましたが、北朝鮮始め他国あるいはテロ組織に対して持っている核兵器をこっそり流すんじゃないかとかいう心配を日本なんかもしているんですが、特に現在のパキスタンの政情不安についてもう少し詳しく御説明していただきたいと思うんですが。
この発言だけを見る →私は、初めに伊藤参考人にお伺いしたいんですが、この日本とインドの原子力協定の背景には、政府は、NPTの外側にとどまっていたインドを国際的な核不拡散体制に加入させて、IAEA保障措置の適用や核実験モラトリアムを含む制約の下にインドを置くことによって、この枠組みに取り込んでいくことが大変意義があるという説明でございます。
そしてまた、インド側から見れば、今後の経済成長を支えるための高い電力需要、二〇一三年のデータでこれ原子力発電は発電電源割合の三%くらいだそうですが、アメリカなど海外からの大型軽水炉の導入に向けてアメリカ、フランス、ロシアなど九か国と今原子力協定を締結しておりますが、ただ、一九五七年にIAEAに加盟しておりますが、包括的保障措置協定は締結していないと。
この背景に、伊藤参考人の御説明があったように、インドは中国、そしてパキスタンとこれまでも軍事衝突を何度かやっておりまして、中国とは、私、数年前にスリランカに行ったときに、大きな港を中国資本で造っておりまして、非常に水深の深い、大型船が接岸できる港を造っている。これはインドにとっては、中国海軍がここを基地にしたらということで大変な緊張感が生まれるんだろうという思いでおりました。
ただ、両方とも大国ですから、ここはそれほど一挙にということはないと思うんですが、パキスタンというのが非常に今政情不安で、御説明にもありましたが、北朝鮮始め他国あるいはテロ組織に対して持っている核兵器をこっそり流すんじゃないかとかいう心配を日本なんかもしているんですが、特に現在のパキスタンの政情不安についてもう少し詳しく御説明していただきたいと思うんですが。
伊
伊藤融#18
○参考人(伊藤融君) ありがとうございます。
パキスタンのやはり情勢というのはかなり混沌としているのはおっしゃるとおりであります。これは、そもそもやはり九・一一以降のムシャラフ政権が進めた対米協力、ここに端を発するわけですね。それ以降、やはりこの過激主義というものが、つまりパキスタンの政府をアメリカと同等にみなして反発する動きというのが広がっているわけです。それが非常に懸念される状況になりつつあり、また、パキスタンの中で、一部はやはりそうした過激主義勢力を対インド、核だけではなくて、強いインドに対抗するためにそうした過激主義を利用してきたという側面もあるわけですよね。そういったところがもう今やコントロールできない、政府としてもコントロールしづらい状況になってきている。
インド側は、しばしば全部パキスタンがコントロールしている、裏でそうした過激主義をあおってインドに仕掛けていると言っているんですが、私は第三者として見ていますと、やはりもうパキスタン自体が、パキスタンの軍も、いわゆる統合情報部、ISIもそうした過激主義をコントロールしづらくなっている。それが今パキスタンという国自体を不安定化させているというふうに考えております。ですので、そうした勢力に核というものが渡るという危険性は非常に懸念されるところであります。
この発言だけを見る →パキスタンのやはり情勢というのはかなり混沌としているのはおっしゃるとおりであります。これは、そもそもやはり九・一一以降のムシャラフ政権が進めた対米協力、ここに端を発するわけですね。それ以降、やはりこの過激主義というものが、つまりパキスタンの政府をアメリカと同等にみなして反発する動きというのが広がっているわけです。それが非常に懸念される状況になりつつあり、また、パキスタンの中で、一部はやはりそうした過激主義勢力を対インド、核だけではなくて、強いインドに対抗するためにそうした過激主義を利用してきたという側面もあるわけですよね。そういったところがもう今やコントロールできない、政府としてもコントロールしづらい状況になってきている。
インド側は、しばしば全部パキスタンがコントロールしている、裏でそうした過激主義をあおってインドに仕掛けていると言っているんですが、私は第三者として見ていますと、やはりもうパキスタン自体が、パキスタンの軍も、いわゆる統合情報部、ISIもそうした過激主義をコントロールしづらくなっている。それが今パキスタンという国自体を不安定化させているというふうに考えております。ですので、そうした勢力に核というものが渡るという危険性は非常に懸念されるところであります。
