外交・防衛委員会

2000-03-23 参議院 全85発言

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会議録情報#0
平成十二年三月二十三日(木曜日)
   午前十時一分開会
    ─────────────
   委員の異動
 三月二十一日
    辞任         補欠選任   
     松崎 俊久君     浅尾慶一郎君
 三月二十二日
    辞任         補欠選任   
     吉村剛太郎君     岸  宏一君
    ─────────────
  出席者は左のとおり。
    委員長         矢野 哲朗君
    理 事
                鈴木 正孝君
                武見 敬三君
                小山 峰男君
                益田 洋介君
                小泉 親司君
    委 員
                岸  宏一君
                佐々木知子君
                村上 正邦君
                森山  裕君
                山崎  力君
                山本 一太君
                依田 智治君
                浅尾慶一郎君
                海野  徹君
                松前 達郎君
                荒木 清寛君
                立木  洋君
                田  英夫君
                田村 秀昭君
                佐藤 道夫君
   国務大臣
       外務大臣     河野 洋平君
   政務次官
       外務政務次官   東  祥三君
       外務政務次官   山本 一太君
   事務局側
       常任委員会専門
       員        櫻川 明巧君
   政府参考人
       防衛庁装備局長  及川 耕造君
       外務省条約局審
       議官       小松 一郎君
       文化庁次長    近藤 信司君
   参考人
       東京外国語大学
       外国語学部教授  井尻 秀憲君
       慶應義塾大学法
       学部教授     国分 良成君
       防衛研究所第二
       研究部長     高木誠一郎君
    ─────────────
  本日の会議に付した案件
〇参考人の出席要求に関する件
○外交、防衛等に関する調査
 (中国・台湾問題をめぐるアジア情勢に関する
 件)
○政府参考人の出席要求に関する件
〇著作権に関する世界知的所有権機関条約の締結
 について承認を求めるの件(内閣提出)
〇万国郵便連合憲章の第六追加議定書、万国郵便
 連合一般規則及び万国郵便条約の締結について
 承認を求めるの件(内閣提出)
〇郵便送金業務に関する約定の締結について承認
 を求めるの件(内閣提出)

    ─────────────
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矢野哲朗#1
○委員長(矢野哲朗君) ただいまから外交・防衛委員会を開会いたします。
 速記をとめて。
   〔速記中止〕
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矢野哲朗#2
○委員長(矢野哲朗君) 速記を起こして。
 委員の異動について御報告いたします。
 去る二十一日、松崎俊久君が委員を辞任され、その補欠として浅尾慶一郎君が選任されました。
 また、昨日、吉村剛太郎君が委員を辞任され、その補欠として岸宏一君が選任されました。
    ─────────────
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矢野哲朗#3
○委員長(矢野哲朗君) 参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
 外交、防衛等に関する調査のうち、中国・台湾問題をめぐるアジア情勢に関する件について、本日の委員会に東京外国語大学外国語学部教授井尻秀憲君、慶應義塾大学法学部教授国分良成君及び防衛研究所第二研究部長高木誠一郎君を参考人として出席を求め、その意見を聴取したいと存じますが、御異議ございませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
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矢野哲朗#4
○委員長(矢野哲朗君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
    ─────────────
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矢野哲朗#5
○委員長(矢野哲朗君) 外交、防衛等に関する調査のうち、本日、中国・台湾問題をめぐるアジア情勢に関する件を議題といたします。
 この際、参考人の方々に一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、大変お忙しいところ本委員会に御出席をいただきまして、ありがとうございました。
 参考人の方々から忌憚のない御意見をお述べいただき、調査の参考にしたいと存じますので、何とぞよろしくお願いを申し上げます。
 議事の進め方でありますけれども、まず、参考人の方々からそれぞれ二十分程度御意見を述べていただきます。その後、委員からの質疑にお答えいただく方法で進めたいと存じます。なお、参考人の方々、発言は着席のままで結構でございます。
 加えまして、なるべく多くの先生方に発言をいただきたいということで、お一人の発言に際しまして三分程度ぐらいの発言でひとつやりとりをしていただきたいと、こう思います。御協力を願います。
 それでは、まず、井尻参考人からお願いを申し上げます。井尻参考人。
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井尻秀憲#6
○参考人(井尻秀憲君) 私、井尻でございます。
 私のレジュメに関しましての表現上の問題に関しては、私のつたないところがございますので、どうぞ御容赦いただきたいと思います。今の私のレジュメの、お配りした中で、私の表現上の問題で不手際な点がございます点に関してはおわび申し上げます。
 お時間いただきました時間の中で、私なりの今回における台湾の総統選挙、そこでの陳水扁氏の勝利と今後の行方という形で少しお話をさせていただきたいと思います。
 既に御案内のような結果になっておりますので、時間の関係上ございまして、恐らく、今回の選挙結果それから今後の問題を考えます場合に、一つは、むしろ国民党のかなり大敗と言ってもいい、そういう状況になったわけですが、そちらの敗因の方から御説明あるいはお話を申し上げた方がわかりやすいかもしれないという気がいたしまして、その点に関して少しお話をしたいと思います。
 それから、もう一点に関しましては、元来、国民党の中枢にいた宋楚瑜候補が今回かなり陳水扁候補に肉薄する形で票の獲得がなされた、その理由は一体どこにあったのかという点をもう一点お話をさせていただいて、それから陳水扁候補の、新しい総統の誕生ということになりますが、この勝利の原因といいますか、そこらあたりをお話しさせていただくというような形で、基本的には三つぐらい、主として台湾の内政面、特に選挙結果を見た上での、直後での内政面に関してお話を少し絞らせていただきまして、私の報告としたいと思っております。
 それから、両岸関係、つまり中台両岸関係云々に関しましても、その結果として新しい総統に選ばれました陳水扁さんの今後の政治のあり方という、そういう点に関しましては、最後の段階で少し簡単に触れさせていただくというような形でお話を進めさせていただきたいというふうに思います。
 まず、李登輝国民党中央のいわば今回の選挙戦、あるいは李登輝総統のいわば退陣ということがきょうの新聞でも、党中央常務委員会レベルであすあさってぐらいに辞意の表明ということがなされるというところまで新聞ではもう書かれておりますけれども、いわば国民党サイドから見ますと、あるいは国民党サイドの現状、状況というものを見ますと、特に李登輝総統を中心にしました国民党の今回の選挙戦でのあり方、戦い方あるいはそれ以前の李登輝総統の時代に台湾政治がどのように展開してきたかということを踏まえて考えますと、やはり台湾の全体的な利益、台湾の全体的な国益と言えるような、そういうものを重視する。つまり、台湾の民主化あるいは台湾の台湾人意識、台湾内部における台湾人意識のいわば定着、そして民主化を逆戻りさせない、それから同時に台湾の国際社会における地位の向上、そういったものを確立していくという、そういう非常に大きな、大局的な李登輝路線といいますか考え方があったんだろうと思います。
 したがって、アジアの哲人政治家と言われるような、そういう強い李登輝総統のリーダーシップのもとでそういったことを進めてきたわけですけれども、その段階で国民党そのものが従来から持っていた古い体質、これが温存された形で、そこにいろんな矛盾があってもそれを強いリーダーシップでもってふたをして抑え込んでいたという、そういう状況だったんではないか。それがポスト李登輝というようなこういう事態になったときに、ぐっとその問題が、ふたがあいて噴出してきた。
 そして、改革という国民党そのものの改革あるいは台湾政治の改革というものが国民党自身にできる状況にあったのかというようなことが実はございまして、それに対して民衆、選挙有権者の意識というものが、むしろ国民党ではないほかの政党から出てきた、あるいは無所属の候補者、つまり陳水扁、宋楚瑜、この両氏に期待をかける、特に勝ちました陳水扁氏に期待をかけるという選択になったように思います。
 そういった意味で、国民党のいわば改造、五十年以上続いてきた党国家体制の改革というものが、先ほど申し上げた、台湾のより大きな大局的な利益ということを先行させて政治のかじ取りがなされてきたがゆえに、逆にそこに、特に地方政治の改革に手がつけられなかったというようなふうに私は理解しております。
 ところが、そこで出てきた、実は無職の在野に置かれた二人の政治家が登場してくることになったわけでありまして、その在野に置かれた無職の政治家の中で、一人は国民党から除名されましたけれども、国民党から離党して選挙に出た宋楚瑜氏。そしてこの宋楚瑜氏が、実はここにも書いておりますが、ある意味で、台湾人、外省人、つまり大陸的な外省人として初めてと言っていいぐらいの、まさに台湾人の票をとれるというところまで力を伸ばしていたと。
 その端的な例が、彼が省政府の省長であった時代に、相当の地方への公共事業という形で予算をかなりばらまいた。それが一方で、国民党の主流、党中央主流の連戦、蕭万長といった、特に蕭万長さんあたりは余り地方に行かない中央集権主義であって、同時に国民党は、台湾の民進党が、つまり野党が県、市レベルの首長なりそういうところを握っているというところには余り予算配分をしていないんです。ところが、そういう国民党が余りケアを、よく面倒を見ていないところへ実は逆に、民進党とはまた違った角度からこの宋楚瑜氏が入っていった。そして極めて強い地方への公共事業を与えるという、そういうことによって利益誘導型の政治を行い、まさに宋楚瑜という、国民党とか何党とかいう、そういうことではなくて宋楚瑜個人に対する支持というものをかなり集めたという、そういう点があったように考えております。
 同時に、それはちょっと若干人種的な問題になりますけれども、台湾の台湾人、いわゆる福老系のミン南語を話す台湾人と言われている人たちと、それから客家の人たちに、同じ本省人ですけれども分かれますけれども、民族的に少し違うそういう人たちのところにも宋楚瑜さんがかなり食い込んだというように私は理解しております。
