社会労働委員会
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会
会議録情報#0
昭和五十年六月十七日(火曜日)
午前十時二分開議
出席委員
委員長 大野 明君
理事 菅波 茂君 理事 住 栄作君
理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君
理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君
理事 村山 富市君 理事 石母田 達君
伊東 正義君 加藤 紘一君
瓦 力君 小坂善太郎君
田川 誠一君 高橋 千寿君
羽生田 進君 橋本龍太郎君
山口 敏夫君 稲葉 誠一君
島本 虎三君 田口 一男君
田邊 誠君 多賀谷真稔君
寺前 巖君 大橋 敏雄君
岡本 富夫君 小宮 武喜君
出席国務大臣
労 働 大 臣 長谷川 峻君
出席政府委員
中小企業庁計画
部長 吉川 佐吉君
労働大臣官房審
議官 細野 正君
労働省労働基準
局長 東村金之助君
労働省労働基準
局賃金福祉部長 水谷 剛蔵君
委員外の出席者
厚生省社会局保
護課長 山本 純男君
参 考 人
(日本経営者団
体連盟常任幹
事) 山王丸 茂君
参 考 人
(全国中小企業
団体中央会労働
専門委員) 下村 和之君
参 考 人
(日本労働組合
総評議会組織部
長) 岡村 省三君
参 考 人
(中立労働組合
連絡会議常任幹
事) 丹下 洋一君
参 考 人
(慶應義塾大学
教授) 黒川 俊雄君
社会労働委員会
調査室長 濱中雄太郎君
—————————————
委員の異動
六月十七日
辞任 補欠選任
金子 みつ君 多賀谷真稔君
同日
辞任 補欠選任
多賀谷真稔君 金子 みつ君
—————————————
本日の会議に付した案件
最低賃金制をめぐる諸問題に関する件
————◇—————
この発言だけを見る →午前十時二分開議
出席委員
委員長 大野 明君
理事 菅波 茂君 理事 住 栄作君
理事 竹内 黎一君 理事 戸井田三郎君
理事 葉梨 信行君 理事 枝村 要作君
理事 村山 富市君 理事 石母田 達君
伊東 正義君 加藤 紘一君
瓦 力君 小坂善太郎君
田川 誠一君 高橋 千寿君
羽生田 進君 橋本龍太郎君
山口 敏夫君 稲葉 誠一君
島本 虎三君 田口 一男君
田邊 誠君 多賀谷真稔君
寺前 巖君 大橋 敏雄君
岡本 富夫君 小宮 武喜君
出席国務大臣
労 働 大 臣 長谷川 峻君
出席政府委員
中小企業庁計画
部長 吉川 佐吉君
労働大臣官房審
議官 細野 正君
労働省労働基準
局長 東村金之助君
労働省労働基準
局賃金福祉部長 水谷 剛蔵君
委員外の出席者
厚生省社会局保
護課長 山本 純男君
参 考 人
(日本経営者団
体連盟常任幹
事) 山王丸 茂君
参 考 人
(全国中小企業
団体中央会労働
専門委員) 下村 和之君
参 考 人
(日本労働組合
総評議会組織部
長) 岡村 省三君
参 考 人
(中立労働組合
連絡会議常任幹
事) 丹下 洋一君
参 考 人
(慶應義塾大学
教授) 黒川 俊雄君
社会労働委員会
調査室長 濱中雄太郎君
—————————————
委員の異動
六月十七日
辞任 補欠選任
金子 みつ君 多賀谷真稔君
同日
辞任 補欠選任
多賀谷真稔君 金子 みつ君
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本日の会議に付した案件
最低賃金制をめぐる諸問題に関する件
————◇—————
大
大野明#1
○大野委員長 これより会議を開きます。
労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
本日は、特に全国一律最低賃金制を含め、最低賃金制をめぐる諸問題について調査を進めます。
本問題について、参考人として日本経営者団体連盟常任幹事山王丸茂君、全国中小企業団体中央会労働専門委員下村和之君、日本労働組合総評議会組織部長岡村省三君、中立労働組合連絡会議常任幹事丹下洋一君及び慶應義塾大学教授黒川俊雄君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
参考人には御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本問題について、おのおののお立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、その後、各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。また、念のために申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承願います。
まず、山王丸参考人にお願いいたします。
この発言だけを見る →労働関係の基本施策に関する件について調査を進めます。
本日は、特に全国一律最低賃金制を含め、最低賃金制をめぐる諸問題について調査を進めます。
本問題について、参考人として日本経営者団体連盟常任幹事山王丸茂君、全国中小企業団体中央会労働専門委員下村和之君、日本労働組合総評議会組織部長岡村省三君、中立労働組合連絡会議常任幹事丹下洋一君及び慶應義塾大学教授黒川俊雄君、以上五名の方々に御出席をいただいております。
この際、一言ごあいさつ申し上げます。
参考人には御多用のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。本問題について、おのおののお立場から何とぞ忌憚のない御意見をお述べくださるようお願いいたします。
なお、議事の都合上、最初に御意見を十五分程度に要約してお述べいただき、その後、各委員からの質疑にもお答え願いたいと存じます。また、念のために申し上げますが、参考人から委員への質疑はできないことになっておりますので、御了承願います。
まず、山王丸参考人にお願いいたします。
山
山王丸茂#2
○山王丸参考人 私、山王丸でございます。
御高承のとおり、昭和四十五年の九月八日に中賃から、それまでの最賃行政に関連してみると相当前向きな姿勢の答申が打ち出されたわけでございます。この答申の内容はもうすでによく御承知かと思われますけれども、ちょっと関連するところを申し上げてみますと、この時点では、中小企業労働者を中心として、七百万人を超える労働者が適用労働者としてあったわけでございます。基本的な考え方として、最低賃金制度は、「労働経済の変ぼうのなかでこれに即応し、なんらかの原因で、なんらかの形で存在する不公正な低賃金に対処し、有効に作用するものでなければならない。このためには、労働市場の相場賃金と密接に関連した実効性ある最低賃金でなければならない。従って最低賃金は、労働市場の実態に即しかつ類似労働者の賃金が主たる基準となって決定されるようなあり方が望ましく、それは低賃金労働者の保護を実効的に確保する面でも現実に適応するものであると考える。」というふうに触れておるわけでございます。現在、労働四団体の最賃法に関する賃金決定の基準の考え方と全く同じ考え方が、四十五年のこの答申の中でも触れておるわけでございます。また「最低賃金はすべての労働者が何らかの形でその適用をうけることが望ましい。従って、まだ適用をうけていない労働者についても適切な最低賃金が設定され、全国全産業の労働者があまねくその適用をうける状態が実現されるよう配慮されるべきである。」この推進に当たっては「労働市場に応じ、産業別、職業別又は地域別に最低賃金を設定することを基本とするべきである。」そして「この場合、低賃金労働者が多数存在する産業、職業又は地域から逐次最低賃金を適用し、すべての労働者に包括的に適用を及ぼす」という答申が出まして、全国の都道府県では労働省の指導と相まって、この方針にのっとって今日まで非常な努力をしてまいったわけでございます。その結果、現在、すなわち本年の三月三十一日現在では、産業別に三百七十二件、地域別には四十六件、適用労働者の数は三千二百六十一万四千人と、ほとんどわが国の民間労働者の数を占めるように相なったわけでございます。
これは、最低賃金が、賃金、物価等経済情勢変化の中で実効性を確保するための改定が行われてきたものでございまして、特に昨年度、昭和四十九年度におきましては、全国の都道府県でそれまでに決まっていたもの、あるいは改定されていたもの全部について改定を行いまして、労使、公益三者構成の最低賃金審議会、いわゆる地方最低賃金審議会の非常な努力によりまして、四十九年度中にほとんど前向きに改定されたという実績も出ております。私も地方最低賃金審議会の委員をやっておりますけれども、四十九年度中に従来のものをそっくり改定するということのためには、労働側も使用者側もあるいは公益の先生方も大変な努力をしたわけでございます。
なお、現在、御高承のとおり非常な景気の冷え込みでございまして、また低成長経済に突入しておるわけでございますが、しかも雇用情勢は悪化して、なかなか緩和されておりません。今年度に入りましてから今月までにさらに最低賃金額の改定に前向きに取り組みまして、業種、地域合わせて、今年度に入ってから現在までに二十件の諮問がすでに出されております。
私のおります福島県では、昨年の八月七日発効の地域最賃はまだ一年たっておりませんけれども、今月の十三日の審議会の席上、基準局長から地域最賃の改定の諮問が出されまして、早急にこれと取り組むということを決定しておりますし、また七つの業種別の最低賃金につきましても、小委員会を設けて改定の方法その他を検討するということが決定いたしております。恐らくこの傾向は、先ほど二十件と申し上げましたけれども、今後全国の都道府県で相当出てまいるのではないかというふうに思われます。従来から特に労働側では、賃金相場あるいは生計費というものを基準としてこの最低賃金制度の改定等に関しましては非常に強く主張してまいりましたし、私ども使用者側は、何と申しましても企業の支払い能力を無視するわけにはいかないという観点から臨んでいる場面が非常に多くあったわけでございます。申し上げるまでもなく、一たび最低賃金制度が、いわゆる法制化されたものが決定いたしますと、この支払いの責任は企業のみの責任でやらなければなりません。何らの保障も援助もないわけでございます。しかも、守られなければ罰金刑といういわゆる罰則も伴っておるわけでございます。したがって、最低賃金制度設定の趣旨は十分理解しておりますものの、やはり企業の支払い能力、そういうものを無視するわけにはまいりません。元来、最低賃金制度とは、これ以上安く人を使ってはならないというぎりぎりの線のいわゆる最低賃金を決められるわけでございまして、実態はいわば社会保障的な賃金というふうに私ども理解しております。したがって、労働市場の実態に応じまして、最低賃金の額が決まってもそれぞれ実態に応じた上積みをすることはもちろん一向差し支えないわけでございまして、とかく最低賃金制度というものが何か雇用賃金の相場、いわゆる賃金相場的なものに誤解されやすい面もあるように存じております。
最近、労働側から出されております一日二千八百円、七万円という全国一律最低賃金制度の額について考えてみましても、何かわが国全体の雇用賃金相場のレベルアップをするというような感じを私どもは受けておるわけでございまして、私どもが理解している、先ほど申し上げました社会保障的な賃金で、全くこれ以下で人を使ってはならぬという最低賃金制度の本旨からはちょっとかけ離れたような額という感じがするわけでございます。まして現在の中小企業の置かれております労働市場の中におけるいろいろの実態あるいはまた支払い能力、そういう面からも、いま触れました金額ではとても実現不可能ではないかというふうに感じております。
また、賃金というものは労働の対価として支払われるものであるという原則、これは何人も認めざるを得ないのではないかと思いますが、そこで、労働の対価として支払われる賃金に関連しまして労働の質というものが問題になってまいります。申し上げるまでもなく、コンベヤーに乗っかって、いやおうなく働かされる労働の質もございましょうし、軽労働、重労働あるいは頭脳労働、肉体労働、あるいはまた、地方によく見受けられる実態でございますけれども、農山村に多いわけですが、そこの付近の家庭のいわゆるおばちゃん方あるいは相当な年配の人たち、おじいさん、おばあさん、そういう人たちが、小遣いでもかせいで孫に何か買ってやる、全くその程度の現金収入があればいいんだというようなことで、きわめて軽い、しかも非常に気ままな勤務状態、好きなときに出てきて好きなときに帰る、用事があったらいつでも帰ってしまう、そういうような実態の労働の質も現実には相当あるわけでございます。これは私どものおります福島県内にも——必要とあらばもっと具体的に申し上げますけれども、そういう事例が、最低賃金の決定に当たって実態調査の結果明らかになったということもございます。
また、物価の問題であるとか生計費の問題というものも、よく賃金に関連して当然決定基準として論議されますけれども、この物価そのものにもいろいろ問題がございますし、また、生計費等につきましても、物価が上がったから即生計費がそれだけかかるというわけでもなく、これはその環境によってかなり生計費も違ってまいります。
そういうこともございますし、いろいろな実態、特にわが国の中小零細企業の労働市場の中における実態の地方と中央との格差、あるいは業種別の賃金だけでも相当な格差が現状ではございます。自由主義経済体制のもとにおける現在の日本の中小企業の宿命的ないろいろな実態一つを考えてみましても、いまの段階で全国一律最低賃金制度を設定するということは、私はまことに時期尚早ではないかというふうに存じます。もしあえて、この全国一律最低賃金制度を設定するとすれば、そう無理な形でなく、先ほど来申し上げましたような労働市場の実態の中で、支払い能力その他も十分勘案して、守られる線ということになると、きわめて低い金額にならざるを得ないんではないかと私は思う。そういうことでは、いまこの制度の改定を要請している方々は恐らく納得しないと存じます。そうかといって、相当のレベルアップした額ということになりますと、支払い能力のない企業に対する保障の問題をどうするかということが出てまいります。現行の最低賃金制度がかつて設定された当時から、中小企業関係から、これらに対する保障とか援助の問題が出ておったわけでございますけれども、今日まで、直接最低賃金制度の実施に関連して予算措置を伴った保障、保護助長策というものはなかったわけでございます。相当の高額の全国一律最賃制がもし出たとなりますと、支払い能力のない、たとえば先ほど申し上げましたような、ほんの片手間にお小遣いをかせげばいいんだというような労働力を使って、その補いを家族労働でしながら、労使とも全くこれでいいんだという状態で細々と経営をしている業界も現にあるわけでございますが、それは極端な例と申されるかもしれませんけれども、こういう零細中小企業に対する保障という問題が私は無視できないと存じます。もしこれをやるとなると、全国的に相当の金額も必要と思われますし、またこれらの実態を調査するための人員の配置、整備というものだけでも大変なものになるのじゃないかと思われますし、まず理想で、現実には実現困難ではないかというふうに存じます。
現在、冒頭に申し上げましたように、全国の地賃、いわゆる地方最低賃金審議会の三者構成の各側委員の非常に前向きな努力の結果、業種別、地域別の賃金の格差も縮まりつつありますし、相当の実績を伴う向上を遂げておるわけでございまして、私は、いまの段階であえて全国全産業一律最低賃金制度をやる必要はないのではないかというふうに存じます。
以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げました。拍手
この発言だけを見る →御高承のとおり、昭和四十五年の九月八日に中賃から、それまでの最賃行政に関連してみると相当前向きな姿勢の答申が打ち出されたわけでございます。この答申の内容はもうすでによく御承知かと思われますけれども、ちょっと関連するところを申し上げてみますと、この時点では、中小企業労働者を中心として、七百万人を超える労働者が適用労働者としてあったわけでございます。基本的な考え方として、最低賃金制度は、「労働経済の変ぼうのなかでこれに即応し、なんらかの原因で、なんらかの形で存在する不公正な低賃金に対処し、有効に作用するものでなければならない。このためには、労働市場の相場賃金と密接に関連した実効性ある最低賃金でなければならない。従って最低賃金は、労働市場の実態に即しかつ類似労働者の賃金が主たる基準となって決定されるようなあり方が望ましく、それは低賃金労働者の保護を実効的に確保する面でも現実に適応するものであると考える。」というふうに触れておるわけでございます。現在、労働四団体の最賃法に関する賃金決定の基準の考え方と全く同じ考え方が、四十五年のこの答申の中でも触れておるわけでございます。また「最低賃金はすべての労働者が何らかの形でその適用をうけることが望ましい。従って、まだ適用をうけていない労働者についても適切な最低賃金が設定され、全国全産業の労働者があまねくその適用をうける状態が実現されるよう配慮されるべきである。」この推進に当たっては「労働市場に応じ、産業別、職業別又は地域別に最低賃金を設定することを基本とするべきである。」そして「この場合、低賃金労働者が多数存在する産業、職業又は地域から逐次最低賃金を適用し、すべての労働者に包括的に適用を及ぼす」という答申が出まして、全国の都道府県では労働省の指導と相まって、この方針にのっとって今日まで非常な努力をしてまいったわけでございます。その結果、現在、すなわち本年の三月三十一日現在では、産業別に三百七十二件、地域別には四十六件、適用労働者の数は三千二百六十一万四千人と、ほとんどわが国の民間労働者の数を占めるように相なったわけでございます。
