予算委員会

1957-04-24 参議院 全168発言

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会議録情報#0
昭和三十二年四月二十四日(水曜日)
   午前十時十九分開会
  —————————————
  委員の異動
四月三日委員小林武治君辞任につき、
その補欠として佐野廣君を議長におい
て指名した。
四月四日委員土田國太郎君辞任につ
き、その補欠として下條康麿君を議長
において指名した。
四月五日委員加賀山之雄君辞任につ
き、その補欠として河野謙三君を議長
において指名した。
四月六日委員河野謙三君辞任につき、
その補欠として加賀山之雄君を議長に
おいて指名した。
四月八日委員下條康麿君辞任につき、
その補欠として土田國太郎君を議長に
おいて指名した。
四月十日委員佐野庸君辞任につき、そ
の補欠として小林武治君を議長におい
て指名した。
本日委員新谷寅三郎君辞任につき、そ
の補欠として一松定吉君を議長におい
て指名した。
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 出席者は左の通り。
   委員長     苫米地義三君
   理事
           小林 武治君
           迫水 久常君
           左藤 義詮君
           安井  謙君
           吉田 萬次君
           天田 勝正君
           中田 吉雄君
           森 八三一君
   委員
           青柳 秀夫君
           石坂 豊一君
           木村篤太郎君
           小山邦太郎君
           佐藤清一郎君
           柴田  栄君
           新谷寅三郎君
           関根 久藏君
           土田國太郎君
           苫米地英俊君
           仲原 善一君
           成田 一郎君
           野本 品吉君
           林田 正治君
           武藤 常介君
           内村 清次君
           栗山 良夫君
           小林 孝平君
           羽生 三七君
           松浦 溝二君
           山田 郡男君
           湯山  勇君
           梶原 茂嘉君
           豊田 雅孝君
           千田  正君
           八木 幸吉君
  国務大臣
   内閣総理大臣
   外 務 大 臣 岸  信介君
   大 蔵 大 臣 池田 勇人君
   文 部 大 臣 灘尾 弘吉君
   厚 生 大 臣 神田  博君
   農 林 大 臣 井出一太郎君
   通商産業大臣  水田三喜男君
   国 務 大 臣 宇田 耕一君
   国 務 大 臣 小滝  彬君
  政府委員
   法制局長官   林  修三君
   法制局次長   高辻 正已君
   防衛政務次官  高橋  等君
   防衛庁次長   増原 恵吉君
   防衛長官官房長 門叶 宗雄君
   防衛庁防衛局長 林  一夫君
   防衛庁経理局長 北島 武雄君
   防衛庁装備局長 小山 雄二君
   科学技術庁原子
   力局      原田 長久君
   外務省条約局長 高橋 通敏君
   外務省国際協力
   局長      宮崎  章君
   大蔵省主計局長 森永貞一郎君
   文部省大学学術
   局長      緒方 信一君
   厚生省公衆衛生
   局長      山口 正義君
   農林大臣官房長 永野 正二君
  事務局側
   常任委員会専門
   員       正木 千船君
  —————————————
  本日の会議に付した案件
○理事の補欠互選
○昭和三十二年度特別会計予算補正
 (特第1号)(内閣提出、衆議院送
 付)
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苫米地義三#1
○委員長(苫米地義三君) ただいまから委員会を開きます。
 まず、委員の異動について申し上げます。
 四月三日、小林武治君が辞任され、その補欠として佐野廣君。四月四日、土田國太郎君が辞任され、その補欠として下條康麿君。四月五日加賀山之雄君が辞任され、その補欠として河野謙三君。四月六日河野謙三君が辞任され、その補欠として加賀山之雄君、四月八日下條康麿君が辞任され、その補欠として土田國太郎君、四月十日佐野庸君が辞任され、その補欠として小林武治君が指名されました。以上報告いたします。
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苫米地義三#2
○委員長(苫米地義三君) 右の委員の変更の結果、理事が一名欠けることになりましたので、先例に従い、この際、委員長は理事に小林武治君を指名いたします。
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苫米地義三#3
○委員長(苫米地義三君) これより昭和三十二年度特別会計予算補正(特第1号)を議題といたします。
 まず提案理由の説明を求めます。池田大蔵大臣。
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池田勇人#4
○国務大臣(池田勇人君) 政府は今回、昭和三十二年度特別会計予算補正第一号を国会に提出いたしましたが、ここに予算委員会の御審議をお願いするにあたりまして、その概要を御説明いたします。
 今回の予算補正は、新たに設置を予定いたしております臨時受託調達特別会計の予算につきまして、国会の議決を求めようとするものであります。
 日本政府に供与される艦船を国内において調達することに関しましては、かねてアメリカ合衆国政府との間において協議を重ねて参ったところ、最近に至り、ようやく下打ち合せも終ったのでありますが、その際アメリカ合衆国政府におきましては、諸外国との間の先例もあり、いわゆる直接調達方式によることなく、日本政府との間に契約を締結し、日本政府が国内において調達する方式をとりたい旨申し入れがあったのであります。
 政府といたしましては、提供される艦船の調達が国内において行われますことは好ましいことと思われますし、また間接調達方式につきましても別段異存がございませんので、この申し入れに応じたいと考えます。