中
中西哲#19
○中西哲君 ありがとうございます。
発言の中で、インドはパキスタンとの関係は非常に抑制的であるというお話がございました。その意味をもうちょっと詳しく御説明願えますか。
この発言だけを見る →発言の中で、インドはパキスタンとの関係は非常に抑制的であるというお話がございました。その意味をもうちょっと詳しく御説明願えますか。
伊
伊藤融#20
○参考人(伊藤融君) 私、現地におりました、現地で大使館で専門調査員をしておりましたときに起きたのが二〇〇一年の国会議事堂襲撃事件でありました。このときにはインドは、パキスタンとの国境線、それからカシミールのライン・オブ・コントロール、管理ラインという、実効支配線というふうに言った方が分かりやすいでしょうか、そこに軍を大動員して、パキスタン側もそれに対抗する措置をとって、十か月ほど対峙するというそういう緊張があったわけですね。我が国も退避勧告を出しました。そういった事態に対してアメリカを中心とした国際社会が必死で関与して、核戦争になるおそれがあるということで関与して、その危機は終結したわけですね。
それ以降、特に二〇〇八年のムンバイ同時多発テロのときの対応というのを見ますと、これはもう早々に当時のマンモハン・シン政権は戦争の可能性というものを排除しました。軍事動員も一切掛けなかったんですね。明らかに国際社会の反応というもの、対応、国際社会は絶対に戦争、パキスタンとの戦争を許さないということを学んでいるわけですね、インドは。もうインドとして見ると、そうした選択は取れないということです。
それは、今の、もっと強硬だと、つまり前の政権よりも強硬だと見られているのがモディ政権、今のナレンドラ・モディ政権ですけれども、それも去年二度にわたって空軍と陸軍の基地がパキスタンから入ってきたテロリストに狙われた、襲われたんですね。これに対してもう何とかしろというそういう国民、世論からの非常に突き上げを受けて、一応、パキスタンの管理ライン側にあるテロリストの最後の拠点、最後にインドに入ってくるところのテントですね、そこを襲ったと、襲撃したと。でも、それで作戦は終わりということを早々に発表したんですね。
そういった非常に限定的な作戦程度に終わっているということを指摘しておきたいと思います。つまり、そうした長期にわたる相手の過剰な反応、反撃を呼ぶような戦闘というのはインドは控えているということであります。
この発言だけを見る →それ以降、特に二〇〇八年のムンバイ同時多発テロのときの対応というのを見ますと、これはもう早々に当時のマンモハン・シン政権は戦争の可能性というものを排除しました。軍事動員も一切掛けなかったんですね。明らかに国際社会の反応というもの、対応、国際社会は絶対に戦争、パキスタンとの戦争を許さないということを学んでいるわけですね、インドは。もうインドとして見ると、そうした選択は取れないということです。
それは、今の、もっと強硬だと、つまり前の政権よりも強硬だと見られているのがモディ政権、今のナレンドラ・モディ政権ですけれども、それも去年二度にわたって空軍と陸軍の基地がパキスタンから入ってきたテロリストに狙われた、襲われたんですね。これに対してもう何とかしろというそういう国民、世論からの非常に突き上げを受けて、一応、パキスタンの管理ライン側にあるテロリストの最後の拠点、最後にインドに入ってくるところのテントですね、そこを襲ったと、襲撃したと。でも、それで作戦は終わりということを早々に発表したんですね。
そういった非常に限定的な作戦程度に終わっているということを指摘しておきたいと思います。つまり、そうした長期にわたる相手の過剰な反応、反撃を呼ぶような戦闘というのはインドは控えているということであります。
中
中西哲#21
○中西哲君 次に、最後に、日本がパキスタンと今後いかに関わっていくか、積極的に関わるべきだというお話をされたんですが、昔、東パキスタンというとバングラデシュですね、日本と非常に似たような国旗を作っていまして、緑地に赤の、親日的だと聞いたんですが、この今のパキスタンは日本に対してどういうスタンスなんですか。
この発言だけを見る →伊
伊藤融#22
○参考人(伊藤融君) パキスタンの対日感情は決して悪いわけではありません。我が国がパキスタンを支援してまいったことも十分分かっているわけですね。ですので、パキスタンを見捨ててしまうということは我々は避けるべきだと思うんですね。パキスタンが、ちょっと言い方が悪いですが、北朝鮮化してしまうような事態というのは最悪のシナリオであります。それはもうまさに失うものがない状態になったパキスタンがどういった行動に出るかということを考えてみていただきたいというふうに思います。