これは、最低賃金が、賃金、物価等経済情勢変化の中で実効性を確保するための改定が行われてきたものでございまして、特に昨年度、昭和四十九年度におきましては、全国の都道府県でそれまでに決まっていたもの、あるいは改定されていたもの全部について改定を行いまして、労使、公益三者構成の最低賃金審議会、いわゆる地方最低賃金審議会の非常な努力によりまして、四十九年度中にほとんど前向きに改定されたという実績も出ております。私も地方最低賃金審議会の委員をやっておりますけれども、四十九年度中に従来のものをそっくり改定するということのためには、労働側も使用者側もあるいは公益の先生方も大変な努力をしたわけでございます。
なお、現在、御高承のとおり非常な景気の冷え込みでございまして、また低成長経済に突入しておるわけでございますが、しかも雇用情勢は悪化して、なかなか緩和されておりません。今年度に入りましてから今月までにさらに最低賃金額の改定に前向きに取り組みまして、業種、地域合わせて、今年度に入ってから現在までに二十件の諮問がすでに出されております。
私のおります福島県では、昨年の八月七日発効の地域最賃はまだ一年たっておりませんけれども、今月の十三日の審議会の席上、基準局長から地域最賃の改定の諮問が出されまして、早急にこれと取り組むということを決定しておりますし、また七つの業種別の最低賃金につきましても、小委員会を設けて改定の方法その他を検討するということが決定いたしております。恐らくこの傾向は、先ほど二十件と申し上げましたけれども、今後全国の都道府県で相当出てまいるのではないかというふうに思われます。従来から特に労働側では、賃金相場あるいは生計費というものを基準としてこの最低賃金制度の改定等に関しましては非常に強く主張してまいりましたし、私ども使用者側は、何と申しましても企業の支払い能力を無視するわけにはいかないという観点から臨んでいる場面が非常に多くあったわけでございます。申し上げるまでもなく、一たび最低賃金制度が、いわゆる法制化されたものが決定いたしますと、この支払いの責任は企業のみの責任でやらなければなりません。何らの保障も援助もないわけでございます。しかも、守られなければ罰金刑といういわゆる罰則も伴っておるわけでございます。したがって、最低賃金制度設定の趣旨は十分理解しておりますものの、やはり企業の支払い能力、そういうものを無視するわけにはまいりません。元来、最低賃金制度とは、これ以上安く人を使ってはならないというぎりぎりの線のいわゆる最低賃金を決められるわけでございまして、実態はいわば社会保障的な賃金というふうに私ども理解しております。したがって、労働市場の実態に応じまして、最低賃金の額が決まってもそれぞれ実態に応じた上積みをすることはもちろん一向差し支えないわけでございまして、とかく最低賃金制度というものが何か雇用賃金の相場、いわゆる賃金相場的なものに誤解されやすい面もあるように存じております。
最近、労働側から出されております一日二千八百円、七万円という全国一律最低賃金制度の額について考えてみましても、何かわが国全体の雇用賃金相場のレベルアップをするというような感じを私どもは受けておるわけでございまして、私どもが理解している、先ほど申し上げました社会保障的な賃金で、全くこれ以下で人を使ってはならぬという最低賃金制度の本旨からはちょっとかけ離れたような額という感じがするわけでございます。まして現在の中小企業の置かれております労働市場の中におけるいろいろの実態あるいはまた支払い能力、そういう面からも、いま触れました金額ではとても実現不可能ではないかというふうに感じております。
また、賃金というものは労働の対価として支払われるものであるという原則、これは何人も認めざるを得ないのではないかと思いますが、そこで、労働の対価として支払われる賃金に関連しまして労働の質というものが問題になってまいります。申し上げるまでもなく、コンベヤーに乗っかって、いやおうなく働かされる労働の質もございましょうし、軽労働、重労働あるいは頭脳労働、肉体労働、あるいはまた、地方によく見受けられる実態でございますけれども、農山村に多いわけですが、そこの付近の家庭のいわゆるおばちゃん方あるいは相当な年配の人たち、おじいさん、おばあさん、そういう人たちが、小遣いでもかせいで孫に何か買ってやる、全くその程度の現金収入があればいいんだというようなことで、きわめて軽い、しかも非常に気ままな勤務状態、好きなときに出てきて好きなときに帰る、用事があったらいつでも帰ってしまう、そういうような実態の労働の質も現実には相当あるわけでございます。これは私どものおります福島県内にも——必要とあらばもっと具体的に申し上げますけれども、そういう事例が、最低賃金の決定に当たって実態調査の結果明らかになったということもございます。
また、物価の問題であるとか生計費の問題というものも、よく賃金に関連して当然決定基準として論議されますけれども、この物価そのものにもいろいろ問題がございますし、また、生計費等につきましても、物価が上がったから即生計費がそれだけかかるというわけでもなく、これはその環境によってかなり生計費も違ってまいります。
そういうこともございますし、いろいろな実態、特にわが国の中小零細企業の労働市場の中における実態の地方と中央との格差、あるいは業種別の賃金だけでも相当な格差が現状ではございます。自由主義経済体制のもとにおける現在の日本の中小企業の宿命的ないろいろな実態一つを考えてみましても、いまの段階で全国一律最低賃金制度を設定するということは、私はまことに時期尚早ではないかというふうに存じます。もしあえて、この全国一律最低賃金制度を設定するとすれば、そう無理な形でなく、先ほど来申し上げましたような労働市場の実態の中で、支払い能力その他も十分勘案して、守られる線ということになると、きわめて低い金額にならざるを得ないんではないかと私は思う。そういうことでは、いまこの制度の改定を要請している方々は恐らく納得しないと存じます。そうかといって、相当のレベルアップした額ということになりますと、支払い能力のない企業に対する保障の問題をどうするかということが出てまいります。現行の最低賃金制度がかつて設定された当時から、中小企業関係から、これらに対する保障とか援助の問題が出ておったわけでございますけれども、今日まで、直接最低賃金制度の実施に関連して予算措置を伴った保障、保護助長策というものはなかったわけでございます。相当の高額の全国一律最賃制がもし出たとなりますと、支払い能力のない、たとえば先ほど申し上げましたような、ほんの片手間にお小遣いをかせげばいいんだというような労働力を使って、その補いを家族労働でしながら、労使とも全くこれでいいんだという状態で細々と経営をしている業界も現にあるわけでございますが、それは極端な例と申されるかもしれませんけれども、こういう零細中小企業に対する保障という問題が私は無視できないと存じます。もしこれをやるとなると、全国的に相当の金額も必要と思われますし、またこれらの実態を調査するための人員の配置、整備というものだけでも大変なものになるのじゃないかと思われますし、まず理想で、現実には実現困難ではないかというふうに存じます。
現在、冒頭に申し上げましたように、全国の地賃、いわゆる地方最低賃金審議会の三者構成の各側委員の非常に前向きな努力の結果、業種別、地域別の賃金の格差も縮まりつつありますし、相当の実績を伴う向上を遂げておるわけでございまして、私は、いまの段階であえて全国全産業一律最低賃金制度をやる必要はないのではないかというふうに存じます。
以上、簡単でございますが、私の意見を申し上げました。拍手
大
下
下村和之#4
○下村参考人 下村でございます。
最初に御紹介いただきましたように、私は全国中小企業団体中央会の労働専門委員でございます。同時に岐阜県の中小企業団体中央会の会長をいたしております。また、私自身小さな鉄工所を経営しております。また、岐阜にございます工場団地の理事長として七十数社の組合員を抱えて、その指導をしながら企業を営んでおる者でございます。
ことしの春闘におきまして、労働四団体の統一要求として全国一律最低賃金制の確立ということが取り上げられておることはよく承知をいたしております。また、このことは全国中小企業団体中央会に対しまして、労働四団体からこれが実現に協力するよう要請を受けておるということも承知をいたしておるわけでございます。
現在、最低賃金は、先ほどの参考人も申し上げましたように、地域別、業種別に全国の労働者に対してほとんど適用がなされておる状態でございます。しかし、これらの金額は調査の時点、地域、業種等によってかなりの開きがございます。調査の時点の問題はともかくといたしまして、地域別、業種別に開きがあるということは、それぞれ各県の地賃の中で審議をされておる場合に、それぞれの実情に応じてきめ細かく勘案をされて決まった金額でございまして、いわゆる地域の実情とか業種の実情を反映しておるわけでございます。これをいま全国一律でならそうといたしますと、それらの実情を無視をすることになりまして、大きな混乱を起こすおそれがあります。特に低賃金層を抱えております中小企業にとりましては、より大きな混乱を引き起こすのではないかということを憂慮いたしておる次第でございます。したがいまして、私たち中小企業者の立場としては、これには絶対に反対でございます。
最低賃金は、最低賃金法の目的の中にありますように、賃金の低廉な労働者の賃金の最低額を保障することにより云々ということになっておりますが、低賃金というのは一体どれだけが低賃金なのか、これはもういろいろ議論の分かれることであろうかと思うわけでございます。この低賃金は一体どういうものかということでございますけれども、これも四十五年の中賃の答申にありましたように、いわゆる労働市場の相場賃金に密接に関連して、不公正な賃金に対処するということになっておるわけですから、いわゆる低賃金といいましても、単純にどこが限界かわからない額ではなくして、不公正なものを排除するというのが目的ではないか。そういうことになりますと、いわゆる労働市場をどうとらえるか、あるいは賃金の相場をどう見るかということになってくるかと思います。
賃金の相場というのは、普通に平均賃金だとか、あるいは学卒初任給だとか、あるいは賃金の中位数だとか、あるいは何分位数だとかいうことをよく言われますけれども、ここで言う賃金の相場というのは、そういった特定のポイントをとらえて考えるものではない、こういうふうに思うわけでございます。賃金をある階層に分けましてその分布をつくってみますと一定のパターンがございまして、いわゆる労働市場の相場というものは、そういった一つの形をなして分布しておる諸状態そのものが一つの相場ではなかろうかと私は思うわけです。そういうパターンをはずれて存在しておるような賃金が不公正あるいは不当な賃金であろうかと思うわけでございます。高いところへ飛び抜けて存在しておるようなものは、全体の公正という立場からいけば多少抑えなければいけない問題が起こるんじゃないか。それから低い方の立場にあるものがいわゆる不公正な低賃金であって、この最低賃金法というのは、こういった不公正な賃金を救済する、あるいは排除する、取り除く、そういった効果をねらうべきものではないか、こういうふうに思うわけでございます。
それから、労働市場をどうとらえるかということでございますけれども、労働を物にたとえるということは私は必ずしも賛成はできませんが、あえて物にたとえるとすれば、いわゆる労働者の生活の基盤、居住、これを中心にいたしまして、移動、流通の可能な範囲内に限るべきだろうと思うわけであります。北海道から沖繩まで同じ労働市場だというふうな考え方をとるべきではない、こういうふうに考えるわけでございます。現在、最低賃金の設定は、大体地賃の範囲内で決めておるわけでございます。
私のところは岐阜でございまして、いわゆる太平洋側の部分と日本海側に近い部分、いわゆる山岳農村地帯があるわけでございますが、一つの最低賃金を決めようという場合においても、いわゆる岐阜等を中心にした市部と、それから山村部ではかなりの開きがある調査が出ておるわけでございます。かつて最低賃金を決定するある業種につきまして調査をしまして、一つの企業の中でこれにひっかかるのが七割も八割も出てきておるような企業も、中小企業でありますけれども、存在しておるわけでございます。すでに一県の中においてすらこういった差が出てくるわけでございます。いわんや全国を一つの、一本の市場と考えて一つの不公正な賃金を決めるための労働市場を設定するといったようなことは、これは不可能ではないか。額が低ければいいんだという先ほど御意見もありましたようでありますけれども、私は観念的に、全国一律最低賃金制というものは制度としては反対でございます。
また、こういうふうに考えますと、不公正な低賃金を排除するということですから、これはいまや雇用との条件の中で決めるものではなくして、いわゆる社会保障的なものでありますから、社会的性格を帯びた賃金でございます。
したがって、これを決めるにつきましては、現行ではいわゆる最低賃金審議会の答申を得て決めることになっておるわけでございますが、審議会の構成は御承知のように公労使三者構成でございます。しかし私は、労働側は労働者の直接の交渉の代表ではないと思うのです。使用者は使用者としての交渉の代表ではないと思うのです。いまや最低賃金というのは社会的な賃金でございますから、労働側は労働者の内部の事情によく精通しておる経験者であり、使用者側は事業の経営の実態を詳しく知っておる経験者である、そういう立場で、社会的な最低賃金を決めるための意見を述べるということであります。これではどちらかへ偏るおそれがあり、また話し合いが、意見の食い違いが大きく出てくる場合もありますから、これに公益側の社会的な公正な立場で、学識経験豊かな委員が加わって、その三者でこれを審議決定をするという形ではないかと思います。いわゆる審議会において公労使の多数決で決められるというところに意味があるのでございます。同等の立場でございまして、ですから、これはいわゆる通常の賃金の労使の交渉、労使の話し合い、こういったことで決めるべき性質のものではないのではないかと思うわけでございます。
話が戻るかもわかりませんが、最低賃金は労働市場の相場の実態に対応して、不公正な低賃金を排除するというのが目的でありまして、相場を押し上げる働きを期待するものであってはならないと思うわけでございます。労働団体の方の要求は最低賃金の額が月額七万円とか六万円とかいうことに聞いておりますが、現在の最低賃金、かなり幅広く広がっておりますが、平均ぐらいのところをとって、仮に日額千八百円くらいと考えましょうか、もし七万円とか六万円とかいう月額にするということは、六割または九割くらいのアップをしなければならない。ところが賃金というのは一つの配列の中にあるわけでございますから、最低賃金だけが別のものではないわけです。最低賃金がもし大幅に上がれば、いわゆる一人前の、あるいは正常な相場の中における賃金も押し上げざるを得ない。その上げ幅は小さいにしても、こんな六割も九割もアップをさせようと思えば、少なくとも平均のところでも四割とか五割ということをアップしないと、労働者のいわゆる能力を正しく評価して、それにふさわしい格づけをしていくということにならない。そうすれば、一般の労働者の勤労意欲をそぐ、いわゆる努力をスポイルするといったようなことになりかねないのでございます。ですから、最低賃金というのはそういった全体の賃金を押し上げる性格を持たせるべき性質のものではないのではないかというふうに考えるわけでございます。あくまでいわゆる一つの賃金の配列という相場の中から取り残された不公正な取り扱いを受けておる賃金を取り除くためのいわゆる歯どめとなるべき賃金であると考えるのが私は至当ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
さらに、一般に賃金を決める場合に、通常はいわゆる労働者に働いていただきまして、あるいは資本とか技術とかいろいろなものとの完全な協調の中で価値を生産するわけでございますから、いわゆる価値の生産の寄与の割合に応じてやっぱり賃金というものは格づけされていかなければならないと思うわけでございます。