 アメリカ合衆国政府との問に、同国政府の負担におきまして艦船を調達して引き渡すことを目的とする受託調達契約を締結し、この契約を履行するため、政府が国内においてその調達をいたしますためには、予算措置にようなければなりません。この場合には、特別会計を設置してその経理を一般会計と区分して行うことが、財政法の建前に沿うものと考えられますので、この際臨時受託調達特別会計の新設につき、別途法律案の審議を国会に求めるとともに、ここにその予算につきまして御審議を願うこととなったのであります。
 今回予定しております艦船は、二千三百トン級二隻でありまして、その建造所要経費は約六十七億円と見積られております。今回の予算補正におきましては、その総額につきまして契約を締結する権限を政府に与えられますよう国庫債務負担行為につき議決を求めますとともに、艦船の出来高に応じてアメリカ合衆国政府から支払を受けます金額を受け入れ、これをその都度直ちに支払に充てますために、昭和三十二年度に予定される十二億七千万円の歳入歳出予算の御審議をお願いするものであります。
 アメリカ合衆国政府との間におきましては、この調達に関しおおむね下打ち合せも整っておりますので、これを実行に移すため、すみやかに御賛同を得たいと存ずる次第であります。
 なお、公共企業体等の給与問題につきましては、公共企業体等労働委員会の仲裁を尊重いたします趣旨のもとに所要の予算措置を講ずることとし、別途国会に提案いたしておりますことを、この機会に申し添えておきます。
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苫米地義三#5
○委員長(苫米地義三君) 次に小瀧防衛庁長官に交渉の経過について説明を求めます。
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小滝彬#6
○国務大臣(小滝彬君) 防衛庁は、かねてより、日米相互防衛援助協定による援助の要請に当り、警備艦を普通にいう駆逐艦をわが国において域外調達をしたうえで、わが国に供与されたい旨米国政府に要請してきた次第でありますが、本年当初に、米国政府より防衛庁に、正式に米海軍の軍事援助計画として、二千三百トン級駆逐艦二隻を日本で域外調達した上で日本に供与する旨の意向の表明がありました。
 その後、本艦船は日本において域外調達するも、従来のように、米軍による直接調達方式にはよらず、日本政府に調達を委託する方式によりたい旨の情報を得ましたので、直ちに関係各省間で検討するとともに、他方わが国の事情に適合する調達方式の採用方について米国政府と交渉した次第であります。
 数次にわたる交渉の結果、艦船の建造のごとくこれに多額の費用を要し、また完成までに長日月を要するものについては、これが設計、監督、検査のために技術専門家等を調達現地に長く常駐させる必要があり、むしろ信用ある政府を相手方にしてこれらの仕事をまかすのでなければ実施が困難である事情及び本予算の使用についても時期的制約がある事情が明らかになりました。
 これらの事態に対処するため、さらに関係各省間において検討を加え、三月下旬に来朝しました米海軍省の交渉団との間におもなる内容について討議を重ね、その概要についての下打ち合せが終った次第であります。
 政府が本艦船の受託調達を実施するに当りまして、政府の経理を適正にするため特別会計を設置することといたしましたことは、大蔵大臣の提案理由説明にありましたとおりでありますが、本受託事務は、本艦船が域外調達せられました際は防衛庁に無償で譲渡される予定でありまするのみならず、設計、監督、検査等につきまして防衛庁発注の艦艇との関連性を考慮いたしまして、防衛庁がその事務の衝に当ることが至当と考えられますので、従前の防衛庁の権限に本受託調達事務に関する権限をつけ加えて規定することといたした次第であります。
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苫米地義三#7
○委員長(苫米地義三君) これより質疑に入ります。中田吉雄君。
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中田吉雄#8
○中田吉雄君 ただいま議題となりました昭和三十二年度補正予算につきまして、わが党といたしましては、小林、湯山、中田等三人が質疑することとなりまして、私は、主として外交、防衛等、この予算を取り巻く包括的な問題に関して御質問を申し上げたいと思うわけであります。
 まず第一に、岸内閣の外交政策の基調に関してでございます。この点につきましては、臨時総理大臣とし、また外務大臣とされ、外交方針に対する施政演説も拝聴し、わが党の羽生、曾祢両氏あるいは衆議院における和田氏等、その他あらゆる角度から質問がありまして、つぶさに拝聴することができました。率直に申し上げますと、まことに岸総理はよくお勤めいただいて、懇切丁寧な、そつのない答弁を拝聴いたしました。しかし第二十六回国会もようやく終末に近づこうとします現在、もう一ぺん、岸内閣の外交の基調あるいは真髄というものは一体どこにあるのかということを振り返ってみますると、まことに問題が少くないと思うわけであります。一部の人は、そつのない、答弁がうまいというだけじゃないか。一つの風格というものがにじみ出ていないではないかというような意見もなしとしないわけであります。そこで敗戦以来の歴代内閣の外交方針を振り返ってみますると、何といっても吉田総理は、わが党はいろいろ異論がありましたが、アメリカを中心とする自由世界との講和を得られました。さらにまた鳩山内閣は、共産圏であるソビエトとの講和をやられ、御病気で中途挫折されたが、石橋内閣は、中共貿易を通じて、対中共関係に対して新しい生面を開かれようとしたではないか、こういうふうに大まかに見ることができると思うのですが、一体、吉田、鳩山、石橋、そういう歴代内閣のそれらに匹敵するような、これからの外交を担当される一つのエポツクになるような、やはり岸総理がほんとに目ざされる外交の基調といいますか、そういうものをお伺いしたいと思うわけであります。
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岸信介#9