 その結果として、本来二大政党制であって、それをかじ取りしてくるということで来た台湾の政局が、ここへ来ていわば三つどもえになってしまった。そうしますと、当然そこから今度は逆に、もう一人の若いホープとして民進党が育ててきた陳水扁さんの方に有利な状況があらわれたというふうに考えられるわけであります。特にいろいろと報道等で御案内の点以外に、この台湾の選挙戦の最終段階に入りまして、一つの連戦陣営に対してある意味ではかなりマイナスといいますか、打撃になった点がございます。
 それは、陳水扁さんが単に漁夫の利を占めるとかそういったことではなくて、台湾のいわばノーベル賞受賞者として非常に名誉のある人材だと言われてきた李遠哲さんという中央研究院、つまり総統府直属の研究院の院長であった李遠哲さんほか、もともと李登輝総統とも関係が深いと言われていたような財界の人たち、そういった人たちを含めて陳水扁さんの顧問団になるというような形で陳水扁さんの方の支持に移っていったわけであります。これが実は投票の本当にもう数日前でございまして、したがって、そのことによって国民党支持者にはかなりの心理的なパニックといいますか、そういう状況が出たように思います。
 ただ、そのときに、実は見方によっては李登輝総統の一種の権謀術数というような見方で、もしかしたら李登輝総統がそういうことに関してもいわばある程度わかっていて、それもまた一つの政治の手段として、権謀術数的な形で行ったのではないかという、そういう非常に一番我々がある意味では今回の選挙を見る際に関心を持つところがあるわけです。実際に、報道にもありますように、中国はそういった理解をし始めたという報道もございますが、この点に関しては、私が少なくとも感触を得た状況でお答えする、御説明申し上げることで言えば、まずそれはなかったのではないかというのが、これは私個人の得ている感触でございます。確実にこうだという点は言えませんけれども、そういった状況ではなかったかというのが私の得ている感触でございます。
 それからもう一つは、国民党サイドに選挙戦を戦う上で、この辺は新聞等々では余り書かれておりませんけれども、やはり国民党の連戦さんを支持してきたいわば国民党の選挙対策本部、ここと李登輝総統以下国民党中央の人たちとの間にちょっと意見の違いがあったのではなかろうかと。
 そこらあたりを考えますと、それは台湾のテレビ等々を見ていても非常にある意味では象徴的でもあったわけですが、国民党のどちらかといいますと古い、旧来の保守的な立場あるいはかつて李登輝総統と九六年の選挙戦で戦ったそういう人たちが連戦支持に回ったわけです。そして、選挙対策本部に訪れたりして連戦支持を表明する。そうなってきますと、これは逆に一般の住民からしますと、つまりそういった一種の国民党のいわば古い方向への逆戻りではないかという意識、そういうふうに見えなくないわけです。ですから、そういった点もむしろ陳水扁さんの方に有利に働くという、そういう選挙の中でのイメージ戦略といいますか、そういう点を考えますと、あったのではなかろうかというふうに思っております。
 それから、プラス中国という存在がありますが、やはり朱鎔基さんの中国の全国人民代表大会での記者会見でなされた台湾あるいはアメリカ、そういったところに向けた言葉と言ってもいいわけですが、あるいは直接的には台湾に向けた言葉と見てもいいんですが、つまり台湾独立ということがあった場合はそれを座視しないというような、ある意味で非常に恫喝的な、威嚇とも思える言葉だったわけですが、これに対していわば台湾の住民はむしろそれに対してやっぱり反発を示した。
 つまり、そこでソフトなやわらかい路線になってしまっていたら、逆に中国はそういうふうに言うことでもって効果があるんだということになりますから、それはそうではなくて、むしろ台湾の人たちにとってみればかなり強いそれは反発になったし、それから同時に、反発できる環境にあったというのはやはりアメリカが軍事的にも安全保障という、そういう側面で背後にいたという、そういう全体の構図を考えますと、まさにアメリカは議会で安全保障、台湾海峡の安全保障強化案というものをいわば可決していたわけですから、そういう面を含めて総合的に考えていきますと、最終的に選挙民の投票行動というものが、だれにいわば積極的に投票するかというよりもだれになってほしくないというような、つまり極めていろんな情報が攪乱しておりまして、はっきりとしたそういったものが出てきていない。しかも、規定によりまして投票日の十日前から世論調査等の公表ができないという、そういう状況にあったわけでして、ですから有権者にとってみればだれに投票、だれが一位で走っているのかわからないわけですね。
 そういう意味で、最終的には自分がこの人になってほしいということではなくて、この人になってほしくないというような形での投票をした可能性が高いというように私は思っております。つまり、だれかを捨ててだれかを守るというような、そういうふうな投票行動、こういうふうな形で投票行動に行った可能性があるというのが、現地で最終段階での状況を見た限りにおける、また私の得ている感触とそれから考えでございます。
 時間の関係上、これ以上の時間を多くはとれませんけれども、基本的には中台関係に関して、そしてまた陳水扁、新しい総統が生まれるわけですけれども、まずやっぱり内政面でかなり国民党、二百二十五議席を立法院で持っている。日本の国会に当たる国会でもって二百二十五議席の中のいわば民進党は七十席しかない、そういうふうな七十議席の状況の中でねじれ現象が起きるわけですから、当然国民党との間の調整が必要になる。
 それから、野党の民進党の候補としていわば当選したわけですけれども、しかし野党民進党、これから政権党になるということになりますが、その民進党からも恐らくそんなに、距離を少し置き始めるだろうと。ですから、そして、陳水扁さんは全人民の政治というようなことを言っておりますけれども、しかしそれはどうも言葉としては余りにもきれい過ぎる。ある意味で、それをその辺のところのこれから五月二十日まで、あるいはそれ以降、総統就任式までの動きとか、その後の陳水扁さんの経験、これまでの執務経験が台北市長を一期やっただけですから、そういった経験というものを考えますとそう簡単に物事がきれいに動くとも思えない。かなりいろんな動きがあって、不安定な状況が続く可能性も否めないというふうに思っております。
 それから、中国との関係に関しては、これもまた基本的には李遠哲さんというこの方が北京に行ってトウ小平さんとも会ったことがある。つまり、北京とのチャンネルも持っているというようなことが言われております。
 それから同時に、国民党が準備していた。国民党は今回対話に応じるということはかなり実は準備していたんです。連戦さんが勝てばもうすぐ対話に応じる状況はかなりできていたんです。それは汪道涵訪台という形で始まるだろうという、そういう予測が私としては得ておりました。ところが、政権が変わるということになる。そうなれば、陳水扁さんは勝利の記者会見で、江沢民さんとかそういう中国のリーダーの方に台湾に来てもらう、自分も行くというふうに言っておりますけれども、しかしそれはそう簡単にそれが実現するわけではない。やはりこれは言葉がきれい過ぎる。
 ですから、そういう意味で、まずはやっぱり段階を踏まなければならないだろうと。ですから、現在の台湾の対中国政策を担当する大陸委員会あるいは交渉の窓口にある海峡交流基金会、こういうところとの話し合いも詰めていかなければならないし、簡単に行けばいいということではない。
 むしろ、中国と台湾との間の関係において今一番重要な意見の違いというのは、一つの中国というこの原則をどうするかという問題なんです。ですから、その点に関して、恐らくこれは台湾サイドからすれば協議して構わない、当然違いを協議しましょう、対等な立場で違いを協議しましょうということの模索になると思います。ですから、統一という問題にしろ何であれ、意見の違いを、違いがあっても構わないので、それでもって対話しましょう、そういう形に恐らくなるだろうと。私、ただし結論がすぐ出るとはもちろん思いません。
 ですから、それは違いが決定的に、やはり一つの中国という中国側が主張する原則と、それから台湾の李登輝総統の二国論以後のいわば特殊な国と国の関係、あるいは陳水扁さんは国と国の特殊な関係というふうに言葉を少しひっくり返して言っておりますけれども、つまり国と国の方に力点があるのでなかろうかというようなそういう気もしますが、いずれにせよ、そういう違いがまだまだある。
 かなりギャップはあります。ですから、そのギャップを埋める、そういう対話をすること自体は恐らく始まると思うんです、すぐかどうかはもちろんわかりませんが。ただし、その結論は必ずしもすぐ出るとは思えないです。かなり意見の違いはあるというふうに私は理解しております。
 一応そういうことで私の報告を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
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矢野哲朗#7
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 続きまして、国分参考人にお願いいたします。国分参考人。
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国分良成#8
○参考人(国分良成君) ありがとうございます。
 ただいま御紹介をいただきました慶応大学の国分でございます。本日は、このような貴重な機会をお与えくださいまして厚く感謝を申し上げたいというふうに思います。
 現在、東アジアは非常にさまざまな問題で大きく揺れているわけであります。特に、中国、台湾をめぐる問題というのは、これは我が国にとっても非常に重大な問題であり、どのような分析をするのか、そしてどのような政策をとるのかというのがやはり決定的に重要なそういう状況、段階に来ているというふうにまず申し上げたいと思います。
 そこで、まず私なりの台湾の今回の総統選挙についての評価を申し上げたいというふうに思いますが、次の三点に簡単にまとめてございます。
 まず第一点目は、今回のこの民進党への政権交代というのがやはり民主化の一つの台湾における到達点であるということだろうと思います。約八三%近くの投票率というまさに選挙に燃えた台湾でございましたけれども、結果としては政権交代が起こったという、恐らくこれは李登輝総統が一貫して追求されてきたある種の民主化の一つの到達点でもあるということが言えるのだろうと思いますが。
 その結果でもありますが、第二番目には、これはやや言い方が強いかもしれませんが、国民党時代が一つの終えんを迎えたということだろうと思います。
 第三番目に、その結果でまさに言えるわけでありますけれども、従来、中台関係というものは、これは共産党と国民党の関係として中国自身がかなり強く認識をしてきたわけでありますが、この政権交代が起こったことによってまさに文字どおり中国と台湾の関係になってきたということが言えるのではないかというふうに思うわけであります。
 そこで、第二番目の点といたしまして、それでは私自身が現在の台湾の状況をどういうふうに理解しているのか、そして今後どういうふうにこれが推移していくのかということについて簡単に御意見を申し上げたいというふうに思います。
 まず第一に申し上げたいのは、今回陳水扁、新たな総統という形で当選をしたわけでありますけれども、実はまだかなりの困難を抱えていることは間違いないということであります。
 まず第一には、立法院という議会でございますけれども、ここで依然として民進党は少数派であるということ、そして多数は国民党であるということ、その中での議会運営をどうするのかという問題。
 それから第二には、依然として官僚あるいは軍、そうした指導部を見てみますと国民党系の人々がほとんどであります。そうした人たちをどういうふうにこれから説得していくのか、動かしていくのか、これが大きな問題であります。
 それから第三には、宋楚瑜氏が非常に得票を伸ばしたという事実があるわけであります。同時に、この新しい政党を結成するということになってまいりますと、この対抗勢力としてかなり強くこれから出てくる可能性があるわけであります。それから第五番目には、陳水扁氏そのものが国際経験に乏しいという問題があるわけであります。それから、もう一つつけ加えて申し上げますと、これからも中国の強い警戒心と強い主張というものが出てくると思います。これもやはり陳水扁新総統にとっては一つの困難であろうかと思います。