したがって、我々は、パキスタンへの関与、支援というものを続けていくことはもう絶対に続けるべきだと思います。
この発言だけを見る →したがって、我々は、パキスタンへの関与、支援というものを続けていくことはもう絶対に続けるべきだと思います。
中
中西哲#23
○中西哲君 ありがとうございました。
次に、戸崎参考人に、余り時間ないんですがお聞きしたいんですが、伊藤参考人も含めて、核実験モラトリアムを今回の協定に入れたということを高く評価していたんですが、その背景ですね、日本との関係をいかにインドが重視しているかということだろうと思うんですが、もう少し詳しくお話ししていただけますか。
この発言だけを見る →次に、戸崎参考人に、余り時間ないんですがお聞きしたいんですが、伊藤参考人も含めて、核実験モラトリアムを今回の協定に入れたということを高く評価していたんですが、その背景ですね、日本との関係をいかにインドが重視しているかということだろうと思うんですが、もう少し詳しくお話ししていただけますか。
戸
戸崎洋史#24
○参考人(戸崎洋史君) ありがとうございます。
先ほども申し上げましたけれども、伊藤参考人からのお話もございましたけれども、インドにとってこの核実験の問題あるいは核に関する問題というのは非常に、まあ自主権といいますか、そういうところが強い、他国からの制約は決して受けないというようなところがインドの特に国内で非常に重視されていたという中で、ほかの国々との二国間協定、CTBTも含めてかもしれませんけれども、そうした協定の中で核実験という問題が触れられることというのにインドは非常にセンシティブになっていたというところがあったかと思います。
日本との協定に関しましては、核実験という文言は明確に文章の中で使われているわけではありませんけれども、公文の中で声明、インドの声明ということを書くことによって核実験のモラトリアムということがきちんと読める文章になっていると。そうしたところは、これまでインドが行ってきたこととは全く異なるといいますか、まさに日本が相手だったからこそ、核実験の問題についても協定あるいは公文の中で読めるような形で引き出すことができたと、そうした意味での意義というのは非常に大きかったんだろうというふうに思います。
この発言だけを見る →先ほども申し上げましたけれども、伊藤参考人からのお話もございましたけれども、インドにとってこの核実験の問題あるいは核に関する問題というのは非常に、まあ自主権といいますか、そういうところが強い、他国からの制約は決して受けないというようなところがインドの特に国内で非常に重視されていたという中で、ほかの国々との二国間協定、CTBTも含めてかもしれませんけれども、そうした協定の中で核実験という問題が触れられることというのにインドは非常にセンシティブになっていたというところがあったかと思います。
日本との協定に関しましては、核実験という文言は明確に文章の中で使われているわけではありませんけれども、公文の中で声明、インドの声明ということを書くことによって核実験のモラトリアムということがきちんと読める文章になっていると。そうしたところは、これまでインドが行ってきたこととは全く異なるといいますか、まさに日本が相手だったからこそ、核実験の問題についても協定あるいは公文の中で読めるような形で引き出すことができたと、そうした意味での意義というのは非常に大きかったんだろうというふうに思います。
中
大
大野元裕#26
○大野元裕君 おはようございます。民進党の大野元裕でございます。
今日は、各参考人の皆様、本当に示唆の富んだ御意見を賜りまして、多様な面から議論を広げることができました。本当にありがとうございました。
その上でお伺いをさせていただきますが、済みません、時間が限られているので、できれば簡潔にお答えをいただければと思っています。
まず、インドとの関係につきましては、安全保障上を始めとして、実は当時の民主党政権時代から、オーストラリアとともに、中国を意識しながら、人材交流やさらには装備品の協力まで拡大をしていきました。そのような中で、当時のやはりその政権時代から、インドとどのような形で原子力協定を結ぶことを行うべきかということを慎重ながらも進めてきたという経緯があります。その意味では、今回、インドをNPTの枠組みの下で関与させるということについては我々は反対ではないんです。しかしながら、中身を見たときに果たしてどうかということは多分に疑問が残っています。