○国務大臣(岸信介君) 外交の基本方針につきましては、われわれ保守党として政権を長期にわたって担当いたしておりましたが、その間、内閣も幾たびか、かわって参っておりますけれども、私はこの基本の方針というものは一貫して今日まできておると考えております。すなわち日本はあくまでも民主主義の国家として世界の平和を増進するという見地に立ちまして、そのつど、あらゆる問題を解決をいたして参っておるのであります。占領下の状態にある時代に、早く国の独立を作り上げるために平和条約の締結をし、またこの世界平和を増進する意味から申しまして、最も長い、いろんな関係の深いソ連との間に国交を正常化し、さらに私は今日におきましては、言うまでもなくわれわれが国連に加盟しまして、そうして世界の、国際の一員として、完全な一員として国際社会に仲間入りをいたしまして、この世界の各国が国際連合を中心として世界平和を増進し、推進するという体制のもとにあることは、御承知の通りであります。私はあくまでもこの国連中心主義の立場に立って、そうして世界の平和の増進に寄与したいというのが、日本の外交の、われわれの保守党として考えておる基調であると思います。私はこの意味において、今後諸問題を処理いたす上におきまして、わが党の外交の基本方針を国連中心に置いて、そうして民主主義の立場、従って自由を愛好するところの国々との提携を一そう固めると同時に、世界の対立の緊張緩和に向って全力をあげて努力すべきものである、かように考えております。
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中田吉雄#10
○中田吉雄君 ただいま岸総理も、国連に加盟した現在、国連を中心としてやっていくということを申され、また外務大臣の外交方針演説あるいは各議員に対する質問等をつぶさに読んで検討してみますると、ただいま申されたように、わが国の外交の基調は、民主主義諸国との緊密な協調関係においてやることが、結局わが国の利益に一致するというようなことも申されています。しかし私は、そういう一般的な外交と取り組まれる心構えで必要な点は、こいうふうに内閣がかわって一しかし岸総理もただいま御発言の中に、そういう国連中心でいくが、いろんな点も検討していくというような点もあったわけです。さらにまた岸総理は、対米関係は調整を必要とするし、また安全保障条約や行政協定も再検討の時期にきた、そして近く東南アジアとアメリカを歴訪されて、関係諸国とのトップ・レベルの会談も予定され、そしてほんとうにこれから外交と取り組んでいかれようというような際に、私は、今回提案されたような臨時受託調達特別会計というようなものを設けて、そして艦艇を二そう作るというようなことでは、私はやはりもっと——順序が違うのじゃないか、やはりアメリカを訪問され、そして世界情勢の意見の交換、あるいは安保、行政等の改訂等について意見の交換をされ、その後において、私はやはり、そういう日本の外交方針、防衛方針というような基本的な、岸総理のこれからの方針の一環として、やはり打ち出すような形をされないで、これまでのルーティンと同じような、アメリカからくれるという、ただだからというようなことでは、やはりこれまでの保守党内閣のアメリカとの関係のように、ずるずるとまた、いってしまうのではないか。私はやはり、訪米をされ、いろいろ外交、防衛等の意見を交換され、そして外交と防衛に関する、まあ保守党の長い間の基本方針もあるわけですが、やはり岸総理としてやられようとする、そういう調整をされてからやられてもいいのではないか。これではもうずるずると入っていって、やはり対米関係の再調整というようなことも困難になってくるのではないかというふうに考えるが、いかがでしょう。
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岸信介#11
○国務大臣(岸信介君) 私がアメリカを訪問いたしまして、アメリカの首脳部との間に、日米の基本的考え方の問題に関して隔意のない意見を交換する、そして将来における日米間の望ましい協力の関係を作りたいと、こう念願して参るわけですが、この今回提案いたしました駆逐艦二隻の建造の問題につきましては、かねてMSA協定に基いて、わが方からこの駆逐艦の供与の問題についての話が行われてきておるものでありまして、それを今回域外調達の方法によって日本政府に委託して、そうして日本国内において建造してこれを供与しようという話が両国の関係当局の間に話がまとまりまして、そしてこれを提案したわけであります。従いまして、特にこの問題に関して、私が今回アメリカを訪問いたしまして、アメリカ側の首脳部と根本的な話し合いをするということと必然的な関係があり、それを前提としなければこの問題を提案すべきものじゃないというような性質のものではない、かように考えて提案をいたしたわけであります。
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中田吉雄#12
○中田吉雄君 防衛力を漸増されるという立場からしても、私はあとでもいろいろ御質問申し上げたいのですが、もう一ぺんほんとうに、これまでとってきた方式が間違いないか、岸総理の立場からされても、そういうことをやはり見当つけてからでもいいじゃないか。そしてまた、そういうことはやはり内閣が変ってそういう転機をつかまぬと、なかなかやりにくいのじゃないか、私はその方がいいのじゃないかと思うのですが、そういう考えからその点は申し上げたわけであります。そこで岸総理の、あるいは自由民主党の外交政策というものが、自由民主主義諸国家群の甘貝としてそして国連を中心にしてやる。しかも日本の外交は米国との協力をわが国の外交の基調とする。けだし日米両国には、政治、経済、防衛等の各面において利害と目標が大きく一致しているのだから、対米協力が基調だと、こういうことを申されておるわけであります。従って自由民主党並びに岸内閣の外交政策が妥当なものであるか、わが国の平和と独立安全というようなものを検討する際には、この日米協力の前提というものを少し考えてみることが必要ではないかと思うわけであります。わが党もいろいろアメリカに対して批判をいたしますが、アメリカと善隣関係を結び、友好にやっていくことについては何ら異議はないわけであります。しかし、とにかくわが国の外交と防衛については、何といってもアメリカの外交防衛方針というものが決定的な影響を及ぼすものですから、私はアメリカ外交の本質というものを十分検討しなくちやならぬ、わが国のこれまで戦後とってきたような無条件の対米協力というようなものであってはならぬのじゃないか、これにはやはり限度がなくちゃならぬのじゃないか。何よりもまた自主性が高度に保たれていないと、対米協力はそういう名で対米従属の、またアメリカのための日本の再軍備というようなことになるのではないかというように考えるわけであります。そこで私は特に岸総理にお尋ねいたしたい点は、わが国を中心としてアメリカが過去半世紀にとってきた極東の政策、外交政策というものが、一体あやまちがないものであったかどうか、この点、私はやはり反省してみることが必要じゃないか。アメリカの外交政策はいい点もあったが、数々のあやまちも私はあったと思うのです。ですから、そういう本質を検討し、その限界その他を見て、節度のある、自主性のある協力関係を結ばぬと、私はかえってそれがアメリカをして誤まらしめて、ほんとうの意味の対米協力にならぬのじゃないかということを考えて、これから少し日米の協力関係、アメリカの外交政策、外交史等との関連で、極東政策との関係で、私は岸総理の所信を拝聴したいと思うわけであります。