 それを踏まえて、一体陳水扁総統はどういう形で政局を運営していくんだろうかということを考えてみますと、まず第一に考えられるのは、今お話にございました李遠哲氏、つまりノーベル化学賞として非常に著名な方でございますが、国政顧問団の最高の地位につかれるということが決まっていますが、非常に台湾の中で人気のあるこの李遠哲氏を恐らくかなり活用するだろうということは間違いない。
 それから、第二に考えられるのは、やはり李登輝総統への接近といいますか、恐らく依然として李登輝総統の影響力というのは退任後もかなり強く維持されるということになるわけでありますから、そういう意味ではこれをやはり陳水扁氏も活用したいということにならざるを得ない。その意味では、国民党との連立というような形もあるいは部分的な連立ということも恐らく射程に入れて考えていくだろうというふうに思うわけであります。
 同時に、陳水扁氏は中国からの強い主張がございますので、現在台湾の中で住民の不安というのもかなりあるわけでありますから、その意味ではやはり台湾が中国と対話を行っていくという、この点についての前向きの姿勢も示していくだろうと。
 それでは、一体李登輝総統そのものは退任後どういう影響力を持ち得るのかということでありますが、選挙結果そのものは、李登輝総統にとっては私はセカンドベストであったというふうに考えております。私は、李登輝総統のこれまでの発言その他を考慮してまいりますと、最終的には政権交代というのが民主化の完成であるというふうにやはり考えていたのではないかというふうに思うわけで、そういう点では予定より若干早過ぎたというところは李登輝総統にはあったかもしれませんが、恐らく第二の選択肢としては陳水扁氏であったろうというふうに思うわけであります。
 ただ、選挙結果、連戦氏がこれほど票をとれなかったというところから見て、影響力が相対的に低下していくことはやはり否めない面があるかもしれないということであります。現に、現在国民党主席の責任論というものが浮上しております。そして、今回早目に辞任されるということがもう本日の新聞等で報道されております。
 ただ、私は、多分そのことによって影響力をどういう形で保持するかというのは恐らく考えておられるんだと思いますが、その点では多分民間人に下った方が逆に影響力をとりやすいという側面も考えているのかもしれない。よく民間外交であるとかNGO外交であるということが台湾でも強調されています。それは台湾自体が国際的な外交関係を多く持っていないという現実から来るわけでありますが、そういう形で影響力を保持するんだろうというふうに思います。
 同時に、李登輝総統は恐らく宋楚瑜氏が国民党に復活、あるいは国民党の中で影響力を持ち得る、そういうことをとにかく阻止したいということは今後もさまざまな形で行動をとるだろうと思われます。
 以上のことを踏まえて、それでは中国側は一体どういうふうに今回の事態を考え、そして対応しているのかということを客観的に申し上げたいというふうに思います。
 まず第一に申し上げたいのは、いわゆる台湾白書、同時に朱鎔基首相が非常に強硬な発言を行いました。つまり、統一交渉を引き延ばすような行為をした場合は武力行使を辞さないというような発言をもこの台湾白書の中で中国は明らかにし、そして朱鎔基首相もこれに合わせるかのように非常に強硬な発言をいたしました。
 中国の原則はやはり武力行使を絶対に放棄できないということであろうかと思います。それはなぜかと言えば、放棄をすれば台湾が恐らく中国からますます離れて独自の行動をとるということ、そういう判断に基づいているわけでありますが、同時に、もう一つ重要なことは、中国共産党にとってこの五十年間の政権の正統性そのものに関係しているということであります。みずからの政権の正統性として台湾の統一ということを五十年間繰り返し言ってきたということになりますと、国内的な正統性の裏づけという点からも、今後も恐らく台湾問題については断固たる姿勢を最後までとるというふうに思うわけであります。
 ただ、私は今回の台湾の総統選挙に関しては、武力での威嚇は実はなかなかしにくい状況に中国は落ちついていたということも事実であります。それは、前回九六年の総統選挙の際にかなり強い国際非難を浴びたという経験があるからでございますし、同時にその結果が李登輝総統の勝利ということをもたらしてしまったということがございます。つまり、前回の経験ということもございますし、それからもう一つは、やはり中国の今置かれている状況というものが非常に厳しい状況であるということはやはり認識しているかと思います。
 最も大きな問題は、国内の経済状況であります。これはWTOの加盟の問題もございますし、同時に日本を含めた西側諸国からの直接投資もかなり激減してきているという状況があるわけで、中国の経済的な活性というのが政権の安定性の基礎になりますから、そういう点ではやはり国際的な協調路線をとらざるを得ないという側面はあるわけであります。
 そういう点では、今回もし武力を使って威嚇するということをやれば、それがたちまち国際非難を浴びるということはほぼわかっているわけでありますから、そういう意味で国内のさまざまな軍の反発もあるというところから今回は文書という形で強硬な発言を提示したということになろうかと思います。
 私は、今回の事態の推移を見てまいりますと、台湾問題というのが中国の中では、ある意味ではこれまで中国の中でかなり凝集力を欠いてきた状況があるわけでありますが、そういう点では民族主義を喚起する一つのよい材料にも確かになったということでありまして、つまり不況であるとか、あるいは失業である、あるいは政治不安というようなことが中国の中で非常によく言われていた、そういう状況の中で、共産党の信頼感というものが低下している中でこれだけ凝集力を持ったというのもある意味では珍しいわけでありまして、そういう意味では国内に凝集力を持たせる、こういう形で中国が使ったということも言えるんだろうと思います。
 同時に、江沢民主席にとってやはり自分の将来的な成果、業績という点もあろうかと思いますが、それは毛沢東氏あるいは故トウ小平氏に比べてみると一体自分が何をするかということもあるかと思いますが、そういう点ではやはり台湾問題というのをどうにかしたいというのがかなり強いんだろうというふうに思います。
 今回のこの強い行動によってマイナスと実はプラスの効果があったというふうに私は判断しております。マイナスの効果は何かと申しますと、白書が出る前は台湾における総統選挙の争点は、これはただ一つ金権政治の打破ということでありました。つまりは、台湾内部のお金にまつわる金権支配ということ、ここに焦点が集中していた。ところが、白書が出たことによって中台関係に焦点が移行したということであります。
 同時に、台湾人かあるいは中国人かといういわゆる省籍矛盾というものも焦点になったということが実は陳水扁氏に票が集まった一つの背景になっているということだろうと思いますし、それからもう一つは、この白書の発表というのは、恐らくやはり陳水扁氏を崩す、陳水扁氏を落とすということが目標だったと思いますけれども、結果としてはこれは失敗したということになるわけであります。
 これが中国にとっての誤算であったかというふうに思いますけれども、実はマイナス効果だけでもなかったかもしれないというのが少し出てきているということであります。それはどういうことかと申しますと、陳水扁氏が当選するという場合も十分に想定できたわけであります。これは特に最後の段階においてはそのようなことが想像できた。その段階ではできるだけ強硬な立場で陳水扁氏を牽制するということであったんだろうと思います。
 それで、一体陳水扁氏がどうなったかといいますと、現実に彼の発言が非常に穏健化していったという事実があるわけであります。総統になれば民進党という党の立場から離れるであるとか、独立宣言はしないとか、あるいは国名の変更はないとか、対話を推進したいとか、あるいは訪中希望があるとか、あるいは最近では民進党の独立という綱領を放棄したいということが動きとしてあるわけであります。
 そういう点で見てまいりますと、中国としては、やや言葉が、余りいい言葉ではありませんけれども、李登輝総統よりも陳水扁氏の方が若干御しやすいという側面はあるかもしれないという感覚を持っても不思議ではないという感じがこれまでのところはするわけであります。
 そこで、中国のこれからの対応ということでありますけれども、やはり中国は今後も徹底的に独立という傾向をとにかく阻止したいということで強硬に訴え続けるだろうと思います。これが国内的な実はコンセンサスをある意味では持っているわけでありますし、同時にそれをやらない限りはみずからの正当性も危ない。同時に柔軟な策として、陳水扁氏に対して対話の促進をこれから促していくだろう。つまり接近策をも説くだろうということであります。
 そういうことによって何をねらうかというと、恐らく最大の目標は、ずっと総統選以前からの中国の対応を見てまいりますと、やはり李登輝総統の影響力の低下、これをねらうということだろうと思います。やはり李登輝総統に対する物すごい中国の内部での警戒心というものがあるわけでありますから、これを今後できるだけ排除したいというのが恐らく中国側のねらいだろうというふうに思います。その意味では、中国側は宋楚瑜氏にどういう形で接近できるかということを模索するでしょうし、陳水扁氏と李登輝総統の間をどうにか離間できないだろうかというようなことも恐らく考えるんだろうと思います。
 訪日の問題が出てきております。李登輝総統の訪日の問題、退任後でありますけれども、これに対して物すごい中国は反対を示しておりますけれども、これもやはり影響力がそういう形で保持されていくということに対する懸念であるということが考えられるわけであります。
 同時に、アメリカに対しても、中国は、独立の傾向をとにかく阻止してほしいということと、それから対話の促進をとにかく仲介してほしいということを積極的に依頼するんだろうと思います。
 いずれにいたしましても、五月の正式の総統就任までパイプをいろんな形で模索して、そして新たな陳水扁政権に対していろんな形の接触攻勢に出ていくだろうというふうに思うわけであります。
 最後に、日台関係ということ、日本と台湾の関係ということでありますが、実はこれ自身、私自身がまだ考え方がまとまっておりませんで、最後までこの部分は消すか消さないか迷ったのでありますが、やはりこのような機会でございますので、私自身の考えもまだ未熟でございますけれども、私なりの考えを申し上げたいと思います。
 これまでの日本と台湾のパイプというのは、これはもちろん国家関係はないわけでございますから民間を中心としたものであった。しかし、民間を中心としたものであるけれども、やはり国民党中心であり、同時に李登輝総統を中心としたものであった。これは別の言い方をすれば、日本語世代というものを中心に交流してきたということになろうかと思います。その意味では、民進党あるいは陳水扁氏とのつながりというものはまだ新しいし、同時に限定的なものであろうかと思います。
 台湾の世代交代ということの中で、台湾は恐らくこれから日本語世代にかわって英語世代というのが圧倒的な多数を占めていくということになろうかと思いますので、そういう意味では台湾とアメリカの関係というのはますます今後太くなっていくだろうということが予想されるわけであります。
 その点からいいますと、日本との関係というものが、民間を中心としてでありますが、若干弱まることもあり得るわけでありますが、ただ、台湾の中にある日本ブーム、また日本を受け入れるということの社会的な基盤はもうかなりでき上がっておりますので、そういう点での日本と台湾の民間の交流というのは今後もかなり強く続くだろうというふうに思います。
 問題は、李登輝総統の退任後の訪日の問題であります。これは現在でも非常に論争を巻き起こしておりますし、既に中国側から強い反発を呼んでいるわけであります。ただ、論理的に考えてみますと、それから、ある意味では感情的あるいは道義的に考えてみても、李登輝総統の退任後、同時に党主席もやめられるということでございますので、そういう点では訪日は可能であるという条件は整ってきたということだろうと思います。
 ただ、問題はそれをどういう形で行うのかという問題であります。一つは状況の問題、二つ目はタイミングの問題、それから第三番目は方法の問題であります。つまり、中国にも中国のメンツと原則というのがあるわけでありますし、やはり我が国としては中国との外交関係ということが前提でございます。