現在中小企業は非常に労働力の確保がむずかしいのでございます。やむを得ず比較的質の低位の労働でもうまく適材適所に配分いたしまして、そうしてこれを活用いたしておるのでございます。いわゆる中高年齢層を多く使っているのも中小企業でございます。また婦人だとかあるいはお年寄り、多少質的に弱い労働も使わざるを得ないし、これも適材適所にうまく使っておるのが中小企業ではないかと私は思うわけでございます。もし最低賃金が高くなり過ぎますと、企業としてはその賃金に見合う労働をしていただかなければなりませんし、そうなりますと、中小企業としては労働の選択の範囲を狭められるおそれがありますし、また労働者の方から言えば雇用の機会を失う、こういうことになりかねないのでございまして、最低賃金の額の決定というものは、あくまでいわゆる不公正なもの、不公正なところへ置かれるものを排除するという立場で考えなければならない。相場があって最低賃金があるのでありまして、最低賃金があって相場ができていくというものではないのであります。
そういう私の考え方から考えますと、いわゆる全国一律最低賃金制というものは、もちろん現在の企業、特に中小企業の健全な事業の経営を阻害するおそれがむしろ出てくるのではないか、かように考えるわけでございまして、全国一律最低賃金制はまず反対でございますし、また、最低賃金というものは社会的な性格の賃金でございますから、労使の交渉によって決めるべきものではございます。また、相場があって最低賃金があるのであって、最低賃金があって相場をつくっていく性格のものでないということを申し上げまして、私の意見を一応締めくくらせていただきます。ありがとうございました。拍手
この発言だけを見る →最初に御紹介いただきましたように、私は全国中小企業団体中央会の労働専門委員でございます。同時に岐阜県の中小企業団体中央会の会長をいたしております。また、私自身小さな鉄工所を経営しております。また、岐阜にございます工場団地の理事長として七十数社の組合員を抱えて、その指導をしながら企業を営んでおる者でございます。
ことしの春闘におきまして、労働四団体の統一要求として全国一律最低賃金制の確立ということが取り上げられておることはよく承知をいたしております。また、このことは全国中小企業団体中央会に対しまして、労働四団体からこれが実現に協力するよう要請を受けておるということも承知をいたしておるわけでございます。
現在、最低賃金は、先ほどの参考人も申し上げましたように、地域別、業種別に全国の労働者に対してほとんど適用がなされておる状態でございます。しかし、これらの金額は調査の時点、地域、業種等によってかなりの開きがございます。調査の時点の問題はともかくといたしまして、地域別、業種別に開きがあるということは、それぞれ各県の地賃の中で審議をされておる場合に、それぞれの実情に応じてきめ細かく勘案をされて決まった金額でございまして、いわゆる地域の実情とか業種の実情を反映しておるわけでございます。これをいま全国一律でならそうといたしますと、それらの実情を無視をすることになりまして、大きな混乱を起こすおそれがあります。特に低賃金層を抱えております中小企業にとりましては、より大きな混乱を引き起こすのではないかということを憂慮いたしておる次第でございます。したがいまして、私たち中小企業者の立場としては、これには絶対に反対でございます。
最低賃金は、最低賃金法の目的の中にありますように、賃金の低廉な労働者の賃金の最低額を保障することにより云々ということになっておりますが、低賃金というのは一体どれだけが低賃金なのか、これはもういろいろ議論の分かれることであろうかと思うわけでございます。この低賃金は一体どういうものかということでございますけれども、これも四十五年の中賃の答申にありましたように、いわゆる労働市場の相場賃金に密接に関連して、不公正な賃金に対処するということになっておるわけですから、いわゆる低賃金といいましても、単純にどこが限界かわからない額ではなくして、不公正なものを排除するというのが目的ではないか。そういうことになりますと、いわゆる労働市場をどうとらえるか、あるいは賃金の相場をどう見るかということになってくるかと思います。
賃金の相場というのは、普通に平均賃金だとか、あるいは学卒初任給だとか、あるいは賃金の中位数だとか、あるいは何分位数だとかいうことをよく言われますけれども、ここで言う賃金の相場というのは、そういった特定のポイントをとらえて考えるものではない、こういうふうに思うわけでございます。賃金をある階層に分けましてその分布をつくってみますと一定のパターンがございまして、いわゆる労働市場の相場というものは、そういった一つの形をなして分布しておる諸状態そのものが一つの相場ではなかろうかと私は思うわけです。そういうパターンをはずれて存在しておるような賃金が不公正あるいは不当な賃金であろうかと思うわけでございます。高いところへ飛び抜けて存在しておるようなものは、全体の公正という立場からいけば多少抑えなければいけない問題が起こるんじゃないか。それから低い方の立場にあるものがいわゆる不公正な低賃金であって、この最低賃金法というのは、こういった不公正な賃金を救済する、あるいは排除する、取り除く、そういった効果をねらうべきものではないか、こういうふうに思うわけでございます。
それから、労働市場をどうとらえるかということでございますけれども、労働を物にたとえるということは私は必ずしも賛成はできませんが、あえて物にたとえるとすれば、いわゆる労働者の生活の基盤、居住、これを中心にいたしまして、移動、流通の可能な範囲内に限るべきだろうと思うわけであります。北海道から沖繩まで同じ労働市場だというふうな考え方をとるべきではない、こういうふうに考えるわけでございます。現在、最低賃金の設定は、大体地賃の範囲内で決めておるわけでございます。
私のところは岐阜でございまして、いわゆる太平洋側の部分と日本海側に近い部分、いわゆる山岳農村地帯があるわけでございますが、一つの最低賃金を決めようという場合においても、いわゆる岐阜等を中心にした市部と、それから山村部ではかなりの開きがある調査が出ておるわけでございます。かつて最低賃金を決定するある業種につきまして調査をしまして、一つの企業の中でこれにひっかかるのが七割も八割も出てきておるような企業も、中小企業でありますけれども、存在しておるわけでございます。すでに一県の中においてすらこういった差が出てくるわけでございます。いわんや全国を一つの、一本の市場と考えて一つの不公正な賃金を決めるための労働市場を設定するといったようなことは、これは不可能ではないか。額が低ければいいんだという先ほど御意見もありましたようでありますけれども、私は観念的に、全国一律最低賃金制というものは制度としては反対でございます。
また、こういうふうに考えますと、不公正な低賃金を排除するということですから、これはいまや雇用との条件の中で決めるものではなくして、いわゆる社会保障的なものでありますから、社会的性格を帯びた賃金でございます。
したがって、これを決めるにつきましては、現行ではいわゆる最低賃金審議会の答申を得て決めることになっておるわけでございますが、審議会の構成は御承知のように公労使三者構成でございます。しかし私は、労働側は労働者の直接の交渉の代表ではないと思うのです。使用者は使用者としての交渉の代表ではないと思うのです。いまや最低賃金というのは社会的な賃金でございますから、労働側は労働者の内部の事情によく精通しておる経験者であり、使用者側は事業の経営の実態を詳しく知っておる経験者である、そういう立場で、社会的な最低賃金を決めるための意見を述べるということであります。これではどちらかへ偏るおそれがあり、また話し合いが、意見の食い違いが大きく出てくる場合もありますから、これに公益側の社会的な公正な立場で、学識経験豊かな委員が加わって、その三者でこれを審議決定をするという形ではないかと思います。いわゆる審議会において公労使の多数決で決められるというところに意味があるのでございます。同等の立場でございまして、ですから、これはいわゆる通常の賃金の労使の交渉、労使の話し合い、こういったことで決めるべき性質のものではないのではないかと思うわけでございます。
話が戻るかもわかりませんが、最低賃金は労働市場の相場の実態に対応して、不公正な低賃金を排除するというのが目的でありまして、相場を押し上げる働きを期待するものであってはならないと思うわけでございます。労働団体の方の要求は最低賃金の額が月額七万円とか六万円とかいうことに聞いておりますが、現在の最低賃金、かなり幅広く広がっておりますが、平均ぐらいのところをとって、仮に日額千八百円くらいと考えましょうか、もし七万円とか六万円とかいう月額にするということは、六割または九割くらいのアップをしなければならない。ところが賃金というのは一つの配列の中にあるわけでございますから、最低賃金だけが別のものではないわけです。最低賃金がもし大幅に上がれば、いわゆる一人前の、あるいは正常な相場の中における賃金も押し上げざるを得ない。その上げ幅は小さいにしても、こんな六割も九割もアップをさせようと思えば、少なくとも平均のところでも四割とか五割ということをアップしないと、労働者のいわゆる能力を正しく評価して、それにふさわしい格づけをしていくということにならない。そうすれば、一般の労働者の勤労意欲をそぐ、いわゆる努力をスポイルするといったようなことになりかねないのでございます。ですから、最低賃金というのはそういった全体の賃金を押し上げる性格を持たせるべき性質のものではないのではないかというふうに考えるわけでございます。あくまでいわゆる一つの賃金の配列という相場の中から取り残された不公正な取り扱いを受けておる賃金を取り除くためのいわゆる歯どめとなるべき賃金であると考えるのが私は至当ではないか、こういうふうに思うわけでございます。
さらに、一般に賃金を決める場合に、通常はいわゆる労働者に働いていただきまして、あるいは資本とか技術とかいろいろなものとの完全な協調の中で価値を生産するわけでございますから、いわゆる価値の生産の寄与の割合に応じてやっぱり賃金というものは格づけされていかなければならないと思うわけでございます。
現在中小企業は非常に労働力の確保がむずかしいのでございます。やむを得ず比較的質の低位の労働でもうまく適材適所に配分いたしまして、そうしてこれを活用いたしておるのでございます。いわゆる中高年齢層を多く使っているのも中小企業でございます。また婦人だとかあるいはお年寄り、多少質的に弱い労働も使わざるを得ないし、これも適材適所にうまく使っておるのが中小企業ではないかと私は思うわけでございます。もし最低賃金が高くなり過ぎますと、企業としてはその賃金に見合う労働をしていただかなければなりませんし、そうなりますと、中小企業としては労働の選択の範囲を狭められるおそれがありますし、また労働者の方から言えば雇用の機会を失う、こういうことになりかねないのでございまして、最低賃金の額の決定というものは、あくまでいわゆる不公正なもの、不公正なところへ置かれるものを排除するという立場で考えなければならない。相場があって最低賃金があるのでありまして、最低賃金があって相場ができていくというものではないのであります。
そういう私の考え方から考えますと、いわゆる全国一律最低賃金制というものは、もちろん現在の企業、特に中小企業の健全な事業の経営を阻害するおそれがむしろ出てくるのではないか、かように考えるわけでございまして、全国一律最低賃金制はまず反対でございますし、また、最低賃金というものは社会的な性格の賃金でございますから、労使の交渉によって決めるべきものではございます。また、相場があって最低賃金があるのであって、最低賃金があって相場をつくっていく性格のものでないということを申し上げまして、私の意見を一応締めくくらせていただきます。ありがとうございました。拍手
大
岡
岡村省三#6
○岡村参考人 紹介を受けました総評の岡村であります。私が参考人として意見を述べる立場を最初に申し上げてみたいと思います。
御存じのように、ことしの春闘におきまして総評、中立労連、同盟、新産別の労働四団体が、最低賃金制度についての統一要求を提出をしています。これを基礎にしまして社会、共産、公明、民社の四党が共同法案を作成をいたしまして本委員会に提出していることはすでに御存じのことだと思います。私の立場は、このわれわれの要求及び四党案が一日も早く成立することを願う立場から意見を申し上げてみたいと思います。
最初に私たちの要求であります。要求は、一つは最低賃金の決定方式についてであります。最低賃金の決定方式は、全国一律の最低賃金を法制化すること、この一律の制定に関連しまして、実効性の上がらない産業、業種、地域についてはその一律の上に上積みをするということであります。二番目の決定方式は、労働協約の拡張適用を制度化する、こういうことであります。
それから二番目は、最低賃金の決定基準であります。最低賃金の決定に当たっては、生計費賃金事情を基礎にして決める。しかも、御存じのように日本の賃金なり生活条件というのは毎年一回春闘を中心にして改定をされているわけでありますから、最低賃金についても毎年改定をする、これが決定基準であります。
三番目が決定機構であります。決定機構については、現状の最低賃金審議会ではなくて、最低賃金を決定する権限を持つ最低賃金委員会を設置をするという考え方であります。しかもこの委員会は、第一に中央及び地方に設置をするということ、それからその構成については労使同数の委員と少数の中立委員で構成をしたいということであります。第三は、委員の推薦については労使はそれぞれの関係団体が推薦をし、中立委員の選出については労使の同意を必要とする、こういう考え方に立っているわけであります。
私たちがこういう要求を出した背景には、大別しますと二つの理由、それから一つの考え方があります。
その大別して二つの理由という一つは、日本の低賃金、低福祉水準の存在ということであります。時間の関係もありますから簡単に申し上げますと、戦後の自民党を中心とする保守党の政策の基本構造というのは、私なりに理解すれば、対外的には安保体制に依拠しながら国内的には高成長、高蓄積、これを全面的に支援をする、こういう立場に立って進められてきたと思うのです。そういう中で、成長の余禄を、部分的に低賃金とか低福祉水準など社会的な矛盾にばんそうこうを張るといいますか手当てをする、こういうものだったと思うわけであります。
御存じのように日本は、特に昭和三十年代以降世界に類例のないような高成長を遂げたわけであります。今日資本主義社会においては世界で第二位の工業水準に達しているわけであります。この工業水準に達するまでの過程でどういうことがとられたかといえば、国なり地方自治体が、挙げて産業基盤の整備、たとえば道路だとか港湾だとか土地だとかというような整備に狂奔するし、金融とか税制の面で優遇策をとるし、当然、国民生活の維持という立場から言えばやるべき課題である交通だとか、住宅だとか、教育だとか、社会保障の充実だとか、こういうことをネグレクトして政策が遂行された。しかも、今日社会的にも問題になっている公害その他企業が当然負担すべき社会的な負担についても、これを放置するという政策がとられたわけであります。しかも御存じのように、日本は明治以来、戦争中の一時期を除きますと、労働力の余っていた国であります。優秀な労働力が低賃金で存在をする、これを最大限活用して今日の成長を遂げたというのが私は実態だろうと思います。したがいまして、時間の関係もありますから細かいことは別にして、日本の今日の低賃金水準というのは、工業生産水準が世界第二位という実態にもかかわらず、アメリカはむろんのこと、ヨーロッパの先進諸国に比べても賃金は低い、しかも物価が異常に高いという中で、生活水準全体から見れば世界で十数番目という状態に置かれていることは皆さん御存じのとおりであります。
この低賃金という問題と同時に日本で特に私たちが注目しなければいかぬのは、この低賃金水準の中で格差問題が存在するということであります。これも御存じのように、三十年代前半では、特に内外から指摘された問題として二重構造の存在ということがあったわけであります。大企業と中小企業、本工と臨時工ないしは男女における格差、こういうものが非常に大きく存在したわけであります。三十年代後半、春闘が定着をしまして、われわれとしては春闘相場というものを形成してこの格差の縮小、賃金水準の引き上げに努力をした結果、統計的に言いますと、昭和三十四年の一番格差の開いた段階から、四十年代に入ると、ある程度格差の縮小ということに成功してきたわけであります。
ところが、政府を中心としてとられた政策を見てみますと、三十年代後半から四十年代にかけて、たとえば農業基本法なり中小企業基本法なり、積極的な労働力流動化政策という名のもとに新しい日本の低賃金層が創出されたということが指摘できると思うわけであります。
御存じのように、今日の産業構造というのはきわめて重層的な下請構造であります。しかも新しい低賃金層として臨時工なり社外工なり季節工なり出かせぎないしはパートという、こういう差別雇用と低賃金が多数存在しているわけであります。こういうことは、今日の日本の状況で考えた場合に、果たして社会的に許されていいのかどうか、これが私は一番大きな問題点だろうと思うのです。われわれ労働組合としても、みずからの力の弱さがこういうものの存在を許したということについては率直に反省をしたいと思いますけれども、私は、社会的に許されていいというようには考えないわけであります。