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岸信介#13
○国務大臣(岸信介君) 私は、日米協力に非常な重点を置いて外交を押し進めるということは申しておりますが、言うまでもなく、日本の自主独立の立場はあくまでも堅持して、そうして日米の間の話し合いを進めることが必要である。日本は長い間アメリカの連合軍によってそれらの主力は言うまでもなくアメリカでありますが、——によって占領され、その占領政策のもとにあったわけで、サンフランシスコ条約によって平和が回復し、日本の独立が認められましたけれども、今日なお、ものの考え方や、あるいはいろいろな制度等をしさいに検討してみますると、その占領下時代のものの考え方やあるいは制度の余弊というものが、今日完全に払拭されて、完全な自主独立の立場、ものの考え方や、ものの進め方というものができておるかというと、私はその点においてみずから反省してみて遺憾の点があると思うのです。そこで日本の独立を完成する意味から申しましても、また日本が自主独立の立場から将来の日本の国際間における外交政策を進めるという意味から申しましても、また日米が真に望ましい形における協力関係を作るという上から申しましても、私はあくまでも日本の独立自主の立場でものを考え、そうしてアメリカとの間に話をして、日本の自主独立の完成され、自主独立の立場が堅持されるという形において、いろいろな制度が検討されるということが、日本のために必要であることはもちろんであります。同時に、日米の間の正しい、望ましい協力関係を作る上からいっても、私はそれが正しい考え方であると、かように考えまして、いろいろな、今までありますところの日本に対するアメリカの行なってきたこと、また日本の中におけるところのアメリカとの関係における状態を再検討いたしまして、今申しましたような心がまえで一つアメリカの首脳部と話して、そういう見地からわれわれが考えておる望ましい形の協力関係を作りたい、これが私の念願でございます。
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中田吉雄#14
○中田吉雄君 岸総理がただいま一般的な方針として申された点では、おそらくわが党の考えと変りないと思うのです。わが党も、アメリカのような世界最強の国を敵にし、ほんとの意味の反米政策をとって、日本の平和が守れるというようなことは考えていません。しかし岸総理がただいま言われたようなことが、ほんとうに政策として具体的に実践されるには、やはり私はアメリカのとった数々の極東政策というものもやはり反省してみて、いろいろ問題があったのではないかというところを、やはり歴史的に反省をして、そうして今のとっておる政策がそういうあやまちを犯すのではないだろうかということを考えてみることは、むだじゃないじゃないか。私、大まかに見て、日露戦争のときまでは、日本が強国として発展するような非常な援助も得たと思います。しかしその後、日本が旦露戦争に勝って、その後アメリカの政府は、ジョン・ヘイの門戸開放宣言以来、強国としての日本の台頭を抑制する。極端な表現をしますと、蒋介石中国政府を援助して、背後から日本を牽制して、そうしてアメリカの太平洋の安全をはかるというようなことがなかったかどうか。そういうことが、日本の外交政策の大きなあやまちもありますが、ついに太平洋戦争になって、私は大へんなあやまちを犯したのではないか。また、たとえば一九四五年の二月十日に結ばれたヤルタ協定を見ても、ステッテイニァスのヤルタの秘密の協定を見ても、もう日本が戦う意思も交戦能力もないのに、日本に対する判断をあやまって、ソビエトに千島や南樺太もやろうというような条件で対日参戦を要請し、あるいはその後も無条件降伏——いろいろあって、やはりアメリカの外交政策においても問題があった。特に私は、中国が、蒋介石政権がああいうふうに台湾に落ちぶれていかなければならなかったのは、日本を牽制するために、わが国の対支政策のあやまちもあったが、アメリカが背後から日本を牽制する手段として、やはり蒋介石政権を援助した、二百数十億ドルの援助をして、背後から双方を争わせることによって太平洋の安全をはかるというようなことがあったことが、共産政権ができた一つのきっかけでもないか。それと同じように、やはり台湾に蒋介石が行って、毛沢東政権ができた。それを今度は逆な形で日本を援助して、そうして逆に日本をして対中国政策をとらせていく。あとでも申し述べますが、そういうことが再び——ですから、アメリカとの協力も、そういう過去の歴史的な反省をし、そうして限度があり節度のある、自主性のある対米協力でないと、私は、蒋介石があやまったような愚を、過失を再び日本が犯す心配がないかという点については、やはり問題があるのではないかと思うのですが、いかがでしょう。
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岸信介#15
○国務大臣(岸信介君) もちろん世界各国の外交史をひもといてみますというと、おのおのの国がやったことについて後世の史家がこれを批判するようなことは、どこの国にも私はあると思うのです。従って、アメリカの外交政策、アメリカの世界政策というものが無上なものであり、無欠点なものであり、これが唯一最高のものであるというような考え方をすべきものではないことは言うを待ちません。今御指摘になりましたように、われわれは、われわれの国の独立の完成、自主独立の立場からものを考え、特にこのアジアにおきましては、われわれは特別にわれわれの考え方というものを、自主的な考えというものを持って、そうして日米の協力も将来考えていかなければならないことは言うを待たないのでありまして、今、中田委員の言われましたように、これは決してアメリカの外交方針というものをもう無批判にこれに追随していくということが日米協力の考え方ではなくして、あくまでも自主的な立場からわれわれがものを考えていく、そうして日米の間におけるこの協調というものを作ることが望ましい日米の協力関係である、かように考えます。
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中田吉雄#16