 そういう点を考えてまいりますと、状況としては、余り問題を公にし過ぎる、あるいはこの問題について大きく取り上げ過ぎるという状況の中では中国は反発せざるを得ないというのが当然の中国の政策になろうかと思いますし、タイミングという点で考えますと、例えば日本は間もなくサミットを迎えようとしておりますけれども、その直前であるとか、つまり日中間というものをできるだけ険悪にさせたくないという状況下、また関係がある程度安定しているという判断の中でこうしたことが行われないとだめでしょうし、それから第三番目には、方法という点では、もちろん公人として訪日いただくということにはいかないでしょうし、それは民間の関係しかないわけでありますから、私人、民間人という形。
 それから同時に、どういう場所に、あるいはどういう人と交流するかという、そうした点も含めてこれはいろんな形でセットできちんと話を詰めていかないとかなりお互いにしこりを残すということになりかねないということで、私自身もまだ煮え切らない結論でございますけれども、やはりこれは十分に水面下で議論していく話ではないかというふうに考えております。
 いずれにしても、日本と台湾の関係、あるいは同時に、外交関係を持っております中国との関係というのは、どちらもやはりこれはある意味では重要な関係であります。その均衡点がどこにあるのかという点を考えてみますと、これはやはり中台の平和的な統一であるという以外にあり得ないだろうと思います。そのための対話の推進ということも、我が国としては基本的に前向きに推進することを主張すべきだろうというふうに思います。
 同時に、独立と統一ということの間には、実はこの二つの選択肢だけではない無限の恐らくシナリオというのがあり得るんだろうというふうに思います。そうした柔軟な思考というものが我々にも求められているということだろうと思います。東アジアの安定のためにも我が国にとってこの問題はやはり今後も積極的に議論していく、そうした重要な課題であるというふうに考えております。
 以上で発言を終わらせていただきます。ありがとうございました。
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矢野哲朗#9
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 次に、高木参考人にお願いをします。高木参考人。
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高木誠一郎#10
○参考人(高木誠一郎君) どうもありがとうございます。
 日本の対外政策に重要な責務を負っていらっしゃる先生方の前で私の見解を発表する機会を与えていただいたことを大変光栄に存じております。
 冒頭にひとつおわびと釈明を申し上げたいんですが、私は前のお二人の参考人のように皆様にレジュメをお配りしておりません。実は私はお配りするつもりできのうの夜遅くまで準備をしておったんですが、私は現在防衛庁の防衛研究所というところに所属しております関係で、内局の方から、レジュメを出すならばまずこちらに見せろと言われまして、まだやっている最中だったんですが、昨晩遅くやっとできると思うと言ったら、それならレジュメなしでやってほしいというふうに言われたわけであります。レジュメがないことを大変申しわけないと思っておりますが、決して私の議会軽視ではありませんので、御理解いただきたいと思います。
 私に対する発言の内容の御指示は、アメリカの立場から見た台湾問題を論ずるようにということでございました。何をお話ししようかいろいろ考えたんですが、時間も限られておりますので、二点に絞ってお話ししたいと思います。
 一点は、アメリカが、一九七二年の米中接近以降、台湾問題に対してどのような態度をとってきたかということを大まかに回顧するということ、それから第二点は、最近の状況についてどのような対応をしているかという二点でございます。
 まず最初の、アメリカの台湾問題に対する立場の変遷ということですが、ここまで初歩的なことを申し上げてはかえって失礼かもしれませんが、一九七二年二月の上海コミュニケを振り返ってみますと、このコミュニケはアメリカと中国が国交正常化の交渉を開始するということをうたったコミュニケであるわけなんですが、このコミュニケの中で、台湾問題は国交正常化の交渉を左右するかぎとなる重要な問題であるということが述べられております。
 この中で、言うまでもなく中国は、台湾は中国の一部であるという立場を明確に述べておりますが、これに対するアメリカの表現というのは非常にあいまいなものでありました。その文書を引用しますと、アメリカは、台湾海峡の両側のすべての中国人は中国はただ一つであり、台湾は中国の一部であると主張しているという、そういう事実を認識するというふうに述べているにすぎません。この認識という言葉は、英語ではアクノリッジという言葉を使っております。中国語は認識到るという基本的に日本語と同じ意味なんですが、そういう漢字で訳しております。そして、この台湾問題の平和的な解決に関心を明確に表明いたしました。
 このコミュニケで始まった米中の国交正常化の交渉というのは、その後、米中両国の国内政治の激動のためになかなか順調に進みませんで、一九七八年十二月にやっと決着いたしまして、十二月十五日に国交正常化のコミュニケが発表されます。
 この国交正常化のコミュニケの中で、やはり中国は従来の立場を繰り返して述べ、アメリカはこれに対して、台湾は中国の一部であるという中国の立場を認識するというふうに微妙に表現を中国寄りに変えております。これを英語で読みますと、アクノリッジ・ザ・チャイニーズ・ポジションという表現になっておりまして、そして非常に興味深いことは、この部分の中国語訳が承認という字になっております。上海コミュニケにおけるアクノリッジという言葉は認識と訳されていたんですが、正常化のコミュニケのアクノリッジという言葉を中国は承認しているというふうに訳しておりまして、以後、事あるごとにアメリカに対して、アメリカは台湾が中国の一部であるということをあのときに承認したではないかという形で、このコミュニケを引用しております。
 このような中国にかなり接近した立場をとったことへの反発も加わりまして、この国交正常化のコミュニケの承認と相前後して、アメリカの議会は台湾関係法というのを通過させました。これはアメリカの台湾に対する安全保障上のコミットメントを、台湾との防衛条約を破棄せざるを得なかったということがありますので、アメリカの国内的な立法で保障しようとしたものであります。
 この台湾関係法では、台湾の自衛に必要な兵器を供給するということを明確にうたっておりまして、そして台湾に供給する兵器の種類あるいは量の決定に当たっては、台湾の防衛上の必要以外の配慮をしてはならないということも述べております。また、この台湾関係法は、平和的な手段以外の方法で台湾の将来を決定しようとする行動はすべてアメリカの重大な関心事であるということを述べておりまして、その例示としてボイコット、封鎖も含むということを言っております。ある意味ではこの台湾関係法によるアメリカの台湾の安全保障に対するコミットメントというのは安全保障条約よりも強いものだと言ってもいいかもしれません。
 このようなコミュニケによって正常化が達成された後、一九八一年にレーガン政権が発足するわけですが、レーガン大統領は、一九八〇年の選挙戦を通じて、台湾との関係を正常な外交関係にするあるいはすべきであるというようなことを述べておりまして、そのような人が当選したということもあって、台湾側からアメリカの台湾に対する兵器供与の質の向上について非常に強い要求が出てまいりました。
 この状況に中国は非常に危機感を抱きまして、台湾に対する兵器供与を制限する何らかの取り決めを結ぼうということを働きかけます。非常に複雑な交渉を経まして、一九八二年八月十七日に台湾向け兵器輸出に関する米中の共同コミュニケが調印されます。このコミュニケと正常化のコミュニケと上海コミュニケをあわせて米中ではしばしば三つのコミュニケというふうに言われております。この兵器輸出のコミュニケの中で、アメリカはさらに中国に微妙な歩み寄りを見せておりまして、ここでアメリカ側は二つの中国、あるいは一つの中国、一つの台湾の政策をとらないということを明言しております。
 このように上海コミュニケから兵器輸出に関するコミュニケまでアメリカはじわじわとその立場を中国寄りにしてきたわけであります。もちろん、この間にありましても台湾問題の平和的解決に対する強い関心の表明というのは繰り返して行われておりますが、微妙ではあっても中国側の立場に接近していったことは否定できないと思います。
 このような事態を背景に、一九八〇年代の末から冷戦の終えん、それから八九年六月の天安門事件という時代を受けてアメリカの対中政策は大きく動揺いたします。また、特に台湾に関しては、七〇年代から八〇年代にかけての台湾の急速な経済成長、それから八〇年代後半以降の民主化の進展ということによって台湾の国際的なステータスが上がってきたということも事態をさらに複雑にしております。
 このような事態を受けて、一九九四年、アメリカは台湾政策の見直しを行いまして、これによって技術経済関係の官庁の高官が台湾を訪問することを認めるという方向にかじを切りました。そして九五年には李登輝総統の訪米を認める、もちろんこれは私的訪米という形をとるわけですが、認めると。そして九六年には、総統選挙に際して中国が軍事演習による威嚇を行ったということに対して空母を、機動部隊を二個台湾近海に派遣して、中国側ににらみをきかせるという行動をとります。
 もちろんこの間における台湾問題に関するアメリカの基本的な立場は、いわゆる戦略的あいまい性ということでありまして、アメリカは、中国が台湾に対する武力攻撃をした場合にこれを黙視するとは限らないということを一方で言いながら、他方台湾に対しては、台湾が非常に挑発的な行動をとった場合には必ずしも台湾を防衛するとは限らないという一見相矛盾した、いわば玉虫色のメッセージを米中双方に送ることによって、この海峡における武力衝突を阻止しようと図ってきたわけであります。しかし、一九九六年の空母派遣というのはこの戦略的あいまい性を少し低下させたかなというふうに受け取られる面もございます。
 さらに一九九八年、クリントン大統領が中国を訪問した折にいわゆる三つのノーという態度表明を行いました。これは、台湾の独立に対する支持はしない、それから二つの中国、一つの中国、一つの台湾も支持しない、それから国家を構成メンバーとする国際機関への台湾の参加も支持しないというわけであります。
 この三つのノーというのは中国側が非常に喧伝しておることでありますが、ただ、このときにクリントン大統領は、台湾問題の平和的解決ということも明確に言っておるわけでありまして、アメリカとしては四つのノー、つまり武力不行使というのを加えて、自分たちの言いたいのは四つのノーだと言うべきであったのではないかと私は思うわけですが、どうやら中国側の宣伝能力の方がアメリカを上回っている、少なくともこの面についてはそういうことが言えるのではないかと思います。
 このように、アメリカの台湾問題に対する立場が展開してきたことを受けて現在の状況があるわけですが、最近の状況、特に昨年以降の状況を見てみますと、アメリカではやはり中台の武力衝突に対する懸念が非常に高まっているということが指摘できると思います。
 昨年二月、アメリカの議会は、台湾海峡における軍事バランスに関する報告を公表いたしまして、二〇〇五年までは台湾は中国に対して優勢を維持するということを言っているわけです。といいますのは、二〇〇五年以降はむしろ中国の方が優勢に立つだろうという予測をしております。
 このような予測を一方でしながら、他方コックス報告というものを出しまして、中国が長年にわたってアメリカの諸機関から原子力兵器作製に関する機密を窃取していたという指摘をするという背景もありまして、中国に対するアメリカの警戒心というのは非常に高まっております。
 このような中で、さらに昨年はユーゴの中国大使館における誤爆事件があって米中関係が非常に悪化したわけですが、中国側としては当然爆撃された立場としてアメリカに対する我慢ならない気持ちもあったと思いますが、それに対する対応がアメリカの中で非常にまた反発を呼ぶということもありまして、極めて険悪な雰囲気になった時期がございます。