そのような観点から、まず、伊藤参考人、インドの独立心あるいは対抗心、こういったものについてお話がありましたが、我々も報道では見るものの、実際よく分からないところがあります。
そこで、まずお伺いしたいんですけれども、インドとの間で、大きなところはそうかもしれないんですが、例えばアメリカとインドの協定の中では、代表団による例えばコンサルテーションの受入れ、こういったものが定められていますが、今回の日印では入っていません。あるいは、もてもての国であると、インドがですね、おっしゃいました。もてもての中国と日本が結んだ協定の中には、例えば在庫目録を毎年交換するとか、そういった措置が入っているんですね。しかしながら、日印には入っていない。
これ、インドの感情を考えたときに、これらの例えば項目すら入れることは国民感情として不可能だったかどうかをまず教えていただけないでしょうか。
この発言だけを見る →今日は、各参考人の皆様、本当に示唆の富んだ御意見を賜りまして、多様な面から議論を広げることができました。本当にありがとうございました。
その上でお伺いをさせていただきますが、済みません、時間が限られているので、できれば簡潔にお答えをいただければと思っています。
まず、インドとの関係につきましては、安全保障上を始めとして、実は当時の民主党政権時代から、オーストラリアとともに、中国を意識しながら、人材交流やさらには装備品の協力まで拡大をしていきました。そのような中で、当時のやはりその政権時代から、インドとどのような形で原子力協定を結ぶことを行うべきかということを慎重ながらも進めてきたという経緯があります。その意味では、今回、インドをNPTの枠組みの下で関与させるということについては我々は反対ではないんです。しかしながら、中身を見たときに果たしてどうかということは多分に疑問が残っています。
そのような観点から、まず、伊藤参考人、インドの独立心あるいは対抗心、こういったものについてお話がありましたが、我々も報道では見るものの、実際よく分からないところがあります。
そこで、まずお伺いしたいんですけれども、インドとの間で、大きなところはそうかもしれないんですが、例えばアメリカとインドの協定の中では、代表団による例えばコンサルテーションの受入れ、こういったものが定められていますが、今回の日印では入っていません。あるいは、もてもての国であると、インドがですね、おっしゃいました。もてもての中国と日本が結んだ協定の中には、例えば在庫目録を毎年交換するとか、そういった措置が入っているんですね。しかしながら、日印には入っていない。
これ、インドの感情を考えたときに、これらの例えば項目すら入れることは国民感情として不可能だったかどうかをまず教えていただけないでしょうか。
伊
大
大野元裕#28
○大野元裕君 ありがとうございます。
やはり、その意味でも、若干私、慎重に進めてきたものが突然進んだことには違和感があるということでございます。
その上で、鈴木参考人に是非お伺いをしたいんですけれども、慎重な対応を進める中で、特に日本としてやはり国際的な核軍縮を含めたレジームというものを大事にしてきた国にとっては、やはりポイントが多分二つあったんではないかなというふうに思っています。その大きな二つというのは、先生がまさに御指摘されたとおり、核実験の際の協力の停止、これをどう書き込むかということ、それが一つ。そしてもう一つは、濃縮、再処理の実施あるいは移転をどのように制限し、あるいは国際的に管理していくか、この二つのポイントってとても大きかったんだろうと思うんです。
もちろん、NPTに入っていない以上、百点満点の回答というのはないかもしれないんですけど、今回のこの二点について、先生の評価、百点満点でいうとどのぐらいで、それは何でそういう点数になるかというのを是非教えていただけませんでしょうか。
この発言だけを見る →やはり、その意味でも、若干私、慎重に進めてきたものが突然進んだことには違和感があるということでございます。