○中田吉雄君 アメリカのアジア政策に対して無批判的に追随するものでないという決意を承わりまして、まことにけっこうなことですが、具体的にそれなら一体対米協力ということはどうなるか。御案内のように、アメリカは一九四七年の三月十二日、昭和二十二年にトルーマン宣言をやり、トルーマン・ドクトリン・コンテーンメント・ポリシー、対ソ包囲政策、一九四九年の四月四月にNATO条約を結んでヨーロッパから、というふうにし、そうして一九五二年の四月二十八日、講和、安保両条約を結び、そうしてとにかくトルーマンの宣言以来、昭和二十二年以来、ヨーロッパにおいてはNATO、アジアにおいては講和、安保両条約をてこにして、対ソ包囲政策をとっているわけであります。いろいろなジグザグのコースはありますが、対米協力、対米協力ということを具体的にいえば、結局トルーマン宣言以来、アイゼンハワー大統領になってもとられているところの、このやはり対ソ包囲政策に協力することが、対米協力ということになってきて、そのことが果して私は、アジアにおいて、岸総理がただいま言われたようなことを矛盾することなしに、アメリカをして日本を通じてアジアにあやまちなく適用させ、そうして平和が保たれるようにいくことができるかどうだろうかということを、あとでもこの問題を少しお尋ねしたいと思いますが、疑問なきを得ないのですが、いかがでしょう。
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岸信介#17
○国務大臣(岸信介君) 私は、冒頭に申し上げましたように、日本があくまでも民主主義国家として世界の平和を増進するという立場を堅持しておりますことは、その意味において、この世界の国際情勢というものを分析してみますというと、この共産主義国の脅威に対して、われわれがいかに自由を守り、民主主義を守っていくかということに関しましては、自由主義諸国が非常に苦心をいたしている問題であり、またいろいろ最近起っているところの東欧における問題や、あるいは中近東等の問題、あるいは極東におきましても、朝鮮動乱の問題やあるいはベトナムにおけるところの問題、その他の問題をしさいに分析検討してみますと、私は、決して単に、自由主義国家がいわゆるソ連を中心とする共産主義国を包囲している包囲政策、これにわれわれが関係、協力するとかしないとかいう問題でなくして、もう少し根本的な問題があると思います。従いまして、われわれのとっている根本の問題というものは、あくまでもそういう民主主義国家として自由主義を守り、自由を愛好する国々と提携して、世界の平和を増進する、確立する、こういう立場を堅持しております以上、今申したような国際の情勢から言うと、東西両陣営の対立となり、そこにおけるところの両外交も、一方からいえば包囲政策といい、一方からいえば巻き返しといい、いろいろの事態が起っていると思います。しかしあくまでもわれわれは、根本において民主主義を守り、われわれの自由を確保するという、この根本の考え方を確立することが、ほんとうの人類の向上であり、福祉の増進への道であり、また平和を維持する道であるというこの信念に立ちます以上、それをもし阻害し、それをもしも破壊するという動きがあるならば、これに対してわれわれが自由を守り、民主主義を守るという立場をとる国々と提携して、そうしてこの自由を脅かすところの動なに対して、われわれが防衛し、われわれが守っていくということは、私は当然のことである。そういう意味において、決してこのアメリカに追随するとか、アメリカのそういう対ソ包囲政策に無条件に協力するというのではなくして、われわれの立場から自主的に考えて、私は当然のことである、かように思っております。
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中田吉雄#18
○中田吉雄君 わが党もしばしば発表していますように、共産主義とは一線を画しているわけであります。自由を愛し、民主主義を守るということについては、岸総理の立場と変りないと思う。ただ、わが国は、その際、考えてみねばならぬことは、その相対立するアメリカとソ連、この世界二大強国、特に共産主義諸国との接点にあるという問題であります。接触点にあるという問題であります。わが国が、カナダやアルゼンチンやボリビアの辺にあるのなら、そういう政策をとっても、断固たるといっても、そういう被害はないのですが、自由を守り民主主義を守るといっても、守り方において、共産主義諸国の接点にある、中ソ両国の対岸にあるという、こういう地勢的な配置というものを考えると、私は、相当この自由を守り民主主義を守るということからだけでも、アメリカに協力するということなしにでも、そういうふうにやるということですが、しかしです、私は、特にアメリカのこの一九四七年以来のトルーマン政策というものは、アメリカの原爆の独占を前提にして成り立った、原子爆弾をアメリカだけが持っている、広島で二十四万、長崎で七万、二発で無条件降伏をした。原爆をアメリカだけで持っておる、そういう際でありますなら、寄らば大樹の蔭で、アメリカに安全をまかせ、共同して自由と民主主義を守るという立場をとっても、そうあやまちはないかもしれません。ですから、そういう際に、原爆の独占を前提して、一九四九年の四月四日にNATO条約ができ、アメリカが独占している間は、この対ソ包囲政策というものは、自由と民主主義を守るという旗のもとに作られた、比較的安定したわけであります。しかし、ソビエトが一九四九年の十月に原爆を持ち、それから一九五三年、昭和二十八年にソビエトが水爆を持ち、一九五四年の三月一日にアメリカが水爆を持った。世界の米ソ両勢力が、しかも日本を取り巻く米ソ両勢力が、ともに絶対兵器といわれる原水爆を持った。その中にある日本が、私は米ソ両勢力をできるだけ、けんかをさせぬようにし、そうして我が国が平和を守るというのには、よほど慎重な配慮と、日本の置かれた特殊な地政学的な環境に合った政策をとらぬと、私は間違いが起きるじゃないか。アメリカのこのコンティンメント・ポリシイという政策が再検討をされつつあるのは、やはり原爆の独占が破れた、原水爆を米ソ両勢力が持ってきたというところにあると思うのですが、そういう際には、岸総理の基本的な考えも、これにもっと弾力性のある外交政策になら、ざるを得ないじゃないかと思うのですが、いかがでしょう。
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岸信介#19