 そのような事態を背景に、昨年の後半、アメリカの議会では台湾安全保障強化法案というのが提出されまして、昨年十月、下院の国際関係委員会を通過し、ことしの二月に下院の本会議で圧倒的な多数をもってこれが通過しております。
 上院は、これを一つのてこに使おうという計算だと思いますが、台湾の総統選挙後までこの法案の審議を延期するという措置をとっておりまして、現在もまだ投票は行われておりませんが、中台関係の展開によっては、やはり上院も圧倒的多数で、少なくとも大統領の拒否権を覆すに足るだけの多数で成立させるという可能性が依然として消えていないという状況であろうと思います。
 こういう状況に対して、行政府は事あるごとに中国、台湾双方に自制を求めておりますが、特に中国に対しましては二月の中旬にタルボット国務副長官、それからスローコム国防次官を派遣しまして、中国側の自制を求めて、何とか武力衝突の勃発を抑止しようとしております。
 しかし、これに対してアメリカ側としては非常にショックだったのは、このタルボット、スローコムの使節団が中国を離れたその直後に先ほど来お話のありました台湾白書というのが出まして、交渉を無期限に延期する場合は武力行使も辞さないというような態度表明を行ったということであります。
 また、このような状況を受けてクリントンも、三つのノーの発言を微妙に修正する発言をしております。と申しますのは、三つのノー自体あるいは一つの中国政策というものは否定しないのですが、台湾のあり方の変更は台湾の人々の同意を必要とするということを述べるようになっております。
 一般に、アメリカの外交安全保障問題あるいはアジア問題の専門家たちの意見を新聞等から推察してみますと、近い将来に中台間で武力衝突が起こる、あるいはそれによってアメリカが関与せざるを得なくなるという事態はないにしても、三年から五年という中期の見通しを考えた場合、かなりその危険は高いという意見を持つ人が多いようであります。
 最後に、選挙の結果についてのアメリカの反応について私の感知し得たことをお話し申し上げますと、まず陳水扁の当選は、先ほどの国分先生のお話で、最後の段階で中台関係が争点になったというふうにお話がありましたけれども、アメリカの支配的な見方は、基本的にこれは反腐敗のキャンペーンの成功であるということで対中関係が中心となった選挙ではないということ。それから、中国側がかなりその言行を陳水扁の当選以降自制しているということで、幾分安心しているということが見てとれます。
 また、アメリカの議論の中にはおもしろいものがございまして、かつて反共の闘士であったニクソンが中国との関係改善を実現したように、陳水扁はもしかしたら中国と台湾の関係を根本的に解決し、この両者間のデッドロックを打開するような働きをするのではないか。いわゆる陳水扁・ニクソン論というのが出ているようであります。
 いずれにしましても、アメリカの基本的な立場は、先ほど国分先生が日本の立場としてお話しになったことと同じと思いますが、何とか武力衝突を回避して両者を交渉のテーブルに着かせるということに尽きると思います。
 ただ、この交渉がどのような形でうまくいき得るかということについては、私の知る限り確たる展望はないというふうに見受けられます。したがって、いざとなった場合に対する備えも怠りないというのがアメリカの対応ではないかと思います。
 以上でございます。どうもありがとうございました。
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矢野哲朗#11
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 以上で参考人の方々からの意見の聴取は終わりました。
 それでは、これより質疑を行います。
 本日は、あらかじめ質疑者を定めず、委員各位に自由に質疑を行っていただきます。質疑を希望される方は挙手の上、私の指名を待って御発言いただきたいと思います。
 それでは、質疑のある方は挙手を願います。
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武見敬三#12
○武見敬三君 大変喫緊の課題について詳細な御報告をいただき、三名の参考人の方々に対し心から御礼を申し上げる次第であります。
 最初に、まず井尻参考人にお尋ねをしたいわけでありますけれども、確かに国民党の政権が交代を余儀なくされたという状態になったわけでありますけれども、実際にこの後の台湾の政治の動向の中で国民党というのが一体どのような形に変質していくのであろうか。その過程で新たにどのような、日本流で言えば政界の再編という状況が展開されていくのかという点についてお伺いしたいと思います。
 特に、国民党政権というのは、先ほど国分参考人の方からも指摘されておりましたように、軍及び政府の官僚、幹部、これは全部国民党員と言っても過言ではない。そうした状況の中で、もしそういう国民党が分裂するということになった場合に、同じく政府及び軍の要所を占める官僚グループというのも分裂をしていくのかどうか。そしてまた同時に、そうした過程で陳水扁新総統という新たな指導者がどこまで台湾の政局全体を安定的に管理し得るのであろうか、この点についての御所見を伺いたいと思うわけであります。
 それから、高木参考人にお尋ねしたいのは、実は台湾安全保障強化法案の今後の動向であります。
 特に、台湾白書というのが厳しい反発を米国議会内に引き起こして、結果として、むしろ当初は採択されないのではないかと言われていた上院における審議も逆に順調に進みそうだというようなことも言われました。そしてさらに、今回の陳水扁新総統の誕生という事態がこうした上院における審議の状況にいかなる影響を及ぼすことになるんでしょうか。そして、それに対する行政府側の対応というものはいかなるものになるのか、この点についての御所見を伺いたいと思うわけであります。
 そして、国分参考人に関しましては、中国の今後の対応の問題であります。
 実際に陳水扁陣営の最終的な支持に回ったエバーグリーンの張栄発氏であるとか、かなりのこうした陳水扁陣営に加わった人たちというのは大陸側とも実は緊密な関係を持っている人たちがおるわけであります。その人たちを通じたやはり従来の三通というものに対する条件の緩和という、そういう環境が台湾側に確実に整い始めたように思います。
 政治的な一つの中国論にかかわる議論というものは、これは入り口論でなかなか難しいというふうに考えるわけでありますけれども、こういう三通の条件緩和などを通じた実質的な中台の経済的な関係の拡大というものが逆に今後実現していくのではないか。それがまた間接的に中台の政治的な緊張の緩和、そして新たな交渉の条件整備ということにつながらないかというような、そういう若干希望的な観測をも持っているわけでありますけれども、国分参考人はいかにごらんになっているでしょうか。
 以上です。
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井尻秀憲#13
○参考人(井尻秀憲君) 簡単にお答えしたいと思います。
 まず、国民党の今後のいわば変質といいますか改革の問題、それからどのような政界再編成に向かうのかという問題でございますが、やはりかなり今の段階で明快な形で今後の展望を記すといいますか示すということは難しいわけですが、いずれにせよ、かなり国民党から、一つは宋楚瑜、新しい第三勢力を結集する新党の方に移る人が出てくるだろう。そういった意味で、国民党はますますより台湾国民党としての立場をまた明確にしていかなければいけないということと、それから、先ほどちょっと申し上げましたが、国民党の中での意見の違い。
 それから、李登輝総統がおやめになるのも本来九月の臨時党大会ということだったのが、あすの党中央常務委員会での表明というような報道に変わってきておりますけれども、今一番国民党に関連する問題で大きな問題はやっぱり党資産の問題であります。
 この党資産をどうするかという問題がございますので、一般に二百億米ドルと言われたり、あるいは日本円で二兆円を超える、これは非常に複雑に登録されている、登記されたりしているものもあったり、非主流、つまりかつての反李登輝総統の勢力と言われている国民党内部に残っている人たち、そういう人たちもこの問題に関してかなり強い関心を示すわけです。ですから、その問題が、連戦さんが選挙期間中に言われた信託化という、民営化という形ですんなりいくのかどうか、ここらあたりに私は非常に関心を持っております。
 しかしながら、それがどのように進むかという点に関しても、民営化という方向に進む、あるいは台湾全体の利益に使われるような形でこれがうまくいわば配分されたり使用されていくのかどうか、ちょっとよくわかりませんけれども、この問題と絡めて、政界の再編成、そういった問題も見ていかなければならない。
 宋楚瑜、新しい政党の結成ということを表明している彼にとっても、そちらの方に流れていく国民党の党員の方々にとっても、やはりかなり彼らの頭の中に、視野の中にこの国民党の党資産というものをどうするかというのがあるだろうと。李登輝総統は国民党の党資産に関して余りタッチしてこなかった。これはほとんど党営事業本部長の劉大貝さんに任せていたというような経緯がございますので、今後そういう問題がまたクローズアップされてくるというふうに思います。ですから、まだ明快な形で政界の再編成ということのお答えができないんです。
 それから、軍の動き云々に関しては国防法ができましたのである程度は、かなりシビリアンコントロールはきくと思います。
 ですから、そういう意味では、新たに陳水扁さんになってもある程度その辺は、そこから大きな変化が生じるとかいうような、あるいは揺り戻しが生じるとかいうことは見通しがしづらいというふうに私は考えております。
 どうもありがとうございました。
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国分良成#14
○参考人(国分良成君) ありがとうございます。
 武見理事の御質問というよりは御意見もかなり含まれておりまして、私は基本的に賛成でございますけれども、中台の対話ということについて、先ほど高木参考人の方から進展がないかもしれないということでございましたけれども、恐らく対話の場を持っているということ自体の意味がやはり一つの信頼醸成になるだろうというふうに思っておりますので、そこから先の話はまたいろいろございますけれども、そうした場の設定というのがやはり一つ重要なポイントである。
 それから二つ目は、武見理事のお話にございましたように、陳水扁陣営をこれからサポートしていく人々がかなり中国との関係を持っているということ、同時にこの人たちは李登輝総統とのパイプもかなり太いという事実もあるのだろうかと思いますけれども、そうした点で陳水扁氏はこれからその両面をとらざるを得ないと。先ほど申し上げたように、内部的な政局運営という点では李登輝総統の力をかりざるを得ない側面があろうかと思いますが、同時に中台間の関係の安定というこの重要な問題からいきますと、もう既に陳水扁氏が公にしているとおり、三通と先ほどお話がございましたが、基本的な関係、通商を中心としておりますけれども、そうした接触をこれからも行っていくと。
 私は、結論として申し上げたいのは、こうした経済の交流というものは、これは国境を越えた交流でございますので、もう必然的にこれからもふえていくであろうと。現在のようにグローバリズムが支配的な状況の中で相互依存体制は今後も進むわけであります。
 中台の関係といいますと、どうも安全保障の面ばかりが強調され、また対立の側面ばかりが強調されるわけでありますけれども、私の知り得る限りでは、例えば香港やあるいは東南アジア等々で中国と台湾の両方の学者あるいは民間人が接触する機会というのは非常に多くございます。同時に、日本とアメリカではなかなかそのような機会は少ないんですが、また中国も非常にそれについては警戒心を持ちますけれども、その他の世界の中では中国と台湾の接触というのは、民間人の形ではありますけれども、かなり広範囲に行われているということがあるわけでございます。