しかも四十年代後半からインフレが非常に高進をする、狂乱物価という中で労働者なり国民の生活が非常に不安に陥れられる。そういう中で、労働者なり国民が立ち上がるとどういう政策がとられたのかと言えば、御存じのように、総需要抑制という中から大量の失業者がつくり出されるというのが一つの方向であります。同時に、もう一つの方向は何かと言えば、インフレの犯人を賃金ということに仕立て上げて、したがって、そういう中で賃金か福祉かということで労働者と国民の分断を図る、ないしは賃金か雇用かということで労働者内部の矛盾を突いてくる、こういうやり方をいまとられているわけであります。要するに、このインフレの被害を労働者なり国民なり中小企業なり農業の犠牲によってくぐり抜けようというのが今日とられている政策だろうと思います。
そういう歴史的な経過を踏まえて、果たして一体全体最賃行政というものがどういうものであり、その実態はどの辺に問題があるかということを次に指摘をしてみたいと思うのです。
御存じのように、昭和二十二年に最賃法が制定されました。その中には、二十八条から三十一条にわたって最低賃金制についての規定があったわけであります。ところが、これが具体化されるまでには十年以上もたなざらしになっていたという経過があります。三十四年にいわゆる業者間協定による最賃法というのがつくられたわけであります。この中心は九条及び十条であります。この九条及び十条というのはどういう決定方式であるかと言えば、業者団体が勝手に一方的に労働者の初任給を決定をする、これを最低賃金審議会にかける、ここで多数決で押し切る、これが当時の最低賃金の主要な決定方式であります。私たちは、これが次のような問題点を実は含んでいるというように考えます。
一つは何かと言うと、労働者の労働条件決定に当たって一方的に決定するということは、労働者の団結権、団交権の否認であるというように考えます。第二番目は何かと言うと、業者が初めから一方的に決めるわけですから、初めから賃金水準に比較して低い。加えて、これは実績によっても明らかなように数年たって一回しか改定をしない、こういうことでありますから、初めから有効性がないものは数年たてばますます実効性がないし、それが果たしている社会的役割りというのは低賃金固定化策以外の何物でもないのではないか、こういう立場をとっているわけであります。
少なくとも最低賃金というものを考える場合には、国内的には憲法二十五条なり労働基準法一条、二条、国際的に言えばILO条約の二十六号、三十号その他の条約なり勧告があります。この精神が生かされないものは国際的には通用しないわけであります。私たちのそういう追及の中で、実は政府は四十年代に入ってこの法律を改正をしました。それが改正されたものが今日の現行法であります。
現行法は御存じのように十六条を中心で決定をされています。いわゆる審議会方式であります。しかし、先ほど私たちの要求の際に申し上げましたけれども、審議会というのは、諮問を受けて審議をするというものでありまして、みずから調査し決定するという権限を持っていないという問題点が一つあります。それからもう一つの問題点は何かと言うと、三者構成に表面的にはなっている、ところが、この実態は三者構成ではなくて、二対一の構成だと言って私は間違いないと思います。
それを具体的な例で申し上げますと、昨年の秋に全国的に地方最低賃金の改定が行われたわけであります。東京の場合には、御存じのように千七百九十四円で決まっております。これは失対賃金の最低下限の金額であります。労使でこの改定のときに詰められた金額は千八百円台の話が具体的に出ていたわけであります。ところが、この金額で最終的に押し切られた背景には、この委員会だったと記憶をいたしますけれども、議論をされたように、労働省の当局が各県の労働基準局を指導して、最低賃金の金額を失対賃金以上には絶対するなという行政指導が行われて、その意向を受けた公益委員がこういう金額を決める、これが全国的な状況であります。だから、地域包括最賃の金額を見ていただけばわかりますように、全国的に失対賃金の金額ないしはそれと幾らも違わない、一けたの円しか違わない金額で決まっている、こういう実態になっています。したがって、名目的には三者構成ということになっておりますけれども、明らかにこれは二対一の行政指導型の最低賃金決定機構だ、こういうことが言えると思います。
そこで、私たちが要求した最低賃金の要求の理念ないしは発想について一言申し上げてみたいと思います。
私たちがよく労働省といろいろ交渉する中で言われる言葉について、ここで指摘をしなければいけないと思うのです。それは、最低賃金というのは落ち穂拾いという考え方であります。私たちはこういう考え方には立ちません。非常に低い低賃金労働者の救済という視点といいますか、労働省はこれであると思います。私たちの考え方というのは、次のような考え方であります。それは、憲法で規定をしている健康にして文化的な生活を営む権利、基準法で指摘をしている人たるに値する生活を確保する必要がある、こういう考え方、ないしはILO条約で指摘をされているような考え方を基礎にして今日の日本の状況を考えれば、国民生活重視の政治経済体制をつくっていく、その場合のナショナルミニマム形成の基軸として最低賃金をやはり考えなければいけないのじゃないか、こういうように実は考えるわけであります。したがいまして、労働者には最低賃金、農民の場合には、そういう労働者の生活、賃金を基礎にした生活保障、中小企業の場合で言えば課税最低限の引き上げを通じて最低の生活を確保する、むろん、社会保障の関係で言えば、失対賃金とか生活保護とか各種の年金とかいうのが、そういう関連で内容が当然改善をされる、こういう必要があると思うのであります。
先ほど経営者側の方から一律について反対という話が出ましたけれども、今日の日本においても、たとえば就労する労働者の最低年齢が規制をされておる、時間が決まっておる。なぜ賃金ができないかということについて、私たちは納得をするわけにはいきません。こういう立場に立っています。
時間の関係もありますから最後に一言申し上げたいのは、こういう私たちの要求に対して、いつも言われる問題点として企業の支払い能力、ないしはその延長線上から言うと中小企業の限界といいますか倒産というような問題が提起をされます。内容を細かく申し上げませんで、二、三の点についてだけ申し上げておきたいと思うのです。
私は、総評で二十年にわたって中小企業労働運動をやってきました。中小企業安定審議会の委員もやらしていただいております。政府が出した経済白書なり労働白書その他を読んでみましても、高賃金で企業が倒産した例というのを残念ながら余り知りません。たとえば、ここ二十年にわたる日本経済の成長の中で、景気循環過程で何回か不況がありました。今日はまた低成長への切りかえという中で雇用不安がいっぱい出ております。しかし、中小企業が困難になっておる理由というのは、いろいろ見聞きし読んだりしておる中で明らかになっておることは、たとえば景気循環過程における金融政策から金融的に行き詰まるとか、親企業が下請工賃をたたくとか支払いを延ばすとか、それから大企業が中小企業分野に進出をしてくるとか、ないしは今日の国際経済情勢の中で、発展途上国の追い上げというような中で企業が転業していくとかいう理由が多くあります。特に四十年代に入ってからの問題点は、先ほども指摘がありましたように、低賃金、低福祉では労働者が集まらないというところから転廃業が進んでいるというのが客観的な事実であります。そうだとすると、最低賃金を、われわれが要求しておるようなものをつくることが中小企業の倒産につながるというように考えるのは事実と違っておる、こういうことを私は強調しておきたいわけであります。
むしろ、いま申し上げたような中小企業の抱えておる諸問題を政策的に解決するとするならば、賃金については最低賃金だとか、世間並みの時間短縮をやるとか、そういうような労働者の労働条件の改善とか福祉という最低の歯どめがあって、初めて有効な政策ができるというように私たちは考えています。今日の状況から考えると、むしろ困難な企業状態を克服するといいますか、低賃金によってこれを乗り切ろうというような考え方は果たして社会的に認められる考え方なのかどうか、しかも今日のような日本を取り巻く経済情勢から言えば、低賃金に依存して企業の存立を考えるというようなことは客観的にできるのかどうか、この辺についても改めて考え直していただきたいというように考えます。
しかし、とはいえ、私たちは中小企業が困難な事情に置かれておるということはよく知っております。私たちともある面では共通点があります。私たちがこの中小企業問題を問題にするのは、直接的には労働者の労働条件の改善とか、雇用の確保とか、権利の拡大という視点からそういう問題意識を持っております。経営者側の方からすれば、当然企業の存続発展、利益の確保という立場から問題にされるだろうと思うのです。ただ私は、共通点があるというのはこういう面で共通点があると思います。それは、大企業から圧迫をされている中小企業の方々をどうやって守っていくのか、たとえば政策的に言えば、中小企業分野の確保だとか、独禁法の強化だとか、ないしは官公需の確保だとか、下請企業の地位の改善だとかいうふうなことについては私は一致点があると思います。また、金融、税制その他の抜本的な改善の必要性も認めます。
そういう立場から言いますと、御存じのように私たちは国民春闘を展開をしております。私たちは、中小企業の皆さん方がみずからこういう困難な課題に向かって立ち上がること、したがってそういう面で共通の点があるならば一緒に闘いたいという考え方を持っております。そういう立場から、最低賃金の実施と中小企業の困難な問題というものを変に結びつけることなく、今日の日本の置かれている状況、将来の日本のあり方という問題から大局的に考えて、われわれの要求についてぜひ理解をしていただき、実現に当たっていただきたいことを申し上げまして、私の意見にかえさせていただきたいと思います。拍手
この発言だけを見る →御存じのように、ことしの春闘におきまして総評、中立労連、同盟、新産別の労働四団体が、最低賃金制度についての統一要求を提出をしています。これを基礎にしまして社会、共産、公明、民社の四党が共同法案を作成をいたしまして本委員会に提出していることはすでに御存じのことだと思います。私の立場は、このわれわれの要求及び四党案が一日も早く成立することを願う立場から意見を申し上げてみたいと思います。
最初に私たちの要求であります。要求は、一つは最低賃金の決定方式についてであります。最低賃金の決定方式は、全国一律の最低賃金を法制化すること、この一律の制定に関連しまして、実効性の上がらない産業、業種、地域についてはその一律の上に上積みをするということであります。二番目の決定方式は、労働協約の拡張適用を制度化する、こういうことであります。
それから二番目は、最低賃金の決定基準であります。最低賃金の決定に当たっては、生計費賃金事情を基礎にして決める。しかも、御存じのように日本の賃金なり生活条件というのは毎年一回春闘を中心にして改定をされているわけでありますから、最低賃金についても毎年改定をする、これが決定基準であります。
三番目が決定機構であります。決定機構については、現状の最低賃金審議会ではなくて、最低賃金を決定する権限を持つ最低賃金委員会を設置をするという考え方であります。しかもこの委員会は、第一に中央及び地方に設置をするということ、それからその構成については労使同数の委員と少数の中立委員で構成をしたいということであります。第三は、委員の推薦については労使はそれぞれの関係団体が推薦をし、中立委員の選出については労使の同意を必要とする、こういう考え方に立っているわけであります。
私たちがこういう要求を出した背景には、大別しますと二つの理由、それから一つの考え方があります。
その大別して二つの理由という一つは、日本の低賃金、低福祉水準の存在ということであります。時間の関係もありますから簡単に申し上げますと、戦後の自民党を中心とする保守党の政策の基本構造というのは、私なりに理解すれば、対外的には安保体制に依拠しながら国内的には高成長、高蓄積、これを全面的に支援をする、こういう立場に立って進められてきたと思うのです。そういう中で、成長の余禄を、部分的に低賃金とか低福祉水準など社会的な矛盾にばんそうこうを張るといいますか手当てをする、こういうものだったと思うわけであります。
御存じのように日本は、特に昭和三十年代以降世界に類例のないような高成長を遂げたわけであります。今日資本主義社会においては世界で第二位の工業水準に達しているわけであります。この工業水準に達するまでの過程でどういうことがとられたかといえば、国なり地方自治体が、挙げて産業基盤の整備、たとえば道路だとか港湾だとか土地だとかというような整備に狂奔するし、金融とか税制の面で優遇策をとるし、当然、国民生活の維持という立場から言えばやるべき課題である交通だとか、住宅だとか、教育だとか、社会保障の充実だとか、こういうことをネグレクトして政策が遂行された。しかも、今日社会的にも問題になっている公害その他企業が当然負担すべき社会的な負担についても、これを放置するという政策がとられたわけであります。しかも御存じのように、日本は明治以来、戦争中の一時期を除きますと、労働力の余っていた国であります。優秀な労働力が低賃金で存在をする、これを最大限活用して今日の成長を遂げたというのが私は実態だろうと思います。したがいまして、時間の関係もありますから細かいことは別にして、日本の今日の低賃金水準というのは、工業生産水準が世界第二位という実態にもかかわらず、アメリカはむろんのこと、ヨーロッパの先進諸国に比べても賃金は低い、しかも物価が異常に高いという中で、生活水準全体から見れば世界で十数番目という状態に置かれていることは皆さん御存じのとおりであります。
この低賃金という問題と同時に日本で特に私たちが注目しなければいかぬのは、この低賃金水準の中で格差問題が存在するということであります。これも御存じのように、三十年代前半では、特に内外から指摘された問題として二重構造の存在ということがあったわけであります。大企業と中小企業、本工と臨時工ないしは男女における格差、こういうものが非常に大きく存在したわけであります。三十年代後半、春闘が定着をしまして、われわれとしては春闘相場というものを形成してこの格差の縮小、賃金水準の引き上げに努力をした結果、統計的に言いますと、昭和三十四年の一番格差の開いた段階から、四十年代に入ると、ある程度格差の縮小ということに成功してきたわけであります。
ところが、政府を中心としてとられた政策を見てみますと、三十年代後半から四十年代にかけて、たとえば農業基本法なり中小企業基本法なり、積極的な労働力流動化政策という名のもとに新しい日本の低賃金層が創出されたということが指摘できると思うわけであります。
御存じのように、今日の産業構造というのはきわめて重層的な下請構造であります。しかも新しい低賃金層として臨時工なり社外工なり季節工なり出かせぎないしはパートという、こういう差別雇用と低賃金が多数存在しているわけであります。こういうことは、今日の日本の状況で考えた場合に、果たして社会的に許されていいのかどうか、これが私は一番大きな問題点だろうと思うのです。われわれ労働組合としても、みずからの力の弱さがこういうものの存在を許したということについては率直に反省をしたいと思いますけれども、私は、社会的に許されていいというようには考えないわけであります。
しかも四十年代後半からインフレが非常に高進をする、狂乱物価という中で労働者なり国民の生活が非常に不安に陥れられる。そういう中で、労働者なり国民が立ち上がるとどういう政策がとられたのかと言えば、御存じのように、総需要抑制という中から大量の失業者がつくり出されるというのが一つの方向であります。同時に、もう一つの方向は何かと言えば、インフレの犯人を賃金ということに仕立て上げて、したがって、そういう中で賃金か福祉かということで労働者と国民の分断を図る、ないしは賃金か雇用かということで労働者内部の矛盾を突いてくる、こういうやり方をいまとられているわけであります。要するに、このインフレの被害を労働者なり国民なり中小企業なり農業の犠牲によってくぐり抜けようというのが今日とられている政策だろうと思います。
そういう歴史的な経過を踏まえて、果たして一体全体最賃行政というものがどういうものであり、その実態はどの辺に問題があるかということを次に指摘をしてみたいと思うのです。
御存じのように、昭和二十二年に最賃法が制定されました。その中には、二十八条から三十一条にわたって最低賃金制についての規定があったわけであります。ところが、これが具体化されるまでには十年以上もたなざらしになっていたという経過があります。三十四年にいわゆる業者間協定による最賃法というのがつくられたわけであります。この中心は九条及び十条であります。この九条及び十条というのはどういう決定方式であるかと言えば、業者団体が勝手に一方的に労働者の初任給を決定をする、これを最低賃金審議会にかける、ここで多数決で押し切る、これが当時の最低賃金の主要な決定方式であります。私たちは、これが次のような問題点を実は含んでいるというように考えます。