○国務大臣(岸信介君) もちろん、抽象的に考えまして、日本の地政学的な立場であるとか、あるいは国際間における兵器の発達のこの情勢というものは、日本の安全保障を確保していく上において、従って、われわれの外交政策の上において考慮しなければならぬことは、言うを待たないと思います。そういうことを無視して、いちずにものを考えるということは、間違っていると思います。しかし、具体的に、しからばそういうことを検討して、それじゃ結論がどうなるかと申しますと、今おあげになりました、日本が地理的にいっても、東西両陣営の接点に位しているということであるとするならば、日本の安全保障をするために、われわれが祖国をいかなる形において防衛し、いかなる形においてこの安全保障を確保しなければならぬかということが、必然に考えなければならぬ問題になってくるわけであります。私は、そういう意味から考えまして、日本の現在持っているわれわれの防衛力というもの、これを将来漸増していく、そうして、日本の安全を保障し、同時に、それが将来国際連合を中心に、集団安全保障が完成するというまでの間において、日米共同防衛のような形において、日本の安全保障をするということが、やはり必要になってくる、こう考えているわけであります。ものの考え方として、今、中田委員のおっしゃるような考え方を頭において、そうして日本の進んで行くべき道を考えるべきであるというお考えには、私は、その根本的の考えは当然そうなければならぬ、かように考えております。
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中田吉雄#20
○中田吉雄君 私は、やはり岸総理が、自由諸国の国家群の一員として、しかも対米協力を中心として外交政策をやられる、こういう際にも、やはりアメリカだけでなしに、米ソ両勢力が原水爆を持った、これが世界の外交政策、防衛、世界政治というものに根本的な変化を与えつつある点は、やはりそういう基本政策をとられながら、やはり敗戦直後のような、アメリカ、だけが持っている際の対米協力とはもっと変ったものにならなければいかぬじゃないか。たとえば、ニューヨーク・タイムスが一九五四年の七月二十四日においても、この問題を取り上げて、米ソ両勢力が原水爆を持ってから、世界の自由諸国、アメリカのいう自由諸国は、面積で一六%、中立国は三〇%、共産主義は面積で五〇、これは私、自由主義諸国が少し少いと思いますが、別の資料でもう一つ調べたのによると、一九五六年の五月、面積におきまして共産圏が二割七分、資本主義諸国、アメリカの陣営につく国が三割三分、中立諸国が四割、こういうふうに、やはり米ソ両勢力の間にはさまれた国が、AAグループを中心にし、そういうふうにふえてきた。しかも、岸総理も東南アジアに行かれるということですが、松村さんがお帰りになって、世界週報に書いておられる記事を見ると、東南アジアに行ってみると、中立化運動が旋風を呼んでいる。セイロンに行ったら、カンボジアの首相が来ておって、われわれはアジアの中立を徹底的に守らなければならぬ。日本も真剣に、お宅も真剣に考えられたらどうですかということを、松村さんに、セイロンの首相が言われた。私は、岸総理が南方に行かれれば、こういう嵐のように吹いている一つの外交政策の息吹きに接してこられることも、大へんけっこうだと思うのですが、しかし、松村さんですら、そういうふうにいわれる。そうして、アメリカのニューヨーク・タイムスが、こういう傾向は年とともにふえてきている、憂慮をもってその記事を書いている。そういう点からみても、私はやはり自由主義諸国とやるといっても、カナダやアルゼンチンやボリビアとか、そういうところとは違って、よほど節慶と高度の自主性があっていかぬと、かえって安全が保たれぬじゃないかというふうに心配するが、重ねて、松村謙三さん等の意見もあるし、一つ重ねてお聞きしたいと思うわけであります。
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岸信介#21
○国務大臣(岸信介君) 私は、この原水爆という人類を破滅に導くような兵器の発達がみられている現在において、いかにして戦争をなくするか。われわれは戦争を前提として、戦争するということでなしに、戦争をなくするということが人類の究極の目的であると同時に、現実のこういう破壊兵器が出た以上、それを用いての戦争というものを考えてみると、その様相というものを考えてみると、これは実におそるべき結果になるのでありまして、従ってわれわれは、戦争をなくするということに主眼を置いたあらゆる努力をしなければならぬことは言うを待たないのであります。
 今日の国際の実情を見ますると、両陣営とも、核兵器の実験禁止について私が日本国民の意思を代表して抗議を申し込んでいるのに対して言っていることは、相手国がこれをやめない限りはやめられないと、これをごくせんじ詰めてみると、そういう言い方でありますし、またそのお互いが、バランスといいますか、対抗するそれにおいて優越性を持っておるということが、世界の平和を維持する唯一の現在の状態であるというふうに考えられておるのであります。実際まだ、世界がほんとうの人類の理想から戦争をなくする、戦争すべきものにあらずという理念に透徹をせずして、むしろ、もちろん戦争はみんな、両陣営ともこれを防止しなければならぬという考え方は、両陣営とも私はそう考えておる、それに対しては、やはり力の対立によって、自分たちが優越なる力を持っておるということを示すことによってこの世界の平和は保てるので、そこに力の弱さを暴露することは平和をこわすことであると、こういうふうに考えられておるということが、私は今の国際の一般の情勢であると思うのであります。こういう中に立って、われわれが世界の平和をほんとうに念願し、これをどんなことがあっても戦争さしてはいかぬという信念に立って、そうして戦争を防止するということが、今後国連を中心としてわれわれのやるべき努力の目標であると思う。しかし今申すような世界の実際の、現実のなには、やはり力の優越によって、これによって平和が保たれておるという現実も、われわれは無視することはできないのが現状であると思います。こういう意味において、両陣営のこの対立した緊張が緩和されない限りそういうことが続くことは、私は実際人類の不幸であり、望ましくない姿である、かように考えておるわけであります。
 しからば、今御指摘になりましたように、いわゆる中立的立場をとっていったらどうだというお考えでありますが、私は先ほど来申し上げておるように、われわれが民主主義の完成をほんとうに念願し、これのみがわれわれの福祉の根源であるという観念に徹して考えますと、今日の日本の立場として中立的な立場をとることが、われわれがほんとうに民主主義を守り、われわれの自由を確保する道であるかといえば、私はそうじゃない、われわれはやはり自由主義の国であり、民主主義の国であるということを堅持して、そうしてこれらの国々との間に緊密な提携をもって、そうして今申しましたような世界の平和、すなわち戦争をなくしていくということにわれわれがこれらの国々と協力することが、日本の民主主義を完成し、われわれの自由を守る最も最善の道であると、私はかように考えておるわけであります。