 そうした点を考えてみますと、つまり我々はこの地域の安定状況というものをどのようにつくり出すかというときに、直接的な安保の問題もございますけれども、そこだけですとお互いの原則というものがどうしても強調されがちでありますから、武見理事のまさにお話のありましたとおり、経済交流というものがやはりこの地域の緊張をほぐしていく一つの大きな要因になるだろうというふうに思うわけであります。
 その際、私は日本企業もやはり重要な意味を持っているというふうに思っておりまして、つまり日本企業が現実に台湾に直接的にさまざまな形で経済協力あるいは技術移転を行う、それが台湾から大陸へと技術移転がされていくというような現実の構図があるわけでありますから、そういう点では実は日本と中国と台湾が経済的にゼロサムでないプラスサムの関係を持っているということもあるわけであります。遠回りではあるかもしれないけれども、そうした関係をつくっていくということが重要ではないかというふうに思っております。それがやがて安全保障上の緊張関係をほぐしていくということにもなろうかと思いますが、いずれにしても、余り短期的に物を考えるべきではないというふうに思います。
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高木誠一郎#15
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 武見理事の御質問は、台湾安全保障強化法案の上院審議の展望ということでございましたが、当然のことだと思いますけれども中台関係の今後の展開によって大きく左右されるだろうと思います。緊張が高まるようになれば賛成票がふえるということは明らかだろうと思います。問題は、これが通過するかどうかというよりも、大統領の拒否権を覆せる三分の二以上の票を得て通過するかどうかということだろうと思うのですが、下院は既に三分の二をはるかに超える圧倒的多数で通過しておりますが、上院においてはその三分の二の壁が越えられるかどうかというのはまだ微妙なところだろうと思います。
 いずれにせよ、この台湾安全保障強化法案というのは、実は今回お話をいただいてからきょうまでに情報収集が間に合いませんで、一番最初に出てきたものとの比較が正確にはできていないんですが、聞いたところによりますと、最初に提案されたものよりもかなり内容を薄めたものになっている、現在審議されている、あるいは下院を通過して今上院にかかっているのはそういうものだそうであります。
 このテキストを読んでみますと、確かにこれは台湾関係法の実効性を確保するという側面が非常に強く、それ以上のものは比較的象徴的な面が強いものだろうと思います。実質的な意義としては、国防大学等に台湾からの留学生のための席を確保すると。台湾の軍と米軍とのコミュニケーションをよくして、いざとなったら、共同作戦まで行くかどうかわかりませんが、少なくとも協調的な作戦行動がとれるようにする基盤をつくっておくということ。それから、台湾への兵器供給に当たっては、台湾関係法に既に述べられていることですが、台湾の防衛上の必要以外の考慮を絶対にしないということをさらに強調しているというのが主な内容であろうと思います。
 ただ、それでも中国からすると我慢がならないだろうと思われますのは、この法案の至るところで、一九八二年の台湾向け兵器輸出に関する共同コミュニケの内容にもかかわらず、台湾関係法が重視されるべきであるとかあるいは台湾関係法の方が法的に上位に立つということを明確に述べているところでありまして、中国側からすれば一九八二年のコミュニケの否定にもつながりかねないというふうに読めるだろうと思います。
 この内容を薄めただけに通りやすくなっているということもありまして、今後の中台関係の展開いかんによっては、上院を通過、さらにはその三分の二以上の多数でもって通過するという可能性も否定できないのではないかと思います。
 これに対して行政府側がどう対応するかということなんですが、既に言われておりますことは大統領が拒否権を発動するということなんですが、ただここで一つ状況を複雑にしているのは、現在大統領選挙が進行中であるということでありまして、中国の無法な行動に対して甘いという非難を受けるということはどの候補にとっても非常に大きな痛手になることでありまして、中台関係が緊張している段階でこれが通って大統領がこういう拒否権を発動すると、当然それはゴア大統領候補に対する激しい非難としてはね返ってくるということが予想できますので、かなりそれに対するちゅうちょも出てくるだろうと思います。
 将来のことですので、これ以上のことはちょっと現在申し上げられませんけれども。
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荒木清寛#16
○荒木清寛君 まず、井尻参考人にお尋ねをいたしますが、先ほどの高木先生のお話もあわせますと、今回陳水扁氏が勝ちましたのは何も彼の台湾独立政策が支持されたというわけではないというお話であったかと思います。ただ、私もニュースで見ておりましたら、たしか国民党のテレビキャンペーンだと思いますが、陳水扁が当選をすればこの台湾独立政策の中で中国との戦争になるというのを繰り返しやっておったようで、大変あれはネガティブキャンペーンとしては効果的なのではないかというふうに私も思いながら見ておったんですね。にもかかわらず、この陳水扁が当選をしたということは、やはり一定の範囲でそういう独立路線が支持をされたというふうに見ることはできないのかということをお尋ねしたいと思います。
 次に、国分先生には、先ほど中国の台湾白書の発表は、これは陳水扁を落とすためにやったんだと。ただ、四年前の総統選のことを考えればこれはもう逆効果ではないかということは当然予想できることで、にもかかわらず、なぜあえてそのようなものを発表したのかということと、先ほど中国の国内の軍の反発もあった手前というようなこともありましたけれども、相当中国の国内においてこの台湾政策についての強硬路線と柔軟路線の対立といいますか、抗争があるのかどうか、その辺をお尋ねしたいのと、最後に、日本にとりましてもこの中台関係というのは安全保障上非常に大事な問題なんですが、我々日本として中国政府に対してこの問題についてどういう働きかけといいますか、対応をしていけるのか教えていただきたいと思います。
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井尻秀憲#17
○参考人(井尻秀憲君) 民進党の党の綱領に確かに台湾共和国という名前が入っておりますし、従来から民進党は台独、台湾独立の政党だというふうに言われてきたわけですが、実は必ずしもそうではなくて、既に台湾という中華民国が一つの独立した主権国家であるという表現、これはもう国民党がずっと言ってきたことですね。それから民進党もいわば台湾に中国の統治権が及んでいないという、そういう現実がある以上は、もう既に台湾は事実上独立していると。だから、あえてもう一回台湾独立を宣言するという必要は毛頭ないというような形で、そのトーンというものはどんどん緩くなってきております。
 したがいまして、従来から立法院選挙とかいろんなところで、かつては台湾独立とか新しい国家とかそういうことを言うと刺激的過ぎるということがあったんですが、そういうことを民進党はかなり学んで、そしてもう政権が少しずつ近くなってくる段階に入ってきますと、ますます独立という言葉は言わなくなってきたんですね。同時に、じゃ言わなければどうかということなんですが、そうしたらそれはもう全然台湾独立を言う必要もないと。
 ですから、ある意味でそういう独立という言葉を使いますとまた話が若干違ってきますが、むしろやっぱり台湾人意識のある種のコンセンサスといいますか、そういうものがこの李登輝体制の中でかなり定着してきた、つまり土着化という、そういう方向に向かってきたということですね。台湾人の国家としてのアイデンティティー、それもかなり育ってきたと。その上に陳水扁さんの今回の勝利は乗っているというふうに考えて構わないと思います。
 したがって、独立路線が支持されたと言うとちょっと表現上語弊があるかと思いますが、台湾人意識、台湾人が台湾を統治しているんだという、そういう意識のもとにいわば民進党の公認候補である陳水扁さんの勝利があったということは、これは言って構わない、そういう理解でいいんではなかろうかというふうに私は思っております。
 したがって、中国との関係で言えば台湾独立をあえて宣言するということはまずあり得ないと。それから同時に、その台湾独立をするかしないか、そういうことを表明するかしないか、あるいはそういう非常に極めて敏感なものを国民のいわば住民投票にかけるというような、そういうことで決着をつけるか、つまり住民自決という形で、それも当面考えられないんですね。ですから、それよりもむしろ対話に向かうという形になるだろうというふうに思います。
 ただ、おっしゃった意味の点での勝利のいわば背景、原因の一つとしてやはり台湾人意識というものが陳水扁さんを強烈に推す熱狂的なそういうものがあったということは否定しがたい事実だろうというふうに理解しております。
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国分良成#18
○参考人(国分良成君) ありがとうございます。
 ただいまの荒木委員の御質問でございますが、三つに分かれるかと思います。
 まず第一点目は、いわゆる台湾白書ということについての中国の意図をもう一度御説明いただきたいということだと思いますが、私は二つの意味が込められていたということを御報告の中で申し上げたつもりであります。
 つまり、一つは、やはり陳水扁氏をどうにか落としたいということはあったんだろうと思います。もう一つは、そうはいっても陳水扁氏が当選する可能性がかなり高くなったということをやはり想定して、できるだけ強硬な態度に出ておくと。
 それはどういうことかと申しますと、住民の不安というのが台湾の中にございますので、やはりそこに訴えるという形で陳水扁氏の立場の柔軟化を求める、そうしたことではなかったかというふうに思います。そういう点では、これは陳水扁氏もある程度柔軟な態度をとらざるを得ない状況がありましたし、また中国からとってみますと、これまでのところは比較的陳水扁氏が穏当な立場をとっておりますので、この点については中国自身はやや安心したのではないかという感じがいたします。
 ただ、台湾白書そのものが武力の威嚇にかわるものとして行われたものでありますので、恐らく中国のその後の反応から見ますと海外の、特にアメリカの反応に逆にびっくりしたという側面の方が大きいかと思います。つまり、中国はこれまで確かに平和的な交渉を無期限に延ばした場合、武力を使うということについて公には、文書にはまだ書いていなかったんですけれども、そのような発言は至るところで繰り返してきたわけでありますし、独立は戦争を意味するのか、非常に厳しい発言を繰り返してきていた。そういう意味では恐らくこの発言がそれほど厳しいものであるという理解が中国の中にはその後の反応からしますとなかったのかもしれないという印象を私は持っております。
 それから、第二点目の、国内の対立が中国の中であるのかと申しますと、これはやはり存在をするというふうに考えた方がよろしかろうと思います。ただ、全体として台湾問題についてはかなりコンセンサスがとれているということも間違いがないということであります。つまり、台湾について独立を認めるという人はもちろん中にはいないでしょうし、それから、台湾が何らかの形で切り離されるということについても中国は、これは党内でもコンセンサスが非常に懸念としてとれているだろうというふうに思うわけであります。
 そう考えてまいりますと、基本的な部分では、やはりこれは近代以来の歴史の中で中国は物事を考えているでしょうから、その点はかなり強い認識だと思いますが、ただ、その方法あるいは実際のこれからの関係のあり方という点については温度差が存在するということは事実だと思います。
 それは、特に軍あるいは党内の一部の人々の中からかなり強硬な意見が出てきているのは、今回の中国の発言をいろんな角度から見てみますと、かなりいろんな意見が存在したということも理解できます。それは、中国のメディアの報道だけを見ていてもそれはわかるわけであります。そういう点では、その対応の方法そのものについてはかなりの温度差が存在するということだと思います。