一つは何かと言うと、労働者の労働条件決定に当たって一方的に決定するということは、労働者の団結権、団交権の否認であるというように考えます。第二番目は何かと言うと、業者が初めから一方的に決めるわけですから、初めから賃金水準に比較して低い。加えて、これは実績によっても明らかなように数年たって一回しか改定をしない、こういうことでありますから、初めから有効性がないものは数年たてばますます実効性がないし、それが果たしている社会的役割りというのは低賃金固定化策以外の何物でもないのではないか、こういう立場をとっているわけであります。
少なくとも最低賃金というものを考える場合には、国内的には憲法二十五条なり労働基準法一条、二条、国際的に言えばILO条約の二十六号、三十号その他の条約なり勧告があります。この精神が生かされないものは国際的には通用しないわけであります。私たちのそういう追及の中で、実は政府は四十年代に入ってこの法律を改正をしました。それが改正されたものが今日の現行法であります。
現行法は御存じのように十六条を中心で決定をされています。いわゆる審議会方式であります。しかし、先ほど私たちの要求の際に申し上げましたけれども、審議会というのは、諮問を受けて審議をするというものでありまして、みずから調査し決定するという権限を持っていないという問題点が一つあります。それからもう一つの問題点は何かと言うと、三者構成に表面的にはなっている、ところが、この実態は三者構成ではなくて、二対一の構成だと言って私は間違いないと思います。
それを具体的な例で申し上げますと、昨年の秋に全国的に地方最低賃金の改定が行われたわけであります。東京の場合には、御存じのように千七百九十四円で決まっております。これは失対賃金の最低下限の金額であります。労使でこの改定のときに詰められた金額は千八百円台の話が具体的に出ていたわけであります。ところが、この金額で最終的に押し切られた背景には、この委員会だったと記憶をいたしますけれども、議論をされたように、労働省の当局が各県の労働基準局を指導して、最低賃金の金額を失対賃金以上には絶対するなという行政指導が行われて、その意向を受けた公益委員がこういう金額を決める、これが全国的な状況であります。だから、地域包括最賃の金額を見ていただけばわかりますように、全国的に失対賃金の金額ないしはそれと幾らも違わない、一けたの円しか違わない金額で決まっている、こういう実態になっています。したがって、名目的には三者構成ということになっておりますけれども、明らかにこれは二対一の行政指導型の最低賃金決定機構だ、こういうことが言えると思います。
そこで、私たちが要求した最低賃金の要求の理念ないしは発想について一言申し上げてみたいと思います。
私たちがよく労働省といろいろ交渉する中で言われる言葉について、ここで指摘をしなければいけないと思うのです。それは、最低賃金というのは落ち穂拾いという考え方であります。私たちはこういう考え方には立ちません。非常に低い低賃金労働者の救済という視点といいますか、労働省はこれであると思います。私たちの考え方というのは、次のような考え方であります。それは、憲法で規定をしている健康にして文化的な生活を営む権利、基準法で指摘をしている人たるに値する生活を確保する必要がある、こういう考え方、ないしはILO条約で指摘をされているような考え方を基礎にして今日の日本の状況を考えれば、国民生活重視の政治経済体制をつくっていく、その場合のナショナルミニマム形成の基軸として最低賃金をやはり考えなければいけないのじゃないか、こういうように実は考えるわけであります。したがいまして、労働者には最低賃金、農民の場合には、そういう労働者の生活、賃金を基礎にした生活保障、中小企業の場合で言えば課税最低限の引き上げを通じて最低の生活を確保する、むろん、社会保障の関係で言えば、失対賃金とか生活保護とか各種の年金とかいうのが、そういう関連で内容が当然改善をされる、こういう必要があると思うのであります。
先ほど経営者側の方から一律について反対という話が出ましたけれども、今日の日本においても、たとえば就労する労働者の最低年齢が規制をされておる、時間が決まっておる。なぜ賃金ができないかということについて、私たちは納得をするわけにはいきません。こういう立場に立っています。
時間の関係もありますから最後に一言申し上げたいのは、こういう私たちの要求に対して、いつも言われる問題点として企業の支払い能力、ないしはその延長線上から言うと中小企業の限界といいますか倒産というような問題が提起をされます。内容を細かく申し上げませんで、二、三の点についてだけ申し上げておきたいと思うのです。
私は、総評で二十年にわたって中小企業労働運動をやってきました。中小企業安定審議会の委員もやらしていただいております。政府が出した経済白書なり労働白書その他を読んでみましても、高賃金で企業が倒産した例というのを残念ながら余り知りません。たとえば、ここ二十年にわたる日本経済の成長の中で、景気循環過程で何回か不況がありました。今日はまた低成長への切りかえという中で雇用不安がいっぱい出ております。しかし、中小企業が困難になっておる理由というのは、いろいろ見聞きし読んだりしておる中で明らかになっておることは、たとえば景気循環過程における金融政策から金融的に行き詰まるとか、親企業が下請工賃をたたくとか支払いを延ばすとか、それから大企業が中小企業分野に進出をしてくるとか、ないしは今日の国際経済情勢の中で、発展途上国の追い上げというような中で企業が転業していくとかいう理由が多くあります。特に四十年代に入ってからの問題点は、先ほども指摘がありましたように、低賃金、低福祉では労働者が集まらないというところから転廃業が進んでいるというのが客観的な事実であります。そうだとすると、最低賃金を、われわれが要求しておるようなものをつくることが中小企業の倒産につながるというように考えるのは事実と違っておる、こういうことを私は強調しておきたいわけであります。
むしろ、いま申し上げたような中小企業の抱えておる諸問題を政策的に解決するとするならば、賃金については最低賃金だとか、世間並みの時間短縮をやるとか、そういうような労働者の労働条件の改善とか福祉という最低の歯どめがあって、初めて有効な政策ができるというように私たちは考えています。今日の状況から考えると、むしろ困難な企業状態を克服するといいますか、低賃金によってこれを乗り切ろうというような考え方は果たして社会的に認められる考え方なのかどうか、しかも今日のような日本を取り巻く経済情勢から言えば、低賃金に依存して企業の存立を考えるというようなことは客観的にできるのかどうか、この辺についても改めて考え直していただきたいというように考えます。
しかし、とはいえ、私たちは中小企業が困難な事情に置かれておるということはよく知っております。私たちともある面では共通点があります。私たちがこの中小企業問題を問題にするのは、直接的には労働者の労働条件の改善とか、雇用の確保とか、権利の拡大という視点からそういう問題意識を持っております。経営者側の方からすれば、当然企業の存続発展、利益の確保という立場から問題にされるだろうと思うのです。ただ私は、共通点があるというのはこういう面で共通点があると思います。それは、大企業から圧迫をされている中小企業の方々をどうやって守っていくのか、たとえば政策的に言えば、中小企業分野の確保だとか、独禁法の強化だとか、ないしは官公需の確保だとか、下請企業の地位の改善だとかいうふうなことについては私は一致点があると思います。また、金融、税制その他の抜本的な改善の必要性も認めます。
そういう立場から言いますと、御存じのように私たちは国民春闘を展開をしております。私たちは、中小企業の皆さん方がみずからこういう困難な課題に向かって立ち上がること、したがってそういう面で共通の点があるならば一緒に闘いたいという考え方を持っております。そういう立場から、最低賃金の実施と中小企業の困難な問題というものを変に結びつけることなく、今日の日本の置かれている状況、将来の日本のあり方という問題から大局的に考えて、われわれの要求についてぜひ理解をしていただき、実現に当たっていただきたいことを申し上げまして、私の意見にかえさせていただきたいと思います。拍手
竹
丹
丹下洋一#8
○丹下参考人 中立労連の丹下でございます。
私もただいまの岡村参考人と同様に、労働四団体の最賃制についての共同の要求あるいは野党四党の最賃制の根本的な改正についての共同の法案を成立をさせる、こういう観点で意見を述べさせていただきたいというふうに思います。
私どもが最賃制について考えている基盤というのは、ただいまの岡村参考人の考え方と同様でございますので、重複する部分もあるというふうに思いますけれども、幾つかの点で意見を申し上げます。
まず第一に、いままでとられてまいりました賃金政策の問題であります。また経済政策の問題でありますけれども、いまの日本の経済をつくり上げていく上には並み並みならぬ労働者、国民の犠牲があった、その上に初めて日本の経済が高度成長をしてきた、そして、その結果が労働者、国民の生活をあるいは生活の基盤を本当の意味で確立をするという状況ではなしに、むしろ新しい困難を背負わせてしまった、こういうことが大変大きな問題として指摘をされなければいけないのではないかというふうに考えるわけです。
過去にとられてまいりました最賃制の運営等にいたしましても、私どもの立場からすれば、労働省等々が言うように仮に労働者の最低を拾っていく、こういう落ち穂拾いの立場ですらなくて、むしろ高度成長を支えるための労働力の誘導化政策あるいは低賃金政策の固定化、こういう意味で少なくとも客観的には作用をしてきたというふうに言わざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけであります。なぜならば、高度成長の結果の中で、わが国は資本主義世界でも第二の工業力を持つような国になったわけでありますけれども、その中で非常に多くの低賃金労働者が存在をする。労働する以上、その労働力を売った金で生活ができなければいけないということになるわけでありますけれども、そういうことすら満足にできないという非常に多くの階層がいるということは統計上も明らかであるというふうに思います。
多少古い統計でありますけれども、四十八年の時点で、雇用労働者の賃金の中位数が八万五千三百円というふうに出ておりますけれども、それ以下の労働者は女子においては九五%、男子においても三八%いる。五万四千円以下の労働者というのは五百六十三万人いる。これは十人以上の規模で、パートを除いておりますから、実質的にはもっとこの層というのが拡大をするという状況になっていると思います。この賃金が、労働者が労働をして、そして生活をするということに本当に足る賃金であるというふうにはだれしも考えないのじゃないかというふうに思うわけであります。
さて、こういう中で行われております現行最賃法の問題点でありますけれども、私どもは二つの点で大きな問題があるのじゃないかというふうに考えております。
その一つは賃金決定の基準であります。現在の賃金決定の基準というのは、労働市場の相場賃金を基準にするということ、あるいは企業の支払い能力を優先させるということ、それらを含めて、結局は一定の額を定めることによってどのくらいの影響率が出るのか、こういうことを基礎にして賃金決定がされているわけであります。しかし、労働力の相場賃金というのは、結局は自然にできてきたものであるし、そのときの労働力の事情あるいは経営の側の労働力に対する要請、こういうふうなものを前提にして、そうした自然発生的なものを前提にして、その最下限をちょっとばかり切って上げていく、こういうかっこうになっているのじゃないかというふうに思うわけであります。
企業の支払い能力がある、そしてそれ以上のものを出すということになれば、その企業はつぶれてしまうか、あるいは労働者の質というものを選定をし、労働者の雇用機会が失われるではないか、こういう意見も大変に強くあるというふうに思いますけれども、これらについても、実はそういう観点に立ってこれらの基準が決定をされているのじゃないということは、いまの時期になれば明らかな問題なのじゃないかと思います。私は食品の労働組合の出身でありますけれども、食品の労働組合の中を見てみましても、大変に低賃金の労働者がいる。そして、低賃金であるから雇用できるのだ、こう言っている経営者もいたわけでありますけれども、この現在の不況の中で、そうした企業から労働者が一時帰休の形あるいは解雇の形でどんどんと締め出されるということになれば、経営者が雇用機会を確保するために一定の賃金水準でやむを得ないというふうに考えたのでないことは明らかであって、むしろ低賃金において企業利潤を確保をする、こういう観点に立って、その主張が賃金決定の基準に大きく作用していたのだということが明らかなのじゃないかというふうに思うわけであります。
二番目の問題点といたしましては、決定方式の問題があります。これについても行政主導型の決定方式でありまして、審議会方式という枠内であっても、労働者の生活の状態あるいは労働者の要求、賃金実態というものが的確に反映をするという形にはなっていなかった。一定の政策目的を持って、そしてそれに基づいて賃金決定の基準がつくられるようにする、こういう機能を果たしていたのではないかというふうに思うわけであります。
こうした問題点に対して私たちの主張をしておりますところは、労働者が企業に雇用される、そして働く、賃金を得る。その賃金というのは、労働者が人間として生活するに足るような賃金、すなわち憲法や労働基準法あるいはILO条約の中に含まれているような、そうした人たるに値する生活を営める賃金、こういうものを基準にして考えるべきであって、自然発生的に企業経営の都合によって生まれてきた賃金相場の下限を切る、こういうものではないのじゃないかというふうに考えているわけであります。賃金というのは元来そういうものではないのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。
しかし、労働力市場の中における労働組合の力がまだまだ非常に弱いということもあって、それを規制する力というのが薄く、したがって非常に極端な低賃金労働者が生まれているということについては、私ども労働組合の立場からもそれなりに考えなければならないところがあるわけでありますけれども、これらの最低基準、労働者が労働者として生活するに値するような賃金を決定をするということは、今日国の責任でもあるのじゃないかというふうに考えるわけであります。
労働基準法の中には労働時間の最低というふうな問題も決められている。賃金というのは、労働時間と並んで労働者が労働契約をする上での最大の要素であるわけでありますけれども、その賃金についてはただいま申し上げましたような形での決定しかされないということでは、今日の社会状況を考えてみると、そういう点での社会の公正あるいは社会正義ということを考えてみると、とうてい許されるところではないのじゃないかというふうに思うわけであります。労働者の一番基本的な労働条件であります賃金がナショナルミニマムとして形成をされていく、そしてそれに基づいて国民諸階層の生活が確保されていく、こういうことが今日の社会的なあるいは政治的な使命だということを特に強調をしておきたいというふうに考えるわけであります。
次にいわゆる支払い能力論の問題であります。これについては、私どもの周りを見てみても、非常に困難な状況に立っている中小企業というのがたくさんあるわけであります。そして、計数的に言えば、賃上げをするというふうなことがその企業に非常に大きな影響をもたらすことがあるということも存じているわけであります。しかし、翻って考えてみますと、この中小企業の困難な状況というのは、単に賃金が問題であるのかというと、決してそんなことはないのじゃないかというふうに実態からしても考えざるを得ないわけであります。非常な低賃金で労働者を働かさせて、そして企業がもっていく、それしか仕方がないのだ、こういうふうに考えるのは政治の立場でないというふうに思いますし、それ以上の現実の問題としては、仮に私ども非常に低い賃金である、しかしそれにもかかわらず倒産をする、こういう企業をたくさん見ているとしますと、あるいは一定の社会状況の中で賃金が上がっていく、その中でも企業が中小企業といえども発展をしていく、こういう現実を反面見ていると、その中小企業の困難というのは、むしろ中小企業を取り巻いている現在の経済的なあるいは政治的なさまざまな形での政策の弱さ、不足、過ちというのが一番根本にあるのじゃないだろうかというふうに考えているわけであります。
そうした問題を除いて、中小企業の問題というのを賃金とストレートに結びつけ、全国一律最賃の流行ということが即中小企業を破壊に導くというふうな議論があるとすれば、これは事実にも反しているわけだし、そういう方向では中小企業の真の意味での発展、基盤をつくるということにはなり得ないのじゃないか。労働者を安く使うことによって、そのことによって中小企業の存立があるのだ、こういうふうに考えていれば、事実とも違うし、社会的な政治的な観点からしても著しく公正に反するのじゃないだろうかというふうに思うわけであります。そこで、私どもはまず全国一律最賃を志向し、その中ですべての労働者が、憲法あるいは労働基準法にうたわれているような意味での賃金を受けることによって労働者としての生活を安定をさせていく、それを前提にして、それでもなお中小企業がりっぱに存続をしていくような政策をさまざまな形で打ち出していく、それが政治の役割りだと思いますし、そういう点から独禁法の問題あるいは金融の問題、財政の問題、税制の問題等々にも同時にメスを入れていくことが必要なのではないかというふうに考えるわけであります。