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中田吉雄#22
○中田吉雄君 岸総理が原水爆の実験禁止等に対して御努力いただいている点は、野党のわれわれとしても感謝するものであります。しかし私は、米ソ両勢力が原水爆を持ち、しかも共産主義との接点にある。アメリカと数千マイル離れている。こういう際に、ほんとうに日本の今のやり方が安全になるかどうか。小瀧防衛庁長官に御質問しますが、防衛の責任者として、たとえばウォルター・リップマンのごときは、アトランテイック・マンスリーに、講和条約のあった年の五月号に書いていますが、「ドイツと日本は原子力戦争にはもう理想的な目標だ。われわれは日本をソビエトの原爆攻撃から守れない。守ることは不可能だ。だから、われわれのほんとうの同盟国に期待することはできぬ。しかしわれわれは日本がソ連の陣営に行くことも断じて承服しない。そういう点から、むしろ別個に安全保障があり得るはずだ。」こういうことをアメリカ切っての軍事評論家として高名な評論家ですが、そういうことを言っている。さらにくどいようですが、一九四九年の二月十六日、ロイヤル長官も、「第三次世界大戦が起きたら、もう日本をアメリカは守ることはできぬのだ。六十日基地だ。」そのころですら六十日基地だ、こう言っている。ハンソン・ボールドウィンですら、「なぜ沖縄を日本から離して、アメリカの領土としてアメリカは軍事基地を持つという形を取らなんだか。万一、米ソ戦争が起きたら、日本に長くアメリカ軍を駐留することはできない。グアムや沖縄へ行くために、やっぱりああいう別個の信託統治、その他アメリカの三権の及ぶようにしたのだ。」という、はっさりした戦略的な意図を言っているわけであります。そういう点から考えて、ほんとうに米ソ両勢力の間にはさまつている日本が、今防衛庁のとっておられるような、あちこちに飛行場を拡張したりし、誘導弾なんかを持ち込むことをやったりして、アメリカと一緒になって再軍備して、ソ連の勢力を仮想敵国にする方が安全であるか。私は絶対的な安全保障はないと思うのですが、どっちがほんとうに安全か、そういう点について基本的な考えを承わっておきたいと思うわけであります。
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小滝彬#23
○国務大臣(小滝彬君) 私は、日本の地理的な地位が両陣営の接点にあればこそ、ことのほか、今総理が申されました自由を守り、民主主義を守るために、日米の協力関係を持つことが必要であるという見解を持っておるものでございます。何となれば、日本には非常な大きな魅力がある。ドイツとか日本というものは、その接点にありまして、相当に人口も持ち、また工業力も持っておる。技術の水準も高い。こういうところをかりに無防備で置いた際、一体、日本が安全であり得るかどうか。今までのスターリン以来の政策なんかから考えてみましても、それがそのままに置かれるとは思わない。もし中立の立場をとるとするならば、日本に米ソに匹敵するぐらいな国力があればいざ知らず、そうでない際に、あくまで民主主義を守り通そうとするからには、先ほどから、るる総理が申しておられまするように、それとの協力関係によってこれを守らなければならないと思うのであります。もし、かりにアメリカの協力というものが全然ないという場合においては、それこそ核兵器もなくして日本が侵略される心配が全然ないということは、私は現在の状況においては保証し得ないと思うのであります。なおアメリカはここから去って行くかもしれぬとおっしゃる。そういうこともあるでありましょう。さればこそ、われわれは独立の立場から、日本の自力において、できるだけ効果的な、しかも経済的な自衛力を持とうということに努力を傾けておるのでありまして、今、中田さんが指摘されましたような論文から見ましても、私どものやっておりますことは一向間違っておらないと考えておるものでございます。
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中田吉雄#24
○中田吉雄君 戦略的な重要性からいうと、人口や資源の多いという点では、工業力の点から問題でありましょうが、スカンジナヴィア諸国はどうですか。ソビエトと陸続きで、しかも小国で、大した軍隊もなしに陸続きです。そして基地もなし、アメリカ軍隊の駐留なしでも、戦略的には、ヨーロッパを制するものが世界を制すると言われているくらい重要なんです。だのに、侵略がないのです。太平洋は海を隔て、これは何十個師の安全保障なんです。そういう際に、アメリカが駐留せねば直ちに侵略があるかというようなことは、これはアメリカの駐留をことさら合理化する一つのトリックとも言っていいわけで、ヨーロッパ諸国、その他中東等の、ソビエトと陸続きだって、侵略のないところはあるじゃありませんか。
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小滝彬#25
○国務大臣(小滝彬君) 私どもは、米軍が駐留しておることを歓迎しておるのではなく、それだからこそ、われわれの自衛力を増強しようというのです。中田さんのような博識の人はよく御存じのはずでありますが、たとえばスエーデンの例をとりまするならば、スエーデンはイギリスに次ぐところの西ヨーロッパにおける大きな空軍を持っておる。決して無防備であの中立というものを持ち続け得たのでは、ございません。これは釈迦に説法でありまするが、たとえばノルウエーにいたしましても、御承知と思いまするが、あすこの国民の所得の五%は防衛力に使っておる。日本は一・七%で、私はこの国民所得に対する比率がすべてであるとは思いませんが、いずれも中立を守り、侵略せられないためには、それ相応の努力をしておるということを認めなければならないのでありまして、私は日本も決してその例外ではあり得ないと考えるのであります。
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中田吉雄#26