 それから、第三番目に、日本の対応としてはどういうことかということでございますけれども、私は、一つはやはり日本の対中国に対する台湾問題についての政策というのは基本的に変わらない。それはつまり、中国を正統政府として認めるという部分については日本は尊重しているわけでありますから、その点では中国の内政に干渉しないということ。
 それから、第二点目は、その冷静な対応を中国に求めるということ、これは東アジアの安定ということのために非常に重要であると。それはやはり先ほど申し上げた平和的な解決ということを大前提にするということをやはり一貫して求めるということが重要でありましょうし、ただ、私は先ほど中国の内政に干渉しないという点を申し上げましたけれども、台湾問題はそれほど簡単な問題ではないというふうに私は申し上げておきたいと思います。
 それはどういうことかと申しますと、現在台湾問題をどう考えるか。それはやはり国際関係をどう考えるかという問題にかかわってくるわけでありまして、現代の国際関係というのは何も国と国の関係だけですべての関係が構成されているわけではないわけでありまして、民間の関係を含めた形で国際関係というものが現在は構成されているというのが、これはもう国際政治学のABCのAの部分でありまして、だれでもわかっていることであります。
 つまり、そうした点でいきますと、台湾と現在日本の持っている民間のレベルでの交流というのはかなり厚いものがありますし、経済的な利害ということからいたしましても日本の利益はかなり大きいわけであります。そういう点から考えますと、私は台湾問題というのは中国のもちろん内政問題としての延長線上にあるという部分はあるけれども、同時にやはり現在は、もう中国自体がアメリカとの関係の中で台湾問題を処理しなければいけないということをもう明確にこれも言っているわけでありますから、そういう点では、もう一つは今申し上げたような、つまり国際関係の枠組みの変化あるいは国際関係そのものの理解の変化という点から考えて、台湾問題は既に国際問題になってきているというふうに私は考えております。
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矢野哲朗#19
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 何人かの委員から挙手をいただきました。早い順から指名をさせていただこうと思います。田英夫君が一番早かったようでありまして、その次に立木先生、浅尾先生、海野先生と、こう続きますのでどうぞよろしく。
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田英夫#20
○田英夫君 三人の参考人の皆さん、ありがとうございました。大変勉強になりました。
 特に国分参考人が言われました中台関係に、中国共産党と国民党との関係という状況が今度ので中台関係になったという表現をされましたけれども、全く同感であります。今度、三分裂という形になるんでしょうか、この候補者も三人になったわけですから。
 それで、宋楚瑜氏が新党をつくるだろうということになってきますと、国民党と、これはまあ依然として強大な力を持っているでしょう、それから民進党と新党と。しかも、その民進党の陳水扁氏が総統ということになると、いずれにしても参考人も言われましたように単独ではできないのでどう組むかと。連戦という人が惨敗しましたから。しかし、李登輝さんの力は依然として残っているとなれば、大変この選択が難しいんじゃないかと。宋楚瑜という人が新党をつくると、私の知っている限り、北京側からすると一番好ましかったのではないか。
 というのは、北京が非常に信頼をしている陳明忠という人を御存じかと思いますが、かつて国民党に投獄をされて二十年ぐらい獄中にいた人ですが、今労働党というのを台湾でつくっていますが、小さな勢力ですけれども、その人たちは宋楚瑜氏をやったというふうに聞いております。
 そんなことで、どなたにお答えいただいてもいいんですが、国分さんがさっきそういう言い方をされましたからお答えいただければと思うんですが、どういう組み合わせをするんだろうかと。
 若干私見を加えますと、私の経験を申し上げると、一九八一年に北京を訪問しましたときに廖承志さん、周恩来総理の右腕と言われた人ですが、その人が私に台湾に行ってくれませんかと言い出しましたので驚いたんですが、あなたは台湾と無関係ではないですから、ぜひ国民党の人たちに会ってくださいと。実はかつて国共合作をやったりして共通の日本という敵がいたから意思疎通はありましたけれども、率直に言って今、世代交代が進んで国民党が何を考えているかよくわからないところがあります、ぜひそれを聞いてくださいと。
 私にできるとは思いませんでしたけれども、しかし、翌年台湾で国民党の幹部に会いましたけれども、そのとき印象に残っているのは、国民党の幹部は三民主義が北京、大陸との接点になるんじゃないかという言い方をしておりました。これも大変いまだによくわかりませんけれども、そういう経験があります。
 私ごとで恐縮ですが、無関係じゃないと廖承志さんが言ったのは、私の祖父が、田健治郎といいますが、台湾総督をかつて一九二〇年前後、五年ほどやっておりました。最初の文民総督であったことで印象がきっと台湾の人には強かったんだろうと思います。
 大変わき道にそれましたけれども、そういうことからすると、現在国民党との間も共産党側からするとかつてのような意思疎通はないと。いわんや今度陳水扁氏が総統になるということになると、その組み合わせという、最初の質問をしたところに戻って、大変これは北京側からしても重要な視点ではないかというふうに思いますのでお聞きをしたわけで、長くなりましたけれども、よろしくお願いします。
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国分良成#21
○参考人(国分良成君) 非常に難しい質問でございまして、田委員の、政界再編の可能性というのは、これはどこの国でもそうでありましょうけれども、なかなか予測不可能な面がございますけれども、国民党が支配した中華民国、これはやはり国是は三民主義であったわけでありますが、既に民進党ということになりますと、三民主義とは離れる、そうしたことにならざるを得なくなるわけであります。
 そうすると、中国との統一交渉の前提が三民主義というのは恐らく難しくなってくる可能性がますます強くなるだろうというふうに思います。これがまず第一の前提ということになろうかと思いますが、中国にとってみますと、先ほど申し上げたように強硬路線と柔軟路線の二つの使い分けの中で、同時に宋楚瑜氏の新しい党と、それから陳水扁氏の方と両方にやはりいろんな形のパイプを模索していく。これはもう当然のことだろうというふうに思います。
 中国のこれまでの一つの誤解といいますか、ある種の問題というのは、かつて李登輝総統と江沢民主席とはかなりいろんな形でのパイプは存在したわけですが、九五年に李登輝総統がアメリカを私的に訪問したというところからこのパイプが完全に切れたわけであります。その後中国側が模索したのは、いわゆる新党あるいは外省人、こうしたところを伝って、特にアメリカのパイプを伝って台湾に接近してきた。
 ところが、李登輝氏の当時の政局からすれば、とてもとてもそうした人々と話ができない状況にあったというところから、中国のパイプが全くその李登輝総統につながらないという状況が出てきたわけであります。それがずっと今日に至ってきたということだと思います。これが中国の一つの誤解だろうと思います。つまり、中国自身が台湾の変化、同時に台湾の住民が何を考えているかという部分について十分に理解をできなかったという部分に一つ限界があったんだろうというふうに思います。
 そういう点でいきますと、今後は中国の最大の方向性は、台湾の民心をいかにつかむかという、そこに焦点を絞らざるを得なくなってくるということだと思います。その場合に、やはり台湾の中に起こってきているアイデンティティーの問題という点からしますと、恐らくどういう政界再編があろうと、社会の側はますます台湾の中の個別の意識というものを強めていくだろうということが予想されるわけであります。その場合に、やはりそれを政治的な形にあらわしたような独立とか、そういうことについてはどういう形でも台湾としてはできないといいますか、その辺の二つの微妙なバランスがあろうかと思いますけれども。
 したがいまして、結論として申し上げたいのは、台湾における政界の再編というのは、これは恐らく李登輝総統の今後、それをどういうふうに陳水扁氏が使うか、あるいは接近するか。それに対して恐らく中国は、かなりの警戒心を示すでしょうから、同時に宋楚瑜氏とのパイプもこれから模索するでしょう。そういう点でいくと、中国はいろんな形の多角経営をすると思いますけれども、やはりさっき私の御報告の中で申し上げたように、李登輝氏の影響力という点に、一つ中国はこれからどういうふうにそれをそぐかというところに絞ってくるというふうに私は今の段階では中国の政策としてはとるだろうと。
 非常にあいまいな結論で非常に申しわけないんですが、私自身は状況については今このように分析しております。
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矢野哲朗#22
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 続きまして立木洋君。
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立木洋#23
○立木洋君 具体的な御意見どうもありがとうございました。
 最初に井尻参考人にお尋ねしたいんですが、参考人は、今度の台湾総統選挙の結果、さらにそれによって始まろうとしている状況について、台湾内政の第二の段階に入ったという表現を使われてお述べになっておられる。この台湾内政の第二の段階というふうな状況から、これが対中政策の上ではどういうふうにあらわれるのか。これは参考人が第四の「陳水扁の対中政策」というところで述べられている内容の問題になるわけなんですが、確かに陳水扁は当選した十八日の宣言で、台湾海峡の平和と安全を双方の人民の共同の期待というふうに述べられ、さらにもろもろの問題についても国家の安全と人民の利益を確保する前提で各議題について話し合いをしたいということで、中国の指導者を招待し、また我々も中国を訪問したいというふうに述べた。もちろん記者の質問に答えて、一国二制度というのは受け入れませんよというふうなことも述べていますし、台湾の主権が永久に確立されるということについても、彼の見解の、限界という言葉が適切かどうかは別として、考えていることも述べている点があると思いますね。
 その点に参考人もお触れになった上で、この民進党の党綱領にある独立条項についての見直しが始まっているわけで、これを独立宣言するということはないだろうというふうな指摘もされ、また金門、馬祖などの離島との直接交流についても条例として可決されるというふうな動きも出てきて、これがさらに大きく広がっていく流れになる可能性も含まれているんではないかという指摘もあるわけですね。
 だから、そういうふうに見るとさまざまな動きが想定される。だけれども、まだそれが完全に収れんされた形にはなってきていない。しかし、陳水扁氏は結局四割足らずの得票で当選したわけで、六割の基盤というのについてはやっぱり未解明という問題が残されている。今後の動きの中でそれはどういうふうに動いていくのか。この第二の段階をどういうふうに、規定されるといったら何か難しいことになるかもしれませんけれども、この第二の段階の対中政策がどういうふうに推移していくというふうに参考人はお考えになっているのか。推測が入るかもしれませんけれども、その参考人のお考えをお聞かせいただければありがたい。
 次に、国分参考人の御意見をお伺いしたい点については、中国と台湾との問題、この点についても参考人もお触れになっておられます。
 確かに、中国は「一つの中国の原則と台湾問題」という白書を発表しました。これはもう詳しく述べられていることですから内容は触れませんけれども、新たな条件を、武力行使を行うことも含めた条件として追加されました。それで、あの選挙期間中にはなかなか朱首相の厳しい指摘等々もあったと。これは選挙が終わった後ほとんどそういう厳しい批判というのが公式の文書からはなくなりました。一応マスコミなんかの情報では、陳水扁氏の今後の言動を見守るというふうなところに焦点が当てられてきているんではないかというふうな指摘も出されております。