私どもの要求は、一つは、全国全産業一律最賃制を基本として、その上に産業別最低賃金の一般的拘束力を積み重ねていく、こういうかっこうでまず全国的な底支えをし、その上にさらにそれだけでは問題が解決をしないところにはその上積みをしていく、こういう考え方。それから二番目としては、最低額を決定する権限を有する労使対等の立場での賃金委員会を設置する。三番目といたしましては、最低賃金額は、賃金委員会の算出する労働者の生計費を基礎として、生計費の上昇に応じてスライドする。こういう要求を持っているわけでありますけれども、それらの要求というのは四野党の共同法案の中に盛られているわけでありますから、こうした労働者の、あるいは広く全国民的な要求、要望でもあるというふうに思いますが、これを国会において十分審議をされ、われわれの要求を実現されるようにお願いをして意見を終わらせていただきたいと思います。拍手
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私どもが最賃制について考えている基盤というのは、ただいまの岡村参考人の考え方と同様でございますので、重複する部分もあるというふうに思いますけれども、幾つかの点で意見を申し上げます。
まず第一に、いままでとられてまいりました賃金政策の問題であります。また経済政策の問題でありますけれども、いまの日本の経済をつくり上げていく上には並み並みならぬ労働者、国民の犠牲があった、その上に初めて日本の経済が高度成長をしてきた、そして、その結果が労働者、国民の生活をあるいは生活の基盤を本当の意味で確立をするという状況ではなしに、むしろ新しい困難を背負わせてしまった、こういうことが大変大きな問題として指摘をされなければいけないのではないかというふうに考えるわけです。
過去にとられてまいりました最賃制の運営等にいたしましても、私どもの立場からすれば、労働省等々が言うように仮に労働者の最低を拾っていく、こういう落ち穂拾いの立場ですらなくて、むしろ高度成長を支えるための労働力の誘導化政策あるいは低賃金政策の固定化、こういう意味で少なくとも客観的には作用をしてきたというふうに言わざるを得ないのじゃないかというふうに思うわけであります。なぜならば、高度成長の結果の中で、わが国は資本主義世界でも第二の工業力を持つような国になったわけでありますけれども、その中で非常に多くの低賃金労働者が存在をする。労働する以上、その労働力を売った金で生活ができなければいけないということになるわけでありますけれども、そういうことすら満足にできないという非常に多くの階層がいるということは統計上も明らかであるというふうに思います。
多少古い統計でありますけれども、四十八年の時点で、雇用労働者の賃金の中位数が八万五千三百円というふうに出ておりますけれども、それ以下の労働者は女子においては九五%、男子においても三八%いる。五万四千円以下の労働者というのは五百六十三万人いる。これは十人以上の規模で、パートを除いておりますから、実質的にはもっとこの層というのが拡大をするという状況になっていると思います。この賃金が、労働者が労働をして、そして生活をするということに本当に足る賃金であるというふうにはだれしも考えないのじゃないかというふうに思うわけであります。
さて、こういう中で行われております現行最賃法の問題点でありますけれども、私どもは二つの点で大きな問題があるのじゃないかというふうに考えております。
その一つは賃金決定の基準であります。現在の賃金決定の基準というのは、労働市場の相場賃金を基準にするということ、あるいは企業の支払い能力を優先させるということ、それらを含めて、結局は一定の額を定めることによってどのくらいの影響率が出るのか、こういうことを基礎にして賃金決定がされているわけであります。しかし、労働力の相場賃金というのは、結局は自然にできてきたものであるし、そのときの労働力の事情あるいは経営の側の労働力に対する要請、こういうふうなものを前提にして、そうした自然発生的なものを前提にして、その最下限をちょっとばかり切って上げていく、こういうかっこうになっているのじゃないかというふうに思うわけであります。
企業の支払い能力がある、そしてそれ以上のものを出すということになれば、その企業はつぶれてしまうか、あるいは労働者の質というものを選定をし、労働者の雇用機会が失われるではないか、こういう意見も大変に強くあるというふうに思いますけれども、これらについても、実はそういう観点に立ってこれらの基準が決定をされているのじゃないということは、いまの時期になれば明らかな問題なのじゃないかと思います。私は食品の労働組合の出身でありますけれども、食品の労働組合の中を見てみましても、大変に低賃金の労働者がいる。そして、低賃金であるから雇用できるのだ、こう言っている経営者もいたわけでありますけれども、この現在の不況の中で、そうした企業から労働者が一時帰休の形あるいは解雇の形でどんどんと締め出されるということになれば、経営者が雇用機会を確保するために一定の賃金水準でやむを得ないというふうに考えたのでないことは明らかであって、むしろ低賃金において企業利潤を確保をする、こういう観点に立って、その主張が賃金決定の基準に大きく作用していたのだということが明らかなのじゃないかというふうに思うわけであります。
二番目の問題点といたしましては、決定方式の問題があります。これについても行政主導型の決定方式でありまして、審議会方式という枠内であっても、労働者の生活の状態あるいは労働者の要求、賃金実態というものが的確に反映をするという形にはなっていなかった。一定の政策目的を持って、そしてそれに基づいて賃金決定の基準がつくられるようにする、こういう機能を果たしていたのではないかというふうに思うわけであります。
こうした問題点に対して私たちの主張をしておりますところは、労働者が企業に雇用される、そして働く、賃金を得る。その賃金というのは、労働者が人間として生活するに足るような賃金、すなわち憲法や労働基準法あるいはILO条約の中に含まれているような、そうした人たるに値する生活を営める賃金、こういうものを基準にして考えるべきであって、自然発生的に企業経営の都合によって生まれてきた賃金相場の下限を切る、こういうものではないのじゃないかというふうに考えているわけであります。賃金というのは元来そういうものではないのじゃないか、こういうふうに考えているわけであります。
しかし、労働力市場の中における労働組合の力がまだまだ非常に弱いということもあって、それを規制する力というのが薄く、したがって非常に極端な低賃金労働者が生まれているということについては、私ども労働組合の立場からもそれなりに考えなければならないところがあるわけでありますけれども、これらの最低基準、労働者が労働者として生活するに値するような賃金を決定をするということは、今日国の責任でもあるのじゃないかというふうに考えるわけであります。
労働基準法の中には労働時間の最低というふうな問題も決められている。賃金というのは、労働時間と並んで労働者が労働契約をする上での最大の要素であるわけでありますけれども、その賃金についてはただいま申し上げましたような形での決定しかされないということでは、今日の社会状況を考えてみると、そういう点での社会の公正あるいは社会正義ということを考えてみると、とうてい許されるところではないのじゃないかというふうに思うわけであります。労働者の一番基本的な労働条件であります賃金がナショナルミニマムとして形成をされていく、そしてそれに基づいて国民諸階層の生活が確保されていく、こういうことが今日の社会的なあるいは政治的な使命だということを特に強調をしておきたいというふうに考えるわけであります。
次にいわゆる支払い能力論の問題であります。これについては、私どもの周りを見てみても、非常に困難な状況に立っている中小企業というのがたくさんあるわけであります。そして、計数的に言えば、賃上げをするというふうなことがその企業に非常に大きな影響をもたらすことがあるということも存じているわけであります。しかし、翻って考えてみますと、この中小企業の困難な状況というのは、単に賃金が問題であるのかというと、決してそんなことはないのじゃないかというふうに実態からしても考えざるを得ないわけであります。非常な低賃金で労働者を働かさせて、そして企業がもっていく、それしか仕方がないのだ、こういうふうに考えるのは政治の立場でないというふうに思いますし、それ以上の現実の問題としては、仮に私ども非常に低い賃金である、しかしそれにもかかわらず倒産をする、こういう企業をたくさん見ているとしますと、あるいは一定の社会状況の中で賃金が上がっていく、その中でも企業が中小企業といえども発展をしていく、こういう現実を反面見ていると、その中小企業の困難というのは、むしろ中小企業を取り巻いている現在の経済的なあるいは政治的なさまざまな形での政策の弱さ、不足、過ちというのが一番根本にあるのじゃないだろうかというふうに考えているわけであります。
そうした問題を除いて、中小企業の問題というのを賃金とストレートに結びつけ、全国一律最賃の流行ということが即中小企業を破壊に導くというふうな議論があるとすれば、これは事実にも反しているわけだし、そういう方向では中小企業の真の意味での発展、基盤をつくるということにはなり得ないのじゃないか。労働者を安く使うことによって、そのことによって中小企業の存立があるのだ、こういうふうに考えていれば、事実とも違うし、社会的な政治的な観点からしても著しく公正に反するのじゃないだろうかというふうに思うわけであります。そこで、私どもはまず全国一律最賃を志向し、その中ですべての労働者が、憲法あるいは労働基準法にうたわれているような意味での賃金を受けることによって労働者としての生活を安定をさせていく、それを前提にして、それでもなお中小企業がりっぱに存続をしていくような政策をさまざまな形で打ち出していく、それが政治の役割りだと思いますし、そういう点から独禁法の問題あるいは金融の問題、財政の問題、税制の問題等々にも同時にメスを入れていくことが必要なのではないかというふうに考えるわけであります。
私どもの要求は、一つは、全国全産業一律最賃制を基本として、その上に産業別最低賃金の一般的拘束力を積み重ねていく、こういうかっこうでまず全国的な底支えをし、その上にさらにそれだけでは問題が解決をしないところにはその上積みをしていく、こういう考え方。それから二番目としては、最低額を決定する権限を有する労使対等の立場での賃金委員会を設置する。三番目といたしましては、最低賃金額は、賃金委員会の算出する労働者の生計費を基礎として、生計費の上昇に応じてスライドする。こういう要求を持っているわけでありますけれども、それらの要求というのは四野党の共同法案の中に盛られているわけでありますから、こうした労働者の、あるいは広く全国民的な要求、要望でもあるというふうに思いますが、これを国会において十分審議をされ、われわれの要求を実現されるようにお願いをして意見を終わらせていただきたいと思います。拍手
竹
黒
黒川俊雄#10
○黒川参考人 慶應義塾大学の黒川です。
私は、一研究者の立場でこの最低賃金制の問題について私なりの意見を申し上げたいと思います。
いま問題になっております全国一律最低賃金制については、政府やあるいは経営者団体の中で、わが国においては賃金格差が余りにも大きいから実効性がないというふうなことがしばしば言われますけれども、正確に言うと、恐らくそういう立場からは、むしろ無理だ、実効性ではなくて無理だということが率直な考え方ではないかと思います。私は逆に、わが国のように賃金格差が大きく、そしてまた賃金分布を見ましたときに平均賃金あるいは中位の賃金水準を下回る低賃金層が非常に多いというふうな状況、これは皆さんのところにあるいは資料をお渡ししたと思いますが、西ドイツ、イギリス、アメリカなどもそうですが、それらの賃金分布と比較してみましたときに非常にはっきりいたします。欧米諸国の場合には、平均あるいは中位の賃金水準に近い賃金を受け取っている層が多い。ところがわが国の場合はそれを下回った賃金を受け取っている層が多い、格差も大きい、こういう特徴を示しております。このようなことは、ある意味では現在の開発途上国と似通った面があり、ただ違う点は、平均を上回る賃金層がわが国の場合にはかなり高いところの水準まであるということでありますが、こういう状況の中で、やはり現行の最低賃金法、先ほどから話が出ておりましたように、低い水準で、しかも幅のある、格差のある最低賃金が、地域別、業種別に決定されるというような現行最低賃金法の方が私は実効性がないのではないかというふうに考えます。
というのは、ある意味では、戦前からも比較してみますと、先ほど言ったような賃金分布状況というのはほとんど変わっていない。現行の最低賃金法が成立して、当初はもっぱら業者間協定方式がとられましたが、六八年以降十六条方式がもっぱらとられるようになっても依然として賃金分布はほとんど変わりがないというふうな状況にある。このことを考えてみますと、やはり実効性がないというふうに判断せざるを得ないのではないか。そういう意味で、やはりわが国においては全国一律の最定賃金制というものが必要であるというふうに考えるわけであります。
そういう点で、確かに世界各国を見渡してみますと、完全な意味の全国全産業一律の最低賃金制がとられているのはフランスだけであるというこどが言えますけれども、これもやはり成立の状況の中で、労使のいろいろな対抗関係で妥協の産物として各国の最低賃金制が成立しておりますので、現実においては全国全産業一律制が成立しにくいという状況があります。その中で特に先ほど申しました開発途上国、そういう意味では底辺の層がきわめて多い開発途上国であっても、たとえばメキシコなどにおいては戦前早くから最低賃金制が成立いたしましたけれども、その中でやはり全国一律制というものが必要であるという意見が出されてきている。
具体的に申しますと、一九三三年に最低賃金制がメキシコにおいてできておりますが、四一年には労働厚生省自身が、地域別あるいは業種別の格差のついた最低賃金制というのは効果がない、単一の最低賃金率というものを決定する必要があるというふうなことを申しておりますが、それとあわせて、ラテンアメリカの労働法の権威者でありますマリオ・デ・ラ・クェヴァ教授なども大体そのような意見、いわば全国一律の最低賃金制がなければメキシコの低賃金というのは克服できないということをはっきり申しております。
また、戦後いち早く最低賃金制を実施しましたインドにおきましても、第一次経済計画から第二次経済計画へ移る段階において、やはり第一次計画の中で基礎になっていた業種別、地域別の低い最低賃金というものがほとんど効果がなかったという反省の上に立って、ここに挙げましたインドのピライ教授は、生計費を基準にした全国一律的な最低賃金を基準にして産業構造を再編成していかなければならない、こういうような意見を吐くようになってきております。言うまでもなく、その場合に産業構造をそのままにしているというふうな前提ではなしに、やはり生計費を基準にした全国一律に基づいて構造を変えていく政策をとる必要があるというふうに主張しているわけで、あえてそのようなことを主張するのは、インドにおける低賃金労働というのは国家の名誉にしるされた汚点である、これは早急になくす必要がある、そういうような観点からこのような主張をするようになってきていたわけであります。しかし現実の政治は、インドにおいてもなかなか思うようにはいっていないようでありますが、そのような見解が出されてきているということはやはり注目しなければならないと思います。
しかし、こういったラテンアメリカ諸国あるいはインドのような国々でなくても、先進諸国においても言うまでもなく全国一律制というものが要求されていることは事実でありまして、先ほどのフランスのみならず、各国においてすでに業種別、地域別の最低賃金制が実施されているところにおいても、絶えず全国一律制というものが主張されてきておる。御存じのようにイギリスの場合には地域別、特に産業別の最低賃金になっておりますが、しかしイギリスにおいても、現在、産業別の審議会を廃止して全国的な最低賃金を設定していく必要があるんではないか、そうしなければ効果が上がらないというふうな意見が出ております。しかしながら、先ほど申しましたように、イギリスはわが国と比べたならばまだ中位水準の賃金を受け取っている層が最も多い。わが国のように中位以下あるいは平均以下の賃金を受け取っている層が多いわけではないのでありますけれども、しかしこのイギリスにおいても、全国一律制というものが要求されるようになってきている。こういう点で、やはりわが国においても全国全産業一律の最賃制というものが必要ではないかというふうに私は考える次第であります。