その上で、鈴木参考人に是非お伺いをしたいんですけれども、慎重な対応を進める中で、特に日本としてやはり国際的な核軍縮を含めたレジームというものを大事にしてきた国にとっては、やはりポイントが多分二つあったんではないかなというふうに思っています。その大きな二つというのは、先生がまさに御指摘されたとおり、核実験の際の協力の停止、これをどう書き込むかということ、それが一つ。そしてもう一つは、濃縮、再処理の実施あるいは移転をどのように制限し、あるいは国際的に管理していくか、この二つのポイントってとても大きかったんだろうと思うんです。
もちろん、NPTに入っていない以上、百点満点の回答というのはないかもしれないんですけど、今回のこの二点について、先生の評価、百点満点でいうとどのぐらいで、それは何でそういう点数になるかというのを是非教えていただけませんでしょうか。
鈴
鈴木達治郎#29
○参考人(鈴木達治郎君) 百点満点で点付けるって難しいですけど、まあ我々、学生には優、良、可、不可になりますけれども、不可と可のぎりぎりぐらいかなと私は思います。
玉虫色という解釈、表現させていただいたのは、それぞれの政府が読む読み方によっては確かに協定を破棄できる、日本側から見れば破棄できることは書かれていますし、インド側にしてみれば必ずしもそれは自動的ではないというふうに読めるので、そこは交渉の結果そういう文章になったのだと私は思いますが。残念ながら、それでは、私は可、ぎりぎり可ぐらいかなと思います。
最初に、原子力委員のときに私が書かせていただいた文章、原子力委員会として書かせていただいた文章の中に、要するに、約束と行動はもう当然なわけですね、それを守ることは。それを越えてどれぐらい踏み込むことができるかということを見ていたわけですけれども、これだと約束と行動を守ることも最低条件もひょっとしたら危ないというふうに読めるので、まずその点については残念ながら可と不可の中間ぐらいかなというふうに思います。
それから、濃縮、再処理は不可ですね、これは。はっきり申しまして、先ほど川崎参考人からもありましたが、インドは民生用と称して既にプルトニウムを作っていますが、いつでもそれを軍事用に転用できるように保障措置掛けていないんですね。もし日本がそれを、再処理の技術を移転も認め、再処理を認めるようになりますと、軍事用のプログラム、直接もちろん関係しないわけですけども、保障措置掛けると言っていますから、でも、インドのやっていることに対する間接的な支援にどうしてもなってしまいます。
したがって、民生用にプルトニウムが必要だと言っていて、その民生用の方は、今度は例えば日本やほかの国との原子力協定でプルトニウムを使えば、軍事用の今備蓄しているものがそのまま軍事用に使うことができます。そういう意味で、濃縮、再処理は是非認めていただきたくなかったというのが私の意見でありまして、それについて言えば、今回は不可というふうに考えています。
この発言だけを見る →玉虫色という解釈、表現させていただいたのは、それぞれの政府が読む読み方によっては確かに協定を破棄できる、日本側から見れば破棄できることは書かれていますし、インド側にしてみれば必ずしもそれは自動的ではないというふうに読めるので、そこは交渉の結果そういう文章になったのだと私は思いますが。残念ながら、それでは、私は可、ぎりぎり可ぐらいかなと思います。
最初に、原子力委員のときに私が書かせていただいた文章、原子力委員会として書かせていただいた文章の中に、要するに、約束と行動はもう当然なわけですね、それを守ることは。それを越えてどれぐらい踏み込むことができるかということを見ていたわけですけれども、これだと約束と行動を守ることも最低条件もひょっとしたら危ないというふうに読めるので、まずその点については残念ながら可と不可の中間ぐらいかなというふうに思います。
それから、濃縮、再処理は不可ですね、これは。はっきり申しまして、先ほど川崎参考人からもありましたが、インドは民生用と称して既にプルトニウムを作っていますが、いつでもそれを軍事用に転用できるように保障措置掛けていないんですね。もし日本がそれを、再処理の技術を移転も認め、再処理を認めるようになりますと、軍事用のプログラム、直接もちろん関係しないわけですけども、保障措置掛けると言っていますから、でも、インドのやっていることに対する間接的な支援にどうしてもなってしまいます。
したがって、民生用にプルトニウムが必要だと言っていて、その民生用の方は、今度は例えば日本やほかの国との原子力協定でプルトニウムを使えば、軍事用の今備蓄しているものがそのまま軍事用に使うことができます。そういう意味で、濃縮、再処理は是非認めていただきたくなかったというのが私の意見でありまして、それについて言えば、今回は不可というふうに考えています。