 ただ、中国共産党の中央の台湾工作弁公室あるいは国務院台湾事務弁公室の声明等でも一つの中国という点は厳しく出していますね、明確にこの点は譲れないと。そして、平和統一の前提とした人々との協力を呼びかけるというふうな方向が声明の唯一のものとしては見られることができます。
 それで、中国社会科学院の王逸舟氏の、人民日報のインターネットのホームページでは、陳氏の最近の発言は従来の台湾独立路線と多くの点で違うというふうな指摘も問題にされております。こういうふうな状況の中で、いわゆる中台のあり方というのが今度の選挙でどういう形の方向に変化していくというふうにお考えになるのか。
 それから、これは四年前ですが、この参議院の外務委員会で、当時の中国と台湾の状況について六、七回議論がありまして、そしてこの参議院の外務委員会で、すべてのそのときの党派が一致してこの問題に対する決議を採択しているわけなんです。
 そのときの問題では、当時の状況にあった「今回の軍事的諸行動には関心を持たざるをえない。」という憂慮の念を示して、「我々は、一九七二年の日中共同声明、一九七八年の日中平和友好条約に基づき、日中両国民の更なる善隣友好関係の増進を願う」という態度を踏まえて、「台湾問題は、中台双方による自主的、平和的な話し合いによって解決されるべきであり、これが妨げられるようなことがあってはならない。」ということを第一項目として、五項目の内容を持つ決議をしました。
 こういう見地から、これからの中台のあり方をお考えになった場合にどういうふうなことが考えられるのか、参考人の御意見をお聞かせいただきたいと思います。
 最後になりましたが、高木参考人には、先ほど来詳しく米中関係について説明がありました……
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矢野哲朗#24
○委員長(矢野哲朗君) 立木洋君、時間が限られておりますので、よろしく御協力のほどを。
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立木洋#25
○立木洋君 はい。そこで、最近の状況を見てみますと、バーガー米大統領補佐官なんかの発言を見てみますと、いわゆるアメリカの出した台湾安全保障強化法案に対しては、これはバランスを崩すものだというふうな厳しい指摘があります。あるいは一方では、ブッシュ・テキサス州知事は、いわゆる括弧づきの自由台湾を守らなければならないということさえ言われている。この強化法案と関連して、武器の輸出の問題がどうなっていくのかということは極めて注目される点なんですね。
 そういうことで、もちろん先ほど参考人がおっしゃったように、大統領選挙があるからどう動くかということは、問題を今からはっきり述べることは難しいかと思いますが、こういう現在の意見の異なる状況が出されている問題で、アメリカの今後の対中政策というのはどういうふうになっていくというふうにお考えになるのか、その点についてお聞かせいただきたいと思います。
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井尻秀憲#26
○参考人(井尻秀憲君) 時間の関係でできるだけ簡単に申し上げますが、まず第二段階の台湾経験といいますか、私が書いております点に関しては、まず内政の方の考慮から、九六年の李登輝総統の直接選挙による勝利と、これから第二段階の台湾経験に入った。ただ、しかしながら、憲政改革でいわばもう一回やるということだけではなくて、実はその第二段階というふうに私が申し上げてきたことは国民党の党国家体制、党と政府、そういったものが癒着して、もともと国民党、共産党、建党の段階ではほとんどもうルーツは一緒なものですから、そういうふうなところを含めて、特に地方のいわば政治の改革、これを意図していたわけであります。
 ただ、御質問の内容は、そこから派生して、実は対中政策に関するものがどういうふうにこれが展開されてくるかということなんですが、これは連戦候補がキャンペーン期間中に十項目のいわば政策を出しました。それで、彼は、その上で国家統一綱領という、台湾の政策の中の第二段階に入ることができる、つまり高官の交流とか交渉、対話、これができる状態に入ることになるだろうということをキャンペーン期間中に言いました。
 そういったことで、実はキャンペーン期間中に、先ほど私、国民党はかなり準備をしていたというふうに申し上げましたが、キャンペーン期間中に連戦さんとか、そういう国民党サイドから対中政策の新しい考え方が出てくる。すると、それに対して陳水扁さんなりあるいは宋楚瑜さんの側から、それに対応する形でカウンタープロポーザルが出るというのが事実上の状況だったわけです。ですから、今回、民進党の陳水扁さんの大陸政策に絡むであろうと思われるような人たちにも少しお会いした限りにおいては、余り具体的にはっきりしたものがないんですね。
 それから、大陸に関する、つまり中国に関する認識もそんなに深いものではない。ですから、やはり陳水扁さんの今後の動向というものは、政策というものは、よりいろんな、国民党が残している、あるいは現在持っているそういう制度、つまり大陸委員会、海峡交流基金会という窓口、それから今言った、先ほどのかなり準備していた問題とか、そういうものも含めてやはりいろいろ対話をしていく、調整しながら聞いていく、協力を願う、そういう形で進めていかざるを得ないだろうと。
 それから、国分先生の方から李登輝総統の影響力云々ということがかなり言われておりますが、陳水扁さんと李登輝総統は話のできる関係です。それはあります。
 それから、中国はかなり今冷静に見ているだろうというふうに思います。かなり黙視しているように見えますが、言葉の上でどうこうではなくて、江沢民さんに昨年の十二月の段階で台湾政策のブレーンが、民進党に反対ばかりではだめだと、もう少し民進党の勝利を予想するような政策も考えておかなければならないというのが江沢民さんを中心とする党の非公式の政策決定機関に上がっております。
 そういった情報も、インフォメーションもございまして、やはり中台関係、これから動くと思いますが、しかし先ほど来申し上げましたように、そうすぐ具体的に何か大きなものが出るというふうに、結論が云々ということはちょっと考えられないというのが私の回答でございます。
 どうもありがとうございました。
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国分良成#27
○参考人(国分良成君) ありがとうございます。
 全体として、きょうは中国の行動をどう考えるかというテーマではございませんけれども、中国の全体的な行動というのは、表面的には非常に積極攻勢のように見えますが、私は行動の源泉は極めて防御的であると、そして現状維持的であるというふうに理解しております。つまり、現状の大幅な変更をあらゆる問題について求めているわけではなくて、それは中国自身が今国内で抱えている、私も先ほど申し上げましたけれども、問題から考えて、やはり極めてその防御的な側面が強かろうと思います。
 同時に、やはり中国の言葉のゲームといいますか、そういう点についても、余りそれに惑わされない方がいいというところもあると思います。つまり、中国の発言というのは、その後に効果を見出すための布石としての発言の場合もございますので、つまり、強硬な発言をすることによって、その後、柔軟対応するということの効果ということも考えているかと思いますので、そういう点では陳氏の発言を見守るということでもって、先ほど申し上げたように、陳氏はこのところ極めて柔軟な発言をしているということでありますし、最も大事なことは、対話を進めたい、みずから訪中までしたいというような発言があったわけでございます。そういう点では中国の意図というところに基本的に合致してきている、最もふさわしくない候補ではあったけれども、しかし方向としてはその方向になってきている。
 問題は、どういうふうに対話を行うかというのが次のステップになろうかと思います。
 従来は、汪道涵氏とそれから辜振甫氏のパイプがあったわけでありますが、辜振甫氏はこれは李登輝総統とのパイプでございましたけれども、ひょっとしたらば李遠哲氏にかわってくる可能性もあるわけであります。そういう形のパイプ、新たな恐らく設定をいずれにせよせざるを得なくなるという感じがいたします。
 したがいまして、全体の方向としては、対話の模索という方向へと戻るわけでありますから、それは正直申し上げますと、九五年までの状態にある意味では戻ってくるということでありますけれども。その意味ではそれほどの大きな全体としては進歩ではないかもしれないけれども、これまで起こってきた中台間の摩擦という状況から考えますと、それは前向きの方向に少しずつ動いていく可能性があるというふうに申し上げたいと思います。
 ただ、もちろん、陳水扁氏の内部状況によっては、発言が揺れたりしますと、それが中国の対応にまた変わってくる場合があり得ると。ただ、方向としては対話というのが次に出てくると思いますので、その方向においては全体的な状況そのものは緩和されてくる可能性が高いというふうに思っております。
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高木誠一郎#28
○参考人(高木誠一郎君) ありがとうございます。
 台湾向けの兵器輸出のことですが、先ほど時間の関係で申しませんでしたけれども、現在考慮の対象になっておりますのは改良型パトリオット、いわゆるPAC3と言われるものと、それからイージス艦の売却の問題であります。
 まだアメリカ政府はこれについての最終的なアクションをとっておりませんけれども、当然のことですが、この売却を決定することによって台湾海峡の緊張を高めるというような事態はなるべく避けたいだろうと思います。
 ですから、逆に申しますと、特に中国側の自制を欠いた行動によって台湾海峡の緊張が既に高まるという状況ができていれば、当然これは行われることになるだろうと思います。特に、先ほどもちらっと申しましたけれども、アメリカの議会では、この台湾海峡のバランスは既に崩れつつあるという見方が非常に強いわけでありますから、その見方がさらに強まるような事態が発生すれば、当然これらの高度の兵器の売却も行われることになるだろうと思います。
 アメリカの政策ですが、より一般的な政策ですが、当然のことですが、やはり台湾の現状を武力あるいは武力行使のおどしによって変更することは許さないという姿勢は崩せないだろうと思います。これを崩してしまうと、やはりアメリカの国家としてのアイデンティティーさえ問われかねないということになると思いますので、特にことしのように大統領選挙が進行中の段階でそのようなアクションをとれば、当然反対勢力の説得力を強めてしまうわけで、それはないだろうと思います。
 ただ、そのためにアメリカが兵力を投入してアメリカの兵士の人命が失われるというような事態になることはできるだけ避けたい、これもまた否定しがたいことだろうと思います。
 この両者をあわせますと、やはりなかなかこの戦略的あいまい性を脱却することは難しいのかなというふうにも思いますが、そのあいまい性の中で何とか中台の交渉を継続させて、そして緊張の激化を防ぐということでとりあえず現状を処理していくというのがアメリカの対応であろうと思います。そして、この緊張の激化を防止した状況の中で、さまざまな中間的な、つまり独立と統一の中間的な何らかの方式の模索が行われるのではないかと思います。
 一九九八年の後半から九九年の初めにかけては、クリントン政権でかつて高官であった人たち、例えばペリー前国防長官とかアンソニー・レーク前国家安全保障担当特別補佐官というような人が台湾を次々と訪問しまして、何か中間的な形態はできないかということを模索しておりますので、このような模索は今後とも続けられていくだろうと思います。
 以上です。
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矢野哲朗#29
○委員長(矢野哲朗君) ありがとうございました。
 定刻は既に過ぎておるのでありますけれども、あと二名の委員のエントリーがありますので、質疑を許したいと存じます。浅尾慶一郎君。
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