次に最低賃金額の決定の基準の問題であります。これについては、いままでの参考人の方々がそれぞれ述べられましたが、ここで特に私が指摘しておきたいと思いますのは、一九二八年でありますが、ILOの総会において最低賃金決定制度の実施に関する勧告案が上程されました。その席上、使用者側から、支払い能力を考慮するという修正案が提出されました。これについていろいろ議論の結果、支払い能力原則というものを打ち出すことは最低賃金制の実施そのものを妨げる結果になるということでこの修正案は否決されて、現実においてこの勧告案の中には支払い能力という言葉はありません。
そういうようなことを考えてみますと、その基礎にあるのは何かというと、しばしば常識的には支払い能力がないから低賃金である、こういう因果関係が主張されますが、実はそうではないのであって、低賃金で労働者が雇えるので、そのような低賃金労働者を雇っている中小零細企業を大企業が犠牲にしあるいは利用する結果、中小零細企業の支払い能力が少なくなっている、こういうふうな状況があるのではないか。この点特にわが国の場合には、ここであえて細かい数字は省略いたしますけれども、一人当たりの付加価値額の規模別格差というものをとってみますと、中小零細企業の付加価値額の格差は大企業に対してきわめて大きい。そして、そういう意味では賃金格差よりさらに大きいというふうな状況を示しております。これはしばしば生産性の違いがこの一人当たり付加価値額の格差にあらわれているのだと主張されておりますが、これはそうではないので、わが国の規模別の格差が欧米諸国よりも大きい、さらに一人当たり付加価値額の格差がさらに大きいというのは、やはり格差のある低賃金で働かされている労働者がいるというふうなことから、先ほど申しましたようにその中小零細企業がいろいろな形で利用されあるいは犠牲にされて、その結果付加価値額がきわめて少なく抑えられている、いわゆる支払い能力がないと言われるような状況を呈しておるのがこのような統計数字に反映されているのだ、この点がやはり重要ではないか、そういうふうに思われるわけであります。
そういう意味でわが国において全国一律の最低賃金を決定していった場合に、中小企業に対するいままでの下請単価の決定であるとか原材料の仕入れであるとか、あるいは金融、税制、そういうふうな面が社会的に規制されていくということが当然そこに出てくるわけで、先ほどの産業構造の再編成と言われたその問題、インドのピライ教授が言われているような点がここに問題になってくるというふうに考えられるわけであります。
次に最低賃金額の決定の方法の問題であります。時間の関係で簡単に申し上げますが、決定方法に関して政府が決定をしていく、あるいは法律に規定していくという方法が余り各国の最低賃金制においてとられていないのは、最低賃金制成立当初において、これはD・セルズという人が書いた「ブリティッシュ・ウエイジズ・ボード」という本の中に書いてありますが、所得の民主化という趣旨と、もう一つは賃金決定方法の民主化という意味で、政府、国家が決定をするのではなくて労使の代表が出た機関において労使が対等な条件で決めていく、これを尊重するということが賃金決定方法の民主化である、こういうことを主張しておりますし、さらにイギリスにおいて早くから最低賃金法案を作成するために努力をしたチャールズ・ディルク夫妻、これは未組織労働者の組織化に努めたヒューマニストでありますけれども、この人なんかも実際において賃金委員会制度というものをようやく工夫し探り当てて、そのような法案をつくることになった。なかなかこれは成立しませんでしたけれども……。そういうことを考えてみますと、決定方法についてもやはり民主的な方式という意味が非常に重要な点になってくるのではないか。
以上のようなことを勘案してまいりますと、私が野党四党法案について見ましたところ、いろいろその問題点は私なりに持っておりますけれども、しかし少なくとも現行法に比べたならば、わが国の低賃金を克服していく上ではるかに実効性のあるものであると私は評価せざるを得ないというふうに申し上げたいと思います。
以上であります。拍手
この発言だけを見る →私は、一研究者の立場でこの最低賃金制の問題について私なりの意見を申し上げたいと思います。
いま問題になっております全国一律最低賃金制については、政府やあるいは経営者団体の中で、わが国においては賃金格差が余りにも大きいから実効性がないというふうなことがしばしば言われますけれども、正確に言うと、恐らくそういう立場からは、むしろ無理だ、実効性ではなくて無理だということが率直な考え方ではないかと思います。私は逆に、わが国のように賃金格差が大きく、そしてまた賃金分布を見ましたときに平均賃金あるいは中位の賃金水準を下回る低賃金層が非常に多いというふうな状況、これは皆さんのところにあるいは資料をお渡ししたと思いますが、西ドイツ、イギリス、アメリカなどもそうですが、それらの賃金分布と比較してみましたときに非常にはっきりいたします。欧米諸国の場合には、平均あるいは中位の賃金水準に近い賃金を受け取っている層が多い。ところがわが国の場合はそれを下回った賃金を受け取っている層が多い、格差も大きい、こういう特徴を示しております。このようなことは、ある意味では現在の開発途上国と似通った面があり、ただ違う点は、平均を上回る賃金層がわが国の場合にはかなり高いところの水準まであるということでありますが、こういう状況の中で、やはり現行の最低賃金法、先ほどから話が出ておりましたように、低い水準で、しかも幅のある、格差のある最低賃金が、地域別、業種別に決定されるというような現行最低賃金法の方が私は実効性がないのではないかというふうに考えます。
というのは、ある意味では、戦前からも比較してみますと、先ほど言ったような賃金分布状況というのはほとんど変わっていない。現行の最低賃金法が成立して、当初はもっぱら業者間協定方式がとられましたが、六八年以降十六条方式がもっぱらとられるようになっても依然として賃金分布はほとんど変わりがないというふうな状況にある。このことを考えてみますと、やはり実効性がないというふうに判断せざるを得ないのではないか。そういう意味で、やはりわが国においては全国一律の最定賃金制というものが必要であるというふうに考えるわけであります。
そういう点で、確かに世界各国を見渡してみますと、完全な意味の全国全産業一律の最低賃金制がとられているのはフランスだけであるというこどが言えますけれども、これもやはり成立の状況の中で、労使のいろいろな対抗関係で妥協の産物として各国の最低賃金制が成立しておりますので、現実においては全国全産業一律制が成立しにくいという状況があります。その中で特に先ほど申しました開発途上国、そういう意味では底辺の層がきわめて多い開発途上国であっても、たとえばメキシコなどにおいては戦前早くから最低賃金制が成立いたしましたけれども、その中でやはり全国一律制というものが必要であるという意見が出されてきている。
具体的に申しますと、一九三三年に最低賃金制がメキシコにおいてできておりますが、四一年には労働厚生省自身が、地域別あるいは業種別の格差のついた最低賃金制というのは効果がない、単一の最低賃金率というものを決定する必要があるというふうなことを申しておりますが、それとあわせて、ラテンアメリカの労働法の権威者でありますマリオ・デ・ラ・クェヴァ教授なども大体そのような意見、いわば全国一律の最低賃金制がなければメキシコの低賃金というのは克服できないということをはっきり申しております。
また、戦後いち早く最低賃金制を実施しましたインドにおきましても、第一次経済計画から第二次経済計画へ移る段階において、やはり第一次計画の中で基礎になっていた業種別、地域別の低い最低賃金というものがほとんど効果がなかったという反省の上に立って、ここに挙げましたインドのピライ教授は、生計費を基準にした全国一律的な最低賃金を基準にして産業構造を再編成していかなければならない、こういうような意見を吐くようになってきております。言うまでもなく、その場合に産業構造をそのままにしているというふうな前提ではなしに、やはり生計費を基準にした全国一律に基づいて構造を変えていく政策をとる必要があるというふうに主張しているわけで、あえてそのようなことを主張するのは、インドにおける低賃金労働というのは国家の名誉にしるされた汚点である、これは早急になくす必要がある、そういうような観点からこのような主張をするようになってきていたわけであります。しかし現実の政治は、インドにおいてもなかなか思うようにはいっていないようでありますが、そのような見解が出されてきているということはやはり注目しなければならないと思います。
しかし、こういったラテンアメリカ諸国あるいはインドのような国々でなくても、先進諸国においても言うまでもなく全国一律制というものが要求されていることは事実でありまして、先ほどのフランスのみならず、各国においてすでに業種別、地域別の最低賃金制が実施されているところにおいても、絶えず全国一律制というものが主張されてきておる。御存じのようにイギリスの場合には地域別、特に産業別の最低賃金になっておりますが、しかしイギリスにおいても、現在、産業別の審議会を廃止して全国的な最低賃金を設定していく必要があるんではないか、そうしなければ効果が上がらないというふうな意見が出ております。しかしながら、先ほど申しましたように、イギリスはわが国と比べたならばまだ中位水準の賃金を受け取っている層が最も多い。わが国のように中位以下あるいは平均以下の賃金を受け取っている層が多いわけではないのでありますけれども、しかしこのイギリスにおいても、全国一律制というものが要求されるようになってきている。こういう点で、やはりわが国においても全国全産業一律の最賃制というものが必要ではないかというふうに私は考える次第であります。
次に最低賃金額の決定の基準の問題であります。これについては、いままでの参考人の方々がそれぞれ述べられましたが、ここで特に私が指摘しておきたいと思いますのは、一九二八年でありますが、ILOの総会において最低賃金決定制度の実施に関する勧告案が上程されました。その席上、使用者側から、支払い能力を考慮するという修正案が提出されました。これについていろいろ議論の結果、支払い能力原則というものを打ち出すことは最低賃金制の実施そのものを妨げる結果になるということでこの修正案は否決されて、現実においてこの勧告案の中には支払い能力という言葉はありません。
そういうようなことを考えてみますと、その基礎にあるのは何かというと、しばしば常識的には支払い能力がないから低賃金である、こういう因果関係が主張されますが、実はそうではないのであって、低賃金で労働者が雇えるので、そのような低賃金労働者を雇っている中小零細企業を大企業が犠牲にしあるいは利用する結果、中小零細企業の支払い能力が少なくなっている、こういうふうな状況があるのではないか。この点特にわが国の場合には、ここであえて細かい数字は省略いたしますけれども、一人当たりの付加価値額の規模別格差というものをとってみますと、中小零細企業の付加価値額の格差は大企業に対してきわめて大きい。そして、そういう意味では賃金格差よりさらに大きいというふうな状況を示しております。これはしばしば生産性の違いがこの一人当たり付加価値額の格差にあらわれているのだと主張されておりますが、これはそうではないので、わが国の規模別の格差が欧米諸国よりも大きい、さらに一人当たり付加価値額の格差がさらに大きいというのは、やはり格差のある低賃金で働かされている労働者がいるというふうなことから、先ほど申しましたようにその中小零細企業がいろいろな形で利用されあるいは犠牲にされて、その結果付加価値額がきわめて少なく抑えられている、いわゆる支払い能力がないと言われるような状況を呈しておるのがこのような統計数字に反映されているのだ、この点がやはり重要ではないか、そういうふうに思われるわけであります。
そういう意味でわが国において全国一律の最低賃金を決定していった場合に、中小企業に対するいままでの下請単価の決定であるとか原材料の仕入れであるとか、あるいは金融、税制、そういうふうな面が社会的に規制されていくということが当然そこに出てくるわけで、先ほどの産業構造の再編成と言われたその問題、インドのピライ教授が言われているような点がここに問題になってくるというふうに考えられるわけであります。
次に最低賃金額の決定の方法の問題であります。時間の関係で簡単に申し上げますが、決定方法に関して政府が決定をしていく、あるいは法律に規定していくという方法が余り各国の最低賃金制においてとられていないのは、最低賃金制成立当初において、これはD・セルズという人が書いた「ブリティッシュ・ウエイジズ・ボード」という本の中に書いてありますが、所得の民主化という趣旨と、もう一つは賃金決定方法の民主化という意味で、政府、国家が決定をするのではなくて労使の代表が出た機関において労使が対等な条件で決めていく、これを尊重するということが賃金決定方法の民主化である、こういうことを主張しておりますし、さらにイギリスにおいて早くから最低賃金法案を作成するために努力をしたチャールズ・ディルク夫妻、これは未組織労働者の組織化に努めたヒューマニストでありますけれども、この人なんかも実際において賃金委員会制度というものをようやく工夫し探り当てて、そのような法案をつくることになった。なかなかこれは成立しませんでしたけれども……。そういうことを考えてみますと、決定方法についてもやはり民主的な方式という意味が非常に重要な点になってくるのではないか。
以上のようなことを勘案してまいりますと、私が野党四党法案について見ましたところ、いろいろその問題点は私なりに持っておりますけれども、しかし少なくとも現行法に比べたならば、わが国の低賃金を克服していく上ではるかに実効性のあるものであると私は評価せざるを得ないというふうに申し上げたいと思います。
以上であります。拍手
竹
竹
住
住栄作#13
○住委員 いま問題になっております最賃の問題について、各参考人から大変貴重な意見を伺いました。今後の私どもの審議に大変参考になると思うのでございますが、私は少しさらに掘り下げて御質問を申し上げてみたいと思いますが、時間も限られておりますので、できるだけ要点について簡略にお答えいただけたらありがたいのでございます。
第一の問題は、いま全国一律について労働側の方並びに黒川先生の方から、結局全国一律でないとだめなんだ、と同時に山王丸さんあるいは下村さんの方から、なかなかそれは大変な問題だと、こういうことで明瞭に対立したと私は思うのでございますが、一体最低賃金の額を全国一律の場合どのようにして決めるか、こういうことによってずいぶん考え方が違ってくるんだろうと思うのです。
そこで決定基準の問題ですけれども、岡村参考人は生計費及び賃金事情、こういうことをおっしゃいました。それから黒川参考人の方は恐らく生計費だと思うのでございますが、そこでお伺いしたいのは、岡村さんは生計費と賃金事情をおとりになっておられるが、この点について生計費と賃金事情を同じようにお考えになるのかどうか、こういうようなことについて御意見を承りたい。
それから黒川参考人に対して、生計費とおっしゃる場合、一体理論生計費なのか実態生計費なのか、あるいはその場合に標準世帯、あるいは世帯でもいいのですが、あるいは労働者一人の生計費なのか、そういう点について御見解を伺いたいと思うのです。
この発言だけを見る →第一の問題は、いま全国一律について労働側の方並びに黒川先生の方から、結局全国一律でないとだめなんだ、と同時に山王丸さんあるいは下村さんの方から、なかなかそれは大変な問題だと、こういうことで明瞭に対立したと私は思うのでございますが、一体最低賃金の額を全国一律の場合どのようにして決めるか、こういうことによってずいぶん考え方が違ってくるんだろうと思うのです。
そこで決定基準の問題ですけれども、岡村参考人は生計費及び賃金事情、こういうことをおっしゃいました。それから黒川参考人の方は恐らく生計費だと思うのでございますが、そこでお伺いしたいのは、岡村さんは生計費と賃金事情をおとりになっておられるが、この点について生計費と賃金事情を同じようにお考えになるのかどうか、こういうようなことについて御意見を承りたい。
それから黒川参考人に対して、生計費とおっしゃる場合、一体理論生計費なのか実態生計費なのか、あるいはその場合に標準世帯、あるいは世帯でもいいのですが、あるいは労働者一人の生計費なのか、そういう点について御見解を伺いたいと思うのです。
岡
黒
黒川俊雄#15
○黒川参考人 生計費については、これはマーケットバスケットという方式がありますが、これは使用者側代表それぞれの間で具体的な中身を基準にして生計費を提出してきて、そこで交渉していくという形になると思うのです。
それから内容については、わが国の場合は当面一人の生計費というところから出発せざるを得ないだろう。ただそれではきわめて不十分でありますけれども、そういうふうなところから出発せざるを得ないだろうというふうに考えています。
この発言だけを見る →それから内容については、わが国の場合は当面一人の生計費というところから出発せざるを得ないだろう。ただそれではきわめて不十分でありますけれども、そういうふうなところから出発せざるを得ないだろうというふうに考えています。
住
住栄作#16
○住委員 岡村参考人にお願いしたいのでございますが、当然生計費、こういうことでございますが、やはり同じように生計費であればいま申し上げましたいろんなとり方がある。一人の生計費とかいろんな問題があると思うのですが、黒川参考人から、さしあたって一人の生計費、こういうような御意見でございますが、その点どういうようにお考えになっておられるか。
この発言だけを見る →岡
岡村省三#17
○岡村参考人 できればそれはヨーロッパ等で考えられているように世帯の方がいいことは間違いありません。ただ、日本の現状を考えれば、いま黒川先生が言われたようにスタートは単身者でということでいいんではないか。将来的には世帯を考えたい、こういうように思います。
この発言だけを見る →住
住栄作#18
○住委員 そこで一人当たりの生計費ということになりますと、大体額というものが想定されるわけでございますけれども、現実の問題として、労働四団体の掲げておられる七万円というもの、これは大体一人当たりというようなことでお考えになっておられるのでしょうか。岡村さんにお願いしたいと思うのです。
この発言だけを見る →岡
住
住栄作#20
○住委員 一人当たり七万円。これは議論は避けておきますけれども、成年男子で一人当たりの生計費として、実際の生計費としても理論生計費としても七万円というのはちょっと理解できないのでございます。ちょっと高いような気もいたしますが、どんなものでございましょうか。と申しますのは、私は、先ほど下村さんあるいは山王丸さんがおっしゃったように、七万円、一日二千八百円というもの、これは大変大きな影響を中小企業に与えるのだ、現実の賃金から見れば中小企業にとって最低賃金として大変な金額である、こういうような感覚であろうと思うのです。そこらあたり、議論は必要はないのでございますけれども、最低賃金というもの、たとえば東京で千七百九十四円ですか、地域最賃として決まっておりますけれども、最低賃金額の決まり方ですね。たとえば低い県では千三百四十円くらいのところもあるわけですから、その最低賃金額の決まり方が賃金額の決定基準との関係で非常に問題があるわけでございますけれども、決まり方いかんによっては全国一律の最低賃金という考え方があり得るのじゃないか。下村さんは、そもそもそういうことはいかぬのだ、労働市場における賃金分布から極端に外れている不公正な賃金を救うのだ、だから全国一律はあり得ないのだ、こういうようにおっしゃったわけでございます。しかし、いずれの労働市場——これは全国横断的な労働市場はないと思うのですけれども、いずれの労働市場においても、そういうはみ出たもの、これをどういう基準で救うか、こういうことになりますと、やはりその地方の生計費なりあるいは相場賃金というものがそこに基準として出てくるんじゃないか。その場合に、労働市場を通ずる、まあ高い低いはあるだろうと思いますが、一律最賃制というものを否定する議論には必ずしもならないのじゃないかと思うのでございます。要するに、Aの労働市場、Bの労働市場、Cの労働市場というものがありますね。そういう労働市場を横断する最低賃金制、これは一律と考えてもらって結構なんでございますが、そういう考え方というものはとり得ないものかどうか、これをひとつ下村さんにお願いしたいと思うのです。
この発言だけを見る →下
下村和之#21
○下村参考人 そういういままでの最低賃金を決める過程の中で、私も前、地賃をやっておったのですけれども、いわゆる業者間協定をやるころは盛んに労働側の方は生計費重点でおっしゃった。それからだんだん実際に賃金のベースが上がってまいりまして、そして比較的生活に余裕のあるような状態になってきたときは、いや生計費は二の次なんだ、相場なんだ、こういうおっしゃり方をしておる。ですから、いわゆる理論に一貫性がないので、これはどういうふうに変わってくるのかわからない。私はやはり最低賃金が相場に対して不公正なものであるという、賃金を救済するのだという面から考えて、相場がやはり重点だと思っています。
この発言だけを見る →住
住栄作#22
○住委員 大変恐縮なんですが、もう一回お願いしたいと思うのです。
基準として相場が大事だという、それはよくわかるのです。ですから、相場賃金をとるか生計費基準をとるか、これは最低賃金決定基準の問題としてあると私は思うのです。仮に相場というものだけをとってみても、そのことから直ちに全国一律最賃制というものの否定になるのかならぬのか、この点についての御意見を聞きたかったわけです。
この発言だけを見る →基準として相場が大事だという、それはよくわかるのです。ですから、相場賃金をとるか生計費基準をとるか、これは最低賃金決定基準の問題としてあると私は思うのです。仮に相場というものだけをとってみても、そのことから直ちに全国一律最賃制というものの否定になるのかならぬのか、この点についての御意見を聞きたかったわけです。
下
下村和之#23
○下村参考人 これは意見の中で申し上げましたように、いわゆる労働の移動、流通が可能な範囲内の市場の相場ということでありますが、全国共通に移動が活発にできるという市場ではないと思いますので、狭義の市場になると思います。
この発言だけを見る →住
住栄作#24
○住委員 岡村参考人にお伺いしたいのです。
この最賃決定機構の問題ですが、四団体の考え方あるいは四党の法案の考え方も、労使同数で、そしてそれより少ない人数、これを公益委員にしよう、こういう考え方なんです。これは、たとえばフランスの例を見ましても、委員会の中で意見がまとまればいいのですけれども、どうもまとまらない、そういう場合は、フランスの場合なんか結局政府が決めておる、こういうようなのが実情であるわけなんです。先ほど来いろいろ御意見にもありますように、労使の意見というのはかなり鋭く対立しておる。そこで委員会なら委員会で意見がまとまらない場合がむしろ多いのじゃないだろうか、こういう感じがするわけなんですけれども、まとまらない場合、これは最低賃金がいつまでたっても決まらないということになると思うのでございますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
この発言だけを見る →この最賃決定機構の問題ですが、四団体の考え方あるいは四党の法案の考え方も、労使同数で、そしてそれより少ない人数、これを公益委員にしよう、こういう考え方なんです。これは、たとえばフランスの例を見ましても、委員会の中で意見がまとまればいいのですけれども、どうもまとまらない、そういう場合は、フランスの場合なんか結局政府が決めておる、こういうようなのが実情であるわけなんです。先ほど来いろいろ御意見にもありますように、労使の意見というのはかなり鋭く対立しておる。そこで委員会なら委員会で意見がまとまらない場合がむしろ多いのじゃないだろうか、こういう感じがするわけなんですけれども、まとまらない場合、これは最低賃金がいつまでたっても決まらないということになると思うのでございますが、この点についてどのようにお考えでしょうか。
岡
岡村省三#25
○岡村参考人 いまの御質問に対して最初にお答えしますが、したがって私たちの方は、いままでやられていた十数年にわたる最賃行政の反省から、労使同数、それに比較して少数の中立をと、こういう委員会制度を提案しているわけであります。
それから先ほど答弁したのはちょっと舌足らずですけれども、七万円というのは生計費を考え、日本の賃金事情を考えて、とりあえずわれわれの要求でありますから、それが直ちに生計費だというようにとられると誤解になるかと思います。
それから先ほどちょっと質問にありました、高いのじゃないかという意見があったと思うのですけれども、率直に言って、何を基準に高いかというのをむしろ私の方から伺いたいほどなんです。たとえば、その前提として、人事院勧告の生計費等が想定されるとすれば、これは御存じと思いますけれども、全国的に見ると、一人の場合で言うと三万九千二百円とか、東京の場合で言うと四万四千二百円とかいう数字に昨年の場合にはなっています。しかしこれは、たとえば食料費を一つとってみると、全国的な場合で言えば一万五千五百七十円、東京の場合で言うと一万八千六十円くらいの金額になります。そうなりますと、これを三十日で割りますと、一日当たり五百円とか六百円という数字になりますから、三食ラーメンも食べられないということになりますから、幾ら何でも生計費で、これを基準にしてと考えられることはないのじゃないか。私たちが言っている七万円もごく控え目の要求であるというように御理解いただきたいと思います。
この発言だけを見る →それから先ほど答弁したのはちょっと舌足らずですけれども、七万円というのは生計費を考え、日本の賃金事情を考えて、とりあえずわれわれの要求でありますから、それが直ちに生計費だというようにとられると誤解になるかと思います。
それから先ほどちょっと質問にありました、高いのじゃないかという意見があったと思うのですけれども、率直に言って、何を基準に高いかというのをむしろ私の方から伺いたいほどなんです。たとえば、その前提として、人事院勧告の生計費等が想定されるとすれば、これは御存じと思いますけれども、全国的に見ると、一人の場合で言うと三万九千二百円とか、東京の場合で言うと四万四千二百円とかいう数字に昨年の場合にはなっています。しかしこれは、たとえば食料費を一つとってみると、全国的な場合で言えば一万五千五百七十円、東京の場合で言うと一万八千六十円くらいの金額になります。そうなりますと、これを三十日で割りますと、一日当たり五百円とか六百円という数字になりますから、三食ラーメンも食べられないということになりますから、幾ら何でも生計費で、これを基準にしてと考えられることはないのじゃないか。私たちが言っている七万円もごく控え目の要求であるというように御理解いただきたいと思います。
住
住栄作#26
○住委員 生計費のことよりも、決まらない場合どういうことになるのだろうか。いつまでたっても決まらない場合があるのじゃないか。そういう場合、お考えになっておられるような賃金決定機構ではどうなるのだ、こういうことをお伺いしておったのです。
この発言だけを見る →岡
岡村省三#27
○岡村参考人 十分に議論をしていただいて、その中から合意を得る。合意を得る場合にどういう決め方をするかというのは、最終的には多数決で決める、こういうことになるのだろうと思います。
この発言だけを見る →住
住栄作#28
○住委員 最終的には多数決で決めるということになるのだろうということでございますけれども、その多数決が、一方では労使同数で、それに公益側が加わるわけですから、簡単に多数決で決めるのだと言っても、どのようにうまく決まるのかということを大変心配するものですから、お伺い申し上げたわけでございます。
それから、七万円が高いとか安いとかの御意見ございましたが、一人の生計費としては、いまもちょっと御説明がございましたけれども、政府関係の統計では、生計費をもととしておるならば高いのじゃなかろうか。
それはどうでもいいのですけれども、私は山王丸さんなり下村さんに、最低賃金も決まり方によっては全国一律があってもいいのじゃないか、七万円だからびっくりされるのであって、そうでないのであれば全国一律だって考えられるのじゃないだろうかということで、こういう趣旨を含めて、むしろそのためにお伺いしたわけでございます。
いずれにしましても、最低賃金、現在地域別あるいは産業別に決まっておりますけれども、これは現実問題として低賃金労働者、たとえば一〇%とか一五%というものを、それは落ち穂拾いか何かは別問題として、救っておることは事実だと思うのです。
そこで問題は、全国一律制をやったとしても、金額の問題はありますけれども、いままで高い賃金を払ったから企業がつぶれたという話を余り聞かないのだ、こういうような御意見を岡村さんがちょっと漏らされましたけれども、やはり最低賃金の決まり方によっては非常に大きな影響を中小企業に与える、特に地場産業、先ほど下村さんがおっしゃいましたように、よそへ移動できないような労働者を雇っているそういう地場産業もあるわけですから、影響を受けることは確かであろうと思うのです。しかし一方で、高い賃金を払ったからといって企業が倒産したという例は余り聞いたことがない。企業努力によってそれはやれるのじゃないか、こういうような御意見もございましたので、これは大変大事なポイントであると思います。そういう点について山王丸さんの御意見をお伺いしたいと思うのです。
この発言だけを見る →それから、七万円が高いとか安いとかの御意見ございましたが、一人の生計費としては、いまもちょっと御説明がございましたけれども、政府関係の統計では、生計費をもととしておるならば高いのじゃなかろうか。
それはどうでもいいのですけれども、私は山王丸さんなり下村さんに、最低賃金も決まり方によっては全国一律があってもいいのじゃないか、七万円だからびっくりされるのであって、そうでないのであれば全国一律だって考えられるのじゃないだろうかということで、こういう趣旨を含めて、むしろそのためにお伺いしたわけでございます。
いずれにしましても、最低賃金、現在地域別あるいは産業別に決まっておりますけれども、これは現実問題として低賃金労働者、たとえば一〇%とか一五%というものを、それは落ち穂拾いか何かは別問題として、救っておることは事実だと思うのです。
そこで問題は、全国一律制をやったとしても、金額の問題はありますけれども、いままで高い賃金を払ったから企業がつぶれたという話を余り聞かないのだ、こういうような御意見を岡村さんがちょっと漏らされましたけれども、やはり最低賃金の決まり方によっては非常に大きな影響を中小企業に与える、特に地場産業、先ほど下村さんがおっしゃいましたように、よそへ移動できないような労働者を雇っているそういう地場産業もあるわけですから、影響を受けることは確かであろうと思うのです。しかし一方で、高い賃金を払ったからといって企業が倒産したという例は余り聞いたことがない。企業努力によってそれはやれるのじゃないか、こういうような御意見もございましたので、これは大変大事なポイントであると思います。そういう点について山王丸さんの御意見をお伺いしたいと思うのです。
山
山王丸茂#29
○山王丸参考人 お答えいたします。
いま御質問がありました件で先ほどの参考人の意見、すなわち高い賃金を払っている中小企業のつぶれたのを聞いたことがないとおっしゃったわけですが、私はその途端に、高い賃金を払っている中小企業というのはかなり専門化され、大企業でもまねのできないようなものをおつくりになっているとか、かなり特殊な中小企業でもともと高賃金を払い得る体制の企業のことをおっしゃっているんじゃないかというふうに存じました。日本の中小企業の実態の中にはむしろ低賃金のところが圧倒的多数ございますので、さきに申し上げたように、そういう能力のある中小企業だからこそ高賃金を払ってもつぶれたところがないのであって、それをごらんになったことがないのではないかというふうに存じました。
それから、低賃金の中小企業に与える全産業全国一律の場合の問題でございますけれども、こういうところで賃金を高くしたらどうか。これはちょっとこの最賃制に直接関連したことではございませんが、今度の春の賃上げ、いわゆる春闘に関連しまして、関西方面の全国金属に所属する組合が企業に非常な圧力を加えて高賃金をかち取ったその直後、途端に会社がつぶれかけて会社更生法適用の申請を出したということを聞いております。したがって、中小企業が無理に高賃金を出すということがもしあったとすれば、これは最賃制の全国一律の場合も同じように非常にゆゆしい問題になります。したがって、私が冒頭に参考人の意見として申し上げましたように、中小企業の支払い能力に対する保障措置が完全になされない限りは、現段階で全国全産業一律最賃方式というのはわが国の労働市場の実態から言って無理だということを意見として申し上げたわけでございます。
この発言だけを見る →いま御質問がありました件で先ほどの参考人の意見、すなわち高い賃金を払っている中小企業のつぶれたのを聞いたことがないとおっしゃったわけですが、私はその途端に、高い賃金を払っている中小企業というのはかなり専門化され、大企業でもまねのできないようなものをおつくりになっているとか、かなり特殊な中小企業でもともと高賃金を払い得る体制の企業のことをおっしゃっているんじゃないかというふうに存じました。日本の中小企業の実態の中にはむしろ低賃金のところが圧倒的多数ございますので、さきに申し上げたように、そういう能力のある中小企業だからこそ高賃金を払ってもつぶれたところがないのであって、それをごらんになったことがないのではないかというふうに存じました。
それから、低賃金の中小企業に与える全産業全国一律の場合の問題でございますけれども、こういうところで賃金を高くしたらどうか。これはちょっとこの最賃制に直接関連したことではございませんが、今度の春の賃上げ、いわゆる春闘に関連しまして、関西方面の全国金属に所属する組合が企業に非常な圧力を加えて高賃金をかち取ったその直後、途端に会社がつぶれかけて会社更生法適用の申請を出したということを聞いております。したがって、中小企業が無理に高賃金を出すということがもしあったとすれば、これは最賃制の全国一律の場合も同じように非常にゆゆしい問題になります。したがって、私が冒頭に参考人の意見として申し上げましたように、中小企業の支払い能力に対する保障措置が完全になされない限りは、現段階で全国全産業一律最賃方式というのはわが国の労働市場の実態から言って無理だということを意見として申し上げたわけでございます。