○中田吉雄君 この問題は、私の考えはたくさん持っていますが、時間がありませんので申し上げませんが、日本が、日本海なり太平洋なりをはさんで大陸に接し、対岸しておる。こういう際に、ほんとうに防衛を考える際には、もっと具体的に、アメリカがいなければ、軍備がなければ、共産主義諸国の侵略があるのだというようなことでいくことは、具体性もないし、ほんとうに乏しい、自由民主党さんの立場からいわれても乏しい財源で効果的な防衛方針を打ち立てるためには、やはり日本を取り巻く諸国の軍の配備状態というようなことを十分知ることが必要ですが、一体、日本の対岸のソ連、韓国、中国、台湾というようなところは、どれだけの装備を持ち、ほんとに、私の言うように、日本海や太平洋というものは数十個師の安全保障に当るのですが、そういうものを侵しても、そこを渡ってきて、実際アメリカの駐留なしには、再軍備の問題はあとで申し述べますが、一体侵略はあるのか。そういう想定なしには、何らかの防衛方針を立てるには、やはり万一の際を、仮想敵国といっては言い過ぎかもしれませんが、やはり対象があって防衛は立つと思うのですが、また対象なしにはあり得ないと思うのですが、一体その配備状況、どういうものが、アメリカがおらねばほんとうに来るだけの、ソ連なんかの極東の配備状態があるのか、またインド洋を回ってくる力があるのか、そういう具体的なことについて、はっきりしてもらいたい。
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小滝彬#27
○国務大臣(小滝彬君) 日本の防衛を担当しております以上、一体よその国の配備が、それが仮想敵国であろうがなかろうが、どの程度であるかというようなことは、これは当然検討しなければならないと思うのであります。しかしながら、詳細なる情報の交換のできないところもありまするので、たとえば日本海の向う側にどれくらいあるかということにつきましては、これはどこまで信頼すべきかわかりませんが、新聞、雑誌、いろいろなものから検討してみますると、ソ連の陸軍について言えば、ソ連の方が大体五十万、中共が二百五十万から三百万近いところです。北鮮であれば大体六十万から七十万、南鮮が二十個師団で、それに予備の十万を加えますと六十万、台湾が四十万、これは常織的に皆さんの知っておられるところであります。たとえば空軍について申しますならば、これはソ連の方で大体四千五百機ぐらい、中共で三千機、もっと大きく見るところもありますが、こういう程度であります。北鮮の方だったら五百五十、韓国で二百、国府で二百五十というように言われております。南鮮につきましても、御承知のように潜航艇というものは相当、百ばいぐらいはあるというのが、常織的に知られておるところであって、ソ連の船舶の数は大体七百、中共三百八十というように、概括的に申しますならば配置されておるわけであります。ただ、これが直ちに日本を侵すというわけではございませんけれども、日本として、こういう情勢下において、あるいは一、二年今デタントと申しますか、緩和的な傾向がありましても、日本の自衛力を増強するということは、日本の永久的な立場というものも考えて、その骨幹も作らなければならぬ、あるいは一時的に緩和といいましても、あるいはどういう情勢の変化があるかもしれません。その際に、非常に陸続きというところがある際に、そこをあけっぱなしにしておいていいかどうか。こうした点、いろいろな面を考慮しまして、ただ原子戦になるのだからソ連以外の戦争はあり得ないとか、ただ一方的な考え方でなしに、いろいろなプロバビリティというものを考慮いたしまして、あるいは最も経済的に日本の国力を考えて、こうした自衛力の増強というものを検討いたしておるのであります。
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中田吉雄#28
○中田吉雄君 いろいろ外交によって安全を守った方がいいか、あるいは自由民主党さんのとられている方がより安全かどうか、相対的な問題だと思うのです。絶対的な安全保障というものはあり得ない。そういう点で、いろいろ具体的な方式というものはわが党も打ち立てております。あとでも述べますが、私は世界の諸国がだんだんだんだんと、米ソ両勢力の間にはさまれている国が、高度な自主性を、アメリカの陣営につくといいながら、やはり高度な自主性をとりつつあるということは十分認識されぬと、アメリカに一辺倒する内閣というものは、イタリアのデ・ガスペリからフランスのダニエル内閣から、みなつぶれてきている。セイロンでもそうですし、みなそうなんです。それは十分意味のあることですが、吉田総理が退陣されなければならなかったのも、やはりそこに世界的な原水爆の及ぼした国際政治、そういう大きな一環だと私は思うのです。
 時間がありませんので、その点は申し述べませんが、そこで岸総理にお尋ねいたしますが、私はやはり、軍備によって安全を保障するというのも一つの立場ですが、今申し上げましたような点から、私はやはりもっと先にすべきことがあるのじゃないか。政治は選択である、どっちが先か、そういう点では、私はやはり、隣に仮想敵国を作りながら、よその国と一体になって再軍備をしていくという方よりか、もっと私は、隣である中ソ両国、イデオロギーや思想はわが党とも一線を画しています。しかし、それとやはり制度や思想の相違を認めながらそれとの国交を調整する方と、どっちが安全か、相対的に安全か。また、どっちを先になすべきか。私はそういう点では、岸総理が幹事長をされているときに、鳩山さんが、やはりソ連と国交を調整された。そういう点から私は、もう日中との国交を調整をすべき、決断すべき時期ではないか。御案内のように、今度行かれます東南アジアの諸国は、ビルマも、インドも、パキスタンも)、セイロンも、インドネシアも、全部中国を承認している。一体、中国との国交調整はアメリカの了解なしにばできないも一のかどうか。どういうプログラムをもって隣国との調整をされるか。たまたま中国と国交を調整しないということがアメリカと一致しているのか。アメリカの了解なしにやれないのか、その辺いかがでしょう。
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岸信介#29
○国務大臣(岸信介君) 中共を承認し、これと国交を正常化するかどうかという問題につきましては、私はしばしば所信を明らかにいたしておりますが、現在の段階において中共を承認すべき段階でないということを申しております。私は決して、アメリカの承認がなければ、アメリカの承諾なければ中共が承認できないとか、そんなことを考えているわけではございません。あくまでも日本の立場から、現在の段階においてはまだ承認すべき段階でないと、こういう考え方をいたしております